神殿原農場では5月12日(ホルスタイン種)、14日(ホルスタイン種)、15日(黒毛和種)とウシの分娩がありました。
農業の授業をするとき、悩むことがあります。勿論、目的は生徒が分かる授業をすることです。農業以外の授業であれば、生徒が分かりやすいように授業計画を立て、そのとおりに進めていくでしょう。しかし、計画どおりにいかないのが農業。計画は立てますがそのとき、そのときに応じた授業内容になってしまいます。今回は畜産にとって、とても大切な場面である「分娩」。「授業は10時50分~12時30分だから、その間に産んでね」と親牛に言ったところでどうなるものではありませんよね。この日は休み時間(昼休み)に分娩がありました。
分娩は親も子も命がけ。お母さんの膣こうから子牛の前足と頭が見えました。時間も長くなっていて、お母さんは苦しそうです。
休み時間であるのにも関わらず、心配そうにその姿を見ている3人の生徒がいました。
お母さんの様子を確認して、担当の先生がウシを引き出す決断をしました。ロープを子牛の前足につないで、お母さんがいきむ(陣痛)タイミングと合わせます。
声を合わせて「よいしょ!」
無事に子牛が生まれました。羊水で濡れた子牛を一生懸命、拭き上げてくれました。このあと、子牛はリアカーでカーフハッチに移動、親牛にはビタミン剤やカルシウム剤を飲ませ、初乳を搾りました。
一通り介助をしてくれた生徒は弁当を食べるために慌てて自転車で本校に向かいました。食べられれば良いけど。
農業をとおして人が育つ。農業の授業をしながらそんな生徒を沢山、見てきました。大きく育つ生徒には特徴があるように思います。それは興味があり、思いやりの気持ちがあることです。ウシの分娩、もし、タイミング良く授業中にあって、先生が説明しながら生徒が観察したとします。その中でただ、何も考えずその場にいた生徒がいたとしたとき、その生徒には何か残るのでしょうか。分娩、去勢、給餌、除糞、環境整備、体測・体尺、ブラッシング、ウシ洗い、牧草栽培、交流会等、様々な学習内容がある中で、生徒がどんな気持ちで取り組み、身につけようと努力したか。1つ1つの学習内容はそんなに難しいことではありません。しかし、その1つ1つの学習内容に興味を持っていたか、思いやりを持っていたかで得られることは大きく異なります。今回の分娩には総合農業科2年生の生徒が3人、休み時間に自分の意思で見に来ていました。ご褒美はありません。褒美とは比べものにならない大切なことを3人は得たと期待しています。
農業・環境・自然・命に興味がある中学生のみなさん、南稜高校にはそんな興味が尽きることがないフィールドがあります。一緒に興味を持って勉強してみませんか。