日誌

カテゴリ:農業科

鉛筆 梅雨曇り リベンジ誓う 苗の伸び

 暦の上では明日、二十四節気の「芒種(ぼうしゅ)」を迎えます。

 昨日4日には九州北部地方の梅雨入りが発表され、本日の芦北は体にまとわりつくような、ずっしりとした湿気に包まれています。

 この重たい曇り空の下、農場では今月1日に1年生が「稲の播種(はしゅ)」を終えたばかりの苗が、梅雨の潤いを歓迎するようにしっとりと、瑞々しい青葉をのぞかせています。

 この小さな緑の命が目指すのは、来る6月25日の「田植え」です。

 実は昨年、現在の2年生たちが臨むはずだった田植えは、あいにくの天候不良により断念せざるを得ませんでした。

 先輩たちが味わった自然の厳しさと悔しさを胸に、今年かける農業科の想いはひとしおです。

 雨空を見上げながら、リベンジの田んぼへ向けて、今、着々と準備が進められています。

 

■ 挑む心、次なる学びの舞台へ

 農場が静かに湿気を吸い込む一方で、校内は今、いつもとは違う緊張感と静かな熱気に包まれています。

 来週6月11日からは、いよいよ第1回考査が始まります。

 これまでは農場での実習をはじめ、身体を動かす新しい学びに汗を流してきた生徒たちですが、ここからは「机の上」というもうひとつの大切な試練へと挑むことになります。

 独特の蒸し暑さのなか、放課後の教室や図書室では、互いに教え合いながら熱心にノートを広げる姿が見られるようになりました。

 実習で培われたあのタフさと集中力を、今度はペンと教科書に注ぎ込み、一歩も引くことなく自分自身の学びに実直に向き合っています。

 

■ 実りへの確かな一歩

 芒種の時期にまかれ、梅雨の濃い空気のなかで育つ種は、やがて大きな黄金色の穂へと育ちます。

 今、試験勉強という目の前の課題に向かって、じっと机に向かい努力を重ねている生徒たちの姿もまた、全く同じです。

 明日の芒種を前に、梅雨の湿気が万物を育むこの良き日に。

 自分の限界に挑戦し、確かな実りを結ぼうとしている芦北高校の生徒たちを、農業科一同、心からのエールとともに応援しています。

 

「芒種

 託した種と、ひたむきな学びが、梅雨の季節を経て大きな実りとなることを願って。芦北高校より。

鉛筆 食べて知り 違いを明日の 販売へ

 「全然違う! こっちめっちゃ酸っぱい!」

 「こっちは味が濃く感じない?」

 「私はAの方が好きかも」

 

 本日、2年農業科の総合実習の教室。

 机の上に並べられたのは、文字通り「見た目はそっくり」な2種類の「不知火(シラヌイ)」でした。

 しかし、それを口に含んだ瞬間、生徒たちの表情は一変します。

 飛び交うのは、戸惑いと興奮が入り混じった、リアルな五感の叫びでした。

 この日行われたのは、カンキツ類の品種・系統特性を理解するための「ブラインド・テイスティング(試食調査)」

 芦北高校農業科に入学したからには、ただ「美味しい」と食べるだけでなく、その繊細な違いまで完璧に見極められる人になってほしい。

 そんな願いが込められた、ちょっと意地悪で、最高にエキサイティングな実習の幕開けです。

 

「普通」という逃げ道のない、4段階の審判】

 用意された資料『品種食べ比べワークシート』に書かれたヒントは2つ。

 熊本生まれで酸抜けが早く、まろやかな味わいの「肥の豊」

 そして、じっくり貯蔵することで濃厚なコクとパンチのある酸味を引き出す王道系統「M16A」

 ・品種の違いブログはこちら:【 M16 知ればあなたも 目利きなり】

 

 手渡されたワークシートに並ぶのは、果肉の着色、内皮の薄さ、酸味のマイルドさといった評価項目。

 しかし、そこには「普通(どちらとも言えない)」という逃げ道は一切ありません。

 「なるべく極端に評価したほうがいいぞ。正解はないから、自分の感覚を信じろ」という先生の声が教室に響きます。

 

 ーーモグモグ……。

 ーーごくり。

 生徒たちは全神経を舌に集中させていきます。

 ただの「おやつとしての試食」なら笑顔で終わるはずの時間。

 しかし、栽培技術者としてのプライドが滲む生徒たちの横顔は、真剣そのものでした。

 

「同じに見えて、ぜんぜん違う!」感覚の迷路】

 一通り口に含んだあと、教室は静かな熱気に包まれました。

 生徒たちは言葉を止め、それぞれのワークシートをじっと見つめながら、自分の感覚を言葉と数値に置き換える「深い熟慮」の時間へと沈み込んでいきます。

 先ほどまでの口の中の様子をじっくりと思い出し、与えられた手がかりを一つずつ手繰り寄せる生徒たち。

 「さっきの余韻は、肥の豊のまろやかさなのか、それともM16Aのコクなのか」

 目の前のヒントと自分の記憶を何度も重ね合わせながら、自らの感覚を信じて、自分なりの答えをシートへと導き出していきます。

 これこそが、生きた農産物を相手にする面白さであり、奥深さです。

 迷う生徒たちに、先生が言葉を掛けます。

 

 「正解はどっちでも良いんだよ。

 当てること自体が大事なんじゃない。

 同じに見えるものに確かな『違い』があることを知って、自分がどっちを好むかを見極めること。

 その感覚を掴むことこそが大切なんだ」

 

 生徒たちの口から漏れた感想は、まさに自分自身の身体を通して、農業科学のリアルな1ページをめくった証拠でした。

 

 ・「どちらも違うけど同じくらいおいしくて、また今度たくさん食べたいと思った。」

 ・「味は全然違ったが、見た目の色や果肉の様子などの違いはほとんどわからなかった。」

 ・「違いがはっきりしていてわかりやすかった。販売のときに活かしたい。」


 

【その一口の記憶が、未来の「プロの目」を育てる】

 ドキドキの正解発表の瞬間にあがった歓声と悔しがるの声。

 その後の先生の講評。

 「不知火」は、樹の上や貯蔵庫の中で、時間が経ち「酸が抜ける」ごとに、その時期その時期によって味わいが変化していきます。

 その変化のスピードや味の引き締まり方が系統によって異なるからこそ、カンキツ栽培は奥が深く、面白いのです。

 自分たちが普段、実習園地で何気なく触れている「不知火」の一玉一玉に、どれほど緻密な生き物のドラマが詰まっているのかを、生徒たちは静かに聞き入っていました。

 この「系統の違い」を身体で覚えるチャンスも、果実が実るこの季節だけの、限られた貴重な瞬間です。

 一度の試食で、すべてを見通せるプロになれるわけではありません。

 しかし、今日生徒たちの心に植え付けられた「なぜこんなに味が違うのだろう?」という探究の種は、これからの収穫や貯蔵管理の実習で、必ず「見る目」を変える力になります。

 「美味しい」の先にある、自然の複雑さと、それをコントロールする人間の技術の凄みに感動すること。

 芦北高校農業科では、こうした五感をフルに使うリアルな学びを通して、未来の農業を支える確かな知恵を「創造」しています。

 実習が終わり、片付けられた教室には、かすかに甘酸っぱい「不知火」の残香が漂っていました。

 「違いのわかる技術者」への第一歩を踏み出した2年生。

 彼らが育てる次の実りが、今から楽しみです。

鉛筆 The Chemistry of Baking and Respect for Professionals

Global Series Vol. 5:Ashikita Craftsmanship

[JP]

 芦北高校農業科の活動を世界へ届けるシリーズ。

 私たちが大切にしている活動の記録を厳選し、月に一度、英語版としてお届けします。

 第5回は、5月20日の「2年生・食品製造実習(シュー・ア・ラ・クレーム)」の記録です。

 [Global Series Vol. 4:Weeds, Buds, and a Farmer’s Dilemma はこちら]

 

[EN]

Sharing the passion of Ashikita Agricultural High School with the world. Once a month, we present an English edition of our specially selected stories. Vol. 5: Sophomore Food Processing Practice — Choux à la Crème (May 20th).

[Click here for Global Series Vol. 4:Weeds, Buds, and a Farmer’s Dilemma]

 

— Sophomore Food Processing Practice: Science and Senses in Pastry Making —

 

Today, the food processing lab for our second-year Agricultural Department students was filled with a sharper sense of tension than usual, alongside a sweet, aromatic fragrance. The challenge was making "Choux à la Crème" (cream puffs)—a classic pastry that requires advanced technique and intense concentration.

■ Observation with the Five Senses, Not Just Mixing

Whether making the custard cream filling or the choux pastry base, the most crucial point in both processes is that it is "not just mechanical mixing."

To prevent scorching and lumps while achieving a smooth texture, the students constantly focused on the feel at the bottom of their pots and bowls, carefully observing whether the overall color change was uniform.

Their eyes, as they lifted wooden spatulas to check the consistency, were those of true professional artisans.

 

■ The Challenge of Gelatinization

The Golden Rule for Rising. Furthermore, choux pastry comes with a strict, minimum requirement: the dough must rise beautifully and significantly. By bringing butter to a complete boil in a pot, adding flour all at once, and mixing rapidly, the heat triggers the starch molecules to bind—a process known as "gelatinization" (koka).

This is where the lab earned its name, "Food Processing." From the precise measurement of ingredients to the exact second the pot is removed from the heat, the optimal ratio for adding eggs while judging the dough's temperature, and the tactile sensation of thickness felt through the spatula to their fingertips—everything relies on logical conditions. If even one measurement or sensation is off, the pastry will never rise in the oven. Food processing is a highly delicate world of "chemistry" controlled by the five senses and scientific knowledge.

 

■ Beautiful Results and the Physics of Baking

For most groups, the pastry puffed up into a beautiful golden brown through the oven glass, resulting in wonderful choux shells.

Amid cheers of success, they piped in plenty of smooth custard, completing beautiful "Choux à la Crème" one after another.

However, out of the ten groups in the practical lesson, there was one group whose pastry just wouldn't rise properly.

The cause traced back to a slight variance in heat control during the dough-making process. While those around them succeeded, they fell short of the ideal shape, leaving a lingering sense of frustration. Yet, when it came time to taste—"It actually tastes delicious!"—smiles broke out at the quality of the flavor.

Following the lesson, students shared that their perspective on the cream puffs they casually see in convenience stores and supermarkets had completely changed. They felt firsthand the incredible craftsmanship and corporate effort behind products that always rise beautifully and uniformly.

The students did not just gain confidence from success; they analyzed the causes of failure, turning an everyday sight into a learning experience. It was a lesson that made us look forward to the further growth of these second-year students, who use their own hands and five senses to "create" new value and insights.

鉛筆 笑顔咲く 日誌に綴る パンの味

 先週5月28日(木)、3年農業科の「食品製造」で製パン実習が行われた様子をお届けします。

 

 「今日も実習棟からいい匂いがするぞ!またいつもの製パン実習かな?」

 

 いえいえ、本日の3年農業科「食品製造」の主役は、前回のパン実習とはちょっと違います。

 そう、今日のポイントはこの子たち。ツヤツヤの「あんこ」です!

 先日の丸めるだけの「まるパン」実習とは違い、今回はワンランク上の成形技術に挑みます。和菓子のあんこを生地で「包む」という実習です。

・前回の「製パン実習」ブログはこちら:【慣れた手に 想いをのせて 笑顔売る】

 

【これぞ手仕事!「包む」成形への挑戦】

 まずは、発酵した生地を麺棒を使って「こぶし大」の綺麗な円形にのばしていきます。

 厚みが均一になるように広げたら、いよいよここからが本番。

 

 生地のど真ん中に、丸いあんこをぽんと乗せます。

 ただ包むだけに見えて、実はこれがとっても難しい!

 あんこがはみ出さないように、生地の厚みが偏らないように包むには、絶妙な指先のコントロールが必要です。

 「あれ?うまく閉じられないぞ……」というときは、たまには指導者の先生にマンツーマンでコツを教わりながら、全集中。

 先生の鮮やかな手つきを真似しながら、みんな少しずつコツを掴み、最後はきれいにあんこを包み込むことができました。

 

【焼き上がり!そして「15個!?」

 2度目の発酵を終えたら、仕上げに表面に卵黄をていねいにぬっていきます。

 オーブンに入れてじっくり焼き上げると……実習室に広がったのは、なんとも香ばしい甘い香り!

 中から出てきたのは、表面がツヤツヤ、ピカピカに輝く、お店顔負けの完璧なあんパンたちです!

 

 この最高の焼き上がりを待つ間、担当職員から生徒たちへ「自分で買いたい生徒は、名前と個数を言ってね〜」と声がかかりました。

 すると、生徒たちが自ら大きな声を発して、次々と個数をコールし始めます。

 

 「〇〇、3個!」

 「△△、5個!」

 

 教室が賑わうなかに、まさかの声が響き渡りました。

 「★★、15個!!」

 

 「15個!?」と思わず職員もびっくりして聞き返すと、聞けばご家族に食べてもらいたくて購入するとのこと。

 自分たちが実習で製造したものが、大切な家族に「美味しいから食べて!」と持って帰りたくなる製品になっていること。

 生徒自らが食べたくなる製品をつくれているという事実に、農業科職員として本当に嬉しさを感じた瞬間でした。

 

【いってらっしゃい校内販売へ】

 焼き上がった最高のあんパンたちを素早く袋詰めして、「さあ、行ってらっしゃい!校内販売へ!」と、3年生の心のこもったあんパンたちが学校中へ旅立っていきました。

 

 この日の学級日誌を覗くと、日直の生徒の欄に嬉しい言葉が残されていました。

 

 「校内販売で先生方がとっても嬉しそうに買って下さったのが、とても嬉しかった」

 

 自分たちの手で作り上げたものを、目の前の人が笑顔で受け取ってくれる。

 その喜びは、生徒たちにとって何にも代えがたい自信になったようです。

 

  ……ちなみに。

 中のあんこが偏っていないか、空洞ができていないか、しっかり「技術の確認(断面チェック)」をするために、半分に切ったあんパンを少しだけ味見させていただきました。

 形が少しだけ基準に届かなかった、あくまで“売り物にならないやつ”ですからね!(笑)

 

 普通の生活のなかで、「あんこがアツアツのあんパン」を食べられる機会なんて、そうそうありませんよね。

 実習ならではの、できたてアツアツのあんパンは……もう、めっちゃ美味しかったです!!

 ふっくら生地と温かい餡のバランスが最高でした。

 

 前回学んだ製造の基礎から一歩進み、今回は「包む」という新しい成形技術に挑戦した3年生。

 甘いあんこと一緒に、大切な家族や買ってくれる先生方への温かい気持ちまで、一粒一粒ていねいに包み込んだからこそ、あんなにピカピカで誰もが食べたくなる最高のあんパンになったのだと思います。

 

 

 芦北高校農業科では、こうして日々の実習の中で、昨日より少し高い技術へと自ら「挑戦」し、新しい美味しさとたくさんの笑顔を「創造」しています。

 次はどんな技術が登場するのか、これからの食品製造実習もどうぞお楽しみに!

鉛筆 一握り みみず太郎に 夢をのせ

 今年3月、本校と日本製紙株式会社がガッチリ手を組んだ「産学連携協定」。

 今回は、その日本製紙グループの株式会社豊徳様が、本校の果樹実習のためにと特別に送付してくださった高品質な特殊肥料「みみず太郎100」を使い、農業科2年生が土作りに挑戦した様子をお届けします!

 

・学校ブログはこちら:[日本製紙との産学協定について]

 

【問いから始まった驚きの授業】

 授業の冒頭、まずは生徒たちに謎のサラサラした粉末を配布。

 「これ、何だと思う?」と問いかけてみました。

 実際に触ってみた生徒たちからは、次々とリアルな声が飛び交います。

 

 「めっちゃサラサラ!」

 「なんも臭わんよ?」

 「土……? でも、火山灰じゃね!?」

 「なんかコーヒー粕っぽくない?」

 

 みんなであれこれ予想を膨らませたところで、「実はこれ、ミミズのフンなんだよ」と答えを明かすと、教室からはまさかの真実に「ええーっ!?」と大歓声が!

 女子生徒からは「触っちゃったぁ〜!」と、ちょっとした悲鳴もあがっていました(笑)。

 

【すごいぞ!「みみず太郎100」の秘密】

 ひとしきり盛り上がったあとは、授業担当からこの肥料のすごさについて詳しい説明がありました。

 この「みみず太郎100」は、シイタケを育て終わったあとの廃菌床に牛糞や米糠を混ぜて発酵させ、それをミミズに食べてもらい、その糞土を集めて作られた究極のリサイクル肥料なのです。

 この肥料のおかげで、

 ・土がふっかふかの「団粒構造」になる

 ・有機物たっぷりで、土のなかの微生物のエサが豊富になる

 という素晴らしい効果があることを学び、生徒たちも「触っちゃった」驚きから、一気に「これ、めちゃくちゃ凄い肥料なんだ!」とリスペクトの目に変わっていました。

 

【いざ果樹園地へ!紅甘夏と柚子に想いを込めて】

 仕組みを理解したら、さっそく果樹園地に移動して実習スタートです。

 今回は園地にある5本の紅甘夏(ベニアマナツ)と、10本の柚子(ユズ)の樹をターゲットに施用を行いました。

 プロの担当者の方から「紅甘夏1本につき6〜5kgがベスト」とアドバイスをいただき、今回の5月下旬(1回目)と、次回11月(2回目)の計2回に分けてじっくり施肥していく計画です。

 2年生は、先ほど五感で確かめた肥料を、樹のまわりへ丁寧に一握りずつ撒いていきました。

 生徒たちからは、

 ・「サラサラで全然堆肥っぽくなくて、めっちゃまきやすい!」

 ・「触り心地が良いけど、手にたくさんついて爪の中まで入っちゃいました(笑)」と、実際に泥臭く実習に励んだからこそのリアルな感想が。

「この肥料をたくさん吸って、甘夏たちに元気に育ってほしいな」と願いを込めながら、無事に1回目の施用を終えました。

 今後は、この「みみず太郎100」を施用した紅甘夏と、そうではない通常の樹との間で、葉の繁り方や実の付き方、そして糖度などにどんな変化や違いが現れるのかを、しっかりと継続して観察・比較していく予定です。

 

【オフショット:実習の合間のスマイル】

 実習の合間のひとコマにも、2年生らしい明るい笑顔があふれていました。

 なんと、わずかな休み時間を使って、みんなで四葉のクローバー探しがスタート。

 

 「そんな短時間で見つかるわけが……」と思いきや、

 「あった!見つかった!」とまさかの大発見(笑)。

 

 見つけるんかいっ!と突っ込みたくなるような強運を発揮していました。

 ふかふかの土作りは、さっそく幸せを運んできてくれたようです。

 

 

 また、施用実習を終えた男子生徒たちが仲良く一列に並んで休憩している様子も。

 ひたむきな実習と、こうした爽やかな笑顔のオン・オフの切り替えが、農業科2年生の素敵なところです。

 最先端の企業の技術と地域からの温かい応援を、教室でのワクワクする学びへと繋げ、それを「美味しい農産物」という形で地域へお返しする。

 芦北高校農業科では、こんな地域とのリアルな結びつきを大切にしながら、これからの食と環境を支える知恵を「創造」しています。

 特別にいただいた肥料の力を借りて、これから果樹たちがどんな変化を見せてくれるのか、今から観察の時間が待ちきれません。

 株式会社豊徳様、日本製紙株式会社の皆様、素敵な贈り物を本当にありがとうございました。

 生徒たちの夢と驚き、そして探究心をのせてスタートした新しい土作り、これからの果樹たちの成長をどうぞお楽しみに!

鉛筆 朝のペン 放課後の声 夏を呼ぶ

 来月6月23日(火)・24日(水)の2日間にわたり開催される「令和8年度 第77回熊本県学校農業クラブ連盟年次大会」。

 今年度は私たち芦北高校が「担当校(開催校)」を務めるため、校内では着々と準備が進められています。

 本日は、この記念すべき地元開催の舞台に向けて地道な努力を重ねる、農業科3年の「2人のトップランナー」をご紹介します。

 

【朝:県連会長としての決意と、野菜での全国リベンジ】

 大会の公式ポスターを掲げるのは、熊本県学校農業クラブ連盟の「県連会長」を務める高野くんです。

 「県連会長として発表者の皆さんが発表しやすい環境を作れるように、芦北高校農業クラブ員一同頑張ります」と、頼もしい決意を語ってくれました。

 

 そんな彼は一人の競技者として、7月28日の「農業鑑定競技会(分野:野菜)」での全国出場を目指しています。

 昨年あと一歩で全国を逃した悔しさをバネに、現在は朝早くから自主登校して自習に励む日々。

 隣の席で「農業技術検定」の勉強に集中するクラスメートと互いに刺激し合いながら、「昨年の反省を活かして、今年は全国目指します」と、静かな教室でひたむきにペンを走らせています。

 

【放課後:未来へのビジョンを言葉に宿す学校代表】

 一方、日の傾きかけた放課後の教室でストップウォッチを握り締め、練習に励んでいるのが「意見発表会」で学校代表を勝ち取った内田くんです。

 日頃の学びから導き出した「スマート農業を導入した稲作・畜産の複合経営」という熱いビジョンを、7分間の限られた時間で伝えるため、一言一言の表現力を研ぎ澄ましています。

 体育大会では農業科の団長を務め、空手道部では未経験から全国の舞台に立った内田くん。

 持ち前の不屈の精神を原稿に込め、本番のステージを見据えて熱い声を響かせています。

 

 

 朝の光のなか、クラスメートと机を並べて知識を蓄える高野くん。

 放課後の教室で、自らの言葉と未来に向き合う内田くん。

 

 努力する時間や目指す舞台は違えども、同じ志を持った3年生の2人が、これからの日本の食と農を「創造」する担い手として、今、最高の輝きを放とうとしています。

 大会まであと1ヶ月。

 朝夕の努力を背に突き進む2人への温かい応援を、よろしくお願いいたします。

鉛筆 図と違う 生きた樹が書く 問題集

 「先生、これ本当に切って良いんですか?」

 「ホントにこれ……? もったいなくない?」

 「なんでこれ切るん?」

 本日5月26日(火)、3年農業科の「果樹」の実習園地。

 5月の爽やかな青空とは裏腹に、飛び交っていたのは生徒たちの戸惑いと驚きが入り混じったリアルな声でした。

 

 この日行われたのは、露地「不知火(シラヌイ)」の剪定実習。

 例年に比べると少し時期が遅れての実施となりましたが、最高学年となった生徒たちは、真剣な表情でノコギリを握り締め、樹木へと向かい合いました。

 

【チョークの印を追いかける、ノコギリの音】

 果樹栽培において、実の付き方や樹の寿命そのものを左右する最も重要な実習、それが「剪定(不要な枝を切り落とす実習)」です。

 今回の実習では、指導する実習教師がチョークを使い、切るべき太い枝に一本ずつ「印」を付けていきました。

 生徒たちの役割は、その印をめがけてノコギリを入れ、枝を落とすこと。

 ーーギコギコ、ギコギコ。

 ーーバサッ!

 

 切り方そのものは非常にシンプルで、迷う余地はありません。

 しかし、先生が迷いなく付けるチョークの印を見るたびに、生徒たちのノコギリを持つ手はどこか不思議そうで、実習は慎重に進んでいきます。

 「切る場所」を自分たちで選んでいるわけではないからこそ、一本切り落とすたびに「なぜここを落としたのだろう?」と、その断面を真剣に見つめる生徒たちの目が印象的でした。

 

「さっきの樹とぜんぜん違う!」答え合わせは数年後】

 一本の樹の剪定を終え、隣の樹へと向かった生徒。

 しかし、次の樹の前に立った瞬間、ある重大な事実に気がつきます。

 目の前の枝ぶりをまじまじと見つめながら、ポツリ。

 

 「さっきの樹とぜんぜん違うじゃん!」

 

 これこそが、生きた自然を相手にする農業の難しく、見事な奥深さ。

 教科書のページを開けば、理想的な樹形が綺麗な図やイラストで描かれています。

 しかし、実際の園地にある「不知火」の樹は、一本として同じ形のものはありません。

 成長の歴史、日当たり、風の抜け方――目の前の樹々はまさに、教科書の図とは全く違う「生きた樹が書いた難解な問題集」そのものです。

 しかもこの問題集、普通の勉強とは違って、すぐに答え合わせをすることができません。

 今日落とした枝の判断が正しかったのか、本当の「答え」が出るのは、次の季節、あるいは数年後の実りの姿となって現れます。

 そんな簡単にはいかない時間軸のなかで「切る場所を選ぶ」というのは、先生が何年もかけて泥臭く培ってきた、文字通り職人技の領域なのです。

 

【限られたチャンスだからこそ、泥臭く「解き続ける」

 この「剪定」の機会は、一年にたったの一回。

 高校生活の3年間をすべて合わせても、多くて3回しか訪れない、極めて貴重な瞬間です。

 当然、たった1回や2回、この実習をなぞっただけで、数年後に答えが出る難問を完璧に解き明かせるような世界ではありません。

 「一度でわかることではない」からこそ、生徒たちの頭の中に撒かれた「なぜ?」という探究の種が宝物になります。

 この限られたチャンスのなかで何度も樹に向き合い、泥臭くノコギリを動かし続けること。

 その一瞬一瞬の継続だけが、教科書を超えた本物の技術を育ててくれます。

 

 

 「なぜだろう?」と立ち止まり、生きた自然の複雑さと、時間とともに導き出される答えの重みに感動すること。

 芦北高校農業科では、こうした教科書には載っていないリアルな「問題集」に真っ向から挑むことで、生徒一人ひとりが未来を生きる知恵を「創造」しています。

 

 実習が終わる頃、生徒たちが落とした枝の隙間から、心地よい初夏の光が差し込んでいました。

 数年後の最高の答え合わせを目指して、3年生の挑戦はこれからも続いていきます。

鉛筆 栽培と 癒やしと加工 初夏の午後

 本日5月25日(月)の6限目。

 外は「爽やか」という言葉が吹き飛ぶほど、ジリジリと強い日差しが肌を焼き、じっとしていても汗が止まらないほどの暑さとなりました。

 そんな中、農業科の農場や実習室を少し覗いてみました。

 すると、外の猛暑に負けない熱気で、1年生から3年生までがそれぞれの専門科目に向き合い、まさにバラエティ豊かな「多彩な学び」を同時に展開していました。

 学年を追うごとにステップアップしていく、活気あふれる授業風景をご紹介します。

 

【1年生:農業と環境】栽培を支える土台!植物の器官を学ぶ

 高校生活にもすっかり慣れてきた1年生。

 この時間の「農業と環境」では、学校の農場でも栽培している「スイートコーン(トウモロコシ)」を題材に、植物の器官(体のつくりや各部位の役割)についての学習を行っていました。

 これからの実習や栽培を支える大切な理論の第一歩。

 慣れない専門用語や複雑な植物の構造を真剣にノートに書き留め、丁寧に図を描いていく姿は、すっかり未来の農業人の顔です。

 自分たちの手で美味しい作物を育てるための知識を、しっかりと頭に叩き込んでいました。

 

【2年生:草花】 教科書とワークシートで探究する「園芸療法」

 続いて2年生の「草花」の授業を覗いてみると、栽培技術からさらに一歩進んだ、植物の応用価値について考えていました。

 テーマは、植物をとおして人の心や体を元気にする「園芸療法」です。

 花を育てること、その美しさや香りが人間の心身にどのような好影響をもたらすのか。

 生徒たちは教科書とワークシートに向き合い、集中してペンを走らせていました。

 「私たちが育てる草花で、誰かを笑顔にできるかもしれない」という、植物が持つ福祉的な新しい価値を、一人ひとりが自分のなかにしっかりと落とし込む実直な時間となっていました。

 

【3年生:食品製造】地域を五感で加工する!地元の宝「甘夏」の実習

 最後に3年生の「食品製造」の加工実習室へと足を運ぶと、そこには最高学年らしいプロフェッショナルな空間が広がっていました。

 挑んでいたのは、地元・芦北の誇る特産品である「甘夏」を使った加工実習です。

 衛生管理を徹底した白衣に身を包み、一房ずつ丁寧に剥いていく姿は、まるで本物の食品工場の生産ラインさながら。

 地域の大切な資源を預かり、付加価値の高い製品へと生まれ変わらせるこの実習は、3年生がこれまで磨いてきた技術と集中力が試される瞬間です。

 外の暑さを忘れるほどの緊張感のなか、お換いに声を掛け合いながらテキパキと動く姿に、最上級生としての頼もしさが溢れていました。

 

 1年生の「これからの栽培を支える器官の学習」

 2年生の「知見を深める園芸療法の探究」

 そして3年生の「地域に貢献する製造実習」へ。

 

 同じ時間、同じ暑さのなかでも、芦北高校農業科では多角的な視点から「食と農」を学び、未来を切り拓く力を「創造」しています。

 これからも生徒一人ひとりが個性を輝かせながら成長していく日常を、少しずつ地域にお届けしていきます。

鉛筆 教科なき 畜産の価値 舌で知る

「最初はグー!」実習室に響く、お昼前の熱きバトル】

 「じゃんけんぽん! よっしゃあー!」

 本日5月22日(金)、4限目の終わりを告げるチャイムが鳴る直前、農業科3年生の男子生徒たちが集まるテーブルから、地鳴りのような歓声が湧き上がりました。

 ペコペコに空いたお腹を満たすため、目の前にある極上の肉を誰が勝ち取るか――。

 高校生らしい元気いっぱいのじゃんけんバトルが勃発した瞬間でした。

 一見、賑やかな調理実習のご褒美タイムに見えるこの光景。

 しかし実はこれ、地域の最重要産業を五感すべてで学び尽くす、非常に贅沢で真剣な特別講座の締めくくりだったのです。

 

【専門科目がないからこそ、貪欲に学ぶ「畜産」

 時計を少し巻き戻して、3限目。

 この日、農業科3年生を対象に開催されたのは「あか牛出前講座及び試食会」です。

 水俣市肉用牛繁殖農家の友田勝久様をはじめ、JAあしきた、芦北町農林水産課、芦北地域振興局の皆様をお招きしました。

 現在、芦北高校農業科には「畜産」の独立した専門科目がありません。

 だからこそ、大型モニターに映し出される「黒毛和牛」「褐毛和種(あか牛)」の特徴、枝肉の格付方法、数値を左右する飼料(米ぬか)の影響など、最前線の知識に生徒たちは貪欲に耳を傾け、熱心にメモを取っていました。

 普段の授業では触れる機会の少ない未知の領域は、生徒たちにとって非常に新鮮で、大きな刺激となります。

 

【五感を揺さぶる!4限目の贅沢な試食会】

 知識を頭に叩き込んだ後は、お待ちかねの試食(官能評価)へ。

 用意されたのは、贅沢にも次の2種類のモモサイコロステーキです。

 A:黒毛和牛(あしきた牛)

 B:くまもとあか牛

 お昼ご飯前の空腹という「最高のスパイス」も手伝う中、フライパンにお肉を落とした瞬間、「ジューッ!」と弾ける小気味よい音が室内に響き渡ります。

 立ち上る芳醇で香ばしい香りの湯気が鼻腔をくすぐり、じわじわとあふれ出る美しい肉汁のきらめきが食欲をそそります。

 トングを持つ手にも、お肉の柔らかさと確かな弾力が伝わってきました。

 焼く工程までは、みんなで「ワイワイ」と笑顔を交わしながら、素材そのものの破壊力抜群の香りに五感を刺激されていきました。

 

【一転して「静寂」へ。自分の味覚と向き合う時間】

 しかし、いざ試食が始まると、先ほどまでの賑やかさが嘘のように、実習室は一瞬にして心地よい緊張感に包まれました。

 「普段、2種類のお肉を食べ比べすることはあまりないので、すごく楽しい!」

 そんなワクワクを胸に秘めながらも、生徒たちは一切れごとに口直しのお水を飲み、無言で自分の味覚と実直に向き合います。

 これこそが、味の違いを正しく見極める「消費者型官能評価(味覚テスト)」の真剣勝負です。

 試食を終えるとすぐに各自タブレットへと向かい、集中した様子でアンケート調査票へ評価を入力していきました。 

 

その後、感想を聞くと実際に味わった生徒たちからは、

 

 「わたしはあしきた牛の方が好き。味が濃くジューシー!」

 「私はあか牛派。柔らかくて食べやすかった!」

 「真剣に悩んだけど、結局どっちもうまい!」

 

 といった確かな舌応えが。

 

 ――そして、すべてのデータ入力を終えて張り詰めていた緊張の糸が解けた直後、冒頭の賑やかな「じゃんけんバトル」へと繋がったのです。

 

 地域の豊かな自然と生産者の熱意が育んだ、誇るべき2つのブランド牛。

 普段は学ぶ機会のない「畜産」という分野に触れ、楽しむところは全力で楽しみ、見極めるときはプロの目で真剣に向き合うという、メリハリのある素晴らしい実習となりました。

 命をいただく感謝の気持ちを胸に、今回の学びをこれからの探究へと繋げ、地域の未来を「創造」していく3年生。

 素晴らしい刺激をくださった講師の皆様、本当にありがとうございました!

鉛筆 小満の 雨に重なる 応援歌

 暦の上では本日、二十四節気の「小満(しょうまん)」を迎えました。

 あらゆる生命が次第に満ち満ちていく、という意味があるこの季節。

 近頃は真夏日を記録するほどの厳しい暑さが続いていましたが、小満の当日はあいにくの、いえ、万物を潤す恵みの雨模様となりました。

 真っ青な空に響く蝉の鳴き声すら予感させたこれまでの熱気を、優しく静めるように降り注ぐ雨。

 農場を歩けば、この潤いを待っていたかのように植物たちが生き生きと緑を濃くし、まさに命が「満ちていく」エネルギーを全身で放っています。

 

■ 学校全体で繋ぐ、応援のバトン

 雨の涼しさとは裏腹に、校内は今、静かな熱気に包まれています。

 いよいよ来週には、高校総体、そして高校総合文化祭(総文祭)の開会式が控えています。

 ふと図書館に足を運ぶと、そこには総体・総文に向けて用意された「部活小説」の特設コーナーが設けられていました。

 ページをめくれば、そこにあるのは主人公たちのひたむきな汗と涙。

 これから大舞台へ臨む仲間たちの背中を、言葉の力で後押ししたい――そんな温かい想いが、ディスプレイから伝わってくるようです。

 グラウンドや体育館、部室棟だけでなく、この雨の日の静かな図書館まで。

 学校全体がひとつのチームとなって、次なる舞台へ挑む生徒たちを盛り上げる。

 そんな一体感が校内のあちこちに満ち満ちています。

 

■ 実りへの確かな一歩

 運動部・文化部を問わず、それぞれの部活動に所属する生徒たちにとっては、これまでの努力の集大成を発揮する特別な舞台です。

 週4日のタフな実習や課題研究をこなし、雨にも負けず、放課後はそれぞれの場所で一歩も引くことなく汗を流し、また感性を磨く。

 じりじりと照りつける太陽のもとでも、今日のような雨の中でも、ひたむきに自らを高めようとする生徒たちの姿は、農場で力強く根を張る植物たちと見事に重なります。

 

 大切なのは、結果の先にあるもの。

 これまでの努力のすべてを注ぎ込み、自らの力を100%出し切ること。

 激しい一戦のなかでも、繊細な表現や発表のなかでも、壁を乗り越えた先にある「やりきった」という本物の充実感を、その肌で、心で掴み取ってくれることこそが、私たちの一番の願いです。

 雨が万物を潤し、さらなる成長を促すこの良き日に、自分の限界に挑戦する芦北高校の生徒たち。

 来週の総体・総文祭という大きな舞台で、彼らの情熱が最高の形で完全燃焼することを、農業科一同、心から応援しています。

 

 「小満(しょうまん)」

 満ちゆく緑と、雨にも負けない生徒たちのひたむきな情熱に未来を重ねる芦北高校より。