日誌

芦高ブログ

鉛筆 栽培と 癒やしと加工 初夏の午後

 本日5月25日(月)の6限目。

 外は「爽やか」という言葉が吹き飛ぶほど、ジリジリと強い日差しが肌を焼き、じっとしていても汗が止まらないほどの暑さとなりました。

 そんな中、農業科の農場や実習室を少し覗いてみました。

 すると、外の猛暑に負けない熱気で、1年生から3年生までがそれぞれの専門科目に向き合い、まさにバラエティ豊かな「多彩な学び」を同時に展開していました。

 学年を追うごとにステップアップしていく、活気あふれる授業風景をご紹介します。

 

【1年生:農業と環境】栽培を支える土台!植物の器官を学ぶ

 高校生活にもすっかり慣れてきた1年生。

 この時間の「農業と環境」では、学校の農場でも栽培している「スイートコーン(トウモロコシ)」を題材に、植物の器官(体のつくりや各部位の役割)についての学習を行っていました。

 これからの実習や栽培を支える大切な理論の第一歩。

 慣れない専門用語や複雑な植物の構造を真剣にノートに書き留め、丁寧に図を描いていく姿は、すっかり未来の農業人の顔です。

 自分たちの手で美味しい作物を育てるための知識を、しっかりと頭に叩き込んでいました。

 

【2年生:草花】 教科書とワークシートで探究する「園芸療法」

 続いて2年生の「草花」の授業を覗いてみると、栽培技術からさらに一歩進んだ、植物の応用価値について考えていました。

 テーマは、植物をとおして人の心や体を元気にする「園芸療法」です。

 花を育てること、その美しさや香りが人間の心身にどのような好影響をもたらすのか。

 生徒たちは教科書とワークシートに向き合い、集中してペンを走らせていました。

 「私たちが育てる草花で、誰かを笑顔にできるかもしれない」という、植物が持つ福祉的な新しい価値を、一人ひとりが自分のなかにしっかりと落とし込む実直な時間となっていました。

 

【3年生:食品製造】地域を五感で加工する!地元の宝「甘夏」の実習

 最後に3年生の「食品製造」の加工実習室へと足を運ぶと、そこには最高学年らしいプロフェッショナルな空間が広がっていました。

 挑んでいたのは、地元・芦北の誇る特産品である「甘夏」を使った加工実習です。

 衛生管理を徹底した白衣に身を包み、一房ずつ丁寧に剥いていく姿は、まるで本物の食品工場の生産ラインさながら。

 地域の大切な資源を預かり、付加価値の高い製品へと生まれ変わらせるこの実習は、3年生がこれまで磨いてきた技術と集中力が試される瞬間です。

 外の暑さを忘れるほどの緊張感のなか、お換いに声を掛け合いながらテキパキと動く姿に、最上級生としての頼もしさが溢れていました。

 

 1年生の「これからの栽培を支える器官の学習」

 2年生の「知見を深める園芸療法の探究」

 そして3年生の「地域に貢献する製造実習」へ。

 

 同じ時間、同じ暑さのなかでも、芦北高校農業科では多角的な視点から「食と農」を学び、未来を切り拓く力を「創造」しています。

 これからも生徒一人ひとりが個性を輝かせながら成長していく日常を、少しずつ地域にお届けしていきます。

鉛筆 教科なき 畜産の価値 舌で知る

「最初はグー!」実習室に響く、お昼前の熱きバトル】

 「じゃんけんぽん! よっしゃあー!」

 本日5月22日(金)、4限目の終わりを告げるチャイムが鳴る直前、農業科3年生の男子生徒たちが集まるテーブルから、地鳴りのような歓声が湧き上がりました。

 ペコペコに空いたお腹を満たすため、目の前にある極上の肉を誰が勝ち取るか――。

 高校生らしい元気いっぱいのじゃんけんバトルが勃発した瞬間でした。

 一見、賑やかな調理実習のご褒美タイムに見えるこの光景。

 しかし実はこれ、地域の最重要産業を五感すべてで学び尽くす、非常に贅沢で真剣な特別講座の締めくくりだったのです。

 

【専門科目がないからこそ、貪欲に学ぶ「畜産」

 時計を少し巻き戻して、3限目。

 この日、農業科3年生を対象に開催されたのは「あか牛出前講座及び試食会」です。

 水俣市肉用牛繁殖農家の友田勝久様をはじめ、JAあしきた、芦北町農林水産課、芦北地域振興局の皆様をお招きしました。

 現在、芦北高校農業科には「畜産」の独立した専門科目がありません。

 だからこそ、大型モニターに映し出される「黒毛和牛」「褐毛和種(あか牛)」の特徴、枝肉の格付方法、数値を左右する飼料(米ぬか)の影響など、最前線の知識に生徒たちは貪欲に耳を傾け、熱心にメモを取っていました。

 普段の授業では触れる機会の少ない未知の領域は、生徒たちにとって非常に新鮮で、大きな刺激となります。

 

【五感を揺さぶる!4限目の贅沢な試食会】

 知識を頭に叩き込んだ後は、お待ちかねの試食(官能評価)へ。

 用意されたのは、贅沢にも次の2種類のモモサイコロステーキです。

 A:黒毛和牛(あしきた牛)

 B:くまもとあか牛

 お昼ご飯前の空腹という「最高のスパイス」も手伝う中、フライパンにお肉を落とした瞬間、「ジューッ!」と弾ける小気味よい音が室内に響き渡ります。

 立ち上る芳醇で香ばしい香りの湯気が鼻腔をくすぐり、じわじわとあふれ出る美しい肉汁のきらめきが食欲をそそります。

 トングを持つ手にも、お肉の柔らかさと確かな弾力が伝わってきました。

 焼く工程までは、みんなで「ワイワイ」と笑顔を交わしながら、素材そのものの破壊力抜群の香りに五感を刺激されていきました。

 

【一転して「静寂」へ。自分の味覚と向き合う時間】

 しかし、いざ試食が始まると、先ほどまでの賑やかさが嘘のように、実習室は一瞬にして心地よい緊張感に包まれました。

 「普段、2種類のお肉を食べ比べすることはあまりないので、すごく楽しい!」

 そんなワクワクを胸に秘めながらも、生徒たちは一切れごとに口直しのお水を飲み、無言で自分の味覚と実直に向き合います。

 これこそが、味の違いを正しく見極める「消費者型官能評価(味覚テスト)」の真剣勝負です。

 試食を終えるとすぐに各自タブレットへと向かい、集中した様子でアンケート調査票へ評価を入力していきました。 

 

その後、感想を聞くと実際に味わった生徒たちからは、

 

 「わたしはあしきた牛の方が好き。味が濃くジューシー!」

 「私はあか牛派。柔らかくて食べやすかった!」

 「真剣に悩んだけど、結局どっちもうまい!」

 

 といった確かな舌応えが。

 

 ――そして、すべてのデータ入力を終えて張り詰めていた緊張の糸が解けた直後、冒頭の賑やかな「じゃんけんバトル」へと繋がったのです。

 

 地域の豊かな自然と生産者の熱意が育んだ、誇るべき2つのブランド牛。

 普段は学ぶ機会のない「畜産」という分野に触れ、楽しむところは全力で楽しみ、見極めるときはプロの目で真剣に向き合うという、メリハリのある素晴らしい実習となりました。

 命をいただく感謝の気持ちを胸に、今回の学びをこれからの探究へと繋げ、地域の未来を「創造」していく3年生。

 素晴らしい刺激をくださった講師の皆様、本当にありがとうございました!

鉛筆 小満の 雨に重なる 応援歌

 暦の上では本日、二十四節気の「小満(しょうまん)」を迎えました。

 あらゆる生命が次第に満ち満ちていく、という意味があるこの季節。

 近頃は真夏日を記録するほどの厳しい暑さが続いていましたが、小満の当日はあいにくの、いえ、万物を潤す恵みの雨模様となりました。

 真っ青な空に響く蝉の鳴き声すら予感させたこれまでの熱気を、優しく静めるように降り注ぐ雨。

 農場を歩けば、この潤いを待っていたかのように植物たちが生き生きと緑を濃くし、まさに命が「満ちていく」エネルギーを全身で放っています。

 

■ 学校全体で繋ぐ、応援のバトン

 雨の涼しさとは裏腹に、校内は今、静かな熱気に包まれています。

 いよいよ来週には、高校総体、そして高校総合文化祭(総文祭)の開会式が控えています。

 ふと図書館に足を運ぶと、そこには総体・総文に向けて用意された「部活小説」の特設コーナーが設けられていました。

 ページをめくれば、そこにあるのは主人公たちのひたむきな汗と涙。

 これから大舞台へ臨む仲間たちの背中を、言葉の力で後押ししたい――そんな温かい想いが、ディスプレイから伝わってくるようです。

 グラウンドや体育館、部室棟だけでなく、この雨の日の静かな図書館まで。

 学校全体がひとつのチームとなって、次なる舞台へ挑む生徒たちを盛り上げる。

 そんな一体感が校内のあちこちに満ち満ちています。

 

■ 実りへの確かな一歩

 運動部・文化部を問わず、それぞれの部活動に所属する生徒たちにとっては、これまでの努力の集大成を発揮する特別な舞台です。

 週4日のタフな実習や課題研究をこなし、雨にも負けず、放課後はそれぞれの場所で一歩も引くことなく汗を流し、また感性を磨く。

 じりじりと照りつける太陽のもとでも、今日のような雨の中でも、ひたむきに自らを高めようとする生徒たちの姿は、農場で力強く根を張る植物たちと見事に重なります。

 

 大切なのは、結果の先にあるもの。

 これまでの努力のすべてを注ぎ込み、自らの力を100%出し切ること。

 激しい一戦のなかでも、繊細な表現や発表のなかでも、壁を乗り越えた先にある「やりきった」という本物の充実感を、その肌で、心で掴み取ってくれることこそが、私たちの一番の願いです。

 雨が万物を潤し、さらなる成長を促すこの良き日に、自分の限界に挑戦する芦北高校の生徒たち。

 来週の総体・総文祭という大きな舞台で、彼らの情熱が最高の形で完全燃焼することを、農業科一同、心から応援しています。

 

 「小満(しょうまん)」

 満ちゆく緑と、雨にも負けない生徒たちのひたむきな情熱に未来を重ねる芦北高校より。

鉛筆 売る側の 凄さ教わる 焼き上がり

 本日の農業科2年生「食品製造」の実習室は、いつも以上にピリッとした緊張感と、甘く香ばしい香りに包まれました。

 挑戦したのは、洋菓子の定番でありながら、高度な技術と集中力を要する「シュー・ア・ラ・クレーム(シュークリーム)」の製造です。

 

【ただ混ぜるのではなく、五感での観察】

 中に詰めるカスタードクリーム、そして土台となるシュー生地。

 どちらの製造においても、最大のポイントは「ただ機械的に混ぜるのではない」という点にあります。

 焦げ付きやダマを防ぎ、なめらかに仕上げるため、生徒たちは絶えず鍋底やボウルの感触に集中し、全体の色の変化が均一であるかを注意深く観察し続けました。

 木べらを掲げて状態を確認するその目は、まさにプロの職人そのものです。

 

 

【膨らむための絶対条件「糊化」(こか)への挑戦】

 さらに、シュー・ア・ラ・クレームには「生地が大きく美しく膨らむこと」という厳しい最低条件があります。

 鍋でバターを完全に沸騰させ、一気に小麦粉を投入して手早く混ぜることで、熱によりデンプンを結合させる「糊化(こか)」を促します。

 ここからが、まさに「食品製造」という名の実験室。

 材料の正確な「計量」はもちろん、火からおろす一瞬の「タイミング」、生地の温度を見極めながら卵を加えていく最適な「割合」、そして木べらを通じて指先に伝わる生地の粘り気の「感覚」まで。

 そのすべてが論理的な条件で成り立っています。

 どれか一つでも数値や感覚が狂えば、オーブンの中で生地は絶対に膨らみません。

 「食品製造」とは、五感と知識でコントロールする極めて繊細な「化学」の世界です。

 

【見事な焼き上がり、解き明かされる明暗】

 多くの班では、オーブンのガラス越しに生地がふっくらと黄金色に立ち上がり、見事なシュー皮が焼き上がりました。

 綺麗に膨らんだ歓声のなか、なめらかなカスタードをたっぷりと絞り入れ、美しい「シュー・ア・ラ・クレーム」が次々と完成していきます。

 

 しかし、実習を行った10班のうち、1班だけどうしても上手く膨らまない班がありました。

 原因を突き詰めると、生地作りの工程におけるわずかな「火加減」のズレ。

 周囲が成功する中で理想の形には届かず、悔しさが残る結果となりましたが、いざ試食してみると

 ――「食べたら美味しい!」と、味の仕上がりには笑みがこぼれました。

 

 実習を終えた生徒たちからは、「コンビニやスーパーで何気なく並んでいるシュークリームを見る目が変わった」という声が。

 いつも均一に、美しく膨らんでいる商品の裏にある職人技や企業努力の凄さを、身をもって実感しました。

 成功から自信を得るだけでなく、失敗から原因を分析し、日常の景色さえも学びに変えていく。

 自らの手と五感を使って、新しい価値や気づきを「創造」していく2年生の、さらなる成長が楽しみになる実習となりました。

鉛筆 ボタンなき 三本の足 地に刺さる

 

── 相棒図鑑 其の四  「三脚脚立」 ──

(学校ブログ:相棒図鑑 其の参 「柑橘選果機」はこちら)

 

 果樹園の隅、出番を待つアルミニウムの塊があります。

 エンジンもなければ、華やかなハイテク機能もありません。

 状態を知らせる液晶画面も、始動するためのスイッチやボタンすら、そこには一切存在しないのです。

 しかし、彼らがいなければ、私たちは樹の頂で「一番良い顔」をして実る果実に触れることすら叶いません。

 今回の相棒は、不動の構えで高みを目指す「三本足の修行僧」、三脚脚立(さんきゃくきゃたつ)です。

 

 本校の「修行場(果樹園)」には、可愛らしい3段から、見上げるような12段まで、歴代の相棒たちが揃っています。

 彼らの最大の特徴は、四本足ではなく「三本足」であること。

 不整地や傾斜地という不安定な大地において、一点の迷いもなく地面を確実に捉える。

 それは、自然という厳しい道場で生き抜くために研ぎ澄まされた、究極の機能美です。

 

 時には、木の枝をまたぐようにして、一本の後脚を樹の懐深くへと滑り込ませることもあります。

 もし彼らに心があるならば、自らの身を挺して、乗り手が最も安全に空へと手を伸ばせる「座禅の場(足場)」を足元で整えてくれているのかもしれません。

 この修行僧と呼吸を合わせ、その不動の境地を共有するには、単なる「道具扱い」を超えた、現場に対する深い畏敬の念が必要なのです。

 しかし、この相棒は実直であると同時に、掟(ルール)に極めて厳格な側面も持っています。

 もし乗り手が慢心し、設置の甘さやチェーンの緩みを見過ごせば、修行僧は沈黙したまま、静かにその構えを崩します。

 

 ほんの数センチのズレ、あるいは「これくらい大丈夫だろう」という甘い見通し。

 それは修行僧にとって、最も許しがたい不作法です。

 一瞬の揺らぎとともに地面へと叩きつけられる衝撃は、慢心した乗り手への「修行僧からのお仕置き」。

 怪我と隣り合わせのその厳しさは、命を預かる現場の重さを教え込む、寡黙な教育者の姿でもあります。

だからこそ、私たちは彼らと向き合うとき、決して欠かさない「対話(儀式)」があります。

「間のチェーン」をピンと張り、足が広がるのを防ぐこと。
「設置の角度」を厳しく見極め、安定を確保すること。
「天板(一番上)には決して乗らない」という、相棒との絶対の掟。

 生徒たちが踏みしめるステップの擦り減りは、歴代の先輩たちが安全と向き合い、一歩ずつ高みを目指した「修行の足跡」そのものです。

 派手な主役ではないけれど、誰かが理想の果実を求めて「高度」を上げるとき、必ずその足元を支えている。

 厳しさがあるからこそ、本物の信頼が生まれる。

 芦北高校の果樹園には、今日も静かに、そして力強く大地を掴む「相棒」の姿があります。

「道具の限界を知り、その掟を敬う。安全を確保するその手間こそが、自分と仲間を守るプロへの第一歩です」