日誌

芦高ブログ

鉛筆 二十余年 繋ぐ想いや 大寒桜(おおかんざくら)

 先日、本校では卒業式が挙行され、3年生が晴れやかな表情で学び舎を後にしました。

 先輩たちの賑やかな声が消え、少しだけ静かになった実習棟。

 しかし、農場の時計は止まることなく、次なる季節の幕開けを告げています。

 

 本日3月5日は、二十四節気の「啓蟄(けいちつ)」を迎えました。

 大地が温まり、冬ごもりをしていた虫たちが土の窓を叩いて、次々と顔を出し始める季節です。

 

「三寒四温」の雨と、本格始動の号令

 ここ最近は、暖かい日が続いたかと思えば、急に冷え込む雨が降る……。

 まさに「三寒四温」を地で行くような天気が続いています。

 一雨ごとに寒さが和らぎ、その雨が潤いとなって、土の下で眠っていた命を力強く揺り起こしているようです。

 農業の世界では、この啓蟄こそが「本格始動」の号令。

 果樹園の草刈りに向かうと、そこには鮮やかな「菜の花」が咲き誇り、その蜜を求めて「ミツバチ」が忙しく羽音を響かせていました。

 しかし、命が動き出すのは喜ばしいことばかりではありません。

 暖かさと共に、作物たちを脅かす「病害虫」もまた活動を始めます。

 芽吹きの美しさに目を細める間もなく、防除や観察といった「守り」の作業に追われる日々が始まります。

 この地道な戦いこそが、豊かな実りを支える屋台骨。

 本格的な農繁期の到来に、身の引き締まる思いです。


■ 二十四年の時を繋ぐ、桜の記憶

 果樹園で作業をしていると、ふと山手の方から淡い色彩が目に飛び込んできました。

 「あぁ、もうそんな時期か」と斜面の上を仰ぎ見れば、果樹園のさらに先にある「峰崎さくらの森」が、山肌を優しく染め上げています。

 誘われるように坂を登り、森へと足を運んでみると、そこにはすでに淡いピンク色の花を咲かせた、美しい桜の姿がありました。

 傍らには、「大寒桜(オオカンザクラ)」という表記と共に、「大松 茂」という名が記されていました。

 本校林業科の職員である大松先生です。

 お話を伺うと、この桜は創立80周年の記念事業として植樹されたものだそうです。

 今から約24年前、当時の先生方や生徒たちが、未来の芦北高校を想って植えた小さな苗木が、今ではこうして立派な樹となり、春の訪れを一番に伝えてくれています。


■ 受け継がれる「守り」のバトン

 3年生が卒業し、新しい季節が始まります。

 「さくらの森」がそうであるように、私たちが日々向き合うこの農場も、多くの先輩方が手塩にかけて繋いできてくださったものです。

 その一本一歩の歩みを、これからは2年生(新3年生)が責任を持って引き継いでいきます。

 三寒四温の雨が土を潤し、やがて豊かな実りを結ぶように。

 24年という時間の経過と、そこに流れる伝統の継承を深く感じながら、春の良き日を噛み締めています。


「啓蟄(けいちつ)」

 羽音とともに、明日への希望が膨らむ芦北高校より。