校長室からの風

私たちは「中間走者」です ~ 転・退任式

 人事異動は、私たち県立学校教職員にとっては「定め」です。この度の人事異動に伴い、下記の14人の職員が西高から転任・退任することとなりました。勤務期間の長短はありますが、私たち14人、西高生の成長に関わり、保護者・地域の皆様のご協力、ご支援を受けて西高で勤務できたことは大きな喜びです。

 私たちは「中間走者」の役割を担っていると思います。前任者からバトンを受け、次の走者へ引き継ぐまで走り切ることが使命です。皆様のご期待に応えられたどうか自信はありませんが、全力を尽くしたという気持ちです。

 令和6年に西高は創立50周年を迎えます。私たちの学校、熊本西高がさらに発展していくことを願い、転・退任の挨拶といたします。

(教科等・職名) 〔氏  名〕    (転出先等)

 

1  審議員      濵田 敏彦    八代高校・中学校(審議員)

2 主幹教諭    上渕 優     県立教育センター(主幹)

3 国語・教諭   森山 幹俊    北稜高校

4 地歴・教諭   寺尾 寛紀    菊池高校

5 数学・教諭   二子石 哲也   天草拓心高校(本渡校舎)

6 保体・教諭   西田 怜     高森高校

7 事務職員    木村 未佳    上天草市立湯島小学校

8 理科・講師   松本 肇     阿蘇中央高校

9 英語・講師   坂口 希     退職

10 公民・非常勤  本田 眞美    退職

11 英語・非常勤  山﨑 敬博    熊本高校(非常勤講師)

12 英語・非常勤  足立 桃花    退職

〔定年退職〕

13 理科・実習教師 松村 友美    熊本西高(再任用)

14 校長      粟谷 雅之

「校長室からの風」

  令和5年3月28日(火) 熊本西高校「転・退任式」(体育館)

3月24日、修了式 ~ 令和4年度修めの日

   3月24日(金)は、3学期の終業式であると共に令和4年度の修了式、修めの日です。そして、午後には合格者説明会が実施され、来年度の新入生約340人が保護者と共に来校してくれました。

 午前中、スタジオで表彰式と修了式を実施、それをオンラインで各教室と結びました。柔道部はじめeスポーツ部、ウエイトリフティング部、書道部など、そして成績優秀者(代表)、皆勤賞(代表)の生徒たちに賞状等を渡し、その努力を称えました。特に、女子柔道団体は全国選抜大会でベスト8の立派な成績を収め、念願の日本1への可能性が高まってきました。

 修了式での校長からのメッセージは、3年余りのパンデミックによって、一人一台のタブレット端末配備に象徴されるように学校教育のデジタル化が急速に進んだことをテーマとしました。私自身、まだ先の未来の教育と思っていたものが、一気に歴史の針が回りました。後戻りすることはありません。

 以前の学習は、まず暗記し、覚えることで大量の知識を身につけることが求められました。それが劇的に変化しました。人間の能力をはるかに超えたコンピュータの記憶力や計算力、情報量を利用することで、暗記や覚える学習はあまり意味がなくなりました。

 私は近視ですから、眼鏡をかけ、自分の身体の機能の弱い部分を補っています。これと同じように、タブレットやスマートホンは皆さんの身体の機能を拡張、強化してくれるもので、身体の一部のようなものです。体の一部の機能であるコンピュータに何をしてもらうのか、それを活用して、どんなことを探究していくのか。これからの学びは問われます。

 気を付けてほしいことは、学習がデジタル化したからといって、ひとりで内向きになってはいけません。一人でコンピュータゲームを楽しむのではないのです。ICTとは情報通信技術です。コンピュータで情報を共有し、多くの人とつながり、協働の学びを進めていくことです。すなわちチームワークがますます必要になってきます。コンピュータを使う基本的なマナーとモラル、そして相手を思いやる気持ちが大切になります。ネットの向こうに生身の人間がいるという事実を忘れないでください。

 デジタル化が進む社会だからこそ、スポーツをはじめ自ら身体を動かし、感受性や身体感覚を研ぎ澄ますことが必要となります。一人でスマホの画面を見て笑うのではなく、マスクを外し、学校の活動の中で友達と共に笑い合う場面が新年度は増えることを期待します。

 学校だからこそ出来る、お互いが認め合い、励まし合い、笑い合う時間が西高で広がることを願っています。

 「校長室からの風」

     表彰式、修了式、そして生徒会から新しい女子の制服モデル発表

なぎなた部と柔道部が全国選抜大会へ ~ 全国大会出場推戴式

 金峰山の山麓に霊巌洞(れいがんどう)と呼ばれる洞窟があります(西区松尾町)。江戸時代初期の剣豪、宮本武蔵がこの洞窟にこもり、兵法の書「五輪書」を著わしたことで知られています。二刀流の使い手、あるいは巌流島の決闘で有名な宮本武蔵は播磨国(現在の兵庫県)の出身で若いころは諸国をめぐったようですが、最後は熊本の大名である細川家に招かれ、61歳で亡くなるまでの晩年の5年間を熊本で過ごしました。武蔵は単なる武芸者ではありません。能を舞い、水墨画を描き、そして剣の極意を伝える書物を著わしました。文武両道という言葉はまさに武蔵のためにあるようなものです。強いだけの剣士から、高い精神的境地に達し、その精神を芸術や書物に表現できる達人になったからこそ、後の世の人にも尊敬されることになったのでしょう。武蔵の墓は北区の武蔵塚が有名ですが、実は西の武蔵塚と呼ばれる、もう一つの墓が、西区島崎にあります。霊巌洞や西の武蔵塚など、宮本武蔵はこの西区にかかわりの深い人物です。

 武蔵が亡くなって400年近く立ちますが、その文武両道の精神を受け継ぐのが西高だと私は思ってい

ます。西高の体育コースが平成3年に発足するにあたって、その専攻競技として、柔道、剣道、なぎなたの武道が選ばれ、熊本県の武道の拠点校となったことの歴史的背景には武蔵の存在があると思っています。

 あらためて、なぎなた部と柔道部が全国選抜大会に出場することを、全校生徒の皆さんと共に喜びたいと思います。

 なぎなた部は全国大会常連校で、熊本西高の名は高校なぎなた競技では広く知られています。他校からマークされ、重圧もかかるでしょう。しかし、伝統校の誇りを胸に、凛として戦ってください。

 柔道部は、3年ぶりの全国選抜大会への出場です。県大会では決勝で九州学院と対戦し、全員が攻めの姿勢を貫き、大将戦で劇的な逆転勝ちをおさめました。武道の聖地である東京の日本武道館が会場です。部員一丸となり、挑戦者として力を発揮してきてください。

 厳しい勝負の世界を生き抜いた宮本武蔵は多くの言葉を残しています。

 「心 つねに 道を離れず」

 「われ、神仏を敬い、神仏を頼らず」

 「千日の稽古をもって鍛となし、万日の稽古をもって錬となす」

 「われ事において 後悔せず」

 武蔵の言葉をもって励ましの言葉とします。

「校長室からの風」

      なぎなた部        女子柔道部      西峰会(同窓会)から激励金

若人の旅立ちに立ち会える喜び ~ 熊本西高校第46回卒業式

  「朝夕仰ぐ金峰の 雄姿に高き 希望(のぞみ)あり ~ 」

 卒業生の校歌斉唱の声の大きさに驚きました。その声量、そしてエネルギーで会場の体育館が揺れるようでした。マスクを付けての校歌斉唱は卒業式のクライマックスとなりました。入学以来、コロナ禍が長期化し、学年全体で校歌斉唱する機会はこれまでありませんでした。昨日2月28日の卒業式予行では、歌詞カードを見ながらの生徒も多く、斉唱もぎこちない感じでした。それが一日で見違えるほどの変わりようで、若さの可能性を感じました。

 3月1日(水)、熊本西高校第46回卒業式を挙行しました。コロナウイルス感染症者の減少に伴い、ようやく規制もゆるみ、卒業生の入退場はマスクを外して行いました。着席中は個人の自由に任せ、校歌斉唱の時だけはマスク着用を求めました。新型コロナウイルスの世界的流行(パンデミック)の始まりと共に入学し、その断続的な感染の波に高校生活が翻弄された生徒たちは、最後の卒業式においても完全にマスクを外すことはできませんでした。

 卒業生総代の濱﨑さん(前生徒会長)は、答辞の中で、普通の高校生活を送ることができなかった無念さを述べると共に、そのような困難な社会環境の中で、前向きな気持ちで工夫して自分たちで学校生活を創っていったと述べました。そして結びに、自分たちを励まし、支えてくれた家族、教職員等への深い感謝の気持ちを伝えてくれました。

 式が終わり退場する時、保護者席に向かって、「おとうさん、おかあさん、これまで有難う」とクラスごとに大きな声で挨拶する光景は、思わず胸が熱くなります。きっと保護者の方々の感慨はひとしおのことと思われます。

 パンデミックで大きな影響を受けた高校生活で、彼らは特別なものを学んで卒業していくと信じます。18歳の新成人として社会へ出ていきます。パンデミックが終わっても元に戻してはいけないことがあると思います。新しい生活様式のあり方、即ち未来を、この卒業生たちの世代が創っていってくれるのではないかと期待しています。

 若人の旅立ちに立ち会えることは私たち教職員の最大の喜びです。

 卒業おめでとう。

 「校長室からの風」

              熊本西高校第46回卒業式の様子

卒業生の皆さんへ ~ 同窓会入会式、表彰式、卒業式予行の実施

 卒業式を明日に控え、2月28日に同窓会(西峰会)入会式、表彰式、卒業式予行を体育館で行いました。表彰式では、「がんばる高校生」をはじめ高校生活で顕著な実績を残した皆さんに賞状を渡しました。受賞された皆さんの努力を称えたいと思います。

 さて、明日は、皆さん全員が高等学校卒業証書を手にすることになります。皆さんたちが考えている以上に、高等学校卒業は重要な資格です。普通自動車運転免許も大切ですが、その重要性は比較にならないと思います。運転免許は君たちなら1か月半から2か月で取得できるでしょう。しかし、高等学校卒業資格は最低3年必要です。定時制高校なら4年かかります。皆さんは日々登校し、授業に臨み、学習を積み重ねて3年間で96単位の履修科目を修得しました。そしてホームルーム活動、生徒会活動、学校行事に参加し、また各自の部活動にも取り組みました。その成果として熊本西高校の卒業資格を得ようとしているのです。このことを「よくやった」と自分で自分をほめてほしいと思います。大切なのは自己評価です。高校卒業後は、進む道は多様に分かれ、他人と比較することに意味はありません。自分はどんな生き方をしていくのか、自分自身に対して問い続けてほしいと思います。

 急速なICT化やグローバル化など社会が大きく流動化している現代において、学びが終わるということはありません。高校の教育課程が終了しただけです。生きるとは自ら学び続けることです。

 最後に一つ伝えたいことがあります。明日、皆さんが手にする卒業証書の一人ひとりの氏名及び生年月日は、書道の山下綾先生が一枚一枚、筆で墨書されたものです。手は心につながっていると思います。私たち教職員一同の祝福の思いを凝縮して山下先生が250人全員の名前と誕生日を丁寧に手書きされました。そういう意味でも、唯一無二の卒業証書なのです。

 皆さん、卒業おめでとう。

「校長室からの風」

            西高同窓会(西峰会)への入会式の様子

「eスポーツで壁を超える」 ~ 崇城大学eスポーツスタジオのオープン

 崇城大学IOT・AIセンター内にあるeスポーツスタジオに足を踏みいれた瞬間、未来空間にいるような感覚に包まれました。縦6m、横11m、高さ7mの部屋には放送・音響の最新鋭機材と共に、高性能のコンピュータが並び、壁面はスクリーンで、メタバース(仮想空間)と連動したスタジオが創り出されていました。現実空間の壁を超えるような、不思議な揺らぎを感じる空間です。

 2月10日(金)午後、崇城大学IOT・AIセンターに新しくeスポーツスタジオがオープン。「eスポーツで壁を超える」と銘打たれた、そのオープニングイベントに熊本西高eスポーツ部が招待され、6人の代表生徒と顧問の有馬教諭、そして校長の私が参加しました。本校eスポーツ部は県立学校として先駆けて令和元年度に発足。eスポーツのeとはelectronic(電子)の略であり、対戦型コンピュータゲームです。誕生して4年目となりますが、現在、約50人の部員が活動を展開しています。サイエンス情報科の生徒が多いのですが、普通科からも入部が増えており、「eスポーツ部があることが、西高を選んだ理由の一つです」と多くの部員が答えてくれます。

 今回のオープニングイベントには、eスポーツのまちづくりへの影響に関心を持ち、崇城大学情報学部と連携を深めておられる山鹿市議会から議員の皆さんが参加されました。そして、議員の皆さんと、崇城大学eスポーツサークルの学生、そして西高eスポーツ部の生徒の対戦から始まりました。今回は議員さんと大学生、あるいは高校生が2人組をつくり、2人対2人の対戦形式でした。少し練習されてきたとはいえ、中高年層の議員さんには、大学生及び高校生の迅速なコンピュータ操作にはお手上げの状況でした。しかし、世代の差を超えて協力し、共に戦うというゲームの楽しさに会場は包まれました。

 対戦ゲームで懇親を深めた後は、議員さんたちと大学生、高校生とのトークセッションです。eスポーツのこれからの可能性をはじめ、SNSを活用しての議員活動の発信のありかた、若い世代から見ての議員のイメージ、政治への興味・関心など話題は多岐にわたりました。

 eスポーツは新しい分野です。いま、競技としてスポンサーが付いた大会が増える一方、高齢者の認知症予防のためのゲームでのボランティア活動も広がっています。社会の急速なICT(情報通信技術)化に伴い、コンピュータリテラシー(活用能力)が重要になってきています。eスポーツを楽しむことは、このリテラシーの向上にもつながると私は考えています。令和の学校部活動でもあるeスポーツがこれからどんな発展をしていくのか楽しみです。

 「校長室からの風」

        崇城大学eスポーツスタジオオープニンイベントの様子

創立50周年に向かって ~ 実行委員会の始動

 「この城山(じょうざん)地区に県立高校ができると聞いた時は、みんなで大喜びしました。うれしかったですね。あれから50年近くなりますねえ。」

 昨年、西高に赴任し、城山地区の区長さんや自治会のお世話をされている人々に挨拶して回った時、ある高齢者の方が西高創立の際の地域の歓迎ぶりを語られました。JR熊本駅(当時は国鉄)より西方に県立高校はありませんでした。熊本市西部地区の皆さんの待望の県立高校誕生だったのです。

 私たちの学校、熊本西高校は昭和49年10月に創立されました。最初は職員4人だけで、生徒はまだいません。「清 明 和」の校訓をはじめ校旗、校章、教育課程などを定め、募集定員は普通科4学級で発足することが決まり、翌年の昭和50年4月に第一期生の入学を迎えたのです。今年で創立48年となり、令和6年度に創立50周年を迎えるのです。

 2月6日(月)午後、西高の会議室にて、同窓会(「西峰会」)から藤井会長はじめ役員7人、保護者会(「育西会」)から田畑会長はじめ役員9人、そして同窓職員5人を含めて教職員12人が集い、第1回の「熊本西高等学校創立50周年記念事業実行委員会」を開きました。関係者が一堂に会し、意見を出し合う場はやはり必要です。「50周年に向けての大テーマのようなものが必要ではないか」、「記念式典と創立記念祭を合わせて実施するスケジュールを検討すべき」、「企画段階から、生徒会など生徒を積極的に参加させた方が良い」等の貴重な意見が出されました。

 西峰会の藤井俊博会長に実行委員会委員長を引き受けていただき、育西会の田畑会長と校長の私が副委員長となり、企画委員会はじめ総務、財務、記念式典、記念祝賀、記念行事、記念誌、広報の部会を設けた組織が立ち上がりました。しかし、中身はこれからであり、この組織を動かしていく力、熱意の醸成が重要となってきます。私はその点は心配していません。同窓会の皆さんには、強い母校愛があります。また、保護者、旧職員の方たちからは、「西高がんばれ」という応援をいつも受けています。

 また、心強い動きが見られます。1年生の探究学習において、創立50周年に向けて生徒たちで何ができるかをテーマに取り組んでいる班があり、地域社会とのコラボレーション行事や記念植樹など具体的プランの検討を始めているのです。現在の1年生が3年生に進級した時、熊本西高は創立50周年を迎えます。私たちの学校をどんな学校に変化させていきたいのか、生徒たち自身に主役意識を持ってもらい、実行委員会をリードしてほしいと期待します。

                                     「校長室からの風」

          第1回熊本西高創立50周年記念事業実行委員会

「キャリア教育の推進」文部科学大臣賞

 キャリア教育の推進で顕著な功績があったと認められた全国の教育委員会、小・中・高校、支援学校の110団体が、1月19日(木)、東京都港区の三田共用会議所において文部科学大臣賞を受賞しました。私たちの学校、熊本西高校もその一校に選ばれ、栄えある受賞となったことを広く皆さんにお伝えしたいと思います。

 「キャリア教育」とは何だろうと思われる保護者、地域社会の方がいらっしゃるかもしれません。キャリア(career)はもともと職業、職歴などを意味する英語です。文部科学省によると、「子どもたちが将来、社会的・職業的に自立し、社会の中で自分の役割を果たしながら、自分らしい生き方を実現するための力」を育成することがキャリア教育となります。そして、キャリア教育は、産業界と連携して小・中・高校の各学校段階で推進する必要があると文部科学省は求めています。

 一般的に、中学校や専門高校(工業、商業、農業など)では、生徒たちが地域の企業や自治体で一定期間の就業体験(インターンシップ)をすることがキャリア教育実践の代表例と言えるでしょう。しかし、熊本西高の場合は、大部分の生徒が大学・専門学校等の上級学校へ進学する普通高校であり、生徒数が各学年で250~300人の大規模校のため、4年前に独自の取り組みを立ち上げました。西高アカデミック・インターンシップ(通称「NAIS」)です。

 「NAIS」は、県内の7校の私立大学と2校の私立専門学校にご協力いただき、1年生の2学期最初の一週(5日)に大学、専門学校を訪ね、半日または一日の体験入学を行うものです。内容については、例えば医療看護系大学では「看護の仕事とコミュニケーションスキル」、「言語聴覚士のお仕事とは?」といった実学を主とした講義と演習になっています。今、社会がどんな仕事を必要としているのか、産業界の動向はどうなっているのか、専門職となるためにどんな知識と能力が求められるのかなどを学び、職業観や自分の生き方の示唆を得る場となります。

 この「NAIS」を1年生の上半期に実施することで、高校卒業後の進路について生徒たちはより切実に意識するようになり、社会の中の一員としての自覚が芽生えます。面映ゆい気持ちはありましたが、本校の「NAIS」の実践を県教育委員会へ報告し、それを県教育委員会が評価され文部科学省へ推薦していただきました。深く感謝申し上げます。

 今回の受賞を弾みにして、西高はさらにキャリア教育を推進します。学校教育の究極の目標である、「生徒を大人にする」ために。 

 「校長室からの風」

「過ちすな、心して降りよ」(徒然草) ~ 3年生へのメッセージ

 1月13日(金)をもって、3年生の通常登校は終わります。14日(土)~15日(日)に約50万人が受験する全国大学入学共通テストが実施され、熊本西高から73人が挑戦します。一方、受験しない残りの約180人は家庭学習期間に入ります。

 進路内定者の皆さんにとって、3月1日の卒業式までは余裕のある日々となります。自動車学校に通う生徒も数多くいます。1月12日(木)の午後、進路内定者の生徒とその保護者の方々に対して、体育館で集会を開きました。この会で、鎌倉時代末期の随筆「徒然草」の第109段「高名の木登り」(こうみょうのきのぼり)の話を私はしました。

 木登り名人の親方が、大木に登って作業する弟子の様子を見守っています。高い危険な所で作業して いる時には何も言いませんでしたが、家の軒の高さくらいまでに降りてきたときに、「過(あやま)ちすな、心して降りよ」と声をかけました。弟子は、これくらいの高さなら地面に飛び降りることだってできる、どうして注意するのですかと問い返しました。それに対して、名人は「やすきところになりて、必ず仕(つかまつ)ることに候」と言いました。人は、気を緩めた時に失敗をするものだと名人は諭したのです。

 生徒の皆さんにも同じことを私は伝えたい。「過ちすな、心して降りよ」「やすきところになりて、必ず仕ることに候」と。進路も内定し、残り1か月半で高校卒業です。皆さんたちが考えている以上に、高等学校卒業資格は重要な資格です。普通自動車運転免許も大切ですが、その重要性は比較にならないと思います。運転免許は君たちなら1か月半から2か月で取得できるでしょう。しかし、高等学校卒業資格は最低3年必要です。定時制高校なら4年かかります。皆さんは日々登校し、授業に出席し、学習を積み重ねて3年間で96単位の履修科目を習得しました。その成果として高等学校の卒業資格を得ようとしているのです。

 卒業までの残り1か月半は油断大敵です。事故、事件に巻き込まれないよう、自らを律して生活してください。社会の急速なICT化、グローバル化など変化の激しい現代において、学びが終わるということはありません。生涯学習です。就職する人は、いきなり大人たちと一緒に仕事をすることになります。大学、専門学校など上級学校へ進学する人は、勉強内容が格段に難しくなります。4月から飛び立つために、3月までは大事な助走期間と考え、自分自身のために勉強してほしいと願っています。

 結びにあらためて呼びかけます。「過ちすな、心して降りよ」

「校長室からの風」

          大学入学共通テストを受験する73人の集会

「1.5℃の約束」 ~ 3学期始業式

   皆さん、新年明けましておめでとうございます。

 年の始め当たり、未来を担う皆さんに未来のことを考えてほしいと思います。「1.5℃の約束」という言葉を知っていますか? 最近、新聞やラジオ、テレビなどのマスメディアによく登場する言葉です。これは、世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて1.5℃に抑えようというキャンペーンです。昨年2022年、国連の広報センターが世界各国に提案し、日本では新聞社、放送局が一致して協力することとなりました。「気温上昇をとめるために、いますぐ動こう」と呼びかけています。

 コロナパンデミックに巻き込まれて、私たちは自分の体温にとても敏感になりました。人は通常一定の体温に保たれています。これを平熱と言います。しかし、コロナウイルスの侵入による体の変化は体温の上昇となって現れます。パンデミック初期には、37.5℃以上がその目安とされました。

 しかし考えてみると、私たち人間の生存にとって、体温と同じくらい重要な温度は、この地球の気温だと言えます。かつては、多種多様な生物と、水や空気、光などの地球環境のバランスがとれていて、地球の温度は安定していたと言われます。ところが、18世紀後半にイギリスで産業革命がおこり、19世紀に欧米諸国、そして日本などが続き、世界に工業国が増え、石炭や石油などの化石燃料を大量に消費するようになりました。これによって大気中の温室効果ガスは増加し、地球の気温は上昇し始めました。世界の平均気温はこの150年で1.1℃上昇、日本では過去100年の間に1.3度も上昇しています。地球温暖化というこの不気味な変化が何をもたらすのか。猛暑、豪雨、干ばつなどの自然災害から海面上昇など地球環境そのものの異変につながっています。

 私たちは未来を考えることが苦手です。それはまだないものであり、どうなっていくかわからないことと思うからです。しかし、人間の能力をはるかに上回るコンピュータの計算力によって、具体的な未来がシミュレーションできるようになりました。その重大な予測結果に向き合わなければなりません。

 私たちは、関心がある、ごく一部のものしか見えていません。見ようとしません。けれども、コロナパンデミックを体験することで、発熱している地球の未来に関心を持つことは人類共通の課題になったと思います。現在の生活の仕組みや価値観、行動を変えていかなければ、未来は来ないかもしれません。国同士が戦争している時ではありません。戦争は最大の環境破壊ですから。

 未来は大人になったあなたたちの現実です。未来を意識しながら、皆さんが一日いちにちを大切にして、成長していってくれることを期待します。

「校長室からの風」

柔道部の初稽古と鏡開き ~ 新春の部活動スタート

 新春は、光も空の色も空気さえも清々しく感じられるから不思議です。私たちにとって、正月は暦の上で新しい年になったという以上の大きな意味があります。それは再生とでも言うべき、新しく生まれ変わったような感覚が伴います。初日の出、初夢、初詣などすべてに「初」の冠をつけますが、これは初々しさにつながります。また、元日の朝に初めて飲む水を「若水」(わかみず)と称しますが、これも邪気を払うにふさわしい清新な語感です。

 1月4日(水)の仕事始めの日は、小春日和に恵まれました。風は多少ありますが、陽射しのもと校内を歩くと春が来たかのような気持ちとなります。そして、学校に活気が戻ってきました。多くの部活動が練習を今日から始めたのです。なかでも熱気を発していたのが、女子柔道部でした。

 柔道場には、大学や専門学校へ進学、または就職した先輩たちが十数人ほど来ていました。そのうち7~8人は柔道着に着替え、部員の練習相手になってくれました。高校生側は進路が決まった3年生全員も参加しており、卒業生も合わせるとおよそ30人が練習し、柔道場が狭く感じられました。環太平洋大学(IPU)、近畿大学、鹿屋体育大学、警視庁などで活躍するそうそうたる先輩たちの胸を借り練習できる貴重な場です。強い人と戦ってこそ、強くなります。1,2年生も実力の差はあっても、懸命に組み合って、投げられても先輩に幾度も挑んでいく姿にたくましさを感じました。

 そして、1,2年生の部員たちにとって、西高柔道部の伝統の絆を実感する機会にもなったと思います。貴重な正月休みに帰省した先輩たちがわざわざ母校の柔道場に集い、練習相手になってくれると共に、柔道の助言をはじめ大学や専門学校、職場の話を聞くことができます。あの先輩がいる大学に私も進もう、という進路目標も生まれます。

 また、稽古始めのこの日は、柔道部の保護者の方々が西高セミナーハウスの調理室で雑煮を作られ、練習後に部員や卒業生に振る舞われました。まさに鏡開きです。正月のお供えの餅(鏡餅)を割って雑煮や汁粉にして食べる風習を「鏡開き」(かがみびらき)と言いました。正月気分との決別も意味します。

 卒業生及び保護者の皆さんのご協力によって、柔道部の稽古始めはとても充実した、心温まるものとなりました。深く感謝します。

                                     「校長室からの風」

 

絵馬奉納 ~ 美術部の地域貢献活動

 小春日和の陽射しのもと、12月26日(月)、西高美術部が制作した大型絵馬が高橋稲荷神社に奉納され、社殿入口の正門に飾り付けられました。新年の干支は癸卯(みずのとう)であり、朝日の曙光を背景に兎の親子や縁起ものの松を描いた作品です。縦90㎝、横180㎝の木板上、色彩豊かな画面に仕上がっています。高橋稲荷神社に初詣に訪れる方を温かく迎える絵馬となりそうです。

 高橋稲荷神社(西区上代)は西高と同じ城山校区にあり、2002年(平成14年)から美術部が毎年の干支にちなんだ絵馬を制作し、奉納を続けており、今回で22枚目となります。美術部の恒例行事となっており、今年も部員の西田さん(2年)が全体のデザインを考え、部長の中山さん(2年)を中心に8人の部員で協力しおよそ2週間で制作しました。今回の奉納では、高橋稲荷神社の竹内宮司夫妻に出迎えていただきました。「高校生の手作りの絵馬を飾って、正月を迎えられることは誠に有難いことです。西高生の皆さんにはいろいろとお世話になっており、助かっています。」と感謝の言葉をいただきました。

 高橋稲荷神社の正月の巫女のアルバイトを西高の女子生徒が務めます。また、日ごろから広い境内の清掃活動には野球部はじめボランティアの生徒が訪れています。地域の公共の場である神社の美化に西高生が自主的に努めていることを誇りに思います。そして、美術部はその特技を生かしての美術部らしい地域貢献を長年行っていることを頼もしく思います。

 美術部員は放課後や休日には美術室に集い、いつも和やかな雰囲気で活動を楽しんでいます。奉納絵馬の共同制作の時は特ににぎやかな様子で、ほほえましく感じます。しかし、一人ひとりは創作に真剣に向き合っており、公募展では目覚ましい成果を示しています。「くまもと描く力2022」展では坂本君(1年)が大賞。第47回熊本県高等学校美術展では山口さん(1年)が優秀賞で九州総合文化祭(佐賀)出場、そして魚山さん(2年)は最優秀賞に輝き、来夏の全国高校総合文化祭鹿児島大会への出場を決めています。

 今年も年の瀬を迎えました。先週は寒波襲来でした。コロナウイルス感染の波も引きません。このような中でも、美術部だけでなく多くの部活動の生徒が登校し、練習に励んでいます。若さというものも有限です。いま、この高校生の時に、本当に好きなことに打ち込むことが大切です。そのことがこれからの人生を支えることになると思います。応援しています。

「校長室からの風」

希望の光を ~ 2学期終業式

 一年前、「来年こそは、世界のコロナパンデミックが終熄することを皆さんと共に願いたいと思います」と2学期終業式の挨拶をしました。その願いも空しく、今年もパンデミックは続きました。

 また、2月に勃発したロシアによるウクライナへの侵攻も長期化し、現地は厳しい冬が到来している模様です。ロシア軍の攻撃によって、電気、水道、ガスなど社会生活の基盤となるライフラインが大きなダメージを受けているウクライナ住民は過酷な寒さをどう乗り越えていくのでしょうか? 日本とウクライナは約8000㎞も離れています。しかし、遠い国のことと思ってはいけません。今のローマ教皇、フランシスコ教皇は、自然災害、内乱、戦争などの被害で苦しむ社会的弱者の人々を前にして、このような言葉を発しました。「Why them,and not me?」(なぜ彼らであって、私ではないのか?) なぜウクライナの人々であって、日本人の私ではないのか? 「平和な日本に生まれて良かった」で片付く問題なのでしょうか? 21世紀のいま、地球上で共に生きる人間同士として、フランシスコ教皇の言葉をかみしめ、自問自答したいと思います。

 ローマ教皇の言葉を紹介しましたが、今週土曜24日がクリスマスイブ、25日がクリスマスですね。世界で最も信仰する人が多い宗教のキリスト教、その創始者であるイエス・キリストの誕生を祝福する聖なる日です。けれども、イエスキリストという人物が12月25日に生まれたという記録はどこにもありません。聖書にも書かれていません。では、なぜ12月25日に生まれたことになったのでしょうか? キリスト教が成立し、最初に広まったのはヨーロッパをはじめ北半球です。日本も含む北半球はこの時期が最も昼が短く夜が長くなります。日本では冬至と呼ばれる日があります。今年は12月22日(木)が冬至で、1年で最も昼間の時間が短い日です。夜の闇に長く支配されていた北半球が光を取り戻し、一日一日、昼の時間が長くなっていく変わり目の時期なのです。そのような時に人々に光をもたらす救世主イエスキリストが誕生したのだとヨーロッパの人は考えたのでしょう。

 「冬来たりなば春遠からじ」と言われます。これから一日一日、太陽の時間が長くなります。新しい年を、希望の光をもって迎えましょう。皆さん、良いお年を。

 「校長室からの風」

              2学期表彰式・終業式の様子

「小さな世界」の愛しさ ~ 2年生修学旅行その2

「修学旅行でディズニーランドに行くのですか? 反対です!」

 20代の青年教師だった頃の私は、当時勤務していた高校の修学旅行実施検討会で反対論を唱えました。アミューズメントパークの体験は、修学旅行の趣旨から逸れると思ったのです。テーマパークは家族や友人と行って楽しめば良い所で、修学旅行では個人的に行かないような学びの場に連れていくべきだという持論がありました。私のような意見の教職員が当時は少なくなかったと思います。しかし、この時の修学旅行のクラス別自由研修で、生徒の圧倒的希望によって私の担任クラスはディズニーランドへ行くことになりました。

 東京ディズニーランドは1983年(昭和57年)に千葉県浦安市にオープンしており、20代後半だった私が引率者として初めての修学旅行で訪ねた時は、オープンして10年経っていなかったと思います。生徒たちと入園し、その来場者の多さと破格のスケールの施設・設備に驚かされました。「世界中の人々に夢を与える」という創始者ウォルト・ディズニーの精神が体現化されていると思いました。そして、キャストと呼ばれる働く人々(スタッフ)のきめ細かいサービスに魅了されました。小さなゴミでも落ちていると見逃さず素早く掃除して回るキャストの動きは特に印象に残りました。アメリカンドリームに日本のおもてなしの接客文化がミックスされていると感じました。

 絶叫系アトラクションは避け、あまり並ばずに体験できるものを選び、クラスの生徒数人と、「イッツ・ア・スモールワールド」というアトラクションに乗りました。ボートに乗って、各国の民族衣装の子どもたち(人形)が歌い、踊る様子を見ながら世界を周遊するものです。「世界中どこだって 笑いあり涙あり みんなそれぞれ助け合う 小さな世界」と子供たちの歌が響く中の世界一周はとても穏やかな気持ちとなり、幸福感を覚えました。

 あの日からおよそ30年。12月9日(金)、熊本西高2年生修学旅行引率で東京ディズニーランドを訪ねました。引率の先生2人と「イッツ・ア・スモールワールド」に乗りました。また、私が薦めたこともあってか、多くの生徒たちも乗ったようで、「平和の大切さを感じました」とある生徒が笑顔で感想を語ってくれました。テーマパークからも多くのことを学ぶことができます。

 今回の修学旅行体験が愛しい記憶となって残り、生徒たちのこれからの人生を根底から支え続けることになってほしいと願っています。

「校長室からの風」

       西高2年生修学旅行2日目 東京ディズニーリゾート(ランド・シー)

モノより体験を ~ 2年生修学旅行

 修学旅行は、高校3年間で一回の唯一無二の学校行事です。新型コロナウイルス感染症パンデミックが発生して以来、本校では体育コースのスキー研修を除いて修学旅行は実施できていませんでした。そして、ようやく今年度、2年生サイエンス情報科(1組)と普通科(2~6組)の合同修学旅行を実現できました。12月8日(木)~11日(日)の3泊4日、首都圏への修学旅行です。

 8日の朝、体育館での出発式の際、団長として校長の私は生徒たちに語り掛けました。

 「若い皆さんに必要なのはモノより体験です。旅行は大きな体験。そして旅行は、いつ、誰と一緒に行ったかが重要なのです。感受性豊かな高校生の時に級友たちと行く修学旅行はかけがえのない体験となるでしょう。」

 天候に恵まれた4日間でした。よく晴れ、暖かでした。そして、私たちの予想以上にどこの観光地も大変な人出で賑わっていました。外国人観光客も多かった浅草寺の仲見世通り。夕闇のイルミネーションが華やかで幻想的だった東京スカイツリー並びにソラマチ、平日にかかわらず人人人の「夢の国」ディズニーリゾート(ランド及びシー)、クラス別研修で訪ねた原宿表参道や横浜ベイエリアや中華街の混雑ぶり等。まだコロナ禍は終息していないにもかかわらず、旅行を制限されてきたフラストレーションの反動のような状況です。

 しかし、このような祝祭的ムードの中にあって、西高2年生は学びの旅の自覚をもち、節度ある行動をとり、頼もしく思いました。ディズニリゾートでは他県の高校生の乱れた制服姿に思わず眉をひそめたくなりましたが、西高生の制服姿は普段と変わらないものでした。羽田空港や熊本空港においても約200人が整然と並び、公共の場のルールを守りました。4日目の日本科学未来館(東京江東区)では、最終日の疲れも見せず、最新のテクノロジーや宇宙・生命の探究にかかわるそれぞれのコーナーで熱心に見学し、スタッフの説明に質問する姿がありました。そして、4日間を通して、生徒たちの笑顔、好奇心で輝く表情、いきいきとした様子が見られました。

 全国旅行支援の地域別クーポンを東京、千葉で得られたこともあり、生徒たちはたくさんのお土産を購入していました。家族や友達へお土産の品を渡す喜びもあるでしょう。けれども、「みやげ品」よりも「みやげ話」を家族は待っておられるよと私は生徒たちに言いました。モノより豊かな体験をしてくれることを願い、保護者の方々は旅費を出されていると思います。

 コロナ禍の修学旅行はリスクがあります。しかしそれでも実施することの教育効果は大きいと信じています。

「校長室からの風」

 

未来を創る ~ 福島県立ふたば未来学園高等学校を訪ねて

 「生徒たち一人ひとりが未来です。」

 福島県立ふたば未来学園高校の学校説明での言葉は深く胸に刻まれました。平成23年(2011年)3月に起きた地震、津波、そして福島原子力発電所の事故によって、福島県双葉郡内にあった富岡高校をはじめとする五つの高校は休校となり、多くの高校生は郡外、または県外へ避難しました。未曽有の自然災害と原発事故によって離散するという過酷な体験となりました。やがて次第に人々がふるさとへ帰還する中、平成27年に双葉郡の復興、創生の拠点として福島県立ふたば未来学園高校が開校されました。

 「自分自身と社会の変革者たれ」のモットーのもと、普通科教育、農業、商業、福祉の専門科教育、そしてトップアスリート育成のスポーツ教育の特色ある学びが展開されています。11月24日(木)、ふたば未来学園高校を体育科の先生方と訪問しました。令和4年度全国高等学校体育学科・コース連絡協議会総会・研究会が同校で開催され、それに出席するためです。福島双葉郡広野町の高台にある同校は、まさに未来の学園でした。バドミントン専用のアリーナはじめ新しく機能的な教育施設がそろい、ため息が出るほどです。また校舎の中にNPOやボランティアの人々が運営するカフェやコミュニティスペースもあり、学園に隣接して町のスポーツ・文化施設が広がり、まさに地域社会と一体となった学園でした。

 福島の高校生は、避難、コミュニティの崩壊、転校、そして帰還した時のふるさとの変景など混乱と動揺の体験を通じて、新しい生き方、新しい社会を創っていかなければならないという大きな課題に直面しています。ふたば未来学園高校の授業、学校生活の様子を見て、生徒たちは、それに向かって、使命感をもち、主体的に踏み出しているように感じました。彼らが福島の未来を担っていくと思うと、深い感慨を覚えました。

 3・11のあの日以来、激動の日々を生きてきた福島の高校生と比べることはできませんが、どこの地域の高校生にも未来を担うことが期待されています。生徒を育てる高校の役割は、未来を創ることだとあらためて実感しました。

 「合格が決まりました」と笑顔で推薦入試の結果を校長室へ報告に来てくれる3年生が増えてきました。「これからが勉強だよ」と励まします。生徒の笑顔に未来を感じる日々です。

(追記)

  令和6年度全国高等学校体育学科・コース連絡協議会総会・研究会は熊本西高が会場です。

                                         「校長室からの風」

           ふたば未来学園高等学校の様子

伝説の指導者 ~ 西高なぎなた部を創った一川治子先生

 「新人戦は、攻める姿勢が大切。たとえ相打ちになってもよいから、攻める。負けたくないという気持ちで防御に力を入れる選手は伸びません。」

 新人戦の見どころを尋ねた私に対して、一川先生は明言されました。また先生は、審判の姿勢に関しても次のように述べられました。

 「最後の高校総体ではないのだから、選手たちはまだまだ未完成。審判が考える理想の一本は遠い。多少、当たりが浅い、姿勢が不十分な面があっても、勢いがあれば一本取ってやっていい。そのことで選手を伸ばすのが新人戦です。」

 11月13日(日)、熊本西高体育館にて「令和4年度熊本県高等学校なぎなた新人戦大会」が開催されました。私は県高体連のなぎなた部会長として臨みましたが、このような県大会は県なぎなた連盟から審判のご協力を得ることになっており、同連盟副会長の一川治子先生には必ずご出席いただき、審判長をお願いしています。一川先生がいらっしゃることで大会が引き締まります。先生は、試合会場へいらっしゃると、本部席のところに必ずお香を立てられます。日頃、ご指導されている熊本武道館において武神に供える習わしです。この香りで、勝負の場が清められたような感じとなり、私たちも気持ちが落ち着きます。

 一川先生は、熊本西高なぎなた部を創った方です。平成3年の西高体育コース発足以来20年間、女子なぎなた部の監督として指導に当たられ、平成13年から平成17年にかけて全国高校総体なぎなた競技団体で5連覇、そして通算7回優勝という空前の偉業を成し遂げられました。この他、国体において熊本県チームを幾度も優勝に導くなど、なぎなたでは全国に知られた伝説の指導者です。

 西高の監督を退かれておよそ15年になりますが、背筋は伸び、声も張りがあり、なぎなた競技への情熱はいささかも減じておられません。現在も熊本武道館において子どもから高校生、大人まで指導をされ、生涯現役を貫いておられます。

 大会の度に一川先生とご一緒でき、長いご指導の経験談やなぎなたの奥の深さについてご教示いただくことが私にとってはかけがえのない時間です。

 「会場を整え、審判員がついた公式戦を用意することが大人の役割。選手は試合をすることで伸びていきます。ほら、見てください。初戦にくらべ、試合を重ねるごとに内容が良くなっているでしょう。」

 武道の、いや人生の達人の慧眼に感服しながら、初々しくもはつらつとした新人戦大会を観戦できました。西高なぎなた部の伝統はこれからも続きます。

「校長室からの風」

                全国高校総体なぎなた競技団体5連覇の記念写真

西高「朝の読書」

 西高では朝の8時30分から10分間、全校一斉の「朝の読書」時間となっています。学校全体が静寂に包まれ、落ち着いた時間で一日の始まりとなるのです。西高「朝の読書」の4原則があります。

 1 みんなで読む 2 毎日、読む 3 好きな本でよい 4 読んで知る

 多くの高校で朝の読書が実施された時期がありましたが、現在では少なくなったと思います。西高では、「朝の読書」を継続しています。

 西高は教育のICT(情報通信技術)化の波に乗り、県のICT特定推進校として学習活動をはじめ学校行事や職員の校務にタブレット端末などICTを率先して活用しています。社会の急速な情報化に主体的に対応できる人材育成のために教育のICT化は不可欠です。一方、学校教育はバランスが大切です。西高では伝統の体育的行事や地域社会の課題に取り組む探究活動など自ら身体を動かす実体験を豊富に取り入れています。ICTの進化に伴い、身体性や五感を豊かにしていくことが心身の成長に益々重要となっています。「朝の読書」もそういう観点から、大切な時間と思います。紙の本の手触り、自分と向き合うひと時、クラス全員で静けさを創り出す協調性など特別な時間となっています。

 長期化するコロナ禍の中、自宅にて一人でできる読書が再注目されています。読書は心の良薬とも言われます。不安、焦燥、失意などの動揺する気持ちが、自らの内面との対話で鎮まっていきます。また、本は読者をいろいろなところへ連れて行ってくれます。

 「読書の習慣を身につけるということは、人生のほとんどすべての苦しみから逃れる避難所を自分のためにつくるということだ。」(サマセット・モーム)

 情報が氾濫する今日、本当に必要なのは情報を体系化した知識です。そしてそれは本を読むことで初めて得られる場合が多いことを私たちは知っています。ロシアによるウクライナ侵攻に関して、連日おびただしい情報が様々な立場から発信されています。情報の渦中にあって、受け手の私たちは何を信じてよいのか、一つひとつの情報を整理する余裕がありません。しかし、一冊の書籍がそれを助けてくれることがあります。『物語 ウクライナの歴史』(黒川祐次、中公新書)はロシアの侵攻前に出版されていた本で、ウクライナの歴史や地理、地政学的問題について、元ウクライナ駐在大使の筆者が丁寧に著しています。私はこの本を読み、初めてウクライナの置かれた立場やロシア侵攻の背景が理解できたような気持となりました。私は西高の図書館でこの本と出会いました。西高生の皆さんにもぜひ読んでほしいと願っています。

 「ひと それぞれ 書を読んでいる 良夜かな」(青邨)

 かつての日本にあったこのような風景を取り戻せたらと思います。

「校長室からの風」

                 西高の図書館

みんなで歩く、ひたすら歩く ~ 西高チャレンジウォーク開催

「ゴールしたら、豚汁が待っている。頑張ろう」

 足取りが重くなった生徒に励ましの声を掛け続けました。しかし、それは私自身を奮い立たせる声掛けでもありました。11月2日(水)、爽やかな秋空の下、西高チャレンジウォークを開催しました。西高を出発し、本妙寺の加藤清正公銅像まで往復の15.6㎞を歩く行事です。

 体育コースの生徒は7時45分には出て、各ポイントに立ち、交通安全やコースの誘導をしてくれます。一般生徒は8時半から2学年、1学年、3学年の順でスタートしました。それぞれ4~8人のグループ別に歩くことになります。担任の先生はクラスの生徒たちと共に歩きます。私も昨年に続き参加しました。昨年は一番最後からゆっくりと歩きましたが、今年は最初にスタートした2学年の真ん中あたりで歩き始めました。

 坪井川の穏やかな流れ、高橋稲荷神社近くの朱色の橋、薄く色づき始めた金峰山を左手に見ながら谷尾崎の道、そして島崎の丘陵地からいよいよ本妙寺の坂へと向かいます。最後の石段はとてもこたえ、足をやっと持ち上げながら清正公銅像に到着。この高台からの熊本市街地の眺望が良く、疲れが癒されました。

 復路は、本妙寺名物の「胸突き雁木」と呼ばれる古い石段を下ります。6年前の熊本地震で損傷を受けた仁王門が、今年は完全に修復された姿を見せていました。現在、西区では金峰山山系の山麓を通過する「熊本西環状道路」の花園ICから池上(いけのうえ)ICの区間の工事が進んでいます。歩いていて、大型重機が動きトラックが出入りする様子が目に入ります。変わる風景の中に、変わらないものもあります。柿の実がなり、薄(すすき)がそよぐ秋の里山は変わりなく、歩く私たちを優しく迎えてくれます。足は重くなり、疲労を全身に感じてきますが、それでも、みんなで歩く、ひたすら歩くという営みはとても尊いと思えてきます。

 学校にゴールした時の達成感は何物にも代えがたいものでした。私は約3時間半で完歩。生徒たちも次々に笑顔でゴールしてきます。西高から本妙寺まで、自動車なら往復30分程度でしょう。早くて便利ですが、充足感はありません。自らの足で西区の道を踏みしめながら、クラスメイトと談笑し、励ましあい、歩き通したからこそ、かけがえのない体験となったのです。

 今年は3年ぶりに保護者の皆さん(育西会)によって豚汁がつくられ、歩き終えた生徒、職員に振舞われました。温かくおいしい豚汁の味は忘れられません。

「校長室からの風」

ゴールして豚汁をもらう生徒達

 

演劇部から突きつけられた問い ~ 県高校演劇大会

「59点と60点の間にラインを引くという指示を出しているあなたは、いったい誰なんですか!」

 この台詞(せりふ)が響き、熊本西高演劇部の「合格ラインはやってきた!」の舞台の幕は下りました。この最後の台詞は私の胸に突き付けられたように感じました。深いメッセージに気持ちが揺さぶられました。

 第71回熊本県高等学校演劇大会城北地区・熊本市地区大会が10月21日(金)~23日(日)に熊本市植木文化ホールで開催されました。コロナ禍によって活動を制限されてきた演劇部会にとって、3年ぶりに一般観客を入れての本格的な発表会となりました。演劇部の生徒たちは、感染防止のために思うように声を発することができず、言葉を奪われ、制約された活動に甘んじてきました。しかし、ようやく言葉が戻ってきたのです。マスクを外し思い切り声を出し、全身で表現する姿に熱い共感を覚えます。

 初日の21日(金)の午後、西高演劇部の「合格ラインはやってきた!」(作:加藤のりや)が発表されました。点数に自我が芽生え擬人化された不思議な世界の話です。「59点」(男子)と「60点」(女子)は隣同士で、お互い好意を持っている関係なのですが、ある日突然、二人を引き裂く「合格ライン」という存在が現れます。その結果、二人は合格と不合格という離れ離れの関係になっていかざるを得ません。その理不尽な運命に二人は抗い、葛藤します。さらに、何事にも動じない「零点」、淡々としながら本質を悟っている「百点」も加わり、この不条理な物語は進みます。「合格ライン」に対し、「59点」と「60点」の間にラインを引くように命令を出している黒幕の存在が次第にクローズアップされます。そして、冒頭の「合格ライン」のあの叫びでラストを迎えるのです。

 生徒たちの学習活動は本当にすべて点数化できるのだろうか? 点数以外では客観的で公正な評価はできないのだろうか? 一点刻みの点数の評価は絶対だろうか? その点数評価が前提で動いている社会のあり方に問題はないのだろうか? 見終わった観客は様々なことを考え、思いをめぐらします。

 古くて新しい普遍的な問題を、演劇という文化活動の力で見る者に突き付けた西高演劇部の力を心から称えたいと思います。優秀賞に輝いた西高演劇部は11月に行われる県大会への出場を決めました。

「校長室からの風」

        創立記念祭での演劇部のステージ(熊本市文化会館)

 

「探究」から「研究」へ ~ 2年生の「総合的な探究の時間」西高プロジェクト発表会

 「いまの子ども食堂と現状」、「私たちの西高PR」、「ゴミの再利用」

 「高齢者と障がい者の方が不自由なく楽しく暮らすには」、「交通安全」

 「車椅子について」、「検証 カラス撃退やってみた」

 これら7本の探究テーマについて、10月18日(火)、2年生普通科の総合的な探究の時間「西高プロジェクト」発表会(体育館)で生徒によるプレゼンテーションが行われました。この様子は、これから地域探究活動を始める1年生の各教室にもオンライン配信されました。また、今年度の西高学校運営協議会委員の中学校校長先生(三和中、城西中、花陵中)、大学関係者(崇城大学、熊本保健科学大学)にも参観いただきました。

 私たちの生活及び身近な地域社会には様々な課題があります。それに気づき、どうすれば改善、解決できるかを考え、調べ、行動して、提案まで行うという探究学習は、今、最も高校で求められているものです。それは教科横断的な内容であり、課題は一人では解決できず、同じ課題意識を持つ仲間とチームで取り組み、さらには学校外の機関や地域社会の人々と連携する必要もあります。受け身ではなく主体的になる学習、仲間や関係する人々との協働学習、そして学びのフィールドが社会に広がる学習です。成人年齢が18歳に引き下げられたこともあり、高校時代に社会に積極的に参画する姿勢を養うことが必須となった現在、探究学習の重要性はより高まっています。

 発表会で最も印象的だったのは、会場からの質問が多かった点でした。「そのように考察された根拠は何ですか?データはあるのですか?」のような論理的な問いでした。それに対し、発表者側も、的確な回答を行ったり、未解決な点は正直に「今後の課題です」と答えたりして、好感がもてました。

 1年生の後半から2年生の前半にかけて取り組んできた探究活動であり、内容も未熟でプレゼンのスキルも不十分です。しかし、自ら考え、仲間とコミュニケーションをとりながら、社会との関りを意識して課題解決に取り組むプロセスは、高校生を大きく成長させると思います。高校でできることは時間的にも内容的にも限られていますが、「探究力」はつけさせることで、生徒一人ひとりの進路につながると期待しています。

 発表した2年生の多くは1年後の今頃は大学、専門学校等の推薦入試に臨んでいるはずです。皆さんは「探究」から「研究」へと進んでいくのです。

「校長室からの風」

創立記念祭を終えて(講評)

 熊本西高校は昭和49年10月に創立されました。最初は職員4人だけで、生徒はまだいません。「清 明 和」の校訓をはじめ校旗、校章、教育課程などを定め、募集定員は普通科4学級で発足することが決まり、翌年の昭和50年4月に第一期生の入学を迎えたのです。今年で創立48年となります。他校では文化祭と言われることが多い秋の文化的行事を、本校ではあえて創立記念祭と呼ぶのはなぜでしょうか? 毎年、創立の原点に立ち返り、新たな西高の元気を発信しようという願いが込められているからです。

 3年前までのように学校全体を会場に、地域に開放しての賑やかなお祭り的行事はできません。しかし、熊本市民会館という立派なホールを舞台に、文化部をはじめ生徒のみなさんのステージ発表が開催されました。本格的なホールは体育館と異なり、音響、照明ともに優れていて、音楽や演劇など舞台芸術には最高の環境が整っています。クラスメイトが、同級生が、ステージ上で演奏、発表する姿は、普段の姿とは違い、より大きく輝いて見えたのではないでしょうか? 友達の新たな一面を発見する機会となったことでしょう。観客が真剣に鑑賞することが、出演者の力を引き出すことになります。皆さんはマナーを守って良い観客でした。だから、ステージ上のパフォーマンスもより良いものになりました。ステージに登場した人は一部の人ですが、裏方を担当した人や観客も含め、西高生みんなで創り上げた創立記念祭になったと思います。

 この創立記念祭は生徒会執行部はじめ実に多くの皆さんの熱意と努力によって実現しました。関係者すべての皆さんに感謝します。コロナパンデミックの中でも、西高は途切れることなく創立記念祭を続けています。これからも、西高は、生徒の皆さんの居場所と出番のある学校でありたいと思います。皆さん一人ひとり、自分の可能性を信じ、未来に向かって進んでください。特に3年生の皆さんは、自分の将来を切り拓く受験という特別なステージで全力を発揮してください。

 最後に一言、「闇の中で眠り 起きて朝日を浴びる」生活を心がけてください。講評を終わります。

                                     「校長室からの風」

 熊本西高創立記念祭の様子(10月12日、熊本市民会館)

命を守るヘルメット ~ ヘルメットを着用し自転車に乗ろう

 「日本では、ほとんどの人がマスクをしていますね。けれども、自転車に乗る人でヘルメットを着用している人はあまりいません。一方、アメリカ合衆国では、マスクをしている人は少ないのですが、ほとんどの人がヘルメットをかぶって自転車に乗っています。交通事故において頭を守ることの大切さを米国人はわかっていますから。日米、対照的な光景です。」

 長くアメリカ合衆国で仕事をされ、この春に帰国し、西高の近くにお住まいの方から聞いた話です。

 明日、令和4年10月1日から、熊本市では自転車利用者のヘルメット着用が努力義務化となります。全年齢層を対象として、熊本市自転車安全利用条例が改正、施行されるのです。その背景として、自転車利用者の死亡事故において、約6割が頭部へのダメージが致命傷となっており、ヘルメット着用が死亡事故を確実に減らすことにつながるというデータがあるからです。

 もちろん、条例による努力義務化ですから、ヘルメットを着用しなくとも取り締まりや罰金・罰則とはなりません。しかし、この機をとらえ、私たちは高校生に対して、ヘルメットで命を守ることになるというメッセージを強く発しなければならないと思います。

 西高では4年前に自転車で通学途中の女子生徒が交通事故でなくなるという悲劇が起こりました。交通事故は無情にも一瞬で、かけがえのない命を奪い、家族をはじめつながりのある人々を悲しみの淵に沈めます。あの日、学校に向かっていた彼女が抱いていた希望、夢、そして未来のすべてが失われたのです。

 自転車通学生の皆さんにあらためて呼びかけます。ヘルメット着用を真剣に考えてください。西高では、育西会から2000円の補助があり、軽くて丈夫でスタイリッシュなヘルメットを2300円で購入できるようになっています。二度とこのような交通事故の悲劇を起こさないために、保護者の方たちがヘルメット購入補助制度を始められたのです。けれどもここ数年、ヘルメット着用の自転車通学生は増えていません。

 今回の熊本市での自転車利用者のヘルメット着用の努力義務化を契機に、全世代で意識が変わり、ヘルメット着用が多数派となることを願っています。ぜひ保護者の皆様もお考えいただき、子どもさんと話し合ってみてください。

 かけがえのない命を守るために。

 「校長室からの風」

     9月12日に実施された育西会の皆さんによる朝の交通指導風景

 

 

 

2年生の皆さんへ ~ 2学年集会

 コロナ第7波に覆われた夏でした。しかしながら、四国インターハイ、東京での全国高校総合文化祭など高校生のスポーツ、文化に係る大きな大会は予定通り実施されました。困難な環境の中にあっても、高校生に日ごろの活動の成果の発表の場を与えたいという大会関係者のご尽力の賜物と有難く思います。西高としても、創立記念祭はじめ2学期に予定している学校行事について、コロナ感染対策を講じながらすべて実施していきたいと考えています。そして、これらの学校行事、生徒会活動及び部活動において中心を担うのが皆さん2年生です。あなた達の出番がきました。あなたたちが前面にでなければならないのです。そういう意識を持って、高校生活に臨んでほしいと思います。

 西高は、教育活動におけるICT(情報通信技術)の活用で県のトップ校を目指し、様々な実践を重ねています。生徒一人一台のタブレットを活用し、わかりやすい授業づくり、生徒同士の共同学習、大学や専門機関のオンライン講座、海外との国際交流、そして今日の学年集会もそうですが、学校行事や校務の改革にICTを利活用しています。皆さんも、必要不可欠な文房具としてタブレットを日常、使いこなしてください。但し、ICTを活用することは一人の世界に閉じこもることではありません。逆のベクトルです。情報をみんなと共有し、チームで課題に取り組む探究的な学習が盛んになります。協調性、チームワークが学習活動の場でも求められます。趣味、性格、個性、価値観が異なる人と一緒に活動していくことは、かけがえのない体験です。高校は人間関係を学ぶ場であることも忘れないでください。

 最後に修学旅行について触れます。体育コースは1年生の12月、無事に長野へのスキー修学旅行を実施できました。しかし、普通科の台湾旅行は2年次に延期し、サイエンス情報科と合同でこの12月に関東への修学旅行を実施することになりました。サイエンス情報科のシンガポール、普通科の台湾という海外修学旅行に引かれ入学してきた人もいると思いますが、コロナパンデミックの終息が見通せない現在、行き先の国内への変更を理解してください。

 今の3年生は、体育コース以外は修学旅行が実施できませんでした。私の判断で最終的に中止を決め、体育館に生徒たちを集め、「この厳しい現実について、時間をかけてもよいから受け止めてほしい、理解してほしい」と語りました。生徒にとって理不尽な体験だったと思います。当たり前のことが当たり前にできない状況は続いています。楽観はできません。皆さん、より一層、自己管理に努め、修学旅行という大きなプロジェクトを実現しましょう。

「3年間で生徒を大きく伸ばす西高」をモットーに全職員で全力を尽くしていきます。本日の学年会が充実したものになることを願い挨拶を終えます。

「校長室からの風」

1年生の皆さんへ ~ 1学年集会

 台風一過、爽やかな秋空が広がった9月20日(月)午後、保護者の方々にもご来校いただき、1年の学年集会を開催しました。保護者の皆様はそれぞれの教室に入り、子どもさんの席にすわってもらい、生徒たちは一同、体育館に集合しました。体育館と各教室はオンラインで結ばれ、時間を共有できます。ICT(情報通信機器)の活用です。

 全体会の冒頭で、1年生の皆さんに対して、3年間で変化していくことの期待を述べました。高校生活はこれからです。自分探しの旅は始まったばかりです。高校3年間は心身ともに大きく成長する時期です。近年のライフサイエンス(生命科学)でもそれは実証されています。私たち人間の身体は何十兆という細胞でできており、日々、分裂を繰り返し、機能更新が行われています。しかし、人間の細胞分裂は、年を取るに伴い不活発になっていくそうです。今年60歳を迎える私はもうあまり細胞分裂が行われない一方、皆さんは人生の中で最も細胞分裂が活性化していて、皆さんは、自分でも気づかないうちに驚くほどこの3年間で変化するのです。

 皆さんは昨日の皆さんではありません。明日の皆さんは、今日の皆さんではありません。急速な社会のICT化、経済のグローバル化という変化に対応できるのは、自分自身が変化していく若者だと私は信じています。

 全体会では、進路指導の講義、2年次でのコース・科目選択の説明が行われました。そして、普通科全員で先般体験したNAIS(西高アカデミックインターンシップ)の生徒発表(中間発表)が体育館で行われました。大学7校、専門学校2校の全面的なご協力によって実現した体験入学について、担当生徒たちがパワーポイントのスライドを使い、体育館でプレゼンテーションを行いました。ICT機器を駆使してのプレゼンテーションのスキル(技能)は急速に向上しており、1年生の豊かな可能性を感じ、頼もしく思いました。

 この1年生が3年に進級する時、私たちの熊本西高は創立50周年を迎えます。その時、私はもう西高に在職してはいませんが、希望をもって2年後を想像しています。

                                     「校長室からの風」

校長室のアートギャラリー ~ 「文化の西高」

 西高校長室に生徒の絵画・書道の作品展示を今年度から始めたことは1学期の「校長室からの風」でお知らせしました。絵画・書道それぞれ1点でしたが、今月、新たに2点の絵画作品が加わりました。いずれも公募展で賞を得た美術部3年生の大作です。

 久保さん(3年)の作品は、友達がくつろいでスマホを眺めている姿を描いたものです。人物像はとても具象的な一方、周囲には小さな点で幻想的な円や半円が浮かんでいて、ぬいぐるみや桃も配置され、不思議な世界が創り出されています。友人への久保さんの思いが創作のモチーフとなっているようです。また、兜島さんの作品は、画面いっぱいに眼が描かれ、この眼差しそのものがテーマです。大きく見開かれた瞳には、樹木の生えた丘陵が映っており、眼差しの強さが見る者に迫ります。兜島さんの眼差しがこれから様々な対象をとらえ、作品が次々に生まれていくことが期待されます。

 久保さん、兜島さんともに、大学の美術学部に進学し、さらに創作活動に精進していく決意を語ってくれました。言葉以上に雄弁な美術作品で、自らの感受性に基づくメッセージを発信し続けていってくれることでしょう。

 また、書道部の活動においても、顧問の山下先生からうれしい報告がありました。9月10日(土)に宇土市で開催された熊本県高等学校揮毫大会において、2年臨書半切部門で内山さんが1位、山下君が3位、2年創作全紙部門で五島さんが3位、2年臨書全紙部門で斉藤さんが3位を獲得しました。西高書道部がこれだけ上位を占めることは近年なかったことであり、快挙です。早速、放課後に書道室を訪ね、部活動中の書道部員にお祝いを伝えました。部員全員、明るい雰囲気で、迎えてくれました。

 西高は、平成3年という県内で最も早く体育コースを設けたことが象徴するように、体育系部活動が盛んな高校として県内外で知られています。玄関や廊下等に、なぎなた部、柔道部、ラグビー部、野球部などの栄光の軌跡の記念品や写真が並んでいます。しかし、近年、美術や書道の分野の伸びは著しいものがあり、「文化の西高」をもっと誇ってよいと私は考えています。

 「ダイヤモンドの原石のような生徒たちがたくさんいます!」と美術部、書道部の顧問の先生方が口をそろえて言われます。原石の生徒を磨いて、育てることができる指導者がいるのが西高の強みだと私は思います。

 西高へご来校の際は、校長室のアートギャラリーで、生徒の美術、書道の作品をご覧ください。

「校長室からの風」

「NAIS」(西高アカデミックインターシップ)開催

 「NAIS(ナイス)」という学校行事が西高にはあります。西高アカデミックインターンシップの頭文字から生まれた言葉です。1年生普通科(体育コース含む)の生徒たちが、大学や専門学校を訪問し、半日単位の体験入学を行うのです。コロナ禍で過去2年間はオンライン形式の実施となり、大学・専門学校側からの説明、講義等が中心でした。しかし、今年度は3年ぶりにそれぞれの大学キャンパス、専門学校の施設を訪問しての体験学習の場となりました。

 「NAIS」にご協力頂いている大学、専門学校は次のところです。コロナ感染がいまだ収束しない中、本校生を受け入れて頂いたことに深く感謝申し上げます。

崇城大学、熊本学園大学、熊本保健科学大学、尚絅大学、九州ルーテル学院大学、東海大学、九州看護福祉大学の7大学

九州中央リハビリテーション専門学校、大原学園の2専門学校

                                         (順不同)

 大原学園での体験入学のみ夏季休業中に実施し、その他の大学・専門学校は8月29日(月)から9月2日(金)にかけて行われました。5日間、生徒達の希望をもとに作られたローテーションに従い、それぞれの大学・専門学校に「登校」します。そして、各大学、専門学校の特色を知り、入門講義を受け、基礎実習・実技を体験するのです。専門的なことを研究するための施設の充実ぶりに驚きます。入門であっても講義の難しさに戸惑います。一方、実習や実技には積極的に取り組んだようです。

 たとえ半日であっても、大学や専門学校の内側の世界を体験する意味は大きいものがあります。しかも、1年生の2学期の始まりに行います。この時期はまだ多くの大学・専門学校が夏季休業中という事情もありますが、西高としては、高校の先にもっと大きく深い知の世界が広がっていることを強く意識し、学びの動機付けとしてほしいのです。今は理解できない大学の入門講義ですが、それを理解できる学力を養うのが高校時代です。高校卒業後の進路、ひいては自分の人生を考えることにもつながると考えます。

 大学の中には、西高の先輩が待っていて、大学の紹介や「高校で学んでおくこと」等の助言をしてくれたところがありました。1年生にとっては、きっとその先輩が大きく見えたことでしょう。大学生の先輩の姿に、近い将来の自分を投影した人もいるかもしれません。

 無限の知の世界が広がっています。1年生の皆さんの学びの旅は始まったばかりです。

「校長室からの風」

「西高、前へ」 ~ 2学期スタート

 新型コロナウイルス感染症第7波に社会が覆われた夏でした。いつ、だれが感染してもおかしくない状況が今も続いています。しかし、この困難な状況の中、ラグビーの7人制全国大会、四国インターハイ、東京での全国高校総合文化祭など高校生のスポーツ、文化の大きなイベントが実施されました。西高から多くの生徒の皆さんが出場、参加できたことは大きな意義があったと思います。

 「高校生に日頃の活動の成果を発揮する場を設けたい」という多くの人々の熱意と献身的努力によって、このような大規模な大会は、開催、運営されたものです。あらためて大会関係者の皆様に、感謝したいと思います。

 ラグビーの全国大会、インターハイと高いレベルの大会ですから、西高生も最後は勝つことができませんでした。優勝の喜びを得られるのは、団体戦なら一チーム、個人戦なら一人だけです。夏の甲子園の野球大会は初めて東北の学校、仙台育英高校が優勝しましたが、全国で4千校を超える参加校があり、深紅の優勝旗を手にできる高校は一校だけです。他はすべて敗者と言えます。

 しかし、負けたことから何を学んだか? 悔しい体験から何を考えたか? 人は深く考えることで、変わることにつながります。負けた体験から成長していくのです。生徒の皆さんの中には、自分は体育系部活動に所属していないから関係ないと思う人もいるかもしれませんが、それは違います。負けるということを失敗という言葉に置き換えてみてください。失敗した、間違った、できなかった、悔しいという感情が出発点です。なぜ失敗したのか、間違ったのかを考えてみる。そうすることによって初めて人は変わっていくことができます。負けて悔しい、失敗して自分の未熟さを知った、という切実な体験を重ねてこそ、皆さんは成長していくのです。

 熊本西高の2学期は8月25日(木)に始まりました。新たに二人の職員が西高に加わります。英語科の坂口先生(1年1組副担任)、新ALTのアリ・アルサネア(ALI  ALSANEA)先生です。アリ先生はアメリカ合衆国アリゾナ州の出身で、スポーツマンです。日本語を勉強中で、廊下で会うと「お疲れ様です」と言ってくれます。生徒の皆さん、新しい出会いを楽しみにしてください。

 2学期、1年生はNAIS(西高アカデミックインターンシップ)から始まります。実際に専門学校、大学に体験入学をして、高校の先の世界を意識してください。2年生は、様々な学校行事、そして部活動の中心になってください。3年生は、自らの進路を切り開いていく時期です。学校あげて支えます。

 「西高、前へ」。皆さん、一緒に前へ進みましょう。

「校長室からの風」 

2学期から赴任の坂口希先生(英語科)とALTのアリ・アルサネア先生

中学生の皆さん、ようこそ西高へ ~ 中学生体験入学(オープンスクール)

    強い日差しと入道雲、蝉時雨。絵に描いたような真夏の一日が始まりました。7月26日(火)、熊本西高校の「中学生体験入学(オープンスクール)」の日です。新型コロナウイルス感染の第7波という困難な環境の中、感染対策を講じ中学生を迎える体制を整え、今日という日を待ちました。

 午前と午後の部に分け、参加者全体を一カ所に集めることはしません。それぞれ1時間の受付時間帯で随時受付を行い、4,5人~7,8人の小グループをつくります。そして、ボランティアで集まった西高生が1人または2人でリーダを務め、模擬授業や理科の物理・化学・生物・地学の実験、そして英会話やeスポーツはじめ様々な文化部活動を体験して回るのです。

 午前9時~午前10時までの午前の受付。自転車で、保護者の送迎で次々と中学生が来校しました。中学生の皆さん、ようこそ西高へ。遠隔地の中学生のためにJR熊本駅と西高を結ぶ臨時貸し切りバス1台を走らせましたが、30人以上の利用がありました。受付の1学年棟の入口では、太鼓部の歓迎演奏が行われました。そして、リーダーの西高生が各グループを引率し、校内を回ります。参加した中学生の好みも聞きながら、各種体験活動の場に案内します。そこでは、係の西高生が中学生を支援して、実験や様々な学習活動を体験します。この体験入学の目的は、西高生と中学生の触れ合いなのです。中学生の皆さんに西高生のことを直接知ってほしいのです。

 午前の部は約200人の参加者がありました。午後の部は午後1時~午後2時が受付。約130人の中学生が来校してくれました。また、中学生の保護者の方達も午前と午後合わせて40人を超えました。昨年よりも中学生、保護者の来校者は増えました。西高生を前面に立て、教職員はそのサポートに徹し、中学生の皆さんに西高の雰囲気を体験してもらうという狙いは当たったと思います。 

 西高に初めて来たという中学生がほとんどだと思います。中学校よりも広大な敷地に戸惑い、正門から入っても迷う中学生もいました。西高育西会の役員有志の方達や、当初の計画にはなかった事務部の職員の方にも手伝ってもらい、おかげで大きなトラブルもなく和やかな中学生体験入学となりました。

 日差しは強い一日でしたが、有明海からの風が吹き抜け、西高特有の爽やかさも覚えました。高校生と比べると明らかに幼い中学生のあどけない表情、好奇心等を様々な場面で感じた一日でした。

 今日の体験入学が「西高を選ぶ」きっかけとなってくれることを期待します。

「校長室からの風」

「未来への可能性」 ~ 大西市長からのメッセージ

 「未来への可能性」というタイトルで、大西一史 熊本市長のご講演を西高の2年生が聴く機会に恵まれました。7月14日(木)、会場は熊本市民会館シアーズホーム夢ホールで、NPO法人熊本教育振興会の主催によるものでした。同会の主要活動である「新しい風を呼ぶ教育講演会」は、今年度は西区の高校生を対象にしていただき、市立千原台高校2年生と県立熊本西高2年生の合同参加の講演会となりました。両校の代表生徒たちが司会進行を務め、謝辞も行いました。

 大西一史熊本市長(2期目)は54歳、政令指定都市熊本のリーダーです。日頃はテレビなどマスメディアを通してしか知らない熊本市長が、直接高校生にメッセージを伝えられる特別な学びの場となりました。

 「やったことに無駄はない」

 プロになるつもりで高校、大学時代に没頭したバンド活動の話から始まり、140社余り受けた就職活動、そして商社でのビジネスマン生活、国会議員秘書時代の体験とダイナミックな経歴を語られます。

 「何歳からでも学び直しができる」

 熊本へ帰ってきて30代で県議会議員に当選し、議員活動を始められます。そして、40歳で九州大学大学院に入り、法政理論を学び、修士号、博士号を取得されます。この大学院での学び直しは大きい意味があったと述べられました。

 「高校生としての目線でよい、自分の頭で考える」

 6年前に18歳選挙権が導入されましたが、相変わらず若い世代の政治への関心が低いことを指摘されます。みんなの声が反映されるのが政治であり、そうして社会は変化していくもの。インターネット上で政治家は自分の考えを表明しており、ネットを通して質疑応答もできる環境となった。若い世代に対して、もっと政治を身近に意識してほしい、関心をもってほしいと呼びかけられました。

 「より良い意思決定には経験が必要」

 不確実性が高く、正解のない問題があふれている現代社会。急速な情報化、グローバル化に対応しながら、正しい意思決定を行い、生きていくことは大変なこと。しかし、何がファクト(動かぬ事実)か見極めて意思決定していかなければならない。それには人生経験が必要だと強調された。市長自身は若い頃から何度も失敗し、修正し、経験を深めてきたことが今の拠り所となっているとのこと。

 約90分間、張りのある力強い声は変わることなく、情熱をもって高校生に「未来への可能性」を語り続けられた大西市長は次の言葉で締めくくられた。

 「青年は決して安全な株を買ってはならない」(ジャン・コクトー)

「校長室からの風」

西高生、全国の舞台へ! ~ ラグビー7人制全国大会、インターハイ、全国高校総合文化祭

 7月16日(土)~18日(月)、ラグビーの聖地、菅平高原(長野県上田市)で第9回全国高等学校7人制ラグビーフットボール大会が開催され、熊本西高ラグビー部は3回目の出場を果たしました。14日(木)夜に熊本を貸し切りバスで出発し約20時間かけ現地に到着。予選リーグで1勝1敗となり決勝リーグに勝ち上がることはできませんでしたが、敗者復活戦リーグで試合を重ね、力を大いに発揮しました。19日(月)のお昼頃、帰校。悪天候の中の長時間のバス移動にもかかわらず、15人の選手達は疲れも見せず、実力を出し切った達成感と冬の花園大会に向けての意欲を示し、頼もしく思いました。

 また、今年の全国高校総体(インターハイ)は四国4県が会場です。「躍動の青い力 四国総体2022」です。全国高校総合文化祭は「とうきょう総文2022」、東京で開催されます。いずれも西高生の出番は8月上旬の予定です。

 総体、総文祭に本校から、柔道部、なぎなた部、陸上競技部、ウェイトリフティング部、書道部、美術部と六つの部活動、合わせて21人の皆さんが出場します。eスポーツ部の1チーム2名も、予選を勝ち抜き、フォーナイト部門のオンライン全国大会(8月)へ出場します。

 伝統を誇る柔道部は団体と個人(4部門)が全国上位を目指します。なぎなた部は6月に行われた全九州総合体育大会で団体3位となり、自信を深めています。陸上競技部の杉山君(走り高跳び)、飯田さん(やり投げ)、水野君(砲丸投げ)の3人は2年次から県のトップ選手で、南九州大会でも上位入賞の実力者ぞろいです。全国大会での躍進が期待されます。ウェイトリフティング部は個人3部門に出場。3人とも西高入学後に競技を始め、伸び盛りの選手たちで、初めてのインターハイを楽しみたいと語っていました。

 この2年半、未曾有のコロナパンデミックによって私たちの生活は大きな影響を受けました。部活動も様々な制約を受け、思うような活動ができなかったと思います。目標を見失いかけたこともあったでしょう。それでも、自己管理に努め、たゆまぬ努力を続けてきたことが全国大会出場につながったと思います。逆境の中でも、生活の軸がぶれず、自らの本分を貫いた姿勢を心から称えたいと思います。

 全国大会に出場する西高生が、全国各地から参加する志ある高校生と競い合い、交流し、ひとまわりもふたまわりも大きく成長し、笑顔で帰ってきてくれることを期待しています。

 西高生、全国の舞台へ進む夏です。

「校長室からの風」

     女子柔道部          なぎなた部           陸上競技部

 ウエィトリフティング部     eスポーツ部

「真心はかはらざりけり」 ~ 160年前の国際交流から学ぶ

 ただいまALTのケリー先生の退任式を行いました。ケリー先生の故郷、カリフォルニア州はアメリカ50州の中で最も人口が多く約4000万人。面積は42万㎢あり、日本列島がすっぽり入る広大さです。サンフランシスコやロサンゼルスといった大都市があり、ヨセミテ国立公園などがあることでも知られています。

 そして、私たち日本人にとって、カリフォルニアはハワイと並んで歴史的に深い関係がある州です。鎖国が続いた江戸時代の末期、アメリカのペリー来航によって日本は開国することとなりました。1860年(万延元年)、アメリカ合衆国と通商条約を結ぶために江戸幕府の使節団が、咸臨丸やアメリカの軍艦に乗船し、太平洋を航海しました。一ヶ月以上かけて西海岸のカリフォルニア州サンフランシスコに到着したのです。幕府使節団はこの後、首都ワシントンやニューヨークなどを訪問し、鉄道や近代的な工場、ビルディングなど進んだ西欧文明に圧倒されます。長い鎖国政策で世界を知らなかった幕府の使節団にとって、言葉も通じず、人種も違い、服装や食事など生活慣習も大きく異なるアメリカの人たちはどう映ったのでしょうか? 自分たちとは全く違う化け物のように感じたのでしょうか?

 使節団の一人の村垣淡路守という人がアメリカで歌を詠んでいます。

 「姿見ればことなる人とおもへども その真心はかはらざりけり 」

 姿は違っても、心は同じだと言っているのです。

 それでは、ちょんまげを結い、刀を差した和服姿の侍たちは、アメリカの人々に野蛮人扱いされたのでしょうか?全く逆でした。東洋のサムライの一行が初めて米国へ来たと大歓迎を受けます。かれらの立ち居振る舞いは礼儀正しく気品があると当時のアメリカの新聞、雑誌が報道しています。

 160年前の私たちのご先祖、サムライたちは、国が異なり、習俗が違っても同じ人と人なのだと本質を見抜きました。開国したばかりのアジアの島国から来た、変な格好をした日本人をアメリカの人々は温かく迎え入れました。

 翻って21世紀前半の今日、分断と対立が世界各地で起こり、ウクライナでの戦火がやみません。人種、宗教、言語、政治などが異なっても、私たち人間同士には本質的に理解し合えるものがあるのだということを、私たちは歴史から学ぶことができると思います。

 明治時代になると日本から多くの移民が船でカリフォルニアへ渡りました。「その日本人移民の子孫の一人が私かもしれません」とヨギ・ケリー・アン先生が笑いながら語ってくれたことがありました。

 ケリー先生と出会えた幸運に感謝し、1学期終業式の話を終わります。

「校長室からの風」

    表彰式、全国大会出場部への同窓会からの激励金交付、1学期終業式のスタジオの様子

ケリー先生有り難う! ~ ALT退任式

 Assistant Language Teacher(ALT)のケリー先生は、コロナパンデミック前の2018年夏に西高へ赴任され、4年の勤務を経て来月、アメリカ合衆国へ帰国されます。ケリー先生はICT(情報通信技術)が得意で、アメリカの友人やご家族とオンラインでつなぎ、本校と交流授業を何度も実現されました。パンデミックの中でも、インターネット環境とタブレット端末があれば国際交流ができることを証明してくれました。また、ケリー先生はいつもポジティブで、フレンドリーでした。ケリー先生の出身はカリフォルニア州。アメリカ西海岸の太陽の明るさや太平洋のビーチの爽やかな風を連想するお人柄でした。

 

 Greeting of thanks  for  Ms Kelly.

Thanks  for all your work at Kumamoto west High School.

You taught students English hard and politely for four years, and you encouraged students. Students loved your English lessons.

 We will miss  you  because  you will leave  Kumamoto soon.

but we will never forget  working  with you .

It is very tough to say good bye.

We hope you will remember  Kumamoto forever.

You are youthful,  and  you have  great potential.

We wish  the best luck on your bright future.

thank you so much.

 有り難う、ケリー先生!

                           2022年7月15日

(校長室からの風)

            ケリー先生によるカリフォルニアとの国際交流授業の様子(4月)

                  ケリー先生退任式の様子(7月15日)

夏が来た ~ 梅雨明け、向日葵、期末考査 

 校庭のひまわり(向日葵)が伸び、勢い盛んです。その眩しいほどの黄色の花が夏の太陽を象徴しているかのようで、見ているだけで元気が湧いてきます。

 6月28日(火)に熊本県が梅雨明けしました。観測史上最も短い梅雨でした。そして梅雨明けと同時に太平洋高気圧の勢力が増し、一気に猛暑の夏が始まりました。連日、35℃に迫る危険な暑さが報道されています。

 熊本西高では6月28日(火)~7月1日(金)まで1学期期末考査が行われています。午前中、エアコンの効いた教室で試験問題に取り組みます。そして、昼には早々に帰宅する生徒が多いのですが、試験期間中、午後も学校に残り試験勉強する生徒の姿が見られます。風が吹き抜ける生徒ホールで机を寄せ合って勉強する生徒たち。また、エアコンが効いた図書室で勉強する生徒たち。気温が上昇するにつれ図書館組が増えてきたようです。

 二人から三、四人で勉強を教え合う姿はほほえましく爽やかです。苦手な科目は学校で、得意な科目は自宅で行うのが試験勉強の鉄則です。また、友達に教えることで自分の知識が整理され、自らの学力定着につながることはよく知られています。先生から教えられたことより、友人同士で教えあった方の定着率が高くなることもよく言われます。勉強は孤独な営みの面もありますが、チームワークの側面もあるのです。そして、様々な学びの場を提供するのが学校の役割です。

 「僕はやっぱり英語は紙の本で勉強した方がやりやすいです」とある生徒が図書館で言いました。タブレット端末を活用してのリスニングやスピーキングの技能向上の一方、リーディングやライティングは紙の本(参考書、問題集)を愛用していると彼は言いました。デジタルとアナログ双方の特色を活かして、自分なりのスタイルで勉強することが大切です。自分に合った勉強方法を見つけてほしいと思います。令和の学校は、ICT(情報通信技術)の普及により、勉強方法も多様に広がりました。しかし、自分の頭で考えるという身体性は変わらないと思います。

 学校に残って試験勉強に悪戦苦闘する生徒達の姿を、ひまわり(向日葵)が見守っています。期末考査も明日まで。明日の午後は部活動が再開されます。2022年は記録的な長く暑い夏になりそうです。皆さん、大いに水を飲み、手を洗い、高校生として夏を満喫しましょう。

「校長室からの風」

バトンは引き継がれました! ~ 6月17日、新生徒会の発足(認証式)

 ここに坂田菜月(なつき)さんを会長に新しい生徒会が発足したことを全校生徒の皆さんと共に喜びたいと思います。会長、副会長はじめ14人の皆さんは、自らの意志で一歩前に出て、西高の生徒会役員という責任を担ってくれることになりました。その進取の精神を頼もしく思います。

 また、この1年間、西高を引っ張ってきてくれた、濱﨑まりのさんを会長とする旧生徒会役員の皆さんに深く感謝します。コロナパンデミックの様々な制約がある中、力を合わせ工夫し、創立記念祭や体育大会などの大きな学校行事を充実したものに創り上げてくれました。キッチンカーを学校に呼ぶなどユニークな企画も印象に残っています。そして、新しい女子の制服として、ポロシャツやスラックスの導入の提案があり、来年度から実現する運びです。常に前向きに取り組む姿勢は、きっと新生徒会にも引き継がれることと思います。

 さて、今年4月から成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。18歳成人の時代到来です。すでに18歳選挙権は6年前に導入されています。高校生の皆さんは、大人の入り口に立っているのです。社会には多くの課題、問題があります。誰かヒーローが現れて解決してくれると思っていても社会は変わりません。皆さん一人ひとりが、積極的に社会に関わっていく姿勢が大切です。学校も同じです。生徒会役員だけでなく、全校生徒一人ひとりが「私たちの学校、西高」という意識を持って欲しいと思います。

 これから、私も、新生徒会役員の皆さんと学校行事や学校のルールなど様々なことについて対話していきたいと思っています。

 新生徒会の皆さん、「for  others, with  others みんなのために みんなとともに」というモットーで活動していってください。そうすればきっとあなた達のもとに皆が集まってくると思います。一緒に、「私たちの学校、西高」を創っていきましょう。

「校長室からの風」

試練を超えて ~ 県高校総体で女子柔道部4連覇!

 「団体優勝が決まりました!」という顧問の大久保教諭からのメールを受け取った時、ちょうど会場の駐車場に到着しました。急いで車を降り、山鹿市総合体育館の柔道場に入ってみると、表彰式が始まるところでした。優勝の瞬間には間に合いませんでしたが、晴れ晴れとした笑顔の選手達の様子を間近に見ることができ、格別な喜びを共有できました。

 令和4年度熊本県高校総体女子柔道団体戦は、6月3日(金)午後に行われました。私は午後1時半から2時半まで県立劇場の県高校総合文化祭開会式に出席し、式が終了次第、山鹿市の柔道会場へ車を走らせたのです。女子柔道部に対しては強い思い入れがありました。今年1月の県選抜大会に新型コロナウイルス感染症の影響で出場できず、悔し涙を流しました。柔道の試合はマスクを着けず、密着した競技となるため、コロナの感染リスクが高く、その後も思うような部活動ができず、部員達は苦しみました。誰も悪くありません。ウイルスという見えない敵に翻弄され、目標を見失いがちな時もあったと思います。しかし、荒木信知教諭の指導を信じ、部員一同が結束して練習に懸命に取り組み、たゆまぬ努力を重ねてきました。自分たちを厳しく追い込む鍛錬の日々を見てきた私は、この度の県高校総体で先ず柔道部の応援に駆けつけたのです。

 西高女子柔道部は、見事復活し、県高校総体4連覇を果たしました。度重なる試練を乗り越えての堂々たる勝利でした。表彰式に臨む団体メンバー(山田さん、平原さん、東さん、藤原さん)、及び全員一丸となって応援した部員(15人)のみんなと共に喜びを分かち合うことができました。

 女子柔道部は神が与えたような試練を乗り越え、凱歌をあげました。しかし、一緒に高校総体総合開会式に出場したラグビー部は決勝進出を逃しました。伝統の強さを誇る女子なぎなた部は、団体戦は制したものの個人戦優勝を他校に奪われるという無念の結果でした。その他、それぞれの競技種目において、目標を達成できず、不本意な結果に甘んじた生徒達がいます。今は失意に沈み、気持ちの整理がつかない状態かもしれません。しかし、柔道部の例でわかるように、勝負の世界は「悲喜交々(こもごも)至る」(悲しみと喜びが代わる代わる起こる)ものなのです。

 負けたことから多くのことを学んだとやがて気づくことでしょう。悔しい体験も豊かな体験なのだと時間が教えてくれると思います。

「校長室からの風」

高校生のエネルギー発信の舞台 ~ 県高校総体・総合文化祭の開幕

   令和4年度第50回熊本県高等学校総合体育大会の総合開会式が6月3日(金)午前、「パークドーム熊本」(県民総合運動公園)が行われました。参加校が一堂に会しての総合開会式の実施は3年ぶりのことです。

 国旗及び高体連旗を持って先頭で行進したのは西高陸上競技部の生徒達です。全77校が総合開会式に参加し、西高は5番目の行進。各学校、生徒・教職員合わせ15人以内と定められ、本校はラグビー部の生徒と顧問教諭、そして団長として校長の私が出場しました。新型コロナウイルスの出現前は、「えがお健康スタジアム」に観客の高校生も含め約1万人の大規模な祭典でした。今回の規模はその10分の1で、屋根付き会場のため熱中症の心配もなく、シンプルではあっても選手のコンディションに配慮されたスマートなものでした。「アマチュアスポーツに引退はありません。生涯にわたってスポーツを続けてください。」との高体連の大嶋会長の挨拶が胸に響きました。オープニングアトラクションとして、熊本工業高校の吹奏楽部による華麗で勇壮なマーチングドリルも行われました。

 コンパクトな総合開会式でしたが、県下の高等学校の一体感があり、ラグビー部の生徒達と共に歩き、参加できたことで熱い思いに包まれました。さあ、アスリートの戦いが繰り広げられます。「みんなは、自分で思っている以上のエネルギーを持っている。この高校総体で存分に爆発させよう!」とラグビー部員を励ましました。

 第34回熊本県高等学校総合文化祭の総合開会式が同日の午後、熊本県立劇場で行われました。こちらも3年ぶりです。オープニングアトラクションで、西高生を含む有志の演劇部員合同パフォーマンスに引きつけられました。それは、コロナパンデミックによって声を発することが制約された苦しみの表現から始まり、表現の手段は言葉だけではないことに気づき、身体全体を使って表現するパフォーマンスでした。そして、最後に「きざめみんなの青春ONEカット!」と大会テーマを声高らかに発信したのです。

 2年を超えるコロナ禍という逆境の中にあっても、熊本の高校生は自らが選んだ部活動(体育・文化)にひたむきに取り組んできました。そのエネルギーを発信できる最高の舞台を設けることができました。このことが望外の喜びです。

 「校長室からの風」

 県高校総合文化祭開会式のオープニングアトラクション(演劇部合同パフォーマンス)

先輩が支える西高の強さ ~ 高校総体目前

 体育部活動の集大成の場となる県高等学校総合体育大会(高校総体)の先行競技が始まりました。5月28日(土)、サッカーの1回戦を応援しました。水前寺競技場において午前10時キックオフ。対戦相手の有明高校に押されながら、西高も時に反撃に出る好試合となりました。惜しくも2点を奪われ、0-2で敗れました。プロサッカーの試合も行われる水前寺競技場という最高の環境で、最後まで戦い抜いた西高サッカー部の健闘を心から称えたいと思います。試合後、うつむいて悔し涙を流している生徒達の様子を見ると、勝負の厳しさを思い知らされます。励ます言葉も容易には出てきません。けれども、全力を尽くした結果について時間をかけて受け入れていくことで、高校生は大人へと成長していくものだと思います。

 28日(土)~29日(日)、サッカー以外にバドミントンやソフトテニスなどの競技が先行実施されました。そして、6月3日(金)から本番を迎えます。各部活動において、かけがえのない仲間と共に残された時間、完全燃焼の日々です。放課後、部活動の様子を見て回ると、高校総体に向けて気迫と緊張感が高まっていることが感じられます。

 そのような中、独自の存在感を示しているのが教育実習生の支援です。今年も体育コースの卒業生4人の大学生がこの時期に教育実習に来ています。それぞれラグビー、陸上、水泳、なぎなたが専攻で、現役の大学生選手として活躍しています。この先輩達が、高校総体直前の各部活動の練習に参加し、後輩を励まし、支えてくれているのです。27日(金)の放課後、なぎなた道場で教育実習生の坂本さん(福岡大学)が部員に指導する光景を見て、これが西高体育コースの伝統の力と感じました。なぎなた部では、高校時代に日本一に輝いた先輩(春山さん)が昨年もこの時期に教育実習に来ており、部員達を奮い立たせました。練習が終わった後、なぎなた部員に私は言いました。「君たちの中からも数年後に教育実習に来て、こうして後輩を指導する人が出てほしい、このつながりが西高なぎなた部の伝統です」と。

 西高生の皆さん、新型コロナウイルス感染予防をはじめ健康管理に努め、良いコンディションで高校総体に臨み、ベストを尽くしてほしいと念じています。

 「校長室からの風」

体育大会での高校総体・総合文化祭選手推戴式

「先生」と呼ばれる喜びと責任の重さ ~ 教育実習始まる

 西高では、5月23日(月)から教育実習が始まりました。教員免許状を取得するためには必須の実習であり、今年度は9人の大学生の皆さんが実習に臨みます。期間は2週間、3週間、4週間と異なりますが、かけがえのない体験になると思います。高校生から「先生」と呼ばれます。最初は戸惑いや気恥ずかしさがあるでしょうが、「先生」と呼ばれる喜びと、その責任の重さをかみしめる日々になることでしょう。

 9人の教育実習生の内8人が平成30年度の西高卒業生です。それぞれ大学に進学し、専門の課程に加え教職課程も履修し、母校での実習の日を迎えたことになります。当時の担任や教科担当、部活動の顧問にとっても感慨深いものがあります。かつての生徒がスーツに身を包み職員室で挨拶する様子を、多くの職員が笑顔で見つめていました。私たち教員の使命は人材育成です。私たちの後を継ぐため、未来の教員への道を歩んでいる姿を見ることは喜びです。私たちも通った道です。学校として教育実習生を心から歓迎し、充実した実習になるよう支援していきたいと思います。

 また、教育実習は在校生にとっても大きな出来事です。数年前に卒業した先輩達が、「先生」として指導に当たります。年齢的に近く、その若さは魅力であり、大学生活をはじめ様々な情報に接することができ、自らの進路への意欲がかき立てられる貴重な機会となります。

 今日の1限目、校長室で実習生の皆さんに研修講話を30分ほど行いました。「最も力を入れてほしいことはやはり授業です」と強調しました。教えることは自ら学ぶこととは全く異なり、とても難しいものです。実習生の皆さんにとってはそれぞれ得意の教科・科目ですが、その教科・科目が苦手な生徒達の興味・関心をどう引き出すかが課題です。「教えよう」という教員の視点ではなく、「できるようになる」という生徒主体の視点で考え、創意、工夫を重ねてください。若い現役の大学生である実習生の皆さんは、その存在自体が高校生を引きつけます。

 まさに5月の風と等しい、清新な風が西高に吹き込んできました。教育実習期間の西高は、いつも以上に活気あふれる学校となるでしょう。 

「校長室からの風」

誰も見ていなくても ~ 「善行」の報せ

 体育大会を5月8日(日)に実施し、いまだその余韻のようなものが校内にはあります。西高生の連帯感がより強まったと感じます。そして、「新入生」(1年生)が「西高生」に変身したという気がします。五月は、緑や花が瑞々しく生命感がみなぎり、県高校総体及び総合文化祭の開催を控え、学校が最も活気付く季節です。この時期にふさわしい爽やかな「善行」の報せに今週は二件接しました。

 一件は、大型連休中、西区の県道で道路脇の溝に足を滑らせ転倒された高齢の女性を、通りかかった男子高校生3人が協力し助けたという事案です。「有り難う。どこの高校ね?」と尋ねられると、「西高です」とだけ言い、3人は立ち去ったそうです。お礼の電話が学校にかかってきて、生徒達に照会したところ、1年生の野球部員3人が名乗り出てきました。

 もう一件は、西高からJR熊本駅行きの路線バスの車中の出来事です。雨天の夕方で、車内は西高生はじめ帰宅途中の乗客で混み合い、立っている人がいる状態でした。田崎付近で高齢の女性がバスに乗って来られたところ、座っていた女子生徒が即座に席を立ち、女性に譲ったそうです。その自然な振る舞いを見て、乗り合わせていた乗客の方から「気持ちがほっこりする、温かいものを感じました。制服が西高だったのでお知らせします」とご連絡がありました。

 まだまだ成長途上の高校生です。自転車の並進はじめ交通マナーに関して、地域社会からお叱りを受けることもあります。公衆道徳に関しても十分ではなく、ご批判を受けることもあります。しかし、私たち教職員は、生徒の可能性を信じ、時に厳しく指導する一方、生徒達を認め、ほめ、励まして伸ばしていかなければなりません。

 生徒の皆さん、私たち教職員がいなくても、保護者がいなくても、仮に誰も見ていなくても、あなたの行動はあなた自身が見ています。昔の人は、「お天道(てんと)様に顔向けができない」という表現をしました。誰も見ていなくても、太陽は見ているのだから、道を外れたことはしてはいけないという戒めです。他者の評価ではなく、自らの内なる規範に従い、より善く生きようという気持ちを大切にしてほしいと心から願います。

「校長室からの風」

              5月8日の体育大会の様子

 

一体感、そして達成感に包まれて ~ 第45回体育大会開催

 5月8日(日)、秋晴れのもと、生徒と職員の力を結集し、令和4年度第45回西高体育大会を創り上げることができました。今、学校全体の一体感そして達成感に包まれています。

 それぞれのプログラムはどれも見応えがあり、生徒の皆さんの一生懸命さが伝わってきました。ゴール目指し疾走する姿は躍動感あふれ爽やかでした。結果は1位2位…と表れますが、自分の走りができたかどうか、自己評価が一番です。

 リレーはやはり体育大会の華です。抜きつ抜かれつ、声援、歓声も一段と高まり、会場が大いに沸きました。そして、綱引きや台風の目、棒集めなどの技巧種目は、チームワークの面白さと難しさを実感したのではないでしょうか。

 また、体育コース2、3年生による演技、演舞は、さすがアスリートたちです。きびきびとした、かつ流れるようなパフォーマンスに魅了されました。見事でした。そして全校生徒の西高体操は、生徒の皆さんの気持ちが一つとなり、力強く、凜々しいものでした。「西高体育スピリット」の伝統が引き継がれたと思います。

 フィナーレの全校応援は圧巻で、胸に迫るものがありました。マスクをしていても皆さんの声は響きわたり、計り知れない若いエネルギーが渦巻き、空に舞い上がったように感じました。

 2年以上、コロナパンデミックに世界は覆われ、依然出口は見えません。また、残虐非道な戦争が行われている国もあります。世界は不安定で、平穏な日常生活を守ることが難しい時代です。この広い世界の片隅でかもしれませんが、ここ熊本西高において、体育大会に象徴される、健やかで明るい学校文化がこれからも永く続いていくことを念じます。

 最後になりますが、ご観覧いただいた保護者の皆様にお礼申し上げます。

「校長室からの風」

体育大会の風景

 

さあ、体育大会! ~ 5月8日(日)第45回体育大会開催

 西高は今年、創立48年を迎えます。現在の1年生が3年生に進級した時、50周年となります。今から40年ほど前の西高草創期に勤務された先輩職員の方から伺った話に「西高体育スピリット」への思いがあります。「爽やかな挨拶、明るい返事、機敏な動作」の三つを高校生として養うことは、社会に出てもきっと身を助けることになると考え、体育の授業だけでなく、学校行事や特別活動等の場で生徒たちに熱い気持ちで伝えたと回想されていました。今も、西門から入ったところに、「西高体育スピリット」と青地に白抜きで鮮やかに記された看板が立っています。新入生がこの「西高体育スピリット」を体得する最初の大きな機会が体育大会と言えます。

 令和4年度第45回体育大会を5月8日(日)に開催します。3年ぶりに保護者の方々にご観覧いただきます。但し、まだコロナ感染状況が不安定であり、3年生の保護者の方に限ります。1、2年生の保護者の皆様にはご理解いただきたいと思います。

 4月中旬から体育の授業で練習が始まり、生徒会中心に運営や装飾の準備が進められてきました。体育大会は、学科・コース、学年、クラスなどを超え、チーム西高として全校生徒が一つになる場です。黄・赤・青の3団に分かれ、団ごとに横断幕の作成や応援の練習に取り組んでいます。書道部の協力を得て美術部は入・退場門を飾る絵看板の制作、吹奏楽部は演奏の練習と文化部の動きも活発化しました。放課後や休日も、目標に向かってみんなで楽しみながら協力する雰囲気が校内に満ちていて、体育大会が近づいていることを実感しました。これこそ、健やかで明るい学校文化だと思います。

 体育大会の全体練習が終わった後、体育コースの2、3年生はさらに練習が続きます。日頃から鍛錬している体力、運動能力、団結力を発揮し、女子は「天の舞」(リズムなぎなた)、男子は「飛翔」(集団行動)を披露するためです。アスリートのプライドで挑む、このプログラムは西高体育大会の呼び物であり、保護者の方々はもちろん全校生徒を魅了することでしょう。

 今年の大会テーマは「氷炭相愛」。冷たい氷と熱い炭のように、全く性質が相反するものが互いの特性を活かし助け合うという意味が込められています。西高生一人ひとりが、それぞれの個性を発揮し、笑顔あふれる体育大会になることを願っています。明後日の体育大会が待ち遠しく感じられます。

「校長室からの風」

                体育大会の練習風景

 

保護者の皆様と共に ~ 育西会総会

 4月22日(金)午後、育西会総会を開催しました。西高の保護者会(PTA組織)は育西会と称します。西高生を保護者と学校とが協力し育てていく思いが込められた名称です。

 育西会役員が会議室で議事を行い、その様子を各教室に配信し、それぞれの教室から保護者の皆さんの質問も受けられる双方向の形式をとりました。昨年度、西高は熊本県のICT特定推進校に選ばれ、授業の改善、学校行事の効率化など率先してICT(情報通信技術)を活用してきました。今回の総会の方式もその取り組みの一つです。

 総会で、令和4年度の役員案が了承され新体制でのスタートとなりました。池田旧会長はじめ旧役員の皆様には、これまで1年間、様々な学校行事にご支援、ご協力いただいたことに深く感謝いたします。特に、生徒会役員の生徒たちとの対話の場(ミーティング)を2回設けられたことは画期的な取り組みだったと思います。制服のあり方や校則等について、保護者と生徒の立場から率直な意見交換が行われ、その中から建設的な提言が学校に対してなされました。この対話の場は今年度も継続される見通しです。18歳選挙権に続き、今月から18歳成人制度がスタートしました。生徒たちは、高校での学びを基に、主体的に社会に参画する態度を養うことが求められています。大人の先輩である保護者の皆様と、生徒会の生徒が、より良い西高を創っていくために対話を重ねることは教育的にも大きな意義があると思います。

 また、総会において、教室等の生徒用エアコン(空調機器)に係る経費の公費負担(県費)に伴う、空調機器及び更新積立金の県への寄付についても了承されました。これまで保護者が負担されてきた生徒の空調電気代や維持管理費等の全てについて、県立高校では令和5年度から公費化されることになります。

 来る5月8日(日)に体育大会を予定しています。生徒会を中心に生徒たちが主体的に準備に取り組んでおり、学年練習も本格的に始まりました。コロナ感染対策のため一般公開はできず、3年生の保護者の方のみ御案内申し上げます。1,2年の保護者の皆様には誠に申し訳ありませんが、ご理解のほどをお願いいたします。

 保護者の皆様の願いと学校が目指すものは同じだと思っております。育西会の皆様と共に西高は今年度も進んでいきます。

「校長室から風」

 

希望をつないで ~ 西高吹奏楽部第33回定期演奏会

 4月9日(土)午後、熊本市天明ホール(南区奥古閑町)において、第33回熊本西高等学校吹奏楽部定期演奏会が開催されました。本来、3月中旬に予定されていましたが、新型コロナウイルスの影響で実施できませんでした。しかし、生徒たちはあきらめることなく、実施時期と場所を変更し、練習を重ね、先輩から受け継いだバトンをつなぎ33回目の定期演奏会を実現したのです。テーマは「 ~ HOPE ~ 」(希望)です。

 新2,3年生の吹奏楽部員は現在、12人。ステージ上での進行、演奏で精一杯です。従って、受付や会場案内などは美術部員が協力し担っていました。ホワイエには美術部の作品も展示されていました。そもそもパンフレットが書道部、美術部の協働による手作りです。文化部の力を結集した演奏会と言えます。

 午後2時にオープニング。第1部では、吹奏楽部による4曲の演奏が行われ、そのうちの一曲「ROMANESQUE」は3月1日の卒業式で披露する予定でしたが、コロナ感染対策の式典簡素化のため演奏できなかった幻の曲です。部員の思いがこもった演奏となりました。第1部では、寺本教諭がタクト(指揮棒)を振りました。寺本教諭はこの度の人事異動で八代高校へ転出されましたが、最後の定期演奏会に駆けつけられました。

 第2部は、西高太鼓部のステージとなりました。同部の卒業生の先輩たち10人が登場し、横笛、鐘も交えた賑やかな演奏となり、変化をつけた切れ目ないリズムで会場を盛り上げました。最後は現役部員2人による、小・中・大の3種の太鼓を打ち分ける演奏で締めくくりました。

 第3部では再び吹奏楽部のステージで、荒木明子教諭の指揮による、吹奏楽曲の定番オンパレードとなり、観客の手拍子も加わりました。来場していた野球部員から「アンコール!」の大きな声がかかり、「ヤングマン(Y.M.C.A)」の演奏で会場が一体感に包まれました。

 コロナ感染症対策のため、吹奏楽部員は思うような練習や準備はできなかったことと思います。けれども、彼らは今のベストを尽くしました。それは私たちに十分に伝わってきました。

 世界は2年以上もパンデミックに覆われています。残虐非道な戦争が行われている国もあります。この不安定でリスクに囲まれた世界の片隅で、西高吹奏楽部の演奏をライブで楽しむことができたことに感謝せずにいられません。

「校長室からの風」

 

4月8日、新しい風 ~ 新任式、始業式、入学式

 4月8日(金)は私たちにとって特別な一日です。午前に新任式、続けて令和4年度1学期始業式を実施します。そして、午後は入学式を挙行します。

 この度の人事異動に伴い、13人の職員の方が西高へ赴任されました。西高スタジオでそれぞれお一人ずつカメラに向かい(マスクを外し)挨拶してもらいました。私たちにとっては新しい同僚として、生徒の皆さんにとっては新しい先生との出会いです。この出会いを大切にしていきたいと思います。

 始業式の校長講話で、「18歳成人制度」をテーマに取り上げました。民法の改正によって成人年齢が20歳から18歳に今月から引き下げられました。成人とは「一人で契約できる」ことになります。携帯電話を契約する、部屋を借りる、クレジットカードをつくるなど、親の同意なく契約を一人でできることになります。このことから、知識や経験に乏しい18歳や19歳の新成人がトラブルに巻き込まれないか懸念されています。各自治体の成人式がいつ実施されるかも気になるところです。しかし、これらのことは本質の問題ではないように思います。すでに選挙権も18歳に引き下げられ、若い世代が社会に積極的に参画することが求められています。私たちは社会的存在です。18歳を迎え、大人になる覚悟を決め、社会に関わっていこう、自分たちが社会を良くしていこうという心構えを持てるかどうかが大切だと思います。

 18歳選挙権、18歳成人など新しい制度に変わっても、制度自体が良い社会を約束するものではありません。幼心や甘えた気持ちと決別し、覚悟を決める、そういう各人の心の持ちようにかかっているのです。

 午後2時から、「令和4年度第48回入学式」を挙行しました。春爛漫、入学を祝福するかのような青空が広がりました。普通科248人、うち体育コース36人、サイエンス情報科31人、合わせて279人の新入生を迎えました。この3年間で最も多い入学生であり、学校に活気が満ちあふれました。式後、玄関の「熊本県立熊本西高等学校」と墨書された木製看板の前で記念撮影する新入生と保護者の姿が目立ちました。緊張感の中にも笑顔が見られます。

 大きな希望を胸に入学してきた新入生のみなさんが「西高に入学して良かった」と思い、我が子を本校に託された保護者の方々が「西高に入学させて良かった」と思ってくださるよう、私たち教職員は使命感をもって教育に当たります。

「生徒を大きく伸ばす西高」に期待してください。

「校長室からの風」

            令和4年度 第48回入学式の風景

 

一期一会をかみしめて ~ 転・退任式

 西高の校庭の桜も満開となりました。ソメイヨシノの花は遠目にはほとんど白で、近づくと淡い桜色が浮かびます。華やいだ桜の花と青空のコントラストが鮮やかで、風景が一変し明るくなります。冬の寒さが厳しくても3月末になると桜が咲きます。長引くコロナ禍の中でも、自然のサイクルは乱れず、春が訪れます。変わらぬ自然界の循環に私たちは永遠の時間を感じるのかもしれません。

 「さまざまの事 おもひだす 桜かな」(芭蕉)

 春は別れの季節です。3月1日の卒業式で、324人の3年生が西高を旅立っていきました。そして、この度の人事異動に伴い、西高から18人の職員の方が転・退任されることとなりました。最も長い方で13年、短い方で1年と勤務期間の長短はありますが、皆さんそれぞれの職責を果たされ、西高を支えてこられました。このことに深く感謝を申し上げます。

 人事異動は、私たち県立学校に勤める職員にとっては定めです。惜別の思いをもって、お送りしたいと思います。

 3月29日(火)午前10時から、転・退任の18人の皆さんが西高スタジオ(視聴覚室)で、一人ずつカメラに向かって挨拶され、その様子が各教室、及び卒業生が集う体育館へ配信されました。最後の英語の授業をされる方。西高での思い出を語られながら感極まって涙声となる方。西高生に対し、最後まで力強く励ましの言葉を贈られる方。山と田園に囲まれ、夕日が美しい西高の環境を称える方。清掃や奉仕活動に取り組む西高生の美点を褒める方など、それぞれのお人柄に応じたラストメッセージは生徒達の胸を揺さぶったことでしょう。改めて個性豊かな同僚の皆さんと一年間ご一緒したことを有難く思いました。

 生徒会長の濱﨑さんの御礼の言葉、そして校歌演奏を全員で聴き、式は終了。その後、18人の転・退任者はスタジオを出て、卒業生が待つ体育館、1,2年生がいる教室棟を歩いて回られ、生徒の皆さんとの交流が行われたのです。

 春は出会いの季節でもあります。転・退任される方々には、この先新たなたくさんの出会いが待っていることと思います。そして、留任の私たち職員、進級する1,2年生の皆さんには、新・転入の新しい先生、新入生との出会いがあります。お互い、一期一会をかみしめ、未来へ進んで行きましょう。

                                     「校長室からの風」

 

「西高 de キッチンカー」

 「楽しいです!毎月、いや毎週一回、来て欲しい」、「こんな催し物をもっとやってほしい」と生徒達の明るい声が飛び交いました。

 西高にキッチンカー4台が来校しました。3月23日(水)、昼休みを平常より20分拡大し、生徒会行事「西高de キッチンカー」を実施しました。4台のキッチンカーは、タピオカドリンク、クレープ、たこ焼き、唐揚げ、あげパンアイスなど高校生が好む各種のスイーツ系軽食がとりそろえてあり、予約販売が原則でしたが、長蛇の列ができました。

 この企画は、生徒会役員が考え、自分たちで動き、キッチンカーの手配まで行いました。西高周辺には若い世代向けの飲食店が少ないこと、コロナ禍で友人と一緒に食事する機会が減ったこと、一方パンデミックの中でキッチンカーの機動性が注目されていること等の理由から、生徒会行事「西高de キッチンカー」が実現しました。大人にはない発想と行動力です。

 また、キッチンカーによる販売と併せて、2年生の総合的な探究の時間の活動成果である「SDGsオープンおにぎり弁当」の販売も行われました。探究のテーマに「食」を選んだチームがSDGs(Sustainable Development Goals)の理念に基づき弁当づくりを企画し、「KKRホテル熊本」が商品化してくださったものです。高校生が考えたアイデアが「商品」として形になったことは画期的と思います。包み紙に、このお弁当がなぜSDGsなのか、イラスト付きで説明してありました。弁当箱や仕切りバランは紙製でプラスチックごみはゼロにしてあります。食材は熊本市西区及び南区の地元産を極力使ってあります。SDGsの17の目標(ゴール)の一つ「12 つくる責任 つかう責任」を強く意識しています。

 持続可能な社会作りは私たち人類が直面している重要な課題です。しかし、「Think  big  Start small!」(大きく考え、小さな事から始めよう)の精神が大切です。お弁当作りから始めたことに意義があると思います。

 学校生活を自分たちでより活発に、魅力あるものにしていこうという生徒会活動。社会と積極的に関わっていく2年生の総合的な探究活動。まん延防止重点措置期間が解除され、西高は再び動き出しています。

 「校長室からの風」

 

 

「日常に変化を」 ~ NAP(西高アートプロジェクト)

 「生徒ホールがすごいことになっていますよ!」と事務室の職員の方から話を聞き、行ってみると空間アートの世界に一変していました。1年生の美術選択者の皆さんがそれぞれ各チームに分かれ、作品を仕上げている途中でした。また、書道選択者による切り取られた紙文字の飾りもあり、目を引きました。これらが「インスタレーション」というものかと感嘆しました。

 インスタレーション(Installation)は空間全体を対象とした表現作品で、現代アートとして近年注目されています。彫刻や絵画を点として置くのではなく、大きなコンセプトのもと、広い空間全体をアートとして変化させていく創作活動です。美術科の黒田教諭の指導のもと、1年生の美術選択者91人が「日常に変化を ~ 明るい学校生活へ」のコンセプトのもとグループごとに小テーマを設けて作品を制作しました。そして、今週、生徒ホール、廊下、芸術棟周辺への展示を始めたのです。これに、書道選択者の協力も加わりました。

 生徒ホールのフロアには色紙で幾つもの足跡が表現されています。このグループのテーマは「人生」。人の生涯を足型で表現し、様々な足跡が交差しているのは人と人とが関わり合いながら生きていくことを表しているとのことです。また、大きなガラス窓にカラフルな翼が色紙で象(かたど)られています。その翼の前に立つことで、翼を持ったような気持ちに成って欲しいという仕掛けです。このグループのテーマは「自由」。廊下の天井からたくさんの紙飛行機が吊り下げられていたり、廊下の曲がり角に手をとりあって飛び跳ねている人物像が紙で貼り付けてあったりと愉快な出会いの連続です。

 コロナパンデミックが長期化し、今年度も分散授業の実施、学校行事の中止または縮小、部活動の制約と学校生活は大きな影響を受けました。生徒の皆さんは自由を制限され、閉塞感を覚える日々だったと思います。このような長いトンネルの中にいるような重苦しい日常を変える力がアートにはあるのです。「日常に変化を」という全体コンセプトは十分に伝わってきます。

 NAP(西高アートプロジェクト)は学校空間を明るく、文化の香りあるものに変えることに成功しました。生徒達が創り上げたこの空間を早く新入生に見せてあげたいと思います。

「校長室からの風」

 

剣道部、なぎなた部の全国選抜大会出場激励会

 剣道部となぎなた部が全国選抜大会に出場することは学校にとって大きな喜びです。3月9日の午後、大会に出場する剣道部員となぎなた部員が学校スタジオ(視聴覚教室)に集まり、激励会を開催し、その様子をオンラインで全教室に配信しました。

 先ず、同窓会の藤井会長(第11期生)が、剣道部となぎなた部に対して支援金を贈られ、励ましの言葉を述べられました。藤井会長は、剣道部監督の高田先生と同級生です。高校時代、剣道部で活躍する高田先生のことを鮮明に覚えておられ、今回の快挙は同級生としてとてもうれしいと語られました。

 第31回全国選抜剣道大会は3月26~27日、愛知県春日井市で開かれます。西高剣道部にとって念願の初出場です。強豪ひしめく剣道王国熊本で勝ち抜くことは至難の業だったと思います。しかし、高田先生の熱心な指導のもと、部員一丸となって精進を重ね、高い壁を乗り越えたのです。主将の植田君(2年)は生徒会のインタビューに対して、「剣道に一番必要なものは、気持ち」、「一戦一戦、勝ち抜き、優勝を目指す」と強い意気込みを表しました。激戦の県大会を経験した自信が感じられます。植田主将はじめ7人の剣士は、団体戦初出場ながら高い志をもって全国の舞台に臨みます。

 第17回全国選抜なぎなた大会は3月20日~21日、兵庫県伊丹市で開かれます。西高なぎなた部は第1回大会から17回連続出場を続けており、熊本西高の名は高校なぎなた競技では広く知られています。主将の大森さん(2年)は、生徒会のインタビューに対して、「先輩達の偉大さ、伝統を感じます。日本一を目指します」ときっぱりと決意を述べました。大森主将はじめ3人が個人戦及び団体戦に出場します。大舞台の経験豊富な齊木先生の采配によって、生徒達が存分に力を発揮することでしょう。

 激励会の最後に、西高応援歌(青春の血潮)の歌を流しました。長引くコロナ禍のため、この応援歌を全校生徒で唱和する機会が今年度はありませんでした。しかし、若人を鼓舞する応援歌を聴いているだけで、体内を流れる血潮がたぎるような思いに包まれました。まん延防止重点措置期間が延長され、学校生活も制約を受けています。また、ロシアによるウクライナ侵攻はじめ暗いニュースが目立ちます。このような閉塞感の中、西高生の皆さんは、生活の軸がぶれることなく、それぞれの目標に挑戦を続けて欲しいと期待します。

「校長室からの風」

     なぎなた部員           剣道部員      全国選抜大会を祝福する横看板

卒業式に立ち会える喜び ~ 第45回卒業式

 3月1日(火)、熊本西高校第45回卒業式を挙行しました。理数科34人、普通科290人(体育コース39人含む)が卒業していきます。理数科としては最後の学年(34期生)となり、その精神は現2年生のサイエンス情報科の1期生に継承されるでしょう。

 前日の式予行の場で、学年主任の錦戸教諭が「これまでやかましいことを言ってきたが、もうやかましいことを言えなくなる」と淋しい心境を伝え、「どこに行くかよりも、行った先でどれだけ頑張れるかの方が遙かに大切だ」と、それぞれの進路へ向かう生徒達を励まされました。

 感染症予防の観点から、来賓は招かず、在校生は送辞を読む生徒会長とピアノ演奏の生徒の二人だけ、保護者の出席も各家族から原則1人にお願いし、体育館の座席間隔を広く保ちました。国歌、式歌、校歌を唱和することもなく、演奏を聴くにとどめましたが、校歌さえ声を出して斉唱できないことに改めてパンデミックの重苦しさを感じました。しかし、簡素ではあっても、卒業式の基本を守り、厳粛さの中に若人の旅立ちにふさわしい清新さが感じられる式典になったと思います。

 私語一つなく背筋を伸ばして座る姿、呼吸を合わせ起立し、礼をする動作、落ち着いて歩く入退場の様子と、その一挙一動が卒業生のこの3年間の成長を示していました。卒業生総代の児塔さんは、答辞の中で後輩に対してメッセージを残しました。「逆境を成長の糧にして、西高生が一丸となり、過去の伝統を超える、皆さんらしい西高を創り上げていってください。」と。

 パンデミックはいまだ終息していません。ウイルスと共存しながら、私たちは新しい社会を創っていかなければならないのです。このような変革期においては、従来の常識にとらわれない、柔軟な発想と行動力が求められます。若い世代への期待が大きくなります。急速に進化するICT(情報通信技術)を皆さんなら使いこなし、より良い社会づくりに活かしていくでしょう。

 皆さんの行く道のりは決して平坦ではありません。この先も自然災害や新たな感染症などが待ち構えているかもしれません。けれども、どんな不条理な出来事に遭遇しても、必ず道は開けると自分を励まし、歩み続けてください。

 新たな世界へ若者が旅立つ時に立ち会えることはなんと幸せなことでしょう。卒業式に臨む度に、高校の教職員としての喜びをかみしめます。

「校長室からの風」

 

卒業生の皆さんへ

 皆さんが高校一年の三学期に未曾有の新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的流行)が発生しました。肉眼では見えないウイルスで私たちの生活は一変し、学校生活も大きな影響を受けることになりました。

 臨時休校、学校行事の中止及び縮小、部活動の制限等、思うような高校生活を送れないことで失望感や閉塞感に包まれたと思います。誰も予測できない、先が見えない長いトンネルのような生活を余儀なくされました。

 しかし、このような逆境の中、皆さんは学ぶことをとめず、それぞれの進路を切り拓き、卒業の日を迎えたのです。このことを私は誇りに思います。困難な社会環境にあっても、自己管理に努めてリスクから身を守り、高校生としての本分を全うした体験は、これからの皆さんの生きる力になると思います。

 いつの時代も未来は不確実で、見通しは立ちません。しかもコロナパンデミックが歴史の歯車を早回しにしました。社会の急速なICT(情報通信技術)化が進むでしょう。皆さんの前途には、大きな変革の波が立っています。

 今回のパンデミックで現代社会が抱える様々なひずみ、弱点が浮き彫りになったと思います。誰かヒーローが出てきて問題を解決してくれることはありません。皆さん一人ひとりが考え、行動して欲しいのです。コロナパンデミックが終熄しても元に戻してはいけないことは何だと思いますか?目指したい未来はどんな社会ですか?

 皆さんの人生はこれからです。未来が皆さんを待っています。

「校長室からの風」

 2月28日午後 同窓会(西峰会)への入会式

 

梅真白(うめましろ) ~ 高校入試(後期選抜)

 2月24日(木)、25日(金)の両日、令和4年度(2022年度)熊本県立高等学校の後期選抜入試が県内で一斉に実施されました。朝、氷点下の厳しい寒さの中、保護者の車で、または自転車で、緊張した面持ちの受検生たちが西高に集まってきました。体育館での集合点呼は午前9時20分ですが、早い生徒は7時半前には来校しています。中学校ごとの点呼があるのでしょう、校庭のあちらこちらで立って待っています。「おはよう」と声を掛けると、はっきりしたよく通る声で返事をしてくれ、初々しさ、清新さを感じます。

 新型コロナウイルス感染症の第6波に1月から県内も覆われ、受検生たちは感染への不安に包まれ、この日まで過ごしてきました。15歳の少年少女にはあまりにも理不尽な環境と言えます。受け入れる私たち高校側は、受検生が存分に力を発揮してもらえるよう、感染防止を徹底した安全、安心な態勢を整えました。1日目(24日)が国語、理科、英語の3教科実施で午後2時10分に終了。2日目(25日)は社会、数学の2教科を実施し午前中で終了ですが、本校の体育コースを志望している受検生は午後も引き続き体育実技検査が行われました。運動能力や体力を測定する実技検査がすべて終わったのは午後3時でした。

 受検生の皆さんにとっては長い二日間だったと思います。心身の疲労があるでしょう。しかし、受検を終え帰って行く皆さんの表情は一様に晴れ晴れとして、やりきったという充足感さえ伝わってきました。車で迎えに来られた保護者と談笑する光景も見られました。

 入学試験とは確かに厳しいものです。しかし、このような関門があるからこそ、学力及び精神力を鍛えることとなり、大人への階段を上がっていくのです。高校入試を受け終えた皆さんは、自分では気付かないかも知れませんが、もう昨日までの中学生ではありません。まだ見ぬ友が、知らない物語が高等学校でたくさん待っています。皆さんの青春はこれからです。

 24~25日の二日間、冬らしい透明感のある青空が広がりました。西高の前庭に立つ梅の老樹も7~8分咲きです。冬の寒さにじっと耐え、他の花よりも早く春の訪れを知らせる、白梅の花の凜とした姿に、受検生を重ねたくなります。

 「勇気こそ 地の塩なれや 梅真白(ましろ)」(中村草田男)

 かつて高校の国語の教科書で知った句です。この時期になると思い出します。

 3月7日(月)が合格発表です。今年も各学校での掲示発表は行わず、県教育委員会での特設Webページでの発表となります。3月24日(木)、合格者説明会で会いましょう。皆さんの入学を心から待っています。

「校長室からの風」

 

西高生が考えた「SDGsオープン弁当」

 「SDGsオープン弁当」なる素敵なお弁当の試食をしました。2学年の「総合的な探究の時間」で、「食」を探究テーマに選んだグループがSDGsの理念を意識した弁当づくりを企画し、それをKKRホテル熊本において商品化に踏み切って頂いたのです。まさに、自分たちが考えたアイデアが「商品」として形になったもので、お弁当を持参してくれた生徒達は得意満面の様子でした。

 SDGs(Sustainable Development Goals)は、持続可能な開発でより良い世界を目指す国際目標で、2015年の国連サミットで採択されたものです。17のゴール(目標)から構成され、この地球上の「誰一人取り残さない」ことを誓い、先進国、発展途上国を問わず、すべての国・地域で取り組むことを呼びかけられています。わが国においても近年、学校はじめ企業、NPO等で様々な取り組みが始まっています。新型コロナウイルスのパンデミックが示すように、世界の結びつきは益々緊密となり、地理的に遠く離れた出来事であっても無関係ではいられない運命共同体となっています。特定の国のみが平和で安全ということはあり得ず、世界のすべての国・地域が普遍的につながっているのです。急速なグローバル化の流れの中、未来の担い手となる高校生がSDGsをより強く意識するのは自然なことで、SDGsの言葉を弁当に付けることに違和感はありません。

 お弁当の包み紙には、このお弁当がなぜSDGsなのか、イラスト付きでわかりやすく説明してありました。ゴール12「つくる責任つかう責任」、ゴール14「海の豊かさを守ろう」の視点で、弁当箱や仕切り(バラン)は紙製にしてプラスチックごみはゼロにしてあります。食材は熊本市西区(れんこん、あさり、のり、みかん)及び南区(なす、たまねぎ、トマト)の地元産を使用し、ゴール11「住み続けられるまちづくり」との関連を示しています。そして、このようなリーズナブルなお弁当を商品化することで、先進国の若者がゴール2「飢餓をゼロに」の意識を高めることにつなげていると思います。

 高校生の発想や行動力は未来を拓く原動力です。そのような豊かな可能性を引き出す学習活動を西高としてはさらに盛んにしていきたいと思います。これに伴い、積極的に社会に参画する姿勢が培われていくことでしょう。

 今回、西高生の熱い思いをプロフェッショナルとして受けとめ、様々な助言、指導をいただき、商品化という英断をされたKKRホテル熊本の総支配人の倉科様はじめ料理長の尾方様、総務課の高田様、関係の皆様方に厚く御礼申し上げます。自分たちの思いが商品になるという希有な体験を生徒達に与えていただき、深く感謝いたします。

「校長室からの風」

 

春に西高で待っています ~ 高校入試(前期選抜)

 高校入試の季節となりました。1月24日(月)、県立高等学校の前期(特色)選抜検査の日で、熊本西高においても普通科体育コース及びサイエンス情報科で実施しました。それぞれ定員の50%の20人が前期の募集人員です。体育コースは39人、サイエンス情報科は30人が出願してくれました。

 前日の雨もあがり、時折、薄日が射す天候のもと、朝から受検生を迎えました。新型コロナウイルス感染の第六波のただ中であり、健康管理に神経をとがらせ、生活してきたことでしょう。自転車に乗って、または保護者の車の送りで、緊張した面持ちの受検生が集まってきました。

 9時に集合完了。体育コースは実技検査ですが、前日の雨の影響でグラウンド状態が良くなく、一部の競技は体育館2階のアリーナで実施となりました。サイエンス情報科は一人7分間の個人面接を行いました。面接を早めに終えたサイエンス情報科の受検生は順次校舎を出て、校庭を歩き、校門から帰って行くのですが、その中に、校門のところで立ち止まり、校舎側を振り向いて深々と頭を下げる者が数名見られました。校門一礼の指導を中学校で受けているのでしょうが、そのことが習慣となっている姿は深く印象に残りました。11時前後には体育コースの実技検査を受け終えた受検生たちが、談笑しながら連れ立って帰る光景が見られました。温かい陽光が注ぐ中、朝とは違い、とてもリラックスした雰囲気でした。

 繰り返しますが、前期選抜では定員の50%の20人が合格です。すなわち、一定数の受検生は不合格となるのです。その「狭き門」にあえて挑戦した、すべての受検生の皆さんの高い志に敬意を表したいと思います。西高の体育コースでトップアスリートを目指したい、サイエンス情報科で理科、数学、情報などを学びたいという受検生の熱い志望を有難く受けとめたいと思います。

 今日受検してくれた全員に合格して欲しいのですが、前期選抜ではそれができません。一部の受検生にはつらい不合格体験をさせることになります。しかし、一ヶ月後には後期(一般)選抜が控えています。より長く受験勉強することでさらに総合力が養われます。若いときの体験はどんなつらいことでも自分の成長につながるものです。後期選抜検査は2月24日(木)~25日(金)です。場合によっては、その後に二次募集の機会もあります。志望を貫いてください。

 今日、前期選抜を受検した皆さん、そして、後期選抜を受検する皆さん、春に西高で会いましょう。皆さんの入学を心から待っています。

「校長室からの風」

 

剣道部、全国選抜大会への出場を決める!

 西高剣道部が、全国高校選抜大会県予選を兼ねた県大会(1月15日、山鹿市総合体育館)で2位となり、全国選抜大会への初めての出場を決めました。これまで夏の全国高校総体へは一度出場経験がある剣道部ですが、春の全国高校選抜大会へ出場することは大きな目標でした。長年、全国王者の九州学院はじめ「剣道王国、熊本」の各強豪校の厚い壁が立ちはだかっていました。しかし、昨年秋から剣道部は上り調子で、監督の高田教諭も「全国選抜大会を狙う」と宣言し、選手を鼓舞されてきました。

 ひときわ寒さが厳しいこの冬、放課後や土日の昼間と剣道場からは熱気が生まれるほどの充実した稽古が続けられました。冬休み期間は朝8時からの寒稽古でしたが、選手たちの多くはその1時間前から登校し、自主練習に汗を流していました。剣道部は、1,2年生の男子10人、女子3人です。チームワークが良く、まとまっています。時折、私も道場に練習を見に行きますが、休息時間には部員同士の笑顔が絶えず、明るく和やかな雰囲気で、「やらされている」のではなく、主体的に進んで剣道に取り組んでいる様子が伝わってきます。練習時間も2時間未満で、密度の濃い内容です。 

 そして、何より指導者がそろっています。保健体育教諭の高田監督は、西高同窓生で、後輩に当たる部員に教育的愛情を持ち、めりはりのある指導で生徒の能力を引き出しています。また、久保孝コーチの存在も大きいものがあります。かつて本校の保健体育教諭で県の高校剣道界を牽引された方で、退職後、半ばボランティアで指導に来て頂いています。70歳近い年齢ながら、稽古で高校生に胸を貸しておられる姿に敬服します。また、顧問の橋本教諭(地歴科)も他校で剣道部の監督を務めた経験があり、生徒達を精神的に支援しています。

 「厳しい寒さ、及び新型コロナウイルス感染の蔓延という困難な環境の中、練習を続けてきたみんなは、強い。」と大会前日の練習後に私は生徒達に声をかけました。自己管理を徹底し、ベストの状態で大会に臨んだ結果と思います。感染の第六波に社会は覆われ、閉塞感が漂いますが、剣道部の快挙は学校にとって明るいニュースです。他の部活動や多くの生徒達にとって励みとなります。コロナの感染拡大が続き、学校も様々な面で我慢の時を迎えていますが、トンネルの先に光が見えたような気持ちとなりました。

 「生徒達は全国選抜大会出場が決まった喜びより、九州学院に負けた悔しさの方が大きいようです」と高田監督が報告されました。何と頼もしい生徒たちかと思います。全国選抜大会は3月下旬に愛知県で開催されます。西高剣道部はさらに強くなって、春の大舞台に挑戦します。

「校長室からの風」

生徒の皆さん、「Think big, Start small!」 ~ 3学期始業

 1月11日(火)、3学期が始まりました。

 コロナパンデミックが2年に及びます。肉眼では見えないウイルスに世界が翻弄され、私たちの生活も大きな影響を受けています。しかし、この2年間でコロナウイルスの実態がかなり明らかになりました。そもそもウイルスは単独では生存できず、動物や人間の細胞に寄生することでしか生存できません。自然界には無数のウイルスが存在し、その多くは人体に害はなく、コロナウイルスも弱毒化すれば、今のように恐れる必要はなくなると言われます。従って「ウイルスを撲滅」とか「根絶」の表現は適当ではなく、私たち人類はウイルスと共存の定めにあると言えます。

 これまで人類の歴史においてペスト、コレラ、天然痘、インフルエンザなど一部のウイルスがパンデミックを引き起こしました。パンデミックは歴史の歯車を早回しにします。14世紀のヨーロッパでペストが大流行し、甚大な犠牲者が出て人々の間で神への信仰が揺らぎました。そしてローマカトリックキリスト教の支配が弱まり、ルネサンスへと時代が動きました。19世紀のコレラの流行を克服するため、ロンドンはじめ世界の都市では下水道、上水道の整備が急速に進み、公衆衛生の考え方が普及しました。今回のコロナパンデミックにより社会はどう変わるでしょうか?確実に言えることは、学校に一人一台タブレット端末が配備されたことが示すように社会のICT化(情報通信技術化)が進むでしょう。DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉を生徒の皆さんもよく耳にすると思います。デジタルテクノロジーを活用し、より良い社会に変革する動きを意味します。大きな変化の時代を私たちは迎えます。

 また、近現代、人類がヒト中心の考え方、価値観で開発を進めてきたため、熱帯雨林の減少など地球環境が悪化し生態系が乱れました。これまで自然界にとどまっていた未知のウイルスが野生動物からヒトへ次々と感染する時代に入ったと言われます。自然環境と人類が共生できる、持続可能な社会づくりは、第二、第三の新型コロナウイルス出現を防ぐためにも重要なことです。

 未来は不確実で、見通しは立ちません。しかし、未来の担い手は今の若者、皆さんです。目指したい未来の社会はどんな社会ですか?コロナパンデミックが終わっても元にもどしてはいけないことは何ですか? 皆さんには、大きく考え、小さく始める、「Think big,start small」の心構えをもってほしいと思います。地球環境や未来のあり方を考えながら、自分にできることから始めて欲しいと思います。年の初めの私の希望です。

「校長室からの風」

           オンラインでのリモート型始業式が定着

 

 

寅年、始動!

 2022年、令和4年、干支は壬寅(みずのえとら)です。熊本西高から東に約800mのところにある高橋稲荷神社に初詣へ行きました。この社は日本五大稲荷の一つに数えられ、商売の神様として知られています。社の起源は室町期に遡るようですが、小高い城山の西麓の現在地に建立されたのは江戸初期です。傾斜地で高低差のある境内の清掃ボランティアに西高生がよく参加します。そしてお正月の巫女、お守りの販売等を西高の女子生徒たちが務めています。

 参拝の階段登り口に、西高美術部が制作、奉納した寅の絵馬が飾られていました。縦90㎝、横180㎝の大型の絵馬です。この20年間、美術部は毎年の干支にちなんだ絵を描き同社に奉納を続けており、歴代の絵馬が参拝用の階段沿いに並んでいます。12月末の冬休みに美術室を訪ね、寅の絵を協働で作成している美術部員と話を交わしました。「虎はとても格好良い題材です。どんな姿を描いても絵になります!」と部長の阿津坂さん(2年)が笑顔で語ってくれました。虎と言えば、『山月記』(中島敦)を連想する高校生が多いでしょう。高校の国語の教科書では定番の小説です。『山月記』の虎は孤高のイメージがありますが、西高美術部のモチーフは大きく異なりました。虎の家族が寄り添う温かい雰囲気の画面でした。10人ほどで和気藹々と楽しそうに絵を創り上げている様子が印象的でした。彼らの思いが絵で表現されていると思います。

 正月2日に西高ラグビー部は「初蹴り」を行いました。4日には多くの部活動が練習を始めました。剣道部は朝8時からの稽古ですが、すでに7時少し過ぎには自主的に道場で稽古する部員がいました。また、隣の柔道場では、初稽古の後に保護者の方々による手作りの温かい豚汁が振る舞われました。

 1月15~16日には、全国で約53万人が受験予定の大学入学共通テストが実施されます。西高から78人の3年生が挑戦します。4日には多くの3年生が朝から登校し、教室で自学に励む姿が見られました。高校生活の集大成として全力を尽くしてくれることを期待します。

 「初暦 知らぬ月日は 美しく」(吉屋信子)

 新しい年が始まりました。これからどんな日々が待ち受けているかわかりません。先の見通せない不安な今だからこそ、未来を考えたいと思います。コロナパンデミックが終わっても元にもどしてはいけないことは何かを考えることが大切です。未来を担う高校生が共に伸びる学び舎でありたいと心から願います。

「校長室からの風」

寒稽古 ~ なぎなた錬成大会

 この冬一番の寒波が襲来した12月26日(日)、西高の体育館で全九州高校なぎなた錬成大会を開催しました。九州の平野部でも降雪の予報が出され、大会実施が心配されましたが、当日は青空が広がり、全く雪の障害はありませんでした。長崎県は往復の道路事情を心配され欠場でしたが、沖縄県から首里高校が遠路出場されるなど他の県は前日の土曜の練習会から参加がありました。大分県からは九重・阿蘇の山々を越える道路を避け、福岡経由の鉄道での参加でした。

 しかし、体育館は冷え込みました。朝の気温は氷点下、日中も最高気温は3~4℃で、頬に当たる冷気は切るようでした。この過酷な環境のなかでも、生徒達は裸足でなぎなたの合同稽古、そして試合に臨みました。高校なぎなたの競技人口は少なく、各県においてなぎなた部として活動している高校は数校ずつしかありません。従って、総勢約90人の選手達が西高体育館に集い、一斉に稽古する様子は稀に見る壮観で、熱気に満ちていました。西高なぎなた部の生徒達も、有力な他県の高校との合同稽古や実戦はまたとないチャンスと捉え、とても張り切っているようでした。

 「このような機会を設けていただき感謝します」と異口同音に各県の指導者の方が述べられ、主催者として充足感を覚えました。長引くコロナ禍の影響で遠征や合宿が制限され、思うような活動ができていない学校がほとんどです。地理的に九州の中央に当たる熊本西高で実施できた意義は大きかったと思います。

 寒稽古という伝統がわが国にはあります。寒中に寒さに耐え克己心を養うため武道または芸能の稽古をすることです。全九州高校なぎなた錬成大会はまさに寒稽古にふさわしいものとなりました。全体の合同稽古は2階のアリーナ、試合は1階のなぎなた場で行いました。2階は時折日が射し込みましたが、1階のなぎなた場は一段と底冷えがする環境でした。それでも、すべての選手達(全体の9割は女子)の立ち居振る舞いは凜としたものでした。

 体育館でなぎなた錬成大会を行っているのと同時並行で、グラウンドではラグビー部が強い寒風のなか練習に励んでいました。今年は全国高等学校ラグビー大会(東大阪市花園ラグビー場)に出場できず、この熊本で冬休み期間は練習の日々です。来年こその熱い思いでこの冬を乗り越えてくれると期待します。

 年の瀬まで西高の各部の活動は続きます。

「校長室からの風」

 

伝統の継承 ~ 西高太鼓

 「私たちは、太鼓との出会い、先輩方、コーチをはじめ日頃から様々な縁(えにし)で結ばれていることに感謝しながら、本日この舞台で演奏できることを楽しみにしてきました。本年度もコロナ禍でなかなかステージに立つことができませんでしたが、先輩方からの伝統と太鼓に懸ける思いを受け継ぎ、演奏したいと思います。よろしくお願いいたします。」

 佐藤さん(1年)の挨拶のあと、佐藤さんと森永君(1年)の二人による太鼓演奏が始まりました。この日に向けて、瀬戸コーチの指導で創り上げてきた新曲「縁(えにし)」です。たった二人での演奏ですが、一打一打に気持ちを込めての8分間の熱い演奏でした。

 第32回熊本県高等学校郷土芸能代表選考会・吟詠剣詩舞発表会が12月22日(水)に宇城市松橋総合体育文化センター「ウイングまつばせ」で開催されました。太鼓部門に8校、伝承芸能部門に4校出場しました。出場校の中で西高太鼓部の2人は最少でした。しかし、プログラム1番に登場した西高の二人は、臆することなく、堂々と演奏しました。西高太鼓部は30年の伝統がある部活動です。しかしながら、3年生が引退した今年の夏以降は1年生2人となり、存続の危機に瀕しています。それでも、二人は瀬戸コーチの指導を受けながら、懸命に活動を継続し、この大会に出場したのです。二人を支えようと、5人の卒業生が本番に駆けつけ太鼓の運搬や演奏の準備を手伝ってくれました。演奏後の二人にはやり終えた達成感の表情が浮かび、笑顔も出ていました。大丈夫です。きっと西高太鼓部は来年度以降もその伝統を継承していくでしょう。

 長引くコロナ禍で部活動停止期間や様々な制約に苦しんできたのは西高太鼓部だけではありません。すべての高校の和太鼓部、伝承芸能部が、地域行事出演や演奏発表の場が激減しました。この厳しい環境の中であっても、日々の練習を続け、発表の機会を待ち続けています。このような中、今年の熊本県高等学校郷土芸能代表選考会・吟詠剣詩舞発表会は、保護者が観覧できる形で実施しました。昨年度と今年度は私たち熊本西高が大会事務局を担い、その準備、運営に5人の職員で当たりました。一般のお客さんへの開放までは踏み切れませんでしたが、保護者の皆さんに御覧いただけたことは一歩前進と思います。

 演奏後、感極まって涙を流す生徒。ステージ上の我が子を一心に見つめられる保護者。そして文化ホール玄関前で記念写真を撮る生徒や保護者。このような成果発表の場を年末に設けることができ、心から良かったと思います。

 来年こそは、高校生による太鼓演奏、伝承芸能の舞や演奏を広く一般の皆さん方へ披露したいと願っています。

「校長室からの風」

 

2学期の終業式を迎えて

 12月20日(月)、西高は2学期の終業式を迎えました。終業式に先立って、多くの生徒の皆さんを表彰できたことは私の喜びです。今回特筆すべきことは、美術と書道の両部門で来年夏の全国高等学校総合文化祭東京大会出場を決めたことです。美術科や芸術コースがない高校にとって、これは快挙と言えます。西高は体育系部活動が強いことで有名ですが、文化部の水準が高いことについて、もっと誇って良いと思います。

 さて、新型コロナ感染拡大の中で始まった2学期でしたが、10月から安定した状況となり、創立記念祭、チャレンジウォーク(強歩会)、クラスマッチ、体育コース1年の修学旅行など多くの学校行事を実施することができました。12月17日(金)、3年生の最後のクラスマッチが行われました。あいにくの天候のため、グラウンドでのソフトボールが実施出来ず、男女とも体育館でのソフトバレーボールとなりましたが、応援や歓声の声が響き、残り少なくなった高校生活を惜しむ3年生の気持ちが表れたクラスマッチでした。

 また、10月からはボランティア活動も再開され、多くの西高生が積極的に参加してくれました。併せて、部活動単位での地域貢献活動も行われました。地元の小学校の子ども達とのベースボール交流は野球部の伝統となっています。吹奏楽部は、医療従事者の方達にエールを送るチャリティコンサートに出演しました。その他、新しい動きが見られました。eスポーツ部です。eスポーツ部員が、介護老人保健施設を訪問し、ゲームを通しての交流、支援活動を行いました。エンターテインメントと見られているeスポーツですが、介護分野の認知症予防の活用が始まっており、本校のeスポーツ部の出番がこれから増えそうです。

 高校生の元気、行動力を社会は必要としています。特別な活動ではなくても、登下校中の西高生の爽やかな挨拶で、地域の皆さんは明るい気持ちになると言われます。西高は、地域の皆さんから応援され、信頼される、コミュニティ・スクールでありたいと願っています。

 明日から冬季休業です。冬休みは年が変わる節目の時期で、来し方行く末、即ち過去と未来を強く意識する時期です。受験を控えている3年生の皆さん、今こそ、ここで全力を尽くす時です。すでに進路が決まっている3年生の皆さんは、将来の自分のための勉強を続けてください。1,2年生の皆さんは、自らの進路を考える良い機会です。将来やってみたいことを「夢」と設定します。人は、近い未来の自分が想像できると頑張ることができます。時間は連続しています。未来は、現在の中にすでにあるのです。

 来年こそは、世界のコロナパンデミックが終熄することを皆さんと共に祈念したいと思います。皆さん、良いお年をお迎えください。

「校長室からの風」

        表彰式(西高のスタジオ)

体育コース1年生、修学旅行に出発!

 体育コース1年生(1年9組 40人)が、12月14日(火)早朝、修学旅行に出発しました。朝7時に学校に集合して出発式を行い、バスで福岡空港へ向かいました。福岡空港から松本空港(長野県)へ飛び、再びバスに乗車して目的地の志賀高原を目指します。午後3時半頃に到着予定で、その後、早速ナイタースキー研修が行われます。17日(金)まで3泊4日の旅程の始まりです。

 修学旅行は高校3年間で一度経験する特別な学校行事です。昨年度は、コロナパンデミックの影響で多くの高校で修学旅行が中止となりました。しかし、今年は秋の到来と共にコロナ感染者が急減し、とても安定した状況が続いており、予定通り修学旅行を実施することができ、生徒達と共に喜びたいと思います。

 体育コースの修学旅行ということで、スキー研修が中心になっています。阿蘇山より高い、標高1700mの志賀高原一の瀬ファミリースキー場において、14日の夕方、15日~16日のまる二日間とたっぷり時間をとってスキーの講習を受けます。最後は、スキーの上達度を測るバッジテストが実施され認定証を得ることになります。運動能力が高い体育コースの生徒達であれば、きっと上達も早く、二日目から自在に滑り、スキーの醍醐味を満喫することでしょう。

 また、雪国の風土を体感してほしいと願っています。九州の雪とは異なる、より気温の低い地域で降るパウダースノー(粉雪)の感触、白銀のゲレンデと青空のコントラストの眩しさ、さらには少し吹雪いた時の自然の厳しさなど、五感で体験してほしいと思います。

 最終日の17日は雪山を下り、松本城(松本市)を訪ねます。江戸時代の木造天守(閣)が今に残る城は全国に12城しかありません。私たちが誇る熊本城は、明治10年の西南戦争の時に天守閣は焼失し、昭和35年に鉄骨鉄筋コンクリートで再建されました。江戸時代の古い天守は貴重です。しかも、松本城は、天守閣が国宝に指定されている「国宝五城」(姫路城、松本城、松江城、彦根城、犬山城)の一つとして知られています。山々を背景とした松本城の優美な姿に、疲労が蓄積している生徒達も眼が洗われるような思いに包まれるでしょう。そして、松本城の天守閣に上り、先人の知恵と技術など、伝え守られてきた文化を実感してほしいと期待します。

 旅行は、いつ、誰と行ったかが大切です。高校1年生という感性豊かな時に、同じスポーツを愛する体育コースの級友と行く3泊4日の修学旅行は、かけがえのない青春の思い出になると信じます。

「校長室からの風」

  

 左から、学校での朝の出発式   バスの中       志賀高原でのスキー研修開始                    

オリンピアン来校 ~ 江里口選手の「特別授業」

 実際にお会いしてみると、江里口選手は陸上短距離アスリートとしては小柄で、意外に思いました。しかしながら、世界選手権、そしてロンドンオリンピック(2012年)と世界を舞台に戦ってこられた風格のようなものがあり、これがオリンピアンの雰囲気かと感じました。

 熊本県オリンピック・パラリンピック教育推進校講師派遣事業(スポーツ庁委託事業)の「オリンピアン講習会」を、12月10日(金)の午後に、体育コース全員(1~3年生)110人が参加して西高の陸上競技場で実施しました。

 江里口選手は本県菊池市出身で、県立鹿本高校時代に陸上100m選手として頭角を現し、国民体育大会少年男子で優勝。早稲田大学時代には大学選手権(インカレ)4連覇、そして日本選手権優勝を果たし、大阪ガス入社後の2012年のロンドンオリンピックに出場。100mは予選敗退でしたが、4×100mリレーでは2走を務め4位入賞に輝きました。

 熊本県出身のオリンピアンの登場に、生徒達は少し緊張気味で堅い印象があったのは当然でしょう。しかし、江里口選手は、「自分は中学時代には全国大会に出たことがない普通の選手だった。」と前置きし、「身長は170㎝で、筋肉隆々の体質でもなく、自分は陸上短距離選手としては体格に恵まれてない。」と言われました。そして、「そのような自分がどんな点を意識して練習し、いかに世界と戦ったのかを知って欲しい」と伝えられ、生徒の関心を引き付けられました。

 江里口選手のアドバイスのポイントは、先ず「考えてトレーニングすること」です。腕立て伏せを生徒にさせた後、「みんなはどこの筋肉を鍛えようと思い、腕立て伏せをしているのか?」と問われました。ただ言われたトレーニングメニューをこなすのではなく、自分のどの部分を強化、鍛錬するためにやるのか、意識して行わないと効果がないと諭されました。そして、練習の時はもちろん、普段の生活においても「正しい姿勢」を強調されました。トップアスリートは理にかなった練習をこなしており、その結果が記録につながっていることをわかりやすい言葉とパフォーマンスで教えられました。

 江里口選手は高校時代に国体に出場し、成年の部で競技する日本で一流のトップアスリートの姿に接し、憧憬の念を強く持ち、向上心が高まったと言われました。西高体育コースの生徒たちにとっても、オリンピアンからの「特別授業」を受けたことは、かけがえのない経験になったと思います。

 西高から未来のオリンピアンが出てくることを楽しみにしています。

「校長室からの風」

 

西高教職員チーム、優勝! ~ 県高校教職員ハンドボール大会

 熊本県はハンドボールが盛んな土地柄です。2年前に女子ハンドボール世界選手権大会が本県で開催されたことは記憶に新しいところと思います。ハンドボール熱は教職員の世界にも定着しており、私が教員になる前から、教職員ハンドボール大会が行われています。しかしながら、昨年はコロナパンデミックの影響で中止されました。今年は2年ぶりに再開、第62回熊本県高等学校教職員ハンドボール大会が11月27日(土)~28日(日)に実施されました。

 熊本西高にはハンドボール競技が専門の職員はいません。しかし、部活動としてハンドボール部があり、その顧問の樺島先生が中心となり職員チーム(選手14人)を結成し出場することとなり、形だけの監督を校長の私が務めました。

 チーム練習もほとんどできず、「まあ一回戦も厳しいでしょう」との樺島先生の予想もあって、気楽に27日(土)の会場の山鹿市総合体育館に臨みました。ところが、1回戦の天草支援学校、2回戦の九州学院、3回戦の熊本中央と圧倒的な強さで勝ち続けました。

 抜群のスピードで相手チームを翻弄したのが、体育科の女性職員の落合先生です。落合先生はバスケット選手として大学、実業団(鶴屋百貨店)で活躍しており、縦横無尽にコートを疾走し得点を重ねました。特別ルールで女性職員のゴールは2点にカウントされるため、西高チームは相手校を一気に引き離しました。また、男性職員では西田先生が次々にゴールを決めました。西田先生はラグビーの県国体成人チームのメンバーで、現役アスリートとして豊富な運動量と巧みな動きで相手選手をかわし、得点量産に貢献しました。

 西高職員チームは体育科の若手職員だけが牽引したのではありません。20代から50代まで幅広い世代の職員がそれぞれの持ち味を活かし、チームワークを発揮しました。58歳の山本先生(数学)、57歳の鬼塚先生(数学)、55歳の門脇先生(保健体育)、51歳の樺島先生(数学)の4人の50代の職員も交代しながらコートに入り、果敢にプレーし、チームが勢いづきました。

 28日(日)の千原台高校体育館での準決勝(対 阿蘇中央)、決勝(対 水俣)も快勝。西高職員チームは思いもかけず優勝したのです。大会最優秀選手(MVP)には落合先生が選ばれました。長引くコロナ禍のため、学校では職員の親睦行事がこの1年半ほど行われていません。久しぶりにスポーツを通じて、職員の一体感、連帯感を得ることができました。このことが、優勝したことよりも喜びです。

 来週は、学校でクラスマッチが予定されています。共にスポーツを楽しみ、交流を深める好機です。生徒達もきっと楽しみにしていることでしょう。

                                     「校長室からの風」

 

剣道、作文、美術、ボランティア ~ 西高生の多彩な活動

 熊本県高等学校剣道新人戦大会が11月20日(土)~21日(日)に行われ、西高剣道部が躍進を見せました。男子団体が3位、男子個人で山下貴薫君(1年)が準優勝、女子個人では平江愛梨さん(2年)がベスト8に入り、それぞれ九州大会進出を決めました。男女ともに九州大会出場を決めたのは県内の高校で西高だけです。特に、剣道王国の熊本において強豪校相手に次々と勝ち抜き、個人戦準優勝を遂げた山下君の快挙を心から称えたいと思います。大会前日の19日(金)に剣道部の充実した稽古風景を見て期待感が高まりましたが、見事に実力を発揮してくれました。上げ潮に乗っている今の剣道部の勢いに注目です。

 また、11月24日(水)、熊本西税務署の清水副所長が来校され、令和3年度「税に関する高校生の作文」(主催:国税庁)で入選を果たした田中瑠夏さん(1年)が表彰を受けました。科目「現代社会」の夏季休業の課題として取り組んだ田中さんの作文は、日頃は意識しない税の使い道について改めて調べ、学校教育や近所の公園整備など身近なところに活かされていることを知ったことをまとめたそうです。社会を意識することにつながったと語ってくれました。

 第5回全九州高等学校総合文化祭長崎大会が来月12月10日(金)~12日(日)に開かれます。昨年は熊本大会でしたが、コロナパンデミックで事実上の中止となり私たち高校関係者、生徒達が無念の涙を呑みました。今年は2年ぶりに平常開催の予定です。本校から美術部門で浪平佳凜さん(2年生)の作品が出品されます。浪平さん自身も生徒交流会に参加するため、長崎県立美術館へ赴きます。

 このように体育、文化と生徒の個々の活動が高い評価を受けることは学校にとって誠に喜ばしいことです。スポーツに、文化活動に、そして学習にと、それぞれの生徒が自ら得意とする領域で存分に自分の可能性を発揮しています。そして、生徒の無尽の可能性を引き出すために、教職員が寄り添い指導、支援しています。ここ熊本西高は、高校生の可能性が開花する環境が整っているのです。

 さらに明るい話題です。11月21日(日)に第1回「熊本みなとマラソン」が西区で開催されました。熊本港の親水緑地広場をスタート、ゴールとし、県道51号(熊本港線)を走るハーフマラソンです。このマラソン大会に西高から56人の生徒が運営ボランティアで参加しました。大会主催者の久保理事長(NPO法人スポレク・エイト)が来校され、「多くの生徒さんの積極的なボランティアの姿勢に感謝します」と御礼を申し述べられました。こちらとしては、ボランティアの機会を与えて頂いたことに感謝したいくらいです。

 西高生の活動範囲がどこまで広がっていくのか期待が膨らむ日々です。

「校長室からの風」

「税の作文」表彰

 

「夕日が美しい学校」 ~ 生徒会からの「西高魅力化プロジェクト」案

 11月16日(火)、今年度2回目の学校運営協議会を開催しました。地元の三和中学校長、地域の自治会長、西区区長、保護者会代表、同窓会代表等8人の委員さんを招いて、今後の学校運営のあり方を検討して頂くものです。今回はこの場に会長の濱﨑さんはじめ生徒会役員8人が参加し、生徒会が考える「西高 魅力発信プロジェクト」案を提言してもらいました。

 西高生がもっと積極的に小、中学校へ出かけて連携、交流を図るという提言がありました。体育コースの生徒が小学校の体育の授業のお手伝いをする、サイエンス情報科の生徒が小学校のプログラミング学習のお手伝いをする等です。また、いざ大規模な自然災害が起きたときに備え、防災活動を地元の小中学校と共同で実施する案も出されました。とても現実的な良案だと思います。

 また、西高にもっと地域住民の方が足を運んでもらえるよう、従来の創立記念祭(文化祭)とは別に「西高フェスタ」(仮称)を学校で開催し、地域の商工業者の皆さんに特産品販売を行ってもらうのはどうかという案も出ました。この他、移動販売車(スタンドカー)に学校に定期的に来てもらうことは販売の促進と西高生の買い物の楽しみが増える効果があるとのユニークな意見も出されました。高校生の視点からの面白い発想です。

 学校運営協議会委員の皆さんも、共感的に受けとめてくださいました。三和中の校長先生からは「中学校と高校の生徒会の共同活動はすぐにでもできる」と支持していただきました。また、西区区長さんからは、西区主催のイベントへの西高生の参加を歓迎する旨のご発言がありました。

 そして、同窓会代表の委員さんから、「あなた達にとって、西高の魅力は何ですか?」と生徒会へ質問がありました。

 「熊本市にありながら、周囲の自然が豊か」、「学校の敷地が広い」、「学習のICT化が進んでいる」、「生徒と先生の距離が近い」などの意見が出る中、「西高から見る夕日が美しい」と回答した生徒が3人いました。西高の西側には田畑が広がり、高い建物はありません。白川、坪井川の河口に連なり、その先は有明海です。鮮やかな朱色に輝く夕日が校舎、グラウンドから見えます。あの情景はきっと西高生の胸に刻まれるものでしょう。

 西高は公共交通機関には恵まれていません。JRの熊本駅、西熊本駅から約5㎞の距離があります。しかし、多少遠くても通うだけの魅力ある高校でありたいと思います。そして、そのような魅力ある西高を創っていく主役は生徒の皆さんです。これからもより魅力的な学校を目指し、生徒及び保護者の皆さん、地域住民の方々、教職員とで対話を重ねていきたいと思います。

                                     「校長室からの風」

 

ひたすら歩く、みんなで歩く ~ 西高チャレンジウォーク

 秋晴れの11月2日(火)、西高伝統の「チャレンジウォーク」を開催しました。学校を出て、西区地域を歩き巡る遠行(えんこう)行事です。2年前までは金峰山頂上まで登っていましたが、今年は新型コロナウイルス感染防止の観点からマスク着用での強歩(走らない)で、学年別に時差出発とし、コースや距離も変更しました。距離は15.6㎞、行程は日蓮宗の名刹、本妙寺までの往復です。

 早朝の7時45分には体育コースの生徒(1~3年)が最初に出発しました。体育コースの生徒達は先に行き、交差点や曲がり角において保護者役員の方や職員と一緒に交通案内も担当するのです。そして、一般の生徒が通り過ぎた後、追うように歩きます。8時半から9時半にかけて2年生、1年生、3年生の順で出発していきます。各クラス、男女別に4~8人の班をつくり、そのチームで歩くのです。3年8組の生徒達が最後に出発したのですが、その最後尾から私も歩き始めました。

 西高北門を出て、坪井川の堤防道を上流へ進み、高橋稲荷の通称「赤橋」(朱色の橋)を渡り、西回りバイパス道の歩道へ。柿の実が朱に染まり、薄が群生し、秋景色が広がります。沿道に保育園、幼稚園があり、幼児たちから「がんばれー」と可愛い声援が送られ、生徒達も手を振り返しています。島崎町に入り、次第に上り坂となり、いよいよ本妙寺(西区花園町)へ。

 本妙寺は中尾山(標高218m)の中腹にあり、鬱蒼とした木立に覆われ、疲労した身体には涼風が心地良く感じられます。しかし、最後に300段の石段という難所が待ち構えていました。息を切らしながら石段を登ると、加藤清正公の雄姿(銅像)が迎えてくれました。ここがチェックポイント。帰りは、清正公が眠る浄池廟(じょうちびょう)の本殿・拝殿の脇を通り、「胸突き雁木(がんぎ)」と呼ばれる急な石段を下り、表門から出て往路と同じ道に戻り、学校へ。

 復路では、遅れた1年2組の女子の班と一緒に歩きました。普段、長い距離を歩かない一般の生徒にとって、約15㎞の道のりは大きな負担となるようです。早くゴールした生徒達は制服に着替え、自転車で帰宅する姿が見られ、焦りも出てきます。しかし、一人ではありません。女子7人で朗らかに声を掛け合い、一歩一歩、ゴール(学校)を目指します。ひたすら歩く、みんなで歩く。ただそれだけの鍛錬行事ですが、西高生としての一体感が強まる得がたい時間です。

 午後1時近く、1年2組の女子7人の班と私が最後尾でゴールしました。同窓会及び育西会からバナナ、ドーナツ、飲み物を頂きました。完歩した達成感は何物にも代えがたいものでした。

「校長室からの風」

 

創立記念祭開催 ~ 「For others With others」(みんなのために みんなと共に) 

 秋晴れの10月28日(木)、熊本市民会館シアーズホーム「夢ホール」で第46回熊本西高校創立記念祭を開催しました。

 芸術鑑賞会に続き、午後1時40分に生徒会企画のオープニングアトラクションが始まりました。いきなり「オタ芸」と呼ばれる、アイドルの熱狂的ファンが行うペンライトを使ったパフォーマンスとバンド演奏を男子生徒有志が演じ、会場は笑いと歓声、拍手に包まれました。

 プログラム2番は太鼓部演奏。部員は1年生2人(男女)しかいません。外部指導員の瀬戸さんも加わり3人での熱演で、鼓動が客席に響き渡りました。力の限り打ち続けてのクライマックス、打ち止め後の静寂、そして3人で深々と頭を下げた姿勢のまま幕が下りる情景は印象的でした。

 プログラム3、4番は、1,2学年の発表。1年生は9組体育コースの林君が「2020東京オリンピックから学んだこと」というテーマで堂々の発表。2年生は、横手学年主任を中心に職員と生徒全員が出演の動画上映。受験に臨む3年生へのエールと、これから西高を背負っていく決意がメッセージに込められた動画で、生徒による撮影、編集の手作り感も伝わってきました。

 次のプログラムは演劇部発表。放課後のドタバタ騒ぎで、二子石教諭、田上教諭、打越教諭と3人の2年生担任も出演し、客席から大きな反響でした。また、続く放送部の発表は、職員室のベランダの庇にあるツバメの巣がテーマのドキュメント(記録)動画。今年度のNHK杯高校放送コンテストに出品したものです。さすがは放送部で、ツバメの雛を中心に小さきものの動きを丹念に追い、強風で破損した巣の修復にも関わるドラマとなっていました。

 プログラム7番は保健委員会の発表。生徒の生活習慣改善をテーマに、全校生にアンケート調査を行い、その結果を公表。平均して一日のスマホの使用時間が2~3時間以上が7割を超えていることは心配な状況です。一方、睡眠時間6時間未満が6割以上となっており、これらの相関関係が気になります。安定した生活リズムを維持することは西高生の課題であることが浮き彫りとなりました。

 そして、プログラムの締めは吹奏楽部の演奏です。3年生が引退したため部員は13人と少人数です。しかし、この日に向けて熱心に練習してきたことは、楽器の音色が音楽室周辺に放課後響き渡っていたことが証です。最後のジャズの名曲「Sing,Sing,Sing」はソロ演奏もあり、圧巻の演奏で、フィナーレをかざってくれたと思います。

 「For others With others」(みんなのために みんなと共に)。テーマどおりの創立記念祭となりました。 

                                     「校長室からの風」

 

ルネサンス、バロックの音楽との出会い ~ 西高「芸術鑑賞会」

 15世紀から17世紀にかけてのヨーロッパのルネサンス、バロックの音楽が古楽器で奏でられます。強い、大きな響きはありません。自己主張する音はありません。現代の電子音楽に慣れている私たちの耳には、とても控えめな旋律(メロディー)と感じられます。しかし、アコースティック、即ち楽器本来の深い音色に心地よく包まれます。

 西高創立記念祭の一環として、10月28日(金)に熊本市民会館シアーズホーム「夢ホール」において、芸術鑑賞会を開催しました。ヨーロッパの古楽器の合奏(アンサンブル)で知られる「グループ葦」の皆さんによる公演です。8人の出演者が、四種のリコーダー(縦笛)、弦楽器のヴィオラ・ダ・ガンバ、トロンボーンの先祖に当たる楽器サックバット、外観はピアノに似た鍵盤楽器のチェンバロなどの古い楽器を奏でられ、これに歌唱が加わります。そして、この日は特別に二人の舞踏家が参加され、ルネサンス、バロック時代のダンスを往時の優雅な衣装を模したコスチュームで踊られました。

 このようなヨーロッパのルネサンス、バロックの音楽及び舞踏には私も初めて触れました。知っている曲は、バッハ(ドイツ、1685~1750)の「メヌエット」だけでした。「初めて聴く音楽なのに、なぜか聴いたことがあるような記憶がありませんか?」と演奏者の方がステージから問いかけられました。それは恐らく現代音楽の起源だからかと思いました。また、ルネサンス、大航海時代のヨーロッパからカトリックの宣教師が戦国時代の日本にも渡来し、この九州、熊本でもキリシタンが増え、コレジオ、セミナリオといったキリスト教の学校、宣教師の養成所が設けられました。そこでは、当時のヨーロッパの音楽が演奏されていたことがわかっています。ひょっとして、私たちの先祖が、ルネサンス音楽を聴いたことがあるのかもしれません。そのようなことを想像すると、遠い記憶がよみがえってくるとも言えるでしょう。

 喧噪の音に包まれているような現代の私たちが、シンプルでおだやかだった頃のヨーロッパのルネサンス、バロックの音楽にさかのぼる時間の旅を経験したような公演でした。創立記念祭「芸術鑑賞会」にふさわしい公演でした。音響、照明とも整った本格的なホールで、ゆったりと音楽の世界に浸ることができました。生徒の皆さんにとっても、音楽の深淵を覗いた、特別な時間となったことでしょう。まさに、創立記念祭のテーマ「気韻生動」の音楽でした。

                                           「校長室からの風」 

 

 

創立記念祭を迎えて ~ オンライン開会式の挨拶

 熊本西高校は昭和49年10月に創立されました。最初は職員4人だけで生徒はいません。「清 明 和」の校訓をはじめ校旗、校章などを定め、募集定員は普通科4学級で発足することが決まり、翌年の昭和50年4月に第一期生の入学を迎えました。創立以来、今年で47年となります。他校では文化祭と言われることが多い秋の文化的行事を、本校ではあえて創立記念祭と呼ぶのはなぜでしょうか? 毎年、創立の原点に戻った気持ちで、新たに西高の元気を発信しようという思いが込められているのです。

 残念ながら2年前までのように学校全体を会場にし、地域に開放しての賑やかなお祭り的行事はできません。しかし、熊本市民会館シアーズホームという立派なホールを舞台に、芸術鑑賞、そして文化部をはじめ生徒のみなさんのステージ発表が開催されます。本格的なホールは体育館と異なり、音響、照明ともに優れていて、音楽や演劇など舞台芸術には最高の環境が整っています。ホールでの鑑賞マナーも身に付きます。

 今年の芸術鑑賞は、ヨーロッパの古い楽器、古楽器の演奏や歌のアンサンブル(合奏)を鑑賞します。私たちが日頃触れることがないクラシック(古典)で深い音色が楽しみです。また、皆さんのクラスメイトが、同級生が、ステージ上で演奏、発表をします。きっと普段の姿とは違い、「あいつ、すごいな」、「彼女、すてきだなあ」という新たな一面を再発見する機会となるでしょう。観客の皆さんが真剣に鑑賞することが、出演者の力を引き出すことになると思います。

 皆さん、創立記念祭は明日の市民会館だけではありません。学校の生徒ホールで20日からアート作品や研究発表の展示が行われています。小さなギャラリーですが、文化の香り漂う空間となっています。会期は明日までです。まだ観覧していない人は今日の放課後、足を運んでください。

 この創立記念祭は生徒会執行部はじめ実に多くの皆さんの熱意と努力によって実現しました。関係者すべての皆さんに感謝します。メインテーマは気韻生動。難しい言葉ですが、気品があっていきいきと動き出すようだという意味で、書道や日本画、能楽などわが国の伝統文化を称える時によく使われる言葉です。また、サブテーマの「For others  With others」、みんなのために、みんなと共に、という言葉は、新生徒会がスタートする時、私から贈ったもので、それをモットーに生徒会が活動してくれていることを頼もしく思います。

 コロナパンデミックの中でも、西高は途切れることなく創立記念祭を実施できます。このことを皆さんと共に喜び、明日を迎えましょう。

                                     「校長室からの風」

 

生徒ホールの作品展示 ~ 創立記念祭

 10月20日(水)から、生徒ホールにおいて創立記念祭の一環として、文化部の作品展示が始まりました。生徒ホールは西高自慢の生徒達の憩いの場です。売店に隣接する空間は2階まで吹き抜けで、大きな窓を通して中庭のテラスにつながり開放感があふれています。本校の創立記念祭は文化祭とも言えるもので、例年なら学校全体が舞台となり、ステージ及び展示の発表、バザー等と西高の活気と創造性を発信する行事ですが、今年はコロナ禍の中、芸術鑑賞とステージ発表を10月28日(木)に熊本市民会館で開催することにしました。そのため、展示部門は生徒ホールでの発表となりました。

 美術部は、油絵の大作や素描(デッサン)の小品など9作品。書道部は半切(はんせつ)の5作品。絵画、書の描(書)き手がどんな生徒なのか、想像するのも楽しいのですが、作品を前にして思うことは、創作者を離れ、作品そのものが雄弁に語るような気がします。これが創造の力なのでしょう。

 理科の各部も研究活動を広用紙にまとめて展示してあります。生物部の「農業用水路に生きるシジミの1年間の調査」は、学校周辺の用水路で生徒達が活動している様子を見たことがあり、親近感があります。化学部の「廃チョークを利用した銅廃液処理に関する研究」は、使い古したチョークという身近な素材に着目した研究です。地学部の「離岸流の研究」も、海(有明海)に近い西高ならではの研究テーマと言えるでしょう。

 また、英語部は西高が位置する熊本市西区について「West District」として地図を作成し、主な公共施設等が英語表記で示されています(もちろん西高も)。図書委員会は生徒(図書委員)オススメの本をキャッチコピーで紹介しています。

 そして、育西会(保護者会)からはこれまでの育西会会報(新聞)のバックナンバーがファイルにまとめられ展示されていました。現存する第55号(平成8年12月刊)から最新号の156号(令和3年8月刊)までの25年の変遷が凝縮しています。個人的にお世話になった先輩教師の皆さんの名前や写真を拝見し、懐かしくファイルをめくりました。

 小さなギャラリーです。けれども、何かそこだけ上質な落ち着いた雰囲気が感じられます。作品展示は28日(木)までです。まだ訪ねていない生徒の皆さん、昼休みか放課後に足を運んでみてください。西高の学校文化の奥深さ、豊かさに触れられると思います。

                                     「校長室からの風」

 

初めて選挙に臨む皆さんへ ~ 18歳選挙権

 10月14日(木)、衆議院が解散されました。衆議院議員総選挙が19日公示、31日投票の日程で行われることが決まりました。衆議院議員の任期4年がほぼ満了しての、約4年ぶりの総選挙となります。

 選挙は高校にとっては他人事ではありません。高校生の一部は選挙権を有しています。選挙権年齢が「満18歳以上」に引き下げられたのは平成28年でした。選挙期日の翌日(今回で云うなら11月1日)に満18歳の誕生日を迎える人までが選挙権を有することになります。恐らく高校3年生のおよそ6割は有権者として今回の総選挙に臨むことになるでしょう。

 少子高齢化が進むわが国において、若い世代にこそ政治に関心をもってもらう必要があるという目的で導入された18歳選挙権でした。高校でも、公民科の授業やホームルーム活動、生徒会活動などをとおして実践を重ねてきました。導入された当時、私が勤務していた高校の所在地の町長選挙がありました。有権者の生徒達の関心を高めるため、候補者2人にお願いし、放課後、正門前まで来て頂き、町政のビジョンを語ってもらいました。結果、高校生の投票率は75%を超えました。しかしながら、各種データを見ると、若い世代の投票率は期待されたほどは伸びていません。残念です。

 「自分一人が投票しても社会は変わらない」と云う高校生がいます。しかし、選挙の一人一票の原則はとても大切なことです。総理大臣も、県知事も、そして校長の私も一票です。18歳のあなたと同じ一票なのです。一票の重みを感じてください。そして、身分や納税額、性別などの様々な制限なく、一定の年齢を満たせばだれもが選挙権を有する普通選挙制は今では当たり前のことですが、その実現への歩みはまさにわが国の近代化と軌を一にするものでした。世界ではいまだ普通選挙が実施できない国もあります。

 生涯で最初の選挙を迎える生徒の皆さん、あなた達はこの国の主権者です。権利は責任を伴います。選挙権という貴重な権利を活かしてください。私たちの西高では国政選挙に先駆けて生徒会長選挙を電子投票で行いました。しかし、まだ国政選挙は電子化されていません。自ら投票所に足を運び、一票を投ずることになります。ただそれだけのことですが、その時、あなたは主権者としての役割を立派に果たしたことになるのです。

 なお、投票所では投票用紙が2枚渡されます。小選挙区は候補者名を、比例代表区は政党名を記します。戸惑わないように。

                                     「校長室からの風」

 

 

「学校の日常」が戻って ~ 平常の教育課程の再開

 10月1日(金)の朝、澄んだ青空の下、生徒達が次々と登校してきます。多くが自転車通学生で、滑るように正門から入ってきます。前日までの分散登校とは数が違い、自ずと活気あふれる雰囲気です。正門や昇降口の付近で職員が出迎えます。大きな声での挨拶はできませんが、「おはよう」の声は飛び交います。

 新型コロナウイルスの感染者が減少傾向にあり、熊本県の「まん延防止重点措置」期間が9月30日(木)で解除され、「分散登校・時差登校・短縮授業」の制限も不要となり、熊本西高も平常の教育課程再開となりました。朝8時30分始業、月・水・金が6時間授業、火・木が7時間授業の本来の学習活動に戻りました。もちろん、コロナパンデミックが完全に終熄したわけではありませんから、学校での感染防止の取り組みは続きます。特に、感染リスクの要因として指摘されている昼食、歯磨き、体育の授業や部活動での更衣などは、生徒の皆さんに一層の自覚を求めていくことになります。学校あげて、感染防止と学校生活の充実という困難な両立に挑んでいかなければなりません。

 緊張感ある再スタートの日でしたが、生徒達も職員もどこか喜びに包まれ、「学校の日常」が戻ってきたという高揚感に校内は満ちていました。

 部活動も全面再開です。柔道部員の朝のランニングも再び始まりました。放課後、自粛していたラグビー部の練習がグラウンドで始動しました。音楽室や周辺の廊下からは吹奏楽部員の楽器の音色が響きます。高校生活は人生から見るとまことに限りある短い期間です。現在の高校生は、その多くの時間をコロナ禍の中、制約されて過ごしてきました。せめて、規制がすべて解除された今のこの時期だけでも、存分に高校生活を満喫して欲しいと願うばかりです。

 学校行事も再開しました。10月5日(火)、体育コースの3年生39人はゴルフラウンド実習をグリーランドリゾートゴルフコース(荒尾市)で行いました。東海大学熊本キャンパス校のゴルフ部の皆さんのサポートを受けて、初めてコースを回ります。朝7時20分、学校で出発式を行い、マイクロバス2台での出立を私は見送りました。「まん延防止重点措置」期間は、すべての学校行事は自粛、延期してきましたので、解除後の初めての学校行事となります。青空が広がるスポーツ日和となりました。

 この平穏な日々が長く続くことを祈らずにいられません。

「校長室からの風」

 

スポーツの力 ~ 陸上部、野球部、そして富田宇宙選手

 8月25日に西高の2学期が始まりましたが、熊本県が新型コロナウイルスの「まん延防止重点措置」対象県のため、生徒は分散登校、そして部活動は原則中止となりました。公式戦2週間前からの部活動は認められましたが、学年によって午前と午後に分かれて登校のため、1,2年生の部員がまとまっって練習する機会は土日を除いてありません。

 校長室の窓から、広いグラウンドが見えます。最も手前で陸上部の生徒が練習しています。3年生が引退したうえに、学年別の練習のため、人数がより少なく寂しい光景に映ります。しかし、黙々と走り、投げ、新人戦に備えている様子が伝わってきました。9月17日(金)~19日(日)と新人陸上競技大会が県民総合運動公園陸上競技場(熊本市)で開催されました。西高陸上部は砲丸投、円盤投、やり投、三段跳などのフィールド競技で上位を独占、フィールド部門の学校対抗で優勝。トラック競技も併せた総合の学校対抗でも3位に入りました。10月7日~10日に宮崎市で開催される全九州高校新人陸上競技大会に2年生4人、1年生4人の計8人が県代表として出場することとなりました。

 9月23日(木・祝日)から九州地区高校野球熊本大会が始まりました。西高野球部は藤崎台球場(熊本市)で必由館高校と初戦でぶつかりました。共に甲子園出場の経験を持つ公立のライバルです。私も応援に行きましたが、手に汗を握る好試合となり、1対0で西高が競り勝ちました。団体競技の野球の場合、学年が分散されての練習は苦労が多かったろうと思います。

 陸上部の九州大会出場、野球部の難敵を下しての2回戦進出というニュースは学校の雰囲気を明るくしました。長引くコロナ禍で不規則な生活を強いられ、体調、体力を維持することも困難な中、はつらつとスポーツで自己表現する西高生を見て、頼もしく思います。

 そして、今日、9月24日(金)、東京パラリンピックの水泳競技のメダリスト、富田宇宙選手が西高に来校されました。本校の体育科の米田教諭(専門は水泳)が、富田選手が済々黌高校時代の水泳の指導者で、その後も長く交流が続いています。昨年、幾度も来校され、本校の体育コースの生徒達に講演をしてくださり、水泳部の生徒と一緒にプールで練習されました。今回、帰省されたため、体育コースの生徒達にメダルを披露する機会が実現しました。富田選手こそまさに逆境をスポーツの力で克服された人です。視力障がいのハンディを乗り越え、パラアスリートとして自信に満ちあふれた富田選手の姿を目にして、体育コースの生徒達もきっと大いに励まされるものがあったと思います。

 コロナパンデミックであっても、スポーツの力は少しも衰えないのです。

「校長室からの風」

 富田宇宙選手と体育コースの生徒たちの交流会

 

オンライン保護者会の実践 ~ 「学校情報化優良校」の認証

   1学年保護者会を9月16日(木)午後に開催しました。「えっ? まん延防止重点措置期間にできるの?」という声が聞こえてきそうですが、できるのです。もちろん、保護者の皆さんに西高に来て頂くことはありません。すべてオンラインで開催なのです。従って、保護者の皆さんは、ご自分のスマホやタブレット等で参加できるのです。しかし、「平日で仕事があり、オンラインでも参加しづらい」との声が聞こえてきそうですが、その対応もしています。

 1学年保護者会の内容は、学年主任の米田教諭の挨拶から始まり、九州産業大学の大西純一教授の進路講演会、西高教務部からの「2年次のコース選択説明会」、旅行会社による「修学旅行説明会」など盛りだくさんです。これらのほとんどが前日までに動画収録が完了し、学級(クラス)と生徒及び保護者の端末を結ぶコミュニケーションツール「Google Classroom」に保存されているのです。

    生徒達は登校して1年の各教室で視聴しますが、リアルタイムのライブ映像ではありません。適宜、休憩時間をとりながら視聴し、担任や副担任の支援を受けて理解を深めます。そして、これらの動画は9月20日(火)まで保存されていてアクセスできますので、保護者の皆さんは都合の良い時間に視聴できるのです。このオンライン保護者会の方式なら、距離も時間も超越できます。

 長期化するコロナ禍という逆境の中、いかにして学校行事を実施するか?鍵はICT(情報通信技術)です。西高は、一人一台タブレット端末の先進実践校として今年度4月にスタートし、わかりやすい授業の創造、生徒同士の協働学習、リモート生徒集会開催、オンライン生徒会選挙の実施など実践を重ねてきました。そして、今回のオンライン保護者会に代表される保護者とのデジタルコミュニケーションの充実に至っています。これらの実践が日本教育工学協会に高く評価され、この度、「学校情報化優良校」の認証を受けました。この認証を受けるのは熊本県の高校では西高が初めてです。

 ICTを日常的に取り入れた農業をスマート農業と呼びます。ICTを市民の生活につなげて利便性を高めている都市をスマートシティと呼びます。西高は、ICTを日常の教育の場に溶け込ませ、空間的、時間的に学校機能をより豊かにした「スマートスクール」を目指します。

 学校教育のICT化はフロンティア(未開拓領域)です。トライ&エラーの連続ですが、学校挙げて取り組んでいきます。いつの時代にもフロンティアはあるのです。定年近い私ですが、挑戦できるフロンティアがあることは喜びです。

 「校長室からの風」

 

パラアスリートに励まされる日々 ~ 東京パラリンピック

 東京パラリンピックの競泳男子400m自由形及び200m個人メドレー(いずれも視覚障害クラス)で、熊本市出身の富田宇宙選手(32歳)がそれぞれ銀メダル、銅メダルを取るという快挙を成し遂げました。新型コロナウイルス第5波に覆われている熊本県にとって明るいニュースです。しかも、富田選手は、熊本西高と関係が深い方で、二重の喜びに浸っています。
 富田選手は済々黌高校出身で、同校在学中、水泳部で活躍されました。その時、富田選手を指導したのが米田教諭で、現在、熊本西高の保健体育教諭で水泳部顧問です。米田教諭の話によると、富田選手が眼の病気にかかったのは高校2年生の秋でした。卒業後も親交は続き、視力が低下する中、パラアスリートの道を進む富田選手を米田教諭は応援しました。東京パラリンピックがコロナパンデミックの影響で1年延期となった昨年、米田教諭は富田選手を西高に招き、西高のプールで練習する機会を設けました。そして富田選手は、西高水泳部員達に対し練習法はじめ多くのアドバイスをされたそうです。富田選手のメダル獲得が決まると、西高Instagramでも快挙を喜ぶ水泳部員の声があがっていました。
 米田教諭から富田選手の話を聞く中で、私が最も印象に残ったのは、「私が出会った生徒の中でも特に目の力、眼力が強かった」という言葉です。この言葉は西日本新聞にも紹介されていました。困難に巻き込まれても屈しない、富田選手の意志の強さを象徴していると思います。
 富田選手は水泳競技ですが、視覚障害の陸上競技ではガイドランナー(伴走者)の存在に引き付けられました。重度の視覚障害の選手と短く細いロープで手をつなぎ、「選手の目」となって伴走し、競技の安全を支える役割を担っています。これまでの長く苦しい練習期間を一緒に乗り越えてパラリンピックの大舞台に出場した、まさに一心同体の二人です。陸上競技短距離のある種目では、二人をつなぐロープが切れ、レースを途中で断念するシーンが見られ、テレビ観戦していた私は息を呑む思いに包まれました。
 東京パラリンピックの競技の様子が連日、テレビ中継されています。これほど多様なパラスポーツがあるのか驚く日々です。そして、様々な障がいのある選手達が自分の有する運動機能を精一杯発揮する姿に、気持ちが揺さぶられます。
 西高生の皆さん、現在は部活動もできず、閉塞感に包まれていると思います。今こそ東京パラリンピックのテレビ観戦を勧めます。9月5日閉会ですから、期間はあと5日間です。パラアスリートのパフォーマンスを観ていると、「人間とはいかに素晴らしいものなのか」という深い感慨に包まれます。

「校長室からの風」

ICTの日常化 ~ コロナ禍を乗り越えるために

 月曜日朝の西高の1,2年生の授業では新しいことを始める緊張感に職員が包まれていました。ホームルームで授業する担当者が隣のクラスで授業を受けている生徒達に、「声は聞こえているか?」と問います。その声は、廊下を経て肉声と混じり、共鳴します。また、カメラは定点から授業を撮影しているため、授業担当者の姿はしばしば画面から消えます。隣のクラスの生徒にとっては声だけの授業となります。英語の発音は、スピーカーからハウリングして聞こえ、明瞭には聞こえません。ICT(Information  Communication Technology 情報通信技術)に不慣れな職員には戸惑いもあります。しかし、学校として一歩踏み出したのです。コロナ禍を乗り越えるためにはICTの力が必要なのです。
 西高は8月25日(水)に2学期を開始し、2週目に入ります。本県の新型コロナウイルス感染状況は厳しさを増しており、9月12日(日)までの「まん延防止措置期間」は時差登校(30分遅らせての9時始業)、短縮授業(45分)、1,2年生の分散登校(午前と午後の交互)、部活動休止等の対応に努めていますが、今週からさらに対応のギアを上げました。
 分散登校の1、2年生は、教室で授業を受ける人数を半分程度に減らします。登校したクラスの人数を近隣の教室に二分します。そして、一方の教室で教科担当者が授業をし、もう一方の教室へ授業動画配信するのです。配信を受ける側の教室では前方のスクリーンに授業動画が映し出されます。また、もう一工夫する担当者は、生徒一人ひとりが持っているタブレット端末に授業動画が届き、手元でも確認できます。さらに、濃厚接触者や基礎疾患があって自宅待機している生徒達も、この授業動画を自分のタブレットで受け取ることができます。すなわち、リアルタイムで遠隔授業に参加できるのです。
 他校では、たとえば出席番号の奇数、偶数に分け午前と午後に登校させ、同じ授業を教科担当者が二回実施する方式をとるところが多いようです。しかし、西高は、学年及び学級の一体性を重視しました。離れている者をつなぐICTの特性を活かしたのです。一つの教室での対面授業が最も良いことは自明です。しかし、コロナ禍でそれができないからこそ、分散した者をつなぐICT教育を推進するのです。登校できない在宅の生徒達にとっても、学校の授業と繋がっているという心理的な一体感は安心感につながると思います。
 ICT教育はもう特別なものではありません。タブレットは生徒の日常の文房具です。「ICTの日常化」の時が来ました。離れた教室を、自宅と学校を、学校と社会をオンラインで結び、毎日、毎時間、活用していきます。

 「校長室からの風」

「みなさん、がんばりましょう」 ~ 多難なスタート

 「2学期は始まりますが、不自由な学校生活となります。けれども、皆さん、がんばりましょう!」
 8月25日(水)の始業式の後、生徒会長の濱﨑さん(2年)が全校生徒にオンラインでメッセージを発信しました。校内に爽やかに響きました。
 新型コロナウイルス感染症の第5波の影響で熊本県は9月12日(日)まで「まん延防止等重点措置」が適用されており、2学期再開の熊本市域の高校もこれまで以上の感染防止策をとることが求められています。県教育委員会の方針をふまえ、本校の対応は次のとおりに定めました。
一 学校全体
  始業を30分遅らせ9時開始とし、授業は短縮45分で実施し、課外授業や部活動は休止とする。但し公式大会の2週間前から部活動は全体練習を行ってよい。
二 3年生
  受験、就職試験がこれから始まる時期であり、進路実現の重要性から一日6時間授業を実施する。
三 1、2年生
  午前と午後に学年が分かれて登校(分散登校)、それぞれ3時間授業実施。昼食を学校でとらない。教室の人数を通常の半分にするため、授業を2グループに分け、一方のグループは授業をオンライン配信する。登校しない学年の担当者が補充指導にあたる。
四 欠席している生徒
  濃厚接触者や体調に不安があり登校できない生徒に対して、時間割通りの授業のオンライン配信を行い、自宅においてタブレットで受信し授業に参加できる。
 

 このように2学期のスタートは多難なものとなりました。分散登校する1、2年生は午前と午後を交代し、毎日、半日は登校しますが、全校生徒がそろうことはありません。不規則で不安定な学校生活が当面続くことになります。しかし、この困難な状況に対し、学校はICT教育の特性を発揮し対応したいと思います。一人一台タブレット端末が整備されている西高の力が問われています。
 今朝、2年生の昇降口にボードが掲げられ、今日は午後に登校予定の生徒達を励ます言葉が書かれてありました。この言葉通り、「できる範囲で、できる環境で、できるだけの努力をしていこう」という思いを生徒の皆さんと私たち教職員が共有し、難局を乗り切っていきましょう。

「校長室からの風」

「多様性と調和」 ~ 2学期始業式

 8月25日(水)、熊本西高は2学期始業式を迎えました。
 新型コロナウイルス感染症拡大に歯止めがかからず、お盆の故郷への帰省も自粛するよう呼びかけられた、非常事態の夏でした。今月中旬には停滞前線によって一週間にわたって大雨となった異常気象の夏でした。これまで当たり前だったことが、当たり前にできない不自由な夏でした。それは今も続いています。
 しかし、この困難な状況の中、7月下旬から8月上旬にかけインターハイこと全国高校総体及び全国高校総合文化祭が実施され、西高から22人の生徒の皆さんが参加、出場できたことは大きな意義があったと思います。始業式に先立ち、全国大会を体験した6つの部活動の代表者が、その報告をスタジオで行い、各教室へオンライン配信されました。コロナ禍の中、大会が開催されたことへの感謝の思い、そして全国大会のレベルの高さ、そこで勝つことの難しさをそれぞれ述べ、最後に異口同音に「今回の結果は悔しい」と語りました。全国6位入賞を果たしたウエイトリフティングの西田君(3年)でさえ、「表彰台を狙っていたので悔しい」と言いました。
 「悔しさ」こそ、若人が成長する原動力だと私は思います。「皆さんは特別な体験ができた。このことを誇りに思って欲しい。そして、次の目標を自ら立て、進んで欲しい」と励ましました。
 始業式の校長講話(オンライン配信)では、東京オリンピック、そして昨夜開幕した東京パラリンピックの共通テーマ「多様性と調和」(Diversity  and  Harmony)について語りました。人種、性別または自らの性認識、言語、宗教、政治そして障がいの有無など様々な面で違いを受け入れ、そのうえで共通のルールのもとフェアに競い合うオリンピック、パラリンピックは、まさに多様性と調和にふさわしい世界イベントだと思います。オリンピック競技種目も33競技、339種目と多種多様となり、東京大会ではスケートボード、スポーツクライミング、サーフィンなどの新しい競技が加わる一方、わが国の伝統的な武道である空手が脚光を浴びました。
 生徒の皆さん、世界はますます多様性を認め合い、共に生きていく共生社会へと向かっています。同じ西高生であっても、性格や趣味、価値観が違う人がいるのは当たり前です。自分と違う他人がいるからこそ、自分の個性が輝くのです。西高生一人ひとりがお互いの良さと違いを認め合い、高め合っていくことを期待しています。
 2学期が始まりました。しかし、9月12日までの蔓延防止期間は、短縮授業や1,2年生の分散登校などで乗り切ろうと考えています。変則な日程が続きますが、かけがえのない学校生活を一日一日、大切にしていきましょう。

「校長室からの風」

中学生の皆さん、ようこそ西高へ ~ 中学生体験入学

 朝8時を回った頃から、正門、西門から自転車で入ってくる中学生の姿が目立つようになりました。来校を歓迎する太鼓部の勇壮な太鼓の音が響きます。部活動紹介のチラシを配付する袴姿のなぎなた部の女子生徒たちが中学生を待ち構えています。この日のために用意したJR熊本駅及びJR西熊本駅と西高を結ぶ臨時貸し切りバス(2台)、そして送迎の保護者の車が次々と到着します。

 令和3年度の西高オープンスクール「中学生の体験入学」を7月30日(金)に実施しました。新型コロナウイルス感染対策のため、分散・自律型の体験入学を企画しました。30日(金)を午前と午後の部に分け、8月の20日(金)の午前にも実施予定です。受付した中学生の皆さんは8人~10人の小班に分かれてもらい、先ず教室に入ります。そこで西高の概要及び体験入学の要領を担当の生徒が説明します。その後、各班の案内役の生徒二人が、中学生の希望も聞きながら、模擬授業(国語、数学、英語、公民)の教室や文化部活動体験の教室、そして広く校内を巡ります。それぞれのプログラムは10分~15分です。

 西高の「中学生体験入学」は、生徒が前面に出て活躍します。駐輪案内、受付、教室での説明、班の案内(ガイド)、そして各部活動の参加体験型プログラムも西高生が運営するのです。この「中学生体験入学」のボランティアスタッフの西高生はおそろいの青のTシャツ姿です。また、職員はレモンイエローのポロシャツを統一で着ます。文化部のプログラムではパソコン教室でのeスポーツ体験、礼法室の茶道体験などは特に人気があるようで、班が順番待ちする光景が見られました。また、ユニークなものとして、西高の売店体験として飲み物とパンをプレゼントしました。

 クライマックスが午前10時半と午後2時半から体育館で行われる体育部活動パフォーマンスです。それぞれの部活動の代表の生徒達がユニフォーム等の姿で精一杯のおもてなしのパフォーマンスを演じました。音楽に合わせての5人でのなぎなた演舞、肉体美を誇示しての男子水泳部の紹介など、観覧の中学生から拍手や歓声、笑い声が響き、会場は一体感に包まれました。

 様々なプログラムを体験する中学生の皆さんの顔は輝いていました。ちょっと年齢が上のお兄さん、お姉さんである西高生の歓迎の気持ちが十分に伝わっていると思いました。数年先の少し未来の高校生の自分が見えましたか?

 西高の校訓は「清・明・和」です。清らかで、明るく、和やかな西高の雰囲気を中学生の皆さんに感じてもらえたでしょうか?猛暑の中、午前の部に約200人、午後の部に約100人の中学生が来てくれました。心から感謝します。

 8月20日(金)の午前にもう一回「体験入学」を開催します。

 「GO WEST!」 中学生の皆さん、参加をお待ちしています。

吹奏楽部、「銀メダル」 ~ 熊本県吹奏楽コンクール

 「今度コンクールに出演します! ぜひ演奏を聴きに来てください!」
 7月の上旬に、吹奏楽部の部長の中川君(3年)と副部長の古賀さん(3年)が校長室を訪ねてきて、案内状を手渡してくれました。長引くコロナ禍で、高校生の吹奏楽大会はこの一年半、ほとんど中止となっていました。久しぶりにライブの演奏を聴くことができると、当日を楽しみに待ちました。
 7月24日(土)、高等学校Aパート(大規模編成)の吹奏楽コンクールが県立劇場コンサートホールで開催されました。30校が参加し、朝9時45分から夜の7時半まで演奏が続きます。熊本西高校は19番目の出演で午後4時8分から20分までの12分間が演奏時間です。観覧は保護者と学校関係者に限られていましたが、会場のホールは大勢の観客で埋まっていました。コロナウイルス感染対策で、席は一つ空けで座ることになっていましたが、久しぶりのコンクールで期待感が場内に漂っていました。
 いよいよ西高の出番です。部員は総勢25人。40人~50人台の大規模校が多い中、Aパートでは少人数の編成です。最初が共通課題曲「エール・マーチ」、そして次に自由曲として選んだ「斑鳩(いかるが)の空」です。演奏が始まると、人数の少なさの不安は払拭されました。大規模校に負けない力強いサウンドが響き、聴く者に届きました。学科や学年、クラスは異なり、一人ひとりの性格や個性も違いますが、それぞれの楽器でパートを担当し、全員で一つの楽曲を創り上げる吹奏楽の魅力を実感できた時間でした。コロナパンデミックによって忘れかけていた時間でした。
 指揮棒を振られた顧問の寺本教諭は、「少ない人数ながらそれぞれが力を発揮し良い演奏をしてくれた」と生徒達を称えられました。審査の結果は銀賞でしたが、ここ10年ほど銅賞に甘んじていたので、大きな成果と言われました。私から見ると立派な「銀メダル」に値する演奏だったと思います。
 このコンクールを区切りに3年生は吹奏楽部から引退し、進路実現に向かって全力で取り組むことになります。吹奏楽部部員はまた少なくなりました。しかし、1、2年生の部員達は今週も毎日、音楽室及びその周辺で練習しています。
    明日の30日(金)は、中学生の体験入学を西高で行います。来年度の入学生に対して、西高吹奏楽部のサウンドを印象づけて欲しいと期待しています。

水の恩恵 ~ 1学期終業式

 今日は、涼しい話題をと思い、「水」をテーマに選びました。

 生命は水の中で生まれたと言われます。年齢で少し差はあるようですが、人間の体は平均して約70%が水でできています。水なしでは生きられません。断食や僧侶の修行でも水だけは摂取して良いとなっているのはそのためです。

 さて、ワクチン接種は進んでいますが、この夏も、マスクの着用、こまめに手洗いとうがい、そして部屋の換気といった基本的なコロナ対策に取り組まなければなりません。私たち日本人にとって手洗いやうがいは子どもの頃から当たり前の行動で、習慣化しています。

 しかし、世界にはこれが簡単にできない国、地域が多く存在します。国連のデータによると、不衛生な水の生活環境で暮らす人が45憶人もいるとのことです。世界の人口が78億人ですから、6割近い数字となります。21世紀の最大の資源問題は水不足だと言われています。20世紀後半からの急激な人口増加に水の供給量が追いついていないのです。水は日々の暮らしだけでなく、農業や工業でも重要です。水は、健康、環境、経済と多くの社会要因と密接に関わっています。水不足が解決されなければ持続可能な社会は成り立ちません。

 このような世界の水問題事情から考えると、日常、飲料水で手洗いやうがいが存分にできる私たちはなんと恵まれているのでしょうか。この水の恩恵は、わが国の自然環境だけでなく、井戸を掘り、山に水源の涵養林を植え、上水道を整備してきた先人たちのお蔭にほかなりません。近年はシャワーや洗車など日本人の生活上の水の無駄遣いが問題になっています。あらためて、限りある水に対して、私たちは謙虚な気持ちになりたいと思います。

 生徒の皆さん、この夏、手をこまめに洗いましょう。手を洗うことは涼しく気持ちよい行為です。一日に幾度も洗いましょう。そして水を飲みましょう。熊本市では蛇口をひねれば天然のミネラルウォーターが出てきます。阿蘇に降った雨が20年かけて地下水として磨かれ、安全で安心な水道水となります。体育系部活動の皆さんは、熱中症予防のためにもこまめに水を飲みましょう。

 西高から3㎞しか離れていないアクアドームで、今、ドイツのオリンピック水泳チームが直前合宿をしています。残念ながら、練習は非公開ですが、東京オリンピック開幕が近づいたことを実感します。コロナパンデミックの中、どんなオリンピックになるか世界も注目しています。東京オリンピック・パラリンピックが無事に開催できることを皆さんと共に願いたいと思います。

 明日から夏季休業です。2021年(令和3年)の夏は人生で一回きりです。皆さんが自分の成長のために、一日いちにちを大切に過ごすことを期待し、1学期終業式の講話を終えます。

「生まれてきてくれて 有り難う」 ~ 性教育講演会

 西高と同じ熊本市西区の島崎町に慈恵(じけい)病院というキリスト教精神を母体に設立された病院があります。産婦人科、内科、小児科などがある総合病院ですが、「こうのとりのゆりかご」という取り組みで全国に知られています。出産しても、様々な事情で自分では育てられず追いつめられた親が、匿名で赤ちゃんを預けることができる場所が慈恵病院にはあります。何よりも、一人では生きていけない新生児、赤ちゃんの命を救うため、緊急避難場所としての受入れを慈恵病院は15年近く続けておられます。このような実践は我が国では熊本の慈恵病院だけが行われており、心から敬意を表します。

 慈恵病院で看護部長をお務めの竹部智子様に講師をお願いし、7月15日(木)、西高生1,2年対象の「性教育講演会」を実施しました。慈恵病院にいらっしゃる竹部看護部長と、西高をオンラインで結び、リモート形式で行いました。

 演題は「未来ある皆さんに伝えたいこと ~ 産婦人科の現場から」です。

 最初に、今週、慈恵病院で出産、誕生のお母さんと赤ちゃんが登場されました。赤ちゃんが生まれたときに陣痛の痛みも吹き飛び、お母さんは、赤ちゃんに「生まれてきてくれて、有り難う」と語りかけられたそうです。この言葉は、竹部看護部長の講演の中で随所にリフレインのように出てきました。

 「赤ちゃんは皆、待ち望まれて生まれてきたもの」であるにもかかわらず、なぜ育児放棄、虐待などの問題が起きるのか。それは決して母親一人の責任に帰すべきではないと言われます。相手があって子どもは生まれるものであり、経済面を含めた環境の問題など、母親一人では解決できないことが多いのです。従って、「こうのとりのゆりかご」という場所を設けると共に、慈恵病院では、育てられないと苦悩する親の相談体制整備に力を入れてきたと言われました。

 「こうのとりのゆりかご」の様子が実況で中継されました。特別な門から入り、小道を30mほど歩き、赤ちゃんを預ける扉があります。その扉を開けると保育器とお母さんへのメッセージが用意されています。赤ちゃんを預け、扉を閉めると二度と扉は開かない仕組みになっているそうです。夜、扉の前にたたずむ女性の姿を竹部看護部長さんも目撃されたそうです。

 思春期の男女がお互いを好きになるのは自然なこと、けれども男性と女性では気持ちの表し方や性への感覚が異なっていることをお互い認めあうことが大切だと語られ、改めて生徒たちに対しメッセージを伝えられました。

 「女子の皆さん、もし今、妊娠したら、育てられますか?」

 「男子の皆さん、もし今、妊娠させたら、育てられますか?」

 かけがえのない命と性に関わる産婦人科の現場で、患者さんの一番近くに寄り添ってこられた竹部看護部長の言葉は、優しいものですが、重みのあるものです。心揺さぶられるお話しでした。

全国の舞台へ ~ 全国高校総体(インターハイ)、全国高校総合文化祭

 7月13日(火)に熊本県は梅雨明けし、一気に入道雲が湧き、強烈な日差しが降り注ぎ始めた気がします。盛夏到来。この夏、2年ぶりに全国高校総体(インターハイ)が北信越地域で、全国高校総合文化祭が和歌山県で開催されます。この高校生のスポーツ及び文化の祭典に、西高からは柔道(女子)、なぎなた(女子)、陸上競技、ウェイトリフティング、競技かるた、美術の6つの部活動、合わせて22人の生徒の皆さんが出場します。創立以来「文武両道」の実践を掲げる西高の面目躍如たるものがあります。

 西高の同窓会「西峰会」主催の全国大会出場激励会が7月14(火)放課後に本校で行われました。藤井会長が「皆さんの活躍は同窓生の誇りです」と挨拶され、6つの部の代表に激励金を渡され、励ましの言葉を贈られました。

 女子柔道部主将の大野さんは、「日本一を目指して日々練習してきたので、その目標に向かって頑張ります」と言いました。

 なぎなた部主将の内田さんは「私たちも日本一が目標です」と言いました。

 陸上部主将の荒野君(400mハードル)は「出場する4人でベストを尽くします」と言いました。

 ウェイトリフティング部から1人出場する内田君(102㎏級)は、「表彰台を目指します」と言いました。

 熊本県チームの一員に選ばれた競技かるた部部長の児藤さんは「県代表として頑張ります」と言いました。

 作品が県代表として出品される美術部の久保さんは「高いレベルの作品に接し、他県の生徒と交流してきます」と言いました。

 決意を述べる生徒の皆さんの表情は意志的で、高い目標を見据えているようでした。「自分たちはやればできる」という、ゆるぎない自己肯定感が拠り所になっているに見え、頼もしく思いました。

 この1年半あまり、未曾有のコロナパンデミックによって私たちの生活は大きな影響を受けました。部活動も様々な制約を受け、思うような活動ができなかったと思います。目標を見失いかけたこともあったでしょう。それでも、自己管理に努め、たゆまぬ努力を続けてきたことが全国大会出場につながったと思います。逆境の中でも、生活の軸がぶれず、自らの本分を貫いた姿勢を心から称えたいと思います。

 いよいよ全国の舞台が待っています。大きな舞台は若者をさらに大きく成長させます。全国大会に出場する皆さんが、全国各地から参加する志ある高校生と競い合い、交流し、ひとまわりふたまわり大きく成長して、笑顔で帰ってきてくれることを期待しています。

進化する授業 ~ ICTで広がる授業の可能性

 西高は、今年度、1人1台タブレット端末の先行実践校(18校)に採択され、校内のネットワーク環境が整備されました。そして、授業はじめ生徒の学習場面での積極的なタブレット活用、すべての保護者にアカウントを付与し学校とのペーパーレスのデジタルコミュニケーション促進、また生徒会選挙のオンライン化などに取り組んできたところです。その実践が評価され、7月1日には、ICT特定推進校(県内6校)に選ばれました。

 西高の授業は、ICT(情報通信技術)を進んで取り入れ、変化しています。最近、私が実際に参加した具体的ケースを二つ紹介します。

 7月8日(木)4限目、2年4組(普通科)での「英語」の授業。英語によるディベートが行われました。論題は「日本の大学の授業料無償化をすべき」(University education should be free in Japan)で、このことに対し、肯定、否定の立場に分かれ、ディベートを行いました。英語でディベートに挑戦することは、相当の語彙力がなければ難しく、以前は容易にできませんでした。しかし、生徒達は1人1台タブレット端末を所持しています。即座にGoogle翻訳機能を利用し、表現したい日本語を入力し、瞬時に英語翻訳します。そしてそれをスピーチします。問題は、発音です。知らない単語が多く、たどたどしい発音になりますが、ディベートでは「発音より内容」です。ぎこちなくても伝えたいという気持ちがコミュニケーションの基本だと思います。クラスが3グループに分かれ、ディベートが展開される光景を見ていると、ICT効果を実感しました。

 また、翌日(金)1限目、2年1組(サイエンス情報科)の「科学情報」の授業。崇城大学の星合(ほしあい)教授と本校をオンラインで結び、リモート形式でプログラミング言語「Python」(パイソン)の入門講義が行われました。音声も画像もとてもクリアな状態で、星合先生のわかりやすく丁寧な解説に生徒達の学習理解も進みました。これからの社会では、どんな分野へ進んでもプログラミング言語の学習は必要だと星合先生は言われます。社会の情報化が進む中、その基盤であるプログラミングを学ぶことは重要であり、論理的思考力を鍛え、情報社会の仕組みを理解することにも役に立つと思われます。これまで別の分野と思われていたものを結びつけ、新しい価値を生み出すイノベーションの力の基本にプログラミング的思考力が不可欠と星合先生は力説されます。

 学校教育は未来の社会の担い手を育成するものです。急速な社会の変革の中にあっても、主体的に社会をより良く変えていける人材を育てていきたいと思います。西高の授業はますます進化していきます。ご期待ください。

               英語のディベート授業

               科学情報の遠隔授業

対話への期待 ~ 生徒会と育西会(保護者会)との第1回ミーティング

 「生徒会の皆さんと、こうして話をすることで交流、親睦になればと願っていました。」と育西会の池田会長が冒頭に挨拶されました。こうして、7月8日(木)放課後、会議室にて、生徒会長はじめ生徒会役員の女子生徒5人と保護者代表である育西会の6人の役員さんとのミーティングが始まりました。生徒会顧問の吉田教諭と校長の私は傍聴人の立場で参加しました。

 事前に保護者側からテーマをいくつか提示してあり、生徒会でも話し合いをして臨んでおり、活発な意見交換が行われました。最初のテーマの「制服」については、生徒側から特に積極的に意見が出ました。西高の女子の夏のブラウスは、汗をかくと生地が肌にはりつき、通気性が弱く、男子が着用しているポロシャツの導入を要望するものでした。保護者(母親)からも、ブラウスはアイロンが必用で手間がかかるので、女子のポロシャツ導入に賛成の声が相次ぎました。また、保護者からは、女子のスラックスも導入し、スカートとの選択制にしたらとの意見も出て、生徒達からも賛成の声があがりました。

 また、西高生の約8割が自転車通学生であり、雨の日にはカッパを着用しても制服が濡れるため、始業前に更衣室を開放してもらえないかとの要望が生徒会から出されました。そして、公共交通機関の充実を求める声が双方からあがり、JR西熊本駅からの路線バスがないことの不便さが指摘されました。

 さらには保護者から、西高周辺には街灯が少ないようだが、冬の帰宅時間帯に不安はないかとのお尋ねがありましたが、生徒達からは「だいたい複数で帰るので、特に不安はない」との返答でした。

 生徒と保護者の対話を聴いていて、あらためて気づかされることが数多くありました。学校生活を送る中でこんな点で困っているという生徒の切実な気持ちを重く受け止めました。また、子どもたちに安心、安全な高校生活を送って欲しいという保護者の思いの深さも痛感しました。そして、何より、自分たちで話し合ったことを述べ、自分たちの学校をより良くしたいという生徒会の生徒の姿勢を頼もしく思いました。高校生は、身近な大人(保護者、教職員)を通じて、第三者の世界、即ち社会を見ているのです。若い世代にこそ、現実を変える力があると言えます。

 学校の主人公は生徒です。その生徒を支える立場として、教職員と保護者の存在があります。それぞれ役割は異なりますが、学校をより良くしたいという気持ちでは対等だと思います。

 保護者代表の皆さんと生徒会役員とで、対等に真剣に話し合いが行われました。このような対話の積み重ねこそが、西高発展の基礎になると思います。

夏は来ぬ

 1学期の期末考査が6月25日(金)で終了し、部活動が再開され、西高のグラウンド、体育館は活気が出てきました。特に、夏の全国高校野球選手権熊本大会を控えている野球部は、一段と気合いが入り練習しているようです。夏の甲子園大会が2年ぶりに開催されることは、高校関係者にとっては喜ぶべきことです。本校野球部は7月10日(土)に初戦が予定されています。

 昨日の放課後、野球部の練習の様子を見に行きました。陸上競技場を通らず、西高北門を出て、細い農道を通ってバックネット裏まで行きましたが、周辺の田圃はこの数日で一気に田植えが済んでいることに気づきました。田に張られた水に早苗が映り、爽やかです。その光景を見ていると涼しい風が体を吹き抜けていくような感覚を覚えました。田には周囲の山々が影を落とし、畦には白鷺がいて、清涼な風景です。これらの風景に包まれていると、ふと「夏は来(き)ぬ」という唱歌を思い出しました。

 「卯の花の 匂う垣根に 時鳥(ほととぎす) 早も来鳴きて

  忍音(しのびね)もらす 夏は来ぬ」

                      (明治29年 作詞:佐佐木信綱 作曲:小山作之助)

 唱歌「夏は来ぬ」は、私が子どもの頃によく祖母が口ずさんでいました。時代を超えて愛された歌だからでしょう、小学校の音楽の授業で私も歌った記憶があります。子どもの頃は文語調の歌詞が難しく、意味はよくわからなかったのですが、気持ちが和む優しいメロディは心に残ります。五番ある歌詞の中には、さみだれ(五月雨、梅雨のこと)、早乙女(田植えする娘さん)、玉苗(たまなえ、稲の若苗、早苗とも言う)など初夏の季語がちりばめられており、それぞれの情景を歌い、最後は「夏は来ぬ」(夏は来た)と結ばれています。

 例年、熊本平野の田植えは6月中旬から下旬にかけて行われます。熊本西高校の周囲は田園が広がっており、田植えによって夏到来を実感します。早乙女の田植えは遠い昔の話で、現代は田植機による田植えですが、それでも大切な年中行事で風物詩だと言えます。古代、我が国が「豊葦原の瑞穂国」(とよあしはらのみずほのくに)と呼ばれたことも思い出します。

 水が張られた多くの田の脇道を歩くと、天然のエアコン効果か、涼しく感じられます。汗にまみれて白球を追う西高野球部の生徒達にも、この涼しく優しい風が届くことでしょう。

中学3年生の皆さんへ ~ 西高の体験入学を開催します!

 中学生の皆さん、熊本県立熊本西高校のホームページをご覧いただき、ありがとうございます。各地域で中体連大会が行われている時期ですね。県大会に進出が決まった人もいると思います。今は部活動に全力を注いでいるという人も多いことでしょう。

 そして、3年生の皆さんは高校進学を強く意識する夏の到来ですね。

 熊本西高校では、皆さんの進路選択の一助になればと、夏季休業中に体験入学を企画しました。期日は、7月30日(金)の午前と午後、さらに8月20日(金)の午前です。県内すべての中学校にご案内を送ります。本校のホームページでもお知らせします。また遠慮なく本校にお電話でお尋ねください。

 熊本西高の特色(魅力)は大きく次の4つです。

 

一 「一人ひとりが大きく伸びる学校です」  

  生徒一人一台にタブレット端末が配備され、個別最適な学習指導を行っており、皆さんの可能性を引き出します。そして、校外での探究活動や大学・専門学校での体験入学(アカデミック・インターンシップ)、企業での就業体験(インターンシップ)などの体験学習も豊富です。

二 「多くの出会いが待っています」

  科学や情報を興味深く学べるサイエンス情報科、幅広い学びの中から自分の進路を探す普通科(特進・普通)、トップアスリートを目指す体育コースがあります。そして学校行事や生徒会活動、部活動では学校が一体となります。様々な学びや個性豊かな友との出会いが待っています。

三 「部活動が多彩で活気があります」

   全国的に知られたラグビー部、女子柔道部、なぎなた部をはじめ全国高校総体(インターハイ)に毎年出場する陸上部、水泳部。そして3年前に甲子園に出場した野球部。体育部活動が強いというイメージの西高ですが、文化部も多く活発で、百人一首、美術、書道は全国高校総合文化祭の常連校です。また県立高校唯一のeスポーツ部は人気急上昇です。

四 「学習にもスポーツにも最高の環境です」

   校内すべてにWi-Fi環境が完備したスマートスクールで、タブレットを自在に使えます。また、   7万㎡を超える広々とした敷地で、陸上競技場、ラグビー場、野球場等々。3階建ての体育館には、剣道、柔道、なぎなたの専用道場やトレーニングルームがそろいます。

 

 どこの高校に行こうか迷っている人、中学時代に十分に力が発揮できなかった人、まずは熊本西高で体験入学をしてみませんか? たくさんの先輩たちが皆さんを案内するために、笑顔で待っています。

 中学生の皆さん、常に変化し続ける熊本西高に期待してください。



 

同窓会からの力強いご支援を受けて ~ 同窓会「西峰会」総会

「『西高』は いつでも待っています。

  あなたが巣立ったあの日と同じ場所に、同じ姿のままで-」

 熊本西高校の同窓会「西峰会」のホームページ冒頭に記された言葉です。このホームページはデザインも洗練され、同窓会のお知らせをはじめ充実した内容で、「西峰会」が活発な活動をされていることがわかります。

 6月20日(日)午後、西高セミナーハウスにて、令和3年度同窓会「西峰会」の総会が開催され、ご案内を受け私も出席いたしました。

 「西峰会は、今年度も学校及び在校生に対して積極的に支援していきます!」との藤井俊博会長の力強い言葉で総会は始まりました。これまでも多くのご支援をいただいているのですが、今年度の予算案にも具体的な学校支援の項目が並び、頭の下がる思いとなりました。インターハイをはじめ部活動の全国大会出場への応援や冬に実施する学校行事のチャレンジウォーク(強歩会)への支援、2年前に県立学校として最初に発足したeスポーツ部への活動補助、在学中に留学する生徒への補助金制度も整えてあります。さらには、昨年度から始めた、難関大学志望者の北九州予備校での特別セミナー参加への補助も行われます。同窓生の皆さんの母校への熱い思いを実感しました。

 第91回選抜高等学校野球大会「春のセンバツ」(平成31年3月)に熊本西高校野球部は見事出場を果たしました。その時2年生で甲子園にて活躍し、この春、福岡教育大学に進学した中山君が同窓会総会に出席していました。中山君からは、「甲子園出場した時、同窓会の皆様から盛大な応援をいただいたことが大きな力となりました。」と改めて御礼の挨拶がありました。

 同窓会活動も、長期化するコロナ禍により制限を受けています。毎年9月に開催される熊本市の藤崎八旛宮「秋の例大祭」に、同窓生の皆さんは飾馬奉納団体「西峰会」で参加されていますが、同祭は昨年に引き続き今年度も中止となりました。同窓生と希望する在校生が一緒になって熊本市を代表するお祭りに参加し、連帯感を強める貴重な機会が失われています。「来年こそは生徒と一緒にお祭りに出たいですね」と飾馬奉納のリーダーの方が言われました。私も同感です。

 熊本西高校は3年後には創立50年の大きな節目を迎えます。同窓会の皆さんと一緒になって、さらに発展を続ける次代の西高像を追い求めていきたいと思います。

「For others , with others」 ~ 新生徒会の発足

 令和3年度生徒会役員選挙は6月2日(水)に行われました。生徒会長に2年生2人、副会長に2年生2人、1年生3人が立候補し、「zoom」アプリを活用してのオンライン演説会、そして生徒1人ひとりが所有しているタブレット端末から電子投票方式で実施しました。この電子投票(オンライン投票)は、三密を防ぐ効果が大きくコロナ対策として脚光を浴びていますが、コロナ禍以前から「投票率の向上」、「開票時間の短縮」、「人員の削減」等の観点から注目されていました。すでに一部の地域の地方選挙で導入されています。

 我が国では、5年前に18歳選挙権が導入されましたが、変わらず若い世代の投票率の低さが問題となっています。ネット環境に慣れている若い世代は、電子選挙であれば、そのアクセスの容易さからもっと選挙に参加してくれるのではないかと期待されています。今回の本校の生徒会役員選挙では、先取りして初めてオンライン投票を実施しましたが、円滑に行われ、開票も迅速でした。立候補者もデジタルネイティブの世代らしく、カメラを意識し、自分が生徒会でやってみたいことを箇条書きしたフィリップボード(大型のカード)を掲げるなど堂に入ったもので、頼もしく感じました。

 新生徒会役員の皆さんの認証式を6月14日(月)7限目相当の時間に会議室で行いました。会長の濱﨑さん(2年)、副会長の阿久津さん(2年)と篠塚さん(1年)に私から任命書を手渡しました。そして、自らの意思で生徒会役員の重責を担うことになった書記、会計、庶務等の皆さんの紹介がありました。この様子は「zoom」アプリで映像として伝えられ、各教室で全校生徒が視聴しました。

 この1年間、コロナ禍の中、西高生徒会を引っ張ってきた前生徒会長の児藤さんと、受け継ぐ新長の濱﨑さんが全校生徒に向かって挨拶しました。二人とも気持ちのこもった力強い言葉で、さすがは西高のリーダーと思いました。会長はじめ生徒会役員は、「もっと西高を良くしたい」という進取の精神に燃えています。しかし、役員の思いだけでは学校は変わりません。全校生徒一人ひとりが「私たちの学校、西高」という意識を持つことが大切だと考えます。私も、これから生徒会役員の皆さんと、学校行事のあり方、学校のルール、制服のことなど様々な事について対話をしていきたいと思います。

 新生徒会の皆さん、「For  others, with  others」(他者のために、他者とともに)というモットーで活動してください。そうすればきっとあなた達のところに皆が集まってくると思います。

 新しい西高生徒会が帆をあげました。

社会が皆さんを待っています ~ 2年生「職業ガイダンス」実施

 成年(成人)年齢が2022年4月1日からこれまでの20歳から18歳に引き下げられます。現在の2年生は来年度、全員が「成人」(大人)となります。積極的に社会に参画する姿勢を養うために、西高では様々な取り組みを行っていますが、その一つとして、2年生対象の「職業ガイダンス」を6月8日(火)に実施しました。

 社会の第一線で活躍されている社会人講師の方々をお招きしました。「医療」、「福祉」、「サービス」(飲食・冠婚葬祭・販売)、「建築」、「情報」、「警察」(南署)、「行政」(西区役所)、「教育・保育」の大きく8分野に分かれ、生徒達はそれぞれ興味・関心のある職業分野に参加しました。西高の職業ガイダンスでは、事前に講師から課題を与えられ、その課題について生徒達が調べておくことになります。そして、職業ガイダンス当日に発表し、講師から助言を受けるのです。私は全分野を見て回りたかったのですが、ガイダンスの時間は100分と限られ、4分野の参観にとどまりました。

 「福祉」分野には18人の生徒が参加していました。「高齢者が住みやすい街とは」という課題に対し、女子生徒3人の班が「高齢者が移動しやすい」、「治安の良い」などのキーワードで発表しました。それに対し、講師(県社会福祉協議会)の方から、ユニバーサルデザインの街づくりの理念を説明されました。身近なものでは教室の教壇が一つのバリアであるとの指摘に、生徒達は意表を突かれた表情でした。高齢者だけに特化せず、障がいのある人も含め皆が住みやすい街を目指そうというまとめに生徒達は納得の表情でした。

 「医療」分野は42人の生徒が参加し、ほぼ男女半々でした。熊本県看護協会からいらっしゃった講師(女性看護師)の方が、「看護師という職業は男性の仕事としてとても良いものだと思う」と述べられ、男性看護師の必要性を語られました。また、看護師にとって必要なものとして、アセスメント能力をあげられました。看護アセスメントとは、対象者(患者)の多くの医療情報を適切に分析し、看護上の問題を把握することだそうです。

 「建築」分野の教室では、設計事務所の建築士の方が、住宅設計図を最新のコンピュータソフトで立体的にスクリーン表現されました。ドアを通り、住居の中を自由に行き来でき、まるでそこにいるかのような感覚となる画像に生徒達は引きつけられていました。また、「警察」分野の教室では、市民に寄り添う警察官像を語られ、後半は指紋採取の体験まであり、生徒達は興味を示していました。

 「社会は皆さん(高校生)を待っています。」とある講師の方が言われました。生徒の皆さん、社会で活躍するあなたの未来が見えましたか?

 

西高体育スピリットの発揮 ~ 県高校総体での活躍

 2年ぶりに開催された熊本県高校総体は、サッカー競技など一部をのぞき無事に終了しました。コロナ第4波が収束しない困難なコンディションの中、「無観客」でしたが、各競技とも熱戦が繰り広げられ、高校生の部活動の集大成の場として教育的意義は誠に大きいものがあったと思います。

 連日、熊本日日新聞の高校総体特集記事で、西高アスリート達の活躍が報じられ、胸が躍る思いでした。女子柔道が先駆けとなりました。女子団体3連覇を成し遂げた大野主将のコメントが頼もしいものでした。

 「県高校総体は通過点と思っている。目標は全国制覇です。」

 さらに高い頂を目指し、女子柔道部に慢心はありません。大野主将の気迫のこもった試合や団体優勝メンバー4人の笑顔の写真が掲載されました。

 また、ウェイトリフティング主将の西田君が102㎏級で優勝。バーベルを力強く上げる姿が写真で紹介されました。西田君は全国でトップクラスの実力の持ち主で、全国高校総体(インターハイ)でも上位入賞が期待されます。

 陸上部の躍進も光りました。走り高跳びの自己記録で優勝した2年生の杉山君の顔写真が載りましたが、その他にも三段跳びや投てき部門(やり投げ、砲丸、円盤)での優勝が相次ぎ、南九州大会には男女合わせ10人以上が進出します。インターハイに何人出場することになるのか期待がふくらみます。

 西高伝統のなぎなた部は、女子個人優勝の内田さんの躍動感あふれる試合の写真が載りました。一瞬の動きを捉えるプロの記者の腕前はさすがです。

 そうして、掉尾(ちょうび)を飾ったのがラグビー部でした。昨日、熊本高校との決勝戦を制し、今日の朝刊に「西高、4連覇」の見出しと共に劇的なトライシーンの写真が大きく掲載されました。強豪で知られる西高ラグビー部ですが、連覇を続けることは至難の業です。それは女子柔道部やなぎなた部にも当てはまります。西高を倒すことを目標に他校の生徒は努力しているわけですから、それを上回る努力、精進が求められるわけです。

 努力が実り輝かしい結果を得た生徒達がいる一方、日頃の練習の成果を十分に発揮できなかった生徒達もいます。これが勝負の世界です。負けたこと、自分の目標に届かなかったことなどの悔しい思いが人間を成長させます。勝ったことより敗れたことからの方が多くのことを学ぶと私は思います。

 正門脇に「文化 体育 両道顕彰」の石碑が立っています。西高が開校するや文化部体育部ともに特筆すべき成績を次々と残していったため、昭和59年に創立10年を記念し育西会が建立されました。この精神は令和の今日も引き継がれています。

 体育の先生方が日頃唱えられる西高体育スピリットが存分に発揮された今年の県高校総体でした。

 

凛として ~ 県高校総体「なぎなた競技」開催

 なぎなた部は熊本西高が誇る伝統ある部活動です。過去、全国高校総体(インターハイ)女子団体5連覇をはじめ、個人戦の日本一を幾人も輩出し、本県の「なぎなた競技」を牽引してきました。専用の道場を有している学校は県内に他にはありません。

 コロナ禍の中で無観客という対応をとり、2年ぶりに熊本県高校総体が開催されました。「なぎなた競技」は5月30日(日)に5高校、22人の選手(女子19人、男子3人)が集結し、熊本西高校体育館で実施しました。なぎなた部の日頃の練習を見てきた私にとって、初めての試合観戦となりました。

 長さ2m10㎝の木製の薙刀(なぎなた)を持ち、一見、剣道と同じ防具を着けますが、すね当てがある点が特色です。メン(面)、コテ(小手)、ドー(胴)、スネ(脛)を打突(だとつ)し、勝負します。なぎなたの動きは速く、目を離せません。一瞬で決まります。しかし、当たっているようでも、なかなか審判の旗が挙がらないこともあります。同席した熊本県なぎなた連盟副会長の一川治子先生が、「なぎなたは気・剣・体の一致が大切です」と解説されました。コロナ感染対応で、選手達はマスクの上にフェイスシールドも付け、その上に面をかぶり試合をします。試合3分、延長2分ですが、時間が立つに伴い、選手の荒い息遣いが伝わってきます。困難なコンディションでの試合となりました。

 「なぎなた競技」には試合とは別に演技競技もあり、2人で型を演じます。防具は着けず、白い稽古着と黒の袴姿です。「この白と黒の組み合わせこそ我が国伝統の最もシンプルな色です。」と一川先生はおっしゃいました。背筋が伸びて姿勢が誠に美しく、礼に始まり礼に終わる所作は品格があります。なぎなたは、弁慶の薙刀でも知られるように元来は男性が扱う武器だったのですが、江戸時代に入り、武家の女性の武具として普及したそうです。幕末の戊辰戦争の時、会津藩の武家の女性たちが薙刀を手に官軍と戦った歴史があります。

 一川先生は熊本西高の体育コース発足(平成3年)から20年間、西高なぎなた部を御指導いただき、多くの人材を育成されました。現在の本校なぎなた部の指導者である齊木教諭も教え子の1人です。インターハイや国体など数々の西高なぎなた部にかかる思い出やなぎなた道にかける熱い思いを語られました。

 伝統とは精神の継承です。一川先生から受け継いでいる、心身とも凜とした姿勢で西高なぎなた部の生徒は試合及び演技に全力を尽くしました。

西高生の皆さん、勝負の時です ~ 県高校総体、県高校総合文化祭

 「ぱーん!」と畳を手で叩く音が響き、札が飛びます。セミナーハウス2階の和室で行われている「競技かるた」部の練習は、張り詰めた緊張感があります。小倉百人一首を用いての競技かるたは、知力と体力、そして何より集中力が求められるものです。部長の児藤さん(3年生)によると、公式戦では一試合が1時間に及ぶこともあり、勝ち進むと心身ともくたくたになるそうです。「対戦型スポーツです」と笑って語ってくれました。

 高校生の文化活動の祭典である県高校総合文化祭は5月28日(金)~29日(土)に開催されます。西高「競技かるた」部は、7月の「全国高等学校かるた選手権大会」(滋賀県大津市近江神宮)への出場をかけて出場します。児藤さんは先行競技で全国高校総合文化祭(和歌山県)への個人出場を決めていますが、「競技かるたの聖地である近江神宮へ団体で行きたい」と意欲満々です。県立劇場で開催される総合文化祭は、コロナ感染防止の困難さもあり、展示部門は中止、ステージ部門は無観客での発表となり、本校の文化部で出場するのは「競技かるた部」だけです。

 一方、県高校総体は、無観客の方針のもと全ての競技が実施されます。すでに先週末に一部競技が先行実施され、西高サッカー部は1回戦快勝、好発進しました。多くの体育部活動にとっては明日5月28日(金)から30日(日)が本番となります(一部競技は31日まで)。今週、各部活動の練習を見て回りましたが、その士気の高さは観る者に迫ってきます。3年生の多くはこの高校総体を区切りに部活動を退き、進路希望達成に向かって学校生活のシフトを切り替えます。高校総体直前の今は、全員でのかけがえのない時間を惜しむ雰囲気があります。

 梅雨の影響で水たまりが残るグラウンドで泥だらけになり迫力あるプレーをするラグビー部。屋根が付いているとは言え、水温は低めのプールで黙々と泳ぎ続ける水泳部。本番を想定した試合形式の練習をタブレット端末で動画撮影している剣道部。怪我で高校総体に出場できない部員が一生懸命選手達の練習をサポートする柔道部。

 西高生の皆さん、勝負の時です。皆さんはこれまで厳しい練習を積み重ねてきました。そのことが試合に臨むにあたって唯一の拠り所となります。そして、楽しい時も苦しい時も連帯してきたチームメイトの存在が支えです。

 コロナ禍の逆境の中、高校総体が行われることは、私たち高校教育関係者にとって、オリンピック開催と同じくらいの大きな意義があります。

             県高校総体直前の体育部練習風景

科学的思考力があなたの身を守る

 新型コロナウイルス感染症の第4波に社会が覆われていますが、目に見えないウイルスや細菌による感染症パンデミックに人類はこれまでも直面してきました。中世ヨーロッパでは、ペストが猛威を振るうと人々がパニックに陥り、魔女の仕業と思い込み、特定の女性を集団で迫害する「魔女狩り」が起こりました。病原菌の正体が肉眼で見えないため、人々は恐怖から理性を失い、偏見で判断が狂い、異常な行動に走った事例が歴史上いくつも確認されています。

 しかし、困難に遭遇しながら人類も学習し、考える力が発達してきました。19世紀中頃、イギリスのロンドンでコレラが大流行しました。今でこそコレラはコレラ菌(細菌)で汚染された水で感染することが分かっていますが、当時の人々は空気を伝わる悪臭がなせる病と考えていました。その中で、ジョン・スノウという医学者が疑問を持ちます。同じ地区の住人で、コレラに罹患する人とそうでない人がいることに気づいたのです。同じ空気を吸っていてもコレラになる人とならない人の違いは何かとスノウは調査を進め、飲料水(井戸)が異なることを突き止めました。そして、コレラは空気から感染するのではなく、汚染された水で感染するという仮説を立て、汚染されている井戸を使わないという対策を提案し、感染拡大防止につなげました。

 コレラ菌が顕微鏡で「発見」されるのはそれから30年も後のことでした。コレラ菌そのものは見えていなくても、スノウは論理的に考え仮説を立て、コレラ菌が井戸の中にいることを見抜いたのです。これが科学的思考力だと思います。

 今、私たちの周りは「情報」であふれています。いったいどの「情報」が正しく、正しくないのか、不確かな「情報」の洪水です。そして、私たちは、自分が見たい、あるいは信じたい「情報」を選ぶ傾向にあると言われます。「情報」を比較し、体系化し、「知識」とすることで初めて判断の基となります。データや数字を基礎として自分で考える力こそ、情報過多の現代で求められるものです。科学的思考力は、文系・理系の枠を越え、全ての人に必要なものです。

 この度のコロナパンデミックは20世紀初頭のスペイン風邪(インフルエンザ)以来、100年ぶりのものでした。感染症パンデミックや大規模な自然災害は一般の人間の寿命を超えるスパンで起きます。個人の経験では対応できないのです。自分の経験や好悪の感情など自己本位ではなく、情報を精選して根拠(エビデンス)をもって考え、判断する「科学的思考力」を高校生の時に培いましょう。

 西高は、生徒の皆さんの科学的思考力を育てていきます。

 

 *  お薦めの本 

『LIFE SCIENCE ~ 最先端の生命科学を私たちは何も知らない』(吉森保 著) 

 科学的思考力とは何かをわかりやすく教えてくれます。西高図書室の新刊コーナーにあります。

近づく高校総体

 「コミュニケーション!コミュニケーション!」と部員同士が声を掛け合い、楕円のラグビーボールを回し、走っています。ラグビー部の練習は見ていて迫力があります。隣のサッカー部でも、シュート練習に多くの部員が交代で流れるように取り組んでいます。次々とゴールネットに突き刺さるボールは勢いがあります。また、柔道、剣道、なぎなたの各道場では邪魔にならないように隅で見るのですが、私の姿を目にすると生徒がパイプ椅子を持って走ってきます。「お客さんではないから、気を遣わないように」といつも言っているのですが、その迅速な対応は有難く思います。

 体育部活動の練習を見て回ると、日ごとに熱を帯びてきていることがわかります。早朝、また放課後、自主練習として校内を走っている生徒の数も増えました。高校総体が近づいています。一部の競技は5月22日(土)~23日(日)に先行実施、そして本番は28日(金)から30日(日)です。

 陸上競技の練習風景はチーム競技と異なります。トラックやフィールドの種目毎に数人が固まり、黙々と反復練習を行っています。本校はやり投げ、円盤、砲丸などの投てき種目を専攻している生徒が比較的多いのが特色です。中には、中学時代から取り組んでいるスペシャリストもいます。彼らは一投一投、確かめるように投げ、一定のインターバル(間隔)を置くトレーニングを行っています。小休止の時に言葉を交わすと、皆、高校総体そして南九州大会、さらには全国高校総体(インターハイ)への思いを語ってくれます。恵まれた練習環境がある西高で陸上競技に打ち込みたいとの気持ちで、球磨郡はじめ遠隔地から本校を志望してきてくれた生徒が幾人もいます。

 高校3年間と言いますが、多くの生徒にとって部活動に専念できるのは2年数ヶ月です。大部分の生徒たちは3年の高校総体を区切りに部活動を退き、入試・就職の進路対策に移行することになります。3年生は今、「時間は有限だ」ということを実感していることでしょう。仲間と過ごす限られた時間の集大成が高校総体と言えます。

 5月15日(土)に熊本県が梅雨入りしました。異例の早さです。雨天が続くと戸外での練習に大きな支障が出てきそうです。そして、より心配なことが新型コロナウイルス第4波の広がりです。5月16日(日)から本県は蔓延防止重点措置の対象となりました。この困難な状況の中、感染対策を取りながら、高校総体で実力を発揮できるよう、各部活動で創意工夫が必要となります。

 2年ぶりの高校総体に向け、生徒たちをどう支援していくか、私たち教職員に大きな責任が求められています。

            体育大会での部活動対抗リレーの様子

 

 

西高周辺ぶらり散策(その2) ~ 小島地区

 熊本西高の西門から直線の農道を南へ約400m行くと、県道28号との交差点があり、その南側に西区役所があります。赴任の挨拶に4月初旬に訪問したところ、甲斐区長さんから「西高の生徒の皆さんのアイデアと行動を期待しています」と温かい言葉をいただきました。防災、観光をはじめまちづくり全般にわたって高校生に参加の機会を与えて頂いており、感謝しています。西高としても、熊本市西区にある唯一の県立高校として、西区のコミュニティスクールでありたいと願っています。

 さて、西区は、北は芳野(よしの)や河内(かわち)、東は鹿児島本線を超えて崇城大学のある池田までと広い面積を有していますが、区役所は最も南の小島校区にあります(小島2丁目)。「校長室からの風」ですでに紹介した、熊本市で最も標高の低い山(29m)、御坊山(おんぼさん)がこの「小島」(おしま)の地名の由来と言われます。西区役所から西方およそ500mのところに御坊山はあります。西高からいつも眺めていましたが、先般の大型連休中、「御坊山登山」をしました。麓の石鳥居をくぐり山頂の小島阿蘇神社まで100段余の急な石段です。まさに胸突き坂です。山の周囲(約400m)は遊歩道が敷かれ、地元の人々に親しまれていることがよくわかります。

 御坊山からさらに西へ進み、南北に走る国道501を越えると、小島町の中心部となります。坪井川と白川に挟まれた三角州地帯と言えます。ここで見逃せない史跡があります。明治天皇行在所(あんざいしょ)跡です。明治5年、明治天皇が長崎から海路、熊本行幸(ぎょうこう)されました。有明海の沖合で軍艦を下船、艀(はしけ)に乗り換え、坪井川河口の小島港に到着され、ここで一泊された記念すべき場所です。木造2階建ての日本家屋と庭園が往時を偲ばせます。

 明治天皇行在所跡のすぐ西側に小島小学校があり、児童の元気な声が響いています。小島小学校正門脇に、古色蒼然とした石碑が立っています。大津波の災害の歴史を伝えるものです。1792年(寛政4年)、島原半島の眉山が噴火、崩壊、有明海で大津波が発生し、対岸の肥後に押し寄せ、沿岸部で甚大な被害が生じました。「島原大変、肥後迷惑」と呼ばれる大災害の記録を後世に継承しています。この付近は海抜2~3mでしょうか。過去の記録を伝えることは、防災上、重要な意義があると思います。

 小島町界隈を歩くと潮の香りがして、はっとします。有明海(島原湾)はすぐそこです。「西高は、海に近い学校」だと気づかされます。

  御坊山の登山口      明治天皇行在所跡        「大津波」碑

 

西高周辺ぶらり散策(その1) ~ 城山校区から高橋校区

 西高が位置する熊本市西区城山大塘(じょうざんおおども)は小学校単位で言えば城山校区に当たります。その城山校区自治協議会が5月12日(水)に城山コミュニティセンターで開かれ、私も出席しました。第1~11町内の自治会長さんはじめ社会福祉協議会、老人会、青少年健全育成、民政児童委員、消防団等の地域の各団体、西区まちづくり担当、保健子ども課の行政、そして城山小学校、三和中学校、西高と学校も集いました。

 各団体の紹介や活動報告がなされましたが、西高への親近感、期待感を口に出される方が幾人もいらっしゃいました。「地域の行事に高校生が来てくれると本当に助かる!」、「わしの息子も西高を出たばい」等。あらためて、西高が地域の皆さんに支えられていることを実感しました。

 西高には県内広く80余校の中学校から生徒たちが通学しています。しかし、学校の所在地であるこの城山校区、そして広げても西区こそが学校の拠り所(コミュニティ)になると思います。この1年あまりはコロナ禍で機会は減りましたが、ボランティア活動、就業体験(インターンシップ)、探究活動と地域に出かけ、関わる西高生は少なくありません。

 城山校区のシンボルは、高橋稲荷神社です。日本五大稲荷の一つに数えられ、商売の神様として知られています。社の起源は室町期にさかのぼりますが、現在地に建立されたのは江戸時代前期です。背後の城山(標高47m)は中世には山城だったと伝えられ、校区名の由来の山です。傾斜地で高低差のある境内の清掃ボランティアに西高生がよく参加します。また、参拝用の階段沿いに、西高美術部が制作寄贈したパネル版の絵が並びます。その年の干支をテーマとしたものです。また、同社の北、坪井川を渡る高橋稲荷大橋は朱色で目立つものですが、現在、この橋から下流にかけて両岸を結び鯉のぼりが泳いでおり、初夏の風物詩です。この鯉のぼり設営にも西高生がボランティアで関わっています。

 高橋稲荷大橋の両岸周辺は、高橋校区となります。城山校区に隣接し、面積は小さいのですが、歴史ある地域です。江戸時代、高橋は熊本城下の舟運物資の集散地で、坪井川の港町として栄えました。城下町(熊本)、菊池川河口の高瀬(玉名)、緑川河口の川尻、球磨川河口の八代と並び「肥後の五か町」の一つと認められていたのです。城山校区にありながら、「高橋」稲荷神社と呼ばれるのは、かつての高橋(町)の地名の威光だと言われます。

 城山校区から高橋校区まで話が広がりましたので、今日はこの辺で風をとめたいと思います。西高の周辺は、近代に入り新しく造成された地域という誤解があります。そんなことはありません。地域を歩くと、地層のように重なった歴史や文化を呼び起こすことができる気がします。

二つの山にはさまれて ~ 金峰山と御坊山

「教室の窓から山々が近くに見えるのが新鮮です。山を眺めるのは大好きです!」

 高校入学しておよそ一月(ひとつき)経った感想を1年生に聞いたところ、ある女子生徒がこのような感想を述べてくれました。市街地から通学しているそうで、熊本市内の高校でこれほど山が間近に迫って見えるとは思ってもいなかったと明るい表情でした。

 熊本西高の北には金峰山山系の山並みが広がっています。1学年の教室棟は教室棟の中で最も北側に位置しているため、教室の窓から山々が近くに望めるのです。山々の若葉がまぶしい、新緑の季節を迎えました。

 西高運動場から見て、ひときわ高くそびえるのが金峰山一の岳です。電波塔が立っていて、遠くからでもよくわかります。熊本市民に広く親しまれている山です。標高は665m。そして、西高からは見えませんが、北に連なる金峰山山系の二の岳685mが熊本市で最も高い山です。西高校歌に「朝夕仰ぐ 金峰の 雄姿に高き 希望(のぞみ)あり」との一節があります。金峰山は高きのぞみ、目標の象徴と言えるでしょう。

 ところで、学校から南西の方角にこんもりとした森が見えます。運動場や西門からよく見え、私は赴任当初から気になっていました。この森は、御坊山(おんぼさん)と呼ばれる山です。標高29mの熊本市で一番低い山です。元々は海に浮かぶ島でしたが、白川と坪井川が運んできた土砂で周囲が埋まり、今の姿になりました。小さくても存在感があり、地元の人から親しまれています。御坊山がある地区を「小島(おしま)」と呼びますが、この地名は御坊山が由来だと言われています。小島地区は、白川の河口に当たります。

 金峰山と御坊山。二つの山の間に西高ははさまれています。金峰山は高き目標を示していると思えます。一方、御坊山は、小さいものを見過ごさないことの大切さを教えているように感じます。あの森は何だろう、山かな?と疑問を持ち、気づく感性は大切です。

 対照的な二つの山を通し、高き目標を持つこと、小さなことをおろそかにしないことを西高生の皆さんに伝えたいと思います。

               金峰山           御坊山

「We are 西高!」 ~ 第44回西高体育大会開催

「We  are  西高! We  are  西高!」

 プログラム最後の「全校応援」は圧巻でした。全校生徒が運動場に集結し、応援団リーダーの指揮のもと気持ちをひとつに声をそろえました。マスクをしていても声は響き渡り、計り知れない若いエネルギーが渦巻き、空に舞い上がっていったように感じました。全校生徒及び職員の力を結集し、体育大会を創り上げることができ、学校全体が一体感そして達成感に包まれました。

 第44回熊本西高校体育大会をきょう5月8日(土)に開催しました。コロナパンデミックのもと、限られた練習・準備期間、平年より縮小されたプログラム、そして無観客という制約の中でしたが、「今年は体育大会をしたい」という生徒と職員の強い意志で成し遂げました。

 西高の体育大会は私にとって初めてでした。予行(5/6)の日に、西高グラウンドにおいて、凹面鏡を使い太陽光から採火を行いました。オリンピックのギリシアでの採火式のように、生徒会の生徒が女神姿に扮しでのセレモニーに目をみはりました。この採火式は昭和63年の第13回体育大会から続いている伝統行事で、かつては金峰山山頂で行われていたとのことです。今日の体育大会開会式では、陸上部のキャプテンが聖火を掲げ走って入場し、点火台で点火され、生徒たちの士気が上がりました。

 プログラムは8時半に始まり、午後1時の閉会式で終わりました。どの種目も見応えがあり、生徒の皆さんの一生懸命さが観る者に伝わってきました。体育大会の華とも言えるリレー競技(クラス対抗、団対抗)は、抜きつ抜かれつ、声援、歓声も一段と高まり、会場が大いに沸きました。また、体育コース演舞「天の舞・飛翔」(2、3年生)は、アスリートたちのきびきびとした動作、かつ流れるようなパフォーマンスに魅了されました。そして全校生による西高体操は、全員の気持ちが一つとなり、「西高体育スピリット」の伝統が受け継がれたと思います。

 フィナーレの全校応援の中で、生徒会長の児藤さんが「体育大会を実施できたことの感謝」と「これからの高校生活への決意」を述べる姿は爽やかでした。

 新型コロナウイルス第4波に社会が覆われている今、ここ熊本西高校から高校生の元気を発信できました。昨年の今頃、学校は一斉休校でした。今年、不完全ながらも体育大会を実施できた意義は大きいと思います。来年こそは、コロナが終息し、西高の体育大会を開放し、保護者、中学生、地域住民の方々へ広く発信したいと願っています。

            採火式はじめ上3枚は予行の日の様子

                                    以上6枚は体育大会当日の様子

思わず、深呼吸 ~ 体育大会全体練習

 熊本西高校の遠景は、金峰山の山並みの麓に抱かれているように見えます。青葉萌え、山々の新緑がまぶしい季節を迎えました。有明海からの風が吹き抜ける広々とした西高運動場へ出ると、思わず、マスクを少しの間はずし、金峰山に向かって深呼吸したくなります。コロナ第4波の憂いを忘れられるひとときです。

 5月8日(土)の体育大会実施に向け、今週は連日、運動場で全体練習が行われています。生徒たちはマスクを着用し、距離をとり、西高体操、行進、開会式、そして3団(黄・赤・青)に分かれての応援練習などが続きます。広い運動場に全校生徒が集い、全体で動く様子は活気あふれ、壮観です。西高生830人が「ここに、共に、在る」ということが学校の一体感を醸成するうえでとても大切だと思います。1年生はこの全体練習を通じ、「西高生」になると言えるのでしょう。一方、2、3年生は上級生としての意識が高まるのでしょう。

 昨年度は、コロナパンデミックの影響で体育大会を中止しました。もし、今年度、体育大会を実施しなければ、来年度は体育大会を知っている生徒はいなくなります。西高の体育大会の伝統をつなぐためにも今年の体育大会開催は重要な意義があるのです。

 全体練習の中で、私が引きつけられたのは、西高体操です。創立以来行われている独自のもので、一つ一つの動作に力強さと姿勢の美しさがあり、指導される体育科の先生の息が上がるほどです。「体操」と言うより「演武」と呼びたくなります。全体練習を見ていて、「西高体育スピリット」というものが具体的に伝わってきました。西高には高校スポーツ界で知られた体育コースがあり、各競技で活躍する高校生アスリートたちがいます。しかし、そのような運動能力に秀でた生徒だけでなく、西高生全員にこのスピリットは求められています。日々の体育授業の集大成である体育大会を全員で創り上げていく過程で、気持ちを一つにした行動、挨拶などが備わっていくようです。

 西高の体育大会ならではのユニークなものとして、聖火入場・点火のセレモニーがあります。事前にグラウンドで太陽から採火し、代表の生徒が開会式において聖火トーチを掲げて走って入場し、運動場南側の特設の聖火台で点火するものです。生徒の気持ちに火を付けることになるでしょう。

 西高体育大会を多くの方にご覧いただきたいのですが、コロナウイルス感染防止の観点から、開放せず無観客で実施することとしました。苦渋の判断です。保護者の皆様、どうかご理解いただきたいと思います。生徒たちの達成感、充足感を最大の目標(ゴール)として、体育大会実施に努めていきます。