2021年12月の記事一覧

寒稽古 ~ なぎなた錬成大会

 この冬一番の寒波が襲来した12月26日(日)、西高の体育館で全九州高校なぎなた錬成大会を開催しました。九州の平野部でも降雪の予報が出され、大会実施が心配されましたが、当日は青空が広がり、全く雪の障害はありませんでした。長崎県は往復の道路事情を心配され欠場でしたが、沖縄県から首里高校が遠路出場されるなど他の県は前日の土曜の練習会から参加がありました。大分県からは九重・阿蘇の山々を越える道路を避け、福岡経由の鉄道での参加でした。

 しかし、体育館は冷え込みました。朝の気温は氷点下、日中も最高気温は3~4℃で、頬に当たる冷気は切るようでした。この過酷な環境のなかでも、生徒達は裸足でなぎなたの合同稽古、そして試合に臨みました。高校なぎなたの競技人口は少なく、各県においてなぎなた部として活動している高校は数校ずつしかありません。従って、総勢約90人の選手達が西高体育館に集い、一斉に稽古する様子は稀に見る壮観で、熱気に満ちていました。西高なぎなた部の生徒達も、有力な他県の高校との合同稽古や実戦はまたとないチャンスと捉え、とても張り切っているようでした。

 「このような機会を設けていただき感謝します」と異口同音に各県の指導者の方が述べられ、主催者として充足感を覚えました。長引くコロナ禍の影響で遠征や合宿が制限され、思うような活動ができていない学校がほとんどです。地理的に九州の中央に当たる熊本西高で実施できた意義は大きかったと思います。

 寒稽古という伝統がわが国にはあります。寒中に寒さに耐え克己心を養うため武道または芸能の稽古をすることです。全九州高校なぎなた錬成大会はまさに寒稽古にふさわしいものとなりました。全体の合同稽古は2階のアリーナ、試合は1階のなぎなた場で行いました。2階は時折日が射し込みましたが、1階のなぎなた場は一段と底冷えがする環境でした。それでも、すべての選手達(全体の9割は女子)の立ち居振る舞いは凜としたものでした。

 体育館でなぎなた錬成大会を行っているのと同時並行で、グラウンドではラグビー部が強い寒風のなか練習に励んでいました。今年は全国高等学校ラグビー大会(東大阪市花園ラグビー場)に出場できず、この熊本で冬休み期間は練習の日々です。来年こその熱い思いでこの冬を乗り越えてくれると期待します。

 年の瀬まで西高の各部の活動は続きます。

「校長室からの風」

 

伝統の継承 ~ 西高太鼓

 「私たちは、太鼓との出会い、先輩方、コーチをはじめ日頃から様々な縁(えにし)で結ばれていることに感謝しながら、本日この舞台で演奏できることを楽しみにしてきました。本年度もコロナ禍でなかなかステージに立つことができませんでしたが、先輩方からの伝統と太鼓に懸ける思いを受け継ぎ、演奏したいと思います。よろしくお願いいたします。」

 佐藤さん(1年)の挨拶のあと、佐藤さんと森永君(1年)の二人による太鼓演奏が始まりました。この日に向けて、瀬戸コーチの指導で創り上げてきた新曲「縁(えにし)」です。たった二人での演奏ですが、一打一打に気持ちを込めての8分間の熱い演奏でした。

 第32回熊本県高等学校郷土芸能代表選考会・吟詠剣詩舞発表会が12月22日(水)に宇城市松橋総合体育文化センター「ウイングまつばせ」で開催されました。太鼓部門に8校、伝承芸能部門に4校出場しました。出場校の中で西高太鼓部の2人は最少でした。しかし、プログラム1番に登場した西高の二人は、臆することなく、堂々と演奏しました。西高太鼓部は30年の伝統がある部活動です。しかしながら、3年生が引退した今年の夏以降は1年生2人となり、存続の危機に瀕しています。それでも、二人は瀬戸コーチの指導を受けながら、懸命に活動を継続し、この大会に出場したのです。二人を支えようと、5人の卒業生が本番に駆けつけ太鼓の運搬や演奏の準備を手伝ってくれました。演奏後の二人にはやり終えた達成感の表情が浮かび、笑顔も出ていました。大丈夫です。きっと西高太鼓部は来年度以降もその伝統を継承していくでしょう。

 長引くコロナ禍で部活動停止期間や様々な制約に苦しんできたのは西高太鼓部だけではありません。すべての高校の和太鼓部、伝承芸能部が、地域行事出演や演奏発表の場が激減しました。この厳しい環境の中であっても、日々の練習を続け、発表の機会を待ち続けています。このような中、今年の熊本県高等学校郷土芸能代表選考会・吟詠剣詩舞発表会は、保護者が観覧できる形で実施しました。昨年度と今年度は私たち熊本西高が大会事務局を担い、その準備、運営に5人の職員で当たりました。一般のお客さんへの開放までは踏み切れませんでしたが、保護者の皆さんに御覧いただけたことは一歩前進と思います。

 演奏後、感極まって涙を流す生徒。ステージ上の我が子を一心に見つめられる保護者。そして文化ホール玄関前で記念写真を撮る生徒や保護者。このような成果発表の場を年末に設けることができ、心から良かったと思います。

 来年こそは、高校生による太鼓演奏、伝承芸能の舞や演奏を広く一般の皆さん方へ披露したいと願っています。

「校長室からの風」

 

2学期の終業式を迎えて

 12月20日(月)、西高は2学期の終業式を迎えました。終業式に先立って、多くの生徒の皆さんを表彰できたことは私の喜びです。今回特筆すべきことは、美術と書道の両部門で来年夏の全国高等学校総合文化祭東京大会出場を決めたことです。美術科や芸術コースがない高校にとって、これは快挙と言えます。西高は体育系部活動が強いことで有名ですが、文化部の水準が高いことについて、もっと誇って良いと思います。

 さて、新型コロナ感染拡大の中で始まった2学期でしたが、10月から安定した状況となり、創立記念祭、チャレンジウォーク(強歩会)、クラスマッチ、体育コース1年の修学旅行など多くの学校行事を実施することができました。12月17日(金)、3年生の最後のクラスマッチが行われました。あいにくの天候のため、グラウンドでのソフトボールが実施出来ず、男女とも体育館でのソフトバレーボールとなりましたが、応援や歓声の声が響き、残り少なくなった高校生活を惜しむ3年生の気持ちが表れたクラスマッチでした。

 また、10月からはボランティア活動も再開され、多くの西高生が積極的に参加してくれました。併せて、部活動単位での地域貢献活動も行われました。地元の小学校の子ども達とのベースボール交流は野球部の伝統となっています。吹奏楽部は、医療従事者の方達にエールを送るチャリティコンサートに出演しました。その他、新しい動きが見られました。eスポーツ部です。eスポーツ部員が、介護老人保健施設を訪問し、ゲームを通しての交流、支援活動を行いました。エンターテインメントと見られているeスポーツですが、介護分野の認知症予防の活用が始まっており、本校のeスポーツ部の出番がこれから増えそうです。

 高校生の元気、行動力を社会は必要としています。特別な活動ではなくても、登下校中の西高生の爽やかな挨拶で、地域の皆さんは明るい気持ちになると言われます。西高は、地域の皆さんから応援され、信頼される、コミュニティ・スクールでありたいと願っています。

 明日から冬季休業です。冬休みは年が変わる節目の時期で、来し方行く末、即ち過去と未来を強く意識する時期です。受験を控えている3年生の皆さん、今こそ、ここで全力を尽くす時です。すでに進路が決まっている3年生の皆さんは、将来の自分のための勉強を続けてください。1,2年生の皆さんは、自らの進路を考える良い機会です。将来やってみたいことを「夢」と設定します。人は、近い未来の自分が想像できると頑張ることができます。時間は連続しています。未来は、現在の中にすでにあるのです。

 来年こそは、世界のコロナパンデミックが終熄することを皆さんと共に祈念したいと思います。皆さん、良いお年をお迎えください。

「校長室からの風」

        表彰式(西高のスタジオ)

体育コース1年生、修学旅行に出発!

 体育コース1年生(1年9組 40人)が、12月14日(火)早朝、修学旅行に出発しました。朝7時に学校に集合して出発式を行い、バスで福岡空港へ向かいました。福岡空港から松本空港(長野県)へ飛び、再びバスに乗車して目的地の志賀高原を目指します。午後3時半頃に到着予定で、その後、早速ナイタースキー研修が行われます。17日(金)まで3泊4日の旅程の始まりです。

 修学旅行は高校3年間で一度経験する特別な学校行事です。昨年度は、コロナパンデミックの影響で多くの高校で修学旅行が中止となりました。しかし、今年は秋の到来と共にコロナ感染者が急減し、とても安定した状況が続いており、予定通り修学旅行を実施することができ、生徒達と共に喜びたいと思います。

 体育コースの修学旅行ということで、スキー研修が中心になっています。阿蘇山より高い、標高1700mの志賀高原一の瀬ファミリースキー場において、14日の夕方、15日~16日のまる二日間とたっぷり時間をとってスキーの講習を受けます。最後は、スキーの上達度を測るバッジテストが実施され認定証を得ることになります。運動能力が高い体育コースの生徒達であれば、きっと上達も早く、二日目から自在に滑り、スキーの醍醐味を満喫することでしょう。

 また、雪国の風土を体感してほしいと願っています。九州の雪とは異なる、より気温の低い地域で降るパウダースノー(粉雪)の感触、白銀のゲレンデと青空のコントラストの眩しさ、さらには少し吹雪いた時の自然の厳しさなど、五感で体験してほしいと思います。

 最終日の17日は雪山を下り、松本城(松本市)を訪ねます。江戸時代の木造天守(閣)が今に残る城は全国に12城しかありません。私たちが誇る熊本城は、明治10年の西南戦争の時に天守閣は焼失し、昭和35年に鉄骨鉄筋コンクリートで再建されました。江戸時代の古い天守は貴重です。しかも、松本城は、天守閣が国宝に指定されている「国宝五城」(姫路城、松本城、松江城、彦根城、犬山城)の一つとして知られています。山々を背景とした松本城の優美な姿に、疲労が蓄積している生徒達も眼が洗われるような思いに包まれるでしょう。そして、松本城の天守閣に上り、先人の知恵と技術など、伝え守られてきた文化を実感してほしいと期待します。

 旅行は、いつ、誰と行ったかが大切です。高校1年生という感性豊かな時に、同じスポーツを愛する体育コースの級友と行く3泊4日の修学旅行は、かけがえのない青春の思い出になると信じます。

「校長室からの風」

  

 左から、学校での朝の出発式   バスの中       志賀高原でのスキー研修開始                    

オリンピアン来校 ~ 江里口選手の「特別授業」

 実際にお会いしてみると、江里口選手は陸上短距離アスリートとしては小柄で、意外に思いました。しかしながら、世界選手権、そしてロンドンオリンピック(2012年)と世界を舞台に戦ってこられた風格のようなものがあり、これがオリンピアンの雰囲気かと感じました。

 熊本県オリンピック・パラリンピック教育推進校講師派遣事業(スポーツ庁委託事業)の「オリンピアン講習会」を、12月10日(金)の午後に、体育コース全員(1~3年生)110人が参加して西高の陸上競技場で実施しました。

 江里口選手は本県菊池市出身で、県立鹿本高校時代に陸上100m選手として頭角を現し、国民体育大会少年男子で優勝。早稲田大学時代には大学選手権(インカレ)4連覇、そして日本選手権優勝を果たし、大阪ガス入社後の2012年のロンドンオリンピックに出場。100mは予選敗退でしたが、4×100mリレーでは2走を務め4位入賞に輝きました。

 熊本県出身のオリンピアンの登場に、生徒達は少し緊張気味で堅い印象があったのは当然でしょう。しかし、江里口選手は、「自分は中学時代には全国大会に出たことがない普通の選手だった。」と前置きし、「身長は170㎝で、筋肉隆々の体質でもなく、自分は陸上短距離選手としては体格に恵まれてない。」と言われました。そして、「そのような自分がどんな点を意識して練習し、いかに世界と戦ったのかを知って欲しい」と伝えられ、生徒の関心を引き付けられました。

 江里口選手のアドバイスのポイントは、先ず「考えてトレーニングすること」です。腕立て伏せを生徒にさせた後、「みんなはどこの筋肉を鍛えようと思い、腕立て伏せをしているのか?」と問われました。ただ言われたトレーニングメニューをこなすのではなく、自分のどの部分を強化、鍛錬するためにやるのか、意識して行わないと効果がないと諭されました。そして、練習の時はもちろん、普段の生活においても「正しい姿勢」を強調されました。トップアスリートは理にかなった練習をこなしており、その結果が記録につながっていることをわかりやすい言葉とパフォーマンスで教えられました。

 江里口選手は高校時代に国体に出場し、成年の部で競技する日本で一流のトップアスリートの姿に接し、憧憬の念を強く持ち、向上心が高まったと言われました。西高体育コースの生徒たちにとっても、オリンピアンからの「特別授業」を受けたことは、かけがえのない経験になったと思います。

 西高から未来のオリンピアンが出てくることを楽しみにしています。

「校長室からの風」

 

西高教職員チーム、優勝! ~ 県高校教職員ハンドボール大会

 熊本県はハンドボールが盛んな土地柄です。2年前に女子ハンドボール世界選手権大会が本県で開催されたことは記憶に新しいところと思います。ハンドボール熱は教職員の世界にも定着しており、私が教員になる前から、教職員ハンドボール大会が行われています。しかしながら、昨年はコロナパンデミックの影響で中止されました。今年は2年ぶりに再開、第62回熊本県高等学校教職員ハンドボール大会が11月27日(土)~28日(日)に実施されました。

 熊本西高にはハンドボール競技が専門の職員はいません。しかし、部活動としてハンドボール部があり、その顧問の樺島先生が中心となり職員チーム(選手14人)を結成し出場することとなり、形だけの監督を校長の私が務めました。

 チーム練習もほとんどできず、「まあ一回戦も厳しいでしょう」との樺島先生の予想もあって、気楽に27日(土)の会場の山鹿市総合体育館に臨みました。ところが、1回戦の天草支援学校、2回戦の九州学院、3回戦の熊本中央と圧倒的な強さで勝ち続けました。

 抜群のスピードで相手チームを翻弄したのが、体育科の女性職員の落合先生です。落合先生はバスケット選手として大学、実業団(鶴屋百貨店)で活躍しており、縦横無尽にコートを疾走し得点を重ねました。特別ルールで女性職員のゴールは2点にカウントされるため、西高チームは相手校を一気に引き離しました。また、男性職員では西田先生が次々にゴールを決めました。西田先生はラグビーの県国体成人チームのメンバーで、現役アスリートとして豊富な運動量と巧みな動きで相手選手をかわし、得点量産に貢献しました。

 西高職員チームは体育科の若手職員だけが牽引したのではありません。20代から50代まで幅広い世代の職員がそれぞれの持ち味を活かし、チームワークを発揮しました。58歳の山本先生(数学)、57歳の鬼塚先生(数学)、55歳の門脇先生(保健体育)、51歳の樺島先生(数学)の4人の50代の職員も交代しながらコートに入り、果敢にプレーし、チームが勢いづきました。

 28日(日)の千原台高校体育館での準決勝(対 阿蘇中央)、決勝(対 水俣)も快勝。西高職員チームは思いもかけず優勝したのです。大会最優秀選手(MVP)には落合先生が選ばれました。長引くコロナ禍のため、学校では職員の親睦行事がこの1年半ほど行われていません。久しぶりにスポーツを通じて、職員の一体感、連帯感を得ることができました。このことが、優勝したことよりも喜びです。

 来週は、学校でクラスマッチが予定されています。共にスポーツを楽しみ、交流を深める好機です。生徒達もきっと楽しみにしていることでしょう。

                                     「校長室からの風」