校長室からの風

私たちは「中間走者」です ~ 転・退任式

 人事異動は、私たち県立学校教職員にとっては「定め」です。この度の人事異動に伴い、下記の14人の職員が西高から転任・退任することとなりました。勤務期間の長短はありますが、私たち14人、西高生の成長に関わり、保護者・地域の皆様のご協力、ご支援を受けて西高で勤務できたことは大きな喜びです。

 私たちは「中間走者」の役割を担っていると思います。前任者からバトンを受け、次の走者へ引き継ぐまで走り切ることが使命です。皆様のご期待に応えられたどうか自信はありませんが、全力を尽くしたという気持ちです。

 令和6年に西高は創立50周年を迎えます。私たちの学校、熊本西高がさらに発展していくことを願い、転・退任の挨拶といたします。

(教科等・職名) 〔氏  名〕    (転出先等)

 

1  審議員      濵田 敏彦    八代高校・中学校(審議員)

2 主幹教諭    上渕 優     県立教育センター(主幹)

3 国語・教諭   森山 幹俊    北稜高校

4 地歴・教諭   寺尾 寛紀    菊池高校

5 数学・教諭   二子石 哲也   天草拓心高校(本渡校舎)

6 保体・教諭   西田 怜     高森高校

7 事務職員    木村 未佳    上天草市立湯島小学校

8 理科・講師   松本 肇     阿蘇中央高校

9 英語・講師   坂口 希     退職

10 公民・非常勤  本田 眞美    退職

11 英語・非常勤  山﨑 敬博    熊本高校(非常勤講師)

12 英語・非常勤  足立 桃花    退職

〔定年退職〕

13 理科・実習教師 松村 友美    熊本西高(再任用)

14 校長      粟谷 雅之

「校長室からの風」

  令和5年3月28日(火) 熊本西高校「転・退任式」(体育館)

3月24日、修了式 ~ 令和4年度修めの日

   3月24日(金)は、3学期の終業式であると共に令和4年度の修了式、修めの日です。そして、午後には合格者説明会が実施され、来年度の新入生約340人が保護者と共に来校してくれました。

 午前中、スタジオで表彰式と修了式を実施、それをオンラインで各教室と結びました。柔道部はじめeスポーツ部、ウエイトリフティング部、書道部など、そして成績優秀者(代表)、皆勤賞(代表)の生徒たちに賞状等を渡し、その努力を称えました。特に、女子柔道団体は全国選抜大会でベスト8の立派な成績を収め、念願の日本1への可能性が高まってきました。

 修了式での校長からのメッセージは、3年余りのパンデミックによって、一人一台のタブレット端末配備に象徴されるように学校教育のデジタル化が急速に進んだことをテーマとしました。私自身、まだ先の未来の教育と思っていたものが、一気に歴史の針が回りました。後戻りすることはありません。

 以前の学習は、まず暗記し、覚えることで大量の知識を身につけることが求められました。それが劇的に変化しました。人間の能力をはるかに超えたコンピュータの記憶力や計算力、情報量を利用することで、暗記や覚える学習はあまり意味がなくなりました。

 私は近視ですから、眼鏡をかけ、自分の身体の機能の弱い部分を補っています。これと同じように、タブレットやスマートホンは皆さんの身体の機能を拡張、強化してくれるもので、身体の一部のようなものです。体の一部の機能であるコンピュータに何をしてもらうのか、それを活用して、どんなことを探究していくのか。これからの学びは問われます。

 気を付けてほしいことは、学習がデジタル化したからといって、ひとりで内向きになってはいけません。一人でコンピュータゲームを楽しむのではないのです。ICTとは情報通信技術です。コンピュータで情報を共有し、多くの人とつながり、協働の学びを進めていくことです。すなわちチームワークがますます必要になってきます。コンピュータを使う基本的なマナーとモラル、そして相手を思いやる気持ちが大切になります。ネットの向こうに生身の人間がいるという事実を忘れないでください。

 デジタル化が進む社会だからこそ、スポーツをはじめ自ら身体を動かし、感受性や身体感覚を研ぎ澄ますことが必要となります。一人でスマホの画面を見て笑うのではなく、マスクを外し、学校の活動の中で友達と共に笑い合う場面が新年度は増えることを期待します。

 学校だからこそ出来る、お互いが認め合い、励まし合い、笑い合う時間が西高で広がることを願っています。

 「校長室からの風」

     表彰式、修了式、そして生徒会から新しい女子の制服モデル発表

なぎなた部と柔道部が全国選抜大会へ ~ 全国大会出場推戴式

 金峰山の山麓に霊巌洞(れいがんどう)と呼ばれる洞窟があります(西区松尾町)。江戸時代初期の剣豪、宮本武蔵がこの洞窟にこもり、兵法の書「五輪書」を著わしたことで知られています。二刀流の使い手、あるいは巌流島の決闘で有名な宮本武蔵は播磨国(現在の兵庫県)の出身で若いころは諸国をめぐったようですが、最後は熊本の大名である細川家に招かれ、61歳で亡くなるまでの晩年の5年間を熊本で過ごしました。武蔵は単なる武芸者ではありません。能を舞い、水墨画を描き、そして剣の極意を伝える書物を著わしました。文武両道という言葉はまさに武蔵のためにあるようなものです。強いだけの剣士から、高い精神的境地に達し、その精神を芸術や書物に表現できる達人になったからこそ、後の世の人にも尊敬されることになったのでしょう。武蔵の墓は北区の武蔵塚が有名ですが、実は西の武蔵塚と呼ばれる、もう一つの墓が、西区島崎にあります。霊巌洞や西の武蔵塚など、宮本武蔵はこの西区にかかわりの深い人物です。

 武蔵が亡くなって400年近く立ちますが、その文武両道の精神を受け継ぐのが西高だと私は思ってい

ます。西高の体育コースが平成3年に発足するにあたって、その専攻競技として、柔道、剣道、なぎなたの武道が選ばれ、熊本県の武道の拠点校となったことの歴史的背景には武蔵の存在があると思っています。

 あらためて、なぎなた部と柔道部が全国選抜大会に出場することを、全校生徒の皆さんと共に喜びたいと思います。

 なぎなた部は全国大会常連校で、熊本西高の名は高校なぎなた競技では広く知られています。他校からマークされ、重圧もかかるでしょう。しかし、伝統校の誇りを胸に、凛として戦ってください。

 柔道部は、3年ぶりの全国選抜大会への出場です。県大会では決勝で九州学院と対戦し、全員が攻めの姿勢を貫き、大将戦で劇的な逆転勝ちをおさめました。武道の聖地である東京の日本武道館が会場です。部員一丸となり、挑戦者として力を発揮してきてください。

 厳しい勝負の世界を生き抜いた宮本武蔵は多くの言葉を残しています。

 「心 つねに 道を離れず」

 「われ、神仏を敬い、神仏を頼らず」

 「千日の稽古をもって鍛となし、万日の稽古をもって錬となす」

 「われ事において 後悔せず」

 武蔵の言葉をもって励ましの言葉とします。

「校長室からの風」

      なぎなた部        女子柔道部      西峰会(同窓会)から激励金

若人の旅立ちに立ち会える喜び ~ 熊本西高校第46回卒業式

  「朝夕仰ぐ金峰の 雄姿に高き 希望(のぞみ)あり ~ 」

 卒業生の校歌斉唱の声の大きさに驚きました。その声量、そしてエネルギーで会場の体育館が揺れるようでした。マスクを付けての校歌斉唱は卒業式のクライマックスとなりました。入学以来、コロナ禍が長期化し、学年全体で校歌斉唱する機会はこれまでありませんでした。昨日2月28日の卒業式予行では、歌詞カードを見ながらの生徒も多く、斉唱もぎこちない感じでした。それが一日で見違えるほどの変わりようで、若さの可能性を感じました。

 3月1日(水)、熊本西高校第46回卒業式を挙行しました。コロナウイルス感染症者の減少に伴い、ようやく規制もゆるみ、卒業生の入退場はマスクを外して行いました。着席中は個人の自由に任せ、校歌斉唱の時だけはマスク着用を求めました。新型コロナウイルスの世界的流行(パンデミック)の始まりと共に入学し、その断続的な感染の波に高校生活が翻弄された生徒たちは、最後の卒業式においても完全にマスクを外すことはできませんでした。

 卒業生総代の濱﨑さん(前生徒会長)は、答辞の中で、普通の高校生活を送ることができなかった無念さを述べると共に、そのような困難な社会環境の中で、前向きな気持ちで工夫して自分たちで学校生活を創っていったと述べました。そして結びに、自分たちを励まし、支えてくれた家族、教職員等への深い感謝の気持ちを伝えてくれました。

 式が終わり退場する時、保護者席に向かって、「おとうさん、おかあさん、これまで有難う」とクラスごとに大きな声で挨拶する光景は、思わず胸が熱くなります。きっと保護者の方々の感慨はひとしおのことと思われます。

 パンデミックで大きな影響を受けた高校生活で、彼らは特別なものを学んで卒業していくと信じます。18歳の新成人として社会へ出ていきます。パンデミックが終わっても元に戻してはいけないことがあると思います。新しい生活様式のあり方、即ち未来を、この卒業生たちの世代が創っていってくれるのではないかと期待しています。

 若人の旅立ちに立ち会えることは私たち教職員の最大の喜びです。

 卒業おめでとう。

 「校長室からの風」

              熊本西高校第46回卒業式の様子

卒業生の皆さんへ ~ 同窓会入会式、表彰式、卒業式予行の実施

 卒業式を明日に控え、2月28日に同窓会(西峰会)入会式、表彰式、卒業式予行を体育館で行いました。表彰式では、「がんばる高校生」をはじめ高校生活で顕著な実績を残した皆さんに賞状を渡しました。受賞された皆さんの努力を称えたいと思います。

 さて、明日は、皆さん全員が高等学校卒業証書を手にすることになります。皆さんたちが考えている以上に、高等学校卒業は重要な資格です。普通自動車運転免許も大切ですが、その重要性は比較にならないと思います。運転免許は君たちなら1か月半から2か月で取得できるでしょう。しかし、高等学校卒業資格は最低3年必要です。定時制高校なら4年かかります。皆さんは日々登校し、授業に臨み、学習を積み重ねて3年間で96単位の履修科目を修得しました。そしてホームルーム活動、生徒会活動、学校行事に参加し、また各自の部活動にも取り組みました。その成果として熊本西高校の卒業資格を得ようとしているのです。このことを「よくやった」と自分で自分をほめてほしいと思います。大切なのは自己評価です。高校卒業後は、進む道は多様に分かれ、他人と比較することに意味はありません。自分はどんな生き方をしていくのか、自分自身に対して問い続けてほしいと思います。

 急速なICT化やグローバル化など社会が大きく流動化している現代において、学びが終わるということはありません。高校の教育課程が終了しただけです。生きるとは自ら学び続けることです。

 最後に一つ伝えたいことがあります。明日、皆さんが手にする卒業証書の一人ひとりの氏名及び生年月日は、書道の山下綾先生が一枚一枚、筆で墨書されたものです。手は心につながっていると思います。私たち教職員一同の祝福の思いを凝縮して山下先生が250人全員の名前と誕生日を丁寧に手書きされました。そういう意味でも、唯一無二の卒業証書なのです。

 皆さん、卒業おめでとう。

「校長室からの風」

            西高同窓会(西峰会)への入会式の様子

「eスポーツで壁を超える」 ~ 崇城大学eスポーツスタジオのオープン

 崇城大学IOT・AIセンター内にあるeスポーツスタジオに足を踏みいれた瞬間、未来空間にいるような感覚に包まれました。縦6m、横11m、高さ7mの部屋には放送・音響の最新鋭機材と共に、高性能のコンピュータが並び、壁面はスクリーンで、メタバース(仮想空間)と連動したスタジオが創り出されていました。現実空間の壁を超えるような、不思議な揺らぎを感じる空間です。

 2月10日(金)午後、崇城大学IOT・AIセンターに新しくeスポーツスタジオがオープン。「eスポーツで壁を超える」と銘打たれた、そのオープニングイベントに熊本西高eスポーツ部が招待され、6人の代表生徒と顧問の有馬教諭、そして校長の私が参加しました。本校eスポーツ部は県立学校として先駆けて令和元年度に発足。eスポーツのeとはelectronic(電子)の略であり、対戦型コンピュータゲームです。誕生して4年目となりますが、現在、約50人の部員が活動を展開しています。サイエンス情報科の生徒が多いのですが、普通科からも入部が増えており、「eスポーツ部があることが、西高を選んだ理由の一つです」と多くの部員が答えてくれます。

 今回のオープニングイベントには、eスポーツのまちづくりへの影響に関心を持ち、崇城大学情報学部と連携を深めておられる山鹿市議会から議員の皆さんが参加されました。そして、議員の皆さんと、崇城大学eスポーツサークルの学生、そして西高eスポーツ部の生徒の対戦から始まりました。今回は議員さんと大学生、あるいは高校生が2人組をつくり、2人対2人の対戦形式でした。少し練習されてきたとはいえ、中高年層の議員さんには、大学生及び高校生の迅速なコンピュータ操作にはお手上げの状況でした。しかし、世代の差を超えて協力し、共に戦うというゲームの楽しさに会場は包まれました。

 対戦ゲームで懇親を深めた後は、議員さんたちと大学生、高校生とのトークセッションです。eスポーツのこれからの可能性をはじめ、SNSを活用しての議員活動の発信のありかた、若い世代から見ての議員のイメージ、政治への興味・関心など話題は多岐にわたりました。

 eスポーツは新しい分野です。いま、競技としてスポンサーが付いた大会が増える一方、高齢者の認知症予防のためのゲームでのボランティア活動も広がっています。社会の急速なICT(情報通信技術)化に伴い、コンピュータリテラシー(活用能力)が重要になってきています。eスポーツを楽しむことは、このリテラシーの向上にもつながると私は考えています。令和の学校部活動でもあるeスポーツがこれからどんな発展をしていくのか楽しみです。

 「校長室からの風」

        崇城大学eスポーツスタジオオープニンイベントの様子

創立50周年に向かって ~ 実行委員会の始動

 「この城山(じょうざん)地区に県立高校ができると聞いた時は、みんなで大喜びしました。うれしかったですね。あれから50年近くなりますねえ。」

 昨年、西高に赴任し、城山地区の区長さんや自治会のお世話をされている人々に挨拶して回った時、ある高齢者の方が西高創立の際の地域の歓迎ぶりを語られました。JR熊本駅(当時は国鉄)より西方に県立高校はありませんでした。熊本市西部地区の皆さんの待望の県立高校誕生だったのです。

 私たちの学校、熊本西高校は昭和49年10月に創立されました。最初は職員4人だけで、生徒はまだいません。「清 明 和」の校訓をはじめ校旗、校章、教育課程などを定め、募集定員は普通科4学級で発足することが決まり、翌年の昭和50年4月に第一期生の入学を迎えたのです。今年で創立48年となり、令和6年度に創立50周年を迎えるのです。

 2月6日(月)午後、西高の会議室にて、同窓会(「西峰会」)から藤井会長はじめ役員7人、保護者会(「育西会」)から田畑会長はじめ役員9人、そして同窓職員5人を含めて教職員12人が集い、第1回の「熊本西高等学校創立50周年記念事業実行委員会」を開きました。関係者が一堂に会し、意見を出し合う場はやはり必要です。「50周年に向けての大テーマのようなものが必要ではないか」、「記念式典と創立記念祭を合わせて実施するスケジュールを検討すべき」、「企画段階から、生徒会など生徒を積極的に参加させた方が良い」等の貴重な意見が出されました。

 西峰会の藤井俊博会長に実行委員会委員長を引き受けていただき、育西会の田畑会長と校長の私が副委員長となり、企画委員会はじめ総務、財務、記念式典、記念祝賀、記念行事、記念誌、広報の部会を設けた組織が立ち上がりました。しかし、中身はこれからであり、この組織を動かしていく力、熱意の醸成が重要となってきます。私はその点は心配していません。同窓会の皆さんには、強い母校愛があります。また、保護者、旧職員の方たちからは、「西高がんばれ」という応援をいつも受けています。

 また、心強い動きが見られます。1年生の探究学習において、創立50周年に向けて生徒たちで何ができるかをテーマに取り組んでいる班があり、地域社会とのコラボレーション行事や記念植樹など具体的プランの検討を始めているのです。現在の1年生が3年生に進級した時、熊本西高は創立50周年を迎えます。私たちの学校をどんな学校に変化させていきたいのか、生徒たち自身に主役意識を持ってもらい、実行委員会をリードしてほしいと期待します。

                                     「校長室からの風」

          第1回熊本西高創立50周年記念事業実行委員会

「キャリア教育の推進」文部科学大臣賞

 キャリア教育の推進で顕著な功績があったと認められた全国の教育委員会、小・中・高校、支援学校の110団体が、1月19日(木)、東京都港区の三田共用会議所において文部科学大臣賞を受賞しました。私たちの学校、熊本西高校もその一校に選ばれ、栄えある受賞となったことを広く皆さんにお伝えしたいと思います。

 「キャリア教育」とは何だろうと思われる保護者、地域社会の方がいらっしゃるかもしれません。キャリア(career)はもともと職業、職歴などを意味する英語です。文部科学省によると、「子どもたちが将来、社会的・職業的に自立し、社会の中で自分の役割を果たしながら、自分らしい生き方を実現するための力」を育成することがキャリア教育となります。そして、キャリア教育は、産業界と連携して小・中・高校の各学校段階で推進する必要があると文部科学省は求めています。

 一般的に、中学校や専門高校(工業、商業、農業など)では、生徒たちが地域の企業や自治体で一定期間の就業体験(インターンシップ)をすることがキャリア教育実践の代表例と言えるでしょう。しかし、熊本西高の場合は、大部分の生徒が大学・専門学校等の上級学校へ進学する普通高校であり、生徒数が各学年で250~300人の大規模校のため、4年前に独自の取り組みを立ち上げました。西高アカデミック・インターンシップ(通称「NAIS」)です。

 「NAIS」は、県内の7校の私立大学と2校の私立専門学校にご協力いただき、1年生の2学期最初の一週(5日)に大学、専門学校を訪ね、半日または一日の体験入学を行うものです。内容については、例えば医療看護系大学では「看護の仕事とコミュニケーションスキル」、「言語聴覚士のお仕事とは?」といった実学を主とした講義と演習になっています。今、社会がどんな仕事を必要としているのか、産業界の動向はどうなっているのか、専門職となるためにどんな知識と能力が求められるのかなどを学び、職業観や自分の生き方の示唆を得る場となります。

 この「NAIS」を1年生の上半期に実施することで、高校卒業後の進路について生徒たちはより切実に意識するようになり、社会の中の一員としての自覚が芽生えます。面映ゆい気持ちはありましたが、本校の「NAIS」の実践を県教育委員会へ報告し、それを県教育委員会が評価され文部科学省へ推薦していただきました。深く感謝申し上げます。

 今回の受賞を弾みにして、西高はさらにキャリア教育を推進します。学校教育の究極の目標である、「生徒を大人にする」ために。 

 「校長室からの風」

「過ちすな、心して降りよ」(徒然草) ~ 3年生へのメッセージ

 1月13日(金)をもって、3年生の通常登校は終わります。14日(土)~15日(日)に約50万人が受験する全国大学入学共通テストが実施され、熊本西高から73人が挑戦します。一方、受験しない残りの約180人は家庭学習期間に入ります。

 進路内定者の皆さんにとって、3月1日の卒業式までは余裕のある日々となります。自動車学校に通う生徒も数多くいます。1月12日(木)の午後、進路内定者の生徒とその保護者の方々に対して、体育館で集会を開きました。この会で、鎌倉時代末期の随筆「徒然草」の第109段「高名の木登り」(こうみょうのきのぼり)の話を私はしました。

 木登り名人の親方が、大木に登って作業する弟子の様子を見守っています。高い危険な所で作業して いる時には何も言いませんでしたが、家の軒の高さくらいまでに降りてきたときに、「過(あやま)ちすな、心して降りよ」と声をかけました。弟子は、これくらいの高さなら地面に飛び降りることだってできる、どうして注意するのですかと問い返しました。それに対して、名人は「やすきところになりて、必ず仕(つかまつ)ることに候」と言いました。人は、気を緩めた時に失敗をするものだと名人は諭したのです。

 生徒の皆さんにも同じことを私は伝えたい。「過ちすな、心して降りよ」「やすきところになりて、必ず仕ることに候」と。進路も内定し、残り1か月半で高校卒業です。皆さんたちが考えている以上に、高等学校卒業資格は重要な資格です。普通自動車運転免許も大切ですが、その重要性は比較にならないと思います。運転免許は君たちなら1か月半から2か月で取得できるでしょう。しかし、高等学校卒業資格は最低3年必要です。定時制高校なら4年かかります。皆さんは日々登校し、授業に出席し、学習を積み重ねて3年間で96単位の履修科目を習得しました。その成果として高等学校の卒業資格を得ようとしているのです。

 卒業までの残り1か月半は油断大敵です。事故、事件に巻き込まれないよう、自らを律して生活してください。社会の急速なICT化、グローバル化など変化の激しい現代において、学びが終わるということはありません。生涯学習です。就職する人は、いきなり大人たちと一緒に仕事をすることになります。大学、専門学校など上級学校へ進学する人は、勉強内容が格段に難しくなります。4月から飛び立つために、3月までは大事な助走期間と考え、自分自身のために勉強してほしいと願っています。

 結びにあらためて呼びかけます。「過ちすな、心して降りよ」

「校長室からの風」

          大学入学共通テストを受験する73人の集会

「1.5℃の約束」 ~ 3学期始業式

   皆さん、新年明けましておめでとうございます。

 年の始め当たり、未来を担う皆さんに未来のことを考えてほしいと思います。「1.5℃の約束」という言葉を知っていますか? 最近、新聞やラジオ、テレビなどのマスメディアによく登場する言葉です。これは、世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて1.5℃に抑えようというキャンペーンです。昨年2022年、国連の広報センターが世界各国に提案し、日本では新聞社、放送局が一致して協力することとなりました。「気温上昇をとめるために、いますぐ動こう」と呼びかけています。

 コロナパンデミックに巻き込まれて、私たちは自分の体温にとても敏感になりました。人は通常一定の体温に保たれています。これを平熱と言います。しかし、コロナウイルスの侵入による体の変化は体温の上昇となって現れます。パンデミック初期には、37.5℃以上がその目安とされました。

 しかし考えてみると、私たち人間の生存にとって、体温と同じくらい重要な温度は、この地球の気温だと言えます。かつては、多種多様な生物と、水や空気、光などの地球環境のバランスがとれていて、地球の温度は安定していたと言われます。ところが、18世紀後半にイギリスで産業革命がおこり、19世紀に欧米諸国、そして日本などが続き、世界に工業国が増え、石炭や石油などの化石燃料を大量に消費するようになりました。これによって大気中の温室効果ガスは増加し、地球の気温は上昇し始めました。世界の平均気温はこの150年で1.1℃上昇、日本では過去100年の間に1.3度も上昇しています。地球温暖化というこの不気味な変化が何をもたらすのか。猛暑、豪雨、干ばつなどの自然災害から海面上昇など地球環境そのものの異変につながっています。

 私たちは未来を考えることが苦手です。それはまだないものであり、どうなっていくかわからないことと思うからです。しかし、人間の能力をはるかに上回るコンピュータの計算力によって、具体的な未来がシミュレーションできるようになりました。その重大な予測結果に向き合わなければなりません。

 私たちは、関心がある、ごく一部のものしか見えていません。見ようとしません。けれども、コロナパンデミックを体験することで、発熱している地球の未来に関心を持つことは人類共通の課題になったと思います。現在の生活の仕組みや価値観、行動を変えていかなければ、未来は来ないかもしれません。国同士が戦争している時ではありません。戦争は最大の環境破壊ですから。

 未来は大人になったあなたたちの現実です。未来を意識しながら、皆さんが一日いちにちを大切にして、成長していってくれることを期待します。

「校長室からの風」

柔道部の初稽古と鏡開き ~ 新春の部活動スタート

 新春は、光も空の色も空気さえも清々しく感じられるから不思議です。私たちにとって、正月は暦の上で新しい年になったという以上の大きな意味があります。それは再生とでも言うべき、新しく生まれ変わったような感覚が伴います。初日の出、初夢、初詣などすべてに「初」の冠をつけますが、これは初々しさにつながります。また、元日の朝に初めて飲む水を「若水」(わかみず)と称しますが、これも邪気を払うにふさわしい清新な語感です。

 1月4日(水)の仕事始めの日は、小春日和に恵まれました。風は多少ありますが、陽射しのもと校内を歩くと春が来たかのような気持ちとなります。そして、学校に活気が戻ってきました。多くの部活動が練習を今日から始めたのです。なかでも熱気を発していたのが、女子柔道部でした。

 柔道場には、大学や専門学校へ進学、または就職した先輩たちが十数人ほど来ていました。そのうち7~8人は柔道着に着替え、部員の練習相手になってくれました。高校生側は進路が決まった3年生全員も参加しており、卒業生も合わせるとおよそ30人が練習し、柔道場が狭く感じられました。環太平洋大学(IPU)、近畿大学、鹿屋体育大学、警視庁などで活躍するそうそうたる先輩たちの胸を借り練習できる貴重な場です。強い人と戦ってこそ、強くなります。1,2年生も実力の差はあっても、懸命に組み合って、投げられても先輩に幾度も挑んでいく姿にたくましさを感じました。

 そして、1,2年生の部員たちにとって、西高柔道部の伝統の絆を実感する機会にもなったと思います。貴重な正月休みに帰省した先輩たちがわざわざ母校の柔道場に集い、練習相手になってくれると共に、柔道の助言をはじめ大学や専門学校、職場の話を聞くことができます。あの先輩がいる大学に私も進もう、という進路目標も生まれます。

 また、稽古始めのこの日は、柔道部の保護者の方々が西高セミナーハウスの調理室で雑煮を作られ、練習後に部員や卒業生に振る舞われました。まさに鏡開きです。正月のお供えの餅(鏡餅)を割って雑煮や汁粉にして食べる風習を「鏡開き」(かがみびらき)と言いました。正月気分との決別も意味します。

 卒業生及び保護者の皆さんのご協力によって、柔道部の稽古始めはとても充実した、心温まるものとなりました。深く感謝します。

                                     「校長室からの風」

 

絵馬奉納 ~ 美術部の地域貢献活動

 小春日和の陽射しのもと、12月26日(月)、西高美術部が制作した大型絵馬が高橋稲荷神社に奉納され、社殿入口の正門に飾り付けられました。新年の干支は癸卯(みずのとう)であり、朝日の曙光を背景に兎の親子や縁起ものの松を描いた作品です。縦90㎝、横180㎝の木板上、色彩豊かな画面に仕上がっています。高橋稲荷神社に初詣に訪れる方を温かく迎える絵馬となりそうです。

 高橋稲荷神社(西区上代)は西高と同じ城山校区にあり、2002年(平成14年)から美術部が毎年の干支にちなんだ絵馬を制作し、奉納を続けており、今回で22枚目となります。美術部の恒例行事となっており、今年も部員の西田さん(2年)が全体のデザインを考え、部長の中山さん(2年)を中心に8人の部員で協力しおよそ2週間で制作しました。今回の奉納では、高橋稲荷神社の竹内宮司夫妻に出迎えていただきました。「高校生の手作りの絵馬を飾って、正月を迎えられることは誠に有難いことです。西高生の皆さんにはいろいろとお世話になっており、助かっています。」と感謝の言葉をいただきました。

 高橋稲荷神社の正月の巫女のアルバイトを西高の女子生徒が務めます。また、日ごろから広い境内の清掃活動には野球部はじめボランティアの生徒が訪れています。地域の公共の場である神社の美化に西高生が自主的に努めていることを誇りに思います。そして、美術部はその特技を生かしての美術部らしい地域貢献を長年行っていることを頼もしく思います。

 美術部員は放課後や休日には美術室に集い、いつも和やかな雰囲気で活動を楽しんでいます。奉納絵馬の共同制作の時は特ににぎやかな様子で、ほほえましく感じます。しかし、一人ひとりは創作に真剣に向き合っており、公募展では目覚ましい成果を示しています。「くまもと描く力2022」展では坂本君(1年)が大賞。第47回熊本県高等学校美術展では山口さん(1年)が優秀賞で九州総合文化祭(佐賀)出場、そして魚山さん(2年)は最優秀賞に輝き、来夏の全国高校総合文化祭鹿児島大会への出場を決めています。

 今年も年の瀬を迎えました。先週は寒波襲来でした。コロナウイルス感染の波も引きません。このような中でも、美術部だけでなく多くの部活動の生徒が登校し、練習に励んでいます。若さというものも有限です。いま、この高校生の時に、本当に好きなことに打ち込むことが大切です。そのことがこれからの人生を支えることになると思います。応援しています。

「校長室からの風」

希望の光を ~ 2学期終業式

 一年前、「来年こそは、世界のコロナパンデミックが終熄することを皆さんと共に願いたいと思います」と2学期終業式の挨拶をしました。その願いも空しく、今年もパンデミックは続きました。

 また、2月に勃発したロシアによるウクライナへの侵攻も長期化し、現地は厳しい冬が到来している模様です。ロシア軍の攻撃によって、電気、水道、ガスなど社会生活の基盤となるライフラインが大きなダメージを受けているウクライナ住民は過酷な寒さをどう乗り越えていくのでしょうか? 日本とウクライナは約8000㎞も離れています。しかし、遠い国のことと思ってはいけません。今のローマ教皇、フランシスコ教皇は、自然災害、内乱、戦争などの被害で苦しむ社会的弱者の人々を前にして、このような言葉を発しました。「Why them,and not me?」(なぜ彼らであって、私ではないのか?) なぜウクライナの人々であって、日本人の私ではないのか? 「平和な日本に生まれて良かった」で片付く問題なのでしょうか? 21世紀のいま、地球上で共に生きる人間同士として、フランシスコ教皇の言葉をかみしめ、自問自答したいと思います。

 ローマ教皇の言葉を紹介しましたが、今週土曜24日がクリスマスイブ、25日がクリスマスですね。世界で最も信仰する人が多い宗教のキリスト教、その創始者であるイエス・キリストの誕生を祝福する聖なる日です。けれども、イエスキリストという人物が12月25日に生まれたという記録はどこにもありません。聖書にも書かれていません。では、なぜ12月25日に生まれたことになったのでしょうか? キリスト教が成立し、最初に広まったのはヨーロッパをはじめ北半球です。日本も含む北半球はこの時期が最も昼が短く夜が長くなります。日本では冬至と呼ばれる日があります。今年は12月22日(木)が冬至で、1年で最も昼間の時間が短い日です。夜の闇に長く支配されていた北半球が光を取り戻し、一日一日、昼の時間が長くなっていく変わり目の時期なのです。そのような時に人々に光をもたらす救世主イエスキリストが誕生したのだとヨーロッパの人は考えたのでしょう。

 「冬来たりなば春遠からじ」と言われます。これから一日一日、太陽の時間が長くなります。新しい年を、希望の光をもって迎えましょう。皆さん、良いお年を。

 「校長室からの風」

              2学期表彰式・終業式の様子

「小さな世界」の愛しさ ~ 2年生修学旅行その2

「修学旅行でディズニーランドに行くのですか? 反対です!」

 20代の青年教師だった頃の私は、当時勤務していた高校の修学旅行実施検討会で反対論を唱えました。アミューズメントパークの体験は、修学旅行の趣旨から逸れると思ったのです。テーマパークは家族や友人と行って楽しめば良い所で、修学旅行では個人的に行かないような学びの場に連れていくべきだという持論がありました。私のような意見の教職員が当時は少なくなかったと思います。しかし、この時の修学旅行のクラス別自由研修で、生徒の圧倒的希望によって私の担任クラスはディズニーランドへ行くことになりました。

 東京ディズニーランドは1983年(昭和57年)に千葉県浦安市にオープンしており、20代後半だった私が引率者として初めての修学旅行で訪ねた時は、オープンして10年経っていなかったと思います。生徒たちと入園し、その来場者の多さと破格のスケールの施設・設備に驚かされました。「世界中の人々に夢を与える」という創始者ウォルト・ディズニーの精神が体現化されていると思いました。そして、キャストと呼ばれる働く人々(スタッフ)のきめ細かいサービスに魅了されました。小さなゴミでも落ちていると見逃さず素早く掃除して回るキャストの動きは特に印象に残りました。アメリカンドリームに日本のおもてなしの接客文化がミックスされていると感じました。

 絶叫系アトラクションは避け、あまり並ばずに体験できるものを選び、クラスの生徒数人と、「イッツ・ア・スモールワールド」というアトラクションに乗りました。ボートに乗って、各国の民族衣装の子どもたち(人形)が歌い、踊る様子を見ながら世界を周遊するものです。「世界中どこだって 笑いあり涙あり みんなそれぞれ助け合う 小さな世界」と子供たちの歌が響く中の世界一周はとても穏やかな気持ちとなり、幸福感を覚えました。

 あの日からおよそ30年。12月9日(金)、熊本西高2年生修学旅行引率で東京ディズニーランドを訪ねました。引率の先生2人と「イッツ・ア・スモールワールド」に乗りました。また、私が薦めたこともあってか、多くの生徒たちも乗ったようで、「平和の大切さを感じました」とある生徒が笑顔で感想を語ってくれました。テーマパークからも多くのことを学ぶことができます。

 今回の修学旅行体験が愛しい記憶となって残り、生徒たちのこれからの人生を根底から支え続けることになってほしいと願っています。

「校長室からの風」

       西高2年生修学旅行2日目 東京ディズニーリゾート(ランド・シー)

モノより体験を ~ 2年生修学旅行

 修学旅行は、高校3年間で一回の唯一無二の学校行事です。新型コロナウイルス感染症パンデミックが発生して以来、本校では体育コースのスキー研修を除いて修学旅行は実施できていませんでした。そして、ようやく今年度、2年生サイエンス情報科(1組)と普通科(2~6組)の合同修学旅行を実現できました。12月8日(木)~11日(日)の3泊4日、首都圏への修学旅行です。

 8日の朝、体育館での出発式の際、団長として校長の私は生徒たちに語り掛けました。

 「若い皆さんに必要なのはモノより体験です。旅行は大きな体験。そして旅行は、いつ、誰と一緒に行ったかが重要なのです。感受性豊かな高校生の時に級友たちと行く修学旅行はかけがえのない体験となるでしょう。」

 天候に恵まれた4日間でした。よく晴れ、暖かでした。そして、私たちの予想以上にどこの観光地も大変な人出で賑わっていました。外国人観光客も多かった浅草寺の仲見世通り。夕闇のイルミネーションが華やかで幻想的だった東京スカイツリー並びにソラマチ、平日にかかわらず人人人の「夢の国」ディズニーリゾート(ランド及びシー)、クラス別研修で訪ねた原宿表参道や横浜ベイエリアや中華街の混雑ぶり等。まだコロナ禍は終息していないにもかかわらず、旅行を制限されてきたフラストレーションの反動のような状況です。

 しかし、このような祝祭的ムードの中にあって、西高2年生は学びの旅の自覚をもち、節度ある行動をとり、頼もしく思いました。ディズニリゾートでは他県の高校生の乱れた制服姿に思わず眉をひそめたくなりましたが、西高生の制服姿は普段と変わらないものでした。羽田空港や熊本空港においても約200人が整然と並び、公共の場のルールを守りました。4日目の日本科学未来館(東京江東区)では、最終日の疲れも見せず、最新のテクノロジーや宇宙・生命の探究にかかわるそれぞれのコーナーで熱心に見学し、スタッフの説明に質問する姿がありました。そして、4日間を通して、生徒たちの笑顔、好奇心で輝く表情、いきいきとした様子が見られました。

 全国旅行支援の地域別クーポンを東京、千葉で得られたこともあり、生徒たちはたくさんのお土産を購入していました。家族や友達へお土産の品を渡す喜びもあるでしょう。けれども、「みやげ品」よりも「みやげ話」を家族は待っておられるよと私は生徒たちに言いました。モノより豊かな体験をしてくれることを願い、保護者の方々は旅費を出されていると思います。

 コロナ禍の修学旅行はリスクがあります。しかしそれでも実施することの教育効果は大きいと信じています。

「校長室からの風」

 

未来を創る ~ 福島県立ふたば未来学園高等学校を訪ねて

 「生徒たち一人ひとりが未来です。」

 福島県立ふたば未来学園高校の学校説明での言葉は深く胸に刻まれました。平成23年(2011年)3月に起きた地震、津波、そして福島原子力発電所の事故によって、福島県双葉郡内にあった富岡高校をはじめとする五つの高校は休校となり、多くの高校生は郡外、または県外へ避難しました。未曽有の自然災害と原発事故によって離散するという過酷な体験となりました。やがて次第に人々がふるさとへ帰還する中、平成27年に双葉郡の復興、創生の拠点として福島県立ふたば未来学園高校が開校されました。

 「自分自身と社会の変革者たれ」のモットーのもと、普通科教育、農業、商業、福祉の専門科教育、そしてトップアスリート育成のスポーツ教育の特色ある学びが展開されています。11月24日(木)、ふたば未来学園高校を体育科の先生方と訪問しました。令和4年度全国高等学校体育学科・コース連絡協議会総会・研究会が同校で開催され、それに出席するためです。福島双葉郡広野町の高台にある同校は、まさに未来の学園でした。バドミントン専用のアリーナはじめ新しく機能的な教育施設がそろい、ため息が出るほどです。また校舎の中にNPOやボランティアの人々が運営するカフェやコミュニティスペースもあり、学園に隣接して町のスポーツ・文化施設が広がり、まさに地域社会と一体となった学園でした。

 福島の高校生は、避難、コミュニティの崩壊、転校、そして帰還した時のふるさとの変景など混乱と動揺の体験を通じて、新しい生き方、新しい社会を創っていかなければならないという大きな課題に直面しています。ふたば未来学園高校の授業、学校生活の様子を見て、生徒たちは、それに向かって、使命感をもち、主体的に踏み出しているように感じました。彼らが福島の未来を担っていくと思うと、深い感慨を覚えました。

 3・11のあの日以来、激動の日々を生きてきた福島の高校生と比べることはできませんが、どこの地域の高校生にも未来を担うことが期待されています。生徒を育てる高校の役割は、未来を創ることだとあらためて実感しました。

 「合格が決まりました」と笑顔で推薦入試の結果を校長室へ報告に来てくれる3年生が増えてきました。「これからが勉強だよ」と励まします。生徒の笑顔に未来を感じる日々です。

(追記)

  令和6年度全国高等学校体育学科・コース連絡協議会総会・研究会は熊本西高が会場です。

                                         「校長室からの風」

           ふたば未来学園高等学校の様子

伝説の指導者 ~ 西高なぎなた部を創った一川治子先生

 「新人戦は、攻める姿勢が大切。たとえ相打ちになってもよいから、攻める。負けたくないという気持ちで防御に力を入れる選手は伸びません。」

 新人戦の見どころを尋ねた私に対して、一川先生は明言されました。また先生は、審判の姿勢に関しても次のように述べられました。

 「最後の高校総体ではないのだから、選手たちはまだまだ未完成。審判が考える理想の一本は遠い。多少、当たりが浅い、姿勢が不十分な面があっても、勢いがあれば一本取ってやっていい。そのことで選手を伸ばすのが新人戦です。」

 11月13日(日)、熊本西高体育館にて「令和4年度熊本県高等学校なぎなた新人戦大会」が開催されました。私は県高体連のなぎなた部会長として臨みましたが、このような県大会は県なぎなた連盟から審判のご協力を得ることになっており、同連盟副会長の一川治子先生には必ずご出席いただき、審判長をお願いしています。一川先生がいらっしゃることで大会が引き締まります。先生は、試合会場へいらっしゃると、本部席のところに必ずお香を立てられます。日頃、ご指導されている熊本武道館において武神に供える習わしです。この香りで、勝負の場が清められたような感じとなり、私たちも気持ちが落ち着きます。

 一川先生は、熊本西高なぎなた部を創った方です。平成3年の西高体育コース発足以来20年間、女子なぎなた部の監督として指導に当たられ、平成13年から平成17年にかけて全国高校総体なぎなた競技団体で5連覇、そして通算7回優勝という空前の偉業を成し遂げられました。この他、国体において熊本県チームを幾度も優勝に導くなど、なぎなたでは全国に知られた伝説の指導者です。

 西高の監督を退かれておよそ15年になりますが、背筋は伸び、声も張りがあり、なぎなた競技への情熱はいささかも減じておられません。現在も熊本武道館において子どもから高校生、大人まで指導をされ、生涯現役を貫いておられます。

 大会の度に一川先生とご一緒でき、長いご指導の経験談やなぎなたの奥の深さについてご教示いただくことが私にとってはかけがえのない時間です。

 「会場を整え、審判員がついた公式戦を用意することが大人の役割。選手は試合をすることで伸びていきます。ほら、見てください。初戦にくらべ、試合を重ねるごとに内容が良くなっているでしょう。」

 武道の、いや人生の達人の慧眼に感服しながら、初々しくもはつらつとした新人戦大会を観戦できました。西高なぎなた部の伝統はこれからも続きます。

「校長室からの風」

                全国高校総体なぎなた競技団体5連覇の記念写真

西高「朝の読書」

 西高では朝の8時30分から10分間、全校一斉の「朝の読書」時間となっています。学校全体が静寂に包まれ、落ち着いた時間で一日の始まりとなるのです。西高「朝の読書」の4原則があります。

 1 みんなで読む 2 毎日、読む 3 好きな本でよい 4 読んで知る

 多くの高校で朝の読書が実施された時期がありましたが、現在では少なくなったと思います。西高では、「朝の読書」を継続しています。

 西高は教育のICT(情報通信技術)化の波に乗り、県のICT特定推進校として学習活動をはじめ学校行事や職員の校務にタブレット端末などICTを率先して活用しています。社会の急速な情報化に主体的に対応できる人材育成のために教育のICT化は不可欠です。一方、学校教育はバランスが大切です。西高では伝統の体育的行事や地域社会の課題に取り組む探究活動など自ら身体を動かす実体験を豊富に取り入れています。ICTの進化に伴い、身体性や五感を豊かにしていくことが心身の成長に益々重要となっています。「朝の読書」もそういう観点から、大切な時間と思います。紙の本の手触り、自分と向き合うひと時、クラス全員で静けさを創り出す協調性など特別な時間となっています。

 長期化するコロナ禍の中、自宅にて一人でできる読書が再注目されています。読書は心の良薬とも言われます。不安、焦燥、失意などの動揺する気持ちが、自らの内面との対話で鎮まっていきます。また、本は読者をいろいろなところへ連れて行ってくれます。

 「読書の習慣を身につけるということは、人生のほとんどすべての苦しみから逃れる避難所を自分のためにつくるということだ。」(サマセット・モーム)

 情報が氾濫する今日、本当に必要なのは情報を体系化した知識です。そしてそれは本を読むことで初めて得られる場合が多いことを私たちは知っています。ロシアによるウクライナ侵攻に関して、連日おびただしい情報が様々な立場から発信されています。情報の渦中にあって、受け手の私たちは何を信じてよいのか、一つひとつの情報を整理する余裕がありません。しかし、一冊の書籍がそれを助けてくれることがあります。『物語 ウクライナの歴史』(黒川祐次、中公新書)はロシアの侵攻前に出版されていた本で、ウクライナの歴史や地理、地政学的問題について、元ウクライナ駐在大使の筆者が丁寧に著しています。私はこの本を読み、初めてウクライナの置かれた立場やロシア侵攻の背景が理解できたような気持となりました。私は西高の図書館でこの本と出会いました。西高生の皆さんにもぜひ読んでほしいと願っています。

 「ひと それぞれ 書を読んでいる 良夜かな」(青邨)

 かつての日本にあったこのような風景を取り戻せたらと思います。

「校長室からの風」

                 西高の図書館

みんなで歩く、ひたすら歩く ~ 西高チャレンジウォーク開催

「ゴールしたら、豚汁が待っている。頑張ろう」

 足取りが重くなった生徒に励ましの声を掛け続けました。しかし、それは私自身を奮い立たせる声掛けでもありました。11月2日(水)、爽やかな秋空の下、西高チャレンジウォークを開催しました。西高を出発し、本妙寺の加藤清正公銅像まで往復の15.6㎞を歩く行事です。

 体育コースの生徒は7時45分には出て、各ポイントに立ち、交通安全やコースの誘導をしてくれます。一般生徒は8時半から2学年、1学年、3学年の順でスタートしました。それぞれ4~8人のグループ別に歩くことになります。担任の先生はクラスの生徒たちと共に歩きます。私も昨年に続き参加しました。昨年は一番最後からゆっくりと歩きましたが、今年は最初にスタートした2学年の真ん中あたりで歩き始めました。

 坪井川の穏やかな流れ、高橋稲荷神社近くの朱色の橋、薄く色づき始めた金峰山を左手に見ながら谷尾崎の道、そして島崎の丘陵地からいよいよ本妙寺の坂へと向かいます。最後の石段はとてもこたえ、足をやっと持ち上げながら清正公銅像に到着。この高台からの熊本市街地の眺望が良く、疲れが癒されました。

 復路は、本妙寺名物の「胸突き雁木」と呼ばれる古い石段を下ります。6年前の熊本地震で損傷を受けた仁王門が、今年は完全に修復された姿を見せていました。現在、西区では金峰山山系の山麓を通過する「熊本西環状道路」の花園ICから池上(いけのうえ)ICの区間の工事が進んでいます。歩いていて、大型重機が動きトラックが出入りする様子が目に入ります。変わる風景の中に、変わらないものもあります。柿の実がなり、薄(すすき)がそよぐ秋の里山は変わりなく、歩く私たちを優しく迎えてくれます。足は重くなり、疲労を全身に感じてきますが、それでも、みんなで歩く、ひたすら歩くという営みはとても尊いと思えてきます。

 学校にゴールした時の達成感は何物にも代えがたいものでした。私は約3時間半で完歩。生徒たちも次々に笑顔でゴールしてきます。西高から本妙寺まで、自動車なら往復30分程度でしょう。早くて便利ですが、充足感はありません。自らの足で西区の道を踏みしめながら、クラスメイトと談笑し、励ましあい、歩き通したからこそ、かけがえのない体験となったのです。

 今年は3年ぶりに保護者の皆さん(育西会)によって豚汁がつくられ、歩き終えた生徒、職員に振舞われました。温かくおいしい豚汁の味は忘れられません。

「校長室からの風」

ゴールして豚汁をもらう生徒達

 

演劇部から突きつけられた問い ~ 県高校演劇大会

「59点と60点の間にラインを引くという指示を出しているあなたは、いったい誰なんですか!」

 この台詞(せりふ)が響き、熊本西高演劇部の「合格ラインはやってきた!」の舞台の幕は下りました。この最後の台詞は私の胸に突き付けられたように感じました。深いメッセージに気持ちが揺さぶられました。

 第71回熊本県高等学校演劇大会城北地区・熊本市地区大会が10月21日(金)~23日(日)に熊本市植木文化ホールで開催されました。コロナ禍によって活動を制限されてきた演劇部会にとって、3年ぶりに一般観客を入れての本格的な発表会となりました。演劇部の生徒たちは、感染防止のために思うように声を発することができず、言葉を奪われ、制約された活動に甘んじてきました。しかし、ようやく言葉が戻ってきたのです。マスクを外し思い切り声を出し、全身で表現する姿に熱い共感を覚えます。

 初日の21日(金)の午後、西高演劇部の「合格ラインはやってきた!」(作:加藤のりや)が発表されました。点数に自我が芽生え擬人化された不思議な世界の話です。「59点」(男子)と「60点」(女子)は隣同士で、お互い好意を持っている関係なのですが、ある日突然、二人を引き裂く「合格ライン」という存在が現れます。その結果、二人は合格と不合格という離れ離れの関係になっていかざるを得ません。その理不尽な運命に二人は抗い、葛藤します。さらに、何事にも動じない「零点」、淡々としながら本質を悟っている「百点」も加わり、この不条理な物語は進みます。「合格ライン」に対し、「59点」と「60点」の間にラインを引くように命令を出している黒幕の存在が次第にクローズアップされます。そして、冒頭の「合格ライン」のあの叫びでラストを迎えるのです。

 生徒たちの学習活動は本当にすべて点数化できるのだろうか? 点数以外では客観的で公正な評価はできないのだろうか? 一点刻みの点数の評価は絶対だろうか? その点数評価が前提で動いている社会のあり方に問題はないのだろうか? 見終わった観客は様々なことを考え、思いをめぐらします。

 古くて新しい普遍的な問題を、演劇という文化活動の力で見る者に突き付けた西高演劇部の力を心から称えたいと思います。優秀賞に輝いた西高演劇部は11月に行われる県大会への出場を決めました。

「校長室からの風」

        創立記念祭での演劇部のステージ(熊本市文化会館)

 

「探究」から「研究」へ ~ 2年生の「総合的な探究の時間」西高プロジェクト発表会

 「いまの子ども食堂と現状」、「私たちの西高PR」、「ゴミの再利用」

 「高齢者と障がい者の方が不自由なく楽しく暮らすには」、「交通安全」

 「車椅子について」、「検証 カラス撃退やってみた」

 これら7本の探究テーマについて、10月18日(火)、2年生普通科の総合的な探究の時間「西高プロジェクト」発表会(体育館)で生徒によるプレゼンテーションが行われました。この様子は、これから地域探究活動を始める1年生の各教室にもオンライン配信されました。また、今年度の西高学校運営協議会委員の中学校校長先生(三和中、城西中、花陵中)、大学関係者(崇城大学、熊本保健科学大学)にも参観いただきました。

 私たちの生活及び身近な地域社会には様々な課題があります。それに気づき、どうすれば改善、解決できるかを考え、調べ、行動して、提案まで行うという探究学習は、今、最も高校で求められているものです。それは教科横断的な内容であり、課題は一人では解決できず、同じ課題意識を持つ仲間とチームで取り組み、さらには学校外の機関や地域社会の人々と連携する必要もあります。受け身ではなく主体的になる学習、仲間や関係する人々との協働学習、そして学びのフィールドが社会に広がる学習です。成人年齢が18歳に引き下げられたこともあり、高校時代に社会に積極的に参画する姿勢を養うことが必須となった現在、探究学習の重要性はより高まっています。

 発表会で最も印象的だったのは、会場からの質問が多かった点でした。「そのように考察された根拠は何ですか?データはあるのですか?」のような論理的な問いでした。それに対し、発表者側も、的確な回答を行ったり、未解決な点は正直に「今後の課題です」と答えたりして、好感がもてました。

 1年生の後半から2年生の前半にかけて取り組んできた探究活動であり、内容も未熟でプレゼンのスキルも不十分です。しかし、自ら考え、仲間とコミュニケーションをとりながら、社会との関りを意識して課題解決に取り組むプロセスは、高校生を大きく成長させると思います。高校でできることは時間的にも内容的にも限られていますが、「探究力」はつけさせることで、生徒一人ひとりの進路につながると期待しています。

 発表した2年生の多くは1年後の今頃は大学、専門学校等の推薦入試に臨んでいるはずです。皆さんは「探究」から「研究」へと進んでいくのです。

「校長室からの風」

創立記念祭を終えて(講評)

 熊本西高校は昭和49年10月に創立されました。最初は職員4人だけで、生徒はまだいません。「清 明 和」の校訓をはじめ校旗、校章、教育課程などを定め、募集定員は普通科4学級で発足することが決まり、翌年の昭和50年4月に第一期生の入学を迎えたのです。今年で創立48年となります。他校では文化祭と言われることが多い秋の文化的行事を、本校ではあえて創立記念祭と呼ぶのはなぜでしょうか? 毎年、創立の原点に立ち返り、新たな西高の元気を発信しようという願いが込められているからです。

 3年前までのように学校全体を会場に、地域に開放しての賑やかなお祭り的行事はできません。しかし、熊本市民会館という立派なホールを舞台に、文化部をはじめ生徒のみなさんのステージ発表が開催されました。本格的なホールは体育館と異なり、音響、照明ともに優れていて、音楽や演劇など舞台芸術には最高の環境が整っています。クラスメイトが、同級生が、ステージ上で演奏、発表する姿は、普段の姿とは違い、より大きく輝いて見えたのではないでしょうか? 友達の新たな一面を発見する機会となったことでしょう。観客が真剣に鑑賞することが、出演者の力を引き出すことになります。皆さんはマナーを守って良い観客でした。だから、ステージ上のパフォーマンスもより良いものになりました。ステージに登場した人は一部の人ですが、裏方を担当した人や観客も含め、西高生みんなで創り上げた創立記念祭になったと思います。

 この創立記念祭は生徒会執行部はじめ実に多くの皆さんの熱意と努力によって実現しました。関係者すべての皆さんに感謝します。コロナパンデミックの中でも、西高は途切れることなく創立記念祭を続けています。これからも、西高は、生徒の皆さんの居場所と出番のある学校でありたいと思います。皆さん一人ひとり、自分の可能性を信じ、未来に向かって進んでください。特に3年生の皆さんは、自分の将来を切り拓く受験という特別なステージで全力を発揮してください。

 最後に一言、「闇の中で眠り 起きて朝日を浴びる」生活を心がけてください。講評を終わります。

                                     「校長室からの風」

 熊本西高創立記念祭の様子(10月12日、熊本市民会館)

命を守るヘルメット ~ ヘルメットを着用し自転車に乗ろう

 「日本では、ほとんどの人がマスクをしていますね。けれども、自転車に乗る人でヘルメットを着用している人はあまりいません。一方、アメリカ合衆国では、マスクをしている人は少ないのですが、ほとんどの人がヘルメットをかぶって自転車に乗っています。交通事故において頭を守ることの大切さを米国人はわかっていますから。日米、対照的な光景です。」

 長くアメリカ合衆国で仕事をされ、この春に帰国し、西高の近くにお住まいの方から聞いた話です。

 明日、令和4年10月1日から、熊本市では自転車利用者のヘルメット着用が努力義務化となります。全年齢層を対象として、熊本市自転車安全利用条例が改正、施行されるのです。その背景として、自転車利用者の死亡事故において、約6割が頭部へのダメージが致命傷となっており、ヘルメット着用が死亡事故を確実に減らすことにつながるというデータがあるからです。

 もちろん、条例による努力義務化ですから、ヘルメットを着用しなくとも取り締まりや罰金・罰則とはなりません。しかし、この機をとらえ、私たちは高校生に対して、ヘルメットで命を守ることになるというメッセージを強く発しなければならないと思います。

 西高では4年前に自転車で通学途中の女子生徒が交通事故でなくなるという悲劇が起こりました。交通事故は無情にも一瞬で、かけがえのない命を奪い、家族をはじめつながりのある人々を悲しみの淵に沈めます。あの日、学校に向かっていた彼女が抱いていた希望、夢、そして未来のすべてが失われたのです。

 自転車通学生の皆さんにあらためて呼びかけます。ヘルメット着用を真剣に考えてください。西高では、育西会から2000円の補助があり、軽くて丈夫でスタイリッシュなヘルメットを2300円で購入できるようになっています。二度とこのような交通事故の悲劇を起こさないために、保護者の方たちがヘルメット購入補助制度を始められたのです。けれどもここ数年、ヘルメット着用の自転車通学生は増えていません。

 今回の熊本市での自転車利用者のヘルメット着用の努力義務化を契機に、全世代で意識が変わり、ヘルメット着用が多数派となることを願っています。ぜひ保護者の皆様もお考えいただき、子どもさんと話し合ってみてください。

 かけがえのない命を守るために。

 「校長室からの風」

     9月12日に実施された育西会の皆さんによる朝の交通指導風景

 

 

 

2年生の皆さんへ ~ 2学年集会

 コロナ第7波に覆われた夏でした。しかしながら、四国インターハイ、東京での全国高校総合文化祭など高校生のスポーツ、文化に係る大きな大会は予定通り実施されました。困難な環境の中にあっても、高校生に日ごろの活動の成果の発表の場を与えたいという大会関係者のご尽力の賜物と有難く思います。西高としても、創立記念祭はじめ2学期に予定している学校行事について、コロナ感染対策を講じながらすべて実施していきたいと考えています。そして、これらの学校行事、生徒会活動及び部活動において中心を担うのが皆さん2年生です。あなた達の出番がきました。あなたたちが前面にでなければならないのです。そういう意識を持って、高校生活に臨んでほしいと思います。

 西高は、教育活動におけるICT(情報通信技術)の活用で県のトップ校を目指し、様々な実践を重ねています。生徒一人一台のタブレットを活用し、わかりやすい授業づくり、生徒同士の共同学習、大学や専門機関のオンライン講座、海外との国際交流、そして今日の学年集会もそうですが、学校行事や校務の改革にICTを利活用しています。皆さんも、必要不可欠な文房具としてタブレットを日常、使いこなしてください。但し、ICTを活用することは一人の世界に閉じこもることではありません。逆のベクトルです。情報をみんなと共有し、チームで課題に取り組む探究的な学習が盛んになります。協調性、チームワークが学習活動の場でも求められます。趣味、性格、個性、価値観が異なる人と一緒に活動していくことは、かけがえのない体験です。高校は人間関係を学ぶ場であることも忘れないでください。

 最後に修学旅行について触れます。体育コースは1年生の12月、無事に長野へのスキー修学旅行を実施できました。しかし、普通科の台湾旅行は2年次に延期し、サイエンス情報科と合同でこの12月に関東への修学旅行を実施することになりました。サイエンス情報科のシンガポール、普通科の台湾という海外修学旅行に引かれ入学してきた人もいると思いますが、コロナパンデミックの終息が見通せない現在、行き先の国内への変更を理解してください。

 今の3年生は、体育コース以外は修学旅行が実施できませんでした。私の判断で最終的に中止を決め、体育館に生徒たちを集め、「この厳しい現実について、時間をかけてもよいから受け止めてほしい、理解してほしい」と語りました。生徒にとって理不尽な体験だったと思います。当たり前のことが当たり前にできない状況は続いています。楽観はできません。皆さん、より一層、自己管理に努め、修学旅行という大きなプロジェクトを実現しましょう。

「3年間で生徒を大きく伸ばす西高」をモットーに全職員で全力を尽くしていきます。本日の学年会が充実したものになることを願い挨拶を終えます。

「校長室からの風」

1年生の皆さんへ ~ 1学年集会

 台風一過、爽やかな秋空が広がった9月20日(月)午後、保護者の方々にもご来校いただき、1年の学年集会を開催しました。保護者の皆様はそれぞれの教室に入り、子どもさんの席にすわってもらい、生徒たちは一同、体育館に集合しました。体育館と各教室はオンラインで結ばれ、時間を共有できます。ICT(情報通信機器)の活用です。

 全体会の冒頭で、1年生の皆さんに対して、3年間で変化していくことの期待を述べました。高校生活はこれからです。自分探しの旅は始まったばかりです。高校3年間は心身ともに大きく成長する時期です。近年のライフサイエンス(生命科学)でもそれは実証されています。私たち人間の身体は何十兆という細胞でできており、日々、分裂を繰り返し、機能更新が行われています。しかし、人間の細胞分裂は、年を取るに伴い不活発になっていくそうです。今年60歳を迎える私はもうあまり細胞分裂が行われない一方、皆さんは人生の中で最も細胞分裂が活性化していて、皆さんは、自分でも気づかないうちに驚くほどこの3年間で変化するのです。

 皆さんは昨日の皆さんではありません。明日の皆さんは、今日の皆さんではありません。急速な社会のICT化、経済のグローバル化という変化に対応できるのは、自分自身が変化していく若者だと私は信じています。

 全体会では、進路指導の講義、2年次でのコース・科目選択の説明が行われました。そして、普通科全員で先般体験したNAIS(西高アカデミックインターンシップ)の生徒発表(中間発表)が体育館で行われました。大学7校、専門学校2校の全面的なご協力によって実現した体験入学について、担当生徒たちがパワーポイントのスライドを使い、体育館でプレゼンテーションを行いました。ICT機器を駆使してのプレゼンテーションのスキル(技能)は急速に向上しており、1年生の豊かな可能性を感じ、頼もしく思いました。

 この1年生が3年に進級する時、私たちの熊本西高は創立50周年を迎えます。その時、私はもう西高に在職してはいませんが、希望をもって2年後を想像しています。

                                     「校長室からの風」

校長室のアートギャラリー ~ 「文化の西高」

 西高校長室に生徒の絵画・書道の作品展示を今年度から始めたことは1学期の「校長室からの風」でお知らせしました。絵画・書道それぞれ1点でしたが、今月、新たに2点の絵画作品が加わりました。いずれも公募展で賞を得た美術部3年生の大作です。

 久保さん(3年)の作品は、友達がくつろいでスマホを眺めている姿を描いたものです。人物像はとても具象的な一方、周囲には小さな点で幻想的な円や半円が浮かんでいて、ぬいぐるみや桃も配置され、不思議な世界が創り出されています。友人への久保さんの思いが創作のモチーフとなっているようです。また、兜島さんの作品は、画面いっぱいに眼が描かれ、この眼差しそのものがテーマです。大きく見開かれた瞳には、樹木の生えた丘陵が映っており、眼差しの強さが見る者に迫ります。兜島さんの眼差しがこれから様々な対象をとらえ、作品が次々に生まれていくことが期待されます。

 久保さん、兜島さんともに、大学の美術学部に進学し、さらに創作活動に精進していく決意を語ってくれました。言葉以上に雄弁な美術作品で、自らの感受性に基づくメッセージを発信し続けていってくれることでしょう。

 また、書道部の活動においても、顧問の山下先生からうれしい報告がありました。9月10日(土)に宇土市で開催された熊本県高等学校揮毫大会において、2年臨書半切部門で内山さんが1位、山下君が3位、2年創作全紙部門で五島さんが3位、2年臨書全紙部門で斉藤さんが3位を獲得しました。西高書道部がこれだけ上位を占めることは近年なかったことであり、快挙です。早速、放課後に書道室を訪ね、部活動中の書道部員にお祝いを伝えました。部員全員、明るい雰囲気で、迎えてくれました。

 西高は、平成3年という県内で最も早く体育コースを設けたことが象徴するように、体育系部活動が盛んな高校として県内外で知られています。玄関や廊下等に、なぎなた部、柔道部、ラグビー部、野球部などの栄光の軌跡の記念品や写真が並んでいます。しかし、近年、美術や書道の分野の伸びは著しいものがあり、「文化の西高」をもっと誇ってよいと私は考えています。

 「ダイヤモンドの原石のような生徒たちがたくさんいます!」と美術部、書道部の顧問の先生方が口をそろえて言われます。原石の生徒を磨いて、育てることができる指導者がいるのが西高の強みだと私は思います。

 西高へご来校の際は、校長室のアートギャラリーで、生徒の美術、書道の作品をご覧ください。

「校長室からの風」

「NAIS」(西高アカデミックインターシップ)開催

 「NAIS(ナイス)」という学校行事が西高にはあります。西高アカデミックインターンシップの頭文字から生まれた言葉です。1年生普通科(体育コース含む)の生徒たちが、大学や専門学校を訪問し、半日単位の体験入学を行うのです。コロナ禍で過去2年間はオンライン形式の実施となり、大学・専門学校側からの説明、講義等が中心でした。しかし、今年度は3年ぶりにそれぞれの大学キャンパス、専門学校の施設を訪問しての体験学習の場となりました。

 「NAIS」にご協力頂いている大学、専門学校は次のところです。コロナ感染がいまだ収束しない中、本校生を受け入れて頂いたことに深く感謝申し上げます。

崇城大学、熊本学園大学、熊本保健科学大学、尚絅大学、九州ルーテル学院大学、東海大学、九州看護福祉大学の7大学

九州中央リハビリテーション専門学校、大原学園の2専門学校

                                         (順不同)

 大原学園での体験入学のみ夏季休業中に実施し、その他の大学・専門学校は8月29日(月)から9月2日(金)にかけて行われました。5日間、生徒達の希望をもとに作られたローテーションに従い、それぞれの大学・専門学校に「登校」します。そして、各大学、専門学校の特色を知り、入門講義を受け、基礎実習・実技を体験するのです。専門的なことを研究するための施設の充実ぶりに驚きます。入門であっても講義の難しさに戸惑います。一方、実習や実技には積極的に取り組んだようです。

 たとえ半日であっても、大学や専門学校の内側の世界を体験する意味は大きいものがあります。しかも、1年生の2学期の始まりに行います。この時期はまだ多くの大学・専門学校が夏季休業中という事情もありますが、西高としては、高校の先にもっと大きく深い知の世界が広がっていることを強く意識し、学びの動機付けとしてほしいのです。今は理解できない大学の入門講義ですが、それを理解できる学力を養うのが高校時代です。高校卒業後の進路、ひいては自分の人生を考えることにもつながると考えます。

 大学の中には、西高の先輩が待っていて、大学の紹介や「高校で学んでおくこと」等の助言をしてくれたところがありました。1年生にとっては、きっとその先輩が大きく見えたことでしょう。大学生の先輩の姿に、近い将来の自分を投影した人もいるかもしれません。

 無限の知の世界が広がっています。1年生の皆さんの学びの旅は始まったばかりです。

「校長室からの風」

「西高、前へ」 ~ 2学期スタート

 新型コロナウイルス感染症第7波に社会が覆われた夏でした。いつ、だれが感染してもおかしくない状況が今も続いています。しかし、この困難な状況の中、ラグビーの7人制全国大会、四国インターハイ、東京での全国高校総合文化祭など高校生のスポーツ、文化の大きなイベントが実施されました。西高から多くの生徒の皆さんが出場、参加できたことは大きな意義があったと思います。

 「高校生に日頃の活動の成果を発揮する場を設けたい」という多くの人々の熱意と献身的努力によって、このような大規模な大会は、開催、運営されたものです。あらためて大会関係者の皆様に、感謝したいと思います。

 ラグビーの全国大会、インターハイと高いレベルの大会ですから、西高生も最後は勝つことができませんでした。優勝の喜びを得られるのは、団体戦なら一チーム、個人戦なら一人だけです。夏の甲子園の野球大会は初めて東北の学校、仙台育英高校が優勝しましたが、全国で4千校を超える参加校があり、深紅の優勝旗を手にできる高校は一校だけです。他はすべて敗者と言えます。

 しかし、負けたことから何を学んだか? 悔しい体験から何を考えたか? 人は深く考えることで、変わることにつながります。負けた体験から成長していくのです。生徒の皆さんの中には、自分は体育系部活動に所属していないから関係ないと思う人もいるかもしれませんが、それは違います。負けるということを失敗という言葉に置き換えてみてください。失敗した、間違った、できなかった、悔しいという感情が出発点です。なぜ失敗したのか、間違ったのかを考えてみる。そうすることによって初めて人は変わっていくことができます。負けて悔しい、失敗して自分の未熟さを知った、という切実な体験を重ねてこそ、皆さんは成長していくのです。

 熊本西高の2学期は8月25日(木)に始まりました。新たに二人の職員が西高に加わります。英語科の坂口先生(1年1組副担任)、新ALTのアリ・アルサネア(ALI  ALSANEA)先生です。アリ先生はアメリカ合衆国アリゾナ州の出身で、スポーツマンです。日本語を勉強中で、廊下で会うと「お疲れ様です」と言ってくれます。生徒の皆さん、新しい出会いを楽しみにしてください。

 2学期、1年生はNAIS(西高アカデミックインターンシップ)から始まります。実際に専門学校、大学に体験入学をして、高校の先の世界を意識してください。2年生は、様々な学校行事、そして部活動の中心になってください。3年生は、自らの進路を切り開いていく時期です。学校あげて支えます。

 「西高、前へ」。皆さん、一緒に前へ進みましょう。

「校長室からの風」 

2学期から赴任の坂口希先生(英語科)とALTのアリ・アルサネア先生

中学生の皆さん、ようこそ西高へ ~ 中学生体験入学(オープンスクール)

    強い日差しと入道雲、蝉時雨。絵に描いたような真夏の一日が始まりました。7月26日(火)、熊本西高校の「中学生体験入学(オープンスクール)」の日です。新型コロナウイルス感染の第7波という困難な環境の中、感染対策を講じ中学生を迎える体制を整え、今日という日を待ちました。

 午前と午後の部に分け、参加者全体を一カ所に集めることはしません。それぞれ1時間の受付時間帯で随時受付を行い、4,5人~7,8人の小グループをつくります。そして、ボランティアで集まった西高生が1人または2人でリーダを務め、模擬授業や理科の物理・化学・生物・地学の実験、そして英会話やeスポーツはじめ様々な文化部活動を体験して回るのです。

 午前9時~午前10時までの午前の受付。自転車で、保護者の送迎で次々と中学生が来校しました。中学生の皆さん、ようこそ西高へ。遠隔地の中学生のためにJR熊本駅と西高を結ぶ臨時貸し切りバス1台を走らせましたが、30人以上の利用がありました。受付の1学年棟の入口では、太鼓部の歓迎演奏が行われました。そして、リーダーの西高生が各グループを引率し、校内を回ります。参加した中学生の好みも聞きながら、各種体験活動の場に案内します。そこでは、係の西高生が中学生を支援して、実験や様々な学習活動を体験します。この体験入学の目的は、西高生と中学生の触れ合いなのです。中学生の皆さんに西高生のことを直接知ってほしいのです。

 午前の部は約200人の参加者がありました。午後の部は午後1時~午後2時が受付。約130人の中学生が来校してくれました。また、中学生の保護者の方達も午前と午後合わせて40人を超えました。昨年よりも中学生、保護者の来校者は増えました。西高生を前面に立て、教職員はそのサポートに徹し、中学生の皆さんに西高の雰囲気を体験してもらうという狙いは当たったと思います。 

 西高に初めて来たという中学生がほとんどだと思います。中学校よりも広大な敷地に戸惑い、正門から入っても迷う中学生もいました。西高育西会の役員有志の方達や、当初の計画にはなかった事務部の職員の方にも手伝ってもらい、おかげで大きなトラブルもなく和やかな中学生体験入学となりました。

 日差しは強い一日でしたが、有明海からの風が吹き抜け、西高特有の爽やかさも覚えました。高校生と比べると明らかに幼い中学生のあどけない表情、好奇心等を様々な場面で感じた一日でした。

 今日の体験入学が「西高を選ぶ」きっかけとなってくれることを期待します。

「校長室からの風」

「未来への可能性」 ~ 大西市長からのメッセージ

 「未来への可能性」というタイトルで、大西一史 熊本市長のご講演を西高の2年生が聴く機会に恵まれました。7月14日(木)、会場は熊本市民会館シアーズホーム夢ホールで、NPO法人熊本教育振興会の主催によるものでした。同会の主要活動である「新しい風を呼ぶ教育講演会」は、今年度は西区の高校生を対象にしていただき、市立千原台高校2年生と県立熊本西高2年生の合同参加の講演会となりました。両校の代表生徒たちが司会進行を務め、謝辞も行いました。

 大西一史熊本市長(2期目)は54歳、政令指定都市熊本のリーダーです。日頃はテレビなどマスメディアを通してしか知らない熊本市長が、直接高校生にメッセージを伝えられる特別な学びの場となりました。

 「やったことに無駄はない」

 プロになるつもりで高校、大学時代に没頭したバンド活動の話から始まり、140社余り受けた就職活動、そして商社でのビジネスマン生活、国会議員秘書時代の体験とダイナミックな経歴を語られます。

 「何歳からでも学び直しができる」

 熊本へ帰ってきて30代で県議会議員に当選し、議員活動を始められます。そして、40歳で九州大学大学院に入り、法政理論を学び、修士号、博士号を取得されます。この大学院での学び直しは大きい意味があったと述べられました。

 「高校生としての目線でよい、自分の頭で考える」

 6年前に18歳選挙権が導入されましたが、相変わらず若い世代の政治への関心が低いことを指摘されます。みんなの声が反映されるのが政治であり、そうして社会は変化していくもの。インターネット上で政治家は自分の考えを表明しており、ネットを通して質疑応答もできる環境となった。若い世代に対して、もっと政治を身近に意識してほしい、関心をもってほしいと呼びかけられました。

 「より良い意思決定には経験が必要」

 不確実性が高く、正解のない問題があふれている現代社会。急速な情報化、グローバル化に対応しながら、正しい意思決定を行い、生きていくことは大変なこと。しかし、何がファクト(動かぬ事実)か見極めて意思決定していかなければならない。それには人生経験が必要だと強調された。市長自身は若い頃から何度も失敗し、修正し、経験を深めてきたことが今の拠り所となっているとのこと。

 約90分間、張りのある力強い声は変わることなく、情熱をもって高校生に「未来への可能性」を語り続けられた大西市長は次の言葉で締めくくられた。

 「青年は決して安全な株を買ってはならない」(ジャン・コクトー)

「校長室からの風」

西高生、全国の舞台へ! ~ ラグビー7人制全国大会、インターハイ、全国高校総合文化祭

 7月16日(土)~18日(月)、ラグビーの聖地、菅平高原(長野県上田市)で第9回全国高等学校7人制ラグビーフットボール大会が開催され、熊本西高ラグビー部は3回目の出場を果たしました。14日(木)夜に熊本を貸し切りバスで出発し約20時間かけ現地に到着。予選リーグで1勝1敗となり決勝リーグに勝ち上がることはできませんでしたが、敗者復活戦リーグで試合を重ね、力を大いに発揮しました。19日(月)のお昼頃、帰校。悪天候の中の長時間のバス移動にもかかわらず、15人の選手達は疲れも見せず、実力を出し切った達成感と冬の花園大会に向けての意欲を示し、頼もしく思いました。

 また、今年の全国高校総体(インターハイ)は四国4県が会場です。「躍動の青い力 四国総体2022」です。全国高校総合文化祭は「とうきょう総文2022」、東京で開催されます。いずれも西高生の出番は8月上旬の予定です。

 総体、総文祭に本校から、柔道部、なぎなた部、陸上競技部、ウェイトリフティング部、書道部、美術部と六つの部活動、合わせて21人の皆さんが出場します。eスポーツ部の1チーム2名も、予選を勝ち抜き、フォーナイト部門のオンライン全国大会(8月)へ出場します。

 伝統を誇る柔道部は団体と個人(4部門)が全国上位を目指します。なぎなた部は6月に行われた全九州総合体育大会で団体3位となり、自信を深めています。陸上競技部の杉山君(走り高跳び)、飯田さん(やり投げ)、水野君(砲丸投げ)の3人は2年次から県のトップ選手で、南九州大会でも上位入賞の実力者ぞろいです。全国大会での躍進が期待されます。ウェイトリフティング部は個人3部門に出場。3人とも西高入学後に競技を始め、伸び盛りの選手たちで、初めてのインターハイを楽しみたいと語っていました。

 この2年半、未曾有のコロナパンデミックによって私たちの生活は大きな影響を受けました。部活動も様々な制約を受け、思うような活動ができなかったと思います。目標を見失いかけたこともあったでしょう。それでも、自己管理に努め、たゆまぬ努力を続けてきたことが全国大会出場につながったと思います。逆境の中でも、生活の軸がぶれず、自らの本分を貫いた姿勢を心から称えたいと思います。

 全国大会に出場する西高生が、全国各地から参加する志ある高校生と競い合い、交流し、ひとまわりもふたまわりも大きく成長し、笑顔で帰ってきてくれることを期待しています。

 西高生、全国の舞台へ進む夏です。

「校長室からの風」

     女子柔道部          なぎなた部           陸上競技部

 ウエィトリフティング部     eスポーツ部

「真心はかはらざりけり」 ~ 160年前の国際交流から学ぶ

 ただいまALTのケリー先生の退任式を行いました。ケリー先生の故郷、カリフォルニア州はアメリカ50州の中で最も人口が多く約4000万人。面積は42万㎢あり、日本列島がすっぽり入る広大さです。サンフランシスコやロサンゼルスといった大都市があり、ヨセミテ国立公園などがあることでも知られています。

 そして、私たち日本人にとって、カリフォルニアはハワイと並んで歴史的に深い関係がある州です。鎖国が続いた江戸時代の末期、アメリカのペリー来航によって日本は開国することとなりました。1860年(万延元年)、アメリカ合衆国と通商条約を結ぶために江戸幕府の使節団が、咸臨丸やアメリカの軍艦に乗船し、太平洋を航海しました。一ヶ月以上かけて西海岸のカリフォルニア州サンフランシスコに到着したのです。幕府使節団はこの後、首都ワシントンやニューヨークなどを訪問し、鉄道や近代的な工場、ビルディングなど進んだ西欧文明に圧倒されます。長い鎖国政策で世界を知らなかった幕府の使節団にとって、言葉も通じず、人種も違い、服装や食事など生活慣習も大きく異なるアメリカの人たちはどう映ったのでしょうか? 自分たちとは全く違う化け物のように感じたのでしょうか?

 使節団の一人の村垣淡路守という人がアメリカで歌を詠んでいます。

 「姿見ればことなる人とおもへども その真心はかはらざりけり 」

 姿は違っても、心は同じだと言っているのです。

 それでは、ちょんまげを結い、刀を差した和服姿の侍たちは、アメリカの人々に野蛮人扱いされたのでしょうか?全く逆でした。東洋のサムライの一行が初めて米国へ来たと大歓迎を受けます。かれらの立ち居振る舞いは礼儀正しく気品があると当時のアメリカの新聞、雑誌が報道しています。

 160年前の私たちのご先祖、サムライたちは、国が異なり、習俗が違っても同じ人と人なのだと本質を見抜きました。開国したばかりのアジアの島国から来た、変な格好をした日本人をアメリカの人々は温かく迎え入れました。

 翻って21世紀前半の今日、分断と対立が世界各地で起こり、ウクライナでの戦火がやみません。人種、宗教、言語、政治などが異なっても、私たち人間同士には本質的に理解し合えるものがあるのだということを、私たちは歴史から学ぶことができると思います。

 明治時代になると日本から多くの移民が船でカリフォルニアへ渡りました。「その日本人移民の子孫の一人が私かもしれません」とヨギ・ケリー・アン先生が笑いながら語ってくれたことがありました。

 ケリー先生と出会えた幸運に感謝し、1学期終業式の話を終わります。

「校長室からの風」

    表彰式、全国大会出場部への同窓会からの激励金交付、1学期終業式のスタジオの様子

ケリー先生有り難う! ~ ALT退任式

 Assistant Language Teacher(ALT)のケリー先生は、コロナパンデミック前の2018年夏に西高へ赴任され、4年の勤務を経て来月、アメリカ合衆国へ帰国されます。ケリー先生はICT(情報通信技術)が得意で、アメリカの友人やご家族とオンラインでつなぎ、本校と交流授業を何度も実現されました。パンデミックの中でも、インターネット環境とタブレット端末があれば国際交流ができることを証明してくれました。また、ケリー先生はいつもポジティブで、フレンドリーでした。ケリー先生の出身はカリフォルニア州。アメリカ西海岸の太陽の明るさや太平洋のビーチの爽やかな風を連想するお人柄でした。

 

 Greeting of thanks  for  Ms Kelly.

Thanks  for all your work at Kumamoto west High School.

You taught students English hard and politely for four years, and you encouraged students. Students loved your English lessons.

 We will miss  you  because  you will leave  Kumamoto soon.

but we will never forget  working  with you .

It is very tough to say good bye.

We hope you will remember  Kumamoto forever.

You are youthful,  and  you have  great potential.

We wish  the best luck on your bright future.

thank you so much.

 有り難う、ケリー先生!

                           2022年7月15日

(校長室からの風)

            ケリー先生によるカリフォルニアとの国際交流授業の様子(4月)

                  ケリー先生退任式の様子(7月15日)

夏が来た ~ 梅雨明け、向日葵、期末考査 

 校庭のひまわり(向日葵)が伸び、勢い盛んです。その眩しいほどの黄色の花が夏の太陽を象徴しているかのようで、見ているだけで元気が湧いてきます。

 6月28日(火)に熊本県が梅雨明けしました。観測史上最も短い梅雨でした。そして梅雨明けと同時に太平洋高気圧の勢力が増し、一気に猛暑の夏が始まりました。連日、35℃に迫る危険な暑さが報道されています。

 熊本西高では6月28日(火)~7月1日(金)まで1学期期末考査が行われています。午前中、エアコンの効いた教室で試験問題に取り組みます。そして、昼には早々に帰宅する生徒が多いのですが、試験期間中、午後も学校に残り試験勉強する生徒の姿が見られます。風が吹き抜ける生徒ホールで机を寄せ合って勉強する生徒たち。また、エアコンが効いた図書室で勉強する生徒たち。気温が上昇するにつれ図書館組が増えてきたようです。

 二人から三、四人で勉強を教え合う姿はほほえましく爽やかです。苦手な科目は学校で、得意な科目は自宅で行うのが試験勉強の鉄則です。また、友達に教えることで自分の知識が整理され、自らの学力定着につながることはよく知られています。先生から教えられたことより、友人同士で教えあった方の定着率が高くなることもよく言われます。勉強は孤独な営みの面もありますが、チームワークの側面もあるのです。そして、様々な学びの場を提供するのが学校の役割です。

 「僕はやっぱり英語は紙の本で勉強した方がやりやすいです」とある生徒が図書館で言いました。タブレット端末を活用してのリスニングやスピーキングの技能向上の一方、リーディングやライティングは紙の本(参考書、問題集)を愛用していると彼は言いました。デジタルとアナログ双方の特色を活かして、自分なりのスタイルで勉強することが大切です。自分に合った勉強方法を見つけてほしいと思います。令和の学校は、ICT(情報通信技術)の普及により、勉強方法も多様に広がりました。しかし、自分の頭で考えるという身体性は変わらないと思います。

 学校に残って試験勉強に悪戦苦闘する生徒達の姿を、ひまわり(向日葵)が見守っています。期末考査も明日まで。明日の午後は部活動が再開されます。2022年は記録的な長く暑い夏になりそうです。皆さん、大いに水を飲み、手を洗い、高校生として夏を満喫しましょう。

「校長室からの風」

バトンは引き継がれました! ~ 6月17日、新生徒会の発足(認証式)

 ここに坂田菜月(なつき)さんを会長に新しい生徒会が発足したことを全校生徒の皆さんと共に喜びたいと思います。会長、副会長はじめ14人の皆さんは、自らの意志で一歩前に出て、西高の生徒会役員という責任を担ってくれることになりました。その進取の精神を頼もしく思います。

 また、この1年間、西高を引っ張ってきてくれた、濱﨑まりのさんを会長とする旧生徒会役員の皆さんに深く感謝します。コロナパンデミックの様々な制約がある中、力を合わせ工夫し、創立記念祭や体育大会などの大きな学校行事を充実したものに創り上げてくれました。キッチンカーを学校に呼ぶなどユニークな企画も印象に残っています。そして、新しい女子の制服として、ポロシャツやスラックスの導入の提案があり、来年度から実現する運びです。常に前向きに取り組む姿勢は、きっと新生徒会にも引き継がれることと思います。

 さて、今年4月から成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。18歳成人の時代到来です。すでに18歳選挙権は6年前に導入されています。高校生の皆さんは、大人の入り口に立っているのです。社会には多くの課題、問題があります。誰かヒーローが現れて解決してくれると思っていても社会は変わりません。皆さん一人ひとりが、積極的に社会に関わっていく姿勢が大切です。学校も同じです。生徒会役員だけでなく、全校生徒一人ひとりが「私たちの学校、西高」という意識を持って欲しいと思います。

 これから、私も、新生徒会役員の皆さんと学校行事や学校のルールなど様々なことについて対話していきたいと思っています。

 新生徒会の皆さん、「for  others, with  others みんなのために みんなとともに」というモットーで活動していってください。そうすればきっとあなた達のもとに皆が集まってくると思います。一緒に、「私たちの学校、西高」を創っていきましょう。

「校長室からの風」

試練を超えて ~ 県高校総体で女子柔道部4連覇!

 「団体優勝が決まりました!」という顧問の大久保教諭からのメールを受け取った時、ちょうど会場の駐車場に到着しました。急いで車を降り、山鹿市総合体育館の柔道場に入ってみると、表彰式が始まるところでした。優勝の瞬間には間に合いませんでしたが、晴れ晴れとした笑顔の選手達の様子を間近に見ることができ、格別な喜びを共有できました。

 令和4年度熊本県高校総体女子柔道団体戦は、6月3日(金)午後に行われました。私は午後1時半から2時半まで県立劇場の県高校総合文化祭開会式に出席し、式が終了次第、山鹿市の柔道会場へ車を走らせたのです。女子柔道部に対しては強い思い入れがありました。今年1月の県選抜大会に新型コロナウイルス感染症の影響で出場できず、悔し涙を流しました。柔道の試合はマスクを着けず、密着した競技となるため、コロナの感染リスクが高く、その後も思うような部活動ができず、部員達は苦しみました。誰も悪くありません。ウイルスという見えない敵に翻弄され、目標を見失いがちな時もあったと思います。しかし、荒木信知教諭の指導を信じ、部員一同が結束して練習に懸命に取り組み、たゆまぬ努力を重ねてきました。自分たちを厳しく追い込む鍛錬の日々を見てきた私は、この度の県高校総体で先ず柔道部の応援に駆けつけたのです。

 西高女子柔道部は、見事復活し、県高校総体4連覇を果たしました。度重なる試練を乗り越えての堂々たる勝利でした。表彰式に臨む団体メンバー(山田さん、平原さん、東さん、藤原さん)、及び全員一丸となって応援した部員(15人)のみんなと共に喜びを分かち合うことができました。

 女子柔道部は神が与えたような試練を乗り越え、凱歌をあげました。しかし、一緒に高校総体総合開会式に出場したラグビー部は決勝進出を逃しました。伝統の強さを誇る女子なぎなた部は、団体戦は制したものの個人戦優勝を他校に奪われるという無念の結果でした。その他、それぞれの競技種目において、目標を達成できず、不本意な結果に甘んじた生徒達がいます。今は失意に沈み、気持ちの整理がつかない状態かもしれません。しかし、柔道部の例でわかるように、勝負の世界は「悲喜交々(こもごも)至る」(悲しみと喜びが代わる代わる起こる)ものなのです。

 負けたことから多くのことを学んだとやがて気づくことでしょう。悔しい体験も豊かな体験なのだと時間が教えてくれると思います。

「校長室からの風」

高校生のエネルギー発信の舞台 ~ 県高校総体・総合文化祭の開幕

   令和4年度第50回熊本県高等学校総合体育大会の総合開会式が6月3日(金)午前、「パークドーム熊本」(県民総合運動公園)が行われました。参加校が一堂に会しての総合開会式の実施は3年ぶりのことです。

 国旗及び高体連旗を持って先頭で行進したのは西高陸上競技部の生徒達です。全77校が総合開会式に参加し、西高は5番目の行進。各学校、生徒・教職員合わせ15人以内と定められ、本校はラグビー部の生徒と顧問教諭、そして団長として校長の私が出場しました。新型コロナウイルスの出現前は、「えがお健康スタジアム」に観客の高校生も含め約1万人の大規模な祭典でした。今回の規模はその10分の1で、屋根付き会場のため熱中症の心配もなく、シンプルではあっても選手のコンディションに配慮されたスマートなものでした。「アマチュアスポーツに引退はありません。生涯にわたってスポーツを続けてください。」との高体連の大嶋会長の挨拶が胸に響きました。オープニングアトラクションとして、熊本工業高校の吹奏楽部による華麗で勇壮なマーチングドリルも行われました。

 コンパクトな総合開会式でしたが、県下の高等学校の一体感があり、ラグビー部の生徒達と共に歩き、参加できたことで熱い思いに包まれました。さあ、アスリートの戦いが繰り広げられます。「みんなは、自分で思っている以上のエネルギーを持っている。この高校総体で存分に爆発させよう!」とラグビー部員を励ましました。

 第34回熊本県高等学校総合文化祭の総合開会式が同日の午後、熊本県立劇場で行われました。こちらも3年ぶりです。オープニングアトラクションで、西高生を含む有志の演劇部員合同パフォーマンスに引きつけられました。それは、コロナパンデミックによって声を発することが制約された苦しみの表現から始まり、表現の手段は言葉だけではないことに気づき、身体全体を使って表現するパフォーマンスでした。そして、最後に「きざめみんなの青春ONEカット!」と大会テーマを声高らかに発信したのです。

 2年を超えるコロナ禍という逆境の中にあっても、熊本の高校生は自らが選んだ部活動(体育・文化)にひたむきに取り組んできました。そのエネルギーを発信できる最高の舞台を設けることができました。このことが望外の喜びです。

 「校長室からの風」

 県高校総合文化祭開会式のオープニングアトラクション(演劇部合同パフォーマンス)

先輩が支える西高の強さ ~ 高校総体目前

 体育部活動の集大成の場となる県高等学校総合体育大会(高校総体)の先行競技が始まりました。5月28日(土)、サッカーの1回戦を応援しました。水前寺競技場において午前10時キックオフ。対戦相手の有明高校に押されながら、西高も時に反撃に出る好試合となりました。惜しくも2点を奪われ、0-2で敗れました。プロサッカーの試合も行われる水前寺競技場という最高の環境で、最後まで戦い抜いた西高サッカー部の健闘を心から称えたいと思います。試合後、うつむいて悔し涙を流している生徒達の様子を見ると、勝負の厳しさを思い知らされます。励ます言葉も容易には出てきません。けれども、全力を尽くした結果について時間をかけて受け入れていくことで、高校生は大人へと成長していくものだと思います。

 28日(土)~29日(日)、サッカー以外にバドミントンやソフトテニスなどの競技が先行実施されました。そして、6月3日(金)から本番を迎えます。各部活動において、かけがえのない仲間と共に残された時間、完全燃焼の日々です。放課後、部活動の様子を見て回ると、高校総体に向けて気迫と緊張感が高まっていることが感じられます。

 そのような中、独自の存在感を示しているのが教育実習生の支援です。今年も体育コースの卒業生4人の大学生がこの時期に教育実習に来ています。それぞれラグビー、陸上、水泳、なぎなたが専攻で、現役の大学生選手として活躍しています。この先輩達が、高校総体直前の各部活動の練習に参加し、後輩を励まし、支えてくれているのです。27日(金)の放課後、なぎなた道場で教育実習生の坂本さん(福岡大学)が部員に指導する光景を見て、これが西高体育コースの伝統の力と感じました。なぎなた部では、高校時代に日本一に輝いた先輩(春山さん)が昨年もこの時期に教育実習に来ており、部員達を奮い立たせました。練習が終わった後、なぎなた部員に私は言いました。「君たちの中からも数年後に教育実習に来て、こうして後輩を指導する人が出てほしい、このつながりが西高なぎなた部の伝統です」と。

 西高生の皆さん、新型コロナウイルス感染予防をはじめ健康管理に努め、良いコンディションで高校総体に臨み、ベストを尽くしてほしいと念じています。

 「校長室からの風」

体育大会での高校総体・総合文化祭選手推戴式

「先生」と呼ばれる喜びと責任の重さ ~ 教育実習始まる

 西高では、5月23日(月)から教育実習が始まりました。教員免許状を取得するためには必須の実習であり、今年度は9人の大学生の皆さんが実習に臨みます。期間は2週間、3週間、4週間と異なりますが、かけがえのない体験になると思います。高校生から「先生」と呼ばれます。最初は戸惑いや気恥ずかしさがあるでしょうが、「先生」と呼ばれる喜びと、その責任の重さをかみしめる日々になることでしょう。

 9人の教育実習生の内8人が平成30年度の西高卒業生です。それぞれ大学に進学し、専門の課程に加え教職課程も履修し、母校での実習の日を迎えたことになります。当時の担任や教科担当、部活動の顧問にとっても感慨深いものがあります。かつての生徒がスーツに身を包み職員室で挨拶する様子を、多くの職員が笑顔で見つめていました。私たち教員の使命は人材育成です。私たちの後を継ぐため、未来の教員への道を歩んでいる姿を見ることは喜びです。私たちも通った道です。学校として教育実習生を心から歓迎し、充実した実習になるよう支援していきたいと思います。

 また、教育実習は在校生にとっても大きな出来事です。数年前に卒業した先輩達が、「先生」として指導に当たります。年齢的に近く、その若さは魅力であり、大学生活をはじめ様々な情報に接することができ、自らの進路への意欲がかき立てられる貴重な機会となります。

 今日の1限目、校長室で実習生の皆さんに研修講話を30分ほど行いました。「最も力を入れてほしいことはやはり授業です」と強調しました。教えることは自ら学ぶこととは全く異なり、とても難しいものです。実習生の皆さんにとってはそれぞれ得意の教科・科目ですが、その教科・科目が苦手な生徒達の興味・関心をどう引き出すかが課題です。「教えよう」という教員の視点ではなく、「できるようになる」という生徒主体の視点で考え、創意、工夫を重ねてください。若い現役の大学生である実習生の皆さんは、その存在自体が高校生を引きつけます。

 まさに5月の風と等しい、清新な風が西高に吹き込んできました。教育実習期間の西高は、いつも以上に活気あふれる学校となるでしょう。 

「校長室からの風」

誰も見ていなくても ~ 「善行」の報せ

 体育大会を5月8日(日)に実施し、いまだその余韻のようなものが校内にはあります。西高生の連帯感がより強まったと感じます。そして、「新入生」(1年生)が「西高生」に変身したという気がします。五月は、緑や花が瑞々しく生命感がみなぎり、県高校総体及び総合文化祭の開催を控え、学校が最も活気付く季節です。この時期にふさわしい爽やかな「善行」の報せに今週は二件接しました。

 一件は、大型連休中、西区の県道で道路脇の溝に足を滑らせ転倒された高齢の女性を、通りかかった男子高校生3人が協力し助けたという事案です。「有り難う。どこの高校ね?」と尋ねられると、「西高です」とだけ言い、3人は立ち去ったそうです。お礼の電話が学校にかかってきて、生徒達に照会したところ、1年生の野球部員3人が名乗り出てきました。

 もう一件は、西高からJR熊本駅行きの路線バスの車中の出来事です。雨天の夕方で、車内は西高生はじめ帰宅途中の乗客で混み合い、立っている人がいる状態でした。田崎付近で高齢の女性がバスに乗って来られたところ、座っていた女子生徒が即座に席を立ち、女性に譲ったそうです。その自然な振る舞いを見て、乗り合わせていた乗客の方から「気持ちがほっこりする、温かいものを感じました。制服が西高だったのでお知らせします」とご連絡がありました。

 まだまだ成長途上の高校生です。自転車の並進はじめ交通マナーに関して、地域社会からお叱りを受けることもあります。公衆道徳に関しても十分ではなく、ご批判を受けることもあります。しかし、私たち教職員は、生徒の可能性を信じ、時に厳しく指導する一方、生徒達を認め、ほめ、励まして伸ばしていかなければなりません。

 生徒の皆さん、私たち教職員がいなくても、保護者がいなくても、仮に誰も見ていなくても、あなたの行動はあなた自身が見ています。昔の人は、「お天道(てんと)様に顔向けができない」という表現をしました。誰も見ていなくても、太陽は見ているのだから、道を外れたことはしてはいけないという戒めです。他者の評価ではなく、自らの内なる規範に従い、より善く生きようという気持ちを大切にしてほしいと心から願います。

「校長室からの風」

              5月8日の体育大会の様子

 

一体感、そして達成感に包まれて ~ 第45回体育大会開催

 5月8日(日)、秋晴れのもと、生徒と職員の力を結集し、令和4年度第45回西高体育大会を創り上げることができました。今、学校全体の一体感そして達成感に包まれています。

 それぞれのプログラムはどれも見応えがあり、生徒の皆さんの一生懸命さが伝わってきました。ゴール目指し疾走する姿は躍動感あふれ爽やかでした。結果は1位2位…と表れますが、自分の走りができたかどうか、自己評価が一番です。

 リレーはやはり体育大会の華です。抜きつ抜かれつ、声援、歓声も一段と高まり、会場が大いに沸きました。そして、綱引きや台風の目、棒集めなどの技巧種目は、チームワークの面白さと難しさを実感したのではないでしょうか。

 また、体育コース2、3年生による演技、演舞は、さすがアスリートたちです。きびきびとした、かつ流れるようなパフォーマンスに魅了されました。見事でした。そして全校生徒の西高体操は、生徒の皆さんの気持ちが一つとなり、力強く、凜々しいものでした。「西高体育スピリット」の伝統が引き継がれたと思います。

 フィナーレの全校応援は圧巻で、胸に迫るものがありました。マスクをしていても皆さんの声は響きわたり、計り知れない若いエネルギーが渦巻き、空に舞い上がったように感じました。

 2年以上、コロナパンデミックに世界は覆われ、依然出口は見えません。また、残虐非道な戦争が行われている国もあります。世界は不安定で、平穏な日常生活を守ることが難しい時代です。この広い世界の片隅でかもしれませんが、ここ熊本西高において、体育大会に象徴される、健やかで明るい学校文化がこれからも永く続いていくことを念じます。

 最後になりますが、ご観覧いただいた保護者の皆様にお礼申し上げます。

「校長室からの風」

体育大会の風景

 

さあ、体育大会! ~ 5月8日(日)第45回体育大会開催

 西高は今年、創立48年を迎えます。現在の1年生が3年生に進級した時、50周年となります。今から40年ほど前の西高草創期に勤務された先輩職員の方から伺った話に「西高体育スピリット」への思いがあります。「爽やかな挨拶、明るい返事、機敏な動作」の三つを高校生として養うことは、社会に出てもきっと身を助けることになると考え、体育の授業だけでなく、学校行事や特別活動等の場で生徒たちに熱い気持ちで伝えたと回想されていました。今も、西門から入ったところに、「西高体育スピリット」と青地に白抜きで鮮やかに記された看板が立っています。新入生がこの「西高体育スピリット」を体得する最初の大きな機会が体育大会と言えます。

 令和4年度第45回体育大会を5月8日(日)に開催します。3年ぶりに保護者の方々にご観覧いただきます。但し、まだコロナ感染状況が不安定であり、3年生の保護者の方に限ります。1、2年生の保護者の皆様にはご理解いただきたいと思います。

 4月中旬から体育の授業で練習が始まり、生徒会中心に運営や装飾の準備が進められてきました。体育大会は、学科・コース、学年、クラスなどを超え、チーム西高として全校生徒が一つになる場です。黄・赤・青の3団に分かれ、団ごとに横断幕の作成や応援の練習に取り組んでいます。書道部の協力を得て美術部は入・退場門を飾る絵看板の制作、吹奏楽部は演奏の練習と文化部の動きも活発化しました。放課後や休日も、目標に向かってみんなで楽しみながら協力する雰囲気が校内に満ちていて、体育大会が近づいていることを実感しました。これこそ、健やかで明るい学校文化だと思います。

 体育大会の全体練習が終わった後、体育コースの2、3年生はさらに練習が続きます。日頃から鍛錬している体力、運動能力、団結力を発揮し、女子は「天の舞」(リズムなぎなた)、男子は「飛翔」(集団行動)を披露するためです。アスリートのプライドで挑む、このプログラムは西高体育大会の呼び物であり、保護者の方々はもちろん全校生徒を魅了することでしょう。

 今年の大会テーマは「氷炭相愛」。冷たい氷と熱い炭のように、全く性質が相反するものが互いの特性を活かし助け合うという意味が込められています。西高生一人ひとりが、それぞれの個性を発揮し、笑顔あふれる体育大会になることを願っています。明後日の体育大会が待ち遠しく感じられます。

「校長室からの風」

                体育大会の練習風景

 

保護者の皆様と共に ~ 育西会総会

 4月22日(金)午後、育西会総会を開催しました。西高の保護者会(PTA組織)は育西会と称します。西高生を保護者と学校とが協力し育てていく思いが込められた名称です。

 育西会役員が会議室で議事を行い、その様子を各教室に配信し、それぞれの教室から保護者の皆さんの質問も受けられる双方向の形式をとりました。昨年度、西高は熊本県のICT特定推進校に選ばれ、授業の改善、学校行事の効率化など率先してICT(情報通信技術)を活用してきました。今回の総会の方式もその取り組みの一つです。

 総会で、令和4年度の役員案が了承され新体制でのスタートとなりました。池田旧会長はじめ旧役員の皆様には、これまで1年間、様々な学校行事にご支援、ご協力いただいたことに深く感謝いたします。特に、生徒会役員の生徒たちとの対話の場(ミーティング)を2回設けられたことは画期的な取り組みだったと思います。制服のあり方や校則等について、保護者と生徒の立場から率直な意見交換が行われ、その中から建設的な提言が学校に対してなされました。この対話の場は今年度も継続される見通しです。18歳選挙権に続き、今月から18歳成人制度がスタートしました。生徒たちは、高校での学びを基に、主体的に社会に参画する態度を養うことが求められています。大人の先輩である保護者の皆様と、生徒会の生徒が、より良い西高を創っていくために対話を重ねることは教育的にも大きな意義があると思います。

 また、総会において、教室等の生徒用エアコン(空調機器)に係る経費の公費負担(県費)に伴う、空調機器及び更新積立金の県への寄付についても了承されました。これまで保護者が負担されてきた生徒の空調電気代や維持管理費等の全てについて、県立高校では令和5年度から公費化されることになります。

 来る5月8日(日)に体育大会を予定しています。生徒会を中心に生徒たちが主体的に準備に取り組んでおり、学年練習も本格的に始まりました。コロナ感染対策のため一般公開はできず、3年生の保護者の方のみ御案内申し上げます。1,2年の保護者の皆様には誠に申し訳ありませんが、ご理解のほどをお願いいたします。

 保護者の皆様の願いと学校が目指すものは同じだと思っております。育西会の皆様と共に西高は今年度も進んでいきます。

「校長室から風」

 

希望をつないで ~ 西高吹奏楽部第33回定期演奏会

 4月9日(土)午後、熊本市天明ホール(南区奥古閑町)において、第33回熊本西高等学校吹奏楽部定期演奏会が開催されました。本来、3月中旬に予定されていましたが、新型コロナウイルスの影響で実施できませんでした。しかし、生徒たちはあきらめることなく、実施時期と場所を変更し、練習を重ね、先輩から受け継いだバトンをつなぎ33回目の定期演奏会を実現したのです。テーマは「 ~ HOPE ~ 」(希望)です。

 新2,3年生の吹奏楽部員は現在、12人。ステージ上での進行、演奏で精一杯です。従って、受付や会場案内などは美術部員が協力し担っていました。ホワイエには美術部の作品も展示されていました。そもそもパンフレットが書道部、美術部の協働による手作りです。文化部の力を結集した演奏会と言えます。

 午後2時にオープニング。第1部では、吹奏楽部による4曲の演奏が行われ、そのうちの一曲「ROMANESQUE」は3月1日の卒業式で披露する予定でしたが、コロナ感染対策の式典簡素化のため演奏できなかった幻の曲です。部員の思いがこもった演奏となりました。第1部では、寺本教諭がタクト(指揮棒)を振りました。寺本教諭はこの度の人事異動で八代高校へ転出されましたが、最後の定期演奏会に駆けつけられました。

 第2部は、西高太鼓部のステージとなりました。同部の卒業生の先輩たち10人が登場し、横笛、鐘も交えた賑やかな演奏となり、変化をつけた切れ目ないリズムで会場を盛り上げました。最後は現役部員2人による、小・中・大の3種の太鼓を打ち分ける演奏で締めくくりました。

 第3部では再び吹奏楽部のステージで、荒木明子教諭の指揮による、吹奏楽曲の定番オンパレードとなり、観客の手拍子も加わりました。来場していた野球部員から「アンコール!」の大きな声がかかり、「ヤングマン(Y.M.C.A)」の演奏で会場が一体感に包まれました。

 コロナ感染症対策のため、吹奏楽部員は思うような練習や準備はできなかったことと思います。けれども、彼らは今のベストを尽くしました。それは私たちに十分に伝わってきました。

 世界は2年以上もパンデミックに覆われています。残虐非道な戦争が行われている国もあります。この不安定でリスクに囲まれた世界の片隅で、西高吹奏楽部の演奏をライブで楽しむことができたことに感謝せずにいられません。

「校長室からの風」

 

4月8日、新しい風 ~ 新任式、始業式、入学式

 4月8日(金)は私たちにとって特別な一日です。午前に新任式、続けて令和4年度1学期始業式を実施します。そして、午後は入学式を挙行します。

 この度の人事異動に伴い、13人の職員の方が西高へ赴任されました。西高スタジオでそれぞれお一人ずつカメラに向かい(マスクを外し)挨拶してもらいました。私たちにとっては新しい同僚として、生徒の皆さんにとっては新しい先生との出会いです。この出会いを大切にしていきたいと思います。

 始業式の校長講話で、「18歳成人制度」をテーマに取り上げました。民法の改正によって成人年齢が20歳から18歳に今月から引き下げられました。成人とは「一人で契約できる」ことになります。携帯電話を契約する、部屋を借りる、クレジットカードをつくるなど、親の同意なく契約を一人でできることになります。このことから、知識や経験に乏しい18歳や19歳の新成人がトラブルに巻き込まれないか懸念されています。各自治体の成人式がいつ実施されるかも気になるところです。しかし、これらのことは本質の問題ではないように思います。すでに選挙権も18歳に引き下げられ、若い世代が社会に積極的に参画することが求められています。私たちは社会的存在です。18歳を迎え、大人になる覚悟を決め、社会に関わっていこう、自分たちが社会を良くしていこうという心構えを持てるかどうかが大切だと思います。

 18歳選挙権、18歳成人など新しい制度に変わっても、制度自体が良い社会を約束するものではありません。幼心や甘えた気持ちと決別し、覚悟を決める、そういう各人の心の持ちようにかかっているのです。

 午後2時から、「令和4年度第48回入学式」を挙行しました。春爛漫、入学を祝福するかのような青空が広がりました。普通科248人、うち体育コース36人、サイエンス情報科31人、合わせて279人の新入生を迎えました。この3年間で最も多い入学生であり、学校に活気が満ちあふれました。式後、玄関の「熊本県立熊本西高等学校」と墨書された木製看板の前で記念撮影する新入生と保護者の姿が目立ちました。緊張感の中にも笑顔が見られます。

 大きな希望を胸に入学してきた新入生のみなさんが「西高に入学して良かった」と思い、我が子を本校に託された保護者の方々が「西高に入学させて良かった」と思ってくださるよう、私たち教職員は使命感をもって教育に当たります。

「生徒を大きく伸ばす西高」に期待してください。

「校長室からの風」

            令和4年度 第48回入学式の風景

 

一期一会をかみしめて ~ 転・退任式

 西高の校庭の桜も満開となりました。ソメイヨシノの花は遠目にはほとんど白で、近づくと淡い桜色が浮かびます。華やいだ桜の花と青空のコントラストが鮮やかで、風景が一変し明るくなります。冬の寒さが厳しくても3月末になると桜が咲きます。長引くコロナ禍の中でも、自然のサイクルは乱れず、春が訪れます。変わらぬ自然界の循環に私たちは永遠の時間を感じるのかもしれません。

 「さまざまの事 おもひだす 桜かな」(芭蕉)

 春は別れの季節です。3月1日の卒業式で、324人の3年生が西高を旅立っていきました。そして、この度の人事異動に伴い、西高から18人の職員の方が転・退任されることとなりました。最も長い方で13年、短い方で1年と勤務期間の長短はありますが、皆さんそれぞれの職責を果たされ、西高を支えてこられました。このことに深く感謝を申し上げます。

 人事異動は、私たち県立学校に勤める職員にとっては定めです。惜別の思いをもって、お送りしたいと思います。

 3月29日(火)午前10時から、転・退任の18人の皆さんが西高スタジオ(視聴覚室)で、一人ずつカメラに向かって挨拶され、その様子が各教室、及び卒業生が集う体育館へ配信されました。最後の英語の授業をされる方。西高での思い出を語られながら感極まって涙声となる方。西高生に対し、最後まで力強く励ましの言葉を贈られる方。山と田園に囲まれ、夕日が美しい西高の環境を称える方。清掃や奉仕活動に取り組む西高生の美点を褒める方など、それぞれのお人柄に応じたラストメッセージは生徒達の胸を揺さぶったことでしょう。改めて個性豊かな同僚の皆さんと一年間ご一緒したことを有難く思いました。

 生徒会長の濱﨑さんの御礼の言葉、そして校歌演奏を全員で聴き、式は終了。その後、18人の転・退任者はスタジオを出て、卒業生が待つ体育館、1,2年生がいる教室棟を歩いて回られ、生徒の皆さんとの交流が行われたのです。

 春は出会いの季節でもあります。転・退任される方々には、この先新たなたくさんの出会いが待っていることと思います。そして、留任の私たち職員、進級する1,2年生の皆さんには、新・転入の新しい先生、新入生との出会いがあります。お互い、一期一会をかみしめ、未来へ進んで行きましょう。

                                     「校長室からの風」

 

「西高 de キッチンカー」

 「楽しいです!毎月、いや毎週一回、来て欲しい」、「こんな催し物をもっとやってほしい」と生徒達の明るい声が飛び交いました。

 西高にキッチンカー4台が来校しました。3月23日(水)、昼休みを平常より20分拡大し、生徒会行事「西高de キッチンカー」を実施しました。4台のキッチンカーは、タピオカドリンク、クレープ、たこ焼き、唐揚げ、あげパンアイスなど高校生が好む各種のスイーツ系軽食がとりそろえてあり、予約販売が原則でしたが、長蛇の列ができました。

 この企画は、生徒会役員が考え、自分たちで動き、キッチンカーの手配まで行いました。西高周辺には若い世代向けの飲食店が少ないこと、コロナ禍で友人と一緒に食事する機会が減ったこと、一方パンデミックの中でキッチンカーの機動性が注目されていること等の理由から、生徒会行事「西高de キッチンカー」が実現しました。大人にはない発想と行動力です。

 また、キッチンカーによる販売と併せて、2年生の総合的な探究の時間の活動成果である「SDGsオープンおにぎり弁当」の販売も行われました。探究のテーマに「食」を選んだチームがSDGs(Sustainable Development Goals)の理念に基づき弁当づくりを企画し、「KKRホテル熊本」が商品化してくださったものです。高校生が考えたアイデアが「商品」として形になったことは画期的と思います。包み紙に、このお弁当がなぜSDGsなのか、イラスト付きで説明してありました。弁当箱や仕切りバランは紙製でプラスチックごみはゼロにしてあります。食材は熊本市西区及び南区の地元産を極力使ってあります。SDGsの17の目標(ゴール)の一つ「12 つくる責任 つかう責任」を強く意識しています。

 持続可能な社会作りは私たち人類が直面している重要な課題です。しかし、「Think  big  Start small!」(大きく考え、小さな事から始めよう)の精神が大切です。お弁当作りから始めたことに意義があると思います。

 学校生活を自分たちでより活発に、魅力あるものにしていこうという生徒会活動。社会と積極的に関わっていく2年生の総合的な探究活動。まん延防止重点措置期間が解除され、西高は再び動き出しています。

 「校長室からの風」

 

 

「日常に変化を」 ~ NAP(西高アートプロジェクト)

 「生徒ホールがすごいことになっていますよ!」と事務室の職員の方から話を聞き、行ってみると空間アートの世界に一変していました。1年生の美術選択者の皆さんがそれぞれ各チームに分かれ、作品を仕上げている途中でした。また、書道選択者による切り取られた紙文字の飾りもあり、目を引きました。これらが「インスタレーション」というものかと感嘆しました。

 インスタレーション(Installation)は空間全体を対象とした表現作品で、現代アートとして近年注目されています。彫刻や絵画を点として置くのではなく、大きなコンセプトのもと、広い空間全体をアートとして変化させていく創作活動です。美術科の黒田教諭の指導のもと、1年生の美術選択者91人が「日常に変化を ~ 明るい学校生活へ」のコンセプトのもとグループごとに小テーマを設けて作品を制作しました。そして、今週、生徒ホール、廊下、芸術棟周辺への展示を始めたのです。これに、書道選択者の協力も加わりました。

 生徒ホールのフロアには色紙で幾つもの足跡が表現されています。このグループのテーマは「人生」。人の生涯を足型で表現し、様々な足跡が交差しているのは人と人とが関わり合いながら生きていくことを表しているとのことです。また、大きなガラス窓にカラフルな翼が色紙で象(かたど)られています。その翼の前に立つことで、翼を持ったような気持ちに成って欲しいという仕掛けです。このグループのテーマは「自由」。廊下の天井からたくさんの紙飛行機が吊り下げられていたり、廊下の曲がり角に手をとりあって飛び跳ねている人物像が紙で貼り付けてあったりと愉快な出会いの連続です。

 コロナパンデミックが長期化し、今年度も分散授業の実施、学校行事の中止または縮小、部活動の制約と学校生活は大きな影響を受けました。生徒の皆さんは自由を制限され、閉塞感を覚える日々だったと思います。このような長いトンネルの中にいるような重苦しい日常を変える力がアートにはあるのです。「日常に変化を」という全体コンセプトは十分に伝わってきます。

 NAP(西高アートプロジェクト)は学校空間を明るく、文化の香りあるものに変えることに成功しました。生徒達が創り上げたこの空間を早く新入生に見せてあげたいと思います。

「校長室からの風」

 

剣道部、なぎなた部の全国選抜大会出場激励会

 剣道部となぎなた部が全国選抜大会に出場することは学校にとって大きな喜びです。3月9日の午後、大会に出場する剣道部員となぎなた部員が学校スタジオ(視聴覚教室)に集まり、激励会を開催し、その様子をオンラインで全教室に配信しました。

 先ず、同窓会の藤井会長(第11期生)が、剣道部となぎなた部に対して支援金を贈られ、励ましの言葉を述べられました。藤井会長は、剣道部監督の高田先生と同級生です。高校時代、剣道部で活躍する高田先生のことを鮮明に覚えておられ、今回の快挙は同級生としてとてもうれしいと語られました。

 第31回全国選抜剣道大会は3月26~27日、愛知県春日井市で開かれます。西高剣道部にとって念願の初出場です。強豪ひしめく剣道王国熊本で勝ち抜くことは至難の業だったと思います。しかし、高田先生の熱心な指導のもと、部員一丸となって精進を重ね、高い壁を乗り越えたのです。主将の植田君(2年)は生徒会のインタビューに対して、「剣道に一番必要なものは、気持ち」、「一戦一戦、勝ち抜き、優勝を目指す」と強い意気込みを表しました。激戦の県大会を経験した自信が感じられます。植田主将はじめ7人の剣士は、団体戦初出場ながら高い志をもって全国の舞台に臨みます。

 第17回全国選抜なぎなた大会は3月20日~21日、兵庫県伊丹市で開かれます。西高なぎなた部は第1回大会から17回連続出場を続けており、熊本西高の名は高校なぎなた競技では広く知られています。主将の大森さん(2年)は、生徒会のインタビューに対して、「先輩達の偉大さ、伝統を感じます。日本一を目指します」ときっぱりと決意を述べました。大森主将はじめ3人が個人戦及び団体戦に出場します。大舞台の経験豊富な齊木先生の采配によって、生徒達が存分に力を発揮することでしょう。

 激励会の最後に、西高応援歌(青春の血潮)の歌を流しました。長引くコロナ禍のため、この応援歌を全校生徒で唱和する機会が今年度はありませんでした。しかし、若人を鼓舞する応援歌を聴いているだけで、体内を流れる血潮がたぎるような思いに包まれました。まん延防止重点措置期間が延長され、学校生活も制約を受けています。また、ロシアによるウクライナ侵攻はじめ暗いニュースが目立ちます。このような閉塞感の中、西高生の皆さんは、生活の軸がぶれることなく、それぞれの目標に挑戦を続けて欲しいと期待します。

「校長室からの風」

     なぎなた部員           剣道部員      全国選抜大会を祝福する横看板

卒業式に立ち会える喜び ~ 第45回卒業式

 3月1日(火)、熊本西高校第45回卒業式を挙行しました。理数科34人、普通科290人(体育コース39人含む)が卒業していきます。理数科としては最後の学年(34期生)となり、その精神は現2年生のサイエンス情報科の1期生に継承されるでしょう。

 前日の式予行の場で、学年主任の錦戸教諭が「これまでやかましいことを言ってきたが、もうやかましいことを言えなくなる」と淋しい心境を伝え、「どこに行くかよりも、行った先でどれだけ頑張れるかの方が遙かに大切だ」と、それぞれの進路へ向かう生徒達を励まされました。

 感染症予防の観点から、来賓は招かず、在校生は送辞を読む生徒会長とピアノ演奏の生徒の二人だけ、保護者の出席も各家族から原則1人にお願いし、体育館の座席間隔を広く保ちました。国歌、式歌、校歌を唱和することもなく、演奏を聴くにとどめましたが、校歌さえ声を出して斉唱できないことに改めてパンデミックの重苦しさを感じました。しかし、簡素ではあっても、卒業式の基本を守り、厳粛さの中に若人の旅立ちにふさわしい清新さが感じられる式典になったと思います。

 私語一つなく背筋を伸ばして座る姿、呼吸を合わせ起立し、礼をする動作、落ち着いて歩く入退場の様子と、その一挙一動が卒業生のこの3年間の成長を示していました。卒業生総代の児塔さんは、答辞の中で後輩に対してメッセージを残しました。「逆境を成長の糧にして、西高生が一丸となり、過去の伝統を超える、皆さんらしい西高を創り上げていってください。」と。

 パンデミックはいまだ終息していません。ウイルスと共存しながら、私たちは新しい社会を創っていかなければならないのです。このような変革期においては、従来の常識にとらわれない、柔軟な発想と行動力が求められます。若い世代への期待が大きくなります。急速に進化するICT(情報通信技術)を皆さんなら使いこなし、より良い社会づくりに活かしていくでしょう。

 皆さんの行く道のりは決して平坦ではありません。この先も自然災害や新たな感染症などが待ち構えているかもしれません。けれども、どんな不条理な出来事に遭遇しても、必ず道は開けると自分を励まし、歩み続けてください。

 新たな世界へ若者が旅立つ時に立ち会えることはなんと幸せなことでしょう。卒業式に臨む度に、高校の教職員としての喜びをかみしめます。

「校長室からの風」