校長室からの風

卒業生の皆さんへ

 皆さんが高校一年の三学期に未曾有の新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的流行)が発生しました。肉眼では見えないウイルスで私たちの生活は一変し、学校生活も大きな影響を受けることになりました。

 臨時休校、学校行事の中止及び縮小、部活動の制限等、思うような高校生活を送れないことで失望感や閉塞感に包まれたと思います。誰も予測できない、先が見えない長いトンネルのような生活を余儀なくされました。

 しかし、このような逆境の中、皆さんは学ぶことをとめず、それぞれの進路を切り拓き、卒業の日を迎えたのです。このことを私は誇りに思います。困難な社会環境にあっても、自己管理に努めてリスクから身を守り、高校生としての本分を全うした体験は、これからの皆さんの生きる力になると思います。

 いつの時代も未来は不確実で、見通しは立ちません。しかもコロナパンデミックが歴史の歯車を早回しにしました。社会の急速なICT(情報通信技術)化が進むでしょう。皆さんの前途には、大きな変革の波が立っています。

 今回のパンデミックで現代社会が抱える様々なひずみ、弱点が浮き彫りになったと思います。誰かヒーローが出てきて問題を解決してくれることはありません。皆さん一人ひとりが考え、行動して欲しいのです。コロナパンデミックが終熄しても元に戻してはいけないことは何だと思いますか?目指したい未来はどんな社会ですか?

 皆さんの人生はこれからです。未来が皆さんを待っています。

「校長室からの風」

 2月28日午後 同窓会(西峰会)への入会式

 

梅真白(うめましろ) ~ 高校入試(後期選抜)

 2月24日(木)、25日(金)の両日、令和4年度(2022年度)熊本県立高等学校の後期選抜入試が県内で一斉に実施されました。朝、氷点下の厳しい寒さの中、保護者の車で、または自転車で、緊張した面持ちの受検生たちが西高に集まってきました。体育館での集合点呼は午前9時20分ですが、早い生徒は7時半前には来校しています。中学校ごとの点呼があるのでしょう、校庭のあちらこちらで立って待っています。「おはよう」と声を掛けると、はっきりしたよく通る声で返事をしてくれ、初々しさ、清新さを感じます。

 新型コロナウイルス感染症の第6波に1月から県内も覆われ、受検生たちは感染への不安に包まれ、この日まで過ごしてきました。15歳の少年少女にはあまりにも理不尽な環境と言えます。受け入れる私たち高校側は、受検生が存分に力を発揮してもらえるよう、感染防止を徹底した安全、安心な態勢を整えました。1日目(24日)が国語、理科、英語の3教科実施で午後2時10分に終了。2日目(25日)は社会、数学の2教科を実施し午前中で終了ですが、本校の体育コースを志望している受検生は午後も引き続き体育実技検査が行われました。運動能力や体力を測定する実技検査がすべて終わったのは午後3時でした。

 受検生の皆さんにとっては長い二日間だったと思います。心身の疲労があるでしょう。しかし、受検を終え帰って行く皆さんの表情は一様に晴れ晴れとして、やりきったという充足感さえ伝わってきました。車で迎えに来られた保護者と談笑する光景も見られました。

 入学試験とは確かに厳しいものです。しかし、このような関門があるからこそ、学力及び精神力を鍛えることとなり、大人への階段を上がっていくのです。高校入試を受け終えた皆さんは、自分では気付かないかも知れませんが、もう昨日までの中学生ではありません。まだ見ぬ友が、知らない物語が高等学校でたくさん待っています。皆さんの青春はこれからです。

 24~25日の二日間、冬らしい透明感のある青空が広がりました。西高の前庭に立つ梅の老樹も7~8分咲きです。冬の寒さにじっと耐え、他の花よりも早く春の訪れを知らせる、白梅の花の凜とした姿に、受検生を重ねたくなります。

 「勇気こそ 地の塩なれや 梅真白(ましろ)」(中村草田男)

 かつて高校の国語の教科書で知った句です。この時期になると思い出します。

 3月7日(月)が合格発表です。今年も各学校での掲示発表は行わず、県教育委員会での特設Webページでの発表となります。3月24日(木)、合格者説明会で会いましょう。皆さんの入学を心から待っています。

「校長室からの風」

 

西高生が考えた「SDGsオープン弁当」

 「SDGsオープン弁当」なる素敵なお弁当の試食をしました。2学年の「総合的な探究の時間」で、「食」を探究テーマに選んだグループがSDGsの理念を意識した弁当づくりを企画し、それをKKRホテル熊本において商品化に踏み切って頂いたのです。まさに、自分たちが考えたアイデアが「商品」として形になったもので、お弁当を持参してくれた生徒達は得意満面の様子でした。

 SDGs(Sustainable Development Goals)は、持続可能な開発でより良い世界を目指す国際目標で、2015年の国連サミットで採択されたものです。17のゴール(目標)から構成され、この地球上の「誰一人取り残さない」ことを誓い、先進国、発展途上国を問わず、すべての国・地域で取り組むことを呼びかけられています。わが国においても近年、学校はじめ企業、NPO等で様々な取り組みが始まっています。新型コロナウイルスのパンデミックが示すように、世界の結びつきは益々緊密となり、地理的に遠く離れた出来事であっても無関係ではいられない運命共同体となっています。特定の国のみが平和で安全ということはあり得ず、世界のすべての国・地域が普遍的につながっているのです。急速なグローバル化の流れの中、未来の担い手となる高校生がSDGsをより強く意識するのは自然なことで、SDGsの言葉を弁当に付けることに違和感はありません。

 お弁当の包み紙には、このお弁当がなぜSDGsなのか、イラスト付きでわかりやすく説明してありました。ゴール12「つくる責任つかう責任」、ゴール14「海の豊かさを守ろう」の視点で、弁当箱や仕切り(バラン)は紙製にしてプラスチックごみはゼロにしてあります。食材は熊本市西区(れんこん、あさり、のり、みかん)及び南区(なす、たまねぎ、トマト)の地元産を使用し、ゴール11「住み続けられるまちづくり」との関連を示しています。そして、このようなリーズナブルなお弁当を商品化することで、先進国の若者がゴール2「飢餓をゼロに」の意識を高めることにつなげていると思います。

 高校生の発想や行動力は未来を拓く原動力です。そのような豊かな可能性を引き出す学習活動を西高としてはさらに盛んにしていきたいと思います。これに伴い、積極的に社会に参画する姿勢が培われていくことでしょう。

 今回、西高生の熱い思いをプロフェッショナルとして受けとめ、様々な助言、指導をいただき、商品化という英断をされたKKRホテル熊本の総支配人の倉科様はじめ料理長の尾方様、総務課の高田様、関係の皆様方に厚く御礼申し上げます。自分たちの思いが商品になるという希有な体験を生徒達に与えていただき、深く感謝いたします。

「校長室からの風」

 

春に西高で待っています ~ 高校入試(前期選抜)

 高校入試の季節となりました。1月24日(月)、県立高等学校の前期(特色)選抜検査の日で、熊本西高においても普通科体育コース及びサイエンス情報科で実施しました。それぞれ定員の50%の20人が前期の募集人員です。体育コースは39人、サイエンス情報科は30人が出願してくれました。

 前日の雨もあがり、時折、薄日が射す天候のもと、朝から受検生を迎えました。新型コロナウイルス感染の第六波のただ中であり、健康管理に神経をとがらせ、生活してきたことでしょう。自転車に乗って、または保護者の車の送りで、緊張した面持ちの受検生が集まってきました。

 9時に集合完了。体育コースは実技検査ですが、前日の雨の影響でグラウンド状態が良くなく、一部の競技は体育館2階のアリーナで実施となりました。サイエンス情報科は一人7分間の個人面接を行いました。面接を早めに終えたサイエンス情報科の受検生は順次校舎を出て、校庭を歩き、校門から帰って行くのですが、その中に、校門のところで立ち止まり、校舎側を振り向いて深々と頭を下げる者が数名見られました。校門一礼の指導を中学校で受けているのでしょうが、そのことが習慣となっている姿は深く印象に残りました。11時前後には体育コースの実技検査を受け終えた受検生たちが、談笑しながら連れ立って帰る光景が見られました。温かい陽光が注ぐ中、朝とは違い、とてもリラックスした雰囲気でした。

 繰り返しますが、前期選抜では定員の50%の20人が合格です。すなわち、一定数の受検生は不合格となるのです。その「狭き門」にあえて挑戦した、すべての受検生の皆さんの高い志に敬意を表したいと思います。西高の体育コースでトップアスリートを目指したい、サイエンス情報科で理科、数学、情報などを学びたいという受検生の熱い志望を有難く受けとめたいと思います。

 今日受検してくれた全員に合格して欲しいのですが、前期選抜ではそれができません。一部の受検生にはつらい不合格体験をさせることになります。しかし、一ヶ月後には後期(一般)選抜が控えています。より長く受験勉強することでさらに総合力が養われます。若いときの体験はどんなつらいことでも自分の成長につながるものです。後期選抜検査は2月24日(木)~25日(金)です。場合によっては、その後に二次募集の機会もあります。志望を貫いてください。

 今日、前期選抜を受検した皆さん、そして、後期選抜を受検する皆さん、春に西高で会いましょう。皆さんの入学を心から待っています。

「校長室からの風」

 

剣道部、全国選抜大会への出場を決める!

 西高剣道部が、全国高校選抜大会県予選を兼ねた県大会(1月15日、山鹿市総合体育館)で2位となり、全国選抜大会への初めての出場を決めました。これまで夏の全国高校総体へは一度出場経験がある剣道部ですが、春の全国高校選抜大会へ出場することは大きな目標でした。長年、全国王者の九州学院はじめ「剣道王国、熊本」の各強豪校の厚い壁が立ちはだかっていました。しかし、昨年秋から剣道部は上り調子で、監督の高田教諭も「全国選抜大会を狙う」と宣言し、選手を鼓舞されてきました。

 ひときわ寒さが厳しいこの冬、放課後や土日の昼間と剣道場からは熱気が生まれるほどの充実した稽古が続けられました。冬休み期間は朝8時からの寒稽古でしたが、選手たちの多くはその1時間前から登校し、自主練習に汗を流していました。剣道部は、1,2年生の男子10人、女子3人です。チームワークが良く、まとまっています。時折、私も道場に練習を見に行きますが、休息時間には部員同士の笑顔が絶えず、明るく和やかな雰囲気で、「やらされている」のではなく、主体的に進んで剣道に取り組んでいる様子が伝わってきます。練習時間も2時間未満で、密度の濃い内容です。 

 そして、何より指導者がそろっています。保健体育教諭の高田監督は、西高同窓生で、後輩に当たる部員に教育的愛情を持ち、めりはりのある指導で生徒の能力を引き出しています。また、久保孝コーチの存在も大きいものがあります。かつて本校の保健体育教諭で県の高校剣道界を牽引された方で、退職後、半ばボランティアで指導に来て頂いています。70歳近い年齢ながら、稽古で高校生に胸を貸しておられる姿に敬服します。また、顧問の橋本教諭(地歴科)も他校で剣道部の監督を務めた経験があり、生徒達を精神的に支援しています。

 「厳しい寒さ、及び新型コロナウイルス感染の蔓延という困難な環境の中、練習を続けてきたみんなは、強い。」と大会前日の練習後に私は生徒達に声をかけました。自己管理を徹底し、ベストの状態で大会に臨んだ結果と思います。感染の第六波に社会は覆われ、閉塞感が漂いますが、剣道部の快挙は学校にとって明るいニュースです。他の部活動や多くの生徒達にとって励みとなります。コロナの感染拡大が続き、学校も様々な面で我慢の時を迎えていますが、トンネルの先に光が見えたような気持ちとなりました。

 「生徒達は全国選抜大会出場が決まった喜びより、九州学院に負けた悔しさの方が大きいようです」と高田監督が報告されました。何と頼もしい生徒たちかと思います。全国選抜大会は3月下旬に愛知県で開催されます。西高剣道部はさらに強くなって、春の大舞台に挑戦します。

「校長室からの風」

生徒の皆さん、「Think big, Start small!」 ~ 3学期始業

 1月11日(火)、3学期が始まりました。

 コロナパンデミックが2年に及びます。肉眼では見えないウイルスに世界が翻弄され、私たちの生活も大きな影響を受けています。しかし、この2年間でコロナウイルスの実態がかなり明らかになりました。そもそもウイルスは単独では生存できず、動物や人間の細胞に寄生することでしか生存できません。自然界には無数のウイルスが存在し、その多くは人体に害はなく、コロナウイルスも弱毒化すれば、今のように恐れる必要はなくなると言われます。従って「ウイルスを撲滅」とか「根絶」の表現は適当ではなく、私たち人類はウイルスと共存の定めにあると言えます。

 これまで人類の歴史においてペスト、コレラ、天然痘、インフルエンザなど一部のウイルスがパンデミックを引き起こしました。パンデミックは歴史の歯車を早回しにします。14世紀のヨーロッパでペストが大流行し、甚大な犠牲者が出て人々の間で神への信仰が揺らぎました。そしてローマカトリックキリスト教の支配が弱まり、ルネサンスへと時代が動きました。19世紀のコレラの流行を克服するため、ロンドンはじめ世界の都市では下水道、上水道の整備が急速に進み、公衆衛生の考え方が普及しました。今回のコロナパンデミックにより社会はどう変わるでしょうか?確実に言えることは、学校に一人一台タブレット端末が配備されたことが示すように社会のICT化(情報通信技術化)が進むでしょう。DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉を生徒の皆さんもよく耳にすると思います。デジタルテクノロジーを活用し、より良い社会に変革する動きを意味します。大きな変化の時代を私たちは迎えます。

 また、近現代、人類がヒト中心の考え方、価値観で開発を進めてきたため、熱帯雨林の減少など地球環境が悪化し生態系が乱れました。これまで自然界にとどまっていた未知のウイルスが野生動物からヒトへ次々と感染する時代に入ったと言われます。自然環境と人類が共生できる、持続可能な社会づくりは、第二、第三の新型コロナウイルス出現を防ぐためにも重要なことです。

 未来は不確実で、見通しは立ちません。しかし、未来の担い手は今の若者、皆さんです。目指したい未来の社会はどんな社会ですか?コロナパンデミックが終わっても元にもどしてはいけないことは何ですか? 皆さんには、大きく考え、小さく始める、「Think big,start small」の心構えをもってほしいと思います。地球環境や未来のあり方を考えながら、自分にできることから始めて欲しいと思います。年の初めの私の希望です。

「校長室からの風」

           オンラインでのリモート型始業式が定着

 

 

寅年、始動!

 2022年、令和4年、干支は壬寅(みずのえとら)です。熊本西高から東に約800mのところにある高橋稲荷神社に初詣へ行きました。この社は日本五大稲荷の一つに数えられ、商売の神様として知られています。社の起源は室町期に遡るようですが、小高い城山の西麓の現在地に建立されたのは江戸初期です。傾斜地で高低差のある境内の清掃ボランティアに西高生がよく参加します。そしてお正月の巫女、お守りの販売等を西高の女子生徒たちが務めています。

 参拝の階段登り口に、西高美術部が制作、奉納した寅の絵馬が飾られていました。縦90㎝、横180㎝の大型の絵馬です。この20年間、美術部は毎年の干支にちなんだ絵を描き同社に奉納を続けており、歴代の絵馬が参拝用の階段沿いに並んでいます。12月末の冬休みに美術室を訪ね、寅の絵を協働で作成している美術部員と話を交わしました。「虎はとても格好良い題材です。どんな姿を描いても絵になります!」と部長の阿津坂さん(2年)が笑顔で語ってくれました。虎と言えば、『山月記』(中島敦)を連想する高校生が多いでしょう。高校の国語の教科書では定番の小説です。『山月記』の虎は孤高のイメージがありますが、西高美術部のモチーフは大きく異なりました。虎の家族が寄り添う温かい雰囲気の画面でした。10人ほどで和気藹々と楽しそうに絵を創り上げている様子が印象的でした。彼らの思いが絵で表現されていると思います。

 正月2日に西高ラグビー部は「初蹴り」を行いました。4日には多くの部活動が練習を始めました。剣道部は朝8時からの稽古ですが、すでに7時少し過ぎには自主的に道場で稽古する部員がいました。また、隣の柔道場では、初稽古の後に保護者の方々による手作りの温かい豚汁が振る舞われました。

 1月15~16日には、全国で約53万人が受験予定の大学入学共通テストが実施されます。西高から78人の3年生が挑戦します。4日には多くの3年生が朝から登校し、教室で自学に励む姿が見られました。高校生活の集大成として全力を尽くしてくれることを期待します。

 「初暦 知らぬ月日は 美しく」(吉屋信子)

 新しい年が始まりました。これからどんな日々が待ち受けているかわかりません。先の見通せない不安な今だからこそ、未来を考えたいと思います。コロナパンデミックが終わっても元にもどしてはいけないことは何かを考えることが大切です。未来を担う高校生が共に伸びる学び舎でありたいと心から願います。

「校長室からの風」

寒稽古 ~ なぎなた錬成大会

 この冬一番の寒波が襲来した12月26日(日)、西高の体育館で全九州高校なぎなた錬成大会を開催しました。九州の平野部でも降雪の予報が出され、大会実施が心配されましたが、当日は青空が広がり、全く雪の障害はありませんでした。長崎県は往復の道路事情を心配され欠場でしたが、沖縄県から首里高校が遠路出場されるなど他の県は前日の土曜の練習会から参加がありました。大分県からは九重・阿蘇の山々を越える道路を避け、福岡経由の鉄道での参加でした。

 しかし、体育館は冷え込みました。朝の気温は氷点下、日中も最高気温は3~4℃で、頬に当たる冷気は切るようでした。この過酷な環境のなかでも、生徒達は裸足でなぎなたの合同稽古、そして試合に臨みました。高校なぎなたの競技人口は少なく、各県においてなぎなた部として活動している高校は数校ずつしかありません。従って、総勢約90人の選手達が西高体育館に集い、一斉に稽古する様子は稀に見る壮観で、熱気に満ちていました。西高なぎなた部の生徒達も、有力な他県の高校との合同稽古や実戦はまたとないチャンスと捉え、とても張り切っているようでした。

 「このような機会を設けていただき感謝します」と異口同音に各県の指導者の方が述べられ、主催者として充足感を覚えました。長引くコロナ禍の影響で遠征や合宿が制限され、思うような活動ができていない学校がほとんどです。地理的に九州の中央に当たる熊本西高で実施できた意義は大きかったと思います。

 寒稽古という伝統がわが国にはあります。寒中に寒さに耐え克己心を養うため武道または芸能の稽古をすることです。全九州高校なぎなた錬成大会はまさに寒稽古にふさわしいものとなりました。全体の合同稽古は2階のアリーナ、試合は1階のなぎなた場で行いました。2階は時折日が射し込みましたが、1階のなぎなた場は一段と底冷えがする環境でした。それでも、すべての選手達(全体の9割は女子)の立ち居振る舞いは凜としたものでした。

 体育館でなぎなた錬成大会を行っているのと同時並行で、グラウンドではラグビー部が強い寒風のなか練習に励んでいました。今年は全国高等学校ラグビー大会(東大阪市花園ラグビー場)に出場できず、この熊本で冬休み期間は練習の日々です。来年こその熱い思いでこの冬を乗り越えてくれると期待します。

 年の瀬まで西高の各部の活動は続きます。

「校長室からの風」

 

伝統の継承 ~ 西高太鼓

 「私たちは、太鼓との出会い、先輩方、コーチをはじめ日頃から様々な縁(えにし)で結ばれていることに感謝しながら、本日この舞台で演奏できることを楽しみにしてきました。本年度もコロナ禍でなかなかステージに立つことができませんでしたが、先輩方からの伝統と太鼓に懸ける思いを受け継ぎ、演奏したいと思います。よろしくお願いいたします。」

 佐藤さん(1年)の挨拶のあと、佐藤さんと森永君(1年)の二人による太鼓演奏が始まりました。この日に向けて、瀬戸コーチの指導で創り上げてきた新曲「縁(えにし)」です。たった二人での演奏ですが、一打一打に気持ちを込めての8分間の熱い演奏でした。

 第32回熊本県高等学校郷土芸能代表選考会・吟詠剣詩舞発表会が12月22日(水)に宇城市松橋総合体育文化センター「ウイングまつばせ」で開催されました。太鼓部門に8校、伝承芸能部門に4校出場しました。出場校の中で西高太鼓部の2人は最少でした。しかし、プログラム1番に登場した西高の二人は、臆することなく、堂々と演奏しました。西高太鼓部は30年の伝統がある部活動です。しかしながら、3年生が引退した今年の夏以降は1年生2人となり、存続の危機に瀕しています。それでも、二人は瀬戸コーチの指導を受けながら、懸命に活動を継続し、この大会に出場したのです。二人を支えようと、5人の卒業生が本番に駆けつけ太鼓の運搬や演奏の準備を手伝ってくれました。演奏後の二人にはやり終えた達成感の表情が浮かび、笑顔も出ていました。大丈夫です。きっと西高太鼓部は来年度以降もその伝統を継承していくでしょう。

 長引くコロナ禍で部活動停止期間や様々な制約に苦しんできたのは西高太鼓部だけではありません。すべての高校の和太鼓部、伝承芸能部が、地域行事出演や演奏発表の場が激減しました。この厳しい環境の中であっても、日々の練習を続け、発表の機会を待ち続けています。このような中、今年の熊本県高等学校郷土芸能代表選考会・吟詠剣詩舞発表会は、保護者が観覧できる形で実施しました。昨年度と今年度は私たち熊本西高が大会事務局を担い、その準備、運営に5人の職員で当たりました。一般のお客さんへの開放までは踏み切れませんでしたが、保護者の皆さんに御覧いただけたことは一歩前進と思います。

 演奏後、感極まって涙を流す生徒。ステージ上の我が子を一心に見つめられる保護者。そして文化ホール玄関前で記念写真を撮る生徒や保護者。このような成果発表の場を年末に設けることができ、心から良かったと思います。

 来年こそは、高校生による太鼓演奏、伝承芸能の舞や演奏を広く一般の皆さん方へ披露したいと願っています。

「校長室からの風」

 

2学期の終業式を迎えて

 12月20日(月)、西高は2学期の終業式を迎えました。終業式に先立って、多くの生徒の皆さんを表彰できたことは私の喜びです。今回特筆すべきことは、美術と書道の両部門で来年夏の全国高等学校総合文化祭東京大会出場を決めたことです。美術科や芸術コースがない高校にとって、これは快挙と言えます。西高は体育系部活動が強いことで有名ですが、文化部の水準が高いことについて、もっと誇って良いと思います。

 さて、新型コロナ感染拡大の中で始まった2学期でしたが、10月から安定した状況となり、創立記念祭、チャレンジウォーク(強歩会)、クラスマッチ、体育コース1年の修学旅行など多くの学校行事を実施することができました。12月17日(金)、3年生の最後のクラスマッチが行われました。あいにくの天候のため、グラウンドでのソフトボールが実施出来ず、男女とも体育館でのソフトバレーボールとなりましたが、応援や歓声の声が響き、残り少なくなった高校生活を惜しむ3年生の気持ちが表れたクラスマッチでした。

 また、10月からはボランティア活動も再開され、多くの西高生が積極的に参加してくれました。併せて、部活動単位での地域貢献活動も行われました。地元の小学校の子ども達とのベースボール交流は野球部の伝統となっています。吹奏楽部は、医療従事者の方達にエールを送るチャリティコンサートに出演しました。その他、新しい動きが見られました。eスポーツ部です。eスポーツ部員が、介護老人保健施設を訪問し、ゲームを通しての交流、支援活動を行いました。エンターテインメントと見られているeスポーツですが、介護分野の認知症予防の活用が始まっており、本校のeスポーツ部の出番がこれから増えそうです。

 高校生の元気、行動力を社会は必要としています。特別な活動ではなくても、登下校中の西高生の爽やかな挨拶で、地域の皆さんは明るい気持ちになると言われます。西高は、地域の皆さんから応援され、信頼される、コミュニティ・スクールでありたいと願っています。

 明日から冬季休業です。冬休みは年が変わる節目の時期で、来し方行く末、即ち過去と未来を強く意識する時期です。受験を控えている3年生の皆さん、今こそ、ここで全力を尽くす時です。すでに進路が決まっている3年生の皆さんは、将来の自分のための勉強を続けてください。1,2年生の皆さんは、自らの進路を考える良い機会です。将来やってみたいことを「夢」と設定します。人は、近い未来の自分が想像できると頑張ることができます。時間は連続しています。未来は、現在の中にすでにあるのです。

 来年こそは、世界のコロナパンデミックが終熄することを皆さんと共に祈念したいと思います。皆さん、良いお年をお迎えください。

「校長室からの風」

        表彰式(西高のスタジオ)

体育コース1年生、修学旅行に出発!

 体育コース1年生(1年9組 40人)が、12月14日(火)早朝、修学旅行に出発しました。朝7時に学校に集合して出発式を行い、バスで福岡空港へ向かいました。福岡空港から松本空港(長野県)へ飛び、再びバスに乗車して目的地の志賀高原を目指します。午後3時半頃に到着予定で、その後、早速ナイタースキー研修が行われます。17日(金)まで3泊4日の旅程の始まりです。

 修学旅行は高校3年間で一度経験する特別な学校行事です。昨年度は、コロナパンデミックの影響で多くの高校で修学旅行が中止となりました。しかし、今年は秋の到来と共にコロナ感染者が急減し、とても安定した状況が続いており、予定通り修学旅行を実施することができ、生徒達と共に喜びたいと思います。

 体育コースの修学旅行ということで、スキー研修が中心になっています。阿蘇山より高い、標高1700mの志賀高原一の瀬ファミリースキー場において、14日の夕方、15日~16日のまる二日間とたっぷり時間をとってスキーの講習を受けます。最後は、スキーの上達度を測るバッジテストが実施され認定証を得ることになります。運動能力が高い体育コースの生徒達であれば、きっと上達も早く、二日目から自在に滑り、スキーの醍醐味を満喫することでしょう。

 また、雪国の風土を体感してほしいと願っています。九州の雪とは異なる、より気温の低い地域で降るパウダースノー(粉雪)の感触、白銀のゲレンデと青空のコントラストの眩しさ、さらには少し吹雪いた時の自然の厳しさなど、五感で体験してほしいと思います。

 最終日の17日は雪山を下り、松本城(松本市)を訪ねます。江戸時代の木造天守(閣)が今に残る城は全国に12城しかありません。私たちが誇る熊本城は、明治10年の西南戦争の時に天守閣は焼失し、昭和35年に鉄骨鉄筋コンクリートで再建されました。江戸時代の古い天守は貴重です。しかも、松本城は、天守閣が国宝に指定されている「国宝五城」(姫路城、松本城、松江城、彦根城、犬山城)の一つとして知られています。山々を背景とした松本城の優美な姿に、疲労が蓄積している生徒達も眼が洗われるような思いに包まれるでしょう。そして、松本城の天守閣に上り、先人の知恵と技術など、伝え守られてきた文化を実感してほしいと期待します。

 旅行は、いつ、誰と行ったかが大切です。高校1年生という感性豊かな時に、同じスポーツを愛する体育コースの級友と行く3泊4日の修学旅行は、かけがえのない青春の思い出になると信じます。

「校長室からの風」

  

 左から、学校での朝の出発式   バスの中       志賀高原でのスキー研修開始                    

オリンピアン来校 ~ 江里口選手の「特別授業」

 実際にお会いしてみると、江里口選手は陸上短距離アスリートとしては小柄で、意外に思いました。しかしながら、世界選手権、そしてロンドンオリンピック(2012年)と世界を舞台に戦ってこられた風格のようなものがあり、これがオリンピアンの雰囲気かと感じました。

 熊本県オリンピック・パラリンピック教育推進校講師派遣事業(スポーツ庁委託事業)の「オリンピアン講習会」を、12月10日(金)の午後に、体育コース全員(1~3年生)110人が参加して西高の陸上競技場で実施しました。

 江里口選手は本県菊池市出身で、県立鹿本高校時代に陸上100m選手として頭角を現し、国民体育大会少年男子で優勝。早稲田大学時代には大学選手権(インカレ)4連覇、そして日本選手権優勝を果たし、大阪ガス入社後の2012年のロンドンオリンピックに出場。100mは予選敗退でしたが、4×100mリレーでは2走を務め4位入賞に輝きました。

 熊本県出身のオリンピアンの登場に、生徒達は少し緊張気味で堅い印象があったのは当然でしょう。しかし、江里口選手は、「自分は中学時代には全国大会に出たことがない普通の選手だった。」と前置きし、「身長は170㎝で、筋肉隆々の体質でもなく、自分は陸上短距離選手としては体格に恵まれてない。」と言われました。そして、「そのような自分がどんな点を意識して練習し、いかに世界と戦ったのかを知って欲しい」と伝えられ、生徒の関心を引き付けられました。

 江里口選手のアドバイスのポイントは、先ず「考えてトレーニングすること」です。腕立て伏せを生徒にさせた後、「みんなはどこの筋肉を鍛えようと思い、腕立て伏せをしているのか?」と問われました。ただ言われたトレーニングメニューをこなすのではなく、自分のどの部分を強化、鍛錬するためにやるのか、意識して行わないと効果がないと諭されました。そして、練習の時はもちろん、普段の生活においても「正しい姿勢」を強調されました。トップアスリートは理にかなった練習をこなしており、その結果が記録につながっていることをわかりやすい言葉とパフォーマンスで教えられました。

 江里口選手は高校時代に国体に出場し、成年の部で競技する日本で一流のトップアスリートの姿に接し、憧憬の念を強く持ち、向上心が高まったと言われました。西高体育コースの生徒たちにとっても、オリンピアンからの「特別授業」を受けたことは、かけがえのない経験になったと思います。

 西高から未来のオリンピアンが出てくることを楽しみにしています。

「校長室からの風」

 

西高教職員チーム、優勝! ~ 県高校教職員ハンドボール大会

 熊本県はハンドボールが盛んな土地柄です。2年前に女子ハンドボール世界選手権大会が本県で開催されたことは記憶に新しいところと思います。ハンドボール熱は教職員の世界にも定着しており、私が教員になる前から、教職員ハンドボール大会が行われています。しかしながら、昨年はコロナパンデミックの影響で中止されました。今年は2年ぶりに再開、第62回熊本県高等学校教職員ハンドボール大会が11月27日(土)~28日(日)に実施されました。

 熊本西高にはハンドボール競技が専門の職員はいません。しかし、部活動としてハンドボール部があり、その顧問の樺島先生が中心となり職員チーム(選手14人)を結成し出場することとなり、形だけの監督を校長の私が務めました。

 チーム練習もほとんどできず、「まあ一回戦も厳しいでしょう」との樺島先生の予想もあって、気楽に27日(土)の会場の山鹿市総合体育館に臨みました。ところが、1回戦の天草支援学校、2回戦の九州学院、3回戦の熊本中央と圧倒的な強さで勝ち続けました。

 抜群のスピードで相手チームを翻弄したのが、体育科の女性職員の落合先生です。落合先生はバスケット選手として大学、実業団(鶴屋百貨店)で活躍しており、縦横無尽にコートを疾走し得点を重ねました。特別ルールで女性職員のゴールは2点にカウントされるため、西高チームは相手校を一気に引き離しました。また、男性職員では西田先生が次々にゴールを決めました。西田先生はラグビーの県国体成人チームのメンバーで、現役アスリートとして豊富な運動量と巧みな動きで相手選手をかわし、得点量産に貢献しました。

 西高職員チームは体育科の若手職員だけが牽引したのではありません。20代から50代まで幅広い世代の職員がそれぞれの持ち味を活かし、チームワークを発揮しました。58歳の山本先生(数学)、57歳の鬼塚先生(数学)、55歳の門脇先生(保健体育)、51歳の樺島先生(数学)の4人の50代の職員も交代しながらコートに入り、果敢にプレーし、チームが勢いづきました。

 28日(日)の千原台高校体育館での準決勝(対 阿蘇中央)、決勝(対 水俣)も快勝。西高職員チームは思いもかけず優勝したのです。大会最優秀選手(MVP)には落合先生が選ばれました。長引くコロナ禍のため、学校では職員の親睦行事がこの1年半ほど行われていません。久しぶりにスポーツを通じて、職員の一体感、連帯感を得ることができました。このことが、優勝したことよりも喜びです。

 来週は、学校でクラスマッチが予定されています。共にスポーツを楽しみ、交流を深める好機です。生徒達もきっと楽しみにしていることでしょう。

                                     「校長室からの風」

 

剣道、作文、美術、ボランティア ~ 西高生の多彩な活動

 熊本県高等学校剣道新人戦大会が11月20日(土)~21日(日)に行われ、西高剣道部が躍進を見せました。男子団体が3位、男子個人で山下貴薫君(1年)が準優勝、女子個人では平江愛梨さん(2年)がベスト8に入り、それぞれ九州大会進出を決めました。男女ともに九州大会出場を決めたのは県内の高校で西高だけです。特に、剣道王国の熊本において強豪校相手に次々と勝ち抜き、個人戦準優勝を遂げた山下君の快挙を心から称えたいと思います。大会前日の19日(金)に剣道部の充実した稽古風景を見て期待感が高まりましたが、見事に実力を発揮してくれました。上げ潮に乗っている今の剣道部の勢いに注目です。

 また、11月24日(水)、熊本西税務署の清水副所長が来校され、令和3年度「税に関する高校生の作文」(主催:国税庁)で入選を果たした田中瑠夏さん(1年)が表彰を受けました。科目「現代社会」の夏季休業の課題として取り組んだ田中さんの作文は、日頃は意識しない税の使い道について改めて調べ、学校教育や近所の公園整備など身近なところに活かされていることを知ったことをまとめたそうです。社会を意識することにつながったと語ってくれました。

 第5回全九州高等学校総合文化祭長崎大会が来月12月10日(金)~12日(日)に開かれます。昨年は熊本大会でしたが、コロナパンデミックで事実上の中止となり私たち高校関係者、生徒達が無念の涙を呑みました。今年は2年ぶりに平常開催の予定です。本校から美術部門で浪平佳凜さん(2年生)の作品が出品されます。浪平さん自身も生徒交流会に参加するため、長崎県立美術館へ赴きます。

 このように体育、文化と生徒の個々の活動が高い評価を受けることは学校にとって誠に喜ばしいことです。スポーツに、文化活動に、そして学習にと、それぞれの生徒が自ら得意とする領域で存分に自分の可能性を発揮しています。そして、生徒の無尽の可能性を引き出すために、教職員が寄り添い指導、支援しています。ここ熊本西高は、高校生の可能性が開花する環境が整っているのです。

 さらに明るい話題です。11月21日(日)に第1回「熊本みなとマラソン」が西区で開催されました。熊本港の親水緑地広場をスタート、ゴールとし、県道51号(熊本港線)を走るハーフマラソンです。このマラソン大会に西高から56人の生徒が運営ボランティアで参加しました。大会主催者の久保理事長(NPO法人スポレク・エイト)が来校され、「多くの生徒さんの積極的なボランティアの姿勢に感謝します」と御礼を申し述べられました。こちらとしては、ボランティアの機会を与えて頂いたことに感謝したいくらいです。

 西高生の活動範囲がどこまで広がっていくのか期待が膨らむ日々です。

「校長室からの風」

「税の作文」表彰

 

「夕日が美しい学校」 ~ 生徒会からの「西高魅力化プロジェクト」案

 11月16日(火)、今年度2回目の学校運営協議会を開催しました。地元の三和中学校長、地域の自治会長、西区区長、保護者会代表、同窓会代表等8人の委員さんを招いて、今後の学校運営のあり方を検討して頂くものです。今回はこの場に会長の濱﨑さんはじめ生徒会役員8人が参加し、生徒会が考える「西高 魅力発信プロジェクト」案を提言してもらいました。

 西高生がもっと積極的に小、中学校へ出かけて連携、交流を図るという提言がありました。体育コースの生徒が小学校の体育の授業のお手伝いをする、サイエンス情報科の生徒が小学校のプログラミング学習のお手伝いをする等です。また、いざ大規模な自然災害が起きたときに備え、防災活動を地元の小中学校と共同で実施する案も出されました。とても現実的な良案だと思います。

 また、西高にもっと地域住民の方が足を運んでもらえるよう、従来の創立記念祭(文化祭)とは別に「西高フェスタ」(仮称)を学校で開催し、地域の商工業者の皆さんに特産品販売を行ってもらうのはどうかという案も出ました。この他、移動販売車(スタンドカー)に学校に定期的に来てもらうことは販売の促進と西高生の買い物の楽しみが増える効果があるとのユニークな意見も出されました。高校生の視点からの面白い発想です。

 学校運営協議会委員の皆さんも、共感的に受けとめてくださいました。三和中の校長先生からは「中学校と高校の生徒会の共同活動はすぐにでもできる」と支持していただきました。また、西区区長さんからは、西区主催のイベントへの西高生の参加を歓迎する旨のご発言がありました。

 そして、同窓会代表の委員さんから、「あなた達にとって、西高の魅力は何ですか?」と生徒会へ質問がありました。

 「熊本市にありながら、周囲の自然が豊か」、「学校の敷地が広い」、「学習のICT化が進んでいる」、「生徒と先生の距離が近い」などの意見が出る中、「西高から見る夕日が美しい」と回答した生徒が3人いました。西高の西側には田畑が広がり、高い建物はありません。白川、坪井川の河口に連なり、その先は有明海です。鮮やかな朱色に輝く夕日が校舎、グラウンドから見えます。あの情景はきっと西高生の胸に刻まれるものでしょう。

 西高は公共交通機関には恵まれていません。JRの熊本駅、西熊本駅から約5㎞の距離があります。しかし、多少遠くても通うだけの魅力ある高校でありたいと思います。そして、そのような魅力ある西高を創っていく主役は生徒の皆さんです。これからもより魅力的な学校を目指し、生徒及び保護者の皆さん、地域住民の方々、教職員とで対話を重ねていきたいと思います。

                                     「校長室からの風」

 

ひたすら歩く、みんなで歩く ~ 西高チャレンジウォーク

 秋晴れの11月2日(火)、西高伝統の「チャレンジウォーク」を開催しました。学校を出て、西区地域を歩き巡る遠行(えんこう)行事です。2年前までは金峰山頂上まで登っていましたが、今年は新型コロナウイルス感染防止の観点からマスク着用での強歩(走らない)で、学年別に時差出発とし、コースや距離も変更しました。距離は15.6㎞、行程は日蓮宗の名刹、本妙寺までの往復です。

 早朝の7時45分には体育コースの生徒(1~3年)が最初に出発しました。体育コースの生徒達は先に行き、交差点や曲がり角において保護者役員の方や職員と一緒に交通案内も担当するのです。そして、一般の生徒が通り過ぎた後、追うように歩きます。8時半から9時半にかけて2年生、1年生、3年生の順で出発していきます。各クラス、男女別に4~8人の班をつくり、そのチームで歩くのです。3年8組の生徒達が最後に出発したのですが、その最後尾から私も歩き始めました。

 西高北門を出て、坪井川の堤防道を上流へ進み、高橋稲荷の通称「赤橋」(朱色の橋)を渡り、西回りバイパス道の歩道へ。柿の実が朱に染まり、薄が群生し、秋景色が広がります。沿道に保育園、幼稚園があり、幼児たちから「がんばれー」と可愛い声援が送られ、生徒達も手を振り返しています。島崎町に入り、次第に上り坂となり、いよいよ本妙寺(西区花園町)へ。

 本妙寺は中尾山(標高218m)の中腹にあり、鬱蒼とした木立に覆われ、疲労した身体には涼風が心地良く感じられます。しかし、最後に300段の石段という難所が待ち構えていました。息を切らしながら石段を登ると、加藤清正公の雄姿(銅像)が迎えてくれました。ここがチェックポイント。帰りは、清正公が眠る浄池廟(じょうちびょう)の本殿・拝殿の脇を通り、「胸突き雁木(がんぎ)」と呼ばれる急な石段を下り、表門から出て往路と同じ道に戻り、学校へ。

 復路では、遅れた1年2組の女子の班と一緒に歩きました。普段、長い距離を歩かない一般の生徒にとって、約15㎞の道のりは大きな負担となるようです。早くゴールした生徒達は制服に着替え、自転車で帰宅する姿が見られ、焦りも出てきます。しかし、一人ではありません。女子7人で朗らかに声を掛け合い、一歩一歩、ゴール(学校)を目指します。ひたすら歩く、みんなで歩く。ただそれだけの鍛錬行事ですが、西高生としての一体感が強まる得がたい時間です。

 午後1時近く、1年2組の女子7人の班と私が最後尾でゴールしました。同窓会及び育西会からバナナ、ドーナツ、飲み物を頂きました。完歩した達成感は何物にも代えがたいものでした。

「校長室からの風」

 

創立記念祭開催 ~ 「For others With others」(みんなのために みんなと共に) 

 秋晴れの10月28日(木)、熊本市民会館シアーズホーム「夢ホール」で第46回熊本西高校創立記念祭を開催しました。

 芸術鑑賞会に続き、午後1時40分に生徒会企画のオープニングアトラクションが始まりました。いきなり「オタ芸」と呼ばれる、アイドルの熱狂的ファンが行うペンライトを使ったパフォーマンスとバンド演奏を男子生徒有志が演じ、会場は笑いと歓声、拍手に包まれました。

 プログラム2番は太鼓部演奏。部員は1年生2人(男女)しかいません。外部指導員の瀬戸さんも加わり3人での熱演で、鼓動が客席に響き渡りました。力の限り打ち続けてのクライマックス、打ち止め後の静寂、そして3人で深々と頭を下げた姿勢のまま幕が下りる情景は印象的でした。

 プログラム3、4番は、1,2学年の発表。1年生は9組体育コースの林君が「2020東京オリンピックから学んだこと」というテーマで堂々の発表。2年生は、横手学年主任を中心に職員と生徒全員が出演の動画上映。受験に臨む3年生へのエールと、これから西高を背負っていく決意がメッセージに込められた動画で、生徒による撮影、編集の手作り感も伝わってきました。

 次のプログラムは演劇部発表。放課後のドタバタ騒ぎで、二子石教諭、田上教諭、打越教諭と3人の2年生担任も出演し、客席から大きな反響でした。また、続く放送部の発表は、職員室のベランダの庇にあるツバメの巣がテーマのドキュメント(記録)動画。今年度のNHK杯高校放送コンテストに出品したものです。さすがは放送部で、ツバメの雛を中心に小さきものの動きを丹念に追い、強風で破損した巣の修復にも関わるドラマとなっていました。

 プログラム7番は保健委員会の発表。生徒の生活習慣改善をテーマに、全校生にアンケート調査を行い、その結果を公表。平均して一日のスマホの使用時間が2~3時間以上が7割を超えていることは心配な状況です。一方、睡眠時間6時間未満が6割以上となっており、これらの相関関係が気になります。安定した生活リズムを維持することは西高生の課題であることが浮き彫りとなりました。

 そして、プログラムの締めは吹奏楽部の演奏です。3年生が引退したため部員は13人と少人数です。しかし、この日に向けて熱心に練習してきたことは、楽器の音色が音楽室周辺に放課後響き渡っていたことが証です。最後のジャズの名曲「Sing,Sing,Sing」はソロ演奏もあり、圧巻の演奏で、フィナーレをかざってくれたと思います。

 「For others With others」(みんなのために みんなと共に)。テーマどおりの創立記念祭となりました。 

                                     「校長室からの風」

 

ルネサンス、バロックの音楽との出会い ~ 西高「芸術鑑賞会」

 15世紀から17世紀にかけてのヨーロッパのルネサンス、バロックの音楽が古楽器で奏でられます。強い、大きな響きはありません。自己主張する音はありません。現代の電子音楽に慣れている私たちの耳には、とても控えめな旋律(メロディー)と感じられます。しかし、アコースティック、即ち楽器本来の深い音色に心地よく包まれます。

 西高創立記念祭の一環として、10月28日(金)に熊本市民会館シアーズホーム「夢ホール」において、芸術鑑賞会を開催しました。ヨーロッパの古楽器の合奏(アンサンブル)で知られる「グループ葦」の皆さんによる公演です。8人の出演者が、四種のリコーダー(縦笛)、弦楽器のヴィオラ・ダ・ガンバ、トロンボーンの先祖に当たる楽器サックバット、外観はピアノに似た鍵盤楽器のチェンバロなどの古い楽器を奏でられ、これに歌唱が加わります。そして、この日は特別に二人の舞踏家が参加され、ルネサンス、バロック時代のダンスを往時の優雅な衣装を模したコスチュームで踊られました。

 このようなヨーロッパのルネサンス、バロックの音楽及び舞踏には私も初めて触れました。知っている曲は、バッハ(ドイツ、1685~1750)の「メヌエット」だけでした。「初めて聴く音楽なのに、なぜか聴いたことがあるような記憶がありませんか?」と演奏者の方がステージから問いかけられました。それは恐らく現代音楽の起源だからかと思いました。また、ルネサンス、大航海時代のヨーロッパからカトリックの宣教師が戦国時代の日本にも渡来し、この九州、熊本でもキリシタンが増え、コレジオ、セミナリオといったキリスト教の学校、宣教師の養成所が設けられました。そこでは、当時のヨーロッパの音楽が演奏されていたことがわかっています。ひょっとして、私たちの先祖が、ルネサンス音楽を聴いたことがあるのかもしれません。そのようなことを想像すると、遠い記憶がよみがえってくるとも言えるでしょう。

 喧噪の音に包まれているような現代の私たちが、シンプルでおだやかだった頃のヨーロッパのルネサンス、バロックの音楽にさかのぼる時間の旅を経験したような公演でした。創立記念祭「芸術鑑賞会」にふさわしい公演でした。音響、照明とも整った本格的なホールで、ゆったりと音楽の世界に浸ることができました。生徒の皆さんにとっても、音楽の深淵を覗いた、特別な時間となったことでしょう。まさに、創立記念祭のテーマ「気韻生動」の音楽でした。

                                           「校長室からの風」 

 

 

創立記念祭を迎えて ~ オンライン開会式の挨拶

 熊本西高校は昭和49年10月に創立されました。最初は職員4人だけで生徒はいません。「清 明 和」の校訓をはじめ校旗、校章などを定め、募集定員は普通科4学級で発足することが決まり、翌年の昭和50年4月に第一期生の入学を迎えました。創立以来、今年で47年となります。他校では文化祭と言われることが多い秋の文化的行事を、本校ではあえて創立記念祭と呼ぶのはなぜでしょうか? 毎年、創立の原点に戻った気持ちで、新たに西高の元気を発信しようという思いが込められているのです。

 残念ながら2年前までのように学校全体を会場にし、地域に開放しての賑やかなお祭り的行事はできません。しかし、熊本市民会館シアーズホームという立派なホールを舞台に、芸術鑑賞、そして文化部をはじめ生徒のみなさんのステージ発表が開催されます。本格的なホールは体育館と異なり、音響、照明ともに優れていて、音楽や演劇など舞台芸術には最高の環境が整っています。ホールでの鑑賞マナーも身に付きます。

 今年の芸術鑑賞は、ヨーロッパの古い楽器、古楽器の演奏や歌のアンサンブル(合奏)を鑑賞します。私たちが日頃触れることがないクラシック(古典)で深い音色が楽しみです。また、皆さんのクラスメイトが、同級生が、ステージ上で演奏、発表をします。きっと普段の姿とは違い、「あいつ、すごいな」、「彼女、すてきだなあ」という新たな一面を再発見する機会となるでしょう。観客の皆さんが真剣に鑑賞することが、出演者の力を引き出すことになると思います。

 皆さん、創立記念祭は明日の市民会館だけではありません。学校の生徒ホールで20日からアート作品や研究発表の展示が行われています。小さなギャラリーですが、文化の香り漂う空間となっています。会期は明日までです。まだ観覧していない人は今日の放課後、足を運んでください。

 この創立記念祭は生徒会執行部はじめ実に多くの皆さんの熱意と努力によって実現しました。関係者すべての皆さんに感謝します。メインテーマは気韻生動。難しい言葉ですが、気品があっていきいきと動き出すようだという意味で、書道や日本画、能楽などわが国の伝統文化を称える時によく使われる言葉です。また、サブテーマの「For others  With others」、みんなのために、みんなと共に、という言葉は、新生徒会がスタートする時、私から贈ったもので、それをモットーに生徒会が活動してくれていることを頼もしく思います。

 コロナパンデミックの中でも、西高は途切れることなく創立記念祭を実施できます。このことを皆さんと共に喜び、明日を迎えましょう。

                                     「校長室からの風」

 

生徒ホールの作品展示 ~ 創立記念祭

 10月20日(水)から、生徒ホールにおいて創立記念祭の一環として、文化部の作品展示が始まりました。生徒ホールは西高自慢の生徒達の憩いの場です。売店に隣接する空間は2階まで吹き抜けで、大きな窓を通して中庭のテラスにつながり開放感があふれています。本校の創立記念祭は文化祭とも言えるもので、例年なら学校全体が舞台となり、ステージ及び展示の発表、バザー等と西高の活気と創造性を発信する行事ですが、今年はコロナ禍の中、芸術鑑賞とステージ発表を10月28日(木)に熊本市民会館で開催することにしました。そのため、展示部門は生徒ホールでの発表となりました。

 美術部は、油絵の大作や素描(デッサン)の小品など9作品。書道部は半切(はんせつ)の5作品。絵画、書の描(書)き手がどんな生徒なのか、想像するのも楽しいのですが、作品を前にして思うことは、創作者を離れ、作品そのものが雄弁に語るような気がします。これが創造の力なのでしょう。

 理科の各部も研究活動を広用紙にまとめて展示してあります。生物部の「農業用水路に生きるシジミの1年間の調査」は、学校周辺の用水路で生徒達が活動している様子を見たことがあり、親近感があります。化学部の「廃チョークを利用した銅廃液処理に関する研究」は、使い古したチョークという身近な素材に着目した研究です。地学部の「離岸流の研究」も、海(有明海)に近い西高ならではの研究テーマと言えるでしょう。

 また、英語部は西高が位置する熊本市西区について「West District」として地図を作成し、主な公共施設等が英語表記で示されています(もちろん西高も)。図書委員会は生徒(図書委員)オススメの本をキャッチコピーで紹介しています。

 そして、育西会(保護者会)からはこれまでの育西会会報(新聞)のバックナンバーがファイルにまとめられ展示されていました。現存する第55号(平成8年12月刊)から最新号の156号(令和3年8月刊)までの25年の変遷が凝縮しています。個人的にお世話になった先輩教師の皆さんの名前や写真を拝見し、懐かしくファイルをめくりました。

 小さなギャラリーです。けれども、何かそこだけ上質な落ち着いた雰囲気が感じられます。作品展示は28日(木)までです。まだ訪ねていない生徒の皆さん、昼休みか放課後に足を運んでみてください。西高の学校文化の奥深さ、豊かさに触れられると思います。

                                     「校長室からの風」

 

初めて選挙に臨む皆さんへ ~ 18歳選挙権

 10月14日(木)、衆議院が解散されました。衆議院議員総選挙が19日公示、31日投票の日程で行われることが決まりました。衆議院議員の任期4年がほぼ満了しての、約4年ぶりの総選挙となります。

 選挙は高校にとっては他人事ではありません。高校生の一部は選挙権を有しています。選挙権年齢が「満18歳以上」に引き下げられたのは平成28年でした。選挙期日の翌日(今回で云うなら11月1日)に満18歳の誕生日を迎える人までが選挙権を有することになります。恐らく高校3年生のおよそ6割は有権者として今回の総選挙に臨むことになるでしょう。

 少子高齢化が進むわが国において、若い世代にこそ政治に関心をもってもらう必要があるという目的で導入された18歳選挙権でした。高校でも、公民科の授業やホームルーム活動、生徒会活動などをとおして実践を重ねてきました。導入された当時、私が勤務していた高校の所在地の町長選挙がありました。有権者の生徒達の関心を高めるため、候補者2人にお願いし、放課後、正門前まで来て頂き、町政のビジョンを語ってもらいました。結果、高校生の投票率は75%を超えました。しかしながら、各種データを見ると、若い世代の投票率は期待されたほどは伸びていません。残念です。

 「自分一人が投票しても社会は変わらない」と云う高校生がいます。しかし、選挙の一人一票の原則はとても大切なことです。総理大臣も、県知事も、そして校長の私も一票です。18歳のあなたと同じ一票なのです。一票の重みを感じてください。そして、身分や納税額、性別などの様々な制限なく、一定の年齢を満たせばだれもが選挙権を有する普通選挙制は今では当たり前のことですが、その実現への歩みはまさにわが国の近代化と軌を一にするものでした。世界ではいまだ普通選挙が実施できない国もあります。

 生涯で最初の選挙を迎える生徒の皆さん、あなた達はこの国の主権者です。権利は責任を伴います。選挙権という貴重な権利を活かしてください。私たちの西高では国政選挙に先駆けて生徒会長選挙を電子投票で行いました。しかし、まだ国政選挙は電子化されていません。自ら投票所に足を運び、一票を投ずることになります。ただそれだけのことですが、その時、あなたは主権者としての役割を立派に果たしたことになるのです。

 なお、投票所では投票用紙が2枚渡されます。小選挙区は候補者名を、比例代表区は政党名を記します。戸惑わないように。

                                     「校長室からの風」

 

 

「学校の日常」が戻って ~ 平常の教育課程の再開

 10月1日(金)の朝、澄んだ青空の下、生徒達が次々と登校してきます。多くが自転車通学生で、滑るように正門から入ってきます。前日までの分散登校とは数が違い、自ずと活気あふれる雰囲気です。正門や昇降口の付近で職員が出迎えます。大きな声での挨拶はできませんが、「おはよう」の声は飛び交います。

 新型コロナウイルスの感染者が減少傾向にあり、熊本県の「まん延防止重点措置」期間が9月30日(木)で解除され、「分散登校・時差登校・短縮授業」の制限も不要となり、熊本西高も平常の教育課程再開となりました。朝8時30分始業、月・水・金が6時間授業、火・木が7時間授業の本来の学習活動に戻りました。もちろん、コロナパンデミックが完全に終熄したわけではありませんから、学校での感染防止の取り組みは続きます。特に、感染リスクの要因として指摘されている昼食、歯磨き、体育の授業や部活動での更衣などは、生徒の皆さんに一層の自覚を求めていくことになります。学校あげて、感染防止と学校生活の充実という困難な両立に挑んでいかなければなりません。

 緊張感ある再スタートの日でしたが、生徒達も職員もどこか喜びに包まれ、「学校の日常」が戻ってきたという高揚感に校内は満ちていました。

 部活動も全面再開です。柔道部員の朝のランニングも再び始まりました。放課後、自粛していたラグビー部の練習がグラウンドで始動しました。音楽室や周辺の廊下からは吹奏楽部員の楽器の音色が響きます。高校生活は人生から見るとまことに限りある短い期間です。現在の高校生は、その多くの時間をコロナ禍の中、制約されて過ごしてきました。せめて、規制がすべて解除された今のこの時期だけでも、存分に高校生活を満喫して欲しいと願うばかりです。

 学校行事も再開しました。10月5日(火)、体育コースの3年生39人はゴルフラウンド実習をグリーランドリゾートゴルフコース(荒尾市)で行いました。東海大学熊本キャンパス校のゴルフ部の皆さんのサポートを受けて、初めてコースを回ります。朝7時20分、学校で出発式を行い、マイクロバス2台での出立を私は見送りました。「まん延防止重点措置」期間は、すべての学校行事は自粛、延期してきましたので、解除後の初めての学校行事となります。青空が広がるスポーツ日和となりました。

 この平穏な日々が長く続くことを祈らずにいられません。

「校長室からの風」

 

スポーツの力 ~ 陸上部、野球部、そして富田宇宙選手

 8月25日に西高の2学期が始まりましたが、熊本県が新型コロナウイルスの「まん延防止重点措置」対象県のため、生徒は分散登校、そして部活動は原則中止となりました。公式戦2週間前からの部活動は認められましたが、学年によって午前と午後に分かれて登校のため、1,2年生の部員がまとまっって練習する機会は土日を除いてありません。

 校長室の窓から、広いグラウンドが見えます。最も手前で陸上部の生徒が練習しています。3年生が引退したうえに、学年別の練習のため、人数がより少なく寂しい光景に映ります。しかし、黙々と走り、投げ、新人戦に備えている様子が伝わってきました。9月17日(金)~19日(日)と新人陸上競技大会が県民総合運動公園陸上競技場(熊本市)で開催されました。西高陸上部は砲丸投、円盤投、やり投、三段跳などのフィールド競技で上位を独占、フィールド部門の学校対抗で優勝。トラック競技も併せた総合の学校対抗でも3位に入りました。10月7日~10日に宮崎市で開催される全九州高校新人陸上競技大会に2年生4人、1年生4人の計8人が県代表として出場することとなりました。

 9月23日(木・祝日)から九州地区高校野球熊本大会が始まりました。西高野球部は藤崎台球場(熊本市)で必由館高校と初戦でぶつかりました。共に甲子園出場の経験を持つ公立のライバルです。私も応援に行きましたが、手に汗を握る好試合となり、1対0で西高が競り勝ちました。団体競技の野球の場合、学年が分散されての練習は苦労が多かったろうと思います。

 陸上部の九州大会出場、野球部の難敵を下しての2回戦進出というニュースは学校の雰囲気を明るくしました。長引くコロナ禍で不規則な生活を強いられ、体調、体力を維持することも困難な中、はつらつとスポーツで自己表現する西高生を見て、頼もしく思います。

 そして、今日、9月24日(金)、東京パラリンピックの水泳競技のメダリスト、富田宇宙選手が西高に来校されました。本校の体育科の米田教諭(専門は水泳)が、富田選手が済々黌高校時代の水泳の指導者で、その後も長く交流が続いています。昨年、幾度も来校され、本校の体育コースの生徒達に講演をしてくださり、水泳部の生徒と一緒にプールで練習されました。今回、帰省されたため、体育コースの生徒達にメダルを披露する機会が実現しました。富田選手こそまさに逆境をスポーツの力で克服された人です。視力障がいのハンディを乗り越え、パラアスリートとして自信に満ちあふれた富田選手の姿を目にして、体育コースの生徒達もきっと大いに励まされるものがあったと思います。

 コロナパンデミックであっても、スポーツの力は少しも衰えないのです。

「校長室からの風」

 富田宇宙選手と体育コースの生徒たちの交流会

 

オンライン保護者会の実践 ~ 「学校情報化優良校」の認証

   1学年保護者会を9月16日(木)午後に開催しました。「えっ? まん延防止重点措置期間にできるの?」という声が聞こえてきそうですが、できるのです。もちろん、保護者の皆さんに西高に来て頂くことはありません。すべてオンラインで開催なのです。従って、保護者の皆さんは、ご自分のスマホやタブレット等で参加できるのです。しかし、「平日で仕事があり、オンラインでも参加しづらい」との声が聞こえてきそうですが、その対応もしています。

 1学年保護者会の内容は、学年主任の米田教諭の挨拶から始まり、九州産業大学の大西純一教授の進路講演会、西高教務部からの「2年次のコース選択説明会」、旅行会社による「修学旅行説明会」など盛りだくさんです。これらのほとんどが前日までに動画収録が完了し、学級(クラス)と生徒及び保護者の端末を結ぶコミュニケーションツール「Google Classroom」に保存されているのです。

    生徒達は登校して1年の各教室で視聴しますが、リアルタイムのライブ映像ではありません。適宜、休憩時間をとりながら視聴し、担任や副担任の支援を受けて理解を深めます。そして、これらの動画は9月20日(火)まで保存されていてアクセスできますので、保護者の皆さんは都合の良い時間に視聴できるのです。このオンライン保護者会の方式なら、距離も時間も超越できます。

 長期化するコロナ禍という逆境の中、いかにして学校行事を実施するか?鍵はICT(情報通信技術)です。西高は、一人一台タブレット端末の先進実践校として今年度4月にスタートし、わかりやすい授業の創造、生徒同士の協働学習、リモート生徒集会開催、オンライン生徒会選挙の実施など実践を重ねてきました。そして、今回のオンライン保護者会に代表される保護者とのデジタルコミュニケーションの充実に至っています。これらの実践が日本教育工学協会に高く評価され、この度、「学校情報化優良校」の認証を受けました。この認証を受けるのは熊本県の高校では西高が初めてです。

 ICTを日常的に取り入れた農業をスマート農業と呼びます。ICTを市民の生活につなげて利便性を高めている都市をスマートシティと呼びます。西高は、ICTを日常の教育の場に溶け込ませ、空間的、時間的に学校機能をより豊かにした「スマートスクール」を目指します。

 学校教育のICT化はフロンティア(未開拓領域)です。トライ&エラーの連続ですが、学校挙げて取り組んでいきます。いつの時代にもフロンティアはあるのです。定年近い私ですが、挑戦できるフロンティアがあることは喜びです。

 「校長室からの風」

 

パラアスリートに励まされる日々 ~ 東京パラリンピック

 東京パラリンピックの競泳男子400m自由形及び200m個人メドレー(いずれも視覚障害クラス)で、熊本市出身の富田宇宙選手(32歳)がそれぞれ銀メダル、銅メダルを取るという快挙を成し遂げました。新型コロナウイルス第5波に覆われている熊本県にとって明るいニュースです。しかも、富田選手は、熊本西高と関係が深い方で、二重の喜びに浸っています。
 富田選手は済々黌高校出身で、同校在学中、水泳部で活躍されました。その時、富田選手を指導したのが米田教諭で、現在、熊本西高の保健体育教諭で水泳部顧問です。米田教諭の話によると、富田選手が眼の病気にかかったのは高校2年生の秋でした。卒業後も親交は続き、視力が低下する中、パラアスリートの道を進む富田選手を米田教諭は応援しました。東京パラリンピックがコロナパンデミックの影響で1年延期となった昨年、米田教諭は富田選手を西高に招き、西高のプールで練習する機会を設けました。そして富田選手は、西高水泳部員達に対し練習法はじめ多くのアドバイスをされたそうです。富田選手のメダル獲得が決まると、西高Instagramでも快挙を喜ぶ水泳部員の声があがっていました。
 米田教諭から富田選手の話を聞く中で、私が最も印象に残ったのは、「私が出会った生徒の中でも特に目の力、眼力が強かった」という言葉です。この言葉は西日本新聞にも紹介されていました。困難に巻き込まれても屈しない、富田選手の意志の強さを象徴していると思います。
 富田選手は水泳競技ですが、視覚障害の陸上競技ではガイドランナー(伴走者)の存在に引き付けられました。重度の視覚障害の選手と短く細いロープで手をつなぎ、「選手の目」となって伴走し、競技の安全を支える役割を担っています。これまでの長く苦しい練習期間を一緒に乗り越えてパラリンピックの大舞台に出場した、まさに一心同体の二人です。陸上競技短距離のある種目では、二人をつなぐロープが切れ、レースを途中で断念するシーンが見られ、テレビ観戦していた私は息を呑む思いに包まれました。
 東京パラリンピックの競技の様子が連日、テレビ中継されています。これほど多様なパラスポーツがあるのか驚く日々です。そして、様々な障がいのある選手達が自分の有する運動機能を精一杯発揮する姿に、気持ちが揺さぶられます。
 西高生の皆さん、現在は部活動もできず、閉塞感に包まれていると思います。今こそ東京パラリンピックのテレビ観戦を勧めます。9月5日閉会ですから、期間はあと5日間です。パラアスリートのパフォーマンスを観ていると、「人間とはいかに素晴らしいものなのか」という深い感慨に包まれます。

「校長室からの風」

ICTの日常化 ~ コロナ禍を乗り越えるために

 月曜日朝の西高の1,2年生の授業では新しいことを始める緊張感に職員が包まれていました。ホームルームで授業する担当者が隣のクラスで授業を受けている生徒達に、「声は聞こえているか?」と問います。その声は、廊下を経て肉声と混じり、共鳴します。また、カメラは定点から授業を撮影しているため、授業担当者の姿はしばしば画面から消えます。隣のクラスの生徒にとっては声だけの授業となります。英語の発音は、スピーカーからハウリングして聞こえ、明瞭には聞こえません。ICT(Information  Communication Technology 情報通信技術)に不慣れな職員には戸惑いもあります。しかし、学校として一歩踏み出したのです。コロナ禍を乗り越えるためにはICTの力が必要なのです。
 西高は8月25日(水)に2学期を開始し、2週目に入ります。本県の新型コロナウイルス感染状況は厳しさを増しており、9月12日(日)までの「まん延防止措置期間」は時差登校(30分遅らせての9時始業)、短縮授業(45分)、1,2年生の分散登校(午前と午後の交互)、部活動休止等の対応に努めていますが、今週からさらに対応のギアを上げました。
 分散登校の1、2年生は、教室で授業を受ける人数を半分程度に減らします。登校したクラスの人数を近隣の教室に二分します。そして、一方の教室で教科担当者が授業をし、もう一方の教室へ授業動画配信するのです。配信を受ける側の教室では前方のスクリーンに授業動画が映し出されます。また、もう一工夫する担当者は、生徒一人ひとりが持っているタブレット端末に授業動画が届き、手元でも確認できます。さらに、濃厚接触者や基礎疾患があって自宅待機している生徒達も、この授業動画を自分のタブレットで受け取ることができます。すなわち、リアルタイムで遠隔授業に参加できるのです。
 他校では、たとえば出席番号の奇数、偶数に分け午前と午後に登校させ、同じ授業を教科担当者が二回実施する方式をとるところが多いようです。しかし、西高は、学年及び学級の一体性を重視しました。離れている者をつなぐICTの特性を活かしたのです。一つの教室での対面授業が最も良いことは自明です。しかし、コロナ禍でそれができないからこそ、分散した者をつなぐICT教育を推進するのです。登校できない在宅の生徒達にとっても、学校の授業と繋がっているという心理的な一体感は安心感につながると思います。
 ICT教育はもう特別なものではありません。タブレットは生徒の日常の文房具です。「ICTの日常化」の時が来ました。離れた教室を、自宅と学校を、学校と社会をオンラインで結び、毎日、毎時間、活用していきます。

 「校長室からの風」

「みなさん、がんばりましょう」 ~ 多難なスタート

 「2学期は始まりますが、不自由な学校生活となります。けれども、皆さん、がんばりましょう!」
 8月25日(水)の始業式の後、生徒会長の濱﨑さん(2年)が全校生徒にオンラインでメッセージを発信しました。校内に爽やかに響きました。
 新型コロナウイルス感染症の第5波の影響で熊本県は9月12日(日)まで「まん延防止等重点措置」が適用されており、2学期再開の熊本市域の高校もこれまで以上の感染防止策をとることが求められています。県教育委員会の方針をふまえ、本校の対応は次のとおりに定めました。
一 学校全体
  始業を30分遅らせ9時開始とし、授業は短縮45分で実施し、課外授業や部活動は休止とする。但し公式大会の2週間前から部活動は全体練習を行ってよい。
二 3年生
  受験、就職試験がこれから始まる時期であり、進路実現の重要性から一日6時間授業を実施する。
三 1、2年生
  午前と午後に学年が分かれて登校(分散登校)、それぞれ3時間授業実施。昼食を学校でとらない。教室の人数を通常の半分にするため、授業を2グループに分け、一方のグループは授業をオンライン配信する。登校しない学年の担当者が補充指導にあたる。
四 欠席している生徒
  濃厚接触者や体調に不安があり登校できない生徒に対して、時間割通りの授業のオンライン配信を行い、自宅においてタブレットで受信し授業に参加できる。
 

 このように2学期のスタートは多難なものとなりました。分散登校する1、2年生は午前と午後を交代し、毎日、半日は登校しますが、全校生徒がそろうことはありません。不規則で不安定な学校生活が当面続くことになります。しかし、この困難な状況に対し、学校はICT教育の特性を発揮し対応したいと思います。一人一台タブレット端末が整備されている西高の力が問われています。
 今朝、2年生の昇降口にボードが掲げられ、今日は午後に登校予定の生徒達を励ます言葉が書かれてありました。この言葉通り、「できる範囲で、できる環境で、できるだけの努力をしていこう」という思いを生徒の皆さんと私たち教職員が共有し、難局を乗り切っていきましょう。

「校長室からの風」

「多様性と調和」 ~ 2学期始業式

 8月25日(水)、熊本西高は2学期始業式を迎えました。
 新型コロナウイルス感染症拡大に歯止めがかからず、お盆の故郷への帰省も自粛するよう呼びかけられた、非常事態の夏でした。今月中旬には停滞前線によって一週間にわたって大雨となった異常気象の夏でした。これまで当たり前だったことが、当たり前にできない不自由な夏でした。それは今も続いています。
 しかし、この困難な状況の中、7月下旬から8月上旬にかけインターハイこと全国高校総体及び全国高校総合文化祭が実施され、西高から22人の生徒の皆さんが参加、出場できたことは大きな意義があったと思います。始業式に先立ち、全国大会を体験した6つの部活動の代表者が、その報告をスタジオで行い、各教室へオンライン配信されました。コロナ禍の中、大会が開催されたことへの感謝の思い、そして全国大会のレベルの高さ、そこで勝つことの難しさをそれぞれ述べ、最後に異口同音に「今回の結果は悔しい」と語りました。全国6位入賞を果たしたウエイトリフティングの西田君(3年)でさえ、「表彰台を狙っていたので悔しい」と言いました。
 「悔しさ」こそ、若人が成長する原動力だと私は思います。「皆さんは特別な体験ができた。このことを誇りに思って欲しい。そして、次の目標を自ら立て、進んで欲しい」と励ましました。
 始業式の校長講話(オンライン配信)では、東京オリンピック、そして昨夜開幕した東京パラリンピックの共通テーマ「多様性と調和」(Diversity  and  Harmony)について語りました。人種、性別または自らの性認識、言語、宗教、政治そして障がいの有無など様々な面で違いを受け入れ、そのうえで共通のルールのもとフェアに競い合うオリンピック、パラリンピックは、まさに多様性と調和にふさわしい世界イベントだと思います。オリンピック競技種目も33競技、339種目と多種多様となり、東京大会ではスケートボード、スポーツクライミング、サーフィンなどの新しい競技が加わる一方、わが国の伝統的な武道である空手が脚光を浴びました。
 生徒の皆さん、世界はますます多様性を認め合い、共に生きていく共生社会へと向かっています。同じ西高生であっても、性格や趣味、価値観が違う人がいるのは当たり前です。自分と違う他人がいるからこそ、自分の個性が輝くのです。西高生一人ひとりがお互いの良さと違いを認め合い、高め合っていくことを期待しています。
 2学期が始まりました。しかし、9月12日までの蔓延防止期間は、短縮授業や1,2年生の分散登校などで乗り切ろうと考えています。変則な日程が続きますが、かけがえのない学校生活を一日一日、大切にしていきましょう。

「校長室からの風」

中学生の皆さん、ようこそ西高へ ~ 中学生体験入学

 朝8時を回った頃から、正門、西門から自転車で入ってくる中学生の姿が目立つようになりました。来校を歓迎する太鼓部の勇壮な太鼓の音が響きます。部活動紹介のチラシを配付する袴姿のなぎなた部の女子生徒たちが中学生を待ち構えています。この日のために用意したJR熊本駅及びJR西熊本駅と西高を結ぶ臨時貸し切りバス(2台)、そして送迎の保護者の車が次々と到着します。

 令和3年度の西高オープンスクール「中学生の体験入学」を7月30日(金)に実施しました。新型コロナウイルス感染対策のため、分散・自律型の体験入学を企画しました。30日(金)を午前と午後の部に分け、8月の20日(金)の午前にも実施予定です。受付した中学生の皆さんは8人~10人の小班に分かれてもらい、先ず教室に入ります。そこで西高の概要及び体験入学の要領を担当の生徒が説明します。その後、各班の案内役の生徒二人が、中学生の希望も聞きながら、模擬授業(国語、数学、英語、公民)の教室や文化部活動体験の教室、そして広く校内を巡ります。それぞれのプログラムは10分~15分です。

 西高の「中学生体験入学」は、生徒が前面に出て活躍します。駐輪案内、受付、教室での説明、班の案内(ガイド)、そして各部活動の参加体験型プログラムも西高生が運営するのです。この「中学生体験入学」のボランティアスタッフの西高生はおそろいの青のTシャツ姿です。また、職員はレモンイエローのポロシャツを統一で着ます。文化部のプログラムではパソコン教室でのeスポーツ体験、礼法室の茶道体験などは特に人気があるようで、班が順番待ちする光景が見られました。また、ユニークなものとして、西高の売店体験として飲み物とパンをプレゼントしました。

 クライマックスが午前10時半と午後2時半から体育館で行われる体育部活動パフォーマンスです。それぞれの部活動の代表の生徒達がユニフォーム等の姿で精一杯のおもてなしのパフォーマンスを演じました。音楽に合わせての5人でのなぎなた演舞、肉体美を誇示しての男子水泳部の紹介など、観覧の中学生から拍手や歓声、笑い声が響き、会場は一体感に包まれました。

 様々なプログラムを体験する中学生の皆さんの顔は輝いていました。ちょっと年齢が上のお兄さん、お姉さんである西高生の歓迎の気持ちが十分に伝わっていると思いました。数年先の少し未来の高校生の自分が見えましたか?

 西高の校訓は「清・明・和」です。清らかで、明るく、和やかな西高の雰囲気を中学生の皆さんに感じてもらえたでしょうか?猛暑の中、午前の部に約200人、午後の部に約100人の中学生が来てくれました。心から感謝します。

 8月20日(金)の午前にもう一回「体験入学」を開催します。

 「GO WEST!」 中学生の皆さん、参加をお待ちしています。

吹奏楽部、「銀メダル」 ~ 熊本県吹奏楽コンクール

 「今度コンクールに出演します! ぜひ演奏を聴きに来てください!」
 7月の上旬に、吹奏楽部の部長の中川君(3年)と副部長の古賀さん(3年)が校長室を訪ねてきて、案内状を手渡してくれました。長引くコロナ禍で、高校生の吹奏楽大会はこの一年半、ほとんど中止となっていました。久しぶりにライブの演奏を聴くことができると、当日を楽しみに待ちました。
 7月24日(土)、高等学校Aパート(大規模編成)の吹奏楽コンクールが県立劇場コンサートホールで開催されました。30校が参加し、朝9時45分から夜の7時半まで演奏が続きます。熊本西高校は19番目の出演で午後4時8分から20分までの12分間が演奏時間です。観覧は保護者と学校関係者に限られていましたが、会場のホールは大勢の観客で埋まっていました。コロナウイルス感染対策で、席は一つ空けで座ることになっていましたが、久しぶりのコンクールで期待感が場内に漂っていました。
 いよいよ西高の出番です。部員は総勢25人。40人~50人台の大規模校が多い中、Aパートでは少人数の編成です。最初が共通課題曲「エール・マーチ」、そして次に自由曲として選んだ「斑鳩(いかるが)の空」です。演奏が始まると、人数の少なさの不安は払拭されました。大規模校に負けない力強いサウンドが響き、聴く者に届きました。学科や学年、クラスは異なり、一人ひとりの性格や個性も違いますが、それぞれの楽器でパートを担当し、全員で一つの楽曲を創り上げる吹奏楽の魅力を実感できた時間でした。コロナパンデミックによって忘れかけていた時間でした。
 指揮棒を振られた顧問の寺本教諭は、「少ない人数ながらそれぞれが力を発揮し良い演奏をしてくれた」と生徒達を称えられました。審査の結果は銀賞でしたが、ここ10年ほど銅賞に甘んじていたので、大きな成果と言われました。私から見ると立派な「銀メダル」に値する演奏だったと思います。
 このコンクールを区切りに3年生は吹奏楽部から引退し、進路実現に向かって全力で取り組むことになります。吹奏楽部部員はまた少なくなりました。しかし、1、2年生の部員達は今週も毎日、音楽室及びその周辺で練習しています。
    明日の30日(金)は、中学生の体験入学を西高で行います。来年度の入学生に対して、西高吹奏楽部のサウンドを印象づけて欲しいと期待しています。

水の恩恵 ~ 1学期終業式

 今日は、涼しい話題をと思い、「水」をテーマに選びました。

 生命は水の中で生まれたと言われます。年齢で少し差はあるようですが、人間の体は平均して約70%が水でできています。水なしでは生きられません。断食や僧侶の修行でも水だけは摂取して良いとなっているのはそのためです。

 さて、ワクチン接種は進んでいますが、この夏も、マスクの着用、こまめに手洗いとうがい、そして部屋の換気といった基本的なコロナ対策に取り組まなければなりません。私たち日本人にとって手洗いやうがいは子どもの頃から当たり前の行動で、習慣化しています。

 しかし、世界にはこれが簡単にできない国、地域が多く存在します。国連のデータによると、不衛生な水の生活環境で暮らす人が45憶人もいるとのことです。世界の人口が78億人ですから、6割近い数字となります。21世紀の最大の資源問題は水不足だと言われています。20世紀後半からの急激な人口増加に水の供給量が追いついていないのです。水は日々の暮らしだけでなく、農業や工業でも重要です。水は、健康、環境、経済と多くの社会要因と密接に関わっています。水不足が解決されなければ持続可能な社会は成り立ちません。

 このような世界の水問題事情から考えると、日常、飲料水で手洗いやうがいが存分にできる私たちはなんと恵まれているのでしょうか。この水の恩恵は、わが国の自然環境だけでなく、井戸を掘り、山に水源の涵養林を植え、上水道を整備してきた先人たちのお蔭にほかなりません。近年はシャワーや洗車など日本人の生活上の水の無駄遣いが問題になっています。あらためて、限りある水に対して、私たちは謙虚な気持ちになりたいと思います。

 生徒の皆さん、この夏、手をこまめに洗いましょう。手を洗うことは涼しく気持ちよい行為です。一日に幾度も洗いましょう。そして水を飲みましょう。熊本市では蛇口をひねれば天然のミネラルウォーターが出てきます。阿蘇に降った雨が20年かけて地下水として磨かれ、安全で安心な水道水となります。体育系部活動の皆さんは、熱中症予防のためにもこまめに水を飲みましょう。

 西高から3㎞しか離れていないアクアドームで、今、ドイツのオリンピック水泳チームが直前合宿をしています。残念ながら、練習は非公開ですが、東京オリンピック開幕が近づいたことを実感します。コロナパンデミックの中、どんなオリンピックになるか世界も注目しています。東京オリンピック・パラリンピックが無事に開催できることを皆さんと共に願いたいと思います。

 明日から夏季休業です。2021年(令和3年)の夏は人生で一回きりです。皆さんが自分の成長のために、一日いちにちを大切に過ごすことを期待し、1学期終業式の講話を終えます。

「生まれてきてくれて 有り難う」 ~ 性教育講演会

 西高と同じ熊本市西区の島崎町に慈恵(じけい)病院というキリスト教精神を母体に設立された病院があります。産婦人科、内科、小児科などがある総合病院ですが、「こうのとりのゆりかご」という取り組みで全国に知られています。出産しても、様々な事情で自分では育てられず追いつめられた親が、匿名で赤ちゃんを預けることができる場所が慈恵病院にはあります。何よりも、一人では生きていけない新生児、赤ちゃんの命を救うため、緊急避難場所としての受入れを慈恵病院は15年近く続けておられます。このような実践は我が国では熊本の慈恵病院だけが行われており、心から敬意を表します。

 慈恵病院で看護部長をお務めの竹部智子様に講師をお願いし、7月15日(木)、西高生1,2年対象の「性教育講演会」を実施しました。慈恵病院にいらっしゃる竹部看護部長と、西高をオンラインで結び、リモート形式で行いました。

 演題は「未来ある皆さんに伝えたいこと ~ 産婦人科の現場から」です。

 最初に、今週、慈恵病院で出産、誕生のお母さんと赤ちゃんが登場されました。赤ちゃんが生まれたときに陣痛の痛みも吹き飛び、お母さんは、赤ちゃんに「生まれてきてくれて、有り難う」と語りかけられたそうです。この言葉は、竹部看護部長の講演の中で随所にリフレインのように出てきました。

 「赤ちゃんは皆、待ち望まれて生まれてきたもの」であるにもかかわらず、なぜ育児放棄、虐待などの問題が起きるのか。それは決して母親一人の責任に帰すべきではないと言われます。相手があって子どもは生まれるものであり、経済面を含めた環境の問題など、母親一人では解決できないことが多いのです。従って、「こうのとりのゆりかご」という場所を設けると共に、慈恵病院では、育てられないと苦悩する親の相談体制整備に力を入れてきたと言われました。

 「こうのとりのゆりかご」の様子が実況で中継されました。特別な門から入り、小道を30mほど歩き、赤ちゃんを預ける扉があります。その扉を開けると保育器とお母さんへのメッセージが用意されています。赤ちゃんを預け、扉を閉めると二度と扉は開かない仕組みになっているそうです。夜、扉の前にたたずむ女性の姿を竹部看護部長さんも目撃されたそうです。

 思春期の男女がお互いを好きになるのは自然なこと、けれども男性と女性では気持ちの表し方や性への感覚が異なっていることをお互い認めあうことが大切だと語られ、改めて生徒たちに対しメッセージを伝えられました。

 「女子の皆さん、もし今、妊娠したら、育てられますか?」

 「男子の皆さん、もし今、妊娠させたら、育てられますか?」

 かけがえのない命と性に関わる産婦人科の現場で、患者さんの一番近くに寄り添ってこられた竹部看護部長の言葉は、優しいものですが、重みのあるものです。心揺さぶられるお話しでした。

全国の舞台へ ~ 全国高校総体(インターハイ)、全国高校総合文化祭

 7月13日(火)に熊本県は梅雨明けし、一気に入道雲が湧き、強烈な日差しが降り注ぎ始めた気がします。盛夏到来。この夏、2年ぶりに全国高校総体(インターハイ)が北信越地域で、全国高校総合文化祭が和歌山県で開催されます。この高校生のスポーツ及び文化の祭典に、西高からは柔道(女子)、なぎなた(女子)、陸上競技、ウェイトリフティング、競技かるた、美術の6つの部活動、合わせて22人の生徒の皆さんが出場します。創立以来「文武両道」の実践を掲げる西高の面目躍如たるものがあります。

 西高の同窓会「西峰会」主催の全国大会出場激励会が7月14(火)放課後に本校で行われました。藤井会長が「皆さんの活躍は同窓生の誇りです」と挨拶され、6つの部の代表に激励金を渡され、励ましの言葉を贈られました。

 女子柔道部主将の大野さんは、「日本一を目指して日々練習してきたので、その目標に向かって頑張ります」と言いました。

 なぎなた部主将の内田さんは「私たちも日本一が目標です」と言いました。

 陸上部主将の荒野君(400mハードル)は「出場する4人でベストを尽くします」と言いました。

 ウェイトリフティング部から1人出場する内田君(102㎏級)は、「表彰台を目指します」と言いました。

 熊本県チームの一員に選ばれた競技かるた部部長の児藤さんは「県代表として頑張ります」と言いました。

 作品が県代表として出品される美術部の久保さんは「高いレベルの作品に接し、他県の生徒と交流してきます」と言いました。

 決意を述べる生徒の皆さんの表情は意志的で、高い目標を見据えているようでした。「自分たちはやればできる」という、ゆるぎない自己肯定感が拠り所になっているに見え、頼もしく思いました。

 この1年半あまり、未曾有のコロナパンデミックによって私たちの生活は大きな影響を受けました。部活動も様々な制約を受け、思うような活動ができなかったと思います。目標を見失いかけたこともあったでしょう。それでも、自己管理に努め、たゆまぬ努力を続けてきたことが全国大会出場につながったと思います。逆境の中でも、生活の軸がぶれず、自らの本分を貫いた姿勢を心から称えたいと思います。

 いよいよ全国の舞台が待っています。大きな舞台は若者をさらに大きく成長させます。全国大会に出場する皆さんが、全国各地から参加する志ある高校生と競い合い、交流し、ひとまわりふたまわり大きく成長して、笑顔で帰ってきてくれることを期待しています。

進化する授業 ~ ICTで広がる授業の可能性

 西高は、今年度、1人1台タブレット端末の先行実践校(18校)に採択され、校内のネットワーク環境が整備されました。そして、授業はじめ生徒の学習場面での積極的なタブレット活用、すべての保護者にアカウントを付与し学校とのペーパーレスのデジタルコミュニケーション促進、また生徒会選挙のオンライン化などに取り組んできたところです。その実践が評価され、7月1日には、ICT特定推進校(県内6校)に選ばれました。

 西高の授業は、ICT(情報通信技術)を進んで取り入れ、変化しています。最近、私が実際に参加した具体的ケースを二つ紹介します。

 7月8日(木)4限目、2年4組(普通科)での「英語」の授業。英語によるディベートが行われました。論題は「日本の大学の授業料無償化をすべき」(University education should be free in Japan)で、このことに対し、肯定、否定の立場に分かれ、ディベートを行いました。英語でディベートに挑戦することは、相当の語彙力がなければ難しく、以前は容易にできませんでした。しかし、生徒達は1人1台タブレット端末を所持しています。即座にGoogle翻訳機能を利用し、表現したい日本語を入力し、瞬時に英語翻訳します。そしてそれをスピーチします。問題は、発音です。知らない単語が多く、たどたどしい発音になりますが、ディベートでは「発音より内容」です。ぎこちなくても伝えたいという気持ちがコミュニケーションの基本だと思います。クラスが3グループに分かれ、ディベートが展開される光景を見ていると、ICT効果を実感しました。

 また、翌日(金)1限目、2年1組(サイエンス情報科)の「科学情報」の授業。崇城大学の星合(ほしあい)教授と本校をオンラインで結び、リモート形式でプログラミング言語「Python」(パイソン)の入門講義が行われました。音声も画像もとてもクリアな状態で、星合先生のわかりやすく丁寧な解説に生徒達の学習理解も進みました。これからの社会では、どんな分野へ進んでもプログラミング言語の学習は必要だと星合先生は言われます。社会の情報化が進む中、その基盤であるプログラミングを学ぶことは重要であり、論理的思考力を鍛え、情報社会の仕組みを理解することにも役に立つと思われます。これまで別の分野と思われていたものを結びつけ、新しい価値を生み出すイノベーションの力の基本にプログラミング的思考力が不可欠と星合先生は力説されます。

 学校教育は未来の社会の担い手を育成するものです。急速な社会の変革の中にあっても、主体的に社会をより良く変えていける人材を育てていきたいと思います。西高の授業はますます進化していきます。ご期待ください。

               英語のディベート授業

               科学情報の遠隔授業

対話への期待 ~ 生徒会と育西会(保護者会)との第1回ミーティング

 「生徒会の皆さんと、こうして話をすることで交流、親睦になればと願っていました。」と育西会の池田会長が冒頭に挨拶されました。こうして、7月8日(木)放課後、会議室にて、生徒会長はじめ生徒会役員の女子生徒5人と保護者代表である育西会の6人の役員さんとのミーティングが始まりました。生徒会顧問の吉田教諭と校長の私は傍聴人の立場で参加しました。

 事前に保護者側からテーマをいくつか提示してあり、生徒会でも話し合いをして臨んでおり、活発な意見交換が行われました。最初のテーマの「制服」については、生徒側から特に積極的に意見が出ました。西高の女子の夏のブラウスは、汗をかくと生地が肌にはりつき、通気性が弱く、男子が着用しているポロシャツの導入を要望するものでした。保護者(母親)からも、ブラウスはアイロンが必用で手間がかかるので、女子のポロシャツ導入に賛成の声が相次ぎました。また、保護者からは、女子のスラックスも導入し、スカートとの選択制にしたらとの意見も出て、生徒達からも賛成の声があがりました。

 また、西高生の約8割が自転車通学生であり、雨の日にはカッパを着用しても制服が濡れるため、始業前に更衣室を開放してもらえないかとの要望が生徒会から出されました。そして、公共交通機関の充実を求める声が双方からあがり、JR西熊本駅からの路線バスがないことの不便さが指摘されました。

 さらには保護者から、西高周辺には街灯が少ないようだが、冬の帰宅時間帯に不安はないかとのお尋ねがありましたが、生徒達からは「だいたい複数で帰るので、特に不安はない」との返答でした。

 生徒と保護者の対話を聴いていて、あらためて気づかされることが数多くありました。学校生活を送る中でこんな点で困っているという生徒の切実な気持ちを重く受け止めました。また、子どもたちに安心、安全な高校生活を送って欲しいという保護者の思いの深さも痛感しました。そして、何より、自分たちで話し合ったことを述べ、自分たちの学校をより良くしたいという生徒会の生徒の姿勢を頼もしく思いました。高校生は、身近な大人(保護者、教職員)を通じて、第三者の世界、即ち社会を見ているのです。若い世代にこそ、現実を変える力があると言えます。

 学校の主人公は生徒です。その生徒を支える立場として、教職員と保護者の存在があります。それぞれ役割は異なりますが、学校をより良くしたいという気持ちでは対等だと思います。

 保護者代表の皆さんと生徒会役員とで、対等に真剣に話し合いが行われました。このような対話の積み重ねこそが、西高発展の基礎になると思います。

夏は来ぬ

 1学期の期末考査が6月25日(金)で終了し、部活動が再開され、西高のグラウンド、体育館は活気が出てきました。特に、夏の全国高校野球選手権熊本大会を控えている野球部は、一段と気合いが入り練習しているようです。夏の甲子園大会が2年ぶりに開催されることは、高校関係者にとっては喜ぶべきことです。本校野球部は7月10日(土)に初戦が予定されています。

 昨日の放課後、野球部の練習の様子を見に行きました。陸上競技場を通らず、西高北門を出て、細い農道を通ってバックネット裏まで行きましたが、周辺の田圃はこの数日で一気に田植えが済んでいることに気づきました。田に張られた水に早苗が映り、爽やかです。その光景を見ていると涼しい風が体を吹き抜けていくような感覚を覚えました。田には周囲の山々が影を落とし、畦には白鷺がいて、清涼な風景です。これらの風景に包まれていると、ふと「夏は来(き)ぬ」という唱歌を思い出しました。

 「卯の花の 匂う垣根に 時鳥(ほととぎす) 早も来鳴きて

  忍音(しのびね)もらす 夏は来ぬ」

                      (明治29年 作詞:佐佐木信綱 作曲:小山作之助)

 唱歌「夏は来ぬ」は、私が子どもの頃によく祖母が口ずさんでいました。時代を超えて愛された歌だからでしょう、小学校の音楽の授業で私も歌った記憶があります。子どもの頃は文語調の歌詞が難しく、意味はよくわからなかったのですが、気持ちが和む優しいメロディは心に残ります。五番ある歌詞の中には、さみだれ(五月雨、梅雨のこと)、早乙女(田植えする娘さん)、玉苗(たまなえ、稲の若苗、早苗とも言う)など初夏の季語がちりばめられており、それぞれの情景を歌い、最後は「夏は来ぬ」(夏は来た)と結ばれています。

 例年、熊本平野の田植えは6月中旬から下旬にかけて行われます。熊本西高校の周囲は田園が広がっており、田植えによって夏到来を実感します。早乙女の田植えは遠い昔の話で、現代は田植機による田植えですが、それでも大切な年中行事で風物詩だと言えます。古代、我が国が「豊葦原の瑞穂国」(とよあしはらのみずほのくに)と呼ばれたことも思い出します。

 水が張られた多くの田の脇道を歩くと、天然のエアコン効果か、涼しく感じられます。汗にまみれて白球を追う西高野球部の生徒達にも、この涼しく優しい風が届くことでしょう。

中学3年生の皆さんへ ~ 西高の体験入学を開催します!

 中学生の皆さん、熊本県立熊本西高校のホームページをご覧いただき、ありがとうございます。各地域で中体連大会が行われている時期ですね。県大会に進出が決まった人もいると思います。今は部活動に全力を注いでいるという人も多いことでしょう。

 そして、3年生の皆さんは高校進学を強く意識する夏の到来ですね。

 熊本西高校では、皆さんの進路選択の一助になればと、夏季休業中に体験入学を企画しました。期日は、7月30日(金)の午前と午後、さらに8月20日(金)の午前です。県内すべての中学校にご案内を送ります。本校のホームページでもお知らせします。また遠慮なく本校にお電話でお尋ねください。

 熊本西高の特色(魅力)は大きく次の4つです。

 

一 「一人ひとりが大きく伸びる学校です」  

  生徒一人一台にタブレット端末が配備され、個別最適な学習指導を行っており、皆さんの可能性を引き出します。そして、校外での探究活動や大学・専門学校での体験入学(アカデミック・インターンシップ)、企業での就業体験(インターンシップ)などの体験学習も豊富です。

二 「多くの出会いが待っています」

  科学や情報を興味深く学べるサイエンス情報科、幅広い学びの中から自分の進路を探す普通科(特進・普通)、トップアスリートを目指す体育コースがあります。そして学校行事や生徒会活動、部活動では学校が一体となります。様々な学びや個性豊かな友との出会いが待っています。

三 「部活動が多彩で活気があります」

   全国的に知られたラグビー部、女子柔道部、なぎなた部をはじめ全国高校総体(インターハイ)に毎年出場する陸上部、水泳部。そして3年前に甲子園に出場した野球部。体育部活動が強いというイメージの西高ですが、文化部も多く活発で、百人一首、美術、書道は全国高校総合文化祭の常連校です。また県立高校唯一のeスポーツ部は人気急上昇です。

四 「学習にもスポーツにも最高の環境です」

   校内すべてにWi-Fi環境が完備したスマートスクールで、タブレットを自在に使えます。また、   7万㎡を超える広々とした敷地で、陸上競技場、ラグビー場、野球場等々。3階建ての体育館には、剣道、柔道、なぎなたの専用道場やトレーニングルームがそろいます。

 

 どこの高校に行こうか迷っている人、中学時代に十分に力が発揮できなかった人、まずは熊本西高で体験入学をしてみませんか? たくさんの先輩たちが皆さんを案内するために、笑顔で待っています。

 中学生の皆さん、常に変化し続ける熊本西高に期待してください。



 

同窓会からの力強いご支援を受けて ~ 同窓会「西峰会」総会

「『西高』は いつでも待っています。

  あなたが巣立ったあの日と同じ場所に、同じ姿のままで-」

 熊本西高校の同窓会「西峰会」のホームページ冒頭に記された言葉です。このホームページはデザインも洗練され、同窓会のお知らせをはじめ充実した内容で、「西峰会」が活発な活動をされていることがわかります。

 6月20日(日)午後、西高セミナーハウスにて、令和3年度同窓会「西峰会」の総会が開催され、ご案内を受け私も出席いたしました。

 「西峰会は、今年度も学校及び在校生に対して積極的に支援していきます!」との藤井俊博会長の力強い言葉で総会は始まりました。これまでも多くのご支援をいただいているのですが、今年度の予算案にも具体的な学校支援の項目が並び、頭の下がる思いとなりました。インターハイをはじめ部活動の全国大会出場への応援や冬に実施する学校行事のチャレンジウォーク(強歩会)への支援、2年前に県立学校として最初に発足したeスポーツ部への活動補助、在学中に留学する生徒への補助金制度も整えてあります。さらには、昨年度から始めた、難関大学志望者の北九州予備校での特別セミナー参加への補助も行われます。同窓生の皆さんの母校への熱い思いを実感しました。

 第91回選抜高等学校野球大会「春のセンバツ」(平成31年3月)に熊本西高校野球部は見事出場を果たしました。その時2年生で甲子園にて活躍し、この春、福岡教育大学に進学した中山君が同窓会総会に出席していました。中山君からは、「甲子園出場した時、同窓会の皆様から盛大な応援をいただいたことが大きな力となりました。」と改めて御礼の挨拶がありました。

 同窓会活動も、長期化するコロナ禍により制限を受けています。毎年9月に開催される熊本市の藤崎八旛宮「秋の例大祭」に、同窓生の皆さんは飾馬奉納団体「西峰会」で参加されていますが、同祭は昨年に引き続き今年度も中止となりました。同窓生と希望する在校生が一緒になって熊本市を代表するお祭りに参加し、連帯感を強める貴重な機会が失われています。「来年こそは生徒と一緒にお祭りに出たいですね」と飾馬奉納のリーダーの方が言われました。私も同感です。

 熊本西高校は3年後には創立50年の大きな節目を迎えます。同窓会の皆さんと一緒になって、さらに発展を続ける次代の西高像を追い求めていきたいと思います。

「For others , with others」 ~ 新生徒会の発足

 令和3年度生徒会役員選挙は6月2日(水)に行われました。生徒会長に2年生2人、副会長に2年生2人、1年生3人が立候補し、「zoom」アプリを活用してのオンライン演説会、そして生徒1人ひとりが所有しているタブレット端末から電子投票方式で実施しました。この電子投票(オンライン投票)は、三密を防ぐ効果が大きくコロナ対策として脚光を浴びていますが、コロナ禍以前から「投票率の向上」、「開票時間の短縮」、「人員の削減」等の観点から注目されていました。すでに一部の地域の地方選挙で導入されています。

 我が国では、5年前に18歳選挙権が導入されましたが、変わらず若い世代の投票率の低さが問題となっています。ネット環境に慣れている若い世代は、電子選挙であれば、そのアクセスの容易さからもっと選挙に参加してくれるのではないかと期待されています。今回の本校の生徒会役員選挙では、先取りして初めてオンライン投票を実施しましたが、円滑に行われ、開票も迅速でした。立候補者もデジタルネイティブの世代らしく、カメラを意識し、自分が生徒会でやってみたいことを箇条書きしたフィリップボード(大型のカード)を掲げるなど堂に入ったもので、頼もしく感じました。

 新生徒会役員の皆さんの認証式を6月14日(月)7限目相当の時間に会議室で行いました。会長の濱﨑さん(2年)、副会長の阿久津さん(2年)と篠塚さん(1年)に私から任命書を手渡しました。そして、自らの意思で生徒会役員の重責を担うことになった書記、会計、庶務等の皆さんの紹介がありました。この様子は「zoom」アプリで映像として伝えられ、各教室で全校生徒が視聴しました。

 この1年間、コロナ禍の中、西高生徒会を引っ張ってきた前生徒会長の児藤さんと、受け継ぐ新長の濱﨑さんが全校生徒に向かって挨拶しました。二人とも気持ちのこもった力強い言葉で、さすがは西高のリーダーと思いました。会長はじめ生徒会役員は、「もっと西高を良くしたい」という進取の精神に燃えています。しかし、役員の思いだけでは学校は変わりません。全校生徒一人ひとりが「私たちの学校、西高」という意識を持つことが大切だと考えます。私も、これから生徒会役員の皆さんと、学校行事のあり方、学校のルール、制服のことなど様々な事について対話をしていきたいと思います。

 新生徒会の皆さん、「For  others, with  others」(他者のために、他者とともに)というモットーで活動してください。そうすればきっとあなた達のところに皆が集まってくると思います。

 新しい西高生徒会が帆をあげました。

社会が皆さんを待っています ~ 2年生「職業ガイダンス」実施

 成年(成人)年齢が2022年4月1日からこれまでの20歳から18歳に引き下げられます。現在の2年生は来年度、全員が「成人」(大人)となります。積極的に社会に参画する姿勢を養うために、西高では様々な取り組みを行っていますが、その一つとして、2年生対象の「職業ガイダンス」を6月8日(火)に実施しました。

 社会の第一線で活躍されている社会人講師の方々をお招きしました。「医療」、「福祉」、「サービス」(飲食・冠婚葬祭・販売)、「建築」、「情報」、「警察」(南署)、「行政」(西区役所)、「教育・保育」の大きく8分野に分かれ、生徒達はそれぞれ興味・関心のある職業分野に参加しました。西高の職業ガイダンスでは、事前に講師から課題を与えられ、その課題について生徒達が調べておくことになります。そして、職業ガイダンス当日に発表し、講師から助言を受けるのです。私は全分野を見て回りたかったのですが、ガイダンスの時間は100分と限られ、4分野の参観にとどまりました。

 「福祉」分野には18人の生徒が参加していました。「高齢者が住みやすい街とは」という課題に対し、女子生徒3人の班が「高齢者が移動しやすい」、「治安の良い」などのキーワードで発表しました。それに対し、講師(県社会福祉協議会)の方から、ユニバーサルデザインの街づくりの理念を説明されました。身近なものでは教室の教壇が一つのバリアであるとの指摘に、生徒達は意表を突かれた表情でした。高齢者だけに特化せず、障がいのある人も含め皆が住みやすい街を目指そうというまとめに生徒達は納得の表情でした。

 「医療」分野は42人の生徒が参加し、ほぼ男女半々でした。熊本県看護協会からいらっしゃった講師(女性看護師)の方が、「看護師という職業は男性の仕事としてとても良いものだと思う」と述べられ、男性看護師の必要性を語られました。また、看護師にとって必要なものとして、アセスメント能力をあげられました。看護アセスメントとは、対象者(患者)の多くの医療情報を適切に分析し、看護上の問題を把握することだそうです。

 「建築」分野の教室では、設計事務所の建築士の方が、住宅設計図を最新のコンピュータソフトで立体的にスクリーン表現されました。ドアを通り、住居の中を自由に行き来でき、まるでそこにいるかのような感覚となる画像に生徒達は引きつけられていました。また、「警察」分野の教室では、市民に寄り添う警察官像を語られ、後半は指紋採取の体験まであり、生徒達は興味を示していました。

 「社会は皆さん(高校生)を待っています。」とある講師の方が言われました。生徒の皆さん、社会で活躍するあなたの未来が見えましたか?

 

西高体育スピリットの発揮 ~ 県高校総体での活躍

 2年ぶりに開催された熊本県高校総体は、サッカー競技など一部をのぞき無事に終了しました。コロナ第4波が収束しない困難なコンディションの中、「無観客」でしたが、各競技とも熱戦が繰り広げられ、高校生の部活動の集大成の場として教育的意義は誠に大きいものがあったと思います。

 連日、熊本日日新聞の高校総体特集記事で、西高アスリート達の活躍が報じられ、胸が躍る思いでした。女子柔道が先駆けとなりました。女子団体3連覇を成し遂げた大野主将のコメントが頼もしいものでした。

 「県高校総体は通過点と思っている。目標は全国制覇です。」

 さらに高い頂を目指し、女子柔道部に慢心はありません。大野主将の気迫のこもった試合や団体優勝メンバー4人の笑顔の写真が掲載されました。

 また、ウェイトリフティング主将の西田君が102㎏級で優勝。バーベルを力強く上げる姿が写真で紹介されました。西田君は全国でトップクラスの実力の持ち主で、全国高校総体(インターハイ)でも上位入賞が期待されます。

 陸上部の躍進も光りました。走り高跳びの自己記録で優勝した2年生の杉山君の顔写真が載りましたが、その他にも三段跳びや投てき部門(やり投げ、砲丸、円盤)での優勝が相次ぎ、南九州大会には男女合わせ10人以上が進出します。インターハイに何人出場することになるのか期待がふくらみます。

 西高伝統のなぎなた部は、女子個人優勝の内田さんの躍動感あふれる試合の写真が載りました。一瞬の動きを捉えるプロの記者の腕前はさすがです。

 そうして、掉尾(ちょうび)を飾ったのがラグビー部でした。昨日、熊本高校との決勝戦を制し、今日の朝刊に「西高、4連覇」の見出しと共に劇的なトライシーンの写真が大きく掲載されました。強豪で知られる西高ラグビー部ですが、連覇を続けることは至難の業です。それは女子柔道部やなぎなた部にも当てはまります。西高を倒すことを目標に他校の生徒は努力しているわけですから、それを上回る努力、精進が求められるわけです。

 努力が実り輝かしい結果を得た生徒達がいる一方、日頃の練習の成果を十分に発揮できなかった生徒達もいます。これが勝負の世界です。負けたこと、自分の目標に届かなかったことなどの悔しい思いが人間を成長させます。勝ったことより敗れたことからの方が多くのことを学ぶと私は思います。

 正門脇に「文化 体育 両道顕彰」の石碑が立っています。西高が開校するや文化部体育部ともに特筆すべき成績を次々と残していったため、昭和59年に創立10年を記念し育西会が建立されました。この精神は令和の今日も引き継がれています。

 体育の先生方が日頃唱えられる西高体育スピリットが存分に発揮された今年の県高校総体でした。

 

凛として ~ 県高校総体「なぎなた競技」開催

 なぎなた部は熊本西高が誇る伝統ある部活動です。過去、全国高校総体(インターハイ)女子団体5連覇をはじめ、個人戦の日本一を幾人も輩出し、本県の「なぎなた競技」を牽引してきました。専用の道場を有している学校は県内に他にはありません。

 コロナ禍の中で無観客という対応をとり、2年ぶりに熊本県高校総体が開催されました。「なぎなた競技」は5月30日(日)に5高校、22人の選手(女子19人、男子3人)が集結し、熊本西高校体育館で実施しました。なぎなた部の日頃の練習を見てきた私にとって、初めての試合観戦となりました。

 長さ2m10㎝の木製の薙刀(なぎなた)を持ち、一見、剣道と同じ防具を着けますが、すね当てがある点が特色です。メン(面)、コテ(小手)、ドー(胴)、スネ(脛)を打突(だとつ)し、勝負します。なぎなたの動きは速く、目を離せません。一瞬で決まります。しかし、当たっているようでも、なかなか審判の旗が挙がらないこともあります。同席した熊本県なぎなた連盟副会長の一川治子先生が、「なぎなたは気・剣・体の一致が大切です」と解説されました。コロナ感染対応で、選手達はマスクの上にフェイスシールドも付け、その上に面をかぶり試合をします。試合3分、延長2分ですが、時間が立つに伴い、選手の荒い息遣いが伝わってきます。困難なコンディションでの試合となりました。

 「なぎなた競技」には試合とは別に演技競技もあり、2人で型を演じます。防具は着けず、白い稽古着と黒の袴姿です。「この白と黒の組み合わせこそ我が国伝統の最もシンプルな色です。」と一川先生はおっしゃいました。背筋が伸びて姿勢が誠に美しく、礼に始まり礼に終わる所作は品格があります。なぎなたは、弁慶の薙刀でも知られるように元来は男性が扱う武器だったのですが、江戸時代に入り、武家の女性の武具として普及したそうです。幕末の戊辰戦争の時、会津藩の武家の女性たちが薙刀を手に官軍と戦った歴史があります。

 一川先生は熊本西高の体育コース発足(平成3年)から20年間、西高なぎなた部を御指導いただき、多くの人材を育成されました。現在の本校なぎなた部の指導者である齊木教諭も教え子の1人です。インターハイや国体など数々の西高なぎなた部にかかる思い出やなぎなた道にかける熱い思いを語られました。

 伝統とは精神の継承です。一川先生から受け継いでいる、心身とも凜とした姿勢で西高なぎなた部の生徒は試合及び演技に全力を尽くしました。

西高生の皆さん、勝負の時です ~ 県高校総体、県高校総合文化祭

 「ぱーん!」と畳を手で叩く音が響き、札が飛びます。セミナーハウス2階の和室で行われている「競技かるた」部の練習は、張り詰めた緊張感があります。小倉百人一首を用いての競技かるたは、知力と体力、そして何より集中力が求められるものです。部長の児藤さん(3年生)によると、公式戦では一試合が1時間に及ぶこともあり、勝ち進むと心身ともくたくたになるそうです。「対戦型スポーツです」と笑って語ってくれました。

 高校生の文化活動の祭典である県高校総合文化祭は5月28日(金)~29日(土)に開催されます。西高「競技かるた」部は、7月の「全国高等学校かるた選手権大会」(滋賀県大津市近江神宮)への出場をかけて出場します。児藤さんは先行競技で全国高校総合文化祭(和歌山県)への個人出場を決めていますが、「競技かるたの聖地である近江神宮へ団体で行きたい」と意欲満々です。県立劇場で開催される総合文化祭は、コロナ感染防止の困難さもあり、展示部門は中止、ステージ部門は無観客での発表となり、本校の文化部で出場するのは「競技かるた部」だけです。

 一方、県高校総体は、無観客の方針のもと全ての競技が実施されます。すでに先週末に一部競技が先行実施され、西高サッカー部は1回戦快勝、好発進しました。多くの体育部活動にとっては明日5月28日(金)から30日(日)が本番となります(一部競技は31日まで)。今週、各部活動の練習を見て回りましたが、その士気の高さは観る者に迫ってきます。3年生の多くはこの高校総体を区切りに部活動を退き、進路希望達成に向かって学校生活のシフトを切り替えます。高校総体直前の今は、全員でのかけがえのない時間を惜しむ雰囲気があります。

 梅雨の影響で水たまりが残るグラウンドで泥だらけになり迫力あるプレーをするラグビー部。屋根が付いているとは言え、水温は低めのプールで黙々と泳ぎ続ける水泳部。本番を想定した試合形式の練習をタブレット端末で動画撮影している剣道部。怪我で高校総体に出場できない部員が一生懸命選手達の練習をサポートする柔道部。

 西高生の皆さん、勝負の時です。皆さんはこれまで厳しい練習を積み重ねてきました。そのことが試合に臨むにあたって唯一の拠り所となります。そして、楽しい時も苦しい時も連帯してきたチームメイトの存在が支えです。

 コロナ禍の逆境の中、高校総体が行われることは、私たち高校教育関係者にとって、オリンピック開催と同じくらいの大きな意義があります。

             県高校総体直前の体育部練習風景

科学的思考力があなたの身を守る

 新型コロナウイルス感染症の第4波に社会が覆われていますが、目に見えないウイルスや細菌による感染症パンデミックに人類はこれまでも直面してきました。中世ヨーロッパでは、ペストが猛威を振るうと人々がパニックに陥り、魔女の仕業と思い込み、特定の女性を集団で迫害する「魔女狩り」が起こりました。病原菌の正体が肉眼で見えないため、人々は恐怖から理性を失い、偏見で判断が狂い、異常な行動に走った事例が歴史上いくつも確認されています。

 しかし、困難に遭遇しながら人類も学習し、考える力が発達してきました。19世紀中頃、イギリスのロンドンでコレラが大流行しました。今でこそコレラはコレラ菌(細菌)で汚染された水で感染することが分かっていますが、当時の人々は空気を伝わる悪臭がなせる病と考えていました。その中で、ジョン・スノウという医学者が疑問を持ちます。同じ地区の住人で、コレラに罹患する人とそうでない人がいることに気づいたのです。同じ空気を吸っていてもコレラになる人とならない人の違いは何かとスノウは調査を進め、飲料水(井戸)が異なることを突き止めました。そして、コレラは空気から感染するのではなく、汚染された水で感染するという仮説を立て、汚染されている井戸を使わないという対策を提案し、感染拡大防止につなげました。

 コレラ菌が顕微鏡で「発見」されるのはそれから30年も後のことでした。コレラ菌そのものは見えていなくても、スノウは論理的に考え仮説を立て、コレラ菌が井戸の中にいることを見抜いたのです。これが科学的思考力だと思います。

 今、私たちの周りは「情報」であふれています。いったいどの「情報」が正しく、正しくないのか、不確かな「情報」の洪水です。そして、私たちは、自分が見たい、あるいは信じたい「情報」を選ぶ傾向にあると言われます。「情報」を比較し、体系化し、「知識」とすることで初めて判断の基となります。データや数字を基礎として自分で考える力こそ、情報過多の現代で求められるものです。科学的思考力は、文系・理系の枠を越え、全ての人に必要なものです。

 この度のコロナパンデミックは20世紀初頭のスペイン風邪(インフルエンザ)以来、100年ぶりのものでした。感染症パンデミックや大規模な自然災害は一般の人間の寿命を超えるスパンで起きます。個人の経験では対応できないのです。自分の経験や好悪の感情など自己本位ではなく、情報を精選して根拠(エビデンス)をもって考え、判断する「科学的思考力」を高校生の時に培いましょう。

 西高は、生徒の皆さんの科学的思考力を育てていきます。

 

 *  お薦めの本 

『LIFE SCIENCE ~ 最先端の生命科学を私たちは何も知らない』(吉森保 著) 

 科学的思考力とは何かをわかりやすく教えてくれます。西高図書室の新刊コーナーにあります。

近づく高校総体

 「コミュニケーション!コミュニケーション!」と部員同士が声を掛け合い、楕円のラグビーボールを回し、走っています。ラグビー部の練習は見ていて迫力があります。隣のサッカー部でも、シュート練習に多くの部員が交代で流れるように取り組んでいます。次々とゴールネットに突き刺さるボールは勢いがあります。また、柔道、剣道、なぎなたの各道場では邪魔にならないように隅で見るのですが、私の姿を目にすると生徒がパイプ椅子を持って走ってきます。「お客さんではないから、気を遣わないように」といつも言っているのですが、その迅速な対応は有難く思います。

 体育部活動の練習を見て回ると、日ごとに熱を帯びてきていることがわかります。早朝、また放課後、自主練習として校内を走っている生徒の数も増えました。高校総体が近づいています。一部の競技は5月22日(土)~23日(日)に先行実施、そして本番は28日(金)から30日(日)です。

 陸上競技の練習風景はチーム競技と異なります。トラックやフィールドの種目毎に数人が固まり、黙々と反復練習を行っています。本校はやり投げ、円盤、砲丸などの投てき種目を専攻している生徒が比較的多いのが特色です。中には、中学時代から取り組んでいるスペシャリストもいます。彼らは一投一投、確かめるように投げ、一定のインターバル(間隔)を置くトレーニングを行っています。小休止の時に言葉を交わすと、皆、高校総体そして南九州大会、さらには全国高校総体(インターハイ)への思いを語ってくれます。恵まれた練習環境がある西高で陸上競技に打ち込みたいとの気持ちで、球磨郡はじめ遠隔地から本校を志望してきてくれた生徒が幾人もいます。

 高校3年間と言いますが、多くの生徒にとって部活動に専念できるのは2年数ヶ月です。大部分の生徒たちは3年の高校総体を区切りに部活動を退き、入試・就職の進路対策に移行することになります。3年生は今、「時間は有限だ」ということを実感していることでしょう。仲間と過ごす限られた時間の集大成が高校総体と言えます。

 5月15日(土)に熊本県が梅雨入りしました。異例の早さです。雨天が続くと戸外での練習に大きな支障が出てきそうです。そして、より心配なことが新型コロナウイルス第4波の広がりです。5月16日(日)から本県は蔓延防止重点措置の対象となりました。この困難な状況の中、感染対策を取りながら、高校総体で実力を発揮できるよう、各部活動で創意工夫が必要となります。

 2年ぶりの高校総体に向け、生徒たちをどう支援していくか、私たち教職員に大きな責任が求められています。

            体育大会での部活動対抗リレーの様子

 

 

西高周辺ぶらり散策(その2) ~ 小島地区

 熊本西高の西門から直線の農道を南へ約400m行くと、県道28号との交差点があり、その南側に西区役所があります。赴任の挨拶に4月初旬に訪問したところ、甲斐区長さんから「西高の生徒の皆さんのアイデアと行動を期待しています」と温かい言葉をいただきました。防災、観光をはじめまちづくり全般にわたって高校生に参加の機会を与えて頂いており、感謝しています。西高としても、熊本市西区にある唯一の県立高校として、西区のコミュニティスクールでありたいと願っています。

 さて、西区は、北は芳野(よしの)や河内(かわち)、東は鹿児島本線を超えて崇城大学のある池田までと広い面積を有していますが、区役所は最も南の小島校区にあります(小島2丁目)。「校長室からの風」ですでに紹介した、熊本市で最も標高の低い山(29m)、御坊山(おんぼさん)がこの「小島」(おしま)の地名の由来と言われます。西区役所から西方およそ500mのところに御坊山はあります。西高からいつも眺めていましたが、先般の大型連休中、「御坊山登山」をしました。麓の石鳥居をくぐり山頂の小島阿蘇神社まで100段余の急な石段です。まさに胸突き坂です。山の周囲(約400m)は遊歩道が敷かれ、地元の人々に親しまれていることがよくわかります。

 御坊山からさらに西へ進み、南北に走る国道501を越えると、小島町の中心部となります。坪井川と白川に挟まれた三角州地帯と言えます。ここで見逃せない史跡があります。明治天皇行在所(あんざいしょ)跡です。明治5年、明治天皇が長崎から海路、熊本行幸(ぎょうこう)されました。有明海の沖合で軍艦を下船、艀(はしけ)に乗り換え、坪井川河口の小島港に到着され、ここで一泊された記念すべき場所です。木造2階建ての日本家屋と庭園が往時を偲ばせます。

 明治天皇行在所跡のすぐ西側に小島小学校があり、児童の元気な声が響いています。小島小学校正門脇に、古色蒼然とした石碑が立っています。大津波の災害の歴史を伝えるものです。1792年(寛政4年)、島原半島の眉山が噴火、崩壊、有明海で大津波が発生し、対岸の肥後に押し寄せ、沿岸部で甚大な被害が生じました。「島原大変、肥後迷惑」と呼ばれる大災害の記録を後世に継承しています。この付近は海抜2~3mでしょうか。過去の記録を伝えることは、防災上、重要な意義があると思います。

 小島町界隈を歩くと潮の香りがして、はっとします。有明海(島原湾)はすぐそこです。「西高は、海に近い学校」だと気づかされます。

  御坊山の登山口      明治天皇行在所跡        「大津波」碑

 

西高周辺ぶらり散策(その1) ~ 城山校区から高橋校区

 西高が位置する熊本市西区城山大塘(じょうざんおおども)は小学校単位で言えば城山校区に当たります。その城山校区自治協議会が5月12日(水)に城山コミュニティセンターで開かれ、私も出席しました。第1~11町内の自治会長さんはじめ社会福祉協議会、老人会、青少年健全育成、民政児童委員、消防団等の地域の各団体、西区まちづくり担当、保健子ども課の行政、そして城山小学校、三和中学校、西高と学校も集いました。

 各団体の紹介や活動報告がなされましたが、西高への親近感、期待感を口に出される方が幾人もいらっしゃいました。「地域の行事に高校生が来てくれると本当に助かる!」、「わしの息子も西高を出たばい」等。あらためて、西高が地域の皆さんに支えられていることを実感しました。

 西高には県内広く80余校の中学校から生徒たちが通学しています。しかし、学校の所在地であるこの城山校区、そして広げても西区こそが学校の拠り所(コミュニティ)になると思います。この1年あまりはコロナ禍で機会は減りましたが、ボランティア活動、就業体験(インターンシップ)、探究活動と地域に出かけ、関わる西高生は少なくありません。

 城山校区のシンボルは、高橋稲荷神社です。日本五大稲荷の一つに数えられ、商売の神様として知られています。社の起源は室町期にさかのぼりますが、現在地に建立されたのは江戸時代前期です。背後の城山(標高47m)は中世には山城だったと伝えられ、校区名の由来の山です。傾斜地で高低差のある境内の清掃ボランティアに西高生がよく参加します。また、参拝用の階段沿いに、西高美術部が制作寄贈したパネル版の絵が並びます。その年の干支をテーマとしたものです。また、同社の北、坪井川を渡る高橋稲荷大橋は朱色で目立つものですが、現在、この橋から下流にかけて両岸を結び鯉のぼりが泳いでおり、初夏の風物詩です。この鯉のぼり設営にも西高生がボランティアで関わっています。

 高橋稲荷大橋の両岸周辺は、高橋校区となります。城山校区に隣接し、面積は小さいのですが、歴史ある地域です。江戸時代、高橋は熊本城下の舟運物資の集散地で、坪井川の港町として栄えました。城下町(熊本)、菊池川河口の高瀬(玉名)、緑川河口の川尻、球磨川河口の八代と並び「肥後の五か町」の一つと認められていたのです。城山校区にありながら、「高橋」稲荷神社と呼ばれるのは、かつての高橋(町)の地名の威光だと言われます。

 城山校区から高橋校区まで話が広がりましたので、今日はこの辺で風をとめたいと思います。西高の周辺は、近代に入り新しく造成された地域という誤解があります。そんなことはありません。地域を歩くと、地層のように重なった歴史や文化を呼び起こすことができる気がします。

二つの山にはさまれて ~ 金峰山と御坊山

「教室の窓から山々が近くに見えるのが新鮮です。山を眺めるのは大好きです!」

 高校入学しておよそ一月(ひとつき)経った感想を1年生に聞いたところ、ある女子生徒がこのような感想を述べてくれました。市街地から通学しているそうで、熊本市内の高校でこれほど山が間近に迫って見えるとは思ってもいなかったと明るい表情でした。

 熊本西高の北には金峰山山系の山並みが広がっています。1学年の教室棟は教室棟の中で最も北側に位置しているため、教室の窓から山々が近くに望めるのです。山々の若葉がまぶしい、新緑の季節を迎えました。

 西高運動場から見て、ひときわ高くそびえるのが金峰山一の岳です。電波塔が立っていて、遠くからでもよくわかります。熊本市民に広く親しまれている山です。標高は665m。そして、西高からは見えませんが、北に連なる金峰山山系の二の岳685mが熊本市で最も高い山です。西高校歌に「朝夕仰ぐ 金峰の 雄姿に高き 希望(のぞみ)あり」との一節があります。金峰山は高きのぞみ、目標の象徴と言えるでしょう。

 ところで、学校から南西の方角にこんもりとした森が見えます。運動場や西門からよく見え、私は赴任当初から気になっていました。この森は、御坊山(おんぼさん)と呼ばれる山です。標高29mの熊本市で一番低い山です。元々は海に浮かぶ島でしたが、白川と坪井川が運んできた土砂で周囲が埋まり、今の姿になりました。小さくても存在感があり、地元の人から親しまれています。御坊山がある地区を「小島(おしま)」と呼びますが、この地名は御坊山が由来だと言われています。小島地区は、白川の河口に当たります。

 金峰山と御坊山。二つの山の間に西高ははさまれています。金峰山は高き目標を示していると思えます。一方、御坊山は、小さいものを見過ごさないことの大切さを教えているように感じます。あの森は何だろう、山かな?と疑問を持ち、気づく感性は大切です。

 対照的な二つの山を通し、高き目標を持つこと、小さなことをおろそかにしないことを西高生の皆さんに伝えたいと思います。

               金峰山           御坊山

「We are 西高!」 ~ 第44回西高体育大会開催

「We  are  西高! We  are  西高!」

 プログラム最後の「全校応援」は圧巻でした。全校生徒が運動場に集結し、応援団リーダーの指揮のもと気持ちをひとつに声をそろえました。マスクをしていても声は響き渡り、計り知れない若いエネルギーが渦巻き、空に舞い上がっていったように感じました。全校生徒及び職員の力を結集し、体育大会を創り上げることができ、学校全体が一体感そして達成感に包まれました。

 第44回熊本西高校体育大会をきょう5月8日(土)に開催しました。コロナパンデミックのもと、限られた練習・準備期間、平年より縮小されたプログラム、そして無観客という制約の中でしたが、「今年は体育大会をしたい」という生徒と職員の強い意志で成し遂げました。

 西高の体育大会は私にとって初めてでした。予行(5/6)の日に、西高グラウンドにおいて、凹面鏡を使い太陽光から採火を行いました。オリンピックのギリシアでの採火式のように、生徒会の生徒が女神姿に扮しでのセレモニーに目をみはりました。この採火式は昭和63年の第13回体育大会から続いている伝統行事で、かつては金峰山山頂で行われていたとのことです。今日の体育大会開会式では、陸上部のキャプテンが聖火を掲げ走って入場し、点火台で点火され、生徒たちの士気が上がりました。

 プログラムは8時半に始まり、午後1時の閉会式で終わりました。どの種目も見応えがあり、生徒の皆さんの一生懸命さが観る者に伝わってきました。体育大会の華とも言えるリレー競技(クラス対抗、団対抗)は、抜きつ抜かれつ、声援、歓声も一段と高まり、会場が大いに沸きました。また、体育コース演舞「天の舞・飛翔」(2、3年生)は、アスリートたちのきびきびとした動作、かつ流れるようなパフォーマンスに魅了されました。そして全校生による西高体操は、全員の気持ちが一つとなり、「西高体育スピリット」の伝統が受け継がれたと思います。

 フィナーレの全校応援の中で、生徒会長の児藤さんが「体育大会を実施できたことの感謝」と「これからの高校生活への決意」を述べる姿は爽やかでした。

 新型コロナウイルス第4波に社会が覆われている今、ここ熊本西高校から高校生の元気を発信できました。昨年の今頃、学校は一斉休校でした。今年、不完全ながらも体育大会を実施できた意義は大きいと思います。来年こそは、コロナが終息し、西高の体育大会を開放し、保護者、中学生、地域住民の方々へ広く発信したいと願っています。

            採火式はじめ上3枚は予行の日の様子

                                    以上6枚は体育大会当日の様子

思わず、深呼吸 ~ 体育大会全体練習

 熊本西高校の遠景は、金峰山の山並みの麓に抱かれているように見えます。青葉萌え、山々の新緑がまぶしい季節を迎えました。有明海からの風が吹き抜ける広々とした西高運動場へ出ると、思わず、マスクを少しの間はずし、金峰山に向かって深呼吸したくなります。コロナ第4波の憂いを忘れられるひとときです。

 5月8日(土)の体育大会実施に向け、今週は連日、運動場で全体練習が行われています。生徒たちはマスクを着用し、距離をとり、西高体操、行進、開会式、そして3団(黄・赤・青)に分かれての応援練習などが続きます。広い運動場に全校生徒が集い、全体で動く様子は活気あふれ、壮観です。西高生830人が「ここに、共に、在る」ということが学校の一体感を醸成するうえでとても大切だと思います。1年生はこの全体練習を通じ、「西高生」になると言えるのでしょう。一方、2、3年生は上級生としての意識が高まるのでしょう。

 昨年度は、コロナパンデミックの影響で体育大会を中止しました。もし、今年度、体育大会を実施しなければ、来年度は体育大会を知っている生徒はいなくなります。西高の体育大会の伝統をつなぐためにも今年の体育大会開催は重要な意義があるのです。

 全体練習の中で、私が引きつけられたのは、西高体操です。創立以来行われている独自のもので、一つ一つの動作に力強さと姿勢の美しさがあり、指導される体育科の先生の息が上がるほどです。「体操」と言うより「演武」と呼びたくなります。全体練習を見ていて、「西高体育スピリット」というものが具体的に伝わってきました。西高には高校スポーツ界で知られた体育コースがあり、各競技で活躍する高校生アスリートたちがいます。しかし、そのような運動能力に秀でた生徒だけでなく、西高生全員にこのスピリットは求められています。日々の体育授業の集大成である体育大会を全員で創り上げていく過程で、気持ちを一つにした行動、挨拶などが備わっていくようです。

 西高の体育大会ならではのユニークなものとして、聖火入場・点火のセレモニーがあります。事前にグラウンドで太陽から採火し、代表の生徒が開会式において聖火トーチを掲げて走って入場し、運動場南側の特設の聖火台で点火するものです。生徒の気持ちに火を付けることになるでしょう。

 西高体育大会を多くの方にご覧いただきたいのですが、コロナウイルス感染防止の観点から、開放せず無観客で実施することとしました。苦渋の判断です。保護者の皆様、どうかご理解いただきたいと思います。生徒たちの達成感、充足感を最大の目標(ゴール)として、体育大会実施に努めていきます。