「日常に変化を」 ~ NAP(西高アートプロジェクト)

 「生徒ホールがすごいことになっていますよ!」と事務室の職員の方から話を聞き、行ってみると空間アートの世界に一変していました。1年生の美術選択者の皆さんがそれぞれ各チームに分かれ、作品を仕上げている途中でした。また、書道選択者による切り取られた紙文字の飾りもあり、目を引きました。これらが「インスタレーション」というものかと感嘆しました。

 インスタレーション(Installation)は空間全体を対象とした表現作品で、現代アートとして近年注目されています。彫刻や絵画を点として置くのではなく、大きなコンセプトのもと、広い空間全体をアートとして変化させていく創作活動です。美術科の黒田教諭の指導のもと、1年生の美術選択者91人が「日常に変化を ~ 明るい学校生活へ」のコンセプトのもとグループごとに小テーマを設けて作品を制作しました。そして、今週、生徒ホール、廊下、芸術棟周辺への展示を始めたのです。これに、書道選択者の協力も加わりました。

 生徒ホールのフロアには色紙で幾つもの足跡が表現されています。このグループのテーマは「人生」。人の生涯を足型で表現し、様々な足跡が交差しているのは人と人とが関わり合いながら生きていくことを表しているとのことです。また、大きなガラス窓にカラフルな翼が色紙で象(かたど)られています。その翼の前に立つことで、翼を持ったような気持ちに成って欲しいという仕掛けです。このグループのテーマは「自由」。廊下の天井からたくさんの紙飛行機が吊り下げられていたり、廊下の曲がり角に手をとりあって飛び跳ねている人物像が紙で貼り付けてあったりと愉快な出会いの連続です。

 コロナパンデミックが長期化し、今年度も分散授業の実施、学校行事の中止または縮小、部活動の制約と学校生活は大きな影響を受けました。生徒の皆さんは自由を制限され、閉塞感を覚える日々だったと思います。このような長いトンネルの中にいるような重苦しい日常を変える力がアートにはあるのです。「日常に変化を」という全体コンセプトは十分に伝わってきます。

 NAP(西高アートプロジェクト)は学校空間を明るく、文化の香りあるものに変えることに成功しました。生徒達が創り上げたこの空間を早く新入生に見せてあげたいと思います。

「校長室からの風」