「過ちすな、心して降りよ」(徒然草) ~ 3年生へのメッセージ

 1月13日(金)をもって、3年生の通常登校は終わります。14日(土)~15日(日)に約50万人が受験する全国大学入学共通テストが実施され、熊本西高から73人が挑戦します。一方、受験しない残りの約180人は家庭学習期間に入ります。

 進路内定者の皆さんにとって、3月1日の卒業式までは余裕のある日々となります。自動車学校に通う生徒も数多くいます。1月12日(木)の午後、進路内定者の生徒とその保護者の方々に対して、体育館で集会を開きました。この会で、鎌倉時代末期の随筆「徒然草」の第109段「高名の木登り」(こうみょうのきのぼり)の話を私はしました。

 木登り名人の親方が、大木に登って作業する弟子の様子を見守っています。高い危険な所で作業して いる時には何も言いませんでしたが、家の軒の高さくらいまでに降りてきたときに、「過(あやま)ちすな、心して降りよ」と声をかけました。弟子は、これくらいの高さなら地面に飛び降りることだってできる、どうして注意するのですかと問い返しました。それに対して、名人は「やすきところになりて、必ず仕(つかまつ)ることに候」と言いました。人は、気を緩めた時に失敗をするものだと名人は諭したのです。

 生徒の皆さんにも同じことを私は伝えたい。「過ちすな、心して降りよ」「やすきところになりて、必ず仕ることに候」と。進路も内定し、残り1か月半で高校卒業です。皆さんたちが考えている以上に、高等学校卒業資格は重要な資格です。普通自動車運転免許も大切ですが、その重要性は比較にならないと思います。運転免許は君たちなら1か月半から2か月で取得できるでしょう。しかし、高等学校卒業資格は最低3年必要です。定時制高校なら4年かかります。皆さんは日々登校し、授業に出席し、学習を積み重ねて3年間で96単位の履修科目を習得しました。その成果として高等学校の卒業資格を得ようとしているのです。

 卒業までの残り1か月半は油断大敵です。事故、事件に巻き込まれないよう、自らを律して生活してください。社会の急速なICT化、グローバル化など変化の激しい現代において、学びが終わるということはありません。生涯学習です。就職する人は、いきなり大人たちと一緒に仕事をすることになります。大学、専門学校など上級学校へ進学する人は、勉強内容が格段に難しくなります。4月から飛び立つために、3月までは大事な助走期間と考え、自分自身のために勉強してほしいと願っています。

 結びにあらためて呼びかけます。「過ちすな、心して降りよ」

「校長室からの風」

          大学入学共通テストを受験する73人の集会