2025年7月の記事一覧
性教育講演会
7月10日(木)は、みやはらレディースクリニックの院長・宮原 陽先生をお迎えして、人間の生と性に関する正しい知識を習得するとともに、生命の大切さを理解し、互いの人格を尊重する心情や態度を育成することと、将来を見通して望ましい人間関係を築くために、より適切な意思決定と行動選択できる能力を育成することを目的として、「あなたのこれからに役立つ『性』についてのお話」と題して、性教育講演会が行われました。
先生は産婦人科医の先生ですが、産婦人科医といえば昨今の漫画作品及びそれから派生した実写作品として「コウノドリ」が有名ですが、産婦人科の仕事は、卵→胎児→乳児期→幼年期→少年期→青年期→成熟期→更年期→老年期に至るまで、すべての女性の一生に関わる診療科です。お産には、お母さん(中に赤ちゃん)、助産師さん、そして家族が関わることになるのですが、実は妊婦さんが亡くなる頻度も一定数あります。50~60年前は10万人あたり150~200人が亡くなっていました。(0.15~0.2%)今は10万人あたり3人まで減りました。(0.003%)
「なんで僕たちが聞かなきゃいけないの?」世の中の色んなところからそんか声が聞こえてきそうですが、産婦人科は女性の生涯の健康を守るのと同時に、男性とも重大な関係があります。2017年、熊本県は妊娠中絶率が全国ワースト1位になってしまいました。中でも、中高生が妊娠した場合、中絶に終わることが多いのが現実です。中絶という経験が女の子に与えるからだと心の影響は計り知れません。体の発育や発達に欠かせないのが「性ホルモン」です。脳下垂体から性腺刺激ホルモンが出ると、精巣、卵巣が発達します。精巣から男性ホルモン、卵巣から女性ホルモンが分泌されます。
LGBT(性的マイノリティー)についてもお話がありました。L…「レズビアン」、G…「ゲイ」、B…「バイセクシュアル」、T…「トランスジェンダー」です。LGBT層は全体の7.6%といわれています。有名な詩人・金子みすゞさんの作品「私と小鳥とすずと」の一節に「私が両手をひろげても、お空はちっとも飛べないが、飛べる小鳥は私のように、地面を速く走れない。私がからだをゆすっても、きれいな音は出ないけど、あの鳴る鈴は私のように、たくさんな唄は知らないよ。鈴と、小鳥と、そらから私、みんなちがって、みんないい。」と、あります。もし一人で悩んでいたら、保健室の先生など、信頼できる大人に相談してみることを考えても良いかもしれません。
男性と女性で、唯一違うことといえば、女性は赤ちゃんを産む事ができることです。この違いだけです。これができるのは女性だけです。男性にはどう頑張ってもできないことです。我々も、必ずお母さんから生まれてきたはずです。主な女性生殖器として、子宮、子宮体部(子宮の上部2/3)、子宮頚部(子宮の下部1/3)、膣(子宮と外性器をつなぐ器官。子宮からの月経や粘液を排出し、酸性に保たれた細菌などの侵入を防ぐ役割)、卵巣(女性生殖器の中心。卵子の生成、成熟、排卵の機能)、卵管(卵子が移動する通路。卵子と精子が受精する場所)があります。そこで、宮原院長先生から生徒に質問がありました。「問題:子宮は、どのくらいの大きさだと思いますか? 選択肢:①うずらのタマゴ ②にわとりのタマゴ ③ダチョウのタマゴ」生徒は、これだと思うものに手を上げます。「答え:②にわとりのタマゴ」くらいの大きさだそうです。
女性のライフステージに伴う身体の変化として、女性は一生を通じてホルモンの影響を受けます。ライフステージによってエストロゲン(女性ホルモン)の分泌量が大きく変化します。8歳~18歳の思春期の間に初経(初潮)を迎え、(初経は10~15歳で始まる人が多く平均は約12歳)この分泌量が高まります。性成熟期を超え、更年期にはエストロゲンは急激に低下して閉経へと至り、老年期にかけてのライフステージでエストロゲンの分泌量が大きく変化します。(閉経年齢は平均約50歳で、閉経前後5年、計10年間を「更年期」と呼ばれている)
男子の変化として、10歳くらいから思春期が始まり、15歳の51%、18歳の90%が射精を経験します。50歳~80歳にかけて男性ホルモンが下降し、精子の数や運動率が徐々に下がっていきます。
知っておきたい月経のトラブルと対処法として、そもそも何故、生理はあるのか。月経のしくみについてですが、妊娠のために準備された子宮の内膜が、妊娠しなかった場合にはがれて血液と一緒にでてきます。これが生理(月経)です。言うなれば、女性は毎月、妊娠のための準備をしているのです。思春期の女の子の場合、月経についての悩みとして、①月経がまだ来ない、②月経になるとおなかがすごく痛い、③月経がだらだら続く。④月経が来るのがバラバラ、⑤月経が来なくなった、⑥月経血の量が多い、少ない、といった悩みが寄せられています。男子には女性だけが担っているこの生理(月経)を是非理解してほしいものです。なお、現代女性は月経回数が多いです。昔の女性は、16歳頃に初潮を迎え、出産は平均6回、長い母乳育児期があり、閉経も早かったです。それに比べて現代の女性は、12.5歳頃に初潮を迎え、出産は2~3回、短い授乳期間に加え、遅い閉経となります。また、女子高生に対する月経のアンケートとして次のようなものがあります。①「月経に伴うつらい症状を経験したことがある」73%、②「月経が日常生活や学業の妨げになることがある」64%、③「月経のため、勉強や作業の能率が下がることがある」62%、そして、④「月経のため、学校を休んだことがある」21%といった集計結果があります。このデータから読み取れることとしては、④の質問だけパーセンテージが低いのです。裏を返せば、78%以上の人が「月経のため、学校を休んだことはない」ということになり、いかに女性が日ごろからつらいのを我慢して学校生活を頑張っているかがうかがえます。体と心に向き合い、症状に気づくことから始めると良いと思われます。PMS(月経前症候群は、月経開始3~10日前から起こり月経とともに軽減・消失します。卵胞期、排卵を経て黄体期に入ります。大部分の女性に何らかの症状が出ます。2~10%が日常生活に支障をきたします。いらいら、のぼせ、下腹部膨満感、下腹痛、腰痛、頭重感、怒りっぽくなる、頭痛、乳房痛、落ち着かない、憂鬱といった症状です。その後の月経中は、下腹痛、腰痛、腹部膨満感、吐き気、頭痛、疲労・脱力感、食欲不振、いらいら、下痢、憂鬱といった症状があらわれます。これらの症状で日常生活に支障がある場合は、産婦人科医に相談すると良いです。月経困難症は、月経直前または月経開始とともに症状があらわれます。子宮内膜で作られる痛みの物質「プロスタグランジン」は、全身症状としては腰痛、頭痛、吐き気を引き起こし、子宮を収縮することで下腹部痛を伴い月経に至るのですが、月経の量が多い過多月経では、1周期での正常な量が20~140mlなのに対し、過多月経では140ml以上の出血量を伴います。最も多い日で、ナプキンの交換が30分おきに必要、経血に、レバーのようなかたまりが混じっている、貧血の症状があるといったものです。無月経とは、月経がない状態で妊娠、授乳期などは、生理的無月経ですが、18歳をすぐ手も初経が起こらないものを原発性無月経といって、16歳頃までに初経がない場合は検査が望ましいです。これまであった月経が3ヶ月以上こないのは続発性無月経で、さまざまな要因で無月経になります。ストレス、過度の食事制限、体重減少、過剰な運動、過激なダイエットがその原因です。なぜ、無月経を放置してはいけないのかというと、不妊の原因になること、エストロゲン不足による骨粗しょう症、男性ホルモン過剰による多毛やニキビなどを生じる場合もあり、視床下部や卵巣・子宮の病気の場合もあります。子宮内膜症とは、子宮腔以外の場所で、子宮内膜の組織と似た組織が発生し、増殖したり、炎症や癒着(他の臓器にくっつく)を引き起こします。子宮内膜組織に似た組織で、不妊、排便痛、慢性骨髄症、性交痛、月経を重ねるごとに強くなる月経痛のことです。20~40歳代の好発し、生殖年齢女性の約10%が経験します。腹腔内に月経血が逆流し、生涯における月経の回数の増加、たとえば初潮が早い、月経量が多い、妊娠・出産回数が少ないといったことは、エストロゲンの分泌量や腹腔内に逆流する月経血量が増加し、子宮内膜症になりやく、リスクが増加します。月経と、上手に付き合うことも大事です。ちょっとした日常生活の工夫で改善されることもあります。鉄分など、バランスの良い食事を摂ること、体を温める、リラックス・リフレッシュ、適度な運動、十分な睡眠が挙げられます。一方で、刺激物、カフェイン、塩分、糖分のとりすぎや体を冷やすこと、過度なダイエット、喫煙、過剰なストレスはNGです。月経痛や月経不順、無月経、過多月経は病院で治療できることを、女子高生の実に86.8%が「知らない、または聞いたことはあるが詳しく知らない」と答えているというデータがありますが、産婦人科での、月経困難症の治療も可能です。排卵を休ませたり子宮内膜を薄くする月経困難症治療薬(EP配合剤)は、子宮内膜で作られる痛みの物質「プロスタグランジン」の合成を阻害する痛み止めの薬です。漢方薬は全身症状(腰痛・頭痛・吐き気)の効き、子宮の平滑筋をゆるめる薬です。生理(月経)に関する重要なこととして、「生理(月経)がぶつかったらどうしよう!」と不安を感じることがこれから何回もあります。でも、仕方がないとあきらめる必要はありません。生理の日にちを変更することは可能です。修学旅行、受験、大切な行事などはピルを使うと生理がスケジュールに重ならないように調整できます。ピルとは、もともとは排卵がおこらないようにして、妊娠を防ぐお薬でした。今では、産婦人科のお医者さんが、この人は月経痛で困っている(月経困難症だ)と診断したら病院で処方してもらうことができます。ただ、中高生は、保護者の方と一緒に受診して、お薬についてお医者さんからの十分な説明を受けてから治療を始めると良いです。オリンピック選手のピル服用率は、欧米の2008年北京オリンピック出場女性選手の83%に対し、日本の2012年ロンドンオリンピック出場女性選手は7%にとどまっています。この差をどう考えるかですが、すべてのピルはドーピング禁止薬ではないのです。ロンドン五輪「なでしこJAPAN」銀メダル獲得の澤穂希選手は、アスリートとして活躍するため30歳から7年間ピルを服用しているそうです。
男子中・高校生の性に関する5大悩みとして、自慰・包茎・性器・射精・性欲が挙げられます。男子の場合、ペニスについての悩みがあります。「これって包茎?」「人と比べて小さくない?」「自分の意思とは関係なく勃起するのはどうして?」といったものがあります。仮性包茎と真性包茎とがありますが、日本ではなぜが包皮で完全に亀頭が出ていない状態までを仮性包茎と呼んでいますが、諸外国の概念では、亀頭が露出していれば十分で、それは包茎ではないという考え方が一般的です。
次に、避妊についてです。性感染症は大丈夫でしょうか。産みたいとき産むために、よく考えます。まずは、妊娠のしくみです。排卵された卵子が卵管に取り込まれ、卵子が精子と出会うと受精します。受精卵は細胞分裂を繰り返しながら子宮へ移動します。受精卵が子宮内膜に着床すると妊娠します。お互いに興味を持ち、相手を好きになり、お付き合いすることが自由です。精通(射精)を迎えた男子と、月経(生理)を迎えた女子であれば性交は可能です。でも、「ちょっと待った」です。避妊するのは誰でしょうか。男の子でしょうか、それとも女の子でしょうか。両方です。避妊法には次のようなものがあります。コンドーム、基礎体温法、OC(ピル)、IUD(子宮内避妊用具)、IUS(黄体ホルモン付加の薬剤付き)があります。しかし、どんな避妊法も100%ではありません。避妊失敗率(100人の女性が1年間に妊娠する率)は、コンドームが2~18%、基礎体温法が0.4~24%、OCが0.3~9%、IUDが0.6~0.8%、IUSが0.2%です。避妊の方法として、男性用コンドームは、コンビニ、薬局、自動販売機で買えます。ピル(OC)とは、経口避妊薬または低用量ピルとも呼ばれていて、1粒の錠剤に、エストロゲン(卵胞ホルモン)、プロゲスチン(黄体ホルモン)という2種類の女性ホルモン成分が主成分として含まれています。もしものときに知っておいてほしいこととして、緊急避妊があります。まず、産婦人科を受診します。性交後72時間以内になるべく早く緊急避妊薬を服用します。薬の服用によって妊娠を完全に回避できるわけではないのですが、妊娠阻止率84%、妊娠率1.34%です。緊急手段に頼らないためにも、避妊についてしっかりと考えて取り組むことが大切です。予期しない妊娠を防ぐには、年齢、生活環境、将来の出産予定、パートナーの協力度などによって、より自分に適した避妊法があります。自分の体のことやパートナーとのライフスタイルを考えながら、無理なく確実な方法を選ぶことが大切です。
そして、性感染症(STI)についてですが、性感染症は治療をしても再発することがあります。症状がないからといって、きちんと直さないまま放っておくと、他の人にうつしてしまいます。心配になったら、勇気を出してパートナーに「一緒に検査をうけてみよう」と誘ってみると良いです。相手を大切に思う、そんなひとことが大切です。性感染症を放置していると、望んだときに妊娠することが困難になる場合があります。知っておきたい主な性感染症として、クラミジア感染症、淋菌感染症、尖圭コンジローマ、性器ヘルペス、梅毒等があります。年代別の性感染症の患者数の割合を、全年代を100%として、性器クラミジアが10代11.4%、20代46.6%、淋病が10代8.2%、20代40.2%、尖圭コンジローマが10代6.5%、20代39.2%、性器ヘルペスが10代4.4%、20代28.9%となっています。梅毒は2010年以降、感染数の報告数は増加を続けており、男性は20歳代~40歳代、女性は20歳代の報告が多くなっています。気になったら放っておかず、男子は泌尿器科や皮膚科へ、女子は産婦人科へ行くようにして、もし、どちらかがSTIと診断された場合は2人同時に治療することが大切です。性感染症を予防するために、感染や感染の拡大を防ぐためにコンドームを使うこと、感染の機会を減らすためにパートナーを特定することが重要です。おりものの量が増えた、色が変わった、外陰部に痛みやかゆみ、水疱やイボがある、排尿時や性交時に痛みがある、性交後に出血等の心配事があったら産婦人科を受診するようにすると良いと思われます。
そして、子宮頸がんについてです。子宮頸がんの原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)です。子宮頸がんはワクチンと検診で予防できるがんです。ワクチンによる予防接種と子宮頸がん検診というふたつの手段が有効です。1次予防として、HPVワクチンは感染そのものを防ぎます。2次予防としては、子宮頸がん検診はがんになる前の細胞を見つけたり、治療可能な早期のがんを見つけます。令和5年4月1日より「シルガード9」(9価HPVワクチン)が定期接種の対象になり、9歳以上15歳未満の女性において2回接種が可能となりました。シルガード9は9つの型の予防効果を持ちます。HPVには、子宮頸がんの原因になる可能性のある高リスク型と、皮膚や粘膜にできるイボの原因となる低リスク型があり、またHPVは、子宮頸がん以外のがんを引き起こすこともありますが、性交渉前の接種で子宮頸がんの90%を予防できます。男子は受けられないのかというと、諸外国(オーストラリア、イギリス、アメリカ等)では男女ともに接種することが勧められています。特にオーストラリアでは男女ともに8割が接種を受けることで、2028年には子宮頸がんが「撲滅」するとのデータもあります。男性にとっては「咽頭がん」や「肛門がん」などの原因となることもあり実は接種のメリットがあります。現在日本では自費でのみ接種を受けることができます。一度家族で話し合ってみても良いかもしれません。接種するリスクと接種しないリスクを天秤にかけたとき、接種するリスクによる重篤な有害事象は10万人あたり52.5人です。それに対し、接種しないリスクは予防できない子宮頸がんの罹患数10万人あたり595人~859人で、死亡数10万人あたり144人~209人です。
悩みや気になることがあったら、信頼できる情報かどうか、判断できる力を身に付けること、信頼できる相談相手を持つこと、学校の先生にも遠慮なく相談してほしいと、宮原先生はおっしゃっていました。
講演の後は、保健師の方より諸連絡がありました。
最後は、生徒会保健委員の生徒より、代表謝辞がありました。とても立派にできました。
性教育講演会を通じて、生徒は探究する力を育み、主体的に学ぶことができたようです。大切な自分の体と、大切な人の夢(願い)を実現するためにも、本日学んだことを忘れず、生きていってほしいと願います。
大変お忙しい中、本校生徒のために講演をしてくださった宮原先生、本当にありがとうございました。今後ともご指導のほどをよろしくお願いします。