日誌

2026年1月の記事一覧

鉛筆 【R8修学旅行 08】記憶を紡ぐ:これまでの歩みと、今の挑戦

 なかなか紹介できず、申し訳ありません。

 生徒たちが都会の海へと漕ぎ出し、母港でその帰りを待つひと時を借りて、これまでの道中で集めた大切な記録の断片を届けます。

 言葉を重ねる必要のない、生徒たちのありのままの表情。

 福島での深い学び、仲間と過ごした何気ない時間、そのすべてがこれからの彼らを支えるものとなってくれれば幸いです。

 確かな絆を帆に受けて、生徒たちは今、この瞬間も未知なる挑戦を続けています。

 まもなく、日没。 経験という名の宝物を積んだ小舟の帰港を、静かに待ちます。

 

 「この瞬間(とき)を 心のフォルダに 全保存」

鉛筆 【R8修学旅行 07】荒波さえも楽しみに!自主研修スタート

 福島の静寂の中で、深く「生」を見つめた昨日。

 その学びを確かな心の羅針盤に変えて、修学旅行は3日目の朝を迎えました。


 しっかりと朝食を済ませ、身支度を整えた生徒たちの熱気が、ホテルのロビーを包み込んでいます。


 出発を「出航」になぞらえるならば、予定時刻は 8時30分。

 しかし、抑えきれない期待からか、 8時を回る頃には多くの班がすでにロビーへと集結してきました。

 そこはさながら、未知なる海へと漕ぎ出すための「港」。

 

 先生や添乗員さんとの最終確認を終え、「船長」(リーダー)たちは、母港(ホテル)と自分たちを繋ぐ「現代の羅針盤」である貸し出し用の携帯端末を手に、自分たちを、そして仲間の背中を力強く押し合います。


「よし、いこう。準備はいい?」 

「大丈夫、絶対たどり着けるよ!」


 彼らがこれから「舵を取る」のは、多彩な表情を持つ東京という大海原。

 流行の発信地「渋谷・原宿」、韓流・韓国カルチャーの聖地「新大久保」、高層ビルがそびえ立つ迷宮「新宿」、アニメの熱気が渦巻く「池袋」、ポップカルチャーの殿堂「秋葉原」、伝統の風吹く「浅草」、活気溢れる「アメ横」、夢の世界が待つ「舞浜」

 それぞれの目的地という名の「島」を見据え、生徒たちの瞳が輝きます。


 ロビーの隅で入念に海図(ルート)を攻略する慎重な班。

 対照的に「まずは駅まで!」と勢いよく帆を張る班。

 錨(いかり)を上げる姿一つにも、それぞれの個性が溢れていて、見送る私たちもつい笑みがこぼれます。


 一歩外へ出れば、そこは日本一の巨大都市。

 昨日、車窓から眺めていた「光の海」が、自分たちが渡る「リアルの街」へと姿を変えます。


 自分たちで立てた緻密な計画と、船員(なかま)との絆を頼りに、都会の荒波へと漕ぎ出していく生徒たち。

 たとえ不意の霧に巻かれ、激しい嵐が行く手を阻むことがあっても、仲間と頭を突き合わせて自分たちなりの「航路」を見つけていく。

 この「航海」のプロセスこそが、この研修の醍醐味です。


 福島で受け取った「今を全力で生きる」という熱量を胸に。

 今日は東京のエネルギーを全身で受け止め、一回りたくましくなって戻ってくるのを、楽しみに待っています。


 日が落ちる頃、荒波を越えた各班の「小舟」が、安らぎの母港であるこのホテルへと次々に帰港してくることでしょう。

 その船体いっぱいに積み込まれた、経験という名の「宝物」の話を聞くのが、今から楽しみでなりません。

 

「嵐さえ 友と笑えば 追い風に」

鉛筆 【R8修学旅行 06】黄昏に包まれて、光の都へ

 福島を出発する時は、雲ひとつない快晴でした。

 学びの余韻を乗せたバスは、一路、都心へと向かいます。

 

 空が琥珀色に溶け出す頃、車内を優しく満たしたのは「黄昏時(たそがれどき)」の光。

 震災遺構で向き合った命の重みを咀嚼するように、生徒たちは心地よい疲れの中で静かな眠りについていました。

 ふとタイヤのリズムが変わり、生徒たちが目を覚ますと、そこには眠る前とは全く違う景色が広がっています。

 いつの間にか車線は増え、ひしめき合うテールの赤灯が河のように連なる。

 福島の広い空から、光の壁がそびえ立つ大都会へ。

 

 

「わあ……きれい......」

 

 寝ぼけ眼に映る光の海。

 ふと見上げれば、行きに見たあのスカイツリーが、深い暗闇の中で静かに、そして力強く光を放っています。

 今日見た「モノクロの記憶」と対照的な「色彩の奔流」。

 その輝き一つひとつに誰かの営みがあることを、今の彼らなら感じ取れるはずです。

 

 ホテルに到着し、明日の最終確認。

 

 本日も大きなトラブルや体調不良者はおらず、全員元気です。

 予報では「最高気温7℃」と冷え込みそうですが、憧れの街を前にした彼らには、そんな寒さも関係ないのでしょう。

 福島で受け取った「今を生きる」バトンを胸に。

 いよいよ明日は、自分たちの力で未知の街を切り拓く、「大冒険」が始まります。

 地図を広げ、仲間と笑い、都会の荒波に飛び込む彼らの背中を、今は静かに見守りたいと思います。

 最高に輝く笑顔に出会える一日になりますように。

 おやすみなさい。

 

「刻む過去 照らす東京 知る重み」

鉛筆 【R8修学旅行 05】止まった時計と、動き出した街の息吹

 スクリーンに映し出される、街を覆い尽くす波。

 防護服に身を包み、見えない恐怖の中で懸命に作業を続ける人々。

 かつての穏やかな日常が、一瞬にして音を立てて崩れ去る記録の数々——。

 

 午後の研修は、まず「東日本大震災・原子力災害伝承館」を訪れるところから始まりました。

 そこにあったのは、地震、津波、そして原子力災害。

 それらが複雑に絡み合い、人々の暮らしや産業、そして地域の大切な「つながり」までもが断ち切られてしまった福島の姿でした。

 15年前、まだ幼かった生徒たちの記憶にはないはずの光景が、静かな、しかし確かな重みを持って迫ります。

 

 

 伝承館で事実を胸に刻んだ後、案内役の「おおがい」さんがバスに同乗し、現場を歩くフィールドワークへ。

 車窓を流れる双葉町の景色に、車内は再び静まり返りました。

 「避難は3日くらいだと思っていた。それが9年間の避難生活になった」 とおおがいさんが語る、当事者だからこその重みのある言葉。

 まだ学校さえ再開していない風景。

 剥き出しの壁に絡まり、建物を飲み込もうとする蔦。

 そして、あの日から15年間、ずっと干されたままの洗濯物……。

 伝承館で学んだ「複雑な震災の姿」が、今も解けない魔法のようにこの場所に留まっている現実を、生徒たちは肌で感じていました。

 

 バスが浪江町の震災遺構「請戸小学校」に到着したその時、空からは静かに雪が降り始めました。

 剥き出しの天井、津波に削られた壁、歪んだまま止まった時計。

 冷たい雪は、かつて子供たちの声が響いていた教室にも静かに降り注ぎます。

 教室の黒板には、訪れた人々やかつての在校生たちが刻んだメッセージが残されていました。

 再会を願う言葉、震災を忘れないという決意、未来への祈り。

 雪の白さが、黒板に刻まれた人々の想いをより鮮明に浮かび上がらせます。

 しかし、校舎の向こう側に目を向ければ、ダンプカーが走り、新しい施設が建設されている光景もあります。

 あの日から止まったままの「モノクロの過去」があるからこそ、今、目の前で懸命に色を取り戻そうとしている「カラーの今」の尊さが、生徒たちの瞳に焼き付きます。

 

 あの日、必死に高台へと駆け抜けた児童たちの鼓動。

 今も遠く離れた地で避難生活を続ける人の郷愁。

 故郷へ戻るべきか悩み、葛藤し続ける人々の揺れる心。

 そして、あの日から帰らぬ大切な人を、今も静かに想い続ける方々の祈り。

 

 目の前の遺構を見るだけでなく、今ここにいない「誰か」の想いに静かに想像力を羽ばたかせ、その痛みや祈りに触れようとすること。

 それ自体が、彼らにとって何物にも代えがたい「学び」になったのではないでしょうか。

 15年という、彼らのこれまでの人生とほぼ同じ時間をかけて、一歩ずつ歩んできた福島の息吹。

 幼かったあの日から、自分の足で未来を選べる年齢になった今、彼らはこの「繋がれたバトン」をどう受け取ったのでしょうか。

 

 バスは今、次なる目的地、光り輝く都心へ向けて走り出しました。

 

「雪よ舞え 黒板の夢 包むよう」

鉛筆 【R8修学旅行 04】「自由に、カッコ良く」——大熊のキウイに学ぶ、次世代農業の姿

 修学旅行2日目の朝を迎えました。

 朝の冷え込みもあり、数名ほど腹痛を訴えるなど少しの体調不良は見られましたが、朝食をしっかりとり、午前中の研修が始まる頃には全員が概ね元気に顔を揃えました。

 現在は全員揃って、午後のフィールドワークへと出発しています。

 

 午前中、Jヴィレッジにて行われた3学科別研修。

 農業科の生徒たちが向き合ったのは、株式会社ReFruits代表の阿部翔太郎様です。

 福島県大熊町で「キウイで世界を驚かす」という志を掲げ、若手農業者として最前線を走る阿部さんの言葉に、生徒たちは一瞬で引き込まれました。

 大学在学中から大熊町に関わり、卒業後すぐにこの地で栽培を開始された阿部さん。

 かつては記者を目指していたという阿部さんが、なぜ「実践者」として土に触れる道を選んだのか。

 語られたのは、キウイの歴史から大熊町の現状、そして避けては通れない放射線の影響まで。

 栽培だけに留まらず、新品種の研究や加工、そして美味しさを本質に置いた「持続可能な農業」のビジョンでした。

 

「復興のためというより、自分がやりたいことが見つかったから。原発や震災復興という言葉に依存しない、自律した農業を目指したい」

 その言葉は、5年前の水害を経験した故郷・芦北を知る生徒たちの胸を熱く焦がしたようです。

 自らの足で立ち、地域を良いものにしていこうとする阿部さんの姿は、一つの理想の「カッコ良さ」として映ったに違いありません。

 

「自由に、でもカッコ良く生きよう!自分が生きる地域、社会を良いものにしていこう!」

 

研修室に響いたこのメッセージを深く胸に刻み、生徒たちはバスに乗り込みました。

 

 バスの窓越し、森の向こう側に姿を現したのは福島第二原子力発電所です。

 先ほど阿部さんから伺った「大熊町の歩み」と、遠くに見える高い煙突。

 静まり返った車内で、生徒たちは言葉を飲み込むようにして、その景色をじっと見つめていました。

 研修を経て、歴史の背景を知った生徒たちの目には、今、今朝とは全く違う重みを持った景色が見えているはずです。

 バスは今、止まった時間と動き出した時間が混在する街、浪江・双葉へと向かっています。

 

「冬の陽に 学びを重ね 街を見る」