校長室からの風(メッセージ)

校長室からの風(メッセージ)

1学期終業式

 7月15日(金)の午前、多良木高校は1学期終業式を行いました。校長挨拶を次に掲げます。 
 

 「1学期の終業式に当たり、この3ヶ月半を振り返ると、先ず思い起こされるのが4月14日、16日の大地震発生のことです。18日月曜日、この体育館に集まり臨時の全校朝礼を行い、私から皆さんに三つのことを伝えました。一つは「普通の生活ができることに感謝しよう」です。この感謝の気持ちはいつも持っていたいですね。二つ目は「自然災害を正しく恐れよう」です。今回の地震でもネット上に根拠のない噂話、憶測が多く流れたようですが、基本的な知識、そして正しい情報を持って判断し行動してほしいと思います。三つ目は、「皆さんは弱者ではない」ということです。災害が起きたとき、まず自分の安全を確保した後は、子どもやお年寄り、障がいのある方を助ける立場となります。そして、復旧、復興に皆さんの力は欠かせないのです。

 先ほど、4人の3年生が復興支援ボランティア体験の報告をしてくれましたが、被災しなかった地域の県立高校23校から84人の代表生徒が集まりました。西原村の山中において地震で2千本のしいたけ原木が倒れたまま放置されており、それらをボランティアリーダーや地元の農家の方の指導のもと、一本一本復元していくのです。不安定な斜面での作業で、蒸し暑い天候の中、ムカデも出る厳しい環境でしたが、どの生徒も苦しい顔や嫌な顔ひとつせず作業する姿は爽やかで、私は、「見てください、これが熊本の高校生たちです」と胸を張って他県のボランティアの方々に自慢したくなりました。

 5年前の東日本大震災の時もそうでしたが、今回の熊本地震においても、高校生は、被災地での復旧ボランティアや避難所での運営補助など実によく働き、その元気と明るさに被災者の方が励まされたそうです。私たち大人は、ひとたび震災に見舞われると多くのものを失った精神的打撃でなかなか立ち直れなくなります。しかし、皆さん達、高校生は立ち直りが早い。復元力とでも言うのでしょうか、しなやかに立ち直る力を持つ高校生こそ、非常時には頼りにされるのです。落としたら割れるガラスの花瓶のような人になってはだめです。落としても、跳ね返ってくるゴムボールのようなしなやかさを、皆さんには身に付けて欲しいと期待します。

 震災からの復興だけでなく、これからの社会を創っていくのは皆さん達です。先日、参議院議員選挙が行われましたが、全体の投票率は54.7%でした。これまでの参議院選挙で4番目に低い投票率でした。熊本選挙区は51.46%です。二人に一人しか投票していない状況です。それでは、選挙権を持つ多良木高校3年生21人の投票行動はどうだったのでしょうか?21人中19人が投票していますので、投票率は90.5%という高さです。皆さん達は、主権者としての責任をきちんと果たしたのです。私はこのことを誇らしく思います。今回棄権した多くの大人は、多良木高校3年生を見倣って欲しい気持ちです。

 夏休みに、一つ皆さんにお願いがあります。おじいさん、おばあさん、あるいはひいおじいさん、ひいおばあさんがご健在な人もいると思いますが、一人で暮らしておられる方がいらっしゃいませんか? 遠くに住んでおられ、普段は会えないという事情もあるでしょう。この夏休み、できればお盆の時期に皆さん達から訪ねていってほしいのです。今、振り込め詐欺の被害者、被害額が急増しています。この人吉球磨地域でも被害者が出ています。被害者のほとんどがお年寄りです。なぜ、犯罪者はお年寄りを狙うのか? お年寄りは寂しいからです。子どもや孫が会いに来てくれない、電話もあまりない、という孤独な環境のお年寄りが振り込め詐欺の罠に陥ってしまうのです。それを防ぐために、みなさんが、「おじいちゃん、おばあちゃん、元気ですか?」と顔を見せ、話しをすることは効果が大きいと言われます。今の日本を築き上げてこられたお年寄りを、卑劣な犯罪から守るためにも、孫、ひ孫である皆さん達高校生が積極的にお年寄りと交流することが求められます。

 2016年の夏、熊本の復興が進み、皆さん達がそれぞれの故郷でお年寄りと一緒に笑顔で過ごすことを願っています。そして、明後日17日の多良木町ブルートレイン清掃ボランティアに31人が参加することをスタートに、多良木町地域未来塾の先生役、地域のお祭り、スポーツ大会、介護施設の行事運営の補助など数え切れない程のボランティア活動に参加する皆さんに素晴らしい出会いと体験が待っていることを念じ、終業式の挨拶とします。」

                         高校生による復興支援ボランティア報告会(多良木高校)

藤崎台球場の夏

藤崎台球場の夏 ~ 第98回全国高等学校野球選手権熊本大会開幕

 7月10日(日)、熊本市の藤崎台球場で第98回全国高等学校野球選手権熊本大会の開会式が行われました。4月の大地震の影響で、藤崎台球場の施設の一部に被害が生じ、同球場での夏の大会予選開催が危ぶまれましたが、修復、安全点検が間に合い、熊本県高校野球の中心地である藤崎台球場での開会式に至ったのです。

 雨上がりの曇天の下、午前10時20分から出場校63校の選手入場が始まり、35番目に多良木高校の選手達がはつらつとした態度で行進しました。今年の大会は、熊本地震の復興の中での開催ということで全国から注目されています。入場行進では、「がんばろう九州」の横断幕も掲げられ、日本高野連会長の八田英二氏も駆けつけられ、選手達にエールを送られました。

 出場校の中には、グラウンドをはじめ学校の施設、設備が被災して、2週間から3週間にわたって休校となった所もあります。避難所となった学校もあります。選手達の中には、自宅が被災して避難所または自動車の中での生活を余儀なくされた人もいます。そのような苦しさを体験した多くの高校生の、それでも好きな野球をしたいという意志が原動力となり、大会が始まるのです。

 外野席の背後には、国の天然記念物に指定されている7本の大楠が立っています。樹齢千年に及ぶと伝えられる巨樹群は、幾多の戦乱、自然災害を経験してきたことでしょう。これらの大楠に見守られながら、高校球児が藤崎台球場で躍動し、ひたむきなプレーを繰り広げます。青春賛歌の「栄冠は君に輝く」を口ずさみながら、選手達に惜しみない拍手と声援を送ります。

「雲は湧き  光あふれる

                 天高く  純白の球  今日ぞ飛ぶ

                 若人よ   いざ

                 まじりは  歓呼に応え

                 いさぎよし   ほほえむ希望

                 ああ栄冠は   君に輝く」
                
(作詞:加賀大介 作曲:古関裕而)


 

心を育む声の贈り物「朗読」

心を育む声の贈り物「朗読」 ~ 宮沢賢治文学の朗読を聴く会

 今から80年ほど前の昭和8年に37歳の若さで世を去った宮沢賢治。生前は無名に近い存在でしたが、没後、彼の詩、童話、小説などの文学作品は広く読まれ、今日、ますますその輝きを増しているようです。

   朗読活動家の矢部絹子さんは、宮沢賢治の文学世界を多くの人に伝えたいという熱い思いの持ち主です。元テレビ局のアナウンサーであり、読むこと・話すこと・語ることのプロフェッショナルである矢部さんは、40年余り、宮沢賢治の作品の朗読に取り組んでこられました。この度、ご縁があって、多良木高校生に宮沢賢治文学の朗読を聴かせていただく機会を得ました。

 7月1日(金)午後3時から第1体育館にて、短編童話「虔十公園林」と詩「雨ニモマケズ」の朗読をしていただきました。矢部さんの心の底から湧いてくるような、情感の込められた声で語られる宮沢賢治の物語に生徒達は引き込まれたようでした。およそ40分間、ほとんど私語もなく、思索と想像の世界に浸っていました。デジタル世代の高校生にとって貴重な、静かで豊かな時間が流れていたと思います。

 短編童話「虔十公園林」。まわりから馬鹿にされている虔十(けんじゅう)ですが、700本の杉苗を植え、それを大事に愚直に育て、若くして病気で亡くなります。その後、杉林は虔十の家族によって引き続き守られ立派な林となりました。歳月が立ち、村の風景もすっかり変わった中で、久しぶりに帰省した村出身の博士が、杉林の中で遊ぶ子ども達を見て、ここだけが昔と変わっていないことに感嘆して、「ああ、全くたれがかしこくたれが賢くないかはわかりません」と言います。この最後の博士の言葉はとても印象深く、考えさせられます。主人公の虔十とは宮沢賢治その人とも言えるのでしょう。

 詩「雨ニモマケズ」。この高名な詩を小中学校で暗唱した生徒もいるでしょう。しかし、高校生になった今、宮沢賢治の理想の生き方を表現したと言われるこの詩に触れ、どんな感想を得たのでしょうか。宮沢賢治は、自分の作品を思春期の人に読んで欲しいと願いを込めたと言われます。百年近い時を隔て、平成の高校生にも宮沢賢治のメッセージは届いていると思います。


 

生徒会役員立ち会い演説会に望む

  6月28日(火)午後、期末考査終了後に平成28年度多良木高校生徒会役員立ち会い演説会が開かれました。会長に福田君(2年)、副会長に野村君(2年)、書記に大山君(1年)と西脇君(1年)が立候補してくれました。演説会の最初に、校長として次のような挨拶を行いました。


「生徒会は多良木高校の全校生徒204人全員が会員です。生徒会は、クラスマッチや体育大会、文化祭など大きな行事を企画、運営することも務めですが、一方、挨拶や交通安全といった日常生活に係る取り組みも大切だと思います。今、売店がある部屋を、生徒会役員の皆さんが中心になって「エンジョイ広場」として作っていると聞いています。どんなリフレッシュスペースができるのか楽しみです。皆さんが工夫し、力を合わせれば、もっと充実した多良木高校生活が実現できると期待しています。

 今回の生徒会役員の選挙に、福田君、野村君、大山君、西脇君の4人が立候補してくれました。進んで役員になろうという4人の志に敬意を表します。

 さて、現在、参議院議員選挙が行われていますね。6月22日に公示され、選挙戦が始まり、7月10日(日)が投票日です。今回の参議員選挙が注目されるのは、18歳選挙権が導入されて初めての選挙だからです。選挙権年齢が20歳以上から「18歳以上」に引き下げられ、投票日の時点で満18歳になっていれば高校生でも選挙権を持つのです。今回の参議院議員選挙においては、本校の3年生64人のうち21人が選挙権を持っています。人生で最初の選挙、投票です。選挙権は、国民としての責任を伴う重要な権利ですから、棄権せずに必ず投票して欲しいと願っています。

 高校生で十分な判断ができるのか、早すぎるのではないか、と心配する声も聞かれますが、アメリカ合衆国、ヨーロッパの各国、オーストラリアなど世界では18歳以上の選挙権が主流だそうです。18歳選挙権の始まりは、皆さん一人一人が、身近な地域のことから国の政治問題まで幅広く社会に関心を持つきっかけになると私は期待しています。

 今回の生徒会役員選挙は、昨年までとは異なり、ひと工夫してあり、投票は明日以降、会議室に各自で行くようになりました。投票場である会議室は実際の選挙の投票場のように設定されています。自ら足を運ばなければ棄権となります。各クラス100%の投票率を目指しましょう。

 それでは、この立会演説会が、皆さんにとって、どんな学校であってほしいのか、どんな学校をこれからみんなで創るのかを考える良い機会になることを願い、挨拶とします。」


野球部を励ます ~ 高校野球推戴式

野球部を励ます ~ 高校野球推戴式での校長の激励の言葉 

 昨年の夏は、多良木高校にとって熱い熱い夏でした。夏の甲子園大会熊本県予選で野球部が快進撃をみせ、次々とシード校を破り、30年振りのベスト4進出を果たしました。多良木町をはじめ地域の方、同窓会の方々と一緒に私たちも熊本市の藤崎台球場に駆けつけ、「思いはひとつ ~多良木の意地と誇りを胸に」の横断幕を掲げ、スタンドとグラウンドの選手が一体となって戦った夏が忘れられません。

 一年経ち、また甲子園の夏が巡ってきました。野球部の皆さん達には、昨年の先輩達が残した結果を超えたいという思いがあると思います。しかし、そのことが精神的重圧になってはいないでしょうか? 昨年の野球部キャプテンの大塚将稀君が、十日ほど前、学校を訪ねてきてくれました。大塚君は現在、北九州市にある九州国際大学の野球部で活躍しています。大塚君は話しました。「実は、昨年の僕たちは、先輩達と比べられているのではないかとずっと意識して、プレッシャーに押しつぶされそうでした」と。一昨年の野球部は、現在、社会人の東芝で活躍するビッチャーの善君、そして法政大学で活躍しているキャッチャーの中村君がいて秋の県大会やNHK旗杯で優勝するなどの強豪チームでした。大塚君は、「善さん、中村さん達にはとてもかなわない」と思っていたそうです。けれども、いざ夏の大会が始まると一試合一試合に集中でき、「先輩達のことは忘れ、全力で自分たちの野球ができた」そうです。大塚君は言いました。「大学の練習より、多良木高校の練習の方がきついです。厳しい練習を積み重ねてきたことを自信に、自分たちの野球を貫いて欲しい」と。

 野球場近くにお住まいのご婦人が、先日私に言われました。「今年の野球部は例年以上に声が出ているようですね。高校生の大きな声を聞くだけで元気が出ます。」。君たちは、練習の声だけで地域の方々に元気を届ける存在です。地域の応援を追い風として勢いを付け、大会に臨んでください。畑野キャプテンを中心に、一昨年のチームとも、昨年のチームとも違う、今年のチームらしさを発揮し、自分たちの野球に集中してください。 

 第98回熊本県高等学校野球選手権大会に、誇りをもって野球部を送り出します。


しなやかな若い力 ~ 高校生による復興支援ボランティア

しなやかな若い力 ~ 高校生による復興支援ボランティア活動

 「地震に負けんばい がまだすぞー 西原村魂」。西原村ボランティアセンターの敷地内の大きな立て看板に書かれた言葉です。6月18日(土)、熊本県教育委員会主催の「高校生による復興支援ボランティア」活動に多良木高校から3年生男子4人、教諭1人と共に参加しました。この度の「平成28年熊本地震」であまり被害がなかった地域の県立高校23校から84人の代表生徒が集結しました。

 当日、朝9時に県庁で出発式を行い、大型バス3台に分乗し、先ず益城町に向かいました。4月14日、16日と二度にわたって震度7の強烈な揺れを蒙った益城町は、県内で最も被害が大きい地域です。特に同町の木山地域にバスが入ると、家々が崩壊したままの惨状が残されており、現実とは思えない光景に思わず息をのみます。テレビ映像や新聞の写真では幾度も目にしていたのですが、実際に間近で見ると改めて大地震の脅威を実感します。生徒達もバス車窓から食い入るように被災地の状況を見つめていました。

 益城町から西原村に進み、同村のボランティアセンターで受付をしました。当日も県内外から多くのボランティアの人が駆けつけており、活気がありました。私たちは山間部に移動し、昼食を取った後、しいたけ栽培の原木復元作業に取り組みました。地震で2千本のしいたけ原木が倒れたまま放置されており、それらをボランティアリーダーや地元の農家の方の指導のもと、一本一本復元していくのです。不安定な斜面での作業にかかわらず、高校生達は意欲的に取り組みました。蒸し暑い天候で、ムカデも出る厳しい環境でしたが、どの生徒も苦しい顔や嫌な顔ひとつせず作業する姿は爽やかでした。作業を始めておよそ1時間半で2千本のしいたけ原木を元の位置に戻すことができました。

 この日、高校生達が行った事は、大地震の被害の前では小さい復元作業でしかありません。けれども、今回参加した高校生達が各学校に帰って体験を広め、多くの高校生に復興支援のボランティアの意識が共有されることで、大きな復元力が生み出されると思います。高校生の若さ、しなやかさは不屈です。彼らはこれからの社会を創っていく原動力なのです。


 

地に足をつけて一勝を ~ 一勝地駅記念入場券

地に足をつけ一勝を ~ 一勝地駅の記念入場券

 JR肥薩線の一勝地駅(いっしょうちえき:球磨村)は、その地名の縁起の良さから、「必勝」、「合格」等のお守り代わりに記念入場券が売れることで知られています。6月12日(日)に多良木高校から自動車で50分かけて、一勝地駅を訪ねました。一勝地は球磨村の中心部に当たり、駅は、球磨川の左岸に位置し、対岸の高台には球磨村役場が見えます。

 明治41年開業の肥薩線は、明治、大正期の駅舎や隧道(トンネル)、鉄橋等の鉄道遺産が多いことで有名ですが、一勝地駅の現在の駅舎も大正3年に完成して以来基本的な骨格が保たれており、背後の山林に調和するクラシックな木造駅舎です。駅舎やホームに立つと、およそ一世紀にわたって球磨の人々の往来の場となってきた歴史を感じます。一勝地駅内の事務室が球磨村観光案内所となっており、ここで記念入場券を7枚購入し帰って来ました。

 先般開かれた県高校総体陸上競技において男子400リレーで6位に入ったメンバーが南九州大会(6月16日~18日、宮崎市)に、そして、女子アーチェリー個人の部で2年生女子が入賞し九州大会(6月17日~18日、鹿児島市)に進出することになりました。このリレーメンバー(選手4人、補欠2人)と女子アーチェリー選手に、一勝地駅の記念入場券を贈りたかったのです。

 校長室にて、陸上部員とアーチェリー部員の併せて7人の生徒達に励ましの言葉を掛け、「地に足をつけて一勝を」と一勝地駅の記念入場券を渡しました。皆、喜んで受け取ってくれ、大会に向けて学校を出発しました。

 生徒達の健闘を心から祈ります。


           県6位入賞を果たした400㍍リレー(6月4日八代市)


若者たち ~高校総体2

若者たち ~ 高校総体その2

 今年の高校総体の陸上競技は、熊本地震の影響で熊本市の県民総合運動公園陸上競技場(「うまかな・よかなスタジアム」)が使用できず、県営八代運動公園陸上競技場(八代市)で6月3日から6日にかけて行われました。

 6月4日(土)と5日(日)のそれぞれ午後の半日、多良木高校陸上競技部の選手を応援しました。収容人員32000人の巨大な競技場である「うまかな・よかなスタジアム」とは異なり、八代の陸上競技場はスタンドも小さく、雨が降る時は周辺の芝生広場のテントで待機するという状況で、例年と比較すると選手のコンディションには厳しいものがあったようです。応援する者にとっても、雨が降ると傘をさし、競技場のトラック(競走路)の周囲に立っての応援となりました。しかし、競技中の選手と距離が近く、選手の息づかいや流れる汗が感じられる程で、陸上競技の醍醐味を満喫できました。

 本校から3人の女子選手が出場した400mハードル競技は負荷の大きい種目で、1人の1年生選手はゴールすると倒れ込み、しばらく起き上がることができませんでした。また、男子2人が出場した5000m、3000m障がい、そして女子2人が挑んだ3000mと長距離レースはいずれも過酷で、苦しそうに表情をゆがめゴールを目指す姿には、こちらも熱くなり声援を送りました。苦しくてもひたすらゴールを目指す選手達の姿を至近距離で見ていて、中学校の音楽の授業で歌った「若者たち」(作詞:藤田敏雄、作曲:佐藤勝)の歌詞の一節が思い浮かびました。 

   「君の行く道は 果てしなく遠い
     だのになぜ 歯をくいしばり
     君は行くのか そんなにしてまで」

   高校総体が終わり、先日、陸上競技部の選手達が応援の御礼に校長室まで来てくれました。その時、私は「君たちは苦しくてもなぜ走るんだろう?」と問いかけました。すると1人の生徒が「なぜでしょうね? 自分でも時々わからなくなります。」と笑って答えてくれました。


                                       雨の中、応援する陸上部員

限りある時間の中で ~ 高校総体1

限りある時間の中で ~ 高校総体その1

 

 高校に入学し、自分の好きなスポーツの部活動に入って練習を始めた頃は、高校生活も部活動も無限に続くような感覚を持っていたことでしょう。記録が伸びない、上達しない等、壁にぶつかり悩んだ日、あるいは勉強との両立で苦しんだ日もあったことと思います。しかし、どんな時間も有限です。限りがあるのです。このチームメートといつまでも部活動に打ち込んでいたいと思っていても終わりは来ます。高校に入学しておよそ2年2ヶ月後に3年生として県高校総体を迎えることになります。

 今年の県高校総体は、熊本地震の影響で、会場も分散しての開催となり、本校からはサッカー、陸上、バスケットボール(男子)、バレーボール(女子)、ソフトテニス、アーチェリー(女子)の6種目に参加しました。

 5月29日(日)に先行開催されたサッカー1回戦(大津高校運動場)は熊本高校と雨天のもと泥だらけの試合となりました。それでも選手達はフェアプレーで戦い抜き、惜しくも敗れました。試合終了後、水たまりのグラウンドに膝をつく選手達を見て、もっと良いコンディションでさせたかったと無念の思いに包まれました。6月3日(金)から全面的に総体が始まり、バスケットボール男子の1回戦(玉名高校体育館)は力が拮抗している八代清流高校と熱戦となり、応援していて力が入りました。リードして迎えた第4クォーターで逆転されて悔しい敗戦。号泣する3年生選手の姿が印象的でした。

 そして女子バレーボールは、6月3日(金)の1回戦に快勝し、翌4日(土)に第1シードの鎮西高校と対戦しました(秀学館高校アリーナ)。強豪相手に第1セットでは16点も得点し、練習の成果を十分に発揮しました。しかし、試合後3年生は涙を流しました。試合に関して悔いはなかったかもしれませんが、このチームでもうバレーボールができない悲しさに襲われたのでしょう。

 負けたことで多くのことを学ぶことができるのがスポーツです。そして、高校総体が終わり、どんな時間も限りあることを生徒達は実感したことでしょう。

                   (女子バレーボール1回戦)

 
 

 

 

スポーツマンシップでいこう ~ 高校総体推戴式

 5月26日(木)、中間考査終了後に第1体育館で高校総体推戴式を行いました。今年度、本校からは陸上、男子バスケットボール、女子バレーボール、ソフトテニス(男女)、アーチェリー、サッカーの6競技に参加します。激励の挨拶を次に掲げます。

 「今年の高校総体は、熊本地震の影響で例年とは大きく異なり、県民総合運動公園陸上競技場での総合開会式はなくなり、主に熊本市及びその近郊で実施されていた競技が、県北から県南にかけて広い地域で分散して開催されることとなりました。けれども、関係者の御尽力によって開催されることを皆さんと共に感謝したいと思います。

 県高校総体のテーマは、昨年に引き続き「スポーツマンシップでいこう」です。「スポーツマン」とはスポーツをする男性という狭い意味ではなく、女性も含めて「スポーツをする人」と広く捉えた表現だと思います。スポーツマンシップとは何でしょうか? 昨年度の総合開会式で高体連の赤星会長が、スポーツマンシップとは、ルールを守り、審判に敬意を表し、勝っても負けても相手を称えることだと話しをされました。応援する者も、スポーツマンシップに則って応援しなければなりませんが、昨年の高校総体で私には苦い思い出があります。

 サッカーの1回戦、八代農業高校との試合を応援に行きました。確か、昨年の本校のサッカー部の部員は15人だったと思います。サッカーはイレブン、11人でプレーする競技ですから、15人は余裕のない部員数です。ところが、相手の八代農業高チームは10人しかおらず、初めから一人足りないハンディがあるのです。前半は3-0で多良木高校がリードして終わり、ハーフタイムを迎えました。八代農業は交代する選手もいないため、後半はこのまま点差が開き、大差になるだろう、気の毒だなあという気持ちに私は包まれました。しかし、後半の八代農業高校の選手達は1人足りない10人で、体をはって果敢にプレーし、多良木の攻撃を止め一点も許しませんでした。後半は0対0で終わり、八代農業高校の健闘が光りました。試合後、私は、八代農業高校の選手達に対して、申し訳ないというか恥ずかしい気持ちになりました。私はスポーツマンシップに反し、試合はまだ終わっていないのに、相手を見下した考えに支配されていたのです。次の2回戦は部員が70人もいる熊本北高校が相手でした。今度は一回戦とは立場が逆で、多良木高校サッカー部は、懸命に粘り、リードされても追いつき、最後PK戦までいき惜しくも敗れました。

 スポーツは筋書きのないドラマだと言われます。応援する者の心が熱くなるような試合、レース、競技を今年も期待します。そして、繰り返しますが、ルールを守り、審判に敬意を表し、勝っても負けても相手を称えるというスポーツマンシップを発揮して欲しいと願い、激励の言葉とします。」

                           


選手代表の挨拶

第66回体育体育大会開催

 5月14日(土)、風薫る五月晴れのもと、熊本県立多良木高等学校第66回体育大会を開催しました。開会式に先立ち、「平成28年熊本地震」の犠牲者の方に全員で黙祷を捧げました。今年度の体育大会が3学年そろう最後の大会となります。校長の開会挨拶を次に掲げます。

「五月晴れのもと、熊本県議会議員 緒方勇二様、多良木町町長 松本照彦様をはじめ多くのご来賓の方々、そして保護者、地域の方々に御臨席いただき、熊本県立多良木高等学校第66回体育大会を開催できますことを生徒の皆さんと共に喜びたいと思います。

 ちょうど一か月前、「平成28年熊本地震」が発生し、未曾有の災害に熊本県は見舞われました。甚大な被害を受けた地域の復興は始まったばかりであり、被災地の学校では体育大会を開くことができないところもあります。こうして、体育大会を実施できることに心から感謝すると共に、立ち上がろうとされている被災地の方々に向けてここ多良木の地から元気を発信したいと思います。

 今年の体育大会のテーマは「がむしゃら ~ 一瞬一秒に感動を」です。土にまみれてもいい、多少の演技のミスがあってもいい、皆さんの若さと勢いで押し通し、これまでの練習の成果を発揮してほしいと思います。併せて、大会の円滑な運営を担う各係の皆さんが責任をもって自分の役割を果たすことを期待します。そして、笑顔と歓声があふれる大会になることを願っています。

 結びになりますが、ご観覧の皆様には、全校生徒に対するご声援をよろしくお願いして、開会の挨拶といたします。」

                                「多高生」の人文字

 

平成28年度PTA総会

 5月7日(土)に平成28年度多良木高校PTA総会を開催しました。開会に当たり、「熊本地震」で犠牲になられた方に対し、黙祷を捧げました。校長挨拶の前半部分では、この「熊本地震」に伴う本校の被害状況及び対応等について説明し、安全・安心な学校づくりに一層努めていくことを誓いました。校長挨拶の後半部分を次に掲げます。

「さて、本校にとって最後の入学生である新入生73人を迎えることができました。多良木高校の歴史のアンカーを走ってくれる頼もしい生徒たちです。2年生67人、3年生64人、全校生徒204人です。30人の職員全員で204人の全校生徒を支援していきます。小規模校の特性を生かして、一人一人の生徒に寄り添い、きめ細かな指導、支援に努めていく所存です。生徒たちがもつ豊かな可能性を引き出し、学力をはじめ様々な力を伸ばし、多良木高校の教育成果を地域に広く発信していきます。

 ここで、昨年度後半に保護者の皆様に御協力いただいた学校評価アンケート結果についてお話しします。

 「多良木高校は保護者や地域から信頼されている」

 「多良木高校は学校行事が充実している」

 「多良木高校は部活動が活発である」

などの多くの項目について、保護者の皆様から、「よくあてはまる」「ややあてはまる」という肯定的な意見が90%を超えるという高い評価をいただきました。学校の教育活動への御理解の表れだと深く感謝すると共に、今年度はさらに100%に近づくよう努力していきます。

 

 来週土曜日、5月14日は体育大会を予定しております。4月28日から全体練習を開始し、全校生徒が気持ちを一つにして取り組んでいます。どうか御観覧いただきますようお願い申し上げます。

 結びになりますが、お子様のことで何か気になることがありましたら、遠慮なく担任や学年主任へ御連絡いただきたいと思います。保護者の皆様の願いと学校が目指すものは同じだと思っております。学校の教育活動への御理解と御支援を重ねてお願いして、私の挨拶といたします。」


スポーツの力で元気を発信

スポーツの力で元気を発信

 

 4月14日(木)夜の「熊本地震」発生以来、2週間以上経過しました。いまだ熊本地方では余震が続き、多くの方が避難生活を余儀なくされていることに胸が痛みます。そして、熊本市をはじめ県全域で24校もの県立学校が休校状態(4月27日現在)です。被害が大きい学校は、5月の大型連休明け以降に授業再開がずれ込むところもあるようです。

 球磨郡はこの度の地震災害の被害をほとんど蒙ることなく、小、中、高校ともに平常の教育活動が展開できています。そのため、被災地から小、中学生が球磨郡の学校に転校してくる動きも見られます。また、被災地の公立・私立の高校に通学している球磨郡出身の生徒が一時帰省しています。そして、体育系部活動の練習を長くできていない高校生が、本校の部活動練習への参加を希望するケースも出てきました。保護者もしくは所属校からの依頼を受け、安全面に配慮して、柔軟に対応しています。陸上、バスケットボールで本校生と一緒に練習する生徒の姿からは、自分の好きなスポーツをできる喜びが感じられ、本校の生徒にとっても豊かな交流の機会となっています。また、被災した大学の野球部員が本校の野球場で自主練習に励む光景も見られます。本校の恵まれたスポーツ環境を活かし練習や合宿の場を提供することで、被災地の学校及び生徒の皆さんに対して多良木高校ならではの支援ができるのではないかと考えます。

 4月29日の祝日には、本校をはじめ球磨人吉地域の4つの高校の女子バレーボール部が集まり、合同練習試合を行いました。本校は被災地に水を送る支援活動を行い、今後は生徒会で募金活動を予定しています。しかし、高校生の本分である学習活動や部活動に真摯に打ち込むことこそが、被災者の方に明るい気持ちになってもらえる最大の「支援活動」になるのではないかと思います。

 スポーツを通して元気を発信しよう、との合い言葉のもと多良木高校の各部活動はこれまで以上に声を出し、気持ちを奮い立たせています。

            女子バレーボール練習試合(多良木高校第1体育館)

被災地に球磨の水を送る ~ 「熊本地震」支援活動

被災地に球磨の水を送ろう ~ 「熊本地震」被災地支援活動

 

 4月20日(水)の朝、「熊本地震」の被災地の一つである西原村に水を送る支援ボランティアに多良木高校として取り組みました。多良木高校同窓生の方から、水不足で困っておられる西原村の避難所に水を運びたいとの協力依頼があり、学校として支援ボランティア活動を始めたのです。前日、全校生徒に「1㍑か2㍑のペットボトルに家庭の水道水を入れて持ってくるように」と呼び掛けました。当日朝、生徒だけでなく、保護者の方や、話しを聞きつけられた近隣の住民の方もペットボトルの水を持参され、およそ千㍑の水が集まりました。 午前8時半過ぎに、生徒会の生徒や1年1組体育コースの男子が中心となって、車に積み込みました。

 多良木高校の「水」は約5時間かけて運ばれ、西原村小森の避難所である山西小学校に届けられました。被災された方々が大変喜んで受け取ってくださったそうです。ペットボトルの一部には、生徒会の生徒によるメッセージがマジックで書き込まれていたのですが、それを読まれた高齢のご婦人が涙を流されたそうです。

 4月14日(木)の夜の大地震発生以来、甚大な被害が出ている「熊本地震」。ニュース映像で見る上益城郡、熊本市、阿蘇地域の被災地の様子には言葉を失います。現在、被災地では余震が頻発し、震災は長期化の様相を呈しています。出口の見えない状況で、被災者の方の疲労が心配されます。

 この非常時、同じ県民として、「気持ちを一つにしよう」と4月18日(月)の臨時全校朝礼で生徒に語りました。今、高校生が被災地に赴くことは危険であり、現実的ではありません。しかし、今回のように運送手段さえ確保できれば、「水」という最も必要とされているものを、生徒一人ひとりが持ち寄り積み込むという簡単な行為で、被災地を応援することができます。遠隔地にいる高校生と被災者の方との気持ちをつなげることができます。今後も、地域の役場等と連携して、被災地に球磨の水を送る活動を続けていきたいと思います。


  水を車に積み込む多良木高校生

気持ちをひとつに ~ 「熊本地震」にかかる緊急全校朝礼

 4月18日(月)、緊急の全校朝礼を第一体育館で行いました。4月14日(木)の夜、16日(土)未明に県央部で大きな地震が起き、その後も余震が続く非常事態を受けて、同じ熊本県に住む者として気持ちを一つにしたいという目的で全校生徒に集まってもらいました。最初に全員で黙祷を行い、次に私が生徒に語り掛けました。

「ただ今、黙祷を全員で行いましたが、多くの犠牲者、そしてまだ把握できていないほどの負傷者、家屋の被害など今回の地震災害は熊本県に大きな爪痕を残しました。益城町をはじめとする上益城郡、熊本市、阿蘇、宇城地方が受けている被害は甚大で、私たちの想像を絶するものです。同じ熊本県に暮らす者として、気持ちを一つにするため、こうして全校朝礼を行いました。

皆さんに二つのことを伝えます。

 一つは、普通の生活のありがたさをかみしめよう、ということです。被災された方々が口をそろえて、「早く普通の生活に戻りたい」と言われている様子をニュース映像が伝えています。蛇口をひねったら水が出る、スイッチを入れたら電気がつく、お風呂に入れる、食事ができる、自分の部屋で眠ることができる、これらの普通の生活ができることは実は多くの人の力で成り立っているのです。それを普段、私たちは意識していませんが、いったん災害が起こるとそれらは瞬時に断ち切られます。今日、こうして多良木高校が平常の学校活動ができることを皆さんと共に感謝したいと思います。

 もう一つは、自然災害を正しく恐れる、ということです。地震は、今の科学技術では予知不能でいつ起きるかわかりません。次はこの球磨郡で巨大地震が発生するかもしれません。しかし、その時パニックにならないよう、基本的な知識や心構え、準備をしておくことが必要です。自宅に、非常用の水、食料、懐中電灯が用意してあるか、家族で確認してください。学校は、平成22年度から耐震化工事を進めてきています。皆さんが主に生活する教室、体育館などは今回の震度6から7クラスの大地震にも耐えられます。しかし、大きな揺れが治まったら、各自でグラウンドへ避難しましょう。もし帰宅できない状況になっても、本校のセミナーハウス、平成7年度につくられ、耐震性に優れた建物ですが、ここに宿泊することができます。

 結びに、もう一つ皆さんに伝えておきたいことがあります。災害が起きたとき、皆さんは弱者ではありません。子どもやお年寄り、障がいのある方を助ける方に皆さんはまわらなければなりません。東日本大震災の時にも、災害で多くのものを失い、落ち込んでいる大人に対し、気力、体力を備えた高校生がとても頼りになったそうです。

 何が起こっても、自分の気持ちをしっかり持って、仲間同士助け合っていけば、困難を乗り越えることができるという覚悟で生活していきましょう。」

安全・安心な学校づくり ~ 「熊本地震」発生

安全・安心の学校づくり ~ 「平成28年熊本地震」発生

 

 平成28年4月14日(木)の午後9時半近くでした。職員住宅の部屋で寛いでいた私は、携帯電話の地震発生情報メール音に驚き、その直後の大きな揺れに動揺しました。夜の静寂(しじま)を破る突然の地震。揺れは数十秒で治まりましたが、その後も余震が続き、不安な夜を過ごすことになりますが、その頃、震源地の益城町や熊本市では震度6から7の激震に襲われ、7人の方が亡くなり、多数の負傷者、そして建物の損壊と大惨事が発生していたのです。被災地では慟哭の情景が広がっていると思うと、胸が痛みます。気象庁は「平成28年熊本地震」と翌日に発表しました。

 人吉・球磨地方は最大震度3程度で済んだため、被害はほどんどありませんでした。多良木高校も、翌日は平常の教育課程を実施でき、テレビ画面に映る益城町や熊本市の惨状が同じ県内のものとは思えませんでした。しかし、地震の脅威をまざまざと思い知らされた次第です。

 学校は安全、安心な場所でなければなりません。多良木高校では平成22年度から校舎の耐震化工事を計画的に進めてきました。すでに、生徒が主に学校生活を過ごす教室棟、理科棟、そして体育館等は完了しています。残る昇降口棟と玄関棟の耐震化工事を今年度行う予定で、これで全て終わることになります。昇降口棟の工事に先立ち、教室棟から第1体育館への仮設渡り廊下も竣工して、生徒が利用しています。

 耐震化工事期間中は、安全面に最大限配慮すると共に、生徒の学校生活への影響をできるだけ防ぐ方針で取り組みます。今回の「熊本地震」を受け、生徒諸君にとっても改めて耐震化工事の重要性を認識してもらえるものと思います。地震、台風など大自然の脅威はいつ顕在化するか、人智の及ぶところではありません。5年前の東日本大震災の時に、私たち日本人は、自然の猛威に対し、畏れ、おののいた体験を持ちます。その体験が次第に風化してきたように感じてきた今、「熊本地震」が発生しました。大地震の前に無力感を覚えますが、やはり、災害への不断の備えに努めることが私たちの責務です。

 安全な学校であってこそ、安心して生活できます。耐震化工事をはじめ、今年度も安全・安心な学校づくりに努めたいと決意を新たにしました。


                 竣工した仮設の渡り廊下

輪になって食べよう ~ 対面式

輪になって食べよう ~ 対面式

 

 新入生と2、3年生との対面式を4月12日(火)に第1体育館で行いました。生徒会の計画、運営で行われるもので、今年度は新たな企画として、「多良木高校○×クイズ」を実施した後、カレーライスの昼食を全校生徒で楽しみました。カレーライスは、前日から家庭科の先生方の指導のもと有志生徒が準備しました。最初は全校生徒204人と職員で、体育館で大きな車座となっての昼食を考えたのですが、クラスの親睦を重視して、クラス毎で輪になっての食事となりました。今年度は各学年2クラスですから、6つの輪が体育館にでき、その輪に担任、副担任等がそれぞれ入り、和やかな昼食風景となりました。

 古来、祭礼の時に食事を皆で一緒になってとる行為は、神の前に集団が一致結束することを誓う儀式でした。今回、生徒全員で一堂に会して昼食を取ったことは、新入生が名実共に多良木高校生になったことを示す行事でもあるのです。そういう意味では、生徒会は、まさに古式ゆかしい対面式を実現したことになります。

 「環に端無し」という言葉があります。環(輪)に端はありません。クラスで一つの輪になることは終わりのない友情を築くことにつながります。6つの輪を眺めながら、一人ひとりに心地よい居場所のあるクラスをこれから創ってほしいと願いました。


最後の入学式 ~ アンカーへの期待

 4月8日(金)午後1時半から平成28年度多良木高校入学式を挙行しました。この4年間では最多の73人の入学生を迎えることができましたが、彼らが卒業する平成31年3月には本校は閉校の定めにあります。本校最後の入学式には、在校生の2、3年生も出席し、来賓の方々をはじめ、同窓会員、町民有志の方も50人以上御出席いただき、盛大な歓迎ができました。校長式辞の一部分を次に掲げます。


 「新入生の皆さん、皆さんは多良木高校の期待と注目のアンカーです。アンカーを走ることで他の学校ではできない多くの特別な体験ができ、同窓会や地域の方々の熱い応援を受けることでしょう。皆さん、一緒に走り、三年後に感動のテープを切りましょう。 
 
多良木高校は地域と共に在ります。日本遺産にも認定された歴史豊かでおもてなしの文化が息づく人吉、球磨地域全体が学びの場です。

《中略》
 さて、式典の最後に、二年生、三年生の先輩諸君と私たち教職員、そして同窓会の方々とで高らかに校歌斉唱を行います。人吉出身の音楽家として名高い犬童球渓作詞の校歌であり、昭和三年に作られました。以来、およそ九十年にわたって世代を結び、歌い継がれてきました。多良木高校の精神とも言うべきこの校歌を新入生の皆さんにつなぎます。歌詞は古文調で少し難しく感じると思いますが、高校生活を送る中で次第に意味がわかり、多良木高校の精神を身に付けていくことでしょう。歓迎の校歌斉唱を心で受けとめてください。

 いよいよ高校生活が始まります。今の初々しい気持ちが原点です。学校は学びをとおした人間成長の場であります。皆さん、一日一日を大切にしていきましょう。」


 

肥薩線「山線」に乗る ~ 明治の鉄道遺産を訪ねて

肥薩線「山線」に乗る ~ 明治の鉄道遺産を訪ねて

 

 人吉・球磨地域にある五つの県立高等学校は、いずれも鉄道の駅から徒歩10分以内の位置にあり、通学にはとても便利な条件を備えています。自動車社会の今日においても、鉄道の安定性、公共性は何物にも代え難いものがあります。くま川鉄道、JR肥薩線に時折乗車する機会がありますが、車窓風景を楽しみながら、安心して列車の揺れに身体を委ねることができます。

 人吉・球磨地域は昨年「日本遺産」(文化庁)に認定された歴史豊かな地域で知られますが、実は、明治や大正の「鉄道遺産」が多く残っていることでも有名です。高校の校長として地域のことをより深く知りたいと願い、春休みの半日を使い、肥薩線の人吉駅から吉松駅までの往復列車の旅を体験しました。

 熊本県八代市から鹿児島県霧島市(隼人駅)までを結ぶ肥薩線は明治42年に開通した路線ですが、中でも人吉駅から吉松駅(鹿児島県湧水町)の35㎞の区間は、21カ所のトンネル(隧道)がありスイッチバック、ループ線など難所の山越え路線で名高く、鉄道ファンから「山線」と親しまれています。

 人吉駅を出発した観光列車は、急勾配の山線をゆっくりと進みます。明治末期に造営、開業されたままの姿を残す大畑(おこば)駅、矢岳(やたけ)駅、真幸(まさき)駅と停車します。どの駅も山間の無人駅ですが、温かみのある木造で、塵一つ落ちておらず、地元の方が大切に守っておられることが伝わってきます。また、矢岳と真幸の間にある矢岳第一トンネルは肥薩線の最長(2096m)のトンネルですが、明治42年開業以来、石造りの堅牢な姿で百余年も現役として存在していることに驚かされます。併せて、山奥での大工事は資材運搬をはじめ大変な労苦があったことが想像に難くありません。

 矢岳第一トンネルの人吉側には、当時の逓信大臣・山縣伊三郎の揮毫で「天険若夷」(てんけんじゃくい)、吉松側には、鉄道院総裁・後藤新平の揮毫で「引重致遠」(いんじゅうちえん)の扁額が取り付けられています。これらの言葉をつなぐと「天下の難所を平地であるかのように工事したおかげで、重い貨物であっても、遠くまで運ぶことができる」という意味になるそうです。

 人吉駅から吉松駅までの肥薩線、通称「山線」を約3時間掛け往復してみて、鉄道遺産に込められた明治の先人の気概、志に触れることができ、何か厳粛な思いに包まれました。


               肥薩線矢岳駅(明治42年開業)

学校の桜

学校の桜 

 

 4月1日、多良木高校に新たに6人の教職員の方が転入してこられました。坂本道彦教頭先生、緒方真代先生(国語)、高山裕先生(地歴)、事務の宮原雄翔先生、吉田七海先生(商業)、学校図書館事務職の松本麻衣子先生です。今年度の多良木高校の教職員は全員で30人となります。仲間と一緒にこれから1年間、苦楽を共にしていくことになります。職員室の座席のレイアウトも一新され、学校もいよいよ動き出しました。

 学校は3月末から4月初めにかけて人事異動と新学期の準備等と最も慌ただしい時期となります。そのため職員はゆっくり花見もできにくい状況です。しかし、学校には必ず桜があります。およそ日本の学校で校庭に桜が一本も植えられていない所はないでしょう。私たち教職員の花見は校庭の桜です。桜の花を見て、旅立った卒業生や入学してくる新入生を思い、新年度が始まることを実感します。
 桜は日本人にとって特別な花です。冬を越え、ようやく到来した春の象徴であり、しかもその開花期間は短く、惜しむように愛でることになります。社会の国際化に伴い、日本の学校入学時期を世界の大勢に合わせて9月入学にしたらどうかという議論が久しく行われてきました。しかし、多くの支持が得られずにいる要因として、校庭の桜のもとで新入生を迎えたいという日本人の心性があるのではないでしょうか。

 多良木高校の校庭にも桜が幾本かあります。この週末に満開を迎えましたが、昨夕からの雨でもう散り始めました。本校の入学式は4月8日です。入学生が桜の花を見ることはできないでしょう。はらはらと散る桜を見て佇んでいると、古歌に言う「しづ心(静心)なく花の散るらむ」の心境となります。