校長室からの風(メッセージ)

2015年5月の記事一覧

左手のピアニスト

左手のピアニスト

 
 命を大切にする心を育むことを目的に人権教育講演会を5月21日(木)に多良木高校で開催しました。あさぎり町在住のピアニスト、月足(つきあし)さおりさんを講師として招きました。演題は「いのちの音色を響かせたい」。

 月足さんは、小学校1年からピアノを習い、東京の音楽大学を卒業してピアニストの道を歩み始められました。しかし、出生の時から「脊髄空洞症」という難病と共に生きてこられたのです。最初に両足が不自由になられ、大学時代に視力が低下し、近年は右手に激痛が走るようになり、今は左手のみで演奏されています。その左手も病が進行し、特殊な装具を付けることによって演奏が可能な状態を維持されています。

 ピアノを前にして座られ、かざりけなく率直に御自分のこれまでの歩みを語られました。視力が低下し、自分の病気が治る見込みのない難病だと自覚された時は絶望し、「死」を思われたそうです。

 「しかし、私の病気のことで、家族や友達は陰で多くの涙を流していたことを知りました。死ねば私は楽になるのかもしれないけれども、家族や友達をもっと悲しませることになってしまうと思いました。まわりの涙で支えられたようなものでした。」

 絶望を乗り越えた月足さんをまた不幸が襲います。目標の国際障害者ピアノフェスティバルの2か月前に、頼みの左手が動かなくなったのです。再び絶望の淵に沈んだ月足さんを救ってくれたのは、装具士の方でした。ピアノ演奏に適合した特別仕様の装具を製作してくださったのです。そして、2013年(平成25年)、ウイーンで開催された国際障害者フェスティバルにおいて金賞を受賞されたのです。 

 「もう一度生まれ変われたら健康な身体で生きたいと思います。けれども、健康だったら気づかないことに気づくことができました。何でもないことが楽しい、と感じることができるようになったことに感謝しています。」

お話の合間に「アヴェ・マリア」はじめ3曲演奏されました。月足さんのお話が進むにつれ、目頭を押さえる生徒の姿が見られました。

「これから病気が進行して、今までできていたことができなくなることが怖いし、悲しいです。でも、私一人の命ではないので、もう死ぬことは考えません。明日、ピアノを弾くことができなくなるかもしれないので、これで最後になってもよいと思ってピアノを弾くようにしています。」

 月足さんはそう言われて、自ら作詞作曲の「雫 ~しずく~」を最後に弾かれました。深い余韻を残し、講演会は閉じられました。月足さんの「いのちの音色」は私たちの心の奥底まで響きました。



保護者の皆様へ(PTA総会)

 5月16日(土)午後、PTA総会を開催しました。
 御出席いただいた保護者の皆様に感謝申し上げます。総会の際に配布されたPTA会報「木綿葉(ゆうば)」の校長挨拶を次に掲げます。

                         

                     地域と共に

 保護者の皆様には、日頃から本校の教育活動に御理解と御協力をいただき、厚く御礼申しあげます。この度、校長に就任した粟谷です。昨年度一年、阪本校長の下で副校長としての勤務経験はありますが、責任の重さに身の引き締まる思いです。

 さて、四月八日に入学式を挙行し、六十九人の新入生を迎えることができました。県立高等学校再編整備実施計画の対象校という厳しい環境の中、よくぞ本校を選んでくれたと感謝の思いです。教職員一同、新入生の期待に応えるべく全力で取り組んでいく所存です。

 今年度、新二年生が六十三人、新三年生が六十五人であり、新入生を合わせ全校生徒百九十七人です。高等学校としては小規模ですが、小規模校の特性を生かし、一人一人の可能性を引き出す教育に全職員で努めます。そして、保育園児から小、中学生、あるいは高齢者の方々まで幅広い交流の機会を設けます。また、地域の行事への参加をはじめ、日頃の学習成果を積極的に発信していきたいと思います。

 福祉教養コースの実習や二年生のインターンシップ(就業体験)など、学校教育の充実には地域社会の御支援が不可欠です。一方、高校生は、スポーツ、文化、ボランティアと多方面にわたって地域に活力を与える存在でもあります。本校は今年度も地域と共に歩んでいきます。

 多良木高校はいつも学校を公開しています。学校行事や部活動だけでなく、普段の学校の様子を御覧ください。そして、お子様のことで何か気になることがあれば、遠慮なく担任等に御相談ください。保護者の皆様と共により良い学校づくりに取り組んで参ります。宜しくお願いいたします。

 



体育大会

 5月10日(日)に第65回体育大会を開催しました。閉会式における講評を次に載せます。

体育大会の講評

 昨日の雨の影響で、開会を1時間遅らせての体育大会でしたが、生徒の皆さん一人一人が主体的に動き、プログラムも順調に進行でき、多良木高校の力を結集して体育大会を創り上げることができました。保育園の子ども達やお年寄りの方々、そして保護者の方々にも喜んで競技に参加していただき、地域の皆さんと交流も深めることができました。多良木高校はこれからも地域に開かれたオープンな学校でありたいと願っています。

 それぞれのプログラムはどれも見応えがあり、皆さんの一生懸命さが伝わってきました。ゴール目指して疾走する姿には熱いものを感じました。結果は1位2位…と表れますが、自分の走りができたかどうか、自己評価が一番です。大縄跳びや7人8脚競走、台風の目などの技巧種目は、参加者が気持ちを一つにしないとできないものです。チームワークの難しさを体験できたのではないでしょうか。そして、リレーはやはり体育大会の華です。「頼むぞ」、「よし」というバトンリレーの瞬間には引きつけられました。声援、歓声も一段と高まり、会場が大いに沸きました。また、全校生徒による集団演技「キラリ輝く多高生」は、きびきびした動き、力強さ、柔軟性、そして豊かな表現力と多良木高校生の力を遺憾なく発信できたと思います。ダンスの女子は笑顔が素敵でした。笑顔に勝る化粧なし、という言葉を贈ります。体育コースのプロムナード(集団演技)は観衆を大いに魅了しました。さすがは体育コース、と思わせる高い身体能力を見せてくれ、見事でした。

 体育大会をとおして皆さん達に特に胸に刻んで欲しいことがあります。それは、自分が一生懸命に取り組んでいればきっと誰かが見ている、認めてくれるということです。練習、準備、そして今日の本番と続く中、皆さん一人一人の努力を、友達が、クラスメイトが、先生が気付き、認めてくれたと思います。昨日の朝礼で担任の先生から紹介があったと思いますが、通学する多良木高校生が道ですれ違う町民の方に大きな声で挨拶する姿が素晴らしい、とおほめの手紙が地元多良木町の方から寄せられました。「当たり前のことができる生徒さんが立派です」とその手紙は締めくくってありました。

皆さん一人一人が多良木高校です。全員が、自分に恥じない、当たり前のことを自然にできる生徒になって欲しいと期待します。

結びになりますが、最後まで御観覧いただいた保護者、地域の皆様に深く感謝を申し上げ、講評を終わります。