校長室からの風(メッセージ)

2018年3月の記事一覧

「真幸駅」の入場券 ~ 転退任式

       「真幸駅」の入場券 ~ 転退任式 

 桜満開の3月28日(水)、多良木高校では教職員の転退任式を行いました。平成30年度熊本県教職員人事異動に伴い、本校から3人の教諭が転任、そして3人の常勤講師が今月で本校を退任して4月から新たな学校で勤務することになりました。人事異動は私たち県立学校に勤める職員にとっては定めです。生徒と共に感謝と惜別の思いで見送ります。

 転退任の6人の職員の皆さんに、私はJR肥薩線「真幸駅」の入場券を贈りました。JR肥薩線の人吉駅から鹿児島県吉松駅までの通称「山線」と呼ばれる区間は、県境の険しい山岳地帯を越えるため今や全国でも珍しい回りながら山を登るループ線や急勾配を折り返しながら登るスイッチバックが残り、明治の終わりころの古い駅舎が今もその佇まいを見せ、鉄道ファンにとっては聖地のようなところです。

 人吉駅を出発すると、大畑駅、次に矢岳駅、ここまでが熊本県で、宮崎県に入って真幸(まさき)駅に到着します。明治44年築造の宮崎県で最も古い駅舎が山の中にあります。真の幸せと書いて真幸と読みます。駅名にちなんで、幸せの鐘がホームにあります。ここの入場券は、「真の幸せに入れる」ということで人気があります。周りに集落のない無人駅ですが、観光列車が止まる時には客室乗務員等が対応されて入場券を購入できるのです。
 この3月でJRの列車の本数がさらに削減され、人吉から吉松方面へ行く列車は観光列車を含め一日に3本しかありません。先週の土曜日に人吉駅午前10時8分発の観光列車「いさぶろう号」に乗り、真幸駅に行ってきました。入場券一枚たった160円ですが、肥薩線に乗って求めてきたという私の思いを込め、転退任の皆さんに贈りました。

 送別の歌として名高い「蛍の光」の歌詞の1番の最後に「さきくとばかりうとうなり」とあります。「どうかお幸せにと願い 歌います」という意味でしょう。6人の職員の皆さんには、真の幸せの「真幸駅」の切符を手に、次の学校に向かって元気に旅立ってほしいと願います。


「ちはやふる」 ~ 「百人一首」クラスマッチ

「ちはやぶる」 ~ 「百人一首」クラスマッチ 

 「ちはやぶる かみよもきかず たつたかわ」の上の句が読まれ始めたとたん、 即座に「からくれないに みずくくるとは」の下の句を生徒たちは取り合いました。さすがに高校生はこの在原業平の歌には敏感に反応します。「ちはやふる」という少女漫画(コミック)が人気となり多くの若者に読まれ、映画化もされて話題となっています。百人一首による競技カルタに打ち込む高校生の青春ドラマが描かれているそうです。

 3月20日(月)、生徒会による企画で、多良木高校としては初の試みとなる百人一首のクラスマッチを行いました。現在、本校は2年生の2クラス67人が在籍ですが、クラスごと9チームをつくり、各試合に3人が出場、他に1~2人が審判役を務め、9試合同時展開の全員参加型の競技カルタに興じました。

 競技カルタに取り組んでいる百人一首クラブや同好会がある高校は県内で公私立合わせ10校ほどあると思います。県高校総合文化祭で競い合い、全国高校総合文化祭の全国大会に出場します。文化部ですが、競技はまるでスポーツの試合のような気迫と緊張感が漂います。

 しかし、本校の生徒の場合、「ちはやぶる~」のように覚えている歌は少ないようで、お手つきも多く下の句の札をなかなか取ることができず、笑いや歓声の絶えないクラスマッチとなりました。1組と2組とそれぞれクラスはありますが、67人全員がひとつの大きなクラスのようなものであると感じた、今日のクラスマッチでした。

 「百人一首」は今から800年前の鎌倉時代初期に藤原定家が編纂しました。7世紀の白鳳文化、8世紀の奈良時代、そしてその後の平安時代から合計100人の優れた歌人の代表的な歌一首を選び時代順に並べたのです。1番は天智天皇、2番は持統女帝、3番は柿本人麻呂と続きます。天智天皇や持統女帝などは7世紀、600年代の半ばの人です。21世紀初頭を生きている私たちは、およそ1400年前の歌に親しんでいることを考えると、言葉の永遠性に気付かされます。


 


「あなたの夢は?」 ~ ボンボ藤井さんの言葉の力

「あなたの夢は?」 ~ ボンボ藤井さんの言葉の力


 ◇ 「夢は必ず叶う。諦めなければ。」

 ◇ 「絶対に失敗しない人というのは何も挑戦しない人のこと。」

 ◇ 「ピラミッドは頂上から作れない」

 ◇ 「チャンスはピンチの顔をしてやってくる。」

 ◇ 「私の夢は○○○です。」から「私の目標は○○○です。」へ


 これらの言葉は、3月14日(水)に多良木高校で行われた進路講演会で、ボンボ藤井さんが生徒に熱く語りかけられたものです。ボンボ藤井さんの言葉の力に生徒たちは心を大いに揺さぶられました。

 ボンボ藤井さんはウクレレ奏者・指導者、ラジオ放送のDJ、テレビCM制作などのサウンドクリエーターとして県内外で活躍されている方です。経歴は異色で、工業高校で学ばれ自動車会社に就職、その後、自動車修理工場を経営されていたのですが、大怪我を転機に「音楽に関わる仕事をしたい」という少年の頃からの夢を実現されたのです。

 「あなたの夢は?」というテーマのもと、ウクレレの演奏、CM作品(動画)の紹介、そしてアシスタントの木下もえさんと共にラジオのDJ形式で生徒と対話するように進行され、90分が瞬く間に過ぎたような感じでした。軽妙な語りで聴く者を引き付けながら、時に情熱をもって語られるボンボ藤井さんの言葉の力に生徒たちは魅了されたようです。また、使ってはいけない言葉として、「うざい」、「きもい」、「意味わからん」等の具体例をあげられ、これらの言葉は何より他者が聴いて不愉快であり、決して前向きになれないものだと生徒たちを厳しく戒められました。

 将来に向かっての生徒の進路意欲に火を点けてくださった講演は、次の言葉で締めくくられました。

 「さ、次!」

 常に前向きに挑戦を続けるボンボ藤井さんの姿勢を象徴する言葉です。

 

 


 

「みんなで見たい景色がある。」

「みんなで見たい景色がある。」

100回全国高校野球選手権大会キャッチフレーズコンクール 

 
 今年の夏、甲子園球場で開催される全国高校野球選手権大会は節目の第100回を数えます。1915年(大正3年)に全国中等学校優勝野球大会として始まり、途中、戦争での中断を経て100回大会となります。このことを記念してキャッチフレーズコンクールを主催の朝日新聞社が全国の高校生に呼び掛けられました。本校では2学期の国語科「現代文」の授業において、生徒達がそれぞれキャッチフレーズを作り、応募しました。先般、その選考結果が発表され、応募総数11565点の中から100点の優秀賞が選ばれ、本校生2人の作品が入ったのです。

 
 「みんなで見たい景色がある。」

 2年2組の嶋村一馬君の作品です。嶋村君は野球部員で、甲子園出場を目指して日々厳しい練習に励んでいます。夢の甲子園球場のグラウンドに立ち、どんな景色が見えるのかを想像しながら創り上げたそうです。

 
 「歴史をつなぐ100回目の夏」

 2年1組の荒川岬君の作品です。荒川君は陸上部員で短距離の選手です。自らは野球をしていませんが、同じアスリートとして野球部員を応援する気持ちで創ったそうです。多良木高校は96年の歴史で閉校になることから、「歴史をつなぐ」という言葉が思い浮かんだと語っていました。

 
 朝日新聞社熊本総局の西田慎介総局長が3月12日(月)に来校され、2人の生徒に対し、賞状と楯、記念品等を授与して頂きました。

 2018年夏の第100回全国高校野球選手権大会は、来春96年の歴史を閉じる多良木高校にとっては、最後の挑戦の大会となります。みんなで行きたい特別な場所です。


               朝日新聞熊本総局の西田総局長と受賞の二人

 

 

生徒に負けない元気 ~ 教職員サッカー大会

生徒に負けない元気 ~ 教職員サッカー大会出場 

 伸び盛りの活力ある高校生と共に過ごし、教育的情熱をもって教え導いていく役目を担う私たち教職員は、先ず元気でなければなりません。「いつも笑顔で仕事をしてほしい」と職員の皆さんには声を掛けています。教職員が生き生きとしている姿を見せることは、生徒達にきっと良い影響を与えると信じています。

 多良木高校は小規模校ですから教職員も二十余名と少人数ですが、秋の高校教職員ハンドボール大会と冬の高校教職員サッカー大会には毎年出場してきました。今年のサッカーは人数的に難しいかなと思っていましたが、サッカーが専門の体育科の中山教諭が、「今年はミニサッカーですから7人いれば大丈夫です。女性の先生に入ってもらってでも出たいです。」と提案してくれ、学校として出場を決めました。

 3月3日(土)、会場は阿蘇市黒川のフットサル場で県高校教職員サッカー大会が開かれ、多良木高校教職員チームは今年も出場しました。選手は男性職員6人と女性職員2人、そして監督の私の計9人というぎりぎりの人数です。しかし、多良木高校の意地と誇りでは生徒に負けないとの思いで挑戦しました。頼みの中山教諭は制限選手ということでセンターラインより先には攻めることができず守備専念ですので、他の体育科の上原教諭、富﨑教諭に期待が高まります。女性の七田教諭と緒方教諭は交互に出場し、相手ゴール前に張り付いてシュートを狙う作戦を立てました。

 1試合目は先制するも逆転され1対4で敗戦。しかし、多良木高校教職員チームの戦意は却って高まり、2試合目の東海大星翔高校戦は、全員が声を出してよく走り、相手を圧倒し5対0の快勝でした。練習をしていないにも関わらずの大勝に驚くとともに、スポーツの醍醐味を満喫して笑顔で球磨郡に帰ってきました。多良木高校教職員のチームワークによる大きな勝利でした。

 小さくても活気ある学校、多良木高校。その活力の源は教職員のエネルギーなのだと気づきました。


              攻め込む多良木教職員チーム(白いユニホーム)

最後の学年へのバトンリレー

最後の学年へのバトンリレー 

 平成29年度が始まる時、1年生がいない2、3年生在籍の前例なき期間に入るという不安を抱えていました。しかし、学校生活がスタートすると3学年そろっていた昨年度までと変わらない活気が校内にあふれ、例年通りの学校行事を全て実施することができました。さらに、PTAの特別のご配慮により、初夏には阿蘇への防災研修旅行、そして2月には福岡市のキャナルシティ劇場へのミュージカル鑑賞旅行を実現でき、充実した年度だったと思います。これも、3年生がリーダーシップを発揮し2年生をよく引っ張ってくれたお蔭だと考えています。

 2月末に学校評議員さんと3年生の4人の代表生徒との懇談の場を校長室で設けました。多良木町商工会代表、町立中学校長、同窓会役員さんなど5人からなる学校評議員さんから、高校3年間を振り返っての思いやこれからの夢などについて質問があり、生徒達は落ち着いて自分の考えを述べていました。そして、学校評議員さんから「最後に何か言っておきたいことはありませんか?」と尋ねられると、代表生徒たちは口をそろえて「後輩たちが残ります。最後の学年なので、どうか応援をよろしくお願いします。」と言いました。後輩の2年生たちへの気遣いある言葉に胸を打たれました。

 3月1日(木)の多良木高校卒業式において、卒業生代表(前生徒会長)の福田空希君が立派な答辞を述べました。一つひとつの言葉に思いが込められたもので、聴く者を引き込む力がありました。答辞の最後に福田君は次のように述べて結びました。

「後輩の皆さん、私たちは卒業しても多良木ファミリーとして可能な限り学校へ出向き多良木高校を応援します。後輩のみんなは、私たち以上に力があると信じています。」

 遠く大正11年から始まったバトンリレーはこうしてアンカーにしっかりと渡されたのです。

          
           答辞を読む卒業生代表の福田空希君

旅立ちの日に ~ 第70回卒業証書授与式

旅立ちの日に ~ 第70回卒業証書授与式 

 平成30年3月1日(木)、夜半の雨も朝方には上がり薄日も射しはじめる中、午前10時から多良木高校「第70回卒業証書授与式」を挙行しました。

 卒業生67人、一人ひとりの氏名を読み上げながら、手漉き和紙の卒業証書を壇上で手渡しました。笑顔、涙顔、緊張した顔、恥ずかしそうな顔と様々な表情を見つめていると、この三か年を思い起こします。豊かな可能性を秘めた高校生の力を十分に引き出すことができたのか、開花させることができたのかと自問すれば、内心忸怩たる思いになります。もっと多良木高校ならではの教育、今の多良木高校だからこそできる教育が十分にできただろうかと反省の念にかられます。

 しかしながら、前途洋々の若人の姿に接していると、きっとこれから飛躍、成長していってくれるだろうとの希望に包まれます。人生の新しい段階へと進む瞬間の初々しさが、人を輝かせます。

 大人にならないとわからないことがあります。一方、大人になってしまったら、わからなくなることもたくさんあるのです。卒業生の皆さんが今持っている瑞々しい感受性、正義感、理想を失わず、学び続けてください。 

 自分たちで選んだ式歌「旅立ちの日に」の歌声を響かせ、3年生67人は最後の学年にバトンを渡し、多良木高校を卒業していきました。

 「今始まる 希望の道     今日までありがとうね

  思い出の校舎と別れを告げ  今新たな 扉開き

  はるかな年月経て      つぼみから花咲かせよう

  つぼみから花咲かせよう」  

                      (作詞・作曲 川嶋あい) 


 

 


最後の授業 ~ 皆さんは主権者です

最後の授業 ~ 皆さんは主権者です

 3年生は1月末の卒業考査を終えると2月は原則家庭学習期間に入り、自動車学校に通ったり、進学先からの課題の勉強に取り組んだりするのですが、数日は登校日を設け、校外から専門家を招いて「最後の授業」を設けています。税理士さんによる租税教育、八代年金事務所の方による年金の知識、そして2月20日(火)には熊本県選挙管理委員会事務局の担当者の方に来校していただき、「選挙を考えよう」という出前授業を実施していただきました。

 18歳選挙権が導入されて2年がたちました。今の3年生の中には昨年秋の衆議院議員選挙を経験した者もいて、選挙への関心は高いと思います。しかし、主権者になったということは選挙権があることにとどまりません。身近な暮らしの中に疑問を持つことから始まり、地域社会、国、そしてグローバルな問題にまで、広く当事者意識を持つことが求められると思います。3年生のおよそ4割が卒業後は就職します。所得税や住民税等を負担するからには、より社会の中の一員であることを自覚してほしいと期待します。

 わが国は「国民主権」です。自分の一票くらいでは何も変わらないと思うかもしれませんが、18歳の皆さんも、55歳の校長の私も、そして総理大臣も同じく一票しか持ちません。王様や貴族のような特権階級が国や社会の在り方を決めるのではなく、私たち一人一人が選挙を通じて選んだ代表者に委任する間接民主主義、議会制民主主義の国です。議会では異なる意見の持ち主、政党が対立して、その調整には時間がかかります。手続きは面倒に見えるかもしれません。しかし、これまでの歴史の結果、この議会制民主主義を日本は選んでいます。

 自分の一票で社会を、この国をより良くしたいという意志を持ってほしいと願います。誰かヒーローが出現して問題を解決してくれるだろうと待っていても社会は変わりません。未来は皆さん達が創っていくものなのです。


            県選挙管理委員会事務局による選挙出前授業