校長室からの風(メッセージ)

2016年1月の記事一覧

一期一会の人、風景 ~修学旅行

一期一会の人、風景 ~ 修学旅行 

 

 一期一会(いちごいちえ)という言葉があります。もともとは茶道のお茶会の心得を意味しており、お茶をもてなす主(あるじ)と客の出会いは、一生に一度だけの出会いと思い、心を込めてお互いに誠意を尽くすべきと説いたものです。この一期一会という言葉を実感するのは、特に旅行の時ではないでしょうか? 日常生活を離れ、遠くに旅行をして、その時出会う人、風景には、生涯もう二度と出会うことはないかもしれないという感情に包まれます。

 今回の修学旅行において、2年生の皆さんは一生に一度限りの出会いを経験したはずです。例えば、添乗看護師さんの中岡ゆかさんとの出会いは、多良木高校修学旅行団にとってこの上ない幸運だったと思います。中岡さんは、積極的に生徒の皆さんの中に入っていかれ、コミュニケーションを進んで図り、短期間で信頼関係を築かれました。少し体調を崩した生徒がいると、寄り添って適切な対応をしていただきました。また、「私の体験で良ければ」と、看護師の道をなぜ選んだのか、専門職としての看護師のやり甲斐などについて、旅行2日目の夜に進路講話を行って戴きました。最終日の羽田空港では、「多良木高校の生徒さんは、みんなとっても素直でかわいいです。こんな純真な生徒さん達とは初めて出会いました。」と涙を流して、別れを惜しまれました。

 一期一会は人だけではなく、風景にも言えると思います。福島県の羽鳥湖スキー場での吹雪は生徒の皆さんにとって恐らく初めての体験だったと思います。雪で視界がきかない冬山の光景は、これから先出会う事がないのではないでしょうか。また、レインボーブリッジをはじめ東京の臨海副都心の近未来的な景観は生徒の皆さんが目を見張るものでした。その一画にある日本科学未来館での、人型ロボット(アンドロイド)のASHIMO(アシモ)や同じく気象アナウンサーの実演の見学は、衝撃の出会いだったかと思います。そこに皆さん達は「未来」を見たのかもしれません。人工知能(AI)を備えたロボットと共存する社会は案外早く訪れるのでないかと私も感じました。

 4泊5日の旅行という非日常の世界から日常の生活に戻り、一週間が経ちました。出会う喜びと別れの切なさが一期一会にはあります。一期一会をかみしめて、前に進んでいきましょう。




   (添乗看護師の中岡さんの講話)

トラベルとトラブル ~修学旅行

トラベル(Travel)とトラブル(Trouble)~ 修学旅行

                              

 英語のトラベル(Travel:旅行)とトラブル(Trouble:苦労、問題)は同じ語源だと聞いたことがあります。即ち、トラベルとは、様々なトラブルに遭遇し、それをいかに克服していくかのプロセスだと言うのです。「かわいい子には旅をさせよ」という諺(ことわざ)もあります。親の手許で甘やかして育てるよりも、広く世の中に出して苦労を経験させる方が成長するという意味です。日本語においても、旅、旅行は苦難を象徴する言葉なのです。

 1月18日(月)から22日(金)にかけて4泊5日、2年生の修学旅行引率で福島県及び東京都を巡ってきました。初日、首都圏及び東北地方の大雪のため、鹿児島空港からの出発便が2時間の遅延、東北自動車道の一部通行止めによる迂回路を通って羽田空港から福島県白河市までの5時間の長いバス移動、そして目的地のスキー場のロッジまでバスが上ることができず、麓にある系列のホテルに宿泊変更を余儀なくされるなど予定が大きく変更されました。

 二日目は青空と白銀のコントラストがまぶしいスキー研修でしたが、三日目、時折吹雪となる中でのスキー体験は多くの生徒にとって体力的に厳しいものがあったと思います。しかし、インストラクターの方々に励まされながら、懸命に取り組んでいました。四日目、東京都内の班別自主研修では、電車の乗り間違い、駅の出口を誤る、路上での強引なセールスに戸惑うなど、多くのトラブルが起こったようです。しかし、ホテルに帰って来た生徒の皆さんには、それらのトラブルを面白がっている余裕があり、頼もしく思いました。

 こうして振り返ってみると、今回の修学旅行は、2学年63人と職員4人がベテランの添乗員さんと献身的な看護師さんの支えを受け、幾つものトラブルを乗り越えて無事に帰校できた一つの物語のようにも思えます。非日常の大変さと面白さを級友達と共に体験することで、仲間の違った一面を発見し、より絆も強まったことと思います。

 雪山の容赦のない天候の変化、大都会の混雑、人の動きの速さ、東京湾岸の未来都市のような空間などを体験してきた皆さんを、人吉・球磨地域が優しく迎えてくれました。旅行は、故郷の良さを改めて気付かせてくれるものです。


大学入試センター試験に挑む


「大学入試センター試験に挑む」                         

 平成28年度大学入学者選抜大学入試センター試験に多良木高校からは8人の生徒諸君が挑みました。本校の場合、9月の就職試験の解禁から始まり、専門学校・短大・大学等の推薦・一般入試が続き、すでに3年生の大部分の進路が決まっています。その中で、この1月まで受験勉強を続けてきて、大学入試センター試験を受ける生徒は少数派となります。

 試験前日の1月15日(金)の昼休み、受験生8人への激励会を校長室で行いました。この8人の生徒の中には推薦入試で合格を得ている人もいますが、その後も課外授業も受け、受験勉強を持続してきました。「周囲の人が受験勉強から離れている中で、皆さんはここまでよく勉強を続けてきました。そのことを誇りに思います。8人の皆さんを多良木高校の代表として自信を持ってセンター試験に送り出したいと思います。」と私は語り掛けました。3学年や進路指導の職員も集まり、皆でエールを送りました。代表で北﨑裕之君が、「本番が最も良い結果となるよう、これまで勉強してきた力を発揮します。」と力強く決意を述べてくれました。北﨑君は、野球部のエースとして昨年夏の高校野球県予選で準決勝進出を果たした生徒で、部活動と学習の両立を立派に果たしてきた生徒です。

 そして大学入試センター試験初日、本校の生徒の試験会場である熊本大学黒髪キャンパスに私も午前10時に駆けつけました。晴天で風もなく、穏やかな天候に恵まれました。午前11時45分には、地歴・公民科を受験した5人と午後の国語から受験する3人の全員が揃いました。特に緊張している様子もなく、笑顔も見え、頼もしく感じました。

 今回の大学入試センター試験は全国で約56万人が受ける大規模なもので、高校3年間の学力の到達度を評価するという意味ではとても教育的意義が大きいものです。普通科の高校生には大学入試センター試験の受験を私は勧めます。今や国公立大学だけでなく多くの私立大学も参加しており、試験結果を活用できます。たとえ秋に推薦入試で合格が決まっていても、冬まで受験勉強を続け、学力をさらに高め、春の進学につなげて欲しいと思います。

 学び続ける姿勢は、まさに生きる力となっていくと信じます。

3学期始業式

 皆さん、新年明けましておめでとうございます。こうして皆さんと一堂に会し、多良木高校の新年が始まります。

 さて、平安時代に書かれた随筆「枕草子」の冒頭、作者の清少納言はそれぞれの季節で最も良い時間帯について述べています。春はあけぼの、即ち明け方が良い、夏は夜、秋は夕暮れ、と言っています。それでは、冬はいつが良い、と言っていますか?そうです、冬はつとめて、即ち、冬は早朝、朝早くが良いものだと述べています。雪が降っていたり、霜が降りていればなお良いと清少納言は言っています。清少納言が暮らした都、今の京都は、鴨川が流れ、山々に囲まれた盆地です。冬の厳しい所で知られます。一方、この球磨盆地も球磨川が流れ、九州山地に囲まれており、京都ととても似た気候です。これから2ヶ月は厳しい寒さが続くことでしょう。しかし、千年前の都人も愛した冬の朝の清々しい情景を感じる余裕を持ち、「冬はつとめて」と口にして自分を励まし、登校してきてください。

 朝に関連して話しを続けます。誰もが気持ちの良い朝、一日の始まりを迎えたいと願っています。そのためには何が大切なのでしょう。そう、十分に眠ることですね。眠りは身体を休めるだけではありません。近年の脳科学の研究によると、眠っている間に、私達の脳は進化し、更新されていくそうです。起きている間に学習したことを脳のそれぞれの分野に書き込み、記憶させる作業が睡眠中に行われるのです。学習というと勉強や知識と思われがちですが、運動も含まれます。例えば、昼間に練習したことが脳の運動機能を司る分野に書き込まれ、身体全体が覚えていくことになるのです。従って、練習することと同じくらい眠ることがスポーツにとっても大事なのです。昼間、勉強や部活動で頑張った事を明日につなげるために睡眠がいかに大切かわかるでしょう。

 ところが、今の高校生諸君は、眠りの質を高めるためにやってはならないことをやっている人が多いのです。眠る前に長時間スマートホンやパソコンの電子画面を見る行為です。電子画面の光は、自然界にはない特性を持っているため、目を通して脳を刺激し混乱させるため、眠りについても昼間の学習成果の正常な書き込み作業ができなくなるのです。さらに、睡眠中に分泌される男性、女性ホルモンにも大きなダメージを与えることがわかってきました。女性が気にする美容にも悪影響を及ぼすことが指摘されています。最も身体を作っていかなければならない時期に、それを阻害する行為を毎晩していることになります。皆さん、自分自身の成長や健康と引き替えにするほど、ゲームやSNSは大事なものですか? バランスを考えてください。それでは、眠りの質を上げる秘訣を皆さんに教えます。簡単なことです。「闇の中で寝て、朝日と共に起きる」ことです。眠る1時間前には携帯端末やパソコンの電源を切り、できれば天井の豆電球も消して闇をつくり、午前零時までには眠ってください。

 最後に、残り50日ほどで卒業していく3年生に伝えます。まだこれから進路達成に向けて試験に臨む人がいます。全国でおよそ56万人が受験する大学入試センター試験にも本校から8人が挑みます。3年生65人全員の進路が決まるまで私達も全力で支援します。そして、既に就職、進学が決まっている皆さん、新しい出会いに期待が膨らんでいると思います。けれども、進路決定後のあなたの生活はどうですか?他の人から見て、出会うに値するための仲間となって新しい学校に進もうとしていますか? 出会うに値する仲間として新しい職場に入っていこうとしていますか?残された高校生活一日一日を惜しみながら、最後まで勉強してください。しっかりと助走し、勢いをつけて、新しい世界に飛躍して欲しいと期待します。