校長室からの風(メッセージ)
2学期始業式(8月25日)
「南米大陸で初めて開かれたリオデジャネイロ夏季オリンピック大会。今週月曜日に17日間の日程を終えて終了しました。皆さんも様々な競技のテレビ中継、あるいは特集番組に見入ったことでしょう。皆さんにとって、最も印象に残った場面、シーンは何でしょうか? 私が最も印象に残ってことを話します。
それは開会式で参加国が入場する場面で、最後は開催国すなわちブラジルが行進することになっているのですが、最後から2番目に「難民選手団」の10人が入場してきた姿に、目を奪われました。オリンピックは各国の代表として参加し、国別に競う大会です。ところが、今回、オリンピックの歴史で初めて、どこの国にも属さない「難民」としての選手団が認められたのです。10人の選手は、それぞれ中東のシリアやアフリカの南スーダン、コンゴといった、国が内戦状態でスポーツをする環境にはないため、国外に逃れた人達です。彼らは国の代表としてではなく、個人のアスリートとしてオリンピックに参加したのです。平和の祭典と言われるオリンピックに、「難民選手団」として参加しなくてはならない人達がいるということは、あらためて国際平和の難しさを感じました。4年後の東京オリンピックの時には、「難民選手団」が存在しないのか、それとももっと増えているのか、大変気になるところです。4年後に向けて国際社会に与えられた宿題と言ってよいでしょう。
もう一つ印象に残った事は、大活躍し、金メダルを取った日本選手の多くが、優勝後のインタビューで、コーチへの感謝の気持ちを伝えていたことです。これまで、怪我や不調、スランプなどがあったなか、コーチを信じてきてよかった、支えてくれたコーチに感謝です、というコメントを多くの選手がしていました。オリンピック選手のようなきわめて秀でた運動能力に恵まれた人達でも、いやそういう人達だからこそ、一人でできることは限られている、自分一人ではやっていけないのだということを実感しているのでしょう。
ちなみに、私たち日本人はコーチという言葉を指導者という意味で使っていますが、英語のコーチ「Coach」の本来の意味は馬車です。馬が引いて乗客を運ぶあの馬車です。目的地に乗客を迷わずに連れて行く馬車「コーチ」の言葉が、目標に向けて教え励まし、目標達成に導く指導者という意味に変化し今日広く使われるようになったのです。
生徒の皆さんの右手に、後方に、多良木高校の情熱あるコーチの方がそろっておられます。多良木高校のコーチ陣は皆さんの可能性を引き出し、きっと目標に向かって導いていってくれます。1学期以上に、先生方を頼ってください。多良木高校コーチという馬車に安心して乗ってください。
結びになりますが、2学期は今日8月25日に始まり12月22日に終業式を迎えますので、およそ4ヶ月の長きにわたります。一日一日を大切にしていきましょう。一日一日の積み重ねで、学力をはじめ様々な力を養い、大きく成長できる学期です。特に3年生は、これからの人生の歩む道を決める大事な学期です。自分の弱さに妥協せず、狭き門から入るという覚悟で取り組んで欲しいと願っています。これで2学期始業式の挨拶とします。」
新ALTの紹介(校長挨拶)
「新しく赴任されたAssistant Language TeacherのJoseph Lanza(ジョセフ ランザ)先生を紹介します。
ジョセフ先生は、イングランドから来られました。
ところで、私たち日本人はイギリス、イギリスと言いますが、正式にはイギリスという国名はありません。私たちがイギリスと呼ぶ国は、正しくはUnited Kingdom of Great Britain and Northern Ireland、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国のことです。このUnited Kingdom 連合王国は、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの四つの国から構成されます。その中で最も人口が多く、面積も広いのがイングランドです。イングランドは、サッカーのワールドカップには一つの国として出場しますが、オリンピックには単独では出ず、United Kingdom 連合王国として参加します。
では、「イギリス」という呼び名はどこから生まれたのでしょうか?どうも、「イングランド」という英語が江戸時代にポルトガル語やオランダ語で日本に紹介され、発音変化して、エゲレス、イギリスになったと言われます。そして、United Kingdom 連合王国、この連合王国を私たち日本人は総称してイギリスと呼ぶようになりました。イングランドとUnited Kingdom 連合王国の両国の関係を知っておいてください。 話しが少し脱線しました。
さて、ジョセフ先生は学生時代から日本語及び日本文化に関心を持ち、秋田県の国際教養大学で6週間、日本語学習の短期留学の御経験もあります。8月3日に熊本に来られ、多良木町久米にある教職員住宅に住み、日本の生活を始められました。この夏休み期間、君たちが使っている英語の教科書等を調べ、英語科の先生と打合せを重ね、教材研究に取り組まれており、皆さんと学習することを楽しみにされています。皆さんの方から、積極的に英語で話しかけ、英会話を楽しんで欲しいと思います。
では、ジョセフ先生から挨拶してもらいます。」
キャプテンラストの精神で ~ 新チームキャプテンへの期待
キャプテンラストの精神で ~ 新チームのキャプテンへの期待
夏季休業中も、多良木高校の野球場、グラウンド、体育館等では生徒達の元気の良い声が飛び交い、活気があります。また、恵まれた体育施設を有していることから、多くのチームが練習試合や合同練習に来てくれています。例えば、8月2日から4日にかけ大津高校陸上部が来校し、セミナーハウスを利用して本校陸上部と合同合宿を行いました。8月2日には福岡県内の2つの高校野球チームが来校し、本校を含め3校での練習試合を展開しました。また、8月9日には女子バレーの合同練習試合を本校で主催し、熊本市の第二、東稜の2校をはじめ球磨人吉地域の3校と合わせて5校が来校し、終日、汗を流しました。
この時期、どの部活動も3年生が退き、1、2年生主体の新チームに移行して夏の練習、合宿等に臨んでいます。新しくキャプテンに任命された生徒が校長室に挨拶に来てくれます。その時に新キャプテンに「キャプテンラストの精神で頼むよ」と語ります。キャプテンとは本来、英語で船長を意味します。船長は、常に船と共に在り、もし船が難破して沈むことになっても乗客や船員を先に降ろし、自分は最後まで船に留まる責務があります。それだけの強い責任感があってこそ船員達もキャプテンに従うのです。従って、部活動においても、練習の後片付けや部室の整理などを下級生部員に任せるのではなく、最後まで自ら責任を持つ姿勢をキャプテンに望むのです。キャプテンが最後までチームと共に在るという姿勢を見せれば、きっと他の部員も協力してくれることと思います。
新チームのキャプテンとなった生徒たちはみなとても良い表情をしています。急に大人になったかのような強い意志と自覚を感じます。大事な役割を任されたことによって若者は大きく変化します。キャプテンラストの精神で、多良木高校部活動の新チームのキャプテン達は自らの役割を全うしてくれることと期待しています。
教えることは学ぶこと ~ 地域未来塾の講師を務める多高生
教えることは学ぶこと ~地域未来塾の講師を務める多高生
今年度の夏季休暇から、多良木町において地域未来塾(多良木町教育委員会主催)が始まりました。同町の三つの小学校(多良木、黒肥地、久米)の4~6年生に対し、午前中2時間の学習時間を設け、それを断続的に6日間行い、学習の基礎基本を確立させる事業です。他の幾つかの自治体ですでに始まっている「町営学習塾」の多良木版と言えるものですが、最大の特色は、講師役として、小学校の教師や学習支援員に加え、多良木高校生が加わるという点です。
「高校生に講師役を!」という多良木町教育委員会から御提案があった時、私はとても有り難く思い、即、協力する旨を伝えました。教えるということはとても貴重な体験であり、教えることで多くのことを学ぶことができるからです。本校は、地域に開かれた学校として、これまでも様々な地域貢献に努めてきましたが、高校生による小学生への学習指導という機会はありませんでした。多良木高校生により豊かな体験をさせたい、多くの出番を与えたいとの多良木町教育委員会の温かい御配慮によるものと深く感謝します。
多良木町地域未来塾は、7月21日(木)、黒肥地小学校から始まり、同小に5人の生徒が赴きました。そして、25日(月)からは多良木小学校でも始まり、同小には6人の生徒が、26日(火)から久米小学校でも始まり、同小にも6人の生徒が参加し、計17人の意欲ある多高生が先生役として活動しています。私も参観に行っていますが、教えることの難しさを実感している生徒の様子が見えます。自分では理解していても、それをいかにわかりやすく言語化して他者に伝えるかは思ったよりも困難な作業なのです。
「礼儀正しい」、「さわやか」と先生役の多高生の評判はすこぶる良いようです。学校に帰ってきた生徒達に感想を聴くと、皆、異口同音に「教えることは難しい、けれど楽しい」と笑顔で答えてくれます。教えることは学ぶことです。地域未来塾で育つのは小学生だけではありません。
地域未来塾(黒肥地小学校)で教える多高生
あきらめない夏 ~ 7月18日の高校野球逆転勝利
あきらめない夏 ~ 7月18日(月)高校野球2回戦の逆転勝利
9回表、2点差を追う多良木高校の攻撃もすでにツーアウト、ランナーはいません。7回の攻撃で一度は逆転を果たしたものの8回裏に専大玉名高に再逆転を許し、試合の流れは明らかに劣勢となっていることをスタンドで応援する私たちも感じていました。バッターは7番の梅木君。バットを振り抜くと打球はショート正面へ緩いゴロが転がりました。万事休す、終わったと私は目を瞑りました。ところが、思わぬ歓声が回りから上がります。目を開けると、ファーストベースに頭から滑り込んでいる梅木君の姿と、横一文字に両腕を広げセーフと示している一塁塁審の姿が飛び込んできました。専大玉名の外野手は勝ったと思い内野に向かって駆け寄って来ていました。最後まであきらめない、という梅木君の執念のヘッドスライディングでした。
ここから流れが再び変わりました。高村君、代打の赤池君がつないで1点差となり、1番の岡本君に打順が回ります。応援の人数で圧倒する多良木高校側のスタンドは総立ちで声を枯らして声援。岡本君のタイムリーヒットで同点となり、大歓声に包まれます。そして、2番の若杉君のセンターオーバーの逆転2塁打が飛び出し、スタンドは興奮の渦です。9回裏は、1年生の古堀君が落ち着いた投球で相手の攻撃を3者凡退で退けて、見事大逆転の勝利を得ました。13対11、壮絶な打撃戦を制したのです。
勝利の校歌をグラウンドの選手とスタンドの応援団とで一緒に歌いながら、私は興奮冷めやらぬ気持ちでした。強豪校相手にも臆することなく果敢にプレーし、土壇場で底力を発揮しての同点、逆転劇に私は生徒の持っている力の大きさに驚嘆しました。9回ツーアウト、ランナー無しの追い詰められた状態からの逆転勝利はドラマ以上に劇的であり、このような試合を見せてくれた選手達に心から感謝したいと思います。
7月18日(月)海の記念日、県営八代球場で多良木高校が逆転勝利をおさめた日に熊本県の梅雨明けが宣告されました。多良木高校野球部の「あきらめない夏」は続きます。
登録機関
管理責任者
校長 粟谷 雅之
運用担当者
本田 朋丈
有薗 真澄