校長室からの風(メッセージ)

校長室からの風(メッセージ)

しなやかな若い力 ~ 高校生による復興支援ボランティア

しなやかな若い力 ~ 高校生による復興支援ボランティア活動

 「地震に負けんばい がまだすぞー 西原村魂」。西原村ボランティアセンターの敷地内の大きな立て看板に書かれた言葉です。6月18日(土)、熊本県教育委員会主催の「高校生による復興支援ボランティア」活動に多良木高校から3年生男子4人、教諭1人と共に参加しました。この度の「平成28年熊本地震」であまり被害がなかった地域の県立高校23校から84人の代表生徒が集結しました。

 当日、朝9時に県庁で出発式を行い、大型バス3台に分乗し、先ず益城町に向かいました。4月14日、16日と二度にわたって震度7の強烈な揺れを蒙った益城町は、県内で最も被害が大きい地域です。特に同町の木山地域にバスが入ると、家々が崩壊したままの惨状が残されており、現実とは思えない光景に思わず息をのみます。テレビ映像や新聞の写真では幾度も目にしていたのですが、実際に間近で見ると改めて大地震の脅威を実感します。生徒達もバス車窓から食い入るように被災地の状況を見つめていました。

 益城町から西原村に進み、同村のボランティアセンターで受付をしました。当日も県内外から多くのボランティアの人が駆けつけており、活気がありました。私たちは山間部に移動し、昼食を取った後、しいたけ栽培の原木復元作業に取り組みました。地震で2千本のしいたけ原木が倒れたまま放置されており、それらをボランティアリーダーや地元の農家の方の指導のもと、一本一本復元していくのです。不安定な斜面での作業にかかわらず、高校生達は意欲的に取り組みました。蒸し暑い天候で、ムカデも出る厳しい環境でしたが、どの生徒も苦しい顔や嫌な顔ひとつせず作業する姿は爽やかでした。作業を始めておよそ1時間半で2千本のしいたけ原木を元の位置に戻すことができました。

 この日、高校生達が行った事は、大地震の被害の前では小さい復元作業でしかありません。けれども、今回参加した高校生達が各学校に帰って体験を広め、多くの高校生に復興支援のボランティアの意識が共有されることで、大きな復元力が生み出されると思います。高校生の若さ、しなやかさは不屈です。彼らはこれからの社会を創っていく原動力なのです。


 

地に足をつけて一勝を ~ 一勝地駅記念入場券

地に足をつけ一勝を ~ 一勝地駅の記念入場券

 JR肥薩線の一勝地駅(いっしょうちえき:球磨村)は、その地名の縁起の良さから、「必勝」、「合格」等のお守り代わりに記念入場券が売れることで知られています。6月12日(日)に多良木高校から自動車で50分かけて、一勝地駅を訪ねました。一勝地は球磨村の中心部に当たり、駅は、球磨川の左岸に位置し、対岸の高台には球磨村役場が見えます。

 明治41年開業の肥薩線は、明治、大正期の駅舎や隧道(トンネル)、鉄橋等の鉄道遺産が多いことで有名ですが、一勝地駅の現在の駅舎も大正3年に完成して以来基本的な骨格が保たれており、背後の山林に調和するクラシックな木造駅舎です。駅舎やホームに立つと、およそ一世紀にわたって球磨の人々の往来の場となってきた歴史を感じます。一勝地駅内の事務室が球磨村観光案内所となっており、ここで記念入場券を7枚購入し帰って来ました。

 先般開かれた県高校総体陸上競技において男子400リレーで6位に入ったメンバーが南九州大会(6月16日~18日、宮崎市)に、そして、女子アーチェリー個人の部で2年生女子が入賞し九州大会(6月17日~18日、鹿児島市)に進出することになりました。このリレーメンバー(選手4人、補欠2人)と女子アーチェリー選手に、一勝地駅の記念入場券を贈りたかったのです。

 校長室にて、陸上部員とアーチェリー部員の併せて7人の生徒達に励ましの言葉を掛け、「地に足をつけて一勝を」と一勝地駅の記念入場券を渡しました。皆、喜んで受け取ってくれ、大会に向けて学校を出発しました。

 生徒達の健闘を心から祈ります。


           県6位入賞を果たした400㍍リレー(6月4日八代市)


若者たち ~高校総体2

若者たち ~ 高校総体その2

 今年の高校総体の陸上競技は、熊本地震の影響で熊本市の県民総合運動公園陸上競技場(「うまかな・よかなスタジアム」)が使用できず、県営八代運動公園陸上競技場(八代市)で6月3日から6日にかけて行われました。

 6月4日(土)と5日(日)のそれぞれ午後の半日、多良木高校陸上競技部の選手を応援しました。収容人員32000人の巨大な競技場である「うまかな・よかなスタジアム」とは異なり、八代の陸上競技場はスタンドも小さく、雨が降る時は周辺の芝生広場のテントで待機するという状況で、例年と比較すると選手のコンディションには厳しいものがあったようです。応援する者にとっても、雨が降ると傘をさし、競技場のトラック(競走路)の周囲に立っての応援となりました。しかし、競技中の選手と距離が近く、選手の息づかいや流れる汗が感じられる程で、陸上競技の醍醐味を満喫できました。

 本校から3人の女子選手が出場した400mハードル競技は負荷の大きい種目で、1人の1年生選手はゴールすると倒れ込み、しばらく起き上がることができませんでした。また、男子2人が出場した5000m、3000m障がい、そして女子2人が挑んだ3000mと長距離レースはいずれも過酷で、苦しそうに表情をゆがめゴールを目指す姿には、こちらも熱くなり声援を送りました。苦しくてもひたすらゴールを目指す選手達の姿を至近距離で見ていて、中学校の音楽の授業で歌った「若者たち」(作詞:藤田敏雄、作曲:佐藤勝)の歌詞の一節が思い浮かびました。 

   「君の行く道は 果てしなく遠い
     だのになぜ 歯をくいしばり
     君は行くのか そんなにしてまで」

   高校総体が終わり、先日、陸上競技部の選手達が応援の御礼に校長室まで来てくれました。その時、私は「君たちは苦しくてもなぜ走るんだろう?」と問いかけました。すると1人の生徒が「なぜでしょうね? 自分でも時々わからなくなります。」と笑って答えてくれました。


                                       雨の中、応援する陸上部員

限りある時間の中で ~ 高校総体1

限りある時間の中で ~ 高校総体その1

 

 高校に入学し、自分の好きなスポーツの部活動に入って練習を始めた頃は、高校生活も部活動も無限に続くような感覚を持っていたことでしょう。記録が伸びない、上達しない等、壁にぶつかり悩んだ日、あるいは勉強との両立で苦しんだ日もあったことと思います。しかし、どんな時間も有限です。限りがあるのです。このチームメートといつまでも部活動に打ち込んでいたいと思っていても終わりは来ます。高校に入学しておよそ2年2ヶ月後に3年生として県高校総体を迎えることになります。

 今年の県高校総体は、熊本地震の影響で、会場も分散しての開催となり、本校からはサッカー、陸上、バスケットボール(男子)、バレーボール(女子)、ソフトテニス、アーチェリー(女子)の6種目に参加しました。

 5月29日(日)に先行開催されたサッカー1回戦(大津高校運動場)は熊本高校と雨天のもと泥だらけの試合となりました。それでも選手達はフェアプレーで戦い抜き、惜しくも敗れました。試合終了後、水たまりのグラウンドに膝をつく選手達を見て、もっと良いコンディションでさせたかったと無念の思いに包まれました。6月3日(金)から全面的に総体が始まり、バスケットボール男子の1回戦(玉名高校体育館)は力が拮抗している八代清流高校と熱戦となり、応援していて力が入りました。リードして迎えた第4クォーターで逆転されて悔しい敗戦。号泣する3年生選手の姿が印象的でした。

 そして女子バレーボールは、6月3日(金)の1回戦に快勝し、翌4日(土)に第1シードの鎮西高校と対戦しました(秀学館高校アリーナ)。強豪相手に第1セットでは16点も得点し、練習の成果を十分に発揮しました。しかし、試合後3年生は涙を流しました。試合に関して悔いはなかったかもしれませんが、このチームでもうバレーボールができない悲しさに襲われたのでしょう。

 負けたことで多くのことを学ぶことができるのがスポーツです。そして、高校総体が終わり、どんな時間も限りあることを生徒達は実感したことでしょう。

                   (女子バレーボール1回戦)

 
 

 

 

スポーツマンシップでいこう ~ 高校総体推戴式

 5月26日(木)、中間考査終了後に第1体育館で高校総体推戴式を行いました。今年度、本校からは陸上、男子バスケットボール、女子バレーボール、ソフトテニス(男女)、アーチェリー、サッカーの6競技に参加します。激励の挨拶を次に掲げます。

 「今年の高校総体は、熊本地震の影響で例年とは大きく異なり、県民総合運動公園陸上競技場での総合開会式はなくなり、主に熊本市及びその近郊で実施されていた競技が、県北から県南にかけて広い地域で分散して開催されることとなりました。けれども、関係者の御尽力によって開催されることを皆さんと共に感謝したいと思います。

 県高校総体のテーマは、昨年に引き続き「スポーツマンシップでいこう」です。「スポーツマン」とはスポーツをする男性という狭い意味ではなく、女性も含めて「スポーツをする人」と広く捉えた表現だと思います。スポーツマンシップとは何でしょうか? 昨年度の総合開会式で高体連の赤星会長が、スポーツマンシップとは、ルールを守り、審判に敬意を表し、勝っても負けても相手を称えることだと話しをされました。応援する者も、スポーツマンシップに則って応援しなければなりませんが、昨年の高校総体で私には苦い思い出があります。

 サッカーの1回戦、八代農業高校との試合を応援に行きました。確か、昨年の本校のサッカー部の部員は15人だったと思います。サッカーはイレブン、11人でプレーする競技ですから、15人は余裕のない部員数です。ところが、相手の八代農業高チームは10人しかおらず、初めから一人足りないハンディがあるのです。前半は3-0で多良木高校がリードして終わり、ハーフタイムを迎えました。八代農業は交代する選手もいないため、後半はこのまま点差が開き、大差になるだろう、気の毒だなあという気持ちに私は包まれました。しかし、後半の八代農業高校の選手達は1人足りない10人で、体をはって果敢にプレーし、多良木の攻撃を止め一点も許しませんでした。後半は0対0で終わり、八代農業高校の健闘が光りました。試合後、私は、八代農業高校の選手達に対して、申し訳ないというか恥ずかしい気持ちになりました。私はスポーツマンシップに反し、試合はまだ終わっていないのに、相手を見下した考えに支配されていたのです。次の2回戦は部員が70人もいる熊本北高校が相手でした。今度は一回戦とは立場が逆で、多良木高校サッカー部は、懸命に粘り、リードされても追いつき、最後PK戦までいき惜しくも敗れました。

 スポーツは筋書きのないドラマだと言われます。応援する者の心が熱くなるような試合、レース、競技を今年も期待します。そして、繰り返しますが、ルールを守り、審判に敬意を表し、勝っても負けても相手を称えるというスポーツマンシップを発揮して欲しいと願い、激励の言葉とします。」

                           


選手代表の挨拶