校長室からの風(メッセージ)

校長室からの風(メッセージ)

阿蘇への震災復興支援旅行

阿蘇への震災復興支援旅行 ~ 阿蘇を応援

 「今の多良木高校生に特別な体験をさせたい」とのPTAと私たち教職員の思いが合致して、閉校に向けてのPTA特別予算による研修旅行が実現。場所は阿蘇地域。昨年の熊本地震で大きな被害を受けた阿蘇地域の復旧・復興の状況を現地に赴き実際に見て学ぶ旅行です。

 6月30日(金)、3年学年全員、貸切バス2台で朝7時30分に学校を出発。断続的に雨が降る中、九州自動車道の小池高山ICで降り、益城町の中心部を通りました。昨年の熊本地震で震度7の地震に二度も襲われた町で、町の中心に更地が目立ちました。大津町から先は国道57号もJR豊肥線も震災以来不通になっており、大規模農道(通称「ミルクロード」)を上り二重峠から下って阿蘇の赤水地域へ入りました。阿蘇地域の高校生で大津町や熊本市方面に通学する者は朝夕この峠の迂回路を通っていることになります。

 阿蘇山上には3本の登山道路が通じていますが、現在、通行可能はJR阿蘇駅前からの坊中線のみです。およそ10㎞の道のりをバスはゆっくり上っていきます。阿蘇ならではのスケールの大きい草原の風景が車窓から見え、生徒は歓声をあげます。また、震災で崩れ落ちた山肌や痛んだ道路の工事風景も目に入ります。午前11時頃、草千里に到着。阿蘇火山博物館に入り、地震の仕組みや阿蘇の被災状況の説明を受け、阿蘇のカルデラ形成の模擬実験も見学。

 午後からは杵島岳トレッキングの予定でしたが、悪天候のため断念。レストハウスで昼食を取ってバスで山を下り阿蘇市宮地の阿蘇神社へ移動。熊本地震で崩れた楼門の修復工事の様子を見学した後、境内をはじめ門前参道の湧水を見て回りました。この湧水は熊本地震でも枯れることなく被災した人々を助けたそうです。カルデラの中で暮らす阿蘇の人々は、噴火や地震という自然の脅威にさらされる一方、豊富な水や温泉、そして風光明媚な景色などの素晴らしい自然の贈り物に囲まれています。火山との共生です。

 熊本地震の影響で阿蘇を訪ねる観光客や研修旅行の児童生徒は減少していますが、今回、震災復興を支援する目的で多良木高校として訪ねてみて、一歩一歩、復旧復興が進んでいることを実感できました。

                         

阿蘇登山道のバスからの草原風景

          阿蘇神社門前町での水基(湧水所)巡り

瞬間の世界に挑む ~ 陸上100競技


瞬間の世界に挑む ~ 陸上100m競技

 3年1組の三浦恵史君が熊本県高校総体陸上100mで優勝したことで本校も脚光を浴びました。三浦君の快挙を伝えた新聞記事には「多良木高校として32年ぶりの優勝」とありました。改めて、男子100mの歴代優勝者を調べてみると、確かに昭和60年に「西 和任」選手が10秒90で優勝の記録が残っています。さらに遡ると昭和49年に「田代博志」選手が11秒2で優勝しています。県高校男子100m優勝者は昭和25年から記録が残っていますが、多良木高校は今回の三浦君を含め3人の優勝者を出しています。

 多良木高校の『創立80周年記念誌』等によると、「田代博志」選手が優勝した昭和49年は、多良木高校陸上部が県高校総体で大活躍し、南九州大会に21人もの選手が進み、その年のインターハイに8人が出場するという輝かしい成績でした。当時の多良木高校陸上部のユニフォームがオレンジ色だったことから、「オレンジ旋風」と称えられたという逸話が伝えられています。

 このような先輩たちの汗と夢の伝統を受け継ぎ、今年の三浦君の走りがあったと思うと感慨深いものがあります。43年前の田代選手の記録が11秒2、32年前の西選手の記録が10秒90、そして今年の三浦君が10秒81と並べると、100m競技で1秒、いや10分の1秒、100分の1秒を短縮することがいかに至難のことかよくわかります。瞬間の世界に挑む短距離ランナーたちの苦闘が想像されます。

 「南東北インターハイ」に向けて三浦君は練習を再開しました。自己ベスト記録更新を目指し、孤独で厳しい自分との闘いです。その後ろ姿を見ながら、多良木高校陸上部の歴史のアンカーとなる2年生たちも練習に取り組んでいます。平成31年3月の「閉校」というゴールに向け、走り続けます。

 

 

         南九州大会100m2位(三浦君)を示す電光掲示板

インターハイへの道

インターハイへの道

 陸上競技でインターハイ(全国高校総体)に出場するには二つの階段を登らなければなりませ。先ず県高校総体で6位以内に入り県代表となること、そして次に南九州四県(熊本、宮崎、鹿児島、沖縄)の南九州大会で6位以内の入賞を果たすことが求められます。今年度の南九州大会は熊本市の県民総合運動公園陸上競技場で6月15日(木)から18日(日)にかけて開催され、多良木高校から3年の三浦恵史君が100mと200mに出場しました。

 熊本県高校総体100mで優勝した三浦君は、16日(金)に予選、準決勝を勝ち上がり、決勝でも力強い走りを見せ、沖縄県の選手に続き2位でゴールに飛び込みました。記録は10秒81。さらに200mは圧巻でした。17日(土)の予選、準決勝を勝ち抜き、18日(日)午前の決勝に進みました。三浦君は県高校総体では3位だったため、私たちは何とか6位以内に入ってほしいと祈るような思いでスタンドから見守りました。連日30度近い暑さの中での競技が続き、疲労も心配されました。しかし、200m決勝では、闘志あふれる表情で力走し4位でゴール。記録は22秒02。100mも200mも自己ベストと並ぶ記録で、インターハイ出場を決めたのです。

 走り慣れている熊本の競技場で開催されたという地の利もあったかもしれません。しかし、南九州各県の代表選手と競うハイレベルな大会で、自分の力を最大限に出し切った三浦君の強さには脱帽です。南九州大会での三浦君の走りは、「戦う」という迫力が感じられました。

 インターハイ(全国高校総体)という高校アスリートの祭典への出場資格を自らの力で勝ちとった三浦君。三浦君にとっては、一つ山を越えるとまた次の高い峰があり、さらなる高峰が先に続いているようなものですが、それを次々と制覇しながら、より高みを目指して成長を遂げている姿に感嘆します。

 今年のインターハイは「南東北総体2017 ~ はばたけ世界へ」として陸上競技は山形県天童市で7月29日から8月2日にかけて開かれます。遠い山形の地に向け、若きアスリートは闘志を燃やし走り続けます


高校総体が終わって

高校総体が終わって

 毎年思うことですが、高校総体が終わると学校の空気が大きく変わります。野球部を除く多くの3年生が部活動を退き、進路に向けての学校生活に切り替わるからです。放課後に進学対策の課外授業も始まります。そして部活動は2年生が中心となります。本校の場合、1年生は在籍していませんので、2年生が多良木高校の部活動の最後の担い手となるのです。

 今年も高校総体では多くのドラマがありました。6月2日(金)の総合開会式(県総合運動公園陸上競技場)で陸上部と女子ソフトテニス部の生徒と共に入場行進をしました。スタンドから見ていた陸上部マネージャーの女子生徒が、「行進の息がみんな合っていて、涙が出そうになりました。」と語ってくれました。午後は、女子バレー部と男子バスケットボール部の1回戦を応援しました。それぞれベストを尽くし、最後まであきらめないプレーで見る者の胸を熱くしてくれました。試合後、女子バレーの選手たちは全力を出した後のすがすがしい表情でしたが、バスケットボール男子の3年生たちはコートで号泣していました。

 3日(土)は、宇土市で開催された女子アーチェリーを応援しました。選手たちは自分との戦いに集中していました。そして、午後から翌4日(日)にかけては「えがお健康スタジアム」において陸上競技の醍醐味を満喫しました。三浦君の100m優勝、200m3位の快挙には部員や顧問職員に歓喜の輪が広がりましたが、部の目標であった400mリレー、1600mリレーでの南九州大会出場を逃し、選手たちは地面を叩いて悔しがる姿が印象的でした。この悔しさはきっとこれからの学校生活の原動力になると思います。

 県高校総体という大きなイベントが終わり、6月6日(月)から学校は平常授業の日課に戻りました。3年生の女子4人で最後の高校総体に臨んだソフトテニス部は、放課後に部室の清掃と整理に取り組んでいました。かつては全国大会にも出場したソフトテニス部ですが、2年生がいないため閉校の1年前にその活動に終止符が打たれることになったのです。ゴール(閉校)が一歩一歩近づいてくることを感じます。


          男子バスケットボールの試合(東海大学)


 

多良木の意地と誇りの走り ~ 県高校総体陸上男子100m優勝

多良木の意地と誇りの走り ~ 県高校総体陸上男子100m優勝

 6月3日(土)、午後4時20分、県高校総体陸上競技会場の「えがお健康スタジアム」(熊本市)は緊張感ある静寂に包まれました。注目の男子100m決勝を迎えたのです。決勝を走る8人の走者の中に多良木高校3年の三浦恵史君がいます。スタンドから見つめる私も自然と体に力が入ります。「オンユアマーク」の掛け声があり、号砲、そして大歓声。スタートから飛び出した三浦君は勢いをさらに加速させ、10秒81の自己ベストタイムでゴールに飛び込みました。会心のレースでした。スタンドを駆け下りて、選手退場ゲートで三浦君と握手。いつも冷静な三浦君も、満面の笑顔を見せました。しかし、その後の記者からのインタビューには、すぐ平静さを取り戻し、落ち着いて対応する姿がありました。この時、「多良木の意地と誇りを胸に走りました。」と三浦君が答えるのを聞き、胸が熱くなりました。
 三浦君は、体格は決して大きい方ではなく、むしろ小柄と言ってよいでしょう。入学してきた時は県のトップレベルの選手ではありませんでした。しかし、陸上部顧問の富﨑教諭の指導を受けながら、黙々と練習に取り組み、記録を伸ばしてきました。2年次の秋の新人大会では3位に入り、九州大会出場を果たして自信を付けたようです。今年度に入ると10秒台の記録を次々と出し、好調を維持して高校総体に臨みました。周囲の期待が高まる中、見事、結果を出した三浦君の実力には驚かされます。競技直前は、いつも一人で気持ちを集中させ、近寄りがたい張りつめた空気が身辺に漂っています。普段の学校生活でも、決しておごらず、浮かれず、自分自身をコントロールできる賢さと意志の強さを持っている生徒です。
 男子陸上100mの優勝は、多良木高校にとっては32年ぶりの快挙であり、三浦君で三人目となります。多良木高校の伝統を感じると共に、閉校まで2年となった今だからこそ大きな価値のある優勝だと思います。学校に元気を与えてくれた三浦君の走りを称えると共に、南九州大会での更なる活躍、そして全国高校総体(インターハイ)への出場を願ってやみません。