校長室からの風(メッセージ)

多良木の意地と誇りの走り ~ 県高校総体陸上男子100m優勝

多良木の意地と誇りの走り ~ 県高校総体陸上男子100m優勝

 6月3日(土)、午後4時20分、県高校総体陸上競技会場の「えがお健康スタジアム」(熊本市)は緊張感ある静寂に包まれました。注目の男子100m決勝を迎えたのです。決勝を走る8人の走者の中に多良木高校3年の三浦恵史君がいます。スタンドから見つめる私も自然と体に力が入ります。「オンユアマーク」の掛け声があり、号砲、そして大歓声。スタートから飛び出した三浦君は勢いをさらに加速させ、10秒81の自己ベストタイムでゴールに飛び込みました。会心のレースでした。スタンドを駆け下りて、選手退場ゲートで三浦君と握手。いつも冷静な三浦君も、満面の笑顔を見せました。しかし、その後の記者からのインタビューには、すぐ平静さを取り戻し、落ち着いて対応する姿がありました。この時、「多良木の意地と誇りを胸に走りました。」と三浦君が答えるのを聞き、胸が熱くなりました。
 三浦君は、体格は決して大きい方ではなく、むしろ小柄と言ってよいでしょう。入学してきた時は県のトップレベルの選手ではありませんでした。しかし、陸上部顧問の富﨑教諭の指導を受けながら、黙々と練習に取り組み、記録を伸ばしてきました。2年次の秋の新人大会では3位に入り、九州大会出場を果たして自信を付けたようです。今年度に入ると10秒台の記録を次々と出し、好調を維持して高校総体に臨みました。周囲の期待が高まる中、見事、結果を出した三浦君の実力には驚かされます。競技直前は、いつも一人で気持ちを集中させ、近寄りがたい張りつめた空気が身辺に漂っています。普段の学校生活でも、決しておごらず、浮かれず、自分自身をコントロールできる賢さと意志の強さを持っている生徒です。
 男子陸上100mの優勝は、多良木高校にとっては32年ぶりの快挙であり、三浦君で三人目となります。多良木高校の伝統を感じると共に、閉校まで2年となった今だからこそ大きな価値のある優勝だと思います。学校に元気を与えてくれた三浦君の走りを称えると共に、南九州大会での更なる活躍、そして全国高校総体(インターハイ)への出場を願ってやみません。