校長室からの風(メッセージ)
1学期終業式
「1学期の終業式に当たり、この3ヶ月半を振り返ると、先ず思い起こされるのが4月14日、16日の大地震発生のことです。18日月曜日、この体育館に集まり臨時の全校朝礼を行い、私から皆さんに三つのことを伝えました。一つは「普通の生活ができることに感謝しよう」です。この感謝の気持ちはいつも持っていたいですね。二つ目は「自然災害を正しく恐れよう」です。今回の地震でもネット上に根拠のない噂話、憶測が多く流れたようですが、基本的な知識、そして正しい情報を持って判断し行動してほしいと思います。三つ目は、「皆さんは弱者ではない」ということです。災害が起きたとき、まず自分の安全を確保した後は、子どもやお年寄り、障がいのある方を助ける立場となります。そして、復旧、復興に皆さんの力は欠かせないのです。
先ほど、4人の3年生が復興支援ボランティア体験の報告をしてくれましたが、被災しなかった地域の県立高校23校から84人の代表生徒が集まりました。西原村の山中において地震で2千本のしいたけ原木が倒れたまま放置されており、それらをボランティアリーダーや地元の農家の方の指導のもと、一本一本復元していくのです。不安定な斜面での作業で、蒸し暑い天候の中、ムカデも出る厳しい環境でしたが、どの生徒も苦しい顔や嫌な顔ひとつせず作業する姿は爽やかで、私は、「見てください、これが熊本の高校生たちです」と胸を張って他県のボランティアの方々に自慢したくなりました。
5年前の東日本大震災の時もそうでしたが、今回の熊本地震においても、高校生は、被災地での復旧ボランティアや避難所での運営補助など実によく働き、その元気と明るさに被災者の方が励まされたそうです。私たち大人は、ひとたび震災に見舞われると多くのものを失った精神的打撃でなかなか立ち直れなくなります。しかし、皆さん達、高校生は立ち直りが早い。復元力とでも言うのでしょうか、しなやかに立ち直る力を持つ高校生こそ、非常時には頼りにされるのです。落としたら割れるガラスの花瓶のような人になってはだめです。落としても、跳ね返ってくるゴムボールのようなしなやかさを、皆さんには身に付けて欲しいと期待します。
震災からの復興だけでなく、これからの社会を創っていくのは皆さん達です。先日、参議院議員選挙が行われましたが、全体の投票率は54.7%でした。これまでの参議院選挙で4番目に低い投票率でした。熊本選挙区は51.46%です。二人に一人しか投票していない状況です。それでは、選挙権を持つ多良木高校3年生21人の投票行動はどうだったのでしょうか?21人中19人が投票していますので、投票率は90.5%という高さです。皆さん達は、主権者としての責任をきちんと果たしたのです。私はこのことを誇らしく思います。今回棄権した多くの大人は、多良木高校3年生を見倣って欲しい気持ちです。
夏休みに、一つ皆さんにお願いがあります。おじいさん、おばあさん、あるいはひいおじいさん、ひいおばあさんがご健在な人もいると思いますが、一人で暮らしておられる方がいらっしゃいませんか? 遠くに住んでおられ、普段は会えないという事情もあるでしょう。この夏休み、できればお盆の時期に皆さん達から訪ねていってほしいのです。今、振り込め詐欺の被害者、被害額が急増しています。この人吉球磨地域でも被害者が出ています。被害者のほとんどがお年寄りです。なぜ、犯罪者はお年寄りを狙うのか? お年寄りは寂しいからです。子どもや孫が会いに来てくれない、電話もあまりない、という孤独な環境のお年寄りが振り込め詐欺の罠に陥ってしまうのです。それを防ぐために、みなさんが、「おじいちゃん、おばあちゃん、元気ですか?」と顔を見せ、話しをすることは効果が大きいと言われます。今の日本を築き上げてこられたお年寄りを、卑劣な犯罪から守るためにも、孫、ひ孫である皆さん達高校生が積極的にお年寄りと交流することが求められます。
2016年の夏、熊本の復興が進み、皆さん達がそれぞれの故郷でお年寄りと一緒に笑顔で過ごすことを願っています。そして、明後日17日の多良木町ブルートレイン清掃ボランティアに31人が参加することをスタートに、多良木町地域未来塾の先生役、地域のお祭り、スポーツ大会、介護施設の行事運営の補助など数え切れない程のボランティア活動に参加する皆さんに素晴らしい出会いと体験が待っていることを念じ、終業式の挨拶とします。」
高校生による復興支援ボランティア報告会(多良木高校)
藤崎台球場の夏
藤崎台球場の夏 ~ 第98回全国高等学校野球選手権熊本大会開幕
7月10日(日)、熊本市の藤崎台球場で第98回全国高等学校野球選手権熊本大会の開会式が行われました。4月の大地震の影響で、藤崎台球場の施設の一部に被害が生じ、同球場での夏の大会予選開催が危ぶまれましたが、修復、安全点検が間に合い、熊本県高校野球の中心地である藤崎台球場での開会式に至ったのです。
雨上がりの曇天の下、午前10時20分から出場校63校の選手入場が始まり、35番目に多良木高校の選手達がはつらつとした態度で行進しました。今年の大会は、熊本地震の復興の中での開催ということで全国から注目されています。入場行進では、「がんばろう九州」の横断幕も掲げられ、日本高野連会長の八田英二氏も駆けつけられ、選手達にエールを送られました。
出場校の中には、グラウンドをはじめ学校の施設、設備が被災して、2週間から3週間にわたって休校となった所もあります。避難所となった学校もあります。選手達の中には、自宅が被災して避難所または自動車の中での生活を余儀なくされた人もいます。そのような苦しさを体験した多くの高校生の、それでも好きな野球をしたいという意志が原動力となり、大会が始まるのです。
外野席の背後には、国の天然記念物に指定されている7本の大楠が立っています。樹齢千年に及ぶと伝えられる巨樹群は、幾多の戦乱、自然災害を経験してきたことでしょう。これらの大楠に見守られながら、高校球児が藤崎台球場で躍動し、ひたむきなプレーを繰り広げます。青春賛歌の「栄冠は君に輝く」を口ずさみながら、選手達に惜しみない拍手と声援を送ります。
「雲は湧き 光あふれる
天高く 純白の球 今日ぞ飛ぶ
若人よ いざ
まじりは 歓呼に応え
いさぎよし ほほえむ希望
ああ栄冠は 君に輝く」
(作詞:加賀大介 作曲:古関裕而)
心を育む声の贈り物「朗読」
心を育む声の贈り物「朗読」 ~ 宮沢賢治文学の朗読を聴く会
今から80年ほど前の昭和8年に37歳の若さで世を去った宮沢賢治。生前は無名に近い存在でしたが、没後、彼の詩、童話、小説などの文学作品は広く読まれ、今日、ますますその輝きを増しているようです。
朗読活動家の矢部絹子さんは、宮沢賢治の文学世界を多くの人に伝えたいという熱い思いの持ち主です。元テレビ局のアナウンサーであり、読むこと・話すこと・語ることのプロフェッショナルである矢部さんは、40年余り、宮沢賢治の作品の朗読に取り組んでこられました。この度、ご縁があって、多良木高校生に宮沢賢治文学の朗読を聴かせていただく機会を得ました。
7月1日(金)午後3時から第1体育館にて、短編童話「虔十公園林」と詩「雨ニモマケズ」の朗読をしていただきました。矢部さんの心の底から湧いてくるような、情感の込められた声で語られる宮沢賢治の物語に生徒達は引き込まれたようでした。およそ40分間、ほとんど私語もなく、思索と想像の世界に浸っていました。デジタル世代の高校生にとって貴重な、静かで豊かな時間が流れていたと思います。
短編童話「虔十公園林」。まわりから馬鹿にされている虔十(けんじゅう)ですが、700本の杉苗を植え、それを大事に愚直に育て、若くして病気で亡くなります。その後、杉林は虔十の家族によって引き続き守られ立派な林となりました。歳月が立ち、村の風景もすっかり変わった中で、久しぶりに帰省した村出身の博士が、杉林の中で遊ぶ子ども達を見て、ここだけが昔と変わっていないことに感嘆して、「ああ、全くたれがかしこくたれが賢くないかはわかりません」と言います。この最後の博士の言葉はとても印象深く、考えさせられます。主人公の虔十とは宮沢賢治その人とも言えるのでしょう。
詩「雨ニモマケズ」。この高名な詩を小中学校で暗唱した生徒もいるでしょう。しかし、高校生になった今、宮沢賢治の理想の生き方を表現したと言われるこの詩に触れ、どんな感想を得たのでしょうか。宮沢賢治は、自分の作品を思春期の人に読んで欲しいと願いを込めたと言われます。百年近い時を隔て、平成の高校生にも宮沢賢治のメッセージは届いていると思います。
生徒会役員立ち会い演説会に望む
「生徒会は多良木高校の全校生徒204人全員が会員です。生徒会は、クラスマッチや体育大会、文化祭など大きな行事を企画、運営することも務めですが、一方、挨拶や交通安全といった日常生活に係る取り組みも大切だと思います。今、売店がある部屋を、生徒会役員の皆さんが中心になって「エンジョイ広場」として作っていると聞いています。どんなリフレッシュスペースができるのか楽しみです。皆さんが工夫し、力を合わせれば、もっと充実した多良木高校生活が実現できると期待しています。
今回の生徒会役員の選挙に、福田君、野村君、大山君、西脇君の4人が立候補してくれました。進んで役員になろうという4人の志に敬意を表します。
さて、現在、参議院議員選挙が行われていますね。6月22日に公示され、選挙戦が始まり、7月10日(日)が投票日です。今回の参議員選挙が注目されるのは、18歳選挙権が導入されて初めての選挙だからです。選挙権年齢が20歳以上から「18歳以上」に引き下げられ、投票日の時点で満18歳になっていれば高校生でも選挙権を持つのです。今回の参議院議員選挙においては、本校の3年生64人のうち21人が選挙権を持っています。人生で最初の選挙、投票です。選挙権は、国民としての責任を伴う重要な権利ですから、棄権せずに必ず投票して欲しいと願っています。
高校生で十分な判断ができるのか、早すぎるのではないか、と心配する声も聞かれますが、アメリカ合衆国、ヨーロッパの各国、オーストラリアなど世界では18歳以上の選挙権が主流だそうです。18歳選挙権の始まりは、皆さん一人一人が、身近な地域のことから国の政治問題まで幅広く社会に関心を持つきっかけになると私は期待しています。
今回の生徒会役員選挙は、昨年までとは異なり、ひと工夫してあり、投票は明日以降、会議室に各自で行くようになりました。投票場である会議室は実際の選挙の投票場のように設定されています。自ら足を運ばなければ棄権となります。各クラス100%の投票率を目指しましょう。
それでは、この立会演説会が、皆さんにとって、どんな学校であってほしいのか、どんな学校をこれからみんなで創るのかを考える良い機会になることを願い、挨拶とします。」
野球部を励ます ~ 高校野球推戴式
野球部を励ます ~ 高校野球推戴式での校長の激励の言葉
昨年の夏は、多良木高校にとって熱い熱い夏でした。夏の甲子園大会熊本県予選で野球部が快進撃をみせ、次々とシード校を破り、30年振りのベスト4進出を果たしました。多良木町をはじめ地域の方、同窓会の方々と一緒に私たちも熊本市の藤崎台球場に駆けつけ、「思いはひとつ ~多良木の意地と誇りを胸に」の横断幕を掲げ、スタンドとグラウンドの選手が一体となって戦った夏が忘れられません。
一年経ち、また甲子園の夏が巡ってきました。野球部の皆さん達には、昨年の先輩達が残した結果を超えたいという思いがあると思います。しかし、そのことが精神的重圧になってはいないでしょうか? 昨年の野球部キャプテンの大塚将稀君が、十日ほど前、学校を訪ねてきてくれました。大塚君は現在、北九州市にある九州国際大学の野球部で活躍しています。大塚君は話しました。「実は、昨年の僕たちは、先輩達と比べられているのではないかとずっと意識して、プレッシャーに押しつぶされそうでした」と。一昨年の野球部は、現在、社会人の東芝で活躍するビッチャーの善君、そして法政大学で活躍しているキャッチャーの中村君がいて秋の県大会やNHK旗杯で優勝するなどの強豪チームでした。大塚君は、「善さん、中村さん達にはとてもかなわない」と思っていたそうです。けれども、いざ夏の大会が始まると一試合一試合に集中でき、「先輩達のことは忘れ、全力で自分たちの野球ができた」そうです。大塚君は言いました。「大学の練習より、多良木高校の練習の方がきついです。厳しい練習を積み重ねてきたことを自信に、自分たちの野球を貫いて欲しい」と。
野球場近くにお住まいのご婦人が、先日私に言われました。「今年の野球部は例年以上に声が出ているようですね。高校生の大きな声を聞くだけで元気が出ます。」。君たちは、練習の声だけで地域の方々に元気を届ける存在です。地域の応援を追い風として勢いを付け、大会に臨んでください。畑野キャプテンを中心に、一昨年のチームとも、昨年のチームとも違う、今年のチームらしさを発揮し、自分たちの野球に集中してください。
第98回熊本県高等学校野球選手権大会に、誇りをもって野球部を送り出します。
しなやかな若い力 ~ 高校生による復興支援ボランティア
しなやかな若い力 ~ 高校生による復興支援ボランティア活動
「地震に負けんばい がまだすぞー 西原村魂」。西原村ボランティアセンターの敷地内の大きな立て看板に書かれた言葉です。6月18日(土)、熊本県教育委員会主催の「高校生による復興支援ボランティア」活動に多良木高校から3年生男子4人、教諭1人と共に参加しました。この度の「平成28年熊本地震」であまり被害がなかった地域の県立高校23校から84人の代表生徒が集結しました。
当日、朝9時に県庁で出発式を行い、大型バス3台に分乗し、先ず益城町に向かいました。4月14日、16日と二度にわたって震度7の強烈な揺れを蒙った益城町は、県内で最も被害が大きい地域です。特に同町の木山地域にバスが入ると、家々が崩壊したままの惨状が残されており、現実とは思えない光景に思わず息をのみます。テレビ映像や新聞の写真では幾度も目にしていたのですが、実際に間近で見ると改めて大地震の脅威を実感します。生徒達もバス車窓から食い入るように被災地の状況を見つめていました。
益城町から西原村に進み、同村のボランティアセンターで受付をしました。当日も県内外から多くのボランティアの人が駆けつけており、活気がありました。私たちは山間部に移動し、昼食を取った後、しいたけ栽培の原木復元作業に取り組みました。地震で2千本のしいたけ原木が倒れたまま放置されており、それらをボランティアリーダーや地元の農家の方の指導のもと、一本一本復元していくのです。不安定な斜面での作業にかかわらず、高校生達は意欲的に取り組みました。蒸し暑い天候で、ムカデも出る厳しい環境でしたが、どの生徒も苦しい顔や嫌な顔ひとつせず作業する姿は爽やかでした。作業を始めておよそ1時間半で2千本のしいたけ原木を元の位置に戻すことができました。
この日、高校生達が行った事は、大地震の被害の前では小さい復元作業でしかありません。けれども、今回参加した高校生達が各学校に帰って体験を広め、多くの高校生に復興支援のボランティアの意識が共有されることで、大きな復元力が生み出されると思います。高校生の若さ、しなやかさは不屈です。彼らはこれからの社会を創っていく原動力なのです。
地に足をつけて一勝を ~ 一勝地駅記念入場券
地に足をつけ一勝を ~ 一勝地駅の記念入場券
JR肥薩線の一勝地駅(いっしょうちえき:球磨村)は、その地名の縁起の良さから、「必勝」、「合格」等のお守り代わりに記念入場券が売れることで知られています。6月12日(日)に多良木高校から自動車で50分かけて、一勝地駅を訪ねました。一勝地は球磨村の中心部に当たり、駅は、球磨川の左岸に位置し、対岸の高台には球磨村役場が見えます。
明治41年開業の肥薩線は、明治、大正期の駅舎や隧道(トンネル)、鉄橋等の鉄道遺産が多いことで有名ですが、一勝地駅の現在の駅舎も大正3年に完成して以来基本的な骨格が保たれており、背後の山林に調和するクラシックな木造駅舎です。駅舎やホームに立つと、およそ一世紀にわたって球磨の人々の往来の場となってきた歴史を感じます。一勝地駅内の事務室が球磨村観光案内所となっており、ここで記念入場券を7枚購入し帰って来ました。
先般開かれた県高校総体陸上競技において男子400リレーで6位に入ったメンバーが南九州大会(6月16日~18日、宮崎市)に、そして、女子アーチェリー個人の部で2年生女子が入賞し九州大会(6月17日~18日、鹿児島市)に進出することになりました。このリレーメンバー(選手4人、補欠2人)と女子アーチェリー選手に、一勝地駅の記念入場券を贈りたかったのです。
校長室にて、陸上部員とアーチェリー部員の併せて7人の生徒達に励ましの言葉を掛け、「地に足をつけて一勝を」と一勝地駅の記念入場券を渡しました。皆、喜んで受け取ってくれ、大会に向けて学校を出発しました。
生徒達の健闘を心から祈ります。
県6位入賞を果たした400㍍リレー(6月4日八代市)
若者たち ~高校総体2
若者たち ~ 高校総体その2
今年の高校総体の陸上競技は、熊本地震の影響で熊本市の県民総合運動公園陸上競技場(「うまかな・よかなスタジアム」)が使用できず、県営八代運動公園陸上競技場(八代市)で6月3日から6日にかけて行われました。
6月4日(土)と5日(日)のそれぞれ午後の半日、多良木高校陸上競技部の選手を応援しました。収容人員32000人の巨大な競技場である「うまかな・よかなスタジアム」とは異なり、八代の陸上競技場はスタンドも小さく、雨が降る時は周辺の芝生広場のテントで待機するという状況で、例年と比較すると選手のコンディションには厳しいものがあったようです。応援する者にとっても、雨が降ると傘をさし、競技場のトラック(競走路)の周囲に立っての応援となりました。しかし、競技中の選手と距離が近く、選手の息づかいや流れる汗が感じられる程で、陸上競技の醍醐味を満喫できました。
本校から3人の女子選手が出場した400mハードル競技は負荷の大きい種目で、1人の1年生選手はゴールすると倒れ込み、しばらく起き上がることができませんでした。また、男子2人が出場した5000m、3000m障がい、そして女子2人が挑んだ3000mと長距離レースはいずれも過酷で、苦しそうに表情をゆがめゴールを目指す姿には、こちらも熱くなり声援を送りました。苦しくてもひたすらゴールを目指す選手達の姿を至近距離で見ていて、中学校の音楽の授業で歌った「若者たち」(作詞:藤田敏雄、作曲:佐藤勝)の歌詞の一節が思い浮かびました。
「君の行く道は 果てしなく遠い
だのになぜ 歯をくいしばり
君は行くのか そんなにしてまで」
高校総体が終わり、先日、陸上競技部の選手達が応援の御礼に校長室まで来てくれました。その時、私は「君たちは苦しくてもなぜ走るんだろう?」と問いかけました。すると1人の生徒が「なぜでしょうね? 自分でも時々わからなくなります。」と笑って答えてくれました。
雨の中、応援する陸上部員
限りある時間の中で ~ 高校総体1
限りある時間の中で ~ 高校総体その1
高校に入学し、自分の好きなスポーツの部活動に入って練習を始めた頃は、高校生活も部活動も無限に続くような感覚を持っていたことでしょう。記録が伸びない、上達しない等、壁にぶつかり悩んだ日、あるいは勉強との両立で苦しんだ日もあったことと思います。しかし、どんな時間も有限です。限りがあるのです。このチームメートといつまでも部活動に打ち込んでいたいと思っていても終わりは来ます。高校に入学しておよそ2年2ヶ月後に3年生として県高校総体を迎えることになります。
今年の県高校総体は、熊本地震の影響で、会場も分散しての開催となり、本校からはサッカー、陸上、バスケットボール(男子)、バレーボール(女子)、ソフトテニス、アーチェリー(女子)の6種目に参加しました。
5月29日(日)に先行開催されたサッカー1回戦(大津高校運動場)は熊本高校と雨天のもと泥だらけの試合となりました。それでも選手達はフェアプレーで戦い抜き、惜しくも敗れました。試合終了後、水たまりのグラウンドに膝をつく選手達を見て、もっと良いコンディションでさせたかったと無念の思いに包まれました。6月3日(金)から全面的に総体が始まり、バスケットボール男子の1回戦(玉名高校体育館)は力が拮抗している八代清流高校と熱戦となり、応援していて力が入りました。リードして迎えた第4クォーターで逆転されて悔しい敗戦。号泣する3年生選手の姿が印象的でした。
そして女子バレーボールは、6月3日(金)の1回戦に快勝し、翌4日(土)に第1シードの鎮西高校と対戦しました(秀学館高校アリーナ)。強豪相手に第1セットでは16点も得点し、練習の成果を十分に発揮しました。しかし、試合後3年生は涙を流しました。試合に関して悔いはなかったかもしれませんが、このチームでもうバレーボールができない悲しさに襲われたのでしょう。
負けたことで多くのことを学ぶことができるのがスポーツです。そして、高校総体が終わり、どんな時間も限りあることを生徒達は実感したことでしょう。
(女子バレーボール1回戦)
スポーツマンシップでいこう ~ 高校総体推戴式
「今年の高校総体は、熊本地震の影響で例年とは大きく異なり、県民総合運動公園陸上競技場での総合開会式はなくなり、主に熊本市及びその近郊で実施されていた競技が、県北から県南にかけて広い地域で分散して開催されることとなりました。けれども、関係者の御尽力によって開催されることを皆さんと共に感謝したいと思います。
県高校総体のテーマは、昨年に引き続き「スポーツマンシップでいこう」です。「スポーツマン」とはスポーツをする男性という狭い意味ではなく、女性も含めて「スポーツをする人」と広く捉えた表現だと思います。スポーツマンシップとは何でしょうか? 昨年度の総合開会式で高体連の赤星会長が、スポーツマンシップとは、ルールを守り、審判に敬意を表し、勝っても負けても相手を称えることだと話しをされました。応援する者も、スポーツマンシップに則って応援しなければなりませんが、昨年の高校総体で私には苦い思い出があります。
サッカーの1回戦、八代農業高校との試合を応援に行きました。確か、昨年の本校のサッカー部の部員は15人だったと思います。サッカーはイレブン、11人でプレーする競技ですから、15人は余裕のない部員数です。ところが、相手の八代農業高チームは10人しかおらず、初めから一人足りないハンディがあるのです。前半は3-0で多良木高校がリードして終わり、ハーフタイムを迎えました。八代農業は交代する選手もいないため、後半はこのまま点差が開き、大差になるだろう、気の毒だなあという気持ちに私は包まれました。しかし、後半の八代農業高校の選手達は1人足りない10人で、体をはって果敢にプレーし、多良木の攻撃を止め一点も許しませんでした。後半は0対0で終わり、八代農業高校の健闘が光りました。試合後、私は、八代農業高校の選手達に対して、申し訳ないというか恥ずかしい気持ちになりました。私はスポーツマンシップに反し、試合はまだ終わっていないのに、相手を見下した考えに支配されていたのです。次の2回戦は部員が70人もいる熊本北高校が相手でした。今度は一回戦とは立場が逆で、多良木高校サッカー部は、懸命に粘り、リードされても追いつき、最後PK戦までいき惜しくも敗れました。
スポーツは筋書きのないドラマだと言われます。応援する者の心が熱くなるような試合、レース、競技を今年も期待します。そして、繰り返しますが、ルールを守り、審判に敬意を表し、勝っても負けても相手を称えるというスポーツマンシップを発揮して欲しいと願い、激励の言葉とします。」
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