校長室からの風(メッセージ)

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野球部の二人のコーチ

野球部の二人のコーチ ~ 多良木高校野球部を支える地元の力  

 「多良木高校野球部の試合を見ていると、つい笑顔になり、やがて涙が出てくる」とある高校野球ファンが私に語られました。超高校級の選手は一人もいませんが、心の底から野球が好きという少年たちがひたむきにボールを追いかけ、いつもハラハラ、ドキドキさせる試合を展開します。残り2年で閉校の定めで、今の1年生が多良木高校の歴史のアンカーを務め、次年度以降に新しい部員は入ってきません。しかし、そのような寂しさを感じさせない明るい笑顔と大きな声を出す野球部員の姿は応援する人の胸を打つのでしょう。

 多良木高校野球部は本当に地域の力に支えられています。監督は、元多良木高校長で現在は多良木町教育委員会にお勤めの斎藤健二郎先生。67歳という現役の高校野球監督としては県内最年長の百戦錬磨の名将です。そして、この監督を支えるのが、馬場さんと尾方さんの二人のコーチです。馬場さんは50代前半、尾方さんは40代後半の年齢で、お二人とも多良木高校野球部OBであり、それぞれ地元で自営業をなさっておられます。

 お二人のコーチはほぼ毎日お仕事の合間を縫ってグラウンドに来られ、生徒たちを指導されます。学校から指導手当ても出すことができていないのですが、お二人は「後輩のために好きな野球を教えられるだから、こんな楽しいことはない」と言われます。長年、多良木高校野球部に関わっていらっしゃるため、多良木高校生の特徴や癖をよく知っておられ、一人ひとりに応じたきめ細かな指導をされます。

 馬場コーチは、豊かなユーモアのセンスで生徒たちの意欲を引き出される一方、地道なトレーニングを徹底されます。尾方コーチは、多良木高校時代、後にプロ野球で活躍した野田投手とバッテリーを組んだ方で、ノックが実に巧みで緊張感ある質の高い練習時間を創り上げられます。お二人は斎藤監督の野球の教え子でもあり、三人の息はぴったり合います。この他、近年の野球部OBの方が入れ替わりコーチの手伝いに来られ、まさに地元に支えられています。

 今日も放課後にはお二人の姿が野球場に見えることでしょう。そして、お二人の叱咤激励に対し、野球部員が懸命に応える熱い練習が繰り広げられます。