校長室からの風(メッセージ)

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朗読劇「銀河鉄道の夜」

朗読劇「銀河鉄道の夜」  

 朗読活動家の矢部絹子さんのご指導を受けた生徒有志による朗読劇「銀河鉄道の夜」(原作:宮沢賢治)の発表会を10月8日(土)に第1体育館にて行いました。矢部さんがナレーターを務められ、多良木町出身のプロピアニストの牧光輝さんがピアノ演奏をしてくださるなど、プロの方々に支えていただき、生徒有志6人がそれぞれ登場人物の役を務めました。

 振り返れば、7月下旬の夏休みから練習を始めましたが、最初は抑揚を付けることもできない棒読みで、感情を込めて表現する朗読の難しさを生徒たちは痛感したようでした。何度も繰り返し、それでも表現力がなかなか伸びず、目に涙を浮かべる生徒もいました。けれども、矢部さんの教育的情熱に基づくご指導が続きました。
 矢部さんは熊本市から鹿児島本線、肥薩線、そしてくま川鉄道と乗り継がれて、8月後半以降は毎週のように土曜日に来校され、多良木町に宿泊されて翌日もご指導に当たられました。その熱意、献身的姿勢に生徒たちは励まされ、次第に変化していきました。初めは戸惑い、そして朗読の難しさで不安に陥っていた生徒たちが、最終段階では進んでやりたいという意欲を見せるようになりました。

 学校で疎外感を覚えていた孤独な少年ジョバンニ。彼の唯一の友であるカンパネルラと一緒に不思議な銀河鉄道の旅に出て、みんなのために自分の体を燃やし続け空の目印になっているサソリや船の遭難事故で亡くなり天上へ向かう人々等と出会います。そして、「きっとみんなの本当の幸福(さいわい)を探しに行く。僕たちいっしょに進んでいこう。」とカンパネルラに呼び掛けます。しかし、旅の最後にカンパネルラは車内から忽然と消えるのです。ジョバンニは悲嘆にくれながらも、カンパネルラが人の幸せのために旅立ったことを悟ります。「みんながカンパネルラだ」という考え方に、ジョバンニはたどりつくのです。唯一無二の友達という考えから、出会う人すべてが友達になりえるという考えに転換できる可能性が示されます。

 
 生徒有志6人は役になりきり、感情を込めて朗読しました。かれらが創り上げた、永遠の友情をテーマとした「銀河鉄道の夜」の世界は多良木高校生の胸を大いに揺さぶったと思います。