校長室からの風(メッセージ)

校長室からの風(メッセージ)

最後の部活動 ~ サッカー、バスケットボール、駅伝

最後の部活動 ~ サッカー、バスケットボール、駅伝


 7月の甲子園大会県予選で野球部が敗退した後、多良木高校のグラウンド及び体育館における部活動は休止状態となりました。しかし、10月に入り、部活動が再開されました。この時期、各競技の秋の県大会が開催されるため、本校から三つの部が出場することになったのです。今年度で閉校する本校には3年生しか在籍しておらず、3年生で単独チームが結成できるのは10人の部員がいる男子バスケットボールだけです。男子サッカーと駅伝(陸上部)は南稜高校と合同チームとなります。就職の内定、上級学校の合格と進路が決まった生徒を中心に練習を再び始めました。

 多良木高校サッカー部は部員5人ですが、南稜高校と合同チームを組んでもぎりぎりの11人の状況です。しかし、6月の県高校総体1回戦での逆転負けの雪辱に燃え、10月6日の1回戦(会場:鹿本農高)に大勝しました。そして、13日の2回戦(会場:鹿本商工高)では天草工業高校相手に互角の試合を展開し、2対2のまま延長でも決着せずPK戦で勝つという劇的な幕切れとなりました。合同チームながら、人吉球磨地域で小・中学校からサッカーをしてきた仲間であり、絆は強く、最後まであきらめないたくましさを見せてくれました。

 また、男子バスケットボールも13日に大会(会場:熊本市)に臨み、1回戦は快勝しました。生き生きと躍動し、出場した選手全員がシュートを決める圧巻の内容でした。2回戦では強豪のシード校に敗れましたが、多良木高校単独チームとして輝きを放ったと思います。試合後、バスケットボールをやりきったという達成感漂う選手たちの表情が爽やかでした。

 サッカーの合同チームは20日の3回戦に挑みます。そして、同じく南稜高校と合同チームを組む男女の駅伝は27日に県高校駅伝大会に挑みます。それぞれ自分が選んで続けてきたスポーツで完全燃焼をしてほしいと期待します。

 今月、束の間ですが、放課後、グラウンド・体育館で生徒たちが汗を流して活動し、元気ある声が響きました。多良木高校は最後まで活力を失いません。


            2回戦を勝利した南稜・多良木サッカーチーム

最後まで地域と共に ~ 地区の交流会、防災ヘリの離発着場

最後まで地域と共に ~ 地区の交流会、防災ヘリの離発着場 

 
 昨日、多良木町六区の公民館で高齢者の方々の集まり「いきいきサロン」が開かれました。毎年、9月の「いきいきサロン」には同じ区にある多良木高校にもご案内があります。木曜日の午前中ということで、既に進路が内定した生徒4人(男子3、女子1)、引率教諭と私の6人で参加しました。多良木中学校からも12人の生徒が参加し、およそ30人の高齢者の方々と約1時間半の和やかな交流のひと時を過ごすことができました。

 六区の区長の長田さんは多良木高校卒業生で御年80歳。しかし、いつも元気溌剌、陽気でいらして献身的にお世話に奔走されています。近年、地元六区の方々には学校をいつも支えていただき、感謝の言葉もありません。体育大会での一緒の競技、合同の防災訓練、そして郷土料理やグラウンドゴルフを通しての交流会などの行事はもちろんですが、日常において、生徒達を温かく見守ってくださっています。このことは生徒自身が一番わかっています。

 昨日の交流会で、4人の生徒達がそれぞれ感謝の言葉を地区の皆さんに述べました。どれも心のこもったもので、聞いていて生徒の人間的成長を私も実感しました。地域の方々の眼差しや声掛けが最後の学年の生徒達をどれだけ励まし育ててくれたことでしょう。

 閉校まで半年となりました。「地域に恩返しをしたい」と職員、生徒にはいつも呼び掛けています。できることは限られています。可能な限り、地域の行事や催し物に進路が内定した生徒を参加させたいと思っています。

 実は9月から、多良木高校は緊急時のドクターヘリや防災ヘリの臨時の離発着場の役割を担っています。近隣の上球磨消防署の改築工事のため、代替の場所を引き受けました。広いグラウンドを有し、生徒は少なく、放課後の部活動もなくなったため、体育の授業時など以外は原則受け入れることにしています。既に2度、ヘリの離発着が行われました。地域の防災拠点になることも県立高等学校の役割だと思います。そして、少しでも地域の方々への恩返しになればと願っています

       上)多良木町6区の高齢者の方との交流会(6区公民館)
       下)多良木高校グラウンドで離発着する防災ヘリコプター

塀の向こうには彼岸花が咲いていた ~ ブロック塀撤去完了

塀の向こうには彼岸花が咲いていた ~ ブロック塀撤去完了

 
 多良木高校の正門から南側にかけて長さ約15m、高さ1.5mのブロック塀が立っていましたが、9月18日~19日の工事で撤去されました。去る6月、大阪府北部を震源地とし最大震度6を記録した地震で、高槻市の小学校のプール脇のコンクリートブロックが倒壊し女子児童が亡くなるという事故が起きました。この痛ましい事故の発生を受け、熊本県教育委員会(施設課)による全ての県立学校のブロック塀緊急点検が行われました。その結果、本校においても正門から南側にかけてのブロック塀と、多良木町迫田の職員住宅を囲むブロック塀が撤去対象に該当することが判明し、今回の工事に至りました。

 ブロック塀は、約20年で鉄筋にさびが認められるようになり、抵抗力が弱くなるそうです。日本建築学会の調査によるとブロック塀に期待できる耐久年数は約30年とされています。また、高さが1.2mを超える塀は、安定性を確保するため構造も複雑で、劣化の影響を受けやすく、倒壊した場合の被害も大きいことを緊急調査の際に配布された資料で知りました。本校のブロック塀は高さが1.5mあり、現在地に移転して数年内に築造されたと推定され、すでに40年を超えていました。内側から支える控壁(ひかえかべ)は付いていましたが、経年劣化していると判断されたのです。

 学校は安全で安心な場所でなければなりません。大阪府高槻市の小学校のブロック塀の危険性が見逃されていたために悲劇が起きました。この事故が起きなければ、私たちも多良木高校のブロック塀の危険性を意識することがありませんでした。日常見ていても、意識しないと危険性を見出すことはできません。2年前の熊本地震において球磨郡は最大震度4を記録しましたが、ブロック塀に異変は生じませんでした。油断があったのです。

 ブロック塀がなくなり、今まで塀で遮られていた風景が見通せるようになりました。何かとても風通しが良くなった気がします。撤去されたブロック塀の向こうには、真っ赤な彼岸花と緑から黄色に変色している稲穂の田園風景が広がっています。この夏、記録的な猛暑、台風や地震の自然災害に日本列島は見舞われました。まだその傷跡は癒えておりませんが、ようやく実りの秋を迎えようとしています。


 

3年生を励ます ~ 3年生進路激励会

3年生を励ます ~ 3年生進路激励会

 進路を決める高校3年の2学期を迎えました。

 自らの進路達成に挑戦する皆さんに対し、追い風が吹いていると私は思っています。今年度で閉校する多良木高校の最後の学年である皆さんは、入学以来、期待と注目の存在です。96年の歴史のアンカーです。同窓生の方が、地域の方が、そしてメディアまでもが注目し、応援してくれています。そのことは皆さんも実感していることでしょう。

 閉校すると分かっていながら多良木高校を志望した皆さんの選択は間違っていなかったと思います。他の学校ではとうてい得ることができない、特別な体験を重ね、多くの方の応援を受けてきたからです。それは皆さんの強みです。

 小・中学校、高校とこれまで横並びの歩みでした。しかし、高校卒業後の進路はそれぞれ全く異なります。人それぞれです。「この道より我を活かす道なし この道を歩く」(武者小路実篤)という決意、覚悟が問われます。

 「皆さんは豊かな可能性を持っている」と私はよく口にしますが、それは二つの根拠があるからです。高校の教員として32年間、多くの高校生の卒業後の活躍を見てきたこと、そして多良木高校長として4年間、多良木高校の諸先輩たちの活躍を見聞きしていることです。皆さんもきっとできます。

 公務員試験はすでに始まり、一般企業の採用試験は9月16日解禁です。専門学校、大学等の推薦試験も近づいています。就職、そして進学の推薦試験において必須となる面接についてのアドバイスを贈ります。多良木高校だから学べたこと、体験できたことを伝えてください。地域に開かれた学校である多良木高校の生徒として、多くのボランティア活動や地域の方との交流活動を展開してきました。また、少子化が要因で閉校となることを同窓生や地域の方がいかに惜しまれているかを皆さんは知っています。これらのことは他校の生徒では決して話せないことです。

 多良木高校は3年生67人の小さな学校です。しかし、多良木高校生は小さな高校生ではありません。大きな可能性を持っています。その可能性を発揮し、全員、進路希望を実現しましょう。私たち職員全員で支えていきます。


 


槻木地区の高齢者の方との交流活動

槻木地区の高齢者の方との交流活動

~ 槻木「希望いきいき学校」 ~    

 昨年度から児童がいなくなり休校状態にある多良木町立槻木(つきぎ)小学校へ、8月30日(木)、3年生の福祉教養コースの生徒14人を引率して行きました。槻木小は多良木高校から南におよそ20㎞離れたところにあります。槻木は多良木町の南の端に当たり、地図で見るとこの地区だけが宮崎県域にぐいと入り込んでいます。槻木地区は住民が120人ほどで高齢化率は77%に達しています。槻木を訪ねるのは容易ではありません。県道143号を球磨盆地側から上り、曲がりくねった細い道を走行し、標高780mの槻木峠を越えなければなりません。ジャンボタクシー2台を貸切り向かいました。

 今年度、休校中の槻木小学校で毎月1回、地域の高齢者の方が集まって「希望いきいき学校」という社会教育プログラム活動が行われています。多良木町教育委員会からの依頼もあり、福祉教養コースの生徒たちはこの活動に参加するため赴きました。会場にはおよそ20人の方が私たちを待っておられ、歓迎してくださいました。

 午前10時にプログラム開始。最初に生徒たちがダンスを披露。次に介護予防体操を行いました。そして、身体を動かしながらのゲームに興じました。生徒も交じって二班に分かれ、初めに大きなバレーボール、次に小さい卓球のボールを後ろの人に振り向かずに頭の上で手渡ししてリレーするもので、笑い声が絶えませんでした。休憩をはさんで、後半は福祉教養コースでどんなことを学習してきたかを生徒が発表し、最後は生徒と高齢者の方で協力しながら小物づくり(ピンクッション)に取り組みました。針穴にさっと糸を通される高齢者の方の慣れた手つきに感嘆の声を上げる生徒もいました。

 午前11時15分にプログラム終了。皆さんと別れを惜しんだ後、小学校の傍らを流れる槻木川の中にある天然の河川プール(コンクリートで簡単な囲いのみ)に生徒たちは素足で入り、冷たい清流の感触に喜んでいました。日頃は静かな別天地の山里に、高校生の明るく元気な声が響き渡りました。多良木高校所在地より気温が3~4度は低く、秋の気配を感じました。

 閉校まで残り半年余りですが、最後まで地域と共に歩みたいと思います。