校長室からの風(メッセージ)

2016年12月の記事一覧

献血ボランティア ~ いのちをつなぐバトン

献血ボランティア活動

~ 命をつなぐバトン ~

 12月13日(火)に熊本赤十字血液センターの献血バスと共にスタッフの方々が来校され、多良木高校で献血ボランティア活動を行いました。1限目の献血セミナー冒頭の校長挨拶を次に掲げます。

  「赤い十字の赤十字マークは皆さんもよく知っていることと思います。この
赤十字マークは、戦争や紛争、災害などで傷ついた人びとと、その人たちを救護する衛生部隊や赤十字の救護員や施設等を保護するためのマークです。たとえ戦場や紛争地域であっても「赤十字マーク」を掲げている病院や救護員などには、絶対に攻撃を加えてはならないと国際法で厳格に定められています。赤十字マークは、いざという時に私たち一人ひとりを守る印なのです。

  スイスのアンリ・デュナンという人が提唱して、国際赤十字の組織は19世紀の半ばにつくられました。日本ではおよそ10年後、1877年(明治10年)に西南戦争が起きます。明治政府を樹立した西郷隆盛が、今度は明治政府打倒のために立ち上がり、故郷の鹿児島から東京に向かって攻め上るという、今から考えると無謀な戦いをはじめ、この熊本で政府軍と衝突します。熊本城をめぐる攻防や熊本の街の北にある田原坂で激戦が繰り広げられます。江戸時代までの日本では、味方の兵士は助けても傷ついた敵の兵士は戦場で放置されるのが戦いの慣例だったようです。しかし、西南戦争の時、佐野常民という人がリーダーとなって博愛社という団体をつくり、政府軍、薩摩軍の関係なく戦場で傷ついている負傷兵の救護に当たりました。この博愛社が後に日本赤十字社になります。従って、日本の赤十字活動は熊本で始まった、熊本は日本赤十字発祥の地と言われます。

  さて、多良木高校は青少年赤十字活動協力校です。特別なことはできていませんが、毎年12月、こうして全校あげての献血ボランティア活動だけは続けています。今日は、熊本市東区長嶺にある熊本赤十字血液センターから献血バスと共に髙村医務課長をはじめ看護師、スタッフの方々が来校されました。せっかくの機会ですから、1限目に献血の重要性や血液に関わる講話をお願いしました。
  講師の髙村政志(せいし)先生をご紹介します。熊本大学大学院医学研究科を修了され、脳神経外科医の道を歩まれ、2000
年から熊本赤十字病院に御勤務、2010年に血液センター医務課長に就任されています。一昨年度、昨年度と来校されており、本校の献血ボランティア活動が無事に行われるように細やかなお気遣いを頂きました。髙村先生がいらっしゃるので、生徒の皆さん、安心して献血をしてください。それでは、髙村先生の御講話を受けたいと思います。宜しくお願いします。」



にこにこふれあい大作戦 ~ 地域の方々との交流会

「にこにこふれあい大作戦」

~ 地域の方々との交流会 ~

  「にこにこふれあい大作戦」と初めて聞いた時には、何をするんだろうといぶかしく思ったものでした。具体的な活動内容は、多良木町の各地区の高齢者の方々との交流会であり、3年生の体育コースの生徒がグラウンド・ゴルフを、同じく3年福祉教養コースの生徒が郷土料理の調理を一緒になって行うというものです。毎年、交流する地区を輪番に変えて行っており、12月の恒例行事となっています。やや大仰なタイトルは、日頃から本校を温かく見守ってくださる地域のお年寄りの方々と笑顔でふれあいたいとの福祉教養コースの職員の願いから付けられたものです。

  12月9日(金)、今年は多良木町6区1~3の地域の方との「にこにこふれあい大作戦」を実施しました。朝霧が残る多良木高校運動場において、午前10時から体育コースの生徒と地区の老人会の方々とのグラウンド・ゴルフが始まりました。同じ時刻に、6区の公民館において、福祉教養コースの生徒が老人会の方々に習いながら郷土料理を作り始めました。グラウンド・ゴルフは1時間半ほどかけて2ラウンド行いましたが、歓声と笑い声が入り混じる和やかな時間でした。グラウンド・ゴルフを終えたお年寄りと生徒は、徒歩で10分ほどの6区公民館へ向かいます。そして、できあがっている郷土料理を全員で会食することになるのです。

  お年寄りと生徒たちが協同で作った献立は、混ぜご飯、つぼん汁、ほうれん草の白和えでした。いつも明るくお元気な区長の長田さんのご挨拶の後、和気あいあいとした雰囲気の中、郷土料理を頂きました。ユーモアのある男子生徒が前に出ての自己紹介は、お年寄りから大きな笑い声と拍手を呼びました。会食の終わりには、出席者の方々から、「楽しかったあ」、「来年もやりましょう」とお声かけをいただきました。

  球磨郡でも核家族化が進み、日頃は高齢者とふれあう機会がない高校生が増えています。人生のベテランであるお年寄りの方から学ぶものは少なくありません。「にこにこふれあい大作戦」は今年も大成功でした。



                     区長さんのご挨拶(会食風景)

新聞を読める社会人になろう

新聞を読める社会人になろう

 「新聞を読むことは社会人にとって必要なマナーではないか」という越地真一郎さん(熊本日日新聞社NIE専門委員)のご提言を受け、12月9日(金)、同氏を招聘して3年生対象のステップアップセミナーを開催しました。高校卒業後は実社会で活躍することになる就職内定者の31人に対し、「新聞を読める社会人になろう」というテーマで90分間、充実したセミナーとなりました。

 職場や地域社会の中で多様な人々と共に仕事をしていくうえで必要な社会人基礎力を養うために、新聞を読む習慣を身に付けてほしいと越地さんは語り始められました。新聞は多くの社会人に読まれているという現状から、先ず社会(世の中)を知ること、相手が知っているのに自分は知らないでは困るということ、そして自分に引き付けて読み、考えることの大切さを生徒に伝えられました。そして、生徒一人ひとりに新聞を手渡され、見出し、リード、本文という記事の構成、大事なこと(結論)を先に言う「先結後各」(先に結論、後で各論)のスタイルなどを説明されました。

 簡潔な講義の次に生徒の主体的な活動です。3~4人のグループごとに、気になる記事を話し合います。また、越地さんからの様々な問い掛けにグループで考え答えます。この問答をとおして、「答えが一つ決まっているもの、いわゆる知識はインターネットで検索すればわかる」が、「仕事上、あるいは世の中の問題は答えがいくつもある、いやひょっとしたら答えはないかもしれない。」と越地さんは生徒の考えを揺さぶられます。後半は、もし自分が多良木町町長になったらどんな大胆な政策を行うかを考えたり、これから出ていく社会(世の中)のイメージを漢字一文字で表現する作業に取り組んだりしました。

 「90分が短く感じました。」、「面白く、ためになりました。」とセミナー後の生徒の感想です。メリハリのある巧みな進行で生徒の柔軟な発想を引き出される越地さんの手腕は名人芸の域にあります。新聞に対する生徒の見方、考え方も大きく変わったことでしょう。生徒に新聞を読む習慣を身に付けさせるために、NIE(Newspaper In Education 新聞を教育に取り入れよう)活動を今後も推進していきます。


 

西米良村を訪ねて

                                        西米良村を訪ねて

 宮崎県児湯郡西米良(にしめら)村は私にとって気になる所であり、休日に時折訪ねます。多良木高校から国道219号を東へ走行し、湯前町から横谷峠を越えるとそこが西米良村で、役場のある村の中心地の村所(むらしょ)まで車で30分の距離です。多良木高校から人吉市役所まではおよそ40分かかりますから、県境の村である西米良の方が近いのです。逆に言うならば、西米良村の人にとっても、同じ宮崎県の西都市よりも熊本県の湯前町、多良木町の方が交通アクセスが便利であり、買い物や病院受診(特に多良木町の球磨郡公立多良木病院)で頻繁に往来されています。そして、かつては西米良村の中学生が毎年のように多良木高校に進学してきていたのです。

 先日の日曜日の午後、久しぶりに西米良村を訪ねました。村の面積の9割以上を山地が占める典型的な山村であり、人口は千二百人と過疎化が進んでいます。しかし、村の人々はとても親切で、いつも温かいおもてなしを受けて気持ちが和らぎます。今回は村の歴史民俗資料館を訪ねましたが、そこで「うちの娘も十数年前に多良木高校を卒業しました」とおっしゃるご婦人と出会い、お茶を出していただきました。多良木高校が閉校することもご存知でした。

 西米良村は山の斜面での焼畑農業が盛んに行われてきた所です。今やこの伝統農耕は姿を消しましたが、焼畑に使われた往時の用具が国重要有形民俗文化財として資料館に一式展示されており、興味深く見学しました。また、この地域を江戸時代に治めた領主の米良氏は、中世(鎌倉・室町時代)の肥後国で威勢をふるった菊池一族の末裔に当たります。西米良村は歴史的にも地理的にも熊本と深い因縁のあるところなのです。

 かつて県境の峠を越えて多良木高校に進学してきた生徒たちのことを思うと、西米良村に対してたまらない懐かしさと愛着を覚えるのです。

 


            西米良村の中心地の村所(手前の川は一ツ瀬川)


 

ハープの音色に耳を傾けて

ハープの音色に耳を傾けて 

~ 池田千鶴子さんの音楽講演会 ~

 「わあ、大きい」というのがグランドハープを目の前にしての第一印象でした。ステージに据え付けられたグランドハープは高さが約180cmで重さは約30㎏あり、堂々たる存在感です。著名なハープ奏者である池田千鶴子さんの奏でる音色は優雅で奥深く、ジブリの映画音楽をはじめバロック音楽の名曲等に会場の生徒、保護者、職員一同、魅了されました。

 池田千鶴子さんの「ハープの音色と語り」の会を11月29日(火)の午後、多良木高校第1体育館にて開催しました。池田さんの永年のファンである本校同窓会副会長の味岡峯子さんのご尽力により、この会は実現に漕ぎ着けることができました。池田千鶴子さんは京都府宇治市を活動の拠点とされ、国の内外で幅広く演奏活動や講演活動を展開されておられます。「多良木高校の閉校までにぜひ生のハープの音色を生徒に聴かせたい」という味岡さんの思いを池田さんが受け入れてくださり、遠路、ご来校頂いたのです。またとない機会と考え、当日は近隣の県立球磨支援学校高等部の生徒さん達にも参加してもらい、一緒になって鑑賞することができました。

 池田千鶴子さんはハープの音色が持つ心を癒す力、ケアする力に着目され、内戦の傷跡が残る発展途上国を訪ねたり、阪神淡路大震災や東日本大震災の被災地への支援活動をなさったりと幅広い社会活動をなさっておられます。その体験を基にした命の大切さに係る池田さんのお話が生徒たちの胸を揺さぶりました。一芸に秀でたプロフェッショナルによる演奏と語りは、まさに迫真のライブで生徒たちを感動体験に誘いました。