校長室からの風(メッセージ)
最後の強歩会に向けて
最後の強歩会に向けて
多良木高校伝統の鍛錬行事である「強歩会」を11月9日(金)に行います。来年3月に閉校する本校にとって最後の強歩会です。三つのコースを3年間かけて歩き、人吉球磨地域の自然や風土を体感する行事です。今年のコースは多良木町黒肥地地区を巡り、あさぎり町の須恵、深田地区を回って、球磨川沿いに帰ってくる行程です。3年前は広域農道(通称フルーティーロード)を歩いたのですが、スピードを出し走行するトラック等の運送車が多く危険を感じたため、県道に変更し距離は大幅に短縮されました。それでも20㎞余り歩くことになります。
過去3年、私も参加しましたが、秋の球磨郡の豊かで穏やかな風景の中、歴史や人情に触れることができ、何と平和で心地よい地域なのだろうとしみじみ感じました。人吉球磨地域をかつて訪問した司馬遼太郎が「日本でもっとも豊かな隠れ里」と形容したことが思い出されます。
今回のコースの見所を紹介します。第一チェックポイントの王宮(おうぐう)神社(多良木町黒肥地)では、室町時代中期(応永23年、1416年)に建立された楼門(県指定文化財)に注目しましょう。そして、あさぎり町に入ると県道33号沿いに観音堂が次々と出迎えてくれます。江戸時代中期から人吉球磨地域で「相良(さがら)三十三観音巡り」の風習が始まり、今に至っています。春と秋の彼岸の時期に観音堂は一斉開帳され、普段は閉まっているお堂が多いのですが、今回は地区の方の御好意で観音様を拝観できる予定です。第2チェックポイントの覚井(かくい)十一面観音堂(二十二番)、永峰(ながみね)如意輪観音堂(二十一番)、第3チェックポイントの植深田(うえふかだ)聖観音堂(二十番)とまさに巡礼の道です。観音様の慈愛の眼差しに見守られながら、歩きます。
あさぎり町深田の「めいはた橋」で球磨川を渡り、帰路は川沿いの土手道を辿ります。鷺が遊ぶ川面を左手に見ながら進み、薄(すすき)の群生や色づいた柿の実に行く秋の風情を感じることでしょう。
多良木高校最後の強歩会。みんなで歩く。ひたすら歩く。ただそれだけのことですが、きっと特別な一日となることでしょう。
王宮神社の楼門
覚井観音堂
登録機関
管理責任者
校長 粟谷 雅之
運用担当者
本田 朋丈
有薗 真澄