校長室からの風(メッセージ)

2017年4月の記事一覧

人吉・球磨地区合同体育大会

 4月28日(金)、人吉・球磨地区合同体育大会を五つの高等学校をはじめ各会場で開催しました。多良木高校では、陸上競技と男女バレーボールが実施されました。多良木高校での開会式の挨拶を掲げます。


 「平成29年度、人吉・球磨地区合同体育大会を、このような絶好のコンディションのもとで開催できることを皆さんと共に喜びたいと思います。

 春の季語に「山笑う」という言葉がありますが、市房山をはじめ周囲の山々が冬の眠りから覚め、まるで笑っているかのような明るい景色の中、五高校の生徒の皆さんが一堂に会しました。

 昨年は、熊本地震の影響でこの大会は中止となりました。今年で第34回となる伝統の行事をあたりまえに実施できる喜びをかみしめたいと思います。

 皆さん、ようこそ多良木高校に来てくれました。本校では、陸上競技とバレーボールの二つの競技が行われます。今、皆さんが立っている300mトラックの陸上グラウンドからは後のオリンピック選手や日本記録保持者が誕生しています。また、皆さんの目の前に広がる野球場からはプロ野球選手も育ちました。皆さん一人一人も豊かな可能性を持っていることと思います。日頃の練習の成果を今日、ここ多良木高校で存分に発揮してください。

 皆さんはアスリートです。ルールを守り、審判に敬意を表し、そして勝っても負けても相手を称えるというアスリート精神をもって競技してください。

 応援の生徒の皆さんは、輝いている選手の姿に惜しみない拍手と声援を送ってほしいと期待します。

 皆さん達は、この人吉・球磨地区の高校生です。今日の大会が、お互いをもっと知り、高め合っていく場となることを念じ、挨拶といたします。」



PTA総会開催(4月22日)

平成29年度熊本県立多良木高校PTA総会での校長挨拶


「本日はPTA総会に御出席いただき、誠に有り難うございます。

 本校は、この春、新入生を迎えることができませんでしたので、在籍が3年生、2年生の2学年となります。3年生67人、2年生69人、全校生徒136人です。学校の使命は明快です。3年生67人全員の進路実現と卒業、そして2年生69人全員の学力向上と進級です。これから多良木高校は前例なき期間に入ります。3学年そろっていた昨年度までとは異なり、すべてが例年通りにはできません。従って、一つ一つの行事について創意工夫に努め、生徒の「出番」の多い、より充実したものになるよう取り組んでいきたいと思います。

 また、在籍生徒数が少ない分、生徒たちの交流人数を増やすように努めます。本校は「地域に根ざし、地域に開かれた学校づくり」を目指しております。これまで以上に、地域社会及び他の学校との交流に力を入れ、出会いと交流を重ねることによって生徒一人一人の社会性やコミュニケーション能力を養っていきたいと思います。 

        ≪ 中略 ≫
 お
子様のことで何か気になることがありましたら、遠慮なく担任や学年主任へ御連絡いただきたいと思います。ご家庭は、やはり生徒諸君にとって寛げる居場所であってほしいと思います。不満や愚痴、弱音をできるだけ、ご家庭で聞いてあげてください。熊本地震でもクローズアップされましたが、悩みやストレスを自分一人で抱え込まずに、友人、家族、専門家に援助を求める力こそ、現代に生きる私たちに重要だと云われています。私たち教職員も、生徒たちの変化を見逃さないよう注意して、「気付き、寄り添い、つなぐ」の姿勢で臨み、ご家庭と密接に連携を取っていきたいと思います。

 保護者の皆様の願いと学校が目指すものは同じだと思っております。「今の多良木高校だからこそできる教育」に取り組みます。学校の教育活動への御理解と御支援を重ねてお願いして、私の挨拶といたします。」



「夢」の実現に向けて ~ 3年生進路ガイダンス

「夢」の実現に向けて

~ 3年生進路ガイダンス ~

 4月19日(水)、1日かけて3年生の「夢実現 進路ガイダンス2017」を開催しました。午前中は全体講話、奨学金の説明、進路別の説明、そしてグループで一般常識テストに取り組む時間と続き、午後は多良木町民体育館に移動し、大学・短大・専門学校の各ブースの相談会に各自で参加しました。それぞれの学校の説明を真剣に聴いている生徒の様子を見ながら、私は青年教師の頃を思い出しました。

 20代から30代にかけて10年連続で担任を持ち、その内、3年生担任を4回経験しました。進路面談では、思いがけない生徒の考え、志望を聞き、虚をつかれた思いになったことが幾度もありました。25年前、トリマー(ペットの美容師)になりたいと言った女子生徒がいましたが、私はその時、トリマーという言葉を初めて聞き、どんな仕事をするのか逆に生徒に尋ねた記憶があります。また、男子生徒が「高校の家庭科の教師になりたい」と語った時も驚きました。そして、驚いた自分の意識の古さを恥ずかしく感じたものです。男女共同参画社会となり、平成6年に高校の家庭科が男女共修となったわけですから、男性が家庭科教師を目指すことは少しもおかしいことではないのです。

 30年間の高校教師生活を顧みると、やはり若者が常に新しい世界を切り開いていくものだと感じます。現代社会の変化は激しく、有名な大企業でさえ数年先の業績の見通しが立ちません。人々のニーズに応じて次々と新しい仕事が出現しています。その一方、ロボットや人工知能(AI)の発展により消えていく仕事もあります。

 自分の進路を考えるということは、どんな仕事に就きたいか、どんな学校へ進学したいかと具体的に問いながらも、最終的には「自分はどう生きたいか」という大きな命題に向かい合うことが大切だと思います。


                             グループで一般常識問題に取り組む


 

あの日から1年 ~ 熊本地震発災1周年

あの日から1年

~ 熊本地震発災1周年 ~

 4月14日です。最大震度7を記録した熊本地震の発生からちょうど1年となります。夜の静寂を破る携帯電話からの緊急警報とほぼ同時に襲った激震の記憶はいまだ生々しいものがあります。熊本地震は未曽有の被害をもたらし、多くのかけがえのない命が失われました。依然、4万7千人余りの人々が県内外の仮設住宅等で仮住まいの不自由な暮らしをされており、道路や鉄道等のインフラ(社会基盤)の修復も道半ばです。熊本地震の前より良い状態をつくる創造的復興(Build  Buck  Better)を熊本県は目指し、国をはじめ多くの支援を受けて復旧、復興に取り組んでいるところです。

 今日、発災から1年という節目に際し、亡くなられた方々のご冥福を祈り、午前10時、県主催追悼式に合わせて生徒及び職員の全員で黙とうを捧げました。顧みると、熊本地震が発生するまで、私たち県民の間では「熊本で大きな地震が起きることはない」という根拠のない楽観があったと思います。従って、「まさか」の災害となってしまったのです。今生きている私たちが大地震を体験していないというだけで、「熊本に震災はない」という思い込みと油断に陥っていたのでしょう。6年前の東日本大震災の教訓も生かすことができなかったことは残念でなりません。

 「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という言葉があります。私たちは歴史に学ぶことができませんでした。1889年(明治22年)には、金峰山地震と呼ばれる熊本市直下型地震が発生して甚大な被害を受けています。また、このたびの熊本地震の発生源は布田川・日奈久断層帯でしたが、この球磨人吉地域にも人吉盆地南縁断層帯があり、湯前町、多良木町、あさぎり町、錦町、人吉市に広がっています。1968年(昭和43年)には宮崎県えびの市が震源の「えびの地震」が発生し、人吉市周辺で大きな被害が出ています。

 豊かな恵みを与えてくれる一方、時に脅威の存在となる自然と私たちは共存するしかありません。歴史から謙虚に学び、知識を持ち、災害を正しく恐れる態度が求められています。


               弔意を表す半旗

青春とは叱られる季節

 4月10日(月)の午前、第一体育館にて平成29年度一学期始業式を行いました。校長挨拶の一部分を次に掲げます。

 「年度初めにあたり、「叱る、叱られる」ということを改めて皆さんに考えてほしいと思います。誰もが叱られるのは嫌です。大人になっても叱られるのは嫌なものです。しかし、皆さんは、学校生活で、部活動で、あるいは家庭で、叱られることが多い日々でしょう。なぜ叱られるのか。それは皆さんがまだ成長できるからです。
 永田和宏という方がいます。70歳を超えた科学者(細胞生物学)で京都大学名誉教授であり、歌人としても知られています。この方がこんな短歌を詠んでいます。

「もうわれを叱りてくるる人あらず 学生の目を見据えて叱る」

 名誉も地位もきわめた永田教授を叱る人は大学にはいません。そのことの寂しさ、空しさを実感しているのです。そして、これから成長していく若い学生に期待を込め、その目を見据えて叱っているのです。私たち教職員は、永田教授のように偉くはありませんが、思いは同じです。皆さんにもっと成長してほしい、伸びてほしいという教育的愛情を胸に叱るのです。そのことをわかってほしいと思います。青春とは叱られる季節なのです。

 全校生徒136人の多良木高校は今日から動き出します。お互い一日一日を大切にしていきましょう。これで平成29年度初めの私の話を終わります。」