校長室からの風(メッセージ)

2015年9月の記事一覧

生涯、学び続けたい


 

生涯、学び続けたい

~ 社会人開放講座の活況 ~

 江戸時代の豪商についての本で(出典は忘れましたが)、冨を手にし道楽も尽くしたが、「学問が一番面白い」と最後は学問に熱中する商人が少なくなかったという話を読み、とても印象に残っています。学問とは一生かけて関わる価値がある面白いものだと理解しました。

 今年度も、「地域に開かれた学校」という理念のもと、多良木高校は地域の社会人の方々に二つの学びの場を提供しています。一つは、1学期当初から実施している、科目「情報処理」の社会人聴講生制度です。これは、水曜日の2、3時間目に2年1組の生徒と一緒に「情報処理」の授業を受けるもので、昨年度は6人、今年度は10人の方が希望され、熱心に学ばれています。受講されている方々は、中高年世代であり、コンピュータは初心者です。しかし、教師の説明を一言も聞き漏らすまいと一生懸命に聴講され、コンピュータの操作に没頭される姿は、物心ついた時にはすでに身の回りにコンピュータがあったデジタル世代の高校生にも大きな影響を与えています。一方、社会人聴講生の方々は、「高校生から元気をもらっています。」と笑顔を見せられます。

 そして、この9月から、同窓会と多良木高校との共催事業の「書道開放講座」が始まりました。この書道開放講座は、水曜の夕方6時から2時間、書道室にて本校の書道担当教師が受け持ち、2学期中に10回行います。昭和63年から続く伝統があり、毎年楽しみにされている方が多く、今年度も多良木町はじめ球磨郡から22人の応募があり、9月2日(水)に開講式と第1回講座を実施しました。私も昨年度からこの書道講座の末席を汚しておりますが、墨の匂いに包まれ、静寂の中に緊張感ある書道の雰囲気に魅了されています。社会のデジタル化が進展しているからこそ、アナログとも言うべき書道は益々魅力を発しているように思えます。

 コンピュータと書道という対極にあるような二つの学びの場に地域の方々が集っている学校、多良木高校。このことを誇りに思い、これからも地域と共に歩み続けたいと思います。

                 
                          (書道開放講座) 

インターシップに取り組む君たちへ

インターンシップに取り組む君たちへ

 
 明日から3日間、皆さんは、学校を離れ地域社会の中で実習をします。実習とは実際を学ぶことです。知識ではなく、仕事、職場の実際を学ぶのです。頭だけでなく、身体中の機能をフルに使って修得してきてください。

 皆さんを送り出すことに、不安はあります。学校での指導は十分だっただろうか、各事業所に御迷惑をおかけしないだろうか、と。しかし、昨年度もそうでしたが、地域の方々は、「高校生のためですから」と快く協力してくださいます。次代を担う高校生を地域全体で育てていこうという協力体制が球磨郡はできています。有り難いことです。各事業所の御協力あってこそインターンシップは実施できるのです。「この度は、実習させていただき、有難うございます。」と最初の挨拶では感謝の思いを表明してください。

 そして、自分以外は皆先生という思いで、謙虚に取り組んでください。人と接するときは努めて笑顔をつくってください。楽しいから、幸せだから笑顔になるのではありません。笑顔だから楽しさ、幸せを呼ぶのです。

 失敗することがあるでしょう。真剣に取り組んだ結果の失敗は、必ず認めてくれます。ある製造業の社長さんが言われました。「成功の反対は失敗ではない。何もしないこと。失敗しないと学べないことがある。」と。そういう意味では、皆さんは失敗をするためにインターンシップに行く、と言ってもよいかもしれません。

 皆さん一人一人が多良木高校です。「おっ、多良木高校生か。野球はベスト4まで勝ち上がり、よく頑張ったね」と言われるかもしれません。その時は、「応援してくださってありがとうございます。」と学校の代表のつもりで御礼を言ってください。コミュニケーションとは言葉の往復、往来です。一方通行にならいないことです。こちらから積極的に挨拶する、わからないことは尋ねる、そして指導や助言を受けたら、必ず返事をする、そのような基本的なことができればコミュニケーション能力は上達していきます。

 皆さんが充実した3日間を過ごし、一回り成長して学校に帰ってくることを期待して挨拶とします。

* 多良木高校インターシップ(職場体験)事業は、9月1日~3日にかけて2年生全員63人が多良木町はじめ人吉市、球磨郡の計33事業所の御協力で無事に実施できました。
 御協力いただきました各事業所の皆様方に厚く御礼申し上げます。

                   
                                          (上球磨消防署でのインターンシップ)                  

海のまち山のまち交流会

海のまち山のまち交流会 ~ 鹿児島県立鶴翔高等学校とのスポーツ交流


 多良木町は鹿児島県阿久根市と交流事業を実施されていますが、この事業の一環として、去る8月29日(土)に阿久根市にある鹿児島県立鶴翔高等学校の野球部と女子バレー部が来町され、本校で交流試合を行いました。昨年は、本校から野球部と女子バレー部が阿久根市を訪問し、明るい海の街、阿久根で大歓迎を受けており、今年は多良木高校がおもてなしをする番です。

 当日は朝から無情の雨が断続的に降り、午前の交流試合は、野球は途中で打ち切らざるを得ませんでした。しかし、女子バレーは体育館で予定どおり4セットの試合を実施できました。鶴翔高校の女子バレー部は鹿児島県でも強豪として知られており、一つ一つのプレーに強さとうまさがあり、試合をとおし多良木高校バレー部は多くのことを学んだようです。

 午後1時から多良木町の交流館「石倉」で、阿久根市及び多良木町の議会、行政の関係者の方々、そして両高校の職員、部員との交流会が開かれました。交流館「石倉」は、昭和の初めに米倉庫としてつくられた石造りの倉で、現在は改修されて町の多目的ホールとして利用されています。阿久根市の皆さんは、歴史的建造物が利活用されていることにとても興味を持たれました。また、本校野球部の保護者の方々による心尽くしの手料理に大変喜ばれました。生徒達は、同じスポーツを愛好する者としてすぐに気心が知れ、打ち解けて歓談していました。私もまた、近藤伸子校長先生をはじめ鶴翔高校の職員の方や阿久根市訪問団の方々と懇談でき、和やかで有意義な時間となりました。

 多良木高校は全校生徒198人の高等学校としては小規模校です。在籍生徒数が少ないからこそ、他校や地域社会との交流の機会を増やすように努めています。今回は多良木町の御支援のおかげで、鹿児島県立鶴翔高等学校とのスポーツ交流が実現し、望外の喜びです。
                (交流会で校歌を斉唱する多良木高校生)


市房山登山 ~ 体育コースの生徒と共に

市房山登山 ~ 体育コースの生徒と共に

 「望みは遠し 雲居の峰の    髙き市房 み空に仰ぎ」

 犬童球渓作詞の多良木高校校歌にも登場する市房山は標高1722mの高峰で、熊本県水上村と宮﨑県の境にそびえ、学校の校庭からその山容を眺めることができます。古くから、球磨・人吉地域では霊峰として信仰されてきました。

多良木高校1、2年生の体育コース(計46人)は野外活動として8月26日から28日にかけて水上村の市房山キャンプ場で2泊3日のキャンプを実施しました。その二日目、生徒全員と体育科教師5人そして引率団長の校長の私で、市房山登山に挑みました。

 午前9時にキャンプ場を出発。渓流を渡った所に石鳥居があり登山口です。4合目にある市房山神宮までは険しい参道となります。大杉が並び、中には「平安杉」と呼ばれる樹齢千年の巨木もあり、まことに壮観です。段差の大きい石段が続く八丁坂を登り切ると朱色の社殿の市房神宮です。ここまで所要1時間、皆まだ元気です。

 しかし、ここからが本格的な登山道の始まりで、道は急峻となり、6合目から7合目にかけては岩の間を這い上がったり、丸太の梯子をよじ登ったりと全身を使っての奮闘です。私は最後尾に付いていたのですが、8合目あたりから自然に遅れ始めました。改めて、体育コースの生徒の体力、健脚に脱帽です。最後、頂上の手前50m付近で、生徒数人が迎えに来て、私のリュックを持ち、「校長先生、もう少しです。がんばってください!」と励ましてくれました。生徒たちの応援のお陰で、私も無事に山頂に立つことができました。登り始めて3時間半が経過していました。

 山頂は雲が一部かかっており、気温も低く感じられ、さすがに高山にいることを体感しましたが、達成感に包まれて弁当を開きました。私は、学生時代に2度登ったことがありますが、山頂まで来たのはそれ以来で、実に30年振りの頂上で、感慨深いものがありました。

 下山は滑りやすい所が多く、神経を使いながら一歩一歩降りていきました。生徒同士で、「気をつけろ」、「木の根に注意」など大きな声を掛け合い、頼もしく感じました。全員、大きな事故もなくキャンプ場に帰着したのは午後4時でした。まさに1日がかりのタフな登山でした。天然記念物のゴイシツバメシジミチョウには出会えませんでしたが、鳥のさえずり、枝葉のそよぐ音、柔らかな木漏れ日、樹木の匂い、そして爽快な眺望と五感で楽しむことができ、心地よい疲労が残りました。そして、何より生徒のたくましさと優しさを知ることができ、教師冥利に尽きる登山となりました。

                       (市房山頂にて)