校長室からの風(メッセージ)

市房山登山 ~ 体育コースの生徒と共に

市房山登山 ~ 体育コースの生徒と共に

 「望みは遠し 雲居の峰の    髙き市房 み空に仰ぎ」

 犬童球渓作詞の多良木高校校歌にも登場する市房山は標高1722mの高峰で、熊本県水上村と宮﨑県の境にそびえ、学校の校庭からその山容を眺めることができます。古くから、球磨・人吉地域では霊峰として信仰されてきました。

多良木高校1、2年生の体育コース(計46人)は野外活動として8月26日から28日にかけて水上村の市房山キャンプ場で2泊3日のキャンプを実施しました。その二日目、生徒全員と体育科教師5人そして引率団長の校長の私で、市房山登山に挑みました。

 午前9時にキャンプ場を出発。渓流を渡った所に石鳥居があり登山口です。4合目にある市房山神宮までは険しい参道となります。大杉が並び、中には「平安杉」と呼ばれる樹齢千年の巨木もあり、まことに壮観です。段差の大きい石段が続く八丁坂を登り切ると朱色の社殿の市房神宮です。ここまで所要1時間、皆まだ元気です。

 しかし、ここからが本格的な登山道の始まりで、道は急峻となり、6合目から7合目にかけては岩の間を這い上がったり、丸太の梯子をよじ登ったりと全身を使っての奮闘です。私は最後尾に付いていたのですが、8合目あたりから自然に遅れ始めました。改めて、体育コースの生徒の体力、健脚に脱帽です。最後、頂上の手前50m付近で、生徒数人が迎えに来て、私のリュックを持ち、「校長先生、もう少しです。がんばってください!」と励ましてくれました。生徒たちの応援のお陰で、私も無事に山頂に立つことができました。登り始めて3時間半が経過していました。

 山頂は雲が一部かかっており、気温も低く感じられ、さすがに高山にいることを体感しましたが、達成感に包まれて弁当を開きました。私は、学生時代に2度登ったことがありますが、山頂まで来たのはそれ以来で、実に30年振りの頂上で、感慨深いものがありました。

 下山は滑りやすい所が多く、神経を使いながら一歩一歩降りていきました。生徒同士で、「気をつけろ」、「木の根に注意」など大きな声を掛け合い、頼もしく感じました。全員、大きな事故もなくキャンプ場に帰着したのは午後4時でした。まさに1日がかりのタフな登山でした。天然記念物のゴイシツバメシジミチョウには出会えませんでしたが、鳥のさえずり、枝葉のそよぐ音、柔らかな木漏れ日、樹木の匂い、そして爽快な眺望と五感で楽しむことができ、心地よい疲労が残りました。そして、何より生徒のたくましさと優しさを知ることができ、教師冥利に尽きる登山となりました。

                       (市房山頂にて)