校長室からの風(メッセージ)

校長室からの風(メッセージ)

書道パフォーマンス

書道パフォーマンス

 昭和30年(1955年)4月1日に多良木町と久米村、黒肥地村が合併し、現在の多良木町が成立して60年が経ちました。去る11月21日(土)午前に多良木町の合併60周年の記念式典が町民体育館で挙行され、私もお招きを受けました。姉妹交流の北海道南幌町の町長さんのような遠来のお客様をはじめ総勢400人ほどの出席者で会場は埋まり盛大な会でした。

 多良木町の合併当時の人口は2万人を超えていたそうですが、現在は1万人を辛うじて維持している状況です。町名のとおり「多くの良い木がある町」として檜、杉等の良材を産出し、木材の集散地としてかつて賑わいを見せた多良木町も人口減及び少子高齢化が進んでいます。しかし、60周年ということは人間の年齢でたとえるなら還暦を迎えたことになり、新たな出発を意味します。松本照彦町長も「健康で、明るく、住みよい、誇りの持てるまちづくり」の実現に向けて決意を示されました。合併60周年記念の小、中学生の作文でも、日本遺産に認定された豊富な文化財や清らかな風景、厚い人情などに思いが寄せられ、純粋な郷土愛が綴られていました。

 式典終了後、町総合グラウンドに移動し、合併60周年記念「たらぎ農林商工祭」開会式に出席しました。そして、このオープニングステージに多良木高校書道部が出演し、音楽に合わせて筆を揮うパフォーマンスを披露しました。書道部5人と吹奏楽部1人(トランペット)で、きびきびとした爽やかな演技を見せ、創り上げた作品は次のような言葉が並びました。

 いつも私たちを見守ってくれてありがとう

 多良木高校で日々成長し

 夢に向かって進んで行きます

 多高プライドを胸に


 いつも応援してくださっている地域の皆さん方への感謝の気持ちと未来に向かっての意志が伝わってきます。会場から盛大な拍手が送られる中、壇上に立つ生徒たちの姿がとても頼もしく見えました。


 


 

オープンスクール

オープンスクール

 地域に開かれた学校を多良木高校は目指しています。「情報処理」の授業の社会人聴講制度や「書道」の社会人公開講座などについては以前に御紹介しました。本校は上球磨地域の生涯学習の拠点でもあると自負しています。学校がオープンであることは、とても大切なことだと考えています。多くの方が来校され、生徒の学校生活の様子を御覧いただきたいと願っています。注目されることで人は良い緊張感を持って生活します。授業も密室で行われてはいけません。ガラス張りの中、授業も行われるべきなのです。

 多良木高校オープンスクールを11月17日(火)に実施しました。午前中は多良木町の町議会議員、教育委員会、そして小中学校の校長先生、学校評議員、同窓会の方々に授業を自由に参観いただきました。午後は、生徒の出身中学校の先生方、そして保護者の方々に授業参観をしていただき、その後、中学校の先生方と1年生との中学校別座談会も行いました。

 高校の授業については、昔ながらの一斉講義式も残ってはいますが、アクティブ・ラーニングという言葉に象徴されるように生徒の主体的、協働的な学びを引き出せるようなスタイルに変化してきています。パソコン、プロジェクター、あるいは電子黒板等のICT(Information and Communication Technologyを活用したり、グループ別に話し合わせ発表させたりと多様な授業が展開されます。学習内容も、例えば科目「生活と福祉」では認知症予防の説明があっており、参観者の方の興味を引いていました。このように学校生活の中心である授業を保護者の皆様はじめ地域の方々に参観していただくことで、高校の授業の方法、内容が変わってきていることを知っていただき、まことに有意義でした。

 「生徒の表情が良い」、「一人一人が大切にされていると感じた」、「挨拶がとても気持ち良い」、「落ち着いた雰囲気で楽しく授業を受けている」等、参観者の方からは概ね肯定的なアンケート結果をいただきましたが、まだまだ課題はあると思っています。これからも常にオープンスクールの精神で、開かれた学校づくりを進め、地域の方々から「わたしたちの学校」と愛されるように努めたいと思います。


 

しっかり歩く ~ 強歩会

しっかり歩く ~ 強歩会

 秋の上球磨、中球磨の道を全校生徒で歩き通す「強歩会」を11月6日(金)に実施しました。球磨郡特有の濃い朝霧の中、朝7時40分に学校を出発。6チェックポイントを経て学校へ帰ってくる28㎞の行程に班別(5~7人)で挑みました。私も最後尾で歩きました。

 第1チェックポイントの王宮神社(2.3㎞)では全員まだ余裕がありましたが、第2チェックポイントの栖山観音堂(7.3㎞)では急な石段が待ち構えていて、最初の難関となりました。そして、最大の難所は多良木町からあさぎり町深田に至る通称フルーティーロード(大規模農道)の約8㎞の道のりでした。ここは路肩が狭いうえに、走行する車両の多くはスピードを出しており、神経を遣いながら歩かなければなりません。そのため、心身共に疲れる区間です。途中、諏訪神社(11.5㎞)、勝福寺跡毘沙門天堂(14.3㎞)のチェックポイントで小休止を取りました。フルーティーロードに別れをつげ、深田小学校前を通り、球磨川の左岸に渡って、第5チェックポイントのめいはた橋下にたどり着いた時は安堵感に包まれました。生徒たちに笑顔が戻り、河川敷で昼食。

 復路は球磨川沿いの快適なサイクリングロードをひたすら多良木町に向かって歩きます。空は高く澄み、球磨盆地を囲む山並みはくっきりと稜線まで見えます。球磨川の清流、河岸のすすきの群生、稲刈りが終わった田、時折見かける牧牛とゆっくりと景色が移っていきます。歩きながら、「何と平和で豊かな里だろう」と実感しました。

 後半、1年生女子の生徒が足を痛め、大幅にペースダウンしましたが、3人の友達がその生徒に寄り添うように一緒に歩き、完走を目指しました。私もすぐ後に付いて励まし続けたのですが、多良木の町がなかなか近づいてこない感覚があり、これが歩くということだなあと思いました。最後は幾人もの職員が一緒に歩き始め、午後4時30分に多良木高校正門に到着しました。最も早くゴールした班から2時間遅れましたが、参加者全員が見事に歩き通したことを喜びたいと思います。ゴールは遠くに見えても、一歩一歩、友達と励まし合いながら進むと必ず目的地に着くことができるという体験、これが強歩会です。疲れても、足が痛くても、仲間がいたから歩き通したという自信が生徒たちのこれからの高校生活を支えてくれると信じています。
               (フルーティーロードを歩く)

襷(たすき)をつなぐ ~熊本県高校駅伝大会

襷(たすき)をつなぐ ~ 熊本県高校駅伝大会

 10月31日(土)に、熊本市の「うまかな・よかなスタジアム」(熊本県民総合運動公園陸上競技場)をスタートゴールとして熊本県高等学校駅伝大会が開催されました。多良木高校も男女ともに出場し、私も沿道を移動しながら声援を送りました。

 女子は午前9時30分スタート、5区間で約21㎞走ります。本校は女子の長距離選手は3人しかいませんが、普段は陸上部のマネージャーをしている2人の生徒がこの駅伝大会に向けて練習を重ね、5人そろい出場を果たしました。。また、男子は午前11時20分スタート、7区間でマラソンと同じ42.195㎞走ります。男子の長距離選手は6人で、1人足りませんでしたので、脚力ある野球部の生徒に加勢してもらいました。男女ともに懸命の走りを見せ、結果は女子27位、男子24位でゴールしました。

 駅伝は日本発祥の競技ですが、今や「EKIDEN」という言葉は世界に知られています。正月恒例の大学生の箱根駅伝大会は国民的行事となりました。襷をつないで長い距離を走り継ぐ駅伝は、一人一人に強い責任を求めると共に全体のまとまり、チームワークが必要とされます。苦しくとも襷をゴールまでつなぐための精一杯の走りに多くの人が胸を打たれるのでしょう。

 今回、沿道や中継地点で応援してみて、駅伝の魅力を存分に体感しました。駆け抜けるランナーの躍動感に目を見張り、中継地点での迫力ある襷リレーに思わず大きな声で声援している自分に気づきます。大勢の観衆の方がつめかけておられましたが、多良木高校の幟や生徒のゼッケンを見て、「たらぎ、がんばれ」と熱い応援をいただきました。女子選手の一人は、「たらぎ、たらぎ」の声援があまりにも多く、走りながら涙が出そうになったとレース後に語っていました。閉校予定の小さな学校が男女ともに出場し、懸命に走っている姿は、県民の方々に対し「多良木高校は元気です」と力強く発信できたのではないでしょうか。「多良木高校」の襷を立派につないだ生徒たちを心から称えたいと思います。


 

多高プライド ~ 誰も見ていなくても

多高プライド ~ 誰も見ていなくても

                            

 10月20日(火)から21日(水)にかけ多良木町の恵比須神社秋季例大祭が開かれ、神社周辺には露天商が並び、多くの人出で賑わいました。二日目の夜9時頃、お祭りも終わって露天商の店仕舞いが始まりました。神社境内や周囲の道にはゴミが散乱していました。その時、多良木高校3年生男子の3人が自発的にゴミを拾い集め始めました。「このままの状態ではいけない、自分たちでやろう」と思ったそうです。その行為を見ておられた方が、翌朝、学校と町役場へ称賛の電話を掛けてこられました。

 また、体育部活動の生徒たちの登下校の挨拶について、よくお褒めの言葉が寄せられます。先日は、あさぎり町上にお住まいの方から、「毎夕、部活動帰りの自転車に乗った多良木高校生が気持ちの良い挨拶をしてくれます。」とお電話がありました。校内や学校周辺ではなく、遠く離れた所でも挨拶ができていることを頼もしく思います。

 多高生の皆さんが思っている以上に、地域の方々は皆さんの元気な挨拶を喜ばれます。多良木町の高齢の女性の方が、「野球場の脇の道を歩いていると、生徒さんが、こんちは!と言ってくれます。こんなばばさんにまで挨拶してくれて、うれしゅうて。」と感激して私におっしゃったことがあります。

 年度当初から、生徒の皆さんに私たち職員は「多高プライド」を呼びかけてきました。自分に恥じない高校生活を送って欲しい、大人が、あるいは他の学校の生徒がみっともない行動をしても、自分だけは流されず善く生きようと思って欲しいのです。くまがわ鉄道やバスを利用する時、「これは公共のもの、皆のものであるから、私のもの以上に大切にしなくてはいけない」と思って欲しいのです。

 あなたの行いを誰かが見ています。いや、たとえ誰も見ていなくても自分自身に誇りを持つと見苦しいことはできないはずです。そんなことをする自分を自分自身が許せない、という気持ちになってくれることを期待します。今年の文化祭のテーマは「一生多高生」でした。卒業しても、閉校となっても、多良木高校生としての誇りを一生持ち続けたいという皆さんの思いを信じています。


強歩会に向けて

強歩会に向けて

 11月6日(金)は、多良木高校の秋の恒例行事である強歩会の日です。今年のコースは、多良木高校を出発し、里の城(さとのじょう)大橋で球磨川の右岸に渡り、通称「フルーティーロード」(大規模農道)をあさぎり町深田まで歩き、明甘橋(めいはたばし)で球磨川の左岸に渡り、川沿いのサイクリングロードを多良木町に帰ってくるもので、28㎞の行程です。人吉・球磨地域は今春、日本遺産の地に認定されました。遠い昔から先人達によって受け継がれてきた貴重な文化財や豊かな風土が息づいており、今回の強歩会の道においても、歴史と信仰の遺産、そして素朴で穏やかな風景と出会うことができます。

 第1チェックポイントとなっている王宮(おうぐう)神社(多良木町)は、茅葺(かやぶき)の屋根を持つ二階建ての楼門(ろうもん)が必見です。室町時代の1416年に領主の相良氏によって建立されており、県内最古の楼門です。

 第2チェックポイントの栖山(すやま)観音堂(多良木町)は、相良三十三観音の一つで、石段を登った森の中にあります。ご本尊の木造千手観音像は高さ2m83㎝と大きなもので、鎌倉時代につくられました。現在、熊本県立美術館で開催中の「ほとけの里と相良の名宝」展に出展中で実物を見ることはできませんが、仏を守る毘沙門天(びしゃもんてん)や持国天(じこくてん)などの3体の像は残されています。

 第4チェックポイントの勝福寺(しょうふくじ)跡の荒茂(あらも)毘沙門堂には、平安時代後期につくられた毘沙門天像が安置されていますが、残念ながらこの像も県立美術館に出展中のため見られません。高さ2m43㎝の迫力ある像で、像内の墨書から、製作された年が久寿三年(西暦1156年)と特定されていますので、およそ千年間、この地を守ってこられたことになります。この他、毘沙門天や仁王像など7体の像は拝観できます。

 復路に当たる球磨川沿いのサイクリングロードは歩くのに快適な道です。清流を左手に眺め、河岸のススキの群生を吹き渡る風を感じるなど、五感全体で秋を受けとめ歩いて欲しいと思います。後半、足に疲労を覚えることでしょう。しかし、強歩会は競走ではありません。友達と共に、助け合い、励まし合いながら、しっかりと球磨の地を踏みしめ、一歩一歩を心掛けてください。私も最後尾から、皆さんの背中を追いながら、歩いて行こうと思います。


                         (王宮神社楼門)

みんな、本を読もう ~ 読書旬間に寄せて

みんな、本を読もう ~ 読書旬間に寄せて

                            

 10月26日(月)から多良木高校は読書旬間です。旬間(じゅんかん)とは10日間です。この10日間、大いに本を読もうということです。その具体的な取り組みとして、8時30分から15分間の朝読書を行います。朝読書のモットーは、「みんなでやる、毎日やる、好きな本でよい、ただ読むだけ」です。読まず嫌いの人は、この機会に読書の喜びを知って欲しいと思います。

 テレビやインターネットの動画など映像が氾濫していますが、文字で構成された本の魅力は不滅です。例えば小説であれば、文字をとおして想像力が活発化し、頭の中で様々なイメージが喚起され、自分独自の物語が創り上げられていきます。本という扉を開くと、実に広く豊かな世界が広がっていることに気づくでしょう。本校図書室には4万3千冊余りの蔵書があり、昨年度の生徒一人当たり年間貸出数は14.1冊です。県内の高等学校の平均が10冊程度だそうですから、本校は平均を上回っていると言えます。多読の生徒もいます。1年生女子ですが、入学して7か月ですでに400冊以上借りている人がいます。驚くべき数字ですね。

 読書は孤独な営みのように思われます。しかし、同じ本をクラスやグループで読み意見、感想を出し合う「読書会」、そして最近注目されているビブリオバトル、すなわち、お薦めの本を紹介し合って聴き手が最も読みたくなった本に投票する「書評合戦」は、読者同士の交流や連帯につながります。また、時空を容易に超越できるのも読書の魅力です。「徒然草」の著者の兼好法師は鎌倉時代末期から南北朝時代にかけて生きた人物ですが、平安時代の古典に親しみ、その古典の筆者達のことを「見ぬ世の友」と呼びました。夏目漱石の小説「こゝろ」は大正3年に発表され、大正時代の学生の気持ちをつかみましたが、それから1世紀たった現代の高校生の皆さんにも読み継がれています。

 日暮れが早くなり、秋の夜長となりました。私が一人で住む職員住宅にはテレビもパソコンも置いていません。けれども退屈だとか寂しいとか思ったことはありません。読みかけの数冊の本と新聞をいつも手元において暮らしています。今夜も本を手に取り、自分一人だけのかけがえのない時間を楽しみます。

「ひと それぞれ書を読んでゐる良夜かな」 山口青邨


                        (多良木高校図書室)


 

地域に高校生の元気を発信 ~ 多良木町恵比須祭

地域に高校生の元気を発信 ~ 多良木町恵比須祭り

 学校の周囲の田ではすっかり稲刈りも終わり、秋祭りの季節を迎えました。多良木町では、毎年恒例の恵比須(えびす)神社秋季大祭が10月20日(火)に行われました。恵比須神社は町の中心にあり、商売繁盛の神様として信仰されていて(地元の方は「えべっさん」と言われます)、地元商工会が中心となった奉賛会によって祭がとりおこなわれています。

 祭の最大の呼び物が午後の御神輿行列です。今年も、こども神輿4基、大人神輿10基が多良木町のメインストリートである国道219号を1㎞ほど練り歩きました。この御神輿担ぎに多良木高校生が参加します。2学期中間考査が午前中に終了した後、2年生男女(計63人)がそれぞれ男神輿、女神輿を、揃いの法被姿で担ぎます。威勢のいい掛け声を発しながら進む高校生神輿に対し、沿道の見物の方々から「多良木高校がんばれ!」と温かい声援が送られました。また、所定の場所で一部の生徒がダンスパフォーマンスを披露し、大きな歓声があがりました。日射しが厳しく、気温も25度をこえ、玉の汗をかきながら生徒たちはおよそ2時間の神輿行列を果たしました。

 また、1年生の女子は町の社会福祉協議会の皆さんと募金活動を行い、男子は防犯協会のパレードに制服で参加しました。「やっぱり高校生が祭に参加すると活気が出る」と奉賛会の方がおっしゃいます。有り難い言葉です。学校としては、地域の行事に参加することで、生徒たちが異年齢の方々と交流を深め、郷土愛を養うことにつながると考えています。神輿を担ぐ生徒たちは生き生きとして表情豊かで、きっと「感動体験」を得たものと思います。

 夕方、露天商で賑わう恵比須神社境内を訪ねました。人混みの中、すらっとして清々しい感じの巫女さん2人と出会い、はっとしました。進路が決まった本校3年生女子がボランティアで巫女を務めていたのですが、普段の学校での様子とは見違えるほどの雰囲気でした。お祭りをとおし、地域において高校生が果たすことができる役割の大きさ、多様さを改めて思い知らされました。



江戸時代の民家での書道体験 ~ 国重要文化財「太田家住宅」

 江戸時代の民家での書道体験 ~ 国重要文化財「太田家住宅」

 9月に本校で始まった社会人対象の書道開放講座の第5回は、いつもの学校の書道室ではなく、多良木町にある国重要文化財「太田家住宅」にて実施しました。太田家住宅は多良木高校から自動車で10分ほどの所にあり、午後6時に学校で車に分乗し受講者の方々と一緒に私も移動しました。

 太田家は、江戸時代、農業と酒造業を営んでいたと伝えられ、江戸時代末期(19世紀中期)に建造された住宅がそのまま残されています。建物は寄棟造(よせむねづくり)で、茅葺(かやぶき)の屋根を二カ所折り曲げており、人吉球磨地方の鈎屋(かぎや)型の古民家を代表するものです。現在の管理者である多良木町教育委員会の御厚意と御協力によって、同家の畳座敷にて書道講座を行うことができました。

 夕闇迫る中、囲炉裏で桜の木材を燃やして暖をとり、二十人の参加者で古典の臨書に取り組みました。太田家の周囲は、昔ながらの細い道がめぐる農村地区で、静寂な秋の夕暮れの景色が広がっています。およそ百五十年前に建てられた古民家において、心静かに書の世界に没頭できました。当日、近隣の高校から書道の先生方が視察にみえましたが、その中のお一人が「何と豊かな時間でしょうか」と嘆声をあげられました。

 デジタル全盛の今日にあっても、書道の価値はいささかも揺らいでいないと思います。墨の濃淡、そして自在な運筆で創り上げる世界は今なお多くの人を引きつけます。奈良時代の木簡(もっかん:木札に文字を墨書したもの)が平城京跡で大量に発掘されていますが、千三百年前の墨痕の鮮やかさを見て、墨の持続力に驚かされます。

 多良木高校では芸術科の選択科目として書道の授業を実施すると共に、部活動として書道部もあります。先般開かれた本校文化祭のオープニングで書道部の書道パフォーマンスが披露され、観衆を魅了しました。高校生の皆さんにもっと書道に関心を持ってもらい、古から続く書道の果てしない世界の奥深さに触れて欲しいと願います。



 

中学三年生の皆さんへ

中学三年生の皆さんへ

 球磨・人吉の五高校校長会(人吉、球磨工、球磨商、南稜、多良木)は、この地域の中学校二、三年生保護者の方々を対象に、高校合同説明会を10月7日(水)に人吉高校(下球磨地区)、8日に南稜高校(中球磨地区)、そして13日(火)に多良木高校(上球磨地区)で開きました。

 私たちの共通の願いは、この地域の中学生の皆さんに「遠くの私学より、近くの県立」という気持ちを持って欲しいということです。球磨・人吉地域には、普通高校はじめ、工業、商業、農業の専門高校、そして多良木高校の体育コース・福祉教養コースと多様な学科やコースがあります。そして、寮や下宿で単身生活をすることと、高校まで保護者のもと安定した生活を送ることとを比較してみてください。さらに、通学の時間、費用のことも考えてください。今春、日本遺産にも認定された平和で豊かな球磨・人吉地域で高校生活を送り、友情を育て、地域の人々と交流し、故郷を愛する心を培い、大人へと自立していく力を養いましょう。

 現在の中学三年生の皆さんまで多良木高校に入学できます。来年度の入学生が90有余年の歴史を持つ多良木高校の期待と注目のアンカーとなります。多高に入学できる最後のチャンスが皆さんにはある、と思ってください。学習とスポーツの恵まれた環境の中、約200人の生徒たちが地域の方々に愛され、キラリ輝く多高生として誇りを持って生活しています。

 多良木高校は三つの約束をします。

 一 平和の校訓のもと生徒一人ひとりがのびのびと生活できます。

 二 広い敷地と充実の施設の中で自分の可能性を追求できます。

 三 地域に開かれた学校として活発な交流と感動体験ができます。

 
 皆さんの入学を地域の方々と共に待っています。


                                   (多良木高校での保護者説明会)