校長室からの風(メッセージ)

校長室からの風(メッセージ)

閉校式

 

 自動車が次々に正門から入ってきます。保護者と職員が協力して、駐車する車は野球場に、送りの車は乗客を降ろしたあと出口へ誘導します。旧職員、同窓生、そして地元住民の皆さんが続々と会場の第一体育館に集まってこられました。

 平成31年3月2日(土)、多良木高校閉校式の日です。午後2時の開会時点で出席者は九百人を超え、最終的には960人に達し、1階フロアに用意した800の席では足りず、2階にも席をつくり、さらには立ち見状態の人も出ました。97年間の歴史を閉じる学校へ寄せる思いの強さ、深さを感じずにはいられませんでした。

 創立50年に当たる昭和47年度には全校生徒数1150人を数え、最大規模を誇りました。同年、水上分校(水上村)も開校しました。昭和40年代から50年代にかけて、在校生が千人規模でした。その後、人吉球磨地域の急速な少子化に伴い、生徒数が減少し、平成2年には水上分校も閉校、ついには本校まで閉校するに至ったのです。久しぶりに全盛期に匹敵する人数が集い、体育館をはじめ校舎、グラウンドなど学校全体が喜んでいるようにも見えました。本来、学校は人が集い、活気あふれる場所なのです。

 閉校式は、多良木高校の伝統と精神を十分に発揮した内容であったと思います。女学校時代の卒業生の東キヨ子さん(90歳)は、戦争中の学徒勤労動員の思い出を張りのある声で朗々と語られ、聴衆を引き付けられました。近年の卒業生で地元の郵便局で働く椎葉響弥君(22歳)の簡潔で力強い言葉は、次代の球磨郡を担う頼もしさが感じられました。また、在校生代表の古堀廉大君は、最後の多良木高校生として全力を尽くしたと述べ、会場から惜しみない拍手を受けました。そして、最終学年の67人の生徒全員がステージに立ち、生徒合唱曲「いつまでも」を歌い、「一生多高生」と白の晒し布を使ってメッセージをつくって「ありがとうございました!」と挨拶し、多くの人の涙を誘いました。クライマックスは、会場全員での校歌斉唱でした。

 多良木高校の集大成の場となった閉校式は、そこに立ち会った人々の記憶に永く留まることでしょう。その記憶と共に私たちはこれから生きていきます。