校長室からの風(メッセージ)

2018年12月の記事一覧

書の力 ~ 最後の文化祭(その2)

書の力 ~ 最後の文化祭(その2) 

 

 多良木高校の文化祭は、書道選択者による書のパフォーマンスから始まることになっています。少なくとも私が校長就任以来4年間はこのオープニングを続けています。デジタル全盛の時代、書道はその対極のアナログな存在でしょう。しかし、だからこそ価値があるのです。コンピュータで均一な文字を早く作成しても、それは味わいも情緒もなく、個性もありません。一方、自ら筆で墨書した文字は、その人自身を雄弁に物語ります。書は人なり、です。

 最後の多良木高校文化祭「木綿葉フェスタ」においても、3年生書道選択者の書道パフォーマンスが幕開けとなりました。本校では芸術教科として書道と音楽があり選択科目ですが、1組は38人中11人、2組は29人中4人と書道選択者は少数派です。彼らが自分たちで言葉も考え、練習し、本番を迎えました。美しい文字ではありません。整ってもいません。しかし、彼らの思いが骨太に熱く表されているようで、観る者に生き物のように迫ってきます。

 1組の生徒の作品は、第1体育館のステージ中央正面に吊り下げられました。そして、相対する観客席に生徒のメッセージとして力強く届きます。2組の生徒の作品は立て板に張られた紙に墨書され、同じく第1体育館の入り口付近に観客席を背後から見守るかの如く立てられました。ステージ上の書と呼応するような立ち姿です。文化祭が終了し、会場の撤収作業が行われましたが、この二つの書の作品はそのまま残しました。本日、第1体育館で集会を開きましたが、生徒達の力作は強い気を発したままです。

 パソコンで作成された文字は何年持つのでしょうか。心細くなります。一方、墨の力が千年以上も永く持続されることを私たちは知っています。8世紀の奈良時代、いや7世紀後半の藤原時代の木簡(木札に墨で書かれた記録史料)が今に伝わり、墨痕が鮮やかに残っていることが何よりの証明です。舞台芸術に比べると地味ではありますが、書道作品は多良木高校文化祭の誇るべき成果と言えます。



多良木高校に「マルシェ」出現

多良木高校に「マルシェ」出現 ~ 最後の文化祭(その1) 

 

 「マルシェ」という言葉はもともとフランス語で「市場」という意味ですが、最近日本でも馴染みのものとなりました。屋外の広場や公園に小規模の店舗が集まり、観光客や地域の人がコミュニケーションを楽しむ場として、各種イベントで開かれるようになりました。

 12月8日(土)に開催した多良木高校最後の文化祭「木綿葉(ゆうば)フェスタ」において、初めての企画「多良木高校スペシャルマルシェ」が実現しました。昨年まではクラス(学級)やPTAのバザー(模擬店)が行われていたのですが、3年生のみの文化祭では生徒や保護者のバザー実施までは困難ということから、地域のご協力をお願いしました。くま川鉄道フェスタをはじめ各種イベントでマルシェの企画運営をされている西希さん(多良木町)にコーディネートを依頼したところ、「最後の文化祭を一緒に盛り上げましょう」と快諾されました。そして、持ち前の行動力で、店舗や諸団体に声を掛けまとめられ、最終的に11のお店で成るマルシェが本校中庭に出現しました。これに、県立南稜高校による「シクラメン」の友情販売も加わり、これまでの文化祭にない賑わいとなりました。

 ハンドメイド雑貨やアクセサリーのお店もありますが、ほとんどは飲食店舗で、メニューも多彩です。多良木町で「こども食堂」(地域の子どもに無料もしくは低額で食事を提供する場)を開設されている方たちは自慢のカレーライス。地域のグリーンツーリズム団体による地産のもち麦ご飯、豚汁。地域の婦人会の手作りお菓子。中華料理店による餃子、小龍包。そして、かつての多良木高校生が愛した懐かしのハム入りパンを復活販売したパン屋さん等いずれも個性が光りました。

 たった一日、それも2時間余りの短いスペシャルマルシェでしたが、多くの同窓生や地域の方々が買い物と飲食、そして交流を楽しまれました。日中の最高気温が10度に届かない冷え込んだ天候でしたが、マルシェは温かな特別な空間を創り上げたのです


「あの日に帰ろう、歌と共に!」

「あの日に帰ろう、歌と共に!」

~歌で振り返る多良木高校96年の青春~  

 

 今年度で閉校する多良木高校の最後の文化祭「木綿葉(ゆうば)フェスタ」を明日12月8日(土)に開催します。3年生しか在籍していないため、昨年までのような文化祭はできません。また、9月から11月にかけ就職や推薦進学の試験が続き、例年より実施時期が遅くなりました。
 異例の文化祭ですが、大きな特色が二つあります。一つは、地域の店舗のご協力で、マルシェ(青空市場)が実現することです。十の店舗の皆さんが出店予定で、食事、お菓子、アクセサリー小物類等の販売が中庭で予定されています。最後の文化祭を一緒に盛り上げようとの業者の方々の御好意に厚く感謝申し上げます。

 もう一つは、フィナーレ歌謡祭です。午後の2時間半、生徒を中心に職員有志、保護者、同窓生、地域の合唱グループの方たちが歌いまくります。テーマは「あの日に帰ろう、歌と共に!」~歌で振り返る多良木高校96年の青春~です。本校創立の大正11年に生まれた曲「シャボン玉」からスタートし、戦前、戦後の懐メロ歌謡曲から昭和後期、そして平成のヒットソングと30曲が歌い継がれます。その時代の多良木女学校生、多良木高校生が口ずさんだであろう青春ソングを歌うことで、96年を振り返ろうという試みです。
 2学期の音楽の授業はこの歌の練習に充てられてきました。生徒たちにとっては生まれる遥か前の歌を担当することもあります。「リンゴの唄」、「憧れのハワイ航路」、「青い山脈」、「高校三年生」などなど。しかし、生徒たちにとってはこれも新しい出会いです。なかには衣装も往時のものに着替えて登場する生徒もいます。高校生の豊かな表現力を期待してください。

 そして、この歌謡祭の最後、職員と生徒全員で熊本地震復興支援ソング「いつまでも」(作詞作曲:タイチジャングル)を合唱します。離れていても変わらない故郷を思う歌詞が、閉校する多良木高校に寄せる思いと重なり、練習していて胸が熱くなります。

 明日は、多良木高校最後の学年67人の歌声が体育館に響きわたり、きっと同窓生の方たちの胸を揺さぶることでしょう。

               前日のリハーサル風景