校長室からの風

先進校を訪ねて ~ 育友会の視察研修

 御船高校では、毎年育友会の視察研修を実施しており、県外の高校や企業を訪問しています。保護者会と教職員にとって貴重な研修の機会です。今年度は、福岡県の二つの高校を1月24日(金)に訪ねました。参加者は保護者役員さんが9人、学校の教職員が私を含め4人の計13人で、育友会所有のマイクロバスを活用しました。

 今回訪問先として選んだ学校は、福岡県立八女工業高校(筑後市羽犬塚)と同県立八幡中央高校(北九州市八幡西区)です。御船高校が2年後に創立百周年を迎えることから、創立百周年事業の準備やその成果を知りたいということと、本校がより魅力ある学び舎に発展するために同じ工業系、そして芸術コースの先進校から学びたいという大きく二つの理由から選びました。

 福岡県立八女工業高校は、電子機械科・自動車科・電気科・情報技術科・土木科・工業化学科の6学科を有し、各種の資格取得も良好で就職状況も好調、同県で最も勢いのある工業高校と聞いています。そして、何といっても、今年度、全国高等学校ロボット競技大会で優勝を飾っている学校なのです。決勝トーナメント1回戦で敗退した本校にとっては仰ぎ見る存在です。2020年度に創立100周年を迎える同校は、同窓会と学校が連帯し正門の改築、教育機器の充実等に取り組まれており、本校の計画、準備が遅れていることを痛感しました。工業高校ですが女子生徒が増加傾向にあり、在籍数が百人を超え、女子支援課という部門を設け組織的に女子生徒をサポートされています。また、今年度から女子生徒は制服のスラックス着用が可能になり、防寒性と活動性に優れたスラックスを選ぶ女子が増えているとのことでした。

 福岡県立八幡中央高校は、普通科4クラスに芸術コース1クラスを有し、今年度で創立103年を数える伝統があります。遠く洞海湾を眺望できる高台に建つ学校です。平成28年に創立百周年を迎えられ、その時の数多くの資料(計画書、要項等)や「記念誌」、記念品等を今回頂くことができました。玄関を入ると2階吹き抜けのギャラリースペースがあり、同校が誇る芸術コースの美術・書道の作品群が出迎えてくれました。同校の書道部はこれまで全国高校書道パフォーマンス大会で2度の優勝を飾っており、御船高校書道部にとって目標の学校です。芸術コースが牽引役となり文化的な行事が盛んで、学校の活性化につながっているようです。また、同校でも女子生徒の制服はスラックス着用が可能でした。

 両校とも生徒たちが生き生きと学校生活を送っており、活気が校内に満ちていました。丁寧にご対応頂いた両校の先生方に深く感謝申し上げます。

 本校より一歩先を進んでいる学校でした。両校を目標に、御船高校の一層の魅力化に努めます。

 

  

  八女工業高校           八幡中央高校

 

初任者研修

 県立学校「初任者研修」(第11回)の教科指導等研修が、1月14日(火)に御船高校で開催されました。参加したのは、本校の二人の初任教諭(美術の本田崇教諭、生物の橋本雄司教諭)ほか、各学校から数学2人、理科2人の計6人です。他の教科・科目は他校で行われ、本校には数学・理科・芸術(美術)の初任教諭と指導に当たる県立教育センターの指導主事の先生方(3人)が集まられたことになります。

 会場校校長として最初に挨拶を行ったのですが、初任者の皆さんの積極的に吸収しようという意欲的な姿勢が伝わってきました。初任者を代表し、本校の橋本教諭が生物の研究授業(2年1組)を2時間目に行いました。自律神経系と内分泌系の共同作業によって体温が調節されることを理解する授業でした。橋本教諭は情報機器を活用して説明のわかりやすさを心がけ、生徒たちに話し合わせたり、協働でワークシート作成に取り組ませたりと生徒の主体的な学習活動を意識した授業となっていました。

 授業参観していて、「授業はコミュニケーションの場」であることを改めて実感しました。教師からの一方通行ではだめで、教師と生徒、そして生徒同士の「対話」があってこそ発展するものなのです。この「校長室からの風」で以前にも触れましたが、今、高等学校の普通教科の授業は大きく変わりつつあります。社会の急速な変化に伴い、生徒が必要とする学力の質も変わってきているのです。従って、「教える」という教師側の視点だけでなく、「わかるようになる」、「できるようになる」という生徒を主体とした視点からの授業改革が求められています。

 授業者の橋本教諭以外の初任者五人は、「良かった点」、「改善が必要だった点」、「自分の授業で活用したい点」等をメモし、その後の授業研究会で活発な意見交換を行いました。そして、午後は各学校における自分の業務上の課題についての「課題研究報告会」が行われ、県立教育センターの指導主事からの助言、指導を受けました。

 初任者研修は1年間を通し体系的、計画的に進められます。保護者の皆さん、生徒の皆さん、初任の先生たちは一人前の教師になろうと懸命に努力していることを知ってください。経験は足りません。しかし、初任者は学校に新風を吹き込み、学校を変える可能性を持ち、これからの令和の時代を担う存在なのです。

 初任者をはじめ若手の教師を支援して、バトンを渡していくことが私の最後の務めだと思っています。熊本県の教育の未来は明るいと信じています。

御船高校への期待を感じて ~ 令和2年の始動

 1月8日(水)に始動してまだ二日目の御船高校ですが、幾人ものお客様が校長室を来訪され、新春の賑わいが続いています。

 来る4月から御船高校は総合型コミュニティスクールとなります。これまでの「地域に開かれた学校」から一歩踏み出し、「地域と共にある学校」として地域住民の方、保護者、学校が協働で学校運営に取り組んでいくことを目指します。その重要なパートナーが町役場の皆さんです。昨年も、1学年の「総合的な探究の時間」や芸術コースの学習活動に対して、積極的なご支援とご協力をいただきました。その中核的存在である商工観光課の作田課長(御船高校同窓生)が来校され、「今年はもっと一緒にやっていきましょう」と力強いお言葉をいただきました。

 また、同窓会の徳永明彦会長が北九州市からお見えになりました。ご多用な公務(企業の代表取締役)の合間を縫って、昨年も何度ご来校くださったことでしょう。11月の「ようこそ先輩、教えて未来」行事ではご講演もしていただきました。2年後に迫る創立100周年行事に向け、今年はより一層、同窓会との連帯が求められますが、徳永会長の存在は誠に心強いものがあります。

 そして、地元の池田活版印刷所さん(御船町)から、芸術コースの生徒達(3学年計66人)に素敵な贈り物がありました。鉛活字を使った昔ながらの手法(活版印刷)で創られた今年の暦です。池田活版印刷所についてはこの「校長室からの風」で以前紹介しましたが、創業明治33年(今年で120年)の老舗で、全国的にも珍しい活版印刷をいまだに貫いておられる印刷所です。

 池田活版印刷所の5代目店主吉田典子さんが来校され、芸術コース3年の代表生徒たちに、手のひらサイズの12枚の月暦を贈られました。生徒たちはさっそく手に取り、活版印刷による味わい深い凹凸感を確かめていました。吉田さんは、本校に対する地域の応援団のような方で、昨年秋の文化祭にも来校され、美術・デザイン、書道の作品や音楽の舞台(ステージ)をご覧になりました。そして、芸術コースの生徒たちにアナログの手仕事の良さを知ってほしいと今回の寄贈を思いつかれたそうです。

 新しい年の暦は、生徒たちの未来図のようなものです。これからの1年、様々なことが起こるでしょう。しかし、頑張る高校生を地域の人々は温かく見守り、応援してくださると思います。

 

 「初暦(はつごよみ) 知らぬ月日の 美しく」 (吉屋信子)

 

 

「冬はつとめて」 ~ 3学期始業式校長訓話

 

 新年明けましておめでとうございます。こうして皆さんと一堂に会し、私たちの学校、御船高校の新しい年が始まります。

 今朝、正門から登校してきた生徒の皆さんは、門松に気付いたでしょうか?昨年暮れの12月27日(金)に渡部先生、小牧先生などの職員有志とハンドボール部の生徒たちによって正門前に立てられました。門松は、新しい年の神様が天から降りてこられる目標(「依代(よりしろ)」)となるものです。門松を飾る松、竹、葉牡丹、南天などにはそれぞれおめでたい意味が込められています。正月の伝統的慣習であり、門松が立っていると正月気分が出ますね。その門松も今日で片づけられます。松の内も終わりです。

 今年は令和2年西暦2020年です。東京2020オリンピック・パラリンピックイアーを迎えました。年の瀬にサプライズニュースが学校に届きました。車いすマラソンに取り組み活躍している2年3組の見﨑真未さんが、東京2020オリンピックの熊本県聖火ランナーに選ばれたのです。今年の5月6日に県内を走る聖火ランナーの一人となります。見﨑さんを通して、東京オリンピックと御船高校はつながりました。学校を挙げて応援したいと思います。

 さて、平安時代に書かれた随筆「枕草子」の冒頭、作者の清少納言はそれぞれの季節で最も趣のある時間帯について述べています。「春はあけぼの」、すなわち夜明けごろが良い、「夏は夜」、「秋は夕暮れ」と言っています。それでは、冬はいつ頃が良いと言っていますか?「冬はつとめて」、すなわち冬は早朝、朝早くが良いものだと述べています。雪が降っていたり、霜が降りていたりと寒い朝ほど良いと清少納言は言っています。清少納言が暮らした都、今の京都は山々に囲まれた盆地で、冬の寒さの厳しい所で知られます。熊本もこれから2ヶ月は寒さが続くことでしょう。しかし、千年前の都人も愛した冬の朝の寒くとも清々しい情景を感じる心の余裕を持ちたいと思います。今日から始まる3学期、「冬はつとめて」と口にして自分を励まし、登校してきてください。

 結びに、残り50日ほどで卒業していく3年生に伝えます。まだこれから進路実現に向けて試験に臨む人がいます。全国でおよそ56万人が受験する大学入試センター試験にも本校から12人が挑みます。3年生全員の進路が決まるまで私達も全力で支援します。そして、既に進路が決まっている皆さん、残された高校生活一日一日を惜しみながら、最後まで勉強してください。しっかりと助走をして、勢いをつけ、新しい世界に飛躍して欲しいと願い、3学期始業式の挨拶とします。

 

門松が立ちました

 

 今年は今日12月27日(金)が学校の仕事納めとなります。学校では、進学課外授業を受ける生徒たちや部活動に励む生徒たちの姿が見られます。朝から、有志職員とハンドボール部の男子生徒4人で、門松づくりが行われました。例年関わってこられた渡部先生(数学)の段取りがよく、およそ1時間でできあがり、正門前に立ちました。門松は、新しい年の神様が天から降りてこられる目標(「依代(よりしろ)」と言います)となるものです。これで、私達の学校も新年を迎える準備が整ったわけです。

 門松を飾る松、竹、葉牡丹、南天などそれぞれ意味があるのです。正月の伝統的慣習であり、門松が立つと気持ちが落ち着きます。ALTのマシュー先生(アメリカ合衆国)も興味深く作業を見守り、質問をしていました。午後、課外授業や部活動が終わり帰る生徒たちを門松が見送ることになります。

 さて、年の瀬になって、学校に大きなサプライズニュースが届きました。車いすマラソンに取り組み、今年一年、各大会に出場してきた2年の見﨑さんが、「東京2020オリンピック聖火ランナー」(熊本県)に選ばれたのです。2020年(令和2年)の5月6日に県内を走行する聖火ランナーの一人となる予定です。走行する具体的な場所や時間は未定ですが、学校挙げて応援したいと思います。来年の東京パラリンピックには間に合いませんでしたが、見﨑さんはその次のパリパラリンピック大会出場を視野に入れ、挑戦することを決めています。見﨑さんの活躍は他の生徒たちに大きな励ましを与えることでしょう。

 見﨑さんをはじめ御船高校生一人ひとりは限りない豊かな可能性を持っています。その可能性をもっともっと引き出していきたいと思います。来る新年、御船高校の更なる飛躍の年となることを願わずにはいられません。

 今回をもって今年の「校長室からの風」を納めたいと思います。

   皆さん、良いお年をお迎えください。

 

「 一年の 心の煤(すす)を 払はばや 」(正岡子規)

 

 

 

2学期の終業式を迎えて

 2学期の終業式を迎えるにあたり、振り返ってみるとこの9月から10月にかけてラグビーワールドカップがわが国で開催され、ラグビーブームが巻き起こったことが思い出されます。にわかラグビーファンとなり、テレビ中継放送に見入った人も多かったのではないでしょうか?私は試合の面白さはもちろんですが、日本代表チーム構成メンバーに興味を惹かれました。日本代表チーム31人のメンバーには外国出身選手が15人。およそ半数です。ニュージーランド、南アフリカ、トンガ、韓国、オーストラリア、サモアなどの出身です。

 ニュージーランド出身で日本国籍を取得した主将、リーチ・マイケル選手は「このチームの良さは多様性だ」と表現しました。様々な言語と文化を背景に持つメンバーは、チーム内でお互いを理解し合い、結束力を高めていきます。生まれや育ち、文化的背景の違いを乗り越えて結束力を高めていったところに、ラグビー日本代表チームの強さがあったということでしょう。

 さて、多様性という言葉が出ましたが、私はつねづね御船高校の魅力は「伝統と多様性」だと思っています。伝統は、大正、昭和、平成、令和と変わらずこの地にあって地域の方から親しまれていることです。多様性は、電子機械科、芸術コース(音楽・美術・書道)、そして普通科の特進、総合のクラスがあり、それぞれ特色ある学び合いが行われていることです。皆さんの出身中学校は30校を超えており、この学び舎で多くの出会いがあります。

 「生物多様性」という言葉があるように、森も多くの種類の樹木があるほど健やかで強いそうです。御船高校は、個性豊かな生徒がたくさん集う人材の森のような学校でありたいと思います。

 午前9時から体育館で、表彰式、そして2学期の終業式を執り行いました。寒気の漂う体育館でしたが、節目の行事にふさわしく心身とも引き締まる思いがしました。そして、9時45分から大掃除に全校挙げて取り組みました。校庭で帚を持つ生徒たちの表情もどことなく解放感があるようで、晴れやかです。冬休みの楽しみを尋ねると、異口同音に「お年玉」と返ってきました。御船町在住の女子生徒は、地元の若宮神社(御船川沿い)に家族で初詣に行くのが慣習と答えてくれました。

 明日から冬休みです。生徒の皆さん、新年1月8日の始業式でまた会いましょう。令和元年も残り一週間。よいお年を。

 

 

 

提言する力を養う ~ 1学年「総合的な探求の時間」学習発表

   体育館で一斉に各グループのポスターセッションが始まると、活気が会場に溢れました。12月20日(金)の午後、1学年「総合的な探究の時間」(以下、略して「総探の時間」と云う)の学習発表会を開催しました。各クラスから2グループを生徒たちの相互評価で選出し、学年代表の12グループが体育館の各所に分かれ、「自分たちが住んでみたい町」のテーマで発表したのです。

 今年度の1学年の「総探の時間」は、1学期に上益城郡の産業や伝統文化を知る活動を行いました。それを踏まえ、2学期は自らが住む地域について知り、住みやすい、あるいは住んでみたい「まち」を考える学習に取り組みました。9月下旬には、実際に御船町でまちづくりに取り組んでおられる役場、観光協会、商工会の方をゲストティーチャーとして迎え、クラスごとにお話を聴きました。そして、御船町の課題に気づき、高校生なりの課題解決に向けた提言づくりを始めたのです。

 「総探の時間」は週に1時間しかありません。しかも、2学期は学校行事が多く、各グループで十分に調べ、課題解決に向けた学習の余裕はありませんでした。しかし、それでも高校1年生なりに提言することが大切だと考え、敢えて2学期の最後に発表会を設けたのです。9月のゲストティーチャーの方達をはじめ御船町議員さんや町おこしの団体の方など十五人ほどお見えになり、関心の高さがうかがえました。

 生徒たちの提言内容は、次のようなものでした。

・ 安全なまちづくりの観点から町中にグラデーションの街灯設置
・ 御船町キャラクターマスコットの「ふねまる」型のロボットをつくり、清掃及び防犯監視の機能を    持たせる

・  高校生が小グループをつくり一人暮らしのお年寄りを訪問し交流する
・ 町に小児科がないので小児科を誘致
・ 町を舞台とした映画製作 など 

 提言を聴かれた町の関係者からはやはり大人のご指摘、ご意見がありました。「費用対効果を考えていない」、「実際に町を歩いておらず、机上のプラン」、「自信がないのか、発表の声が全体的に小さい」などです。一方、「これらの提言の中から一つでも学校と町が協力して実現させよう」という声もありました。そして、全員の方から「このような取り組みを御船高校が始めてくれることを待っていた。」との歓迎の言葉を頂きました。

 県立高校とは言え御船町にある学校です。次代の地域社会を担う人材を養う使命が学校にはあります。コミュニティスクールとしての御船高校にご期待ください。 

 

「水」は先人からの贈り物

 先日、図書室を訪ねたところ、「冬休みに生徒たちに読書に親しんでほしい」という司書の先生の思いで、ライトノベルだけでなく、様々なジャンルの書籍がお勧め本コーナーに並べられていました。その中に、徳仁(なるひと)親王の著作『水運史から世界の水へ』がありました。平成31年4月にこの本が刊行され、翌月、徳仁親王は令和の新天皇として即位されました。学生時代から水運史を研究されてきた天皇陛下は、21世紀の世界の平和と繁栄は水問題の解決にかかっていると述べられ、水問題に強い関心を持たれています。そして、限りある水を「分かち合う」知恵の実践事例として江戸時代の明治(めいじ)用水(愛知県)や三分一湧水(さんぶいちゆうすい)と呼ばれる分水施設(山梨県)を紹介されています。

 『水運史から世界の水へ』を読みながら、12月4日にアフガニスタンで銃撃され非業の死を遂げた中村哲医師(享年73)のことを考えました。長年、パキスタンそしてアフガニスタンで人道支援に尽力されてきたペシャワール会代表の中村哲医師は福岡県出身ということもあり、熊本県でも講演を幾度もされています。20年ほど前、当時勤務していた高校の生徒達と共に熊本市でご講演を聴く機会に恵まれ、過酷な環境のもと信念を貫く姿勢に感銘を受けました。

 中村哲医師は、清潔な水がない悪質な衛生状態での医療活動に限界を感じます。また貧困問題の原点は水不足であることに気づきます。そして「100人の医師を連れてくるより、一本の用水路を作る方が多くの人を助けることができる」と考え、アフガニスタンの荒涼とした砂漠地帯での用水路建設事業に着手したのです。この用水路工事に当たって参考にしたのが、福岡県朝倉市の山田堰(やまだぜき)でした。江戸時代後期、大小の石を水流に対して斜めに敷き詰めることで筑後川から水田に水を引くことに成功した山田堰の手法を見習い、取水口の難工事を克服しました。そうして20㎞を超す長大な用水路を完成させ、周辺の砂漠を緑の農地に一変させました。

 ここ御船町にも江戸時代の用水路の遺産が継承されています。この「校長室からの風」で以前紹介しましたが、吉無田水源から水を引いた嘉永(かえい)井手です。幕末の木倉手永の惣庄屋の光永平蔵(みつながへいぞう)は、総延長28㎞に及ぶ大水路(用水路)の難工事を指揮しました。6年を要し竣工したこの難事業には地域の村々から農民が動員されました。重機もない当時、人力に頼った水利土木工事がいかに過酷なものであったか想像するしかありません。長い水路の途中、田代台地では873mものトンネルが穿(うが)たれました。「九十九(つづら)のトンネル」として今も顕彰されています。

 わが国の温暖湿潤気候とアフガニスタンのような砂漠地帯では条件は大きく異なりますが、江戸時代の先人の水利事業に対して改めて敬意を表します。

 水道の蛇口をひねればおいしい水が潤沢に出てくる生活に慣れた私たちですが、世界には安全な飲料水に恵まれない人々、干ばつで農業用水が不足し飢饉に苦しむ人々がいます。わが国の「水」は先人からの贈り物であることを忘れてはならないと思います。 

 

舞台で輝く瞬間 ~ 御船高校芸術コース音楽専攻発表会

    プログラムのフィナーレ、3年生の青山さんのピアノ独奏「渚のアデリーヌ」、そして平野さんの独唱「ああ愛する人の」は聴衆の胸を揺さぶるものでした。舞台で演奏する青山さん、歌う平野さんの姿は輝いて見えました。

 12月17日(火)、午後6時半から御船町カルチャーセンターにて「御船高校芸術コース音楽専攻 演奏会」が開かれました。音楽専攻は、3年が2人、2年が4人、1年が5人の計11人在籍しており、前半は11人全員がそれぞれ独奏、独唱を披露しました。そして、後半は卒業学年の3年生の二人の演奏、独唱が中心の構成で、途中、1・2年生の9人でアンサンブル演奏「美女と野獣」で会場の雰囲気を盛り上げました。

 3年生の青山さんはピアノ、平野さんはソプラノ独唱が専門ですが、プログラムの中では二人でピアノ連弾に挑戦し、息の合ったところを見せました。そして、プログラム終了後に二人で舞台に立ち、3年間の高校生活を振り返っての感謝の言葉を述べました。「音楽は時間の芸術」と言われます。他の美術・デザインや書道のように作品が残りません。その瞬間、瞬間に音や声は生まれては消え、二度と後戻りができません。瞬間の創造に賭ける集中力と日頃のレッスンの繰り返しが求められる芸術です。

 3年生の二人の舞台での輝きは、これまでの長い努力の時間が生み出したものです。そのことが尊いと思い、私自身も熱いものがこみあげてきました。

 卒業演奏会を兼ねた芸術コース音楽専攻発表会は心温まる余韻を残し閉幕しました。本校の芸術コースは平成16年(2004年)に設立され、今年で15年を迎えます。九州唯一の音楽大学である平成音楽大学が同じ御船町にあることが何よりの強みで、大学の先生方からご指導を受けたり、同大オーケストラの定期演奏会に出演させていただいたりと特別な学びができます。御船町は、恐竜の化石発掘で有名ですが、美術の町であり、音楽の町でもあるのです。現在の音楽専攻1年生の5人は自分たちで御船町の応援ソングを作詞、作曲したところ、町役場の商工観光課から応援していただき、ミュージックビデオ作製にまで至りました。

 本校の音楽科の岡田教諭は「芸術(音楽)は心の栄養」と語ります。また、前村講師は「音楽は最高のコミュニケーションツール」だと言います。芸術コース音楽専攻発表会では中学生の姿が観客席で目立ちました。御船高校芸術コースで好きな音楽を存分に学びませんか?皆さんの入学を待っています。

 

世界大会の臨場感 ~ 女子ハンドボール世界大会の学校観戦

  「2019女子ハンドボール世界選手権大会」が大詰めを迎えています。この週末に決勝が行われ、世界女王が決まります。半月前にこの「校長室からの風」で触れましたが、1997年(平成9年)に熊本県で「男子世界ハンドボール世界選手権大会」が開催されており、22年ぶりにハンドボール世界大会と私たちは再会できたことになります。御船高校は、生徒たちにスポーツの世界大会を体験させるべく、2回に分け学校観戦を実施しました。

 12月9日(月)、1年生を引率してパークドーム熊本(熊本市)に赴きました。12時30分からオーストラリア対中国の試合観戦です。当日は、小中学校、高校、特別支援学校等、四十数校の学校が来場しており、その中で御船高校はオーストラリアを応援しました。そして、二日後の11日(水)、2、3年生による学校観戦は、ロシア対スペインの強豪国同士の試合でした。優勝候補のロシアの好守にわたるパワフルなプレーは圧巻でした。本校はロシア応援であり、ロシア国旗の小旗を数多く用意し持参し、得点の度に生徒たちが小旗を振り声援を送りました。

 世界大会レベルのスポーツをライブで観戦できるまたとない機会に生徒たちは恵まれ、幸運だったと思います。インターナショナルな会場の雰囲気、試合前のセレモニー(各国の国歌斉唱、選手紹介等)への敬意など、その場に実際に参加することでしか得られない体験でした。そして、何といっても世界トップレベルのプレーに魅了されたことでしょう。

 ハンドボールは「走る、跳ぶ、投げる」のスポーツの3大要素がすべて含まれ、スピード感あふれる激しい攻防が絶え間なく続きます。球技の格闘技との異名も持ち、「ファウルではないか」と観ていて思うほどの迫力あるぶつかり合いが演じられます。歓声とどよめきが交錯し、観戦していて前後半それぞれ30分間が短く感じられました。多くの生徒がハンドボールのルールもわからないまま観戦したのですが、「面白かった!」とみな笑顔でした。

 22年前の男子大会同様、今回も熊本県単独での世界大会開催でした。会場に足を運んだ生徒の皆さんは、実に多くの人々が大会運営に当たっておられる様子を目の当たりにしたと思います。その中には、御船高校教職員の今田先生、渡部先生もいます。お二人は、大会組織委員会から競技役員として依頼を受け、大会期間中、大会運営に献身的に尽力されています。

   このような縁の下の力持ちのような多くの人の存在が、大会を支えているのです。このことを生徒の皆さんには気付いてほしいと思います。

 

「好き」の力を信じる ~ 御船高校芸術コース発表会

 御船高校には音楽、美術・デザイン、書道の三つの専攻からなる芸術コース(普通科)があります。熊本の県立高校では唯一の音・美・書の三領域そろった芸術コースです。各学年の4組がそれに当たり、66人の生徒が在籍しています。オンリーワンを目指す、きらきらと個性輝く生徒たちが集まっており、それぞれが好きなアート制作に取り組んでいます。現在、この芸術コースの発表会が行われているのです。

 美術・デザイン専攻と書道専攻の作品展を12月10日(火)から15日(日)まで熊本県立美術館分館4階展示室で開いています。昨日12日(木)に私も会場に赴きました。会場には、伸びざかりの表現力の結晶である作品群が並び、壮観で圧倒されます。

 会場の一角では、ホラーの短編映画が上映されています。7分の短い映像作品ですが、学校を舞台とした学園ホラー映画には高校生の感性が色濃く反映されています。出演者は本校生及び教職員です。御船高校の美術・デザイン専攻では、3年生で選択科目「映像表現」(2単位)があり、この科目履修生によって制作された短編映画なのです。このような「映像表現」科目を選択できる高校は県内には他にはありません。

 昨日は、3年生美術・デザイン専攻の3人の女子生徒が会場受付を担当していました。3人とも口数が多い生徒ではなく、どちらかというと内向的な性格かもしれません。しかし、彼女たちの作品は誠に雄弁です。自らの内なる声を表現したいというエネルギーが作品に満ち溢れています。創られた作品は、その人の身体の一部のようなものだと感じます。

 高校進学の時点で、芸術コースを選ぶ生徒は多くはありません。しかし、自らの「好き」という気持ちを拠りどころとして、少数派としての誇りをもって入学してきてほしいと思います。御船高校芸術コースは、自分の「好き」を磨き伸ばす場所です。スポーツであれ、文化活動であれ、自分自身が心から好きなことに熱中することは自己肯定感につながると思います。

  「A I」の時代を迎えた今だからこそ創造力や感性が求められる、と本校の芸術コースの職員たちは述べています。芸術コースの真価が問われる時が来たと言っていいでしょう。

 美術・デザイン専攻と書道専攻の作品展(県立美術館分館)は12月15日(日)までです。また、音楽専攻の発表会は12月17日(火)の午後6時30分から御船町カルチャーセンターで開かれます。どうか足をお運びください。

         

 

 

 

謎の八角形洞門 ~ 廃線遺構を訪ねて

   その絵を見たとき、描かれた場所がどこであるか見当がつきました。久しぶりに訪ねてみたいと思いました。その絵、本校美術・デザイン専攻3年の邑山(むらやま)君の油絵「昼下がりの洞門」を見たのは1学期の6月でした。この絵は第82回銀光展の文林堂賞を受賞した秀作です。山中の八角形コンクリートの遺構に光が当たって浮かび上がっている情景です。「ここはいったいどこなのだろう?」と周囲の職員がいぶかしがる中、私には思い当たる所があったのです。

 11月後半の休日、思い立って出かけました。御船高校から妙見坂トンネルを通り甲佐町に抜け、国道443号を南下し美里町に入り、小筵(こむしろ)の交差点近くの脇道を津留(つる)川沿いに下ると釈迦院(しゃかいん)川との合流地点に出ます。ここには江戸時代末期から大正、昭和初期に至る異なる時代の五つの石橋が架かる「二俣五橋」(ふたまたごきょう)があります。緑川水系には通潤橋(つうじゅんきょう)、霊台橋(れいたいきょう)といった国重要文化財指定の大規模な石橋をはじめ数多くの石橋があることで知られていますが、ここ「二俣五橋」も必見です。しかし、今回はここが目的地ではありません。自動車で行けるのはここまでで、あとは徒歩です。

 「二俣五橋」から津留川の右岸に渡り、山の斜面の細い道を上ります。幸い、フットパス(「歩く小径」という意味)として美里町によって整備されています。細い道を上りきると、車一台が通れるような平らな道が山腹につながっています。もちろん道路ではなく車は通れませんが、フットパスとして草も刈られ、歩きやすいものです。津留川の清流を右手に見下ろし、里山の風景がまことに目に優しく、心地よい道です。山中にどうしてこのような幅広い道があるのでしょうか?ここをかつて鉄道が走っていたと知ると合点がいくと思います。

 かつて大正時代から昭和中期まで、熊本市(南熊本駅)から上益城郡の嘉島、御船、甲佐を通り、下益城郡の砥用(ともち)まで熊延(ゆうえん)鉄道という私鉄が走っていました。九州山脈を越え宮崎県延岡市まで結ぶという雄大な構想は実現せず、モータリゼーションの波で昭和39年(1964年)に廃線になりました。廃線から半世紀を過ぎ、乗車経験のある方も少なくなりました。

 山中の平坦な道を五分も歩くと、邑山君が描いた洞門が見えてきます。八角形のコンクリート遺構が等間隔で7基連なっています。鉄道のトンネルであれば半円筒形でなければならないはずですが、間隔が空いており中途半端な構造となっています。その理由はいまだよくわかっていません。

 廃線となった鉄道遺構は寂しくも映りますが、この地域の近代化を支えた遺産であり、時代の証人とも言えます。邑山君はよく注目したと思います。

 歴史を知ると、見えないものが見えてくると思います。

   二俣五橋の風景      旧熊延鉄道線路跡      旧熊延鉄道トンネル跡

「走る、ひたすら走る、ゴール目指して」 ~ 第87回御船高校長距離走大会

 

    数ある学校行事の中で、生徒たちに最も歓迎されない行事が「長距離走大会」でしょう。長距離を走ることが得意だという人は少ないうえに、「きつく、苦しい」、「ただ走って何になる?」と生徒たちの不満は多いものです。しかし、長距離走大会は、生徒たちの心身に負荷をかける鍛錬行事です。鍛錬行事は近年の学校行事では少なくなり、長距離走大会(持久走大会)や強歩会などが各学校で実施されている状況です。

    御船高校の長距離走大会は、昭和7年(1932年)に始まり、旧制御船中学校以来続く伝統行事です。時代を超えて受け継がれてきたということは、成長期の若者に必要な行事であることを示していると思います。

    12月7日(土)、第87回御船高校長距離走大会を実施しました。男子は午前10時スタートでコース距離11.8㎞、女子は10分後にスタートし9.5㎞走ります。学校を出て国道445号を嘉島町方面に向かい、途中から田畑の中の農道に入り、高木地区のだらだら坂を上り、益城町から伸びてきている国道443号に出て学校へ帰ってくるコースとなります。

    全校生徒528人中、492人が参加しました。健康状況等で参加できない生徒は運営スタッフとして記録等の業務に当たってくれました。また、大勢の保護者の方々が、豚汁の炊き出し班とコース各ポイントでの交通安全見守り班に分かれご協力いただきました。師走らしい曇天で気温は低めでしたが、里山の集落の昔ながらの道や農道では、保護者や地元の皆さんの温かい声援を受け、492人全員が完走を果たしました。私はスタート地点、そして移動しながら2か所で応援し、最後はゴール地点で生徒たちを出迎えましたが、あらためて御船高校生のたくましさ、底力を感じました。

    社会は変化しても、学校での体育的鍛錬行事は意義があると私は思います。「きつい」と生徒たちが感じている時、身体と体が鍛えられているのです。スタート前は不安な表情を浮かべる生徒たちもいましたが、走りぬいてゴールした後、生徒たちはみな清々しい表情でした。何にも代えがたい達成感を味わったことでしょう。

   走る、ひたすら走る、ゴール目指して走る、ただそれだけのシンプルな行事ですが、きっと青春の特別なひとこまになったと思います。

 

「未来のための金曜日」講演会

 

 「未来のための金曜日」講演会を11月に2回開催しました。8日(金)に徳永明彦(とくながあきひこ)同窓会長(ダック技建(株)代表取締役)、そして29日(金)に熊本市の遠藤洋路(えんどうひろみち)教育長をお招きしました。

 徳永同窓会長は、「希望ある社会人」の演題で、御船高校卒業後に福岡県で就職して、やがて北九州市で会社を興され今日に至る半生を力強く語られました。高校時代は英語の勉強が苦手だったそうですが、大人になったら海外旅行をすることが夢で、それを実現し世界40か国を訪問されています。しかし、いまだに英会話が苦手で、生徒たちに英語の勉強の大切さを強調されました。また、学校と社会の違いの例として、学校の試験問題は正答が用意され、簡単な問題から解いていけばある程度の成績は得られるが、社会では正答がわからないうえに、難しい問題を解決しないと前へは一歩も進めない状況があると述べられました。

 遠藤教育長は、もともとは埼玉県のご出身で、文部科学省に入られ、その後公務員を辞して起業され、そして現在は政令指定都市(人口74万人!)の教育行政の最高責任者という重責を担われています。演題は「人生に正解はない」です。文科省からハーバード大学に研修留学に派遣され、得意と思っていた英語が通じなかったことや、毎日のゼミナール講義で進んで意見が言えず挫折感を覚えたこと、さらには闘病生活の体験など人生がいかに予測不可能なものかを切実に語られました。「人生に正解はない、のであれば、人生に不正解はありますか?」と最後に生徒から質問が寄せられました。それに対して、遠藤教育長は、「人生とは自分で決断して生きていくもの。だから、不正解があるとすれば、それは他人任せの生き方だと思う。」と明快に答えられました。

 「将来の夢」というものを持ちにくい時代になったと言われます。なぜなら社会の変化があまりに激しく、未来を予測することが不可能だからです。しかし、徳永同窓会長も遠藤教育長も、社会の変化に主体的に対応され岐路では自ら決断し、ダイナミックに人生を切り拓いてこられたことがわかります。

 これから地図なき進路に歩みだす生徒の皆さんにとって、未来を考える時間になった二つの講演会でした。「未来のための金曜日」になったと思います。

   

   徳永同窓会長の講演         遠藤教育長の講演

再び、世界大会が熊本で ~ 「女子ハンドボール世界選手権大会」開催

 私は35歳でした。福島譲二知事の時でした。1997年(平成9年)、熊本県で「男子ハンドボール世界選手権大会」が開催されました。当時勤務していた県北の高校の生徒たちを引率し、メイン会場のパークドーム熊本(熊本市)で試合を観戦しました。確かロシアとフランスの対戦だったと記憶していますが、定かではありません。とにかく、迫力あるプレーに圧倒されました。2m近い大男たちが走り、跳び、投げるのです。躍動的で力強いハンドボールの醍醐味に生徒、職員ともに魅了されました。また、世界大会のインターナショナルな雰囲気にも包まれて、得難い体験となりました。

 そして、今年2019年(令和元年)、「女子ハンドボール世界選手権大会」が熊本県で開催されるのです。来る11月30日(土)から12月15日(日)まで、24か国のチームが参加し、全96試合が熊本市、八代市、山鹿市にある5会場で行われます。大会のキャッチフレーズは「Hand in Hand ~ 1つのボールが世界を結ぶ」です。勝利への思いを込めた1つのボールが手から手へつながり広がっていくように、世界中の選手や応援する人々の間に、国境を越えた人の輪が作られていくことを願ったキャッチフレーズです。

 さて、日本中に感動を与えた「ラグビーワールドカップ2019」(9/20~11/2)はまさに国を挙げて開催したものです。それに対して、「女子ハンドボール世界選手権大会」は熊本県単独で開催します。22年前の「男子ハンドボール世界選手権大会」も県単独開催でした。もともと熊本県はハンドボールが盛んな土地柄ですが、それにしても世界大会を県単独で開くことは壮挙だと思いませんか。男子大会に続いて、再び女子の世界大会開催に挑む熊本県の志の大きさを生徒の皆さんに知ってほしいものです。そして、世界大会レベルのスポーツをライブで観戦できるまたとない機会に生徒の皆さんは恵まれます。

 期末考査が終了する12月2日(月)の午後、体育系部活動の希望者がメイン会場のパークドーム熊本でアルゼンチン対ロシア戦を観戦します。さらに、12月9日(月)に1年生全員、12月11日(水)に2、3年生全員がパークドーム熊本へ観戦に行く予定です。きっと世界大会の臨場感の中、ハンドボールのスピード感、迫力に惹きつけられることでしょう。

 11月30日(土)の開幕まであと少しです。チケット販売をはじめ大会前の盛り上がりに欠けているとの声も聞かれますが、私は心配していません。熊本県民の気質を考えると、いざ大会が始まれば必ず感動と興奮の輪は広がっていくと思います。22年前もそうだったからです。

 

地域と共に ~ 御船町災害ボランティアセンター設置運営訓練

 11月24日(日)午前、御船高校体育館を会場に「御船町災害ボランティアセンター設置運営訓練」を実施しました。主催は御船町社会福祉協議会で、御船高校は会場提供をはじめ積極的にこの訓練に関わりました。

 3年半前の熊本地震の時、多くの住民の方達が本校に避難してこられました。当時、対応に当たった職員は、学校は地域、コミュニティの拠り所であることを痛感したと語っています。県立高校といえども学校所在の地域の方々の支えなくしては成り立ちません。長い間、地元住民の方々に応援され、愛されて学校の伝統がつながっているのです。

 今回の訓練のお話が御船町社会福祉協議会から提案された時は、多くの生徒たちを参加させたいと考えました。ところが、当日は商業の検定試験と重なったうえ、11月27日(水)から2学期期末考査が始まるということで、ボランティア参加が25人に留まりました。しかし、この生徒たちは定期考査前にも関わらず自ら進んで参加しており、きっと近い将来、それぞれの地域の防災の担い手に成長してくれることでしょう。

 午前9時、「災害ボランティアセンター」の開所宣言から始まり、地元住民の方や御船高校生が災害ボランティア役として受付に集合しました。そして、オリエンテーションを受け、どんな仕事がありどんな人が何人求められているのかを知り(マッチング)、グループごとリーダーを決め、土嚢(のう)のひもを縛る体験やアルファ米による炊き出し訓練等が展開されました。生徒代表の3年生の野仲君(前生徒会長)は町福祉協議会スタッフの手伝いに回り、オリエンテーション係として落ち着いて地元住民の方にボランティア活動の注意点を説明していました。

 訓練はおよそ2時間で終了しました。ちょうど訓練中に雷雨となり、体育館から外に出ることができず、完全に屋内での訓練となりましたが、まるで災害を想像させるような悪天候は、訓練に緊張感を与えたと思います。地元住民の方たちをはじめ訓練のお手伝いにこられた上益城郡の各町、そして熊本市の社会福祉協議会の皆さんとも生徒たちは交流の機会を得ました。中には、「御船高校には初めて来ましたが、生徒の皆さんとお話して、中学生の息子を御船高校に入学させたいと思いました。」というような有難い感想を伝えられる関係者もいらっしゃいました。

 御船高校は大正、昭和、平成、令和とこの地にあって地域に支えられてきました。これからも地域と共に歩んでいきたいと思います。

 

御船高校への期待 

    秋も深まり、11月も後半となってきました。中学3年生の皆さんの進路志望が最終決定となる時期です。御船高校では、11月21日(木)、上益城郡内をはじめ各中学校の進路指導担当の先生方に集まっていただき、令和2年度生徒募集の概要説明および募集要項(願書含む)の配布を行いました。説明会はセミナーハウスで実施したのですが、会に先立ち、隣接の電子機械科実習室に中学校の先生方を案内し、生徒の学習、部活動の成果の一部を見学していただく機会を設けました。

 実習室では、芸術コース美術・デザイン専攻、そして書道専攻の生徒たちの作品を展示し、それぞれ専攻の生徒が作品解説を担当しました。また、マイコン制御部のロボット班によるロボット操作実演、そしてマイコンカー班によるマイコンカーの走行実演も生徒たちが行いました。見学された中学校の先生方は大変興味、関心を示され、生徒への質問や感想を述べられました。中には、出身中学校の生徒との再会もあり、「中学生の時に比べ、あまりに成長しているので驚きました!」と感激されている先生もおられました。

   御船高校は、モノづくりの面白さを追究する電子機械科、音楽・美術・書道を通じて創造力を養う芸術コース、多様な教科・科目を学びながら自らの進路を見つけていく普通科(特進クラス・総合クラス)と三つの特色ある学びの課程があり、それらが混然一体となり大きな学び舎となっています。即ち、多様性が魅力です。にぎやかで多彩な学校文化があり、五教科(国社数理英)中心の中学校の教育課程とは大きく異なります。

   33年高校の教職にあって感じることは、高校生の可能性は無限大ということです。高校3年間で大きく変わり、心身ともに成長していきます。近年は通信制高校も増え中学生の選択肢は広がっていますが、長く全日制高校に勤めている経験から、同世代が同じ学び舎で3年間共に過ごすことの教育効果は計り知れないものがあると思います。中学時代に必ずしも真価を発揮できず、不本意な学校生活を送った生徒でも、御船高校で新しいスタートを切ることができます。中学時代に欠席が多かった生徒が、本校ではほとんど欠席もなく、輝いて生活している生徒が幾人もいます。

   誰一人取り残さない、全員が参加して「わかる、できる」ための授業のユニバーサルデザイン化の実践、生徒一人ひとりを全職員で支援する体制づくり等の取り組みで、本校は生徒を伸ばします。

   中学校の先生方から御船高校への期待を寄せていただき、改めて本校の使命の重さを感じました。

 

学びの季節を迎えて

 文化祭「龍鳳祭」を11月15日(金)から16日(土)に開催し、にぎやかで多彩な御船高校の学校文化を発信できました。外部から特別ゲストを呼ぶことなく、生徒主体の手づくりの文化祭でした。そして、PTAバザーには50人を超える保護者の方が協力してくださり、肉うどんやカレーの調理・販売に加え、餅つき実演も行われました。また、地域の中学生や住民の皆さんが大勢来校され、笑顔の交流が見られました。

 一方、自分の夢を追い求める生徒たちは「龍鳳祭」に参加できず、それぞれのスポーツ、文化の大会に出場し、活躍しました。この「校長室からの風」で紹介した見﨑真未さん(2年生)は、11/17(日)に開催された「第39回大分国際車いすマラソン大会」のハーフマラソン部門において、1時間15分37秒の記録でカナダやロシアの有力選手をおさえ、優勝を飾りました。高校生パラ・アスリートの快挙を称えたいと思います。

 また、同じく11/17(日)に福岡市で開かれた「ジャパンマイコンカーラリー九州大会」に出場した本校マイコン制御部マイコンカー班(選手7人)も健闘し、アドバンスクラスで谷口君、カメラクラスで中村君が上位入賞を果たし、来年1月の全国大会進出(北九州市)を決めました。「マイコンカーラリー」とは聞き慣れない競技だと思います。私も10月20日(日)の県大会(八代工業高校)で初めて観戦しました。小さなコンピュータ(マイクロコンピューター)を搭載した車を自分たちで製造し、規定のコースをコンピュータで読取り自走するもので、最も出場者が多いアドバンスクラスは十数秒でレースが決着します。ロボット班と並び、本校電子機械科の面目躍如の部活動です。

 文化祭「龍鳳祭」を終え、校内の空気が変わりました。秋が深まり、学校全体が落ち着いた感じです。昨日の11月20日(水)には人権教育講演会を7限目に実施しました。今年度は水俣病問題をテーマとし、水俣市から胎児性水俣病患者で「語り部」(水俣病資料館)として活動されている永本賢二さんをお招きしました。次代の社会の担い手となる高校生に対する期待を込め、永本さんは支援者の葛西さんと対談形式で歩んでこられた道を語られました。水俣病問題から私たちが学ぶことはたくさんあると思います。人権意識や環境を大切にした社会のあり方など、改めて深く考える契機となりました。

 御船高校の象徴の「天神の森」の紅葉も見頃です。来週、11月27日(水)から2学期期末考査が控えています。生徒の皆さん、学びの季節です。

           人権教育講演会の様子

 

龍鳳祭(文化祭)を終えて

 

  「龍鳳祭」フィナーレの書道パフォーマンスの感動の余韻にいまだ包まれています。10月6日(日)、熊本城二の丸広場で開催された第1回熊本県高校生書道パフォーマンスコンテストで、御船高校書道部は優勝を飾りました。秋のお城まつりの一環として行われた行事で、会場には外国人観光客も多数いらっしゃったのですが、本校書道部の気合の入った、きびきびした動作、ダイナミックな筆遣いのパフォーマンスに魅了され、どよめきに似た歓声と拍手がわき起こったことを鮮明に覚えています。たとえ書かれてある文字の意味はわからなくても、御船高校生の書道パフォーマンスは外国の人の胸を打つのです。これが文化の力だと思いました。

    クールジャパン、「日本はかっこいい」と世界の人が称賛するものは、マンガ、アニメ、ファッション、和食、おもてなしと言われる細やかな接客サービス、そして茶道、華道、能楽、歌舞伎の伝統芸能など幅広い日本の文化です。

 文化は心の豊かさを生みます。例えば、喉の渇きをいやすだけならペットボトルのお茶を飲めば簡単です。しかし、急須に茶葉を入れ、お湯や冷水を適量そそいで、ゆっくり回し、茶碗に注ぎ、お茶の色や香りを楽しみながら一服する時間は心にゆとりと潤いを与えます。煎茶道の世界です。さらに抹茶を用い、作法様式に則った茶道の世界はもっと奥深いものがあります。

 「手仕事」や「手間ひまかける」といった麗しい日本語があります。労力や時間をかけてモノを創っていくと、唯一無二のものを生み出せます。1年4組のお化け屋敷は、大道具から小道具までこだわって製作されていました。美は細部に宿るのです。お化け屋敷がアートになっていたと思います。

    さて、文化祭に向けて、皆さんは生徒会、文化部、クラス、そして有志で取り組んで来ました。皆で協力して何かを創り上げることの難しさと面白さの両方を学んだと思います。そして、お互いの良さや個性をあらためて再発見したのではないでしょうか。普通科総合クラス・特進クラス、芸術コース、電子機械科とそれぞれ特色ある学びがあり、それらが混然一体となり御船高校という大きな学び舎となっています。御船高校の文化の森は皆さんが考えていたより多彩で奥行きのあるものだとこの文化祭で感じたと思います。 

    クールな文化祭でした。この「龍鳳祭」で御船高校の魅力を広く発信できたことを皆さんと共に喜び、講評とします。

 

「龍鳳祭」(御船高校文化祭)始まる

 令和元年の御船高校文化祭「龍鳳祭」(りゅうほうさい)が11月15日、爽やかな秋空の下、始まりました。校歌(昭和2年制定)の一節に「龍鳳となり雄飛せん」とあり、ここから本校の文化祭は「龍鳳祭」と呼ばれています。龍も鳳(ホウ、おおとり)も伝説の霊獣、霊鳥です。少年が大きく成長することを願った歌詞だと思います。

 今日は午前中、体育館で開会式に続き、2年生のインターンシップ(職場体験)発表、保健委員会の発表、1年B組制作の動画上映、そして吹奏楽部のコンサート等が行われました。明日の16日(土)は一般公開となります。大勢の皆さんのご来校をお待ちしております。

 開会式での校長挨拶を次に掲げます。 

 「令和元年の御船高校文化祭「龍鳳祭」の日を迎えました。テーマは「つなぐ ~ 次の時代へ」です。平成から令和へと時代は変わっても、「天神の森」の学び舎は、可能性豊かな若者と熱意ある教師の出会いの場であり続けます。そして2年後の創立100周年に向け、今、本校は新しい伝統を築こうと上昇気運に包まれています。

 さて、御船高校の文化の森は、学習発表、芸術文化の作品、そしてエンターテインメントの企画とカラフルでにぎやかなものになると思います。皆さん一人一人がこの文化の森を自由にめぐって、楽しんでください。きっと様々な発見と出会いがあることでしょう。

 御船高校は地域に開かれた学校でありたいと願っています。明日はきっと中学生はじめ多くのお客様が来校されることでしょう。皆さんの笑顔で迎えてください。そして、本校の魅力を伝えてほしいと思います。

 生徒の皆さんにとって、この二日間が特別な時間になり、私たちの学校、御船高校をもっと好きになることを期待し、オープニングの挨拶とします。」