校長室からの風

「走る、ひたすら走る、ゴール目指して」 ~ 第87回御船高校長距離走大会

 

    数ある学校行事の中で、生徒たちに最も歓迎されない行事が「長距離走大会」でしょう。長距離を走ることが得意だという人は少ないうえに、「きつく、苦しい」、「ただ走って何になる?」と生徒たちの不満は多いものです。しかし、長距離走大会は、生徒たちの心身に負荷をかける鍛錬行事です。鍛錬行事は近年の学校行事では少なくなり、長距離走大会(持久走大会)や強歩会などが各学校で実施されている状況です。

    御船高校の長距離走大会は、昭和7年(1932年)に始まり、旧制御船中学校以来続く伝統行事です。時代を超えて受け継がれてきたということは、成長期の若者に必要な行事であることを示していると思います。

    12月7日(土)、第87回御船高校長距離走大会を実施しました。男子は午前10時スタートでコース距離11.8㎞、女子は10分後にスタートし9.5㎞走ります。学校を出て国道445号を嘉島町方面に向かい、途中から田畑の中の農道に入り、高木地区のだらだら坂を上り、益城町から伸びてきている国道443号に出て学校へ帰ってくるコースとなります。

    全校生徒528人中、492人が参加しました。健康状況等で参加できない生徒は運営スタッフとして記録等の業務に当たってくれました。また、大勢の保護者の方々が、豚汁の炊き出し班とコース各ポイントでの交通安全見守り班に分かれご協力いただきました。師走らしい曇天で気温は低めでしたが、里山の集落の昔ながらの道や農道では、保護者や地元の皆さんの温かい声援を受け、492人全員が完走を果たしました。私はスタート地点、そして移動しながら2か所で応援し、最後はゴール地点で生徒たちを出迎えましたが、あらためて御船高校生のたくましさ、底力を感じました。

    社会は変化しても、学校での体育的鍛錬行事は意義があると私は思います。「きつい」と生徒たちが感じている時、身体と体が鍛えられているのです。スタート前は不安な表情を浮かべる生徒たちもいましたが、走りぬいてゴールした後、生徒たちはみな清々しい表情でした。何にも代えがたい達成感を味わったことでしょう。

   走る、ひたすら走る、ゴール目指して走る、ただそれだけのシンプルな行事ですが、きっと青春の特別なひとこまになったと思います。

 

「未来のための金曜日」講演会

 

 「未来のための金曜日」講演会を11月に2回開催しました。8日(金)に徳永明彦(とくながあきひこ)同窓会長(ダック技建(株)代表取締役)、そして29日(金)に熊本市の遠藤洋路(えんどうひろみち)教育長をお招きしました。

 徳永同窓会長は、「希望ある社会人」の演題で、御船高校卒業後に福岡県で就職して、やがて北九州市で会社を興され今日に至る半生を力強く語られました。高校時代は英語の勉強が苦手だったそうですが、大人になったら海外旅行をすることが夢で、それを実現し世界40か国を訪問されています。しかし、いまだに英会話が苦手で、生徒たちに英語の勉強の大切さを強調されました。また、学校と社会の違いの例として、学校の試験問題は正答が用意され、簡単な問題から解いていけばある程度の成績は得られるが、社会では正答がわからないうえに、難しい問題を解決しないと前へは一歩も進めない状況があると述べられました。

 遠藤教育長は、もともとは埼玉県のご出身で、文部科学省に入られ、その後公務員を辞して起業され、そして現在は政令指定都市(人口74万人!)の教育行政の最高責任者という重責を担われています。演題は「人生に正解はない」です。文科省からハーバード大学に研修留学に派遣され、得意と思っていた英語が通じなかったことや、毎日のゼミナール講義で進んで意見が言えず挫折感を覚えたこと、さらには闘病生活の体験など人生がいかに予測不可能なものかを切実に語られました。「人生に正解はない、のであれば、人生に不正解はありますか?」と最後に生徒から質問が寄せられました。それに対して、遠藤教育長は、「人生とは自分で決断して生きていくもの。だから、不正解があるとすれば、それは他人任せの生き方だと思う。」と明快に答えられました。

 「将来の夢」というものを持ちにくい時代になったと言われます。なぜなら社会の変化があまりに激しく、未来を予測することが不可能だからです。しかし、徳永同窓会長も遠藤教育長も、社会の変化に主体的に対応され岐路では自ら決断し、ダイナミックに人生を切り拓いてこられたことがわかります。

 これから地図なき進路に歩みだす生徒の皆さんにとって、未来を考える時間になった二つの講演会でした。「未来のための金曜日」になったと思います。

   

   徳永同窓会長の講演         遠藤教育長の講演

再び、世界大会が熊本で ~ 「女子ハンドボール世界選手権大会」開催

 私は35歳でした。福島譲二知事の時でした。1997年(平成9年)、熊本県で「男子ハンドボール世界選手権大会」が開催されました。当時勤務していた県北の高校の生徒たちを引率し、メイン会場のパークドーム熊本(熊本市)で試合を観戦しました。確かロシアとフランスの対戦だったと記憶していますが、定かではありません。とにかく、迫力あるプレーに圧倒されました。2m近い大男たちが走り、跳び、投げるのです。躍動的で力強いハンドボールの醍醐味に生徒、職員ともに魅了されました。また、世界大会のインターナショナルな雰囲気にも包まれて、得難い体験となりました。

 そして、今年2019年(令和元年)、「女子ハンドボール世界選手権大会」が熊本県で開催されるのです。来る11月30日(土)から12月15日(日)まで、24か国のチームが参加し、全96試合が熊本市、八代市、山鹿市にある5会場で行われます。大会のキャッチフレーズは「Hand in Hand ~ 1つのボールが世界を結ぶ」です。勝利への思いを込めた1つのボールが手から手へつながり広がっていくように、世界中の選手や応援する人々の間に、国境を越えた人の輪が作られていくことを願ったキャッチフレーズです。

 さて、日本中に感動を与えた「ラグビーワールドカップ2019」(9/20~11/2)はまさに国を挙げて開催したものです。それに対して、「女子ハンドボール世界選手権大会」は熊本県単独で開催します。22年前の「男子ハンドボール世界選手権大会」も県単独開催でした。もともと熊本県はハンドボールが盛んな土地柄ですが、それにしても世界大会を県単独で開くことは壮挙だと思いませんか。男子大会に続いて、再び女子の世界大会開催に挑む熊本県の志の大きさを生徒の皆さんに知ってほしいものです。そして、世界大会レベルのスポーツをライブで観戦できるまたとない機会に生徒の皆さんは恵まれます。

 期末考査が終了する12月2日(月)の午後、体育系部活動の希望者がメイン会場のパークドーム熊本でアルゼンチン対ロシア戦を観戦します。さらに、12月9日(月)に1年生全員、12月11日(水)に2、3年生全員がパークドーム熊本へ観戦に行く予定です。きっと世界大会の臨場感の中、ハンドボールのスピード感、迫力に惹きつけられることでしょう。

 11月30日(土)の開幕まであと少しです。チケット販売をはじめ大会前の盛り上がりに欠けているとの声も聞かれますが、私は心配していません。熊本県民の気質を考えると、いざ大会が始まれば必ず感動と興奮の輪は広がっていくと思います。22年前もそうだったからです。

 

地域と共に ~ 御船町災害ボランティアセンター設置運営訓練

 11月24日(日)午前、御船高校体育館を会場に「御船町災害ボランティアセンター設置運営訓練」を実施しました。主催は御船町社会福祉協議会で、御船高校は会場提供をはじめ積極的にこの訓練に関わりました。

 3年半前の熊本地震の時、多くの住民の方達が本校に避難してこられました。当時、対応に当たった職員は、学校は地域、コミュニティの拠り所であることを痛感したと語っています。県立高校といえども学校所在の地域の方々の支えなくしては成り立ちません。長い間、地元住民の方々に応援され、愛されて学校の伝統がつながっているのです。

 今回の訓練のお話が御船町社会福祉協議会から提案された時は、多くの生徒たちを参加させたいと考えました。ところが、当日は商業の検定試験と重なったうえ、11月27日(水)から2学期期末考査が始まるということで、ボランティア参加が25人に留まりました。しかし、この生徒たちは定期考査前にも関わらず自ら進んで参加しており、きっと近い将来、それぞれの地域の防災の担い手に成長してくれることでしょう。

 午前9時、「災害ボランティアセンター」の開所宣言から始まり、地元住民の方や御船高校生が災害ボランティア役として受付に集合しました。そして、オリエンテーションを受け、どんな仕事がありどんな人が何人求められているのかを知り(マッチング)、グループごとリーダーを決め、土嚢(のう)のひもを縛る体験やアルファ米による炊き出し訓練等が展開されました。生徒代表の3年生の野仲君(前生徒会長)は町福祉協議会スタッフの手伝いに回り、オリエンテーション係として落ち着いて地元住民の方にボランティア活動の注意点を説明していました。

 訓練はおよそ2時間で終了しました。ちょうど訓練中に雷雨となり、体育館から外に出ることができず、完全に屋内での訓練となりましたが、まるで災害を想像させるような悪天候は、訓練に緊張感を与えたと思います。地元住民の方たちをはじめ訓練のお手伝いにこられた上益城郡の各町、そして熊本市の社会福祉協議会の皆さんとも生徒たちは交流の機会を得ました。中には、「御船高校には初めて来ましたが、生徒の皆さんとお話して、中学生の息子を御船高校に入学させたいと思いました。」というような有難い感想を伝えられる関係者もいらっしゃいました。

 御船高校は大正、昭和、平成、令和とこの地にあって地域に支えられてきました。これからも地域と共に歩んでいきたいと思います。

 

御船高校への期待 

    秋も深まり、11月も後半となってきました。中学3年生の皆さんの進路志望が最終決定となる時期です。御船高校では、11月21日(木)、上益城郡内をはじめ各中学校の進路指導担当の先生方に集まっていただき、令和2年度生徒募集の概要説明および募集要項(願書含む)の配布を行いました。説明会はセミナーハウスで実施したのですが、会に先立ち、隣接の電子機械科実習室に中学校の先生方を案内し、生徒の学習、部活動の成果の一部を見学していただく機会を設けました。

 実習室では、芸術コース美術・デザイン専攻、そして書道専攻の生徒たちの作品を展示し、それぞれ専攻の生徒が作品解説を担当しました。また、マイコン制御部のロボット班によるロボット操作実演、そしてマイコンカー班によるマイコンカーの走行実演も生徒たちが行いました。見学された中学校の先生方は大変興味、関心を示され、生徒への質問や感想を述べられました。中には、出身中学校の生徒との再会もあり、「中学生の時に比べ、あまりに成長しているので驚きました!」と感激されている先生もおられました。

   御船高校は、モノづくりの面白さを追究する電子機械科、音楽・美術・書道を通じて創造力を養う芸術コース、多様な教科・科目を学びながら自らの進路を見つけていく普通科(特進クラス・総合クラス)と三つの特色ある学びの課程があり、それらが混然一体となり大きな学び舎となっています。即ち、多様性が魅力です。にぎやかで多彩な学校文化があり、五教科(国社数理英)中心の中学校の教育課程とは大きく異なります。

   33年高校の教職にあって感じることは、高校生の可能性は無限大ということです。高校3年間で大きく変わり、心身ともに成長していきます。近年は通信制高校も増え中学生の選択肢は広がっていますが、長く全日制高校に勤めている経験から、同世代が同じ学び舎で3年間共に過ごすことの教育効果は計り知れないものがあると思います。中学時代に必ずしも真価を発揮できず、不本意な学校生活を送った生徒でも、御船高校で新しいスタートを切ることができます。中学時代に欠席が多かった生徒が、本校ではほとんど欠席もなく、輝いて生活している生徒が幾人もいます。

   誰一人取り残さない、全員が参加して「わかる、できる」ための授業のユニバーサルデザイン化の実践、生徒一人ひとりを全職員で支援する体制づくり等の取り組みで、本校は生徒を伸ばします。

   中学校の先生方から御船高校への期待を寄せていただき、改めて本校の使命の重さを感じました。