2021年1月の記事一覧

「ロマンです!」 ~ 電子機械科「課題研究発表会」

 3年生の学年末考査、通称「卒業試験」が1月27日(水)に終了しました。これで3年生は家庭学習期間に入るのですが、電子機械科の3年生は翌日も登校し、この1年間取り組んできた課題研究の発表会に臨みました。電子機械科の「課題研究」は生徒たちがそれぞれ班をつくり、各班で課題を設定し、担当の先生の指導を受けながら研究実践を行うものです。教育課程上は、2単位(週2時間)ですが、放課後や長期休業中にも自主的に活動してきました。

 会場は第5実習棟フロア。電子機械科3年A、B組それぞれ6班が持ち時間12分で発表し、質疑応答の時間もあります。先輩の発表を2年生が聴きます。

 今年の課題研究の主流は、プログラミングに関連したものとなりました。これは本校電子機械科の教育で重視していることであると共に、今の社会のトレンドとも言えます。人型ロボットPepper(ソフトバンク社から貸与中)に搭載する小学校英語学習用プログラムに挑んだ班。マイコン(マイクロコンピュータ、超小型コンピュータ)に独自のプログラミングを施しコース情報をセンサーで検知し走行するマイコンカーを改良していく班。人の操縦を必要とせず周囲の状況をセンサーで読み取り動く自立型ロボットを開発する班。体験入学する中学生に向けて楽しいプログラミング体験教室を準備した班。いずれも班員の力を結集して、トライ&エラーの連続だったプロセス(過程)が伝わってきました。

 このような中、モノづくりの原点を考えさせるユニークな発表が二つありました。A組のある班は、校内で故障しているモノ、放置されているモノの修理や解体の依頼を職員から受け、それに次々と取り組んだのです。故障した大型扇風機やリヤカーを修理しました。また運動場の老朽化した防球ネットをガス溶断で解体しました。これらの修理や解体は外部の事業者に委託すると多額の費用が掛かるものですが、生徒たちの学習活動の一環として学校自前で対応できました。また、B組のある班は、手作りの真空管アンプを製作しました。骨董品のイメージさえありますが、電極が入った中空の管である真空管を用いたアンプ(増幅器)は、半導体(トランジスタ)のアンプに比べ、温もりのある音が出ると今も根強い人気があります。「なぜ、敢えて真空管アンプを作ったのか?」という職員からの質問に対し、班員の生徒が「ロマンです。」と答え、会場は沸きました。

 卒業に向けての電子機械科独自の大事な行事が終わりました。3年生による課題研究発表は、後輩諸君(2年生)の探究心にきっと火を点けたことでしょう。

                  手作りの真空管アンプ

前期選抜の受検生の皆さんへ

 2月1日(月)、御船高校では前期選抜検査を行います。熊本県の公立高等学校では前期と後期の2回、選抜検査が行われることになっており、前期では各校独自の特色ある選抜検査を実施します。本校では、普通科芸術コース及び電子機械科でそれぞれ実技検査と集団面接が行われます。

 今年も前期選抜で多くの受検生の皆さんが御船高校を志望してくれています。音楽、美術・デザイン、書道の芸術分野に興味、関心を持ち、自分の「好き」や「得意」をもっと伸ばしていこうと志望してくれた受検生。また、モノづくりに興味、関心を持ち、モノづくりを通して知識や技能を身に付けていきたいと意欲ある受検生。皆さんの志に敬意を表します。そして、皆さんに「選ばれた学校」であることに私たち教職員は誇りを覚えます。

 受検生の皆さんにとって高校入試は不安と緊張の体験になるでしょう。今年は誰もが経験したことのない新型コロナウイルスのパンデミックの中、例年の受検生よりもその不安は大きいものと思います。先ずは、体調を整えること、これが受検生の皆さんに求められます。特別なことをするのではなく、日常生活を維持し、いつもの体調で試験当日に臨んでください。

 受け入れる側の私たちは、受検生の皆さんが安心して力を発揮できる環境づくりに努めています。様々な場所にアルコール消毒液を準備しておきます。検査室の清掃や除菌を徹底します。検査会場の換気にも気を配ります。発言する職員はマスクの上にフェイスガードも重ねて着用する予定です。

 試験当日、緊張した表情の皆さんをできることなら笑顔で迎えたいと思っています。しかしながら、試験を実施する私たちも緊張する日なのです。笑顔までは無理でも、努めて柔らかい表情で対応したいと心がけています。御船高校を志望してくれたことに感謝の気持ちを持ちながら。

 御船高校の正門を入ると前方に樹木の茂った一画が見えます。ここが「天神の森」と呼ばれる場所です。校歌にも登場する、本校の象徴(シンボル)と言うべきところです。中心にそびえる樹齢400年と伝えられる楠の巨木は冬でも青々とした葉を茂らせています。御船高校生はこの天神の森に見守られ学校生活を送っています。受検生の皆さんも、試験当日、天神の森と対面して、深呼吸をしてください。きっと落ち着き、「やるぞ」と力が湧いてくることでしょう。

 皆さんが入学する来年度、本校は創立100周年を迎えます。

 春、「天神の森の学び舎」で皆さんを待っています。

 

芸術コース作品展を鑑賞して

   「むしろ苦難の過程を味わい 新たな自分の糧とする」

 会場の入り口で、書道専攻の友田さん(3年生)の決意が込められた毅然とした書と対面します。御船高校芸術コースの美術・デザイン、書道の専攻者による作品展を1月19日(火)から24日(日)まで熊本県立美術館分館にて開催しました。私は最終日の午前に会場を訪ね、多彩なアートの世界を楽しみました。

 書道は、格調ある古典の臨書、流麗な仮名、そして自らの思いを表現する自作の言葉と変化に富んでいます。作品に使われている料紙も注目です。一週間前に「大東文化大学熊本県書作展」(熊本県立美術館分館)を見学し、その自在で奥深い書芸に圧倒されました。書の先達の高い技能や精神性に比べると、高校生の未熟さは一目瞭然です。けれども、未熟さは伸びしろがあることを示し、伸び盛りの高校生の作品は鑑賞者の創造力が働く余地がその分大きいと言えます。

 美術・デザインは、生徒たちの豊穣なメッセージを感じました。絵画を通じて一人ひとりの雄弁な自己主張があります。食品廃棄や温暖化、動物保護など社会問題に言及したポスター作品群は観る者に内省を迫ります。立体造形の作品はまことにユニークなものばかりでした。ハンバーガーの山が積み上げられた「明日からダイエット」は強く印象に残ります。また、大量の細い竹ひごによる造形作品の題名は「追憶」であり、倒壊していく廃屋をイメージしているのでしょうか?作者にそのモチーフを尋ねたくなります。

 会場の一角には、美術専攻3年生の選択科目「映像表現」で制作された短編動画が流されています。タイトルは「青春と一瞬」。屋上でトランペットの練習をする生徒の姿、書道の生き生きとした筆の動き、美術室で語り合う生徒の様子、手を握り合って階段を上がる女子生徒、公園で生徒たちが飛び跳ねる瞬間など短いカットの連続です。そして、5,6人の生徒たちが道路を走っていく場面でラストを迎えます。きっと彼らは未来に向かって疾走しているのでしょう。

 新型コロナウイルス感染拡大が止まらず、熊本県でも県独自の緊急事態宣言が出されています。このような非常事態の中、本展覧会を開催することに迷いはありました。しかしながら、十分に感染対策を講じておられる熊本県立美術館のご理解とご協力によって開催することができました。期間中の受付については、例年は生徒たちが交代で行うのですが、今年は芸術科の教職員が務めました。

 創作に取り組むことで成長してきた芸術コースの生徒たちにとって、自らの作品が熊本県立美術館に展示され、多くの方に見ていただくということはかけがえのない体験です。困難な状況下、芸術コースの教育の基本を守ることができたと思います。社会は閉塞感に覆われ、私たちは精神的にも大きな負荷がかかっています。このような時にこそ、芸術(アート)の力が必要ではないかと思います。

 

 

第1回「大学入学共通テスト」

 大学入学共通テスト(主催:独立行政法人「大学入試センター」)が1月16日(土)~17日(日)にかけて実施されました。全国でおよそ53万人、県内で約6600人が受験する大規模なもので、御船高校からは17人が挑みました。本校生の試験会場は熊本県立大学で、17人全員が受験する2日目の数学の時間帯に私も会場を訪ねました。初日は小春日和でしたが、2日目は冷たい風が吹いて気温が上がらず、会場は寒さと緊張感に包まれていました。

 例年と大きく様子が異なったのは、各高校の教職員の数がめっきり減少したことです。いつもの年なら、各高校の進路指導部や3年担任の職員が一団かたまりとなってそれぞれ待機している風景が今年は見られません。新型コロナウイルス感染対策で試験会場も「三密」回避が講じられており、高校側も職員数を自粛したのです。私も滞在時間を短めにし、受験生への励ましも控えめにしました。

 今回は、30年余り続いた「大学入試センター試験」に代わって、第1回「大学入学共通テスト」が実施された画期的な試験でした。私が高校の教職に就いて3年目に始まった「大学入試センター試験」は問題の質が年々向上し、マークシート形式でも暗記力だけでは解けないレベルの良問が多数を占めました。しかしながら、社会の急速な情報化やグローバル化に伴い、より一層の「思考力・判断力・表現力」を高校生、大学生に求める必要性が生まれました。このような背景から、国語と数学で記述式問題の導入、そして英語で「読む・聞く・話す・書く」の4技能を測る英検などの民間試験活用が決まったのですが、受験の公平性、客観性などの大きな議論となり、いずれも一昨年に見送られました。このことは記憶に新しいところと思います。

 こうして最初の「大学入学共通テスト」を迎えたわけですが、各教科の問題は身近な題材を積極的に取り入れ、文章や語彙なども増え、特色ある傾向が見られました。受験生には読解力が要求される難度の高い試験になったのではないでしょうか?大学入試の変化は高校教育に大きな影響を与えます。生徒一人ひとりの学力を十全に評価できるパーフェクトな入試はあり得ないのかもしれません。けれども、共通テストと各大学が実施する個別の二次試験との組み合わせで、その理想を目指してほしいと願っています。

 コロナ禍の異例の受験風景でしたが、今年も大学受験独特の雰囲気に身を浸すことができ、高校の教員としての原点に立ち返ったような気持ちになりました。教壇を離れて久しいのですが、自らの専門教科・科目の「大学入学共通テスト」をじっくり解き、分析してみたいと思います。受験生には申し訳ないのですが、少しワクワクした気分です。

 

変化の時 ~ リモート授業の実践

    新型コロナウイルス感染拡大が止まりません。1月14日(木)、熊本県では県独自の緊急事態宣言が発令されました。このようなコロナ禍の中でも、現在のところ学校は通常の教育活動を行うことができています。生徒たちの学びを止めないために、感染対策を講じながら、「三密」を避けた教育活動の工夫に取り組んでいます。その鍵は、ICT(情報通信技術)の活用です。

 1月14日から家庭科の授業で「認知症サポーター養成講座」を始めました。2年生の電子機械科2クラス、1年生の普通科4クラスでそれぞれ連続2時間授業が6回実施されます。例年なら講師の方が来校され、対面式で講話、指導が行われるのですが、今回はオンラインでミーティングが開催できるアプリ「Zoom」を活用し、御船町地域包括支援センター(御船町役場内)、老人総合福祉施設「グリーンヒルみふね」と御船高校の教室を結びリモート授業を試みました。

 包括支援センターの方がコーディネーターとして講座の進行役、「グリーンヒルみふね」の吉本施設長が講師、そして教室では家庭科の教諭が生徒の支援に当たりました。パソコンとカメラで三者が結ばれ、教室には画像を拡大するスクリーンも設置し、講師の質問に生徒が答えたり、逆に生徒が問いかけたりと十分にコミュニケーションもできました。離れた三者がオンラインによってつながり、まさにリモートワーク(remote遠隔、遠い、work働く)が成立しました。

 学校現場でのICT活用はこの一年で急速に浸透しました。振り返れば、昨年4月~5月の臨時休校期間、在宅の生徒と学校をつないだのはメールや動画教材などICTの力でした。職員の会議出張もぐんと減りました。ウェブ会議システムでたいていは対応できるからです。

 長期化するコロナパンデミックの影響で、都市部においては企業のリモートワークが増加し、働き方が大きく変わろうとしています。自宅から会社のウェブ会議への参加や、他社との交渉を行う人が急増しています。主に上半身が映し出される特性上、画面で見栄えのするシャツやブラウス等のニーズが高まり、それらをレンタルする会社や販売する百貨店の業績向上が報道されていました。働き方が変われば、働く人のファッションも変化して当然です。

 これまで私たちが経験したことのない災禍に遭遇している今、私たちの仕事のあり方は変化の時を迎えています。変化することにリスクは伴いますが、旧来の方法のままいる方が遥かにリスクは大きいと思います。