作品に賭ける思い ~ 全九州高校総合文化祭

   2千人を超える高校生が熊本に集い、全九州高等学校総合文化祭熊本大会が12月11日(金)から13日(日)に開催されるはずでした。しかし、新型コロナウイルス感染対策を最優先に考え、大幅に規模が縮小し、内容も変更されました。私が部門長を務める書道部門はじめ多くの部門で各県から生徒の皆さんを招くことは断念しました。8年に一度回ってくる九州の高校生たちの文化祭が失われたことは返す返すも残念でなりません。

   書道部門では「生徒の皆さんが集まることができないのであれば、その作品を集め、審査しよう」との方針で各県の高等学校文化連盟の書道部会に呼びかけました。どの県も趣旨にご賛同いただき、九州8県それぞれで、制限時間などの諸条件を同一にした揮毫(きごう)大会を開くことにしました。本来なら、県代表の生徒たちが熊本に集結して、一堂に会し、その場で筆を競うのが揮毫大会のあり方ですが、実施期日や場所は各県に任せたのです。そして、各県代表の作品10点を郵送もしくは持参していただき、それを審査することとしました。

   12月12日(土)、熊本マリスト学園中学・高等学校において、7県の高校書道の専門委員長の先生方をお迎えしました。感染者が多く出ており、警戒レベルも高いはずの福岡県や沖縄県からも来ていただきました。審査に先立ち、主催県の代表として私から「生徒の皆さんを集めての大会が開催できず、誠に申し訳ありません。」とお詫びを申し上げました。それに対して、出席の皆さん方から「この状況では仕方がなかった」、「このような形で揮毫大会を開いていただき感謝します」等の温かい言葉を頂きました。

   各県の代表の先生方に何か覚悟のようなものを感じました。それは、生徒たちに、コロナ禍の不遇な時期に巡り合ってしまったと嘆かせないため、教師ができることは何でもやるという気迫のようなものです。コロナ第三波の渦中、県外出張することはリスクがあります。それでも、生徒たちの作品を持参し、熊本まで来られた先生方の使命感に頭の下がる思いでした。

   全九州高等学校総合文化祭熊本大会「書道部門揮毫大会」の審査は九州各県の専門委員長8人によって厳正に行われました。実際に熊本に集まり交流が叶わなかった分、作品に賭ける生徒の皆さんの思いはより強いものがあったと思います。一点一点の作品から書き手のエネルギーが立ち昇っているように私は感じました。

   生徒の皆さんの代わりに、作品がその人格を背負い、熊本に来てくれたのです。

                   審査風景