校長室より

校長室よりブログ

ハート 天高生とは 何ぞや

昨日は美しい十三夜の月が 海の面を照らして輝いていました。

爽やかな秋の到来です。

 

今 天草中央消防署の小平署長から

「昨日夕方 ある女性が、城下で転倒して頭から血を流しておられたのを

 通りがかった天草高校生10名ぐらいが見つけて

 ハンカチで傷を覆ったり、カバンを枕代わりにさし出したりして

 救急車も呼ぶなど てきぱきと丁寧に対応してくれて

 救急対応上も大変助かりました。 何かの機会にぜひ生徒たちにもお声かけください」 

との うれしい電話をいただきました。

 

これには

実は余談があって

「城下の交差点付近に天草高校生がいっぱい集まっているが

 ひょっとして事故があったのではないでしょうか?」

という地域の方からのお電話も 実は 昨夕受け取っていました。

本校職員が確認のために 昨夕出かけていたのですが

生徒たちがご婦人を優しく介護している姿を見て胸が熱くなったそうです。

「天草高校生は 立派に育っていっています。

 対応してくれていたのは 寮生たちでした」

と 朝から報告を受けたばかりでした。

 

生徒たちが心配だと 昨夕 城下の現場に駆け付けた先生は

いつも

「天高生とは 何ぞや!」と 問い続けている先生です。

さわやかな秋空の下、

熱くて優しい思いが 天高生の心にもしみこみつつあるようです。

ハート ようこそ 先輩!

今日 サプライズで、演歌歌手の 原田悠里さんが 学校においでになりました。

天草高校の、安田同窓会長、池田同窓会副会長が

「原田さんは今年でデビュー40周年です。
 懐かしいかなと思って、母校・天草高校に連れてきました」
とのこと。

吹奏楽部の音色が聞こえ始めると                
校長室でのあいさつもそこそこに
4階の音楽室に。
「この窓からの風景 懐かしいなぁ。
 私も自転車で毎日通ったんですよ。」
と満面の笑みです。

廊下から窓越しに吹奏楽部の演奏を見ていたら やはり我慢できなくなったようで
原田さんは 吹奏楽部の練習に飛び込んでいきました。

音楽好きの魂は、すぐに交歓しあいます。
原田さんは 自分の高校時代の話や
小さいころから歌手になりたかったけれど親から反対されたので
鹿児島大学の教育学部で音楽専科に入り声楽を学んだことや
親を納得させるために横浜で3年間小学校の先生を勤め
その後北島音楽事務所に入って歌手を目指したこと
今では全国各地を巡っているけれど
天草ほど心に響く地も言葉もないということ
「徒然なか」という言葉が残る天草は素敵な故郷だということ
次から次に思いが迸り出てきます。
そして
「夢は叶うよ。私は遠回りしたけれどしっかり叶った。皆も夢をしっかり追いかけなさい」
と 熱いメッセージをいただけました。

「来年1月21日に デビュー40周年を記念してチャリティーコンサートを開きます。
 天草高校の吹奏楽部の皆さんとコラボしたいと思います!」
と 原田さんは 大きなプレゼントまで用意してくださっていました。

天高生と話している間中
原田さんの瞳が潤んだように見えていたのは 私だけだったのでしょうか?

蝉しぐれと小雨の降る中 とても爽やかな素敵なひとときでした。

 

 

ピース ”間に合わせる” という強い「覚悟」

  5月の連休明け

 「今から志望を国公立大学に変えても間に合うでしょうか?」

  と尋ねてきた3年生に、

 その生徒の瞳をじっと見つめ

 「間に合わない!」と言った先生がいます。


  「間に合う、間に合わないは、私達が言うことではない。

  君が、”間に合わせる” という強い「覚悟」を持っているかどうかだ。

  他人任せの気持ちのままだったら、到底間に合わない。

  ”間に合わせる”という思いを持って、残り半年を全力で頑張るのなら、

  私達も全力でバックアップするぞ。」

  と野太い声で励ましたところ

 その生徒は、それから毎時間予習して授業に臨み、

 苦手なジャンルを繰り返し演習して、みるみる成績を伸ばしてきたそうです。

  その先生曰く「6月模試では、学年一の伸びでした。」


 自分の人生を決める大きな分岐点となると考えると、やはり不安が先に立ちます。

 「自分の将来を担保してほしい」という思いも出てくるでしょう。

 しかし、将来を担保された人生はどこにもないのです。


 この道に進みたい、

 この大学のこの教授の下で学びたい、

 という意志を、ぶれさせずに持ち続け

 努力し続けるしかありません。

 

 受験システムは、

 単に大学の入学を決めるというだけでなく、

 自分の人生を生ききる「覚悟」を育てる 良いハードルになっているようにも思います。

 

 「先の見えない不安を乗り越えるということ」

 これこそが、この受験の学びの中での一番大きな収穫物なのかもしれません。

ハート 生徒の姿を見れば

今月半ばまで、教育実習生が来ていました。
その中の一人から心温まる手紙が届きました。

「 私が高校生だったころに感じていたよりもさらに先生方は生徒一人ひとりを愛し、真摯に
 向き合っておられたことにも、おそばで実習させていただいてあらためて気づき、感動いた
 しました。
  この、先生が一丸となって生徒のことを考えておられる姿を拝見できたことは本当に貴重
 な体験であったと今でも感じています。また、その気持ちにこたえるように生徒たちも日々
 の生活や学習、部活動等一生懸命に過ごしており、私もすごく元気づけられました。
  実習初日の校長先生の訓話でもありましたように、どれだけ教師生活は忙しくとも生徒の
 姿を見ればつらさも忘れてしまう、というお言葉の意味が分かったような気がしました。
  今回の実習を終えて、より一層教職の奥深さを感じ、将来、教師として生徒たちの未来を
 見届けたいという思いが強くなりました。
  来月には教員採用試験を控えておりますが、今回お世話になった先生方の背中を追いかけ
 て試験勉強に励むとともに、残りの大学生活で様々な経験を積みながら日々自分自身の人間
 性も育んでいきたい、と考えております。」

私たちの仕事は、子どもたちに、将来の夢を叶える種を播くことなのかもしれません。
それは、大学生に育ちあがった子どもたちへも同じです。
僅か3週間の出会いでしたが、先生と子どもたちとの息遣いは、彼ら彼女らの中に宿り、
大きな推進の力となりつつあるようです。

教師に限らずどの仕事も、やりがいはあります。楽しさも苦しさもあります。
しかし大事なのは、
投げ出さないこと、かもしれません。

職人さんの道具は、
使い込むにつれて手になじむように変形していきます。
そして、職人さん自らの手も 変形していきます。
私は、その変形した道具や手を、
たとえようもなく〈美しい〉と感じてしまうのです。

長い間、繰り返し、繰り返し、取り組むことで形を変える。
形をかえるだけの時間の蓄積が、そこにある。
「続けたら天職になった」
が真実なのではないか、と、近頃、漠然と思います。

「続けること」です。

ハート 一笑懸命 ~楽しんだもの勝ち!!~

 各地区の天草高校同窓会支部から「同窓会報」が送られてきています。中京支部も関西支部も、母校・天草高校を想う言葉が溢れ、頁をめくりながら、私も、天草高校で青春を送ることができて幸せだったと実感しています。

 今、天草高校には、多くの教育実習生が来て生徒たちとの学びの時間を過ごしています。「天草高校で教育実習できて本当に良かったと思っています。絶対、教員になりたい、再び母校の教壇に立ちたいと思いが強くなりました。来月の教員採用試験は、死ぬ気で頑張ります。」と、今朝、熱く語ってくれた実習生がいます。そんな実習生たちの言葉に頷きながら、教員というのは、人と関わりながら、その子どもの人生の節目に立ち会うことができる、何て素敵な職業なんだろうと、いまさらながらに感じ入っている自分がいます。

 高校時代の友人から電話をもらいました。
「癌にかかり、いま、久留米大学附属病院で治療を続けている。馬場君が天高の校長になったと聞いたから、僅かばかりだけれど、後輩たちのために役立ててほしいから寄附をしたい。今度、学校に来るよ」訥々とした語り口は、高校時代の、元気が走り回っているような面影が全く感じられません。高校時代は、廊下の向こうの端で話していても話が筒抜けでやかましいぐらいだったのに。電話越しに「心配している」と告げると、「治療は順調に進んでいるから大丈夫だよ」とのこと。「久しぶりの里帰りだね。寄附とかじゃなくて、ついでに学校に遊びに来たぐらいの気分でいいよ」と言うと、「HPで写真見たけれど、髪も薄くなったし、ずいぶん太ったねー」と、昔の明るい笑い声が戻ってきました。

 6月19日(日)は、天草高校倉岳校で恒例の海の運動会マリンフェスタが開催されます。今年のテーマは「一笑懸命 ~楽しんだもの勝ち!!~」。この春入学した1年生が考案してくれたものですが、子どもたちの柔軟で大らかな発想力に脱帽です。コロナへの不安や、それぞれがいろいろ背負わされている重たいものを、一度、ちょっとだけ下して、周りを見渡しながら笑って(笑んで)みましょうか。 人生は楽しんだもの勝ちです!!

美術・図工 ふるさとを思う

ちょっと前の話です。3月に行われた十万山スケッチ大会で、雨の中、天高生たちが、地域の小学生のスケッチ大会の補助に動いてくれました。
その後、主催者のご老人が、高校生にお礼を言いたいと、先日、学校に訪ねてきてくださいました。
「10年以上前から、天草の人たちに、ふるさとの宝として十万山からの見た風景を残してあげたい、と関東に住む天草出身の方々が有志で十万山公園の整備活動を行ってきました。その後、少しずつ地元の人たちにもその活動の輪が拡がり、みんなで雑木の伐採を行い、本渡市街を一望できるようにしました。そして、河津桜を植え、ベンチや歩道の整備と様々に動いてきました。数年前からは、桜の名所だった十万山で、また、薄ピンクの桜が咲き誇るようになりました。この風景を、子どもたちの瞳に焼き付けたいと、天草市と共同で、小学生スケッチ大会を始めました。天高生を始め、地域の高校生たちがボランティアスタッフとして協力してくれるおかげで、ここまで繋がってきました。今年も、コロナ禍でスケッチ大会の開催も危ぶまれていましたが、天草市も開催に舵を切ってくれ、そして、天草高校生たちがボランティアスタッフとして加わってくれて、こんなに心温まる大会になったのは、初めてでした。本当にありがとう。」と、深々と頭を下げて行かれました。

遙か遠く、東京に住む人たちの、ふるさとを思う心が、このように繋がり、ふるさとづくりが形をなしていく、素晴らしいなと思います。天高生たちにも、かけがえのない宝物〈ふるさと〉を創るために学び、行動する人であってほしいと思います。

目を世界に転じると、そのふるさとを力で奪われようとしている人たちがいます。
テレビの画面を通じて見えてくる不安な瞳を見る度に心が痛みます。私は当事者ではありませんし、入ってくる情報はバイアスがかかっていますから、軽々にどちらが良いかと悪いとか論じるのは避けなければなりません。しかし、自らの主張を通すために、人々の生活や命を潰えさせるという手段を取ることは、決してあってはなりません。そして、力で奪うふるさとは、果たして、自ら誇りとすることができるのか、はなはだ疑問です。

「答えの出ない問いを、生涯かけて考え抜き、よりよい答えを導き出そうとすること」
これこそが、人類の智慧であると思います。

私は、いつも皆さんたちに問い続けています。「何のために 学ぶのか?」と。
今、世界で起きていることを、見ながら、切実に思います。
一人でも多くの人が笑顔で幸せに暮らせるようにするために、そして自らのふるさとを誇らしく語ることができるようにするために、私たちは学び、そして行動しなければならないのです。

地球市民として、未来の扉を開くのは、あなたたちです。

鉛筆 あの頃 先生がいた 1

5月8日(日)は、母の日でした。
私にも、コロナでなかなか会いに行けませんが90歳を過ぎた老母がいます。80を過ぎたあたりから気持ちと記憶がどんどん若返りはじめ、今は昭和の十代の乙女に戻っています。当然、昭和の後半に生まれた私は、まったく見知らぬ未来からの訪問者なので、いつも訝しがられるのですが、「ととさんと火鉢」の話をするといつも笑ってくれます。本当に可愛らしい乙女です。

私が小さいころ、母は「大きゅうなったら、お医者さんになっとだろ」と言っていました。
しかし、私は人一倍血を見るのが苦手だったので、嫌でした。むしろ家の近所にいた大工の棟梁がトンテンカン家を建てていくのが見事で憧れていました。職人さんが、玄能でカンナの頭を叩き、しゅっとカンナを引くと、とてもいい香りのする薄い木の膜が刃の隙間から飛び出てきました。雨降りの日などは次の日の作業用の柱に墨付けし、鋸を引いたり、ノミでホゾを切ったり、カンナを掛けたり、職人さんが動くたびにきれいな形が仕上がっていくのです。一日中見ていても全く飽きませんでした。

私は、手先が不器用で、肥後守でしょっちゅう手を切っていましたので、大工の夢は諦めましたが、近所の友人や先輩たちは何人も長崎や大阪に出て修行し、棟梁への道を目指しました。そして、親の住む家を自分の組の職人さんたちと新しく建て直すのです。田舎の古びた住居が、私が帰省するたびにぽつんぽつんとモダンな建物に建て替わっていきました。私の家に上る小川の河原でいつもメジロの水浴びをさせていたSさんの家は、土間に縁側と小上がりの付いた一間きりの小ぶりな家でした。私が生まれたとき、病弱な母の乳が出なかったために、もらい乳に訪れ、よく縁側で寝かせてもらっていた家でした。その家もいつの間にか瀟洒な2階建てに建て変わっていました。メジロ籠は、縁側のあった場所に新たに作られた玄関の横壁に変わらずに掛けてあり、深緑色のメジロが竹ひごの間をひっきりなしに跳び回っていました。

小学校6年から中学校にかけて、私は、たびたび下血をしては意識を失って倒れ、入退院を繰り返しました。
同室の入院患者には、炭鉱の粉塵で片肺を取った人や、運送会社の社長でいつも大きな注射を打たれている人が居ました。しかし、皆陽気で、病室とは思えないほど笑い声が絶えませんでした。私も毎日真っ黒い鉄分造血剤を注射され、することもなく本を読み続けました。中1の夏だったでしょうか、外国航路のタンカーに乗船していた父が吐血し、療養のために天草に戻ってきました。ほとんど口をきくこともなく眠ったままの父のベッドの横に、母はいつも団扇を持って座り、父の額に浮かんだ汗をタオルで拭っていました。廊下から覗き込んで、「死ぬと?」私が発した言葉に、一瞬目を見開いた母は、無言で首を振りました。いつの間にか生きることの意味や死について考えるようになりました。

花丸 天高生 最高!

 5月8日(日)爽やかすぎるほどの晴天のもと、第77回天草高校体育大会が開催されました。生徒たちの気魄のこもった演技、土ぼこりを巻き上げて疾走する姿、張り詰めた緊張感の中で展開された応援の人文字、そして全体を締めた応援演舞、あの「気」が満ち満ちた空気はめったに味わえるものではなりません。本当に圧倒されました。

 コロナの感染防止の観点から、ご来場については3年保護者のみとし、声援も禁止とさせていただいたのですが、保護者の皆さん方からの地鳴りのような拍手に、生徒たちは背中を押され、持てる力を全て出し切ったようです。

 当日ご来場いただけなかった皆様方には、ホームページに当日の様子が続々とアップされる予定です。ご期待ください。

お祝い 麻布大学 増井光子賞 受賞!

麻布大学から嬉しいお知らせが届きました。

2015年に麻布大学獣医学部獣医学科に入学し,今春卒業した天草高校卒の黒木翔君が
令和3年度麻布大学「増井光子賞」を受賞したそうです。


「増井光子賞」とは,故・増井光子博士のご遺族から寄贈されたご遺志を活かす形で設立された賞で,専門領域において各賞の受賞など学会等で高く評価され,今後の可能性が期待されるもの又は社会活動等で顕著な功績を上げたものに寄贈される賞だそうです。

故・増井光子博士は,麻布獣医科大学(現・麻布大学)獣医学部獣医学科卒業の獣医師で,1985年(昭和60年)日本で初めてパンダの人工繁殖に成功した方として知られています。1990年(平成2年)女性初の多摩動物公園長に就任。2年後の1992年には,女性初の上野動物公園長に就任されるなど,日本の女性獣医師の草分けです。1999年(平成11年)にはよこはま動物園ズーラシア初代園長に就任,兵庫県立コウノトリの郷公園の初代園長も兼務されました。2010年(平成22年)イギリスでの馬術大会の競技中に落馬し,搬送先のケンブリッジ大学病院でお亡くなりになっています。享年73でした。


黒木 翔 君は

 第8回日本獣医病理学専門家協会学術集成 大会長賞
 日本養豚開業獣医師会会報32号 2020年度日本養豚開業獣医師協会学生アワード
の受賞が認められ,増井光子賞の受賞となったようです。

天高生は,
在校生も,卒業生もそれぞれのステージで研究に邁進し,各界に認められています。
ここ天草で揺籃の時を過ごし,学んだ内容を極めながら社会に貢献する若者が育ちつつあることを,
本当に誇らしく感じています。


詳細は麻布大学のホームページからご覧ください。
 麻布大学増井光子賞 https://www.azabu-u.ac.jp/topics/2021/0629_35272.html
 表彰式動画 https://www.azabu-u.ac.jp/movie_archives/2021/0630_35327.html

音楽 音楽と自然大好き!

新型コロナの影響で来日が遅れていたALTの先生が今日から着任です。
ウイリアム・ブラックストーン先生。音楽と自然が大好きな陽気な先生です。
天草の豊かな自然に育まれた本校生と波長が合うような予感がしています。

まん延防止重点措置も9月いっぱいで解除の方向性が見えてきました。
10月からは,部活動も含めて平常通りの学校生活が取り戻せそうです。
やっと 吹奏楽の音や部活動の生徒たちの歓声が響き合う学校生活の復活です。

ブラックストーン先生には準備が整い次第,「コミュニケーション英語」の授業を担当してもらうことになりますが,生徒諸君には,授業だけでなく放課後等も,ブラックストーン先生を囲んで会話を楽しみながら,世界の様々な価値観を知り,多文化共生に向けての力強い第一歩を踏み出してくれることを願っています。

ハート 野の花を

天草の名宿「五足の靴」オーナーの山崎博文さんが,以前,

「僕の一番の贅沢は,切り花を飾ること。
 野の花を一輪手折ってきて,花瓶に指し,毎日水をやりながら会話するのが
 一番の至福の時だね」

と話してくれたことがあります。もう何十年も前の話です。

4月から校長室には何かと季節の花があふれ,毎日至福を感じていましたが,
9月に入って,蘭も終わってしまいました。
そこで家にあった橋本不二子さんの絵ハガキを机に飾っていたら,
事務室の宮﨑先生が
「しばらく花を活けていなかったので,うまくできませんでした」と言いながら,
素敵な野の花をテーブルに活けてくださいました。
町山口川から吹き込む柔らかな風にオレンジの花が揺れています。

キラキラ 学校は 幸せをつくっている

先週受けた,小林嘉男さん((株)ディスコ経理部長)の講義の中に
素敵な言葉がありました。

  学校は 幸せをつくっている
  生徒の幸せ
  生徒の保護者の幸せ
  地域の方々の幸せ
  学校の同窓生の幸せ
  学校に関わる全ての人の幸せ

  だから
  校長は すべてを幸せにできなければならない
  「幸せの専門家」じゃないといけない
 
  どうやったら
  学校に関わるすべての人が幸せになれるか
  校長は死ぬほど考えなければならない
  幸せについて もっともっと 勉強しなければならない

  それが 校長の仕事
 
講義を聞きながらメモった中身なので
ひょっとしたら間違っているかもしれませんが
「どうやったら 学校に関わるすべての人が幸せになれるか
 校長は死ぬほど考えなければならない」
重い しかし 素敵なメッセージです。

幸せって何でしょう?
生徒の幸せ
保護者の幸せ
地域の人々の幸せ
同窓会の方々の幸せ
そして学校を取り巻く方々すべての人の幸せ・・・

イソヒヨドリのつがいが 鈍色の空に澄んだ声を響かせています。
少なくとも 一人一人を笑顔にできたら すべての人の幸せに近づいているのでしょう。

友人の詩人がこう言いました。
「私は
 誰かの心に刺さっている棘(とげ)を
 一本ずつ抜くために
 こうやって詩を詠んでいる」 と。

みんなを笑顔にできる方法――職員・生徒・保護者の方々みなさんで
一緒に しっかり 考え続けていきたいと思います。

ハート 必勝 アルコール

熊本県内の新型コロナは ピークは過ぎたようですが,
10代以下の感染は,依然高い頻度で続いているようです。
県内の小中高では,短縮授業や部活動の休止等の対応が,月末まで更に延長され,
学校活動や行事計画等にも変更が相次いでいます。

本校でも,9月10日(金)に予定していた文化祭を17日(金)に延期し,
内容も,各クラスにオンラインで配信する内容と展示部門とに編成し直して,
安全と感染防止に配慮しながら準備を進めているところです。

そんな中,本校PTAから,
進路決定を控えた3年生への激励グッズとして
「必勝 アルコール」が届けられました!!

親御さん方の思いがぎっしり詰まったこのアルコールを
両手にしっかり振りかけて
Virus と 菌 と 邪念 とを払い
残り4カ月 ともにゴールまで駆け抜けていきたいと思います。

鉛筆 ゾーンに入る

先日,校内の進路検討会で,石田教頭先生が職員に話した言葉が耳に残りました。

「ゾーンに入ると すべての感覚が研ぎ澄まされて,スローモーションを見ているような状態になるそうです。
 部活動でその経験を持つ生徒もいると思います。
 勉強でゾーンに入ったら,3倍のスピードで学ぶことができます。
 ということは,3年生は,残り6か月で18か月分の学びができるということです。
 是非,集中度をUPさせて,時間を引き延ばしてください。」

私は以前,熊本近代文学館に勤務していました。
年間3回の企画展示と,資料調査・収集・研究という膨大な作業を1人でやらなければなりません。仕事は山積みで,休日も書庫に籠る毎日です。しかし,作家さんたちの隠された一面を垣間見ることができて,とても楽しい日々でした。

その熊本近代文学館勤務で一番胃が痛かったのが,展示会のオープンでした。
まだまだ,読まなければならない資料は山積みなのに,展示会初日は確実に迫ってきます。もしオープンできなかったら,と思うと夜も眠れません。

しかし「やるしか無い」と腹を括ると,不思議なことに,展示原稿締め切り日が迫るにつれてどんどん集中力が増して,普段なら読むのに何日もかかる資料が数時間で読めてしまうし,検討しなければいけない事柄が,ページから,立体写真のように文字が浮き上がってくるのです。普段何気なく聞き流していた同僚の言葉も,VTRが巻き戻されるかのように映像として立ち上がり,別角度からの検討資料が見つかるということもよくありました。そして,一気に原稿を書き上げ,気づくと朝だった,ということもしばしばでした。

学びの世界にも,ゾーンは,確実にあります。
私の場合は,ウルトラマンのように,追い込まれなければゾーンに入ることはできませんでしたが,誰でもゾーンに入ることはできます。

石田教頭先生は言います。
「『集中力がない』と生徒たちは言いますが,
 模試等の振り返りで渡された百ページを超える解説書を,
 それこそ1日半で読み込み,チェックできているんです。
 普段これだけの厚さのレポートを渡されて,読みなさいと言われたら,何日かかりますか?
 『集中力』は,本人が気づいていないだけで,みんなが持っている能力なんです。」

2学期のテーマは「自分の良さや可能性を自ら認識して,本質を学び続ける」です。

総合型選抜,就職試験・公務員試験はいよいよ本番です。
共通テストまでは,あと4カ月となりました。みんな,腹を括って頑張れー!!

 

学校 心には何人かの自分がいます

9月1日(水)
定時制の2学期始業式で,松下宏則副校長が行った講話はとても素敵なものでしたので、紹介させてください。


 私はなまけ者で大ざっぱ,いい加減な性格ですが,周りの人からは,きっちりしていると言われます。私のことを「すぐ怒る」と言う人もいれば,いつもニコニコしているという人もいます。

 高校時代の私の部屋(弟と一緒でしたが…)は散らかり放題でしたが,ときどき整理整頓の神様が降りてきて,朝から夜中まで掃除することがありました。(弟には迷惑な話。)

 毎日決めた時間勉強しないとイライラするのに,部活動は手抜き。感情のブレが大きくて,自分勝手な行動をするので,家族や周りの人には迷惑をかけました。

 自分の中の「きっちり」さんが出てきて,友だちに強い言葉を言ってケンカに。「なまけ者」さんがひょっこり出てきて,部活動(チーム競技)に迷惑をかけたり,「イライラ」さんが出すぎて,モノを投げつけたり。なかなか自分をコントロールできず,すごくきつかった毎日を思い出します。

 でも,怒られてへこんだり,ケンカして一人ぼっちになったり,仲直りして明るい気分になったり…,いろいろな経験をとおして,「きっちり」さんも「なまけ者」さんも「イライラ」さんも,どれも自分だって思えたら,仲良く付き合うことができるようになりました。

 大人になり,仕事の時は「きっちり」さんと「ニコニコ」さんに頑張ってもらっていますが,やっぱり毎日だと疲れます。ただ,それぞれ役割分担がはっきりしてきて,仕事を一所懸命やったら,だらーっと休むし,勉強を頑張ったら,趣味を楽しんで心と体のバランスをとっています。

 心には何人かの自分がいます。特に思春期では,どれが本当の自分かわからなくなる時があります。学校は同じ世代の人が多いので,うれしいことや悩みを共感したり,ケンカしたり,毎日いろいろなことが起こります。そんな毎日を積み重ねながら,心の中にいる何人かの自分と仲良くなってください。自分を好きになると,周りの人のことももっと好きになります。

 2学期は,自分と,ここで出会った仲間のことを大切にしながら,健康に過ごしてくださいね。水前寺清子さん(知っていますか?)の歌の歌詞「一日一歩,三日で三歩,三歩進んで二歩下がる」…
 今日は,昨日よりちょっぴり成長できますように。

 

学校 全日制 2学期始業式あいさつ 「五感で学べ」「イメージせよ」

 皆さん 今年の夏休みは,どうでしたか?
 1学期終わりに 各学年「勝負の夏」と発破をかけられていたと思います。例年と比べて,一歩先へ進む取組ができたでしょうか?
 
 この夏,天草市が行った講演会に スタディサプリAI研究所所長で、東京学芸大学大学院准教授 小宮山利恵子さんの「変化の激しい時代だからこそ地方においてできること」という講演がありました。
 今から24年後の2045年,シンギュラリティ(AIやコンピュータが、大部分の人間の仕事に取って代わる転換点)を迎えると予測されているという説を引きながら,コンピュータが追いつけない世界を創り出していくためには,「共感する力」と「イメージする力」を身に付けなければならない。その力を養うための「教育資源」は,地方に,天草にこそある,という講話でした。

 シンギュラリティと大げさに言わなくとも,車の自動運転や自動精算システムはどんどん進んでいますし,NetflixやAmazon prime等の動画配信サービスに押されて,TSUTAYAもCDやDVDレンタルから撤退しそうな勢いです。皆さんが壮年期を迎える頃には,本当に今ある仕事の半分はなくなってしまっているのかもしれません。
 
 私には,この30年間 ずっと忘れることができない詩のフレーズがあります。
 「あさはこわれやすいがらすだから 東京へゆくな ふるさとを創れ」
 谷川雁という水俣出身の詩人が読んだ「東京へゆくな」という詩の一節です。
 「朝」=「壊れやすいガラス」という等式を示され,それに一点の疑いも抱くことができない以上,それに続く「東京へゆくな」「ふるさとを創れ」という二つのメッセージにも一点の疑いも抱くことはできません。このメッセージには100%頷いてしまうのです。
 事実,1950年代このメッセージを受け止めた多くの若者が,東京に行くのをやめ,自らのふるさとを「根拠地」として活動を始めました。この言葉は、当時の多くの若い日本人の心を揺り動かし,一時代を創り出す言葉となったのです。
 
 全く脈絡のない言葉から一つの象徴的なイメージを創り上げ,人々の心を貫き通すことができるのは,人間だけです。どんなに膨大な知識データを蓄積しようとも,最先端の科学データを駆使しようとも,”規則に基づいたデータ処理”という大前提がある以上,現在のスーパーコンピュータ,量子コンピュータであっても,成しえません。
 そして,人間の中にあっても,このシンボリックなイメージ作りは,五感を使ったリアルな学びで感覚を研ぎ澄ませた人々の中からしか出てきません。これこそが,「地方にこそ人間教育のための教育資源がある」といった小宮山さんの主張の根幹でしょう。
 
 そこで,皆さんに望むことは,「五感で学べ」「イメージせよ」ということです。
 目の前の一つの事柄には,その出来事が起きた背景があります。「朝」を「壊れやすいガラス」と言われて,抵抗できなくなくなってしまうのは,我々の持つ「朝」の光の中に,壊れやすいキラキラとした硬質な光を感じているからです。その本質を突かれて,無条件に納得してしまうのです。
 日々「この背景は何だろうか?」とイメージし,仲間たちと「この本質は何だろうか?」と討議を繰り返すことで,全体を覆うイメージを構築することができます。
 本当に真実を捉えたイメージならば,世界の片隅から発信されたとしても,それは瞬く間に世界を覆いつくすことができるでしょう。その発信を許容する情報ネットワークは,いま世界中に張り巡らされているのです。
 
 2学期の開始を前に,科学部が シンガポール・ベトナム・タイ・台湾等を含めた,国際大会「Global link Online2021 General部門」で,本年度の最優秀賞を受賞したというニュースが飛び込んできました。
 濱昂輝さん,小松奈桜さん,田中翔大さん,濵﨑鴻さんの4人です。
 研究発表タイトルは”Toward a more accessible global warming countermeasure to protect the future by combining sea-level prediction and eelgrass planting.”(未来を守るよりアクセス可能な地球温暖化対策としての海面予測とアマモの移植研究)。
 地球温暖化を防ぐために,天草に住む我々はどうしたら良いのか,何ができるのか、という一つ突き抜けた思いが,言葉や文化習慣を超えて,集まった他の国の人々の心も動かしたようです。「日々学んだ中身で、何ができるのかが大事だ」という,これから先の新しい教育観を自ら達成してくれた天草高校生のもつポテンシャルの高さに敬服しきりです。おめでとう。更に世界に打って出る人が続いてほしいと思っています。
 
 最後に,皆さんにお願いです。
 いよいよ,3年生にとっては,本当に勝負の2学期となります。2年生にとっては,天高の屋台骨を背負ってもらうスタートとなります。1年生にとっては,天高生として,その才能を開かせ始める時期です。
 そこで,新型コロナウイルス感染拡大防止のために,もう一度,マスクをきちんと付け続けること,食事や歯磨きでマスクを外す際には喋らないことを徹底して,安心して学べる環境づくりに協力してください。
 2学期は,文化祭も控えています。一人ひとりが持てる力を存分に発揮して,とことん成長する秋にしていきましょう。

 

学校 全日制 1学期終業式あいさつ「社会と関わるということ,未来を創るということ」

社会と関わるということ,未来を創るということ

 

 今年も 新型コロナウイルスに振り回された1学期でしたが,一人一人が自覚して,様々な工夫を凝らしながら,「先の見通せない中でも 今 自分たちにできる最大限の努力」を積み重ねてくれています。本当にありがとう。

 先日,天草の地域の方々に,「天草高校に期待すること」というテーマで,アンケート調査を行いました。寄せられた意見を集約すると,二つの柱が見えてきました。
 「天草地域唯一の進学校として,上位学校への進学率向上」
 「将来にわたり,地域を担い,地域を活性化できる人材の育成」
 どちらも,長年天草高校を支え続けてくださっている方々の,最大公約数の思いです。

 そこで,敢えて私は 皆さんに「何のために 学ぶのか?」と 問い直したいと思います。
 毎日毎日 難しい勉強を いったいなんのために 学んでいるのでしょう?
 志望校に通るため? 難関大学に通るため? 親を喜ばせるため? いいえ違います。
 答は 単純です。 「未来を創るため」です。
 「世の中の,一人でも多くの人が,笑顔で幸せに暮らせるようにするため」に,私たちは学び,そして働いているのです。
 私たち「大人」は,これまで一生懸命学んで,働いて,皆さんに「未来」を渡せるように努力してきました。しかし,私たちは「過去の住人」です。皆さんの「未来」を全部創り上げることはできません。
 皆さんの「未来」を創るのは「未来の住人」である,あなたたち自身なのです。

 改めて尋ねます。「『未来を創る』ということは あるいは 『地域を活性化する』ということは,大学に入った後じゃないとできない学びなのでしょうか?」
 たくさんの大学や専門学校が,「未来を拓く」ための挑戦を続けています。
 「地域活性化」についても,多くの大学が,例えば熊大や県立大学でも取り組んでいます。これらの学びは,大学に行かないとできないことなのでしょうか?
 いま,天草高校・天草工業高校・天草拓心高校の生徒たちが協働で,本渡中央銀天街を活性化させるための「社会実験」に取り組み始めています。
 天草島内の100名を超える高校生たちが,地域の課題を学び,地域を活性化させるための「起業」の学びを始めています。
 社会と関わるということは,いつだって誰にだって,どこでだってできます。「できる」ということに気づいていないだけです。

 私は,この1学期に,一人の社会人として,熊本市の「6割の街路樹を伐採する」という計画に対し,アクションを起こすべきだと考え,友人たちとこの問題の勉強会を開いてきました。そして,この課題の背景や他所の国での取組や熊本市の活動についても調べ,情報共有してきました。勉強会の数名が,熊日新聞に意見文を書き,ツイッターで事実を広げ,そして,熊本市長に提言書を提出しました。
 私も,熊本市長に
「熊本市の「街路樹再生計画」では,街路樹の維持管理のために,市民の協力も願うという方向性が出されています。そうであるならば,是非,次世代を担う若者も入れて,街路樹再生計画を再考いただけないでしょうか?」と6月10日に手紙を出しました。
 そして,約2週間後の6月26日,熊本市の大西市長は「街路樹再生計画の中断」と「再生計画策定員会」の再開を表明しました。この大英断には深く感謝したい思いです。
 私の手元には,7月7日付で,大西市長から「新たな視点や市民の皆様のご意見を幅広くいただきながら,必要な見直しも行い,景観や街並みの将来の姿や,十年後,五十年後,市民が誇れる街路樹再生を考えてまいります。」というお手紙もいただきました。

 世の中には「先が見通せない」中でも,判断をしなければならない場面がたくさんあります。その時は良かれと思ってやったことが,後でとんでもない間違いだったということもたくさんあります。私たちの行動もひょっとしたら50年後,間違いだったという結論が出されているかもしれません。しかし,そうならないために,常にアンテナを高くし,正確な情報を収集して,様々な人々と意見交換し,自らの取ろうとしている行動の可否判断を行う必要があるのです。ここにこそ,「学ぶ」ということの,本当の意味があります。

 皆さんに渡す「未来」は,私たち大人がしっかり智慧を絞って創っていきます。
 しかし,「未来の天草」を,そして「これからの世界」を創っていくのは,あなたたち以外には居ません。大西市長への手紙の結びに「是非,次世代を担う若者も入れて,街路樹再生計画を再考いただけないでしょうか?」と入れたのも,まさにこの思いからです。

 皆さんの「未来」を創るのは「未来の住人」である,あなたたち自身なのです。
 社会と関わること,未来を創ることは,今この瞬間からも始められます。皆さん,どうか,先の見えないことを恐れず,前を向いて,今この瞬間にできることはないかと考え,行動し学び続けてください。そして,その大きな志を持って上級学校進学・公務員を目指してください。そのことが必ずやあなたの道を拓いていくことになると信じています。

 将来の目標のために,新たな決意を抱いて,有意義な夏休みにしてください。

学校 定時制 1学期終業式あいさつ「ことばの 一つひとつを 大切にするということ」

ことばの 一つひとつを 大切にするということ

 

 今年も 新型コロナウイルスに振り回された1学期でした。しかし,一人一人が自覚して学校生活に取り組み,先生方も様々な工夫を凝らして,日々の学びと,学校行事を進めてくださっています。本当にありがとう。

 先日,天草高校と交流している韓国の土坪高校の生徒 キム ガヒョン さんから 素敵な手紙をもらいました。
中には,「私の大好きな詩を 一生懸命 日本語に訳してみました。 読んでみてください」という手紙とともに 次のような詩が入っていました。

    「揺れながら咲く花」 ト ジョンファン

  ぐらつかずに咲く花が どこに あるだろうか
  この世の どんなに美しい花たちも みな 揺れながら咲いたのだ
  揺らぎながら 茎をまっすぐに 伸ばしたのだ
  揺らがずに行く愛が どこに あるだろうか

  濡れずに咲く花が どこにあるだろうか
  この世の どんなに輝く花たちも みな 雨に打たれて咲いたのだ
  風と雨に濡れながら 自らの花びらを温かく咲かすのだ
  濡れないでいく人生が どこに あるだろうか

 この詩は 韓国ドラマ「学校2013」の中でも,お互いの気持ちがバラバラになりそうな中で,担任の先生が クラスの子どもたちに向けて朗読する場面でも使われているということです。人生の応援歌みたいでとても素敵な詩ですね。


 私の好きな詩集に,『世界はもっと美しくなる』(寮美千子編 ロクリン社 2016年)という本があります。その中の詩をいくつか紹介します。

    「弱い自分・デキない自分」

  何をしても 失敗ばかりな自分
  どんなに努力しても 空回りするばかり
  どんなに集中しても たいした結果を出せず
  頭ではわかっているのに ミスを繰り返す自分
  注意されると 反抗的な態度をとってしまう自分
  感情が 顔や態度に すぐに出てしまう自分
  短気でどうしようもない自分
  がんばって口に出さずに タメた結果
  自分を責めて モノにあたってしまう自分
  いつまでたっても 成長しない自分
  そんな自分にウンザリだし 嫌いで仕方ない

  「ガキ」みたいに なれたら
  「ガキ」みたいに いまの生活を楽しめたら
  一体どんだけ 居心地がいいだろうか

  弱音を吐きまくる自分が 情けない
  強い自分・デキる自分に なりたい


    「うれしかったこと」

  ぼくは スーパーで4年 仕事をしていました
  1年は青果部で あとの3年は鮮魚です
  最初はすごく怒られ もうやめようと思ったときもありました
  でも あきらめずに一生懸命働きました
  勤めて2年目のときに 店長から呼び出しがありました
  「社員をしないか」といわれました
  とても びっくりしました
  そして ぼくは社員になったのです
  このことが 人生で一番うれしかったことです

他にも私の好きな詩を紹介しますね。次は私の一番好きな詩です。

    「3時のホットケーキ」

  小学校3年生のとき 学校から帰ってくると
  おやつは いつも ホットケーキ
  決まって お皿の上に3枚
  友だちのところにいくときも
  ラップに包んで持っていくのが 当たり前だった

  小学校4年生のとき
  お菓子屋さんでおやつを買って食べている子たちに
  ホットケーキをバカにされた
  それが すごく悔しくて恥ずかしくて
  次の日 お皿の上のホットケーキには手をつけず
  友だちのところへ行った

  そしたら次の日 テーブルの上に ホットケーキはなかった
  次の日も その次の日も
  おやつのない日々に ガマンできなくなったぼくが
  「おやつ代 ちょうだい」といったら すごく怒られた
  「みんなと同じように お菓子屋さんでおやつを買って
   みんなといっしょに 食べたいんだよ」
  そう訴えると すごく悲しそうな顔をされた
  なんで そんな顔をするのか ぼくにはわからなかった

  いまになって わかる
  まだ若くて 急にぼくといっしょに暮らすことになった あなたは
  どう接したらいいかわからなくて 一生懸命考えて
  ホットケーキを焼いてくれていたんだね

  いま 義母のことを「オカン」と呼べるようになった
  いろんなことがあったけど 育ててくれてありがとう
  あのホットケーキ もう一度 食べたいな


 この詩集は,誰が書いたのか? イニシャルがところどころ記しているだけです。
 なぜなら 奈良少年刑務所に入所していた少年たちが書いた詩だからです。
 この少年刑務所で詩を教えることになった 詩人の 寮美千子(りょう みちこ)さんは,最初とても躊躇したと記しています。しかし
 「彼らはみな,加害者になる前に,被害者であったような子たちなんです。極度の貧困のなか,親に育児放棄や虐待をされてきた子。発達障害をかかえているために,学校でひどいいじめを受けてきた子。厳しすぎる親から,拷問のようなしつけをされてきた子。親の過度の期待を一身に受けて,頑張りすぎて心が壊れてしまった子。心に深い傷を持たない子は,一人もいません。その傷を癒せなかった子たちが,事件を起こして,ここに来ているんです。本当は,みんなやさしい,傷つきやすい心を持った子たちなんです。」と刑務官の方に話をされて,通い始めます。
 そして,詩の教室を開く中で,固く閉ざされた心の扉が開かれたとき,溢れ出てくるのは「やさしさ」でした,と語ります。


 私にとっても,この詩集の子どもたちの言葉は宝物です。

 しかし,みんなの心の扉が開かれたときに出てくる言葉は,もっともっと宝物です。
 天定(あまてい)の先生方は,毎日毎日みんなの言葉の奥底にある思いを掬えないかなと思って,何度も何度も反芻し,イメージし,考え続けています。
 同じように,彼の 彼女の あの言葉の後ろには どんな思いがあったのかな? どんな背景があったのかな? とイメージしてみると お互いの関係性が もっと 広がっていくかもしれません。

 言葉の一つ一つを大事にしながら お互いに育ちあがっていきましょう。

 夏場のキツイ時期に仕事が続く人もいるでしょうが,少しでも心と体のリセットをして,二学期また元気に会いましょう。一学期間 お疲れさまでした。

了解 失敗したら まず。。。

「校長先生 少しよろしいでしょうか」と ある先生が深刻そうな表情で訪ねてきました。

 尋ねてみると,先日,実験教室を出る際,最後のチェックを忘れ,一か所棚の鍵が掛かっていなかったのを,別の先生が見つけて対処してくれたとのこと。
「申し訳ありませんでした」と平謝りです。

 その日は,ギリギリまで翌日の実験の準備を行っていて,気が付くと保育園の迎えの時間。気が焦っていて,点検したつもりだったが,やはりきちんと施錠できていなかった。翌日,同僚から鍵の件を教えられ,やってしまったぁ,と落ち込んでいたとのこと。
 そして,家に戻って,娘に「ママ失敗しちゃった」と話すと,娘から「失敗したら,まずゴメンナサイでしょ。」と言われ,そうだ,校長先生にまだ謝っていないと,また落ち込んでしまって。。。
 目には,うっすらと涙をためています。

 保育園に通う女の子の諭す言葉は,彼女の心の奥を貫いたようです。素敵な親子です。

 我が子を思う母がいて,母に教えられた言葉を素直に口にする娘がいる。
 そして,さりげなく支えてくれる同僚。

 温かなつながりの中で いま 心の触手が伸びつつあります。

お祝い 天草高校の新生徒会役員が選出されました!

 天草高校の新生徒会役員が選出されました!

 天草高校の新生徒会役員選挙には会長候補2名,副会長候補6名が立候補するという大混戦。

 ある若手の先生は,
「2年生は例年に比べおとなしい生徒が多いのかなと思っていたけれど,一人一人しっかり主張を持っていて,
『このメンバーになら天草高校の明日を託せる!』とワクワクしながら演説を聞くことができました」
 と語ってくれました。

 コロナ対策で,テレビ画面を通しての立会演説会となってしまいましたが,その熱は天草高校生徒たち一人一人の胸に届いたようです。

 投票集計も、僅差の判定となり、間違いがないよう繰り返し点検を行って 当選者が確定しました。

 

 今回,生徒会長に当選した杉尾くんの立候補の理由は,
 コロナ禍というこれまでに誰も経験したことのない状況の中で,工夫を凝らし,各学校行事を盛り上げ,成功に導いた先輩の姿に触発されたからでした。

 天高がさらにステップアップできるよう,天草から輩出した多くの優秀な人財との繋ぎ合わせにより,天高ルネッサンスを興そうというものです。杉尾くんは言います。

私が考えた公約は『天草で活躍されている方や,天草出身の有名人と,天高生とを繋ぐ取組を行う』というものです。同じ天草で生まれ育った偉大な先輩方の存在を身近に感じられれば,希望や自信につながります。この取組を通して皆が広い視野を持ち,一人一人が今よりもっと自信と希望をもって学校生活を送れたら,天高全体のステップアップにつながると思います。

 副会長に当選した金子くんは,「生徒が自分の力を主体的に発揮することができる学校にしたい」と考え,立候補に踏み切りました。

皆さんは,〈主体的〉という言葉を,どのように捉えますか? 言われるからやるのではなく,自分からやるという風に捉える方が多いと思います。それは間違っていませんが,私が思う〈主体的〉という言葉の意味は,〈自分が集団を引っ張っていくという意志を持って行動する〉ということです。天高生一人一人が『自分がこの学校,集団を,勉強・部活動で引っ張るんだ』ということを意識して行事などに取り組めば,この学校はもっと活気に満ちたものになると思います。

 もう一人の副会長に当選した山田くんは,「常識を振り返り,礼節ある活気あふれたにぎやかな学校にしたい」と訴えています。

皆さんは,先生方や地域の方々にあいさつするとき,一度立ち止まっていますか? しっかり目を見ていますか? 当たり前のことがおろそかになっているのではないでしょうか? コロナウイルス感染拡大のため,活動が制限されている私たちの一度きりの高校生活を,悔いの残らないよう,生徒全員にとって最高のものとするために全力を尽くします。

 どの思いも,しっかり天高生一人一人の胸に届き それぞれの共感を呼んだのでしょう。


 また惜しくも落選とはなってしまいましたが,天高の将来を考えた,高校生としてのあり方を考えた,大切な意見も多く出されましたので,紹介します。

校則のアップデート
 伝統には引き継ぐ重みがある。時には変化も必要。
 現代も新型コロナによって変革の時を迎えている。伝統の継承と発展を。

生徒会と生徒一人一人を繋ぐ
 これまでリーダーとして皆をまとめる難しさを分かっている。
 何かと孤立しがちな生徒会と皆とを繋ぐ存在になりたい。

全員が自分の目標に向かって努力する学校
 コロナ禍で,毎日友達と会い授業を受け部活ができるという,当たり前の有難さを知った。
 一人一人が,様々な可能性に挑戦できる学校へ。

誰かのために動くことができる生徒会
 先輩方の努力により学校行事が継承できた。誰かのために動く生徒会は魅力的。
 自分が誰かの役に立ちたい。

皆が過ごしやすい雰囲気の学校づくり
 昨年不登校を経験した。担任の先生方が親身に向き合ってサポート。登校できるようになった。
 天高の一人一人を支えていきたい。


 こんなにもたくさんの天高愛を聞きながら,
「創立200周年に向かうこの天高の舵取りを,安心して任すことができる!」と,嬉しくなってきました。

 また,一人一人がこれほどまでに赤裸々な思いを語ることができたのも,天高の仲間に支えられているという実感があるからでしょう。

 天草高校は これからも ますます輝き続けます。声援よろしくお願いいたします。