校長室より

学校 全日制 1学期終業式あいさつ「社会と関わるということ,未来を創るということ」

社会と関わるということ,未来を創るということ

 

 今年も 新型コロナウイルスに振り回された1学期でしたが,一人一人が自覚して,様々な工夫を凝らしながら,「先の見通せない中でも 今 自分たちにできる最大限の努力」を積み重ねてくれています。本当にありがとう。

 先日,天草の地域の方々に,「天草高校に期待すること」というテーマで,アンケート調査を行いました。寄せられた意見を集約すると,二つの柱が見えてきました。
 「天草地域唯一の進学校として,上位学校への進学率向上」
 「将来にわたり,地域を担い,地域を活性化できる人材の育成」
 どちらも,長年天草高校を支え続けてくださっている方々の,最大公約数の思いです。

 そこで,敢えて私は 皆さんに「何のために 学ぶのか?」と 問い直したいと思います。
 毎日毎日 難しい勉強を いったいなんのために 学んでいるのでしょう?
 志望校に通るため? 難関大学に通るため? 親を喜ばせるため? いいえ違います。
 答は 単純です。 「未来を創るため」です。
 「世の中の,一人でも多くの人が,笑顔で幸せに暮らせるようにするため」に,私たちは学び,そして働いているのです。
 私たち「大人」は,これまで一生懸命学んで,働いて,皆さんに「未来」を渡せるように努力してきました。しかし,私たちは「過去の住人」です。皆さんの「未来」を全部創り上げることはできません。
 皆さんの「未来」を創るのは「未来の住人」である,あなたたち自身なのです。

 改めて尋ねます。「『未来を創る』ということは あるいは 『地域を活性化する』ということは,大学に入った後じゃないとできない学びなのでしょうか?」
 たくさんの大学や専門学校が,「未来を拓く」ための挑戦を続けています。
 「地域活性化」についても,多くの大学が,例えば熊大や県立大学でも取り組んでいます。これらの学びは,大学に行かないとできないことなのでしょうか?
 いま,天草高校・天草工業高校・天草拓心高校の生徒たちが協働で,本渡中央銀天街を活性化させるための「社会実験」に取り組み始めています。
 天草島内の100名を超える高校生たちが,地域の課題を学び,地域を活性化させるための「起業」の学びを始めています。
 社会と関わるということは,いつだって誰にだって,どこでだってできます。「できる」ということに気づいていないだけです。

 私は,この1学期に,一人の社会人として,熊本市の「6割の街路樹を伐採する」という計画に対し,アクションを起こすべきだと考え,友人たちとこの問題の勉強会を開いてきました。そして,この課題の背景や他所の国での取組や熊本市の活動についても調べ,情報共有してきました。勉強会の数名が,熊日新聞に意見文を書き,ツイッターで事実を広げ,そして,熊本市長に提言書を提出しました。
 私も,熊本市長に
「熊本市の「街路樹再生計画」では,街路樹の維持管理のために,市民の協力も願うという方向性が出されています。そうであるならば,是非,次世代を担う若者も入れて,街路樹再生計画を再考いただけないでしょうか?」と6月10日に手紙を出しました。
 そして,約2週間後の6月26日,熊本市の大西市長は「街路樹再生計画の中断」と「再生計画策定員会」の再開を表明しました。この大英断には深く感謝したい思いです。
 私の手元には,7月7日付で,大西市長から「新たな視点や市民の皆様のご意見を幅広くいただきながら,必要な見直しも行い,景観や街並みの将来の姿や,十年後,五十年後,市民が誇れる街路樹再生を考えてまいります。」というお手紙もいただきました。

 世の中には「先が見通せない」中でも,判断をしなければならない場面がたくさんあります。その時は良かれと思ってやったことが,後でとんでもない間違いだったということもたくさんあります。私たちの行動もひょっとしたら50年後,間違いだったという結論が出されているかもしれません。しかし,そうならないために,常にアンテナを高くし,正確な情報を収集して,様々な人々と意見交換し,自らの取ろうとしている行動の可否判断を行う必要があるのです。ここにこそ,「学ぶ」ということの,本当の意味があります。

 皆さんに渡す「未来」は,私たち大人がしっかり智慧を絞って創っていきます。
 しかし,「未来の天草」を,そして「これからの世界」を創っていくのは,あなたたち以外には居ません。大西市長への手紙の結びに「是非,次世代を担う若者も入れて,街路樹再生計画を再考いただけないでしょうか?」と入れたのも,まさにこの思いからです。

 皆さんの「未来」を創るのは「未来の住人」である,あなたたち自身なのです。
 社会と関わること,未来を創ることは,今この瞬間からも始められます。皆さん,どうか,先の見えないことを恐れず,前を向いて,今この瞬間にできることはないかと考え,行動し学び続けてください。そして,その大きな志を持って上級学校進学・公務員を目指してください。そのことが必ずやあなたの道を拓いていくことになると信じています。

 将来の目標のために,新たな決意を抱いて,有意義な夏休みにしてください。