校長室より

美術・図工 ふるさとを思う

ちょっと前の話です。3月に行われた十万山スケッチ大会で、雨の中、天高生たちが、地域の小学生のスケッチ大会の補助に動いてくれました。
その後、主催者のご老人が、高校生にお礼を言いたいと、先日、学校に訪ねてきてくださいました。
「10年以上前から、天草の人たちに、ふるさとの宝として十万山からの見た風景を残してあげたい、と関東に住む天草出身の方々が有志で十万山公園の整備活動を行ってきました。その後、少しずつ地元の人たちにもその活動の輪が拡がり、みんなで雑木の伐採を行い、本渡市街を一望できるようにしました。そして、河津桜を植え、ベンチや歩道の整備と様々に動いてきました。数年前からは、桜の名所だった十万山で、また、薄ピンクの桜が咲き誇るようになりました。この風景を、子どもたちの瞳に焼き付けたいと、天草市と共同で、小学生スケッチ大会を始めました。天高生を始め、地域の高校生たちがボランティアスタッフとして協力してくれるおかげで、ここまで繋がってきました。今年も、コロナ禍でスケッチ大会の開催も危ぶまれていましたが、天草市も開催に舵を切ってくれ、そして、天草高校生たちがボランティアスタッフとして加わってくれて、こんなに心温まる大会になったのは、初めてでした。本当にありがとう。」と、深々と頭を下げて行かれました。

遙か遠く、東京に住む人たちの、ふるさとを思う心が、このように繋がり、ふるさとづくりが形をなしていく、素晴らしいなと思います。天高生たちにも、かけがえのない宝物〈ふるさと〉を創るために学び、行動する人であってほしいと思います。

目を世界に転じると、そのふるさとを力で奪われようとしている人たちがいます。
テレビの画面を通じて見えてくる不安な瞳を見る度に心が痛みます。私は当事者ではありませんし、入ってくる情報はバイアスがかかっていますから、軽々にどちらが良いかと悪いとか論じるのは避けなければなりません。しかし、自らの主張を通すために、人々の生活や命を潰えさせるという手段を取ることは、決してあってはなりません。そして、力で奪うふるさとは、果たして、自ら誇りとすることができるのか、はなはだ疑問です。

「答えの出ない問いを、生涯かけて考え抜き、よりよい答えを導き出そうとすること」
これこそが、人類の智慧であると思います。

私は、いつも皆さんたちに問い続けています。「何のために 学ぶのか?」と。
今、世界で起きていることを、見ながら、切実に思います。
一人でも多くの人が笑顔で幸せに暮らせるようにするために、そして自らのふるさとを誇らしく語ることができるようにするために、私たちは学び、そして行動しなければならないのです。

地球市民として、未来の扉を開くのは、あなたたちです。