校長室からの風
体育コース1年生、修学旅行に出発!
体育コース1年生(1年9組 40人)が、12月14日(火)早朝、修学旅行に出発しました。朝7時に学校に集合して出発式を行い、バスで福岡空港へ向かいました。福岡空港から松本空港(長野県)へ飛び、再びバスに乗車して目的地の志賀高原を目指します。午後3時半頃に到着予定で、その後、早速ナイタースキー研修が行われます。17日(金)まで3泊4日の旅程の始まりです。
修学旅行は高校3年間で一度経験する特別な学校行事です。昨年度は、コロナパンデミックの影響で多くの高校で修学旅行が中止となりました。しかし、今年は秋の到来と共にコロナ感染者が急減し、とても安定した状況が続いており、予定通り修学旅行を実施することができ、生徒達と共に喜びたいと思います。
体育コースの修学旅行ということで、スキー研修が中心になっています。阿蘇山より高い、標高1700mの志賀高原一の瀬ファミリースキー場において、14日の夕方、15日~16日のまる二日間とたっぷり時間をとってスキーの講習を受けます。最後は、スキーの上達度を測るバッジテストが実施され認定証を得ることになります。運動能力が高い体育コースの生徒達であれば、きっと上達も早く、二日目から自在に滑り、スキーの醍醐味を満喫することでしょう。
また、雪国の風土を体感してほしいと願っています。九州の雪とは異なる、より気温の低い地域で降るパウダースノー(粉雪)の感触、白銀のゲレンデと青空のコントラストの眩しさ、さらには少し吹雪いた時の自然の厳しさなど、五感で体験してほしいと思います。
最終日の17日は雪山を下り、松本城(松本市)を訪ねます。江戸時代の木造天守(閣)が今に残る城は全国に12城しかありません。私たちが誇る熊本城は、明治10年の西南戦争の時に天守閣は焼失し、昭和35年に鉄骨鉄筋コンクリートで再建されました。江戸時代の古い天守は貴重です。しかも、松本城は、天守閣が国宝に指定されている「国宝五城」(姫路城、松本城、松江城、彦根城、犬山城)の一つとして知られています。山々を背景とした松本城の優美な姿に、疲労が蓄積している生徒達も眼が洗われるような思いに包まれるでしょう。そして、松本城の天守閣に上り、先人の知恵と技術など、伝え守られてきた文化を実感してほしいと期待します。
旅行は、いつ、誰と行ったかが大切です。高校1年生という感性豊かな時に、同じスポーツを愛する体育コースの級友と行く3泊4日の修学旅行は、かけがえのない青春の思い出になると信じます。
「校長室からの風」
左から、学校での朝の出発式 バスの中 志賀高原でのスキー研修開始
オリンピアン来校 ~ 江里口選手の「特別授業」
実際にお会いしてみると、江里口選手は陸上短距離アスリートとしては小柄で、意外に思いました。しかしながら、世界選手権、そしてロンドンオリンピック(2012年)と世界を舞台に戦ってこられた風格のようなものがあり、これがオリンピアンの雰囲気かと感じました。
熊本県オリンピック・パラリンピック教育推進校講師派遣事業(スポーツ庁委託事業)の「オリンピアン講習会」を、12月10日(金)の午後に、体育コース全員(1~3年生)110人が参加して西高の陸上競技場で実施しました。
江里口選手は本県菊池市出身で、県立鹿本高校時代に陸上100m選手として頭角を現し、国民体育大会少年男子で優勝。早稲田大学時代には大学選手権(インカレ)4連覇、そして日本選手権優勝を果たし、大阪ガス入社後の2012年のロンドンオリンピックに出場。100mは予選敗退でしたが、4×100mリレーでは2走を務め4位入賞に輝きました。
熊本県出身のオリンピアンの登場に、生徒達は少し緊張気味で堅い印象があったのは当然でしょう。しかし、江里口選手は、「自分は中学時代には全国大会に出たことがない普通の選手だった。」と前置きし、「身長は170㎝で、筋肉隆々の体質でもなく、自分は陸上短距離選手としては体格に恵まれてない。」と言われました。そして、「そのような自分がどんな点を意識して練習し、いかに世界と戦ったのかを知って欲しい」と伝えられ、生徒の関心を引き付けられました。
江里口選手のアドバイスのポイントは、先ず「考えてトレーニングすること」です。腕立て伏せを生徒にさせた後、「みんなはどこの筋肉を鍛えようと思い、腕立て伏せをしているのか?」と問われました。ただ言われたトレーニングメニューをこなすのではなく、自分のどの部分を強化、鍛錬するためにやるのか、意識して行わないと効果がないと諭されました。そして、練習の時はもちろん、普段の生活においても「正しい姿勢」を強調されました。トップアスリートは理にかなった練習をこなしており、その結果が記録につながっていることをわかりやすい言葉とパフォーマンスで教えられました。
江里口選手は高校時代に国体に出場し、成年の部で競技する日本で一流のトップアスリートの姿に接し、憧憬の念を強く持ち、向上心が高まったと言われました。西高体育コースの生徒たちにとっても、オリンピアンからの「特別授業」を受けたことは、かけがえのない経験になったと思います。
西高から未来のオリンピアンが出てくることを楽しみにしています。
「校長室からの風」
西高教職員チーム、優勝! ~ 県高校教職員ハンドボール大会
熊本県はハンドボールが盛んな土地柄です。2年前に女子ハンドボール世界選手権大会が本県で開催されたことは記憶に新しいところと思います。ハンドボール熱は教職員の世界にも定着しており、私が教員になる前から、教職員ハンドボール大会が行われています。しかしながら、昨年はコロナパンデミックの影響で中止されました。今年は2年ぶりに再開、第62回熊本県高等学校教職員ハンドボール大会が11月27日(土)~28日(日)に実施されました。
熊本西高にはハンドボール競技が専門の職員はいません。しかし、部活動としてハンドボール部があり、その顧問の樺島先生が中心となり職員チーム(選手14人)を結成し出場することとなり、形だけの監督を校長の私が務めました。
チーム練習もほとんどできず、「まあ一回戦も厳しいでしょう」との樺島先生の予想もあって、気楽に27日(土)の会場の山鹿市総合体育館に臨みました。ところが、1回戦の天草支援学校、2回戦の九州学院、3回戦の熊本中央と圧倒的な強さで勝ち続けました。
抜群のスピードで相手チームを翻弄したのが、体育科の女性職員の落合先生です。落合先生はバスケット選手として大学、実業団(鶴屋百貨店)で活躍しており、縦横無尽にコートを疾走し得点を重ねました。特別ルールで女性職員のゴールは2点にカウントされるため、西高チームは相手校を一気に引き離しました。また、男性職員では西田先生が次々にゴールを決めました。西田先生はラグビーの県国体成人チームのメンバーで、現役アスリートとして豊富な運動量と巧みな動きで相手選手をかわし、得点量産に貢献しました。
西高職員チームは体育科の若手職員だけが牽引したのではありません。20代から50代まで幅広い世代の職員がそれぞれの持ち味を活かし、チームワークを発揮しました。58歳の山本先生(数学)、57歳の鬼塚先生(数学)、55歳の門脇先生(保健体育)、51歳の樺島先生(数学)の4人の50代の職員も交代しながらコートに入り、果敢にプレーし、チームが勢いづきました。
28日(日)の千原台高校体育館での準決勝(対 阿蘇中央)、決勝(対 水俣)も快勝。西高職員チームは思いもかけず優勝したのです。大会最優秀選手(MVP)には落合先生が選ばれました。長引くコロナ禍のため、学校では職員の親睦行事がこの1年半ほど行われていません。久しぶりにスポーツを通じて、職員の一体感、連帯感を得ることができました。このことが、優勝したことよりも喜びです。
来週は、学校でクラスマッチが予定されています。共にスポーツを楽しみ、交流を深める好機です。生徒達もきっと楽しみにしていることでしょう。
「校長室からの風」
剣道、作文、美術、ボランティア ~ 西高生の多彩な活動
熊本県高等学校剣道新人戦大会が11月20日(土)~21日(日)に行われ、西高剣道部が躍進を見せました。男子団体が3位、男子個人で山下貴薫君(1年)が準優勝、女子個人では平江愛梨さん(2年)がベスト8に入り、それぞれ九州大会進出を決めました。男女ともに九州大会出場を決めたのは県内の高校で西高だけです。特に、剣道王国の熊本において強豪校相手に次々と勝ち抜き、個人戦準優勝を遂げた山下君の快挙を心から称えたいと思います。大会前日の19日(金)に剣道部の充実した稽古風景を見て期待感が高まりましたが、見事に実力を発揮してくれました。上げ潮に乗っている今の剣道部の勢いに注目です。
また、11月24日(水)、熊本西税務署の清水副所長が来校され、令和3年度「税に関する高校生の作文」(主催:国税庁)で入選を果たした田中瑠夏さん(1年)が表彰を受けました。科目「現代社会」の夏季休業の課題として取り組んだ田中さんの作文は、日頃は意識しない税の使い道について改めて調べ、学校教育や近所の公園整備など身近なところに活かされていることを知ったことをまとめたそうです。社会を意識することにつながったと語ってくれました。
第5回全九州高等学校総合文化祭長崎大会が来月12月10日(金)~12日(日)に開かれます。昨年は熊本大会でしたが、コロナパンデミックで事実上の中止となり私たち高校関係者、生徒達が無念の涙を呑みました。今年は2年ぶりに平常開催の予定です。本校から美術部門で浪平佳凜さん(2年生)の作品が出品されます。浪平さん自身も生徒交流会に参加するため、長崎県立美術館へ赴きます。
このように体育、文化と生徒の個々の活動が高い評価を受けることは学校にとって誠に喜ばしいことです。スポーツに、文化活動に、そして学習にと、それぞれの生徒が自ら得意とする領域で存分に自分の可能性を発揮しています。そして、生徒の無尽の可能性を引き出すために、教職員が寄り添い指導、支援しています。ここ熊本西高は、高校生の可能性が開花する環境が整っているのです。
さらに明るい話題です。11月21日(日)に第1回「熊本みなとマラソン」が西区で開催されました。熊本港の親水緑地広場をスタート、ゴールとし、県道51号(熊本港線)を走るハーフマラソンです。このマラソン大会に西高から56人の生徒が運営ボランティアで参加しました。大会主催者の久保理事長(NPO法人スポレク・エイト)が来校され、「多くの生徒さんの積極的なボランティアの姿勢に感謝します」と御礼を申し述べられました。こちらとしては、ボランティアの機会を与えて頂いたことに感謝したいくらいです。
西高生の活動範囲がどこまで広がっていくのか期待が膨らむ日々です。
「校長室からの風」
「税の作文」表彰
「夕日が美しい学校」 ~ 生徒会からの「西高魅力化プロジェクト」案
11月16日(火)、今年度2回目の学校運営協議会を開催しました。地元の三和中学校長、地域の自治会長、西区区長、保護者会代表、同窓会代表等8人の委員さんを招いて、今後の学校運営のあり方を検討して頂くものです。今回はこの場に会長の濱﨑さんはじめ生徒会役員8人が参加し、生徒会が考える「西高 魅力発信プロジェクト」案を提言してもらいました。
西高生がもっと積極的に小、中学校へ出かけて連携、交流を図るという提言がありました。体育コースの生徒が小学校の体育の授業のお手伝いをする、サイエンス情報科の生徒が小学校のプログラミング学習のお手伝いをする等です。また、いざ大規模な自然災害が起きたときに備え、防災活動を地元の小中学校と共同で実施する案も出されました。とても現実的な良案だと思います。
また、西高にもっと地域住民の方が足を運んでもらえるよう、従来の創立記念祭(文化祭)とは別に「西高フェスタ」(仮称)を学校で開催し、地域の商工業者の皆さんに特産品販売を行ってもらうのはどうかという案も出ました。この他、移動販売車(スタンドカー)に学校に定期的に来てもらうことは販売の促進と西高生の買い物の楽しみが増える効果があるとのユニークな意見も出されました。高校生の視点からの面白い発想です。
学校運営協議会委員の皆さんも、共感的に受けとめてくださいました。三和中の校長先生からは「中学校と高校の生徒会の共同活動はすぐにでもできる」と支持していただきました。また、西区区長さんからは、西区主催のイベントへの西高生の参加を歓迎する旨のご発言がありました。
そして、同窓会代表の委員さんから、「あなた達にとって、西高の魅力は何ですか?」と生徒会へ質問がありました。
「熊本市にありながら、周囲の自然が豊か」、「学校の敷地が広い」、「学習のICT化が進んでいる」、「生徒と先生の距離が近い」などの意見が出る中、「西高から見る夕日が美しい」と回答した生徒が3人いました。西高の西側には田畑が広がり、高い建物はありません。白川、坪井川の河口に連なり、その先は有明海です。鮮やかな朱色に輝く夕日が校舎、グラウンドから見えます。あの情景はきっと西高生の胸に刻まれるものでしょう。
西高は公共交通機関には恵まれていません。JRの熊本駅、西熊本駅から約5㎞の距離があります。しかし、多少遠くても通うだけの魅力ある高校でありたいと思います。そして、そのような魅力ある西高を創っていく主役は生徒の皆さんです。これからもより魅力的な学校を目指し、生徒及び保護者の皆さん、地域住民の方々、教職員とで対話を重ねていきたいと思います。
「校長室からの風」
ひたすら歩く、みんなで歩く ~ 西高チャレンジウォーク
秋晴れの11月2日(火)、西高伝統の「チャレンジウォーク」を開催しました。学校を出て、西区地域を歩き巡る遠行(えんこう)行事です。2年前までは金峰山頂上まで登っていましたが、今年は新型コロナウイルス感染防止の観点からマスク着用での強歩(走らない)で、学年別に時差出発とし、コースや距離も変更しました。距離は15.6㎞、行程は日蓮宗の名刹、本妙寺までの往復です。
早朝の7時45分には体育コースの生徒(1~3年)が最初に出発しました。体育コースの生徒達は先に行き、交差点や曲がり角において保護者役員の方や職員と一緒に交通案内も担当するのです。そして、一般の生徒が通り過ぎた後、追うように歩きます。8時半から9時半にかけて2年生、1年生、3年生の順で出発していきます。各クラス、男女別に4~8人の班をつくり、そのチームで歩くのです。3年8組の生徒達が最後に出発したのですが、その最後尾から私も歩き始めました。
西高北門を出て、坪井川の堤防道を上流へ進み、高橋稲荷の通称「赤橋」(朱色の橋)を渡り、西回りバイパス道の歩道へ。柿の実が朱に染まり、薄が群生し、秋景色が広がります。沿道に保育園、幼稚園があり、幼児たちから「がんばれー」と可愛い声援が送られ、生徒達も手を振り返しています。島崎町に入り、次第に上り坂となり、いよいよ本妙寺(西区花園町)へ。
本妙寺は中尾山(標高218m)の中腹にあり、鬱蒼とした木立に覆われ、疲労した身体には涼風が心地良く感じられます。しかし、最後に300段の石段という難所が待ち構えていました。息を切らしながら石段を登ると、加藤清正公の雄姿(銅像)が迎えてくれました。ここがチェックポイント。帰りは、清正公が眠る浄池廟(じょうちびょう)の本殿・拝殿の脇を通り、「胸突き雁木(がんぎ)」と呼ばれる急な石段を下り、表門から出て往路と同じ道に戻り、学校へ。
復路では、遅れた1年2組の女子の班と一緒に歩きました。普段、長い距離を歩かない一般の生徒にとって、約15㎞の道のりは大きな負担となるようです。早くゴールした生徒達は制服に着替え、自転車で帰宅する姿が見られ、焦りも出てきます。しかし、一人ではありません。女子7人で朗らかに声を掛け合い、一歩一歩、ゴール(学校)を目指します。ひたすら歩く、みんなで歩く。ただそれだけの鍛錬行事ですが、西高生としての一体感が強まる得がたい時間です。
午後1時近く、1年2組の女子7人の班と私が最後尾でゴールしました。同窓会及び育西会からバナナ、ドーナツ、飲み物を頂きました。完歩した達成感は何物にも代えがたいものでした。
「校長室からの風」
創立記念祭開催 ~ 「For others With others」(みんなのために みんなと共に)
秋晴れの10月28日(木)、熊本市民会館シアーズホーム「夢ホール」で第46回熊本西高校創立記念祭を開催しました。
芸術鑑賞会に続き、午後1時40分に生徒会企画のオープニングアトラクションが始まりました。いきなり「オタ芸」と呼ばれる、アイドルの熱狂的ファンが行うペンライトを使ったパフォーマンスとバンド演奏を男子生徒有志が演じ、会場は笑いと歓声、拍手に包まれました。
プログラム2番は太鼓部演奏。部員は1年生2人(男女)しかいません。外部指導員の瀬戸さんも加わり3人での熱演で、鼓動が客席に響き渡りました。力の限り打ち続けてのクライマックス、打ち止め後の静寂、そして3人で深々と頭を下げた姿勢のまま幕が下りる情景は印象的でした。
プログラム3、4番は、1,2学年の発表。1年生は9組体育コースの林君が「2020東京オリンピックから学んだこと」というテーマで堂々の発表。2年生は、横手学年主任を中心に職員と生徒全員が出演の動画上映。受験に臨む3年生へのエールと、これから西高を背負っていく決意がメッセージに込められた動画で、生徒による撮影、編集の手作り感も伝わってきました。
次のプログラムは演劇部発表。放課後のドタバタ騒ぎで、二子石教諭、田上教諭、打越教諭と3人の2年生担任も出演し、客席から大きな反響でした。また、続く放送部の発表は、職員室のベランダの庇にあるツバメの巣がテーマのドキュメント(記録)動画。今年度のNHK杯高校放送コンテストに出品したものです。さすがは放送部で、ツバメの雛を中心に小さきものの動きを丹念に追い、強風で破損した巣の修復にも関わるドラマとなっていました。
プログラム7番は保健委員会の発表。生徒の生活習慣改善をテーマに、全校生にアンケート調査を行い、その結果を公表。平均して一日のスマホの使用時間が2~3時間以上が7割を超えていることは心配な状況です。一方、睡眠時間6時間未満が6割以上となっており、これらの相関関係が気になります。安定した生活リズムを維持することは西高生の課題であることが浮き彫りとなりました。
そして、プログラムの締めは吹奏楽部の演奏です。3年生が引退したため部員は13人と少人数です。しかし、この日に向けて熱心に練習してきたことは、楽器の音色が音楽室周辺に放課後響き渡っていたことが証です。最後のジャズの名曲「Sing,Sing,Sing」はソロ演奏もあり、圧巻の演奏で、フィナーレをかざってくれたと思います。
「For others With others」(みんなのために みんなと共に)。テーマどおりの創立記念祭となりました。
「校長室からの風」
ルネサンス、バロックの音楽との出会い ~ 西高「芸術鑑賞会」
15世紀から17世紀にかけてのヨーロッパのルネサンス、バロックの音楽が古楽器で奏でられます。強い、大きな響きはありません。自己主張する音はありません。現代の電子音楽に慣れている私たちの耳には、とても控えめな旋律(メロディー)と感じられます。しかし、アコースティック、即ち楽器本来の深い音色に心地よく包まれます。
西高創立記念祭の一環として、10月28日(金)に熊本市民会館シアーズホーム「夢ホール」において、芸術鑑賞会を開催しました。ヨーロッパの古楽器の合奏(アンサンブル)で知られる「グループ葦」の皆さんによる公演です。8人の出演者が、四種のリコーダー(縦笛)、弦楽器のヴィオラ・ダ・ガンバ、トロンボーンの先祖に当たる楽器サックバット、外観はピアノに似た鍵盤楽器のチェンバロなどの古い楽器を奏でられ、これに歌唱が加わります。そして、この日は特別に二人の舞踏家が参加され、ルネサンス、バロック時代のダンスを往時の優雅な衣装を模したコスチュームで踊られました。
このようなヨーロッパのルネサンス、バロックの音楽及び舞踏には私も初めて触れました。知っている曲は、バッハ(ドイツ、1685~1750)の「メヌエット」だけでした。「初めて聴く音楽なのに、なぜか聴いたことがあるような記憶がありませんか?」と演奏者の方がステージから問いかけられました。それは恐らく現代音楽の起源だからかと思いました。また、ルネサンス、大航海時代のヨーロッパからカトリックの宣教師が戦国時代の日本にも渡来し、この九州、熊本でもキリシタンが増え、コレジオ、セミナリオといったキリスト教の学校、宣教師の養成所が設けられました。そこでは、当時のヨーロッパの音楽が演奏されていたことがわかっています。ひょっとして、私たちの先祖が、ルネサンス音楽を聴いたことがあるのかもしれません。そのようなことを想像すると、遠い記憶がよみがえってくるとも言えるでしょう。
喧噪の音に包まれているような現代の私たちが、シンプルでおだやかだった頃のヨーロッパのルネサンス、バロックの音楽にさかのぼる時間の旅を経験したような公演でした。創立記念祭「芸術鑑賞会」にふさわしい公演でした。音響、照明とも整った本格的なホールで、ゆったりと音楽の世界に浸ることができました。生徒の皆さんにとっても、音楽の深淵を覗いた、特別な時間となったことでしょう。まさに、創立記念祭のテーマ「気韻生動」の音楽でした。
「校長室からの風」
創立記念祭を迎えて ~ オンライン開会式の挨拶
熊本西高校は昭和49年10月に創立されました。最初は職員4人だけで生徒はいません。「清 明 和」の校訓をはじめ校旗、校章などを定め、募集定員は普通科4学級で発足することが決まり、翌年の昭和50年4月に第一期生の入学を迎えました。創立以来、今年で47年となります。他校では文化祭と言われることが多い秋の文化的行事を、本校ではあえて創立記念祭と呼ぶのはなぜでしょうか? 毎年、創立の原点に戻った気持ちで、新たに西高の元気を発信しようという思いが込められているのです。
残念ながら2年前までのように学校全体を会場にし、地域に開放しての賑やかなお祭り的行事はできません。しかし、熊本市民会館シアーズホームという立派なホールを舞台に、芸術鑑賞、そして文化部をはじめ生徒のみなさんのステージ発表が開催されます。本格的なホールは体育館と異なり、音響、照明ともに優れていて、音楽や演劇など舞台芸術には最高の環境が整っています。ホールでの鑑賞マナーも身に付きます。
今年の芸術鑑賞は、ヨーロッパの古い楽器、古楽器の演奏や歌のアンサンブル(合奏)を鑑賞します。私たちが日頃触れることがないクラシック(古典)で深い音色が楽しみです。また、皆さんのクラスメイトが、同級生が、ステージ上で演奏、発表をします。きっと普段の姿とは違い、「あいつ、すごいな」、「彼女、すてきだなあ」という新たな一面を再発見する機会となるでしょう。観客の皆さんが真剣に鑑賞することが、出演者の力を引き出すことになると思います。
皆さん、創立記念祭は明日の市民会館だけではありません。学校の生徒ホールで20日からアート作品や研究発表の展示が行われています。小さなギャラリーですが、文化の香り漂う空間となっています。会期は明日までです。まだ観覧していない人は今日の放課後、足を運んでください。
この創立記念祭は生徒会執行部はじめ実に多くの皆さんの熱意と努力によって実現しました。関係者すべての皆さんに感謝します。メインテーマは気韻生動。難しい言葉ですが、気品があっていきいきと動き出すようだという意味で、書道や日本画、能楽などわが国の伝統文化を称える時によく使われる言葉です。また、サブテーマの「For others With others」、みんなのために、みんなと共に、という言葉は、新生徒会がスタートする時、私から贈ったもので、それをモットーに生徒会が活動してくれていることを頼もしく思います。
コロナパンデミックの中でも、西高は途切れることなく創立記念祭を実施できます。このことを皆さんと共に喜び、明日を迎えましょう。
「校長室からの風」
生徒ホールの作品展示 ~ 創立記念祭
10月20日(水)から、生徒ホールにおいて創立記念祭の一環として、文化部の作品展示が始まりました。生徒ホールは西高自慢の生徒達の憩いの場です。売店に隣接する空間は2階まで吹き抜けで、大きな窓を通して中庭のテラスにつながり開放感があふれています。本校の創立記念祭は文化祭とも言えるもので、例年なら学校全体が舞台となり、ステージ及び展示の発表、バザー等と西高の活気と創造性を発信する行事ですが、今年はコロナ禍の中、芸術鑑賞とステージ発表を10月28日(木)に熊本市民会館で開催することにしました。そのため、展示部門は生徒ホールでの発表となりました。
美術部は、油絵の大作や素描(デッサン)の小品など9作品。書道部は半切(はんせつ)の5作品。絵画、書の描(書)き手がどんな生徒なのか、想像するのも楽しいのですが、作品を前にして思うことは、創作者を離れ、作品そのものが雄弁に語るような気がします。これが創造の力なのでしょう。
理科の各部も研究活動を広用紙にまとめて展示してあります。生物部の「農業用水路に生きるシジミの1年間の調査」は、学校周辺の用水路で生徒達が活動している様子を見たことがあり、親近感があります。化学部の「廃チョークを利用した銅廃液処理に関する研究」は、使い古したチョークという身近な素材に着目した研究です。地学部の「離岸流の研究」も、海(有明海)に近い西高ならではの研究テーマと言えるでしょう。
また、英語部は西高が位置する熊本市西区について「West District」として地図を作成し、主な公共施設等が英語表記で示されています(もちろん西高も)。図書委員会は生徒(図書委員)オススメの本をキャッチコピーで紹介しています。
そして、育西会(保護者会)からはこれまでの育西会会報(新聞)のバックナンバーがファイルにまとめられ展示されていました。現存する第55号(平成8年12月刊)から最新号の156号(令和3年8月刊)までの25年の変遷が凝縮しています。個人的にお世話になった先輩教師の皆さんの名前や写真を拝見し、懐かしくファイルをめくりました。
小さなギャラリーです。けれども、何かそこだけ上質な落ち着いた雰囲気が感じられます。作品展示は28日(木)までです。まだ訪ねていない生徒の皆さん、昼休みか放課後に足を運んでみてください。西高の学校文化の奥深さ、豊かさに触れられると思います。
「校長室からの風」
初めて選挙に臨む皆さんへ ~ 18歳選挙権
10月14日(木)、衆議院が解散されました。衆議院議員総選挙が19日公示、31日投票の日程で行われることが決まりました。衆議院議員の任期4年がほぼ満了しての、約4年ぶりの総選挙となります。
選挙は高校にとっては他人事ではありません。高校生の一部は選挙権を有しています。選挙権年齢が「満18歳以上」に引き下げられたのは平成28年でした。選挙期日の翌日(今回で云うなら11月1日)に満18歳の誕生日を迎える人までが選挙権を有することになります。恐らく高校3年生のおよそ6割は有権者として今回の総選挙に臨むことになるでしょう。
少子高齢化が進むわが国において、若い世代にこそ政治に関心をもってもらう必要があるという目的で導入された18歳選挙権でした。高校でも、公民科の授業やホームルーム活動、生徒会活動などをとおして実践を重ねてきました。導入された当時、私が勤務していた高校の所在地の町長選挙がありました。有権者の生徒達の関心を高めるため、候補者2人にお願いし、放課後、正門前まで来て頂き、町政のビジョンを語ってもらいました。結果、高校生の投票率は75%を超えました。しかしながら、各種データを見ると、若い世代の投票率は期待されたほどは伸びていません。残念です。
「自分一人が投票しても社会は変わらない」と云う高校生がいます。しかし、選挙の一人一票の原則はとても大切なことです。総理大臣も、県知事も、そして校長の私も一票です。18歳のあなたと同じ一票なのです。一票の重みを感じてください。そして、身分や納税額、性別などの様々な制限なく、一定の年齢を満たせばだれもが選挙権を有する普通選挙制は今では当たり前のことですが、その実現への歩みはまさにわが国の近代化と軌を一にするものでした。世界ではいまだ普通選挙が実施できない国もあります。
生涯で最初の選挙を迎える生徒の皆さん、あなた達はこの国の主権者です。権利は責任を伴います。選挙権という貴重な権利を活かしてください。私たちの西高では国政選挙に先駆けて生徒会長選挙を電子投票で行いました。しかし、まだ国政選挙は電子化されていません。自ら投票所に足を運び、一票を投ずることになります。ただそれだけのことですが、その時、あなたは主権者としての役割を立派に果たしたことになるのです。
なお、投票所では投票用紙が2枚渡されます。小選挙区は候補者名を、比例代表区は政党名を記します。戸惑わないように。
「校長室からの風」
「学校の日常」が戻って ~ 平常の教育課程の再開
10月1日(金)の朝、澄んだ青空の下、生徒達が次々と登校してきます。多くが自転車通学生で、滑るように正門から入ってきます。前日までの分散登校とは数が違い、自ずと活気あふれる雰囲気です。正門や昇降口の付近で職員が出迎えます。大きな声での挨拶はできませんが、「おはよう」の声は飛び交います。
新型コロナウイルスの感染者が減少傾向にあり、熊本県の「まん延防止重点措置」期間が9月30日(木)で解除され、「分散登校・時差登校・短縮授業」の制限も不要となり、熊本西高も平常の教育課程再開となりました。朝8時30分始業、月・水・金が6時間授業、火・木が7時間授業の本来の学習活動に戻りました。もちろん、コロナパンデミックが完全に終熄したわけではありませんから、学校での感染防止の取り組みは続きます。特に、感染リスクの要因として指摘されている昼食、歯磨き、体育の授業や部活動での更衣などは、生徒の皆さんに一層の自覚を求めていくことになります。学校あげて、感染防止と学校生活の充実という困難な両立に挑んでいかなければなりません。
緊張感ある再スタートの日でしたが、生徒達も職員もどこか喜びに包まれ、「学校の日常」が戻ってきたという高揚感に校内は満ちていました。
部活動も全面再開です。柔道部員の朝のランニングも再び始まりました。放課後、自粛していたラグビー部の練習がグラウンドで始動しました。音楽室や周辺の廊下からは吹奏楽部員の楽器の音色が響きます。高校生活は人生から見るとまことに限りある短い期間です。現在の高校生は、その多くの時間をコロナ禍の中、制約されて過ごしてきました。せめて、規制がすべて解除された今のこの時期だけでも、存分に高校生活を満喫して欲しいと願うばかりです。
学校行事も再開しました。10月5日(火)、体育コースの3年生39人はゴルフラウンド実習をグリーランドリゾートゴルフコース(荒尾市)で行いました。東海大学熊本キャンパス校のゴルフ部の皆さんのサポートを受けて、初めてコースを回ります。朝7時20分、学校で出発式を行い、マイクロバス2台での出立を私は見送りました。「まん延防止重点措置」期間は、すべての学校行事は自粛、延期してきましたので、解除後の初めての学校行事となります。青空が広がるスポーツ日和となりました。
この平穏な日々が長く続くことを祈らずにいられません。
「校長室からの風」
スポーツの力 ~ 陸上部、野球部、そして富田宇宙選手
8月25日に西高の2学期が始まりましたが、熊本県が新型コロナウイルスの「まん延防止重点措置」対象県のため、生徒は分散登校、そして部活動は原則中止となりました。公式戦2週間前からの部活動は認められましたが、学年によって午前と午後に分かれて登校のため、1,2年生の部員がまとまっって練習する機会は土日を除いてありません。
校長室の窓から、広いグラウンドが見えます。最も手前で陸上部の生徒が練習しています。3年生が引退したうえに、学年別の練習のため、人数がより少なく寂しい光景に映ります。しかし、黙々と走り、投げ、新人戦に備えている様子が伝わってきました。9月17日(金)~19日(日)と新人陸上競技大会が県民総合運動公園陸上競技場(熊本市)で開催されました。西高陸上部は砲丸投、円盤投、やり投、三段跳などのフィールド競技で上位を独占、フィールド部門の学校対抗で優勝。トラック競技も併せた総合の学校対抗でも3位に入りました。10月7日~10日に宮崎市で開催される全九州高校新人陸上競技大会に2年生4人、1年生4人の計8人が県代表として出場することとなりました。
9月23日(木・祝日)から九州地区高校野球熊本大会が始まりました。西高野球部は藤崎台球場(熊本市)で必由館高校と初戦でぶつかりました。共に甲子園出場の経験を持つ公立のライバルです。私も応援に行きましたが、手に汗を握る好試合となり、1対0で西高が競り勝ちました。団体競技の野球の場合、学年が分散されての練習は苦労が多かったろうと思います。
陸上部の九州大会出場、野球部の難敵を下しての2回戦進出というニュースは学校の雰囲気を明るくしました。長引くコロナ禍で不規則な生活を強いられ、体調、体力を維持することも困難な中、はつらつとスポーツで自己表現する西高生を見て、頼もしく思います。
そして、今日、9月24日(金)、東京パラリンピックの水泳競技のメダリスト、富田宇宙選手が西高に来校されました。本校の体育科の米田教諭(専門は水泳)が、富田選手が済々黌高校時代の水泳の指導者で、その後も長く交流が続いています。昨年、幾度も来校され、本校の体育コースの生徒達に講演をしてくださり、水泳部の生徒と一緒にプールで練習されました。今回、帰省されたため、体育コースの生徒達にメダルを披露する機会が実現しました。富田選手こそまさに逆境をスポーツの力で克服された人です。視力障がいのハンディを乗り越え、パラアスリートとして自信に満ちあふれた富田選手の姿を目にして、体育コースの生徒達もきっと大いに励まされるものがあったと思います。
コロナパンデミックであっても、スポーツの力は少しも衰えないのです。
「校長室からの風」
富田宇宙選手と体育コースの生徒たちの交流会
オンライン保護者会の実践 ~ 「学校情報化優良校」の認証
1学年保護者会を9月16日(木)午後に開催しました。「えっ? まん延防止重点措置期間にできるの?」という声が聞こえてきそうですが、できるのです。もちろん、保護者の皆さんに西高に来て頂くことはありません。すべてオンラインで開催なのです。従って、保護者の皆さんは、ご自分のスマホやタブレット等で参加できるのです。しかし、「平日で仕事があり、オンラインでも参加しづらい」との声が聞こえてきそうですが、その対応もしています。
1学年保護者会の内容は、学年主任の米田教諭の挨拶から始まり、九州産業大学の大西純一教授の進路講演会、西高教務部からの「2年次のコース選択説明会」、旅行会社による「修学旅行説明会」など盛りだくさんです。これらのほとんどが前日までに動画収録が完了し、学級(クラス)と生徒及び保護者の端末を結ぶコミュニケーションツール「Google Classroom」に保存されているのです。
生徒達は登校して1年の各教室で視聴しますが、リアルタイムのライブ映像ではありません。適宜、休憩時間をとりながら視聴し、担任や副担任の支援を受けて理解を深めます。そして、これらの動画は9月20日(火)まで保存されていてアクセスできますので、保護者の皆さんは都合の良い時間に視聴できるのです。このオンライン保護者会の方式なら、距離も時間も超越できます。
長期化するコロナ禍という逆境の中、いかにして学校行事を実施するか?鍵はICT(情報通信技術)です。西高は、一人一台タブレット端末の先進実践校として今年度4月にスタートし、わかりやすい授業の創造、生徒同士の協働学習、リモート生徒集会開催、オンライン生徒会選挙の実施など実践を重ねてきました。そして、今回のオンライン保護者会に代表される保護者とのデジタルコミュニケーションの充実に至っています。これらの実践が日本教育工学協会に高く評価され、この度、「学校情報化優良校」の認証を受けました。この認証を受けるのは熊本県の高校では西高が初めてです。
ICTを日常的に取り入れた農業をスマート農業と呼びます。ICTを市民の生活につなげて利便性を高めている都市をスマートシティと呼びます。西高は、ICTを日常の教育の場に溶け込ませ、空間的、時間的に学校機能をより豊かにした「スマートスクール」を目指します。
学校教育のICT化はフロンティア(未開拓領域)です。トライ&エラーの連続ですが、学校挙げて取り組んでいきます。いつの時代にもフロンティアはあるのです。定年近い私ですが、挑戦できるフロンティアがあることは喜びです。
「校長室からの風」
パラアスリートに励まされる日々 ~ 東京パラリンピック
東京パラリンピックの競泳男子400m自由形及び200m個人メドレー(いずれも視覚障害クラス)で、熊本市出身の富田宇宙選手(32歳)がそれぞれ銀メダル、銅メダルを取るという快挙を成し遂げました。新型コロナウイルス第5波に覆われている熊本県にとって明るいニュースです。しかも、富田選手は、熊本西高と関係が深い方で、二重の喜びに浸っています。
富田選手は済々黌高校出身で、同校在学中、水泳部で活躍されました。その時、富田選手を指導したのが米田教諭で、現在、熊本西高の保健体育教諭で水泳部顧問です。米田教諭の話によると、富田選手が眼の病気にかかったのは高校2年生の秋でした。卒業後も親交は続き、視力が低下する中、パラアスリートの道を進む富田選手を米田教諭は応援しました。東京パラリンピックがコロナパンデミックの影響で1年延期となった昨年、米田教諭は富田選手を西高に招き、西高のプールで練習する機会を設けました。そして富田選手は、西高水泳部員達に対し練習法はじめ多くのアドバイスをされたそうです。富田選手のメダル獲得が決まると、西高Instagramでも快挙を喜ぶ水泳部員の声があがっていました。
米田教諭から富田選手の話を聞く中で、私が最も印象に残ったのは、「私が出会った生徒の中でも特に目の力、眼力が強かった」という言葉です。この言葉は西日本新聞にも紹介されていました。困難に巻き込まれても屈しない、富田選手の意志の強さを象徴していると思います。
富田選手は水泳競技ですが、視覚障害の陸上競技ではガイドランナー(伴走者)の存在に引き付けられました。重度の視覚障害の選手と短く細いロープで手をつなぎ、「選手の目」となって伴走し、競技の安全を支える役割を担っています。これまでの長く苦しい練習期間を一緒に乗り越えてパラリンピックの大舞台に出場した、まさに一心同体の二人です。陸上競技短距離のある種目では、二人をつなぐロープが切れ、レースを途中で断念するシーンが見られ、テレビ観戦していた私は息を呑む思いに包まれました。
東京パラリンピックの競技の様子が連日、テレビ中継されています。これほど多様なパラスポーツがあるのか驚く日々です。そして、様々な障がいのある選手達が自分の有する運動機能を精一杯発揮する姿に、気持ちが揺さぶられます。
西高生の皆さん、現在は部活動もできず、閉塞感に包まれていると思います。今こそ東京パラリンピックのテレビ観戦を勧めます。9月5日閉会ですから、期間はあと5日間です。パラアスリートのパフォーマンスを観ていると、「人間とはいかに素晴らしいものなのか」という深い感慨に包まれます。
「校長室からの風」
ICTの日常化 ~ コロナ禍を乗り越えるために
月曜日朝の西高の1,2年生の授業では新しいことを始める緊張感に職員が包まれていました。ホームルームで授業する担当者が隣のクラスで授業を受けている生徒達に、「声は聞こえているか?」と問います。その声は、廊下を経て肉声と混じり、共鳴します。また、カメラは定点から授業を撮影しているため、授業担当者の姿はしばしば画面から消えます。隣のクラスの生徒にとっては声だけの授業となります。英語の発音は、スピーカーからハウリングして聞こえ、明瞭には聞こえません。ICT(Information Communication Technology 情報通信技術)に不慣れな職員には戸惑いもあります。しかし、学校として一歩踏み出したのです。コロナ禍を乗り越えるためにはICTの力が必要なのです。
西高は8月25日(水)に2学期を開始し、2週目に入ります。本県の新型コロナウイルス感染状況は厳しさを増しており、9月12日(日)までの「まん延防止措置期間」は時差登校(30分遅らせての9時始業)、短縮授業(45分)、1,2年生の分散登校(午前と午後の交互)、部活動休止等の対応に努めていますが、今週からさらに対応のギアを上げました。
分散登校の1、2年生は、教室で授業を受ける人数を半分程度に減らします。登校したクラスの人数を近隣の教室に二分します。そして、一方の教室で教科担当者が授業をし、もう一方の教室へ授業動画配信するのです。配信を受ける側の教室では前方のスクリーンに授業動画が映し出されます。また、もう一工夫する担当者は、生徒一人ひとりが持っているタブレット端末に授業動画が届き、手元でも確認できます。さらに、濃厚接触者や基礎疾患があって自宅待機している生徒達も、この授業動画を自分のタブレットで受け取ることができます。すなわち、リアルタイムで遠隔授業に参加できるのです。
他校では、たとえば出席番号の奇数、偶数に分け午前と午後に登校させ、同じ授業を教科担当者が二回実施する方式をとるところが多いようです。しかし、西高は、学年及び学級の一体性を重視しました。離れている者をつなぐICTの特性を活かしたのです。一つの教室での対面授業が最も良いことは自明です。しかし、コロナ禍でそれができないからこそ、分散した者をつなぐICT教育を推進するのです。登校できない在宅の生徒達にとっても、学校の授業と繋がっているという心理的な一体感は安心感につながると思います。
ICT教育はもう特別なものではありません。タブレットは生徒の日常の文房具です。「ICTの日常化」の時が来ました。離れた教室を、自宅と学校を、学校と社会をオンラインで結び、毎日、毎時間、活用していきます。
「校長室からの風」
「みなさん、がんばりましょう」 ~ 多難なスタート
「2学期は始まりますが、不自由な学校生活となります。けれども、皆さん、がんばりましょう!」
8月25日(水)の始業式の後、生徒会長の濱﨑さん(2年)が全校生徒にオンラインでメッセージを発信しました。校内に爽やかに響きました。
新型コロナウイルス感染症の第5波の影響で熊本県は9月12日(日)まで「まん延防止等重点措置」が適用されており、2学期再開の熊本市域の高校もこれまで以上の感染防止策をとることが求められています。県教育委員会の方針をふまえ、本校の対応は次のとおりに定めました。
一 学校全体
始業を30分遅らせ9時開始とし、授業は短縮45分で実施し、課外授業や部活動は休止とする。但し公式大会の2週間前から部活動は全体練習を行ってよい。
二 3年生
受験、就職試験がこれから始まる時期であり、進路実現の重要性から一日6時間授業を実施する。
三 1、2年生
午前と午後に学年が分かれて登校(分散登校)、それぞれ3時間授業実施。昼食を学校でとらない。教室の人数を通常の半分にするため、授業を2グループに分け、一方のグループは授業をオンライン配信する。登校しない学年の担当者が補充指導にあたる。
四 欠席している生徒
濃厚接触者や体調に不安があり登校できない生徒に対して、時間割通りの授業のオンライン配信を行い、自宅においてタブレットで受信し授業に参加できる。
このように2学期のスタートは多難なものとなりました。分散登校する1、2年生は午前と午後を交代し、毎日、半日は登校しますが、全校生徒がそろうことはありません。不規則で不安定な学校生活が当面続くことになります。しかし、この困難な状況に対し、学校はICT教育の特性を発揮し対応したいと思います。一人一台タブレット端末が整備されている西高の力が問われています。
今朝、2年生の昇降口にボードが掲げられ、今日は午後に登校予定の生徒達を励ます言葉が書かれてありました。この言葉通り、「できる範囲で、できる環境で、できるだけの努力をしていこう」という思いを生徒の皆さんと私たち教職員が共有し、難局を乗り切っていきましょう。
「校長室からの風」
「多様性と調和」 ~ 2学期始業式
8月25日(水)、熊本西高は2学期始業式を迎えました。
新型コロナウイルス感染症拡大に歯止めがかからず、お盆の故郷への帰省も自粛するよう呼びかけられた、非常事態の夏でした。今月中旬には停滞前線によって一週間にわたって大雨となった異常気象の夏でした。これまで当たり前だったことが、当たり前にできない不自由な夏でした。それは今も続いています。
しかし、この困難な状況の中、7月下旬から8月上旬にかけインターハイこと全国高校総体及び全国高校総合文化祭が実施され、西高から22人の生徒の皆さんが参加、出場できたことは大きな意義があったと思います。始業式に先立ち、全国大会を体験した6つの部活動の代表者が、その報告をスタジオで行い、各教室へオンライン配信されました。コロナ禍の中、大会が開催されたことへの感謝の思い、そして全国大会のレベルの高さ、そこで勝つことの難しさをそれぞれ述べ、最後に異口同音に「今回の結果は悔しい」と語りました。全国6位入賞を果たしたウエイトリフティングの西田君(3年)でさえ、「表彰台を狙っていたので悔しい」と言いました。
「悔しさ」こそ、若人が成長する原動力だと私は思います。「皆さんは特別な体験ができた。このことを誇りに思って欲しい。そして、次の目標を自ら立て、進んで欲しい」と励ましました。
始業式の校長講話(オンライン配信)では、東京オリンピック、そして昨夜開幕した東京パラリンピックの共通テーマ「多様性と調和」(Diversity and Harmony)について語りました。人種、性別または自らの性認識、言語、宗教、政治そして障がいの有無など様々な面で違いを受け入れ、そのうえで共通のルールのもとフェアに競い合うオリンピック、パラリンピックは、まさに多様性と調和にふさわしい世界イベントだと思います。オリンピック競技種目も33競技、339種目と多種多様となり、東京大会ではスケートボード、スポーツクライミング、サーフィンなどの新しい競技が加わる一方、わが国の伝統的な武道である空手が脚光を浴びました。
生徒の皆さん、世界はますます多様性を認め合い、共に生きていく共生社会へと向かっています。同じ西高生であっても、性格や趣味、価値観が違う人がいるのは当たり前です。自分と違う他人がいるからこそ、自分の個性が輝くのです。西高生一人ひとりがお互いの良さと違いを認め合い、高め合っていくことを期待しています。
2学期が始まりました。しかし、9月12日までの蔓延防止期間は、短縮授業や1,2年生の分散登校などで乗り切ろうと考えています。変則な日程が続きますが、かけがえのない学校生活を一日一日、大切にしていきましょう。
「校長室からの風」
中学生の皆さん、ようこそ西高へ ~ 中学生体験入学
朝8時を回った頃から、正門、西門から自転車で入ってくる中学生の姿が目立つようになりました。来校を歓迎する太鼓部の勇壮な太鼓の音が響きます。部活動紹介のチラシを配付する袴姿のなぎなた部の女子生徒たちが中学生を待ち構えています。この日のために用意したJR熊本駅及びJR西熊本駅と西高を結ぶ臨時貸し切りバス(2台)、そして送迎の保護者の車が次々と到着します。
令和3年度の西高オープンスクール「中学生の体験入学」を7月30日(金)に実施しました。新型コロナウイルス感染対策のため、分散・自律型の体験入学を企画しました。30日(金)を午前と午後の部に分け、8月の20日(金)の午前にも実施予定です。受付した中学生の皆さんは8人~10人の小班に分かれてもらい、先ず教室に入ります。そこで西高の概要及び体験入学の要領を担当の生徒が説明します。その後、各班の案内役の生徒二人が、中学生の希望も聞きながら、模擬授業(国語、数学、英語、公民)の教室や文化部活動体験の教室、そして広く校内を巡ります。それぞれのプログラムは10分~15分です。
西高の「中学生体験入学」は、生徒が前面に出て活躍します。駐輪案内、受付、教室での説明、班の案内(ガイド)、そして各部活動の参加体験型プログラムも西高生が運営するのです。この「中学生体験入学」のボランティアスタッフの西高生はおそろいの青のTシャツ姿です。また、職員はレモンイエローのポロシャツを統一で着ます。文化部のプログラムではパソコン教室でのeスポーツ体験、礼法室の茶道体験などは特に人気があるようで、班が順番待ちする光景が見られました。また、ユニークなものとして、西高の売店体験として飲み物とパンをプレゼントしました。
クライマックスが午前10時半と午後2時半から体育館で行われる体育部活動パフォーマンスです。それぞれの部活動の代表の生徒達がユニフォーム等の姿で精一杯のおもてなしのパフォーマンスを演じました。音楽に合わせての5人でのなぎなた演舞、肉体美を誇示しての男子水泳部の紹介など、観覧の中学生から拍手や歓声、笑い声が響き、会場は一体感に包まれました。
様々なプログラムを体験する中学生の皆さんの顔は輝いていました。ちょっと年齢が上のお兄さん、お姉さんである西高生の歓迎の気持ちが十分に伝わっていると思いました。数年先の少し未来の高校生の自分が見えましたか?
西高の校訓は「清・明・和」です。清らかで、明るく、和やかな西高の雰囲気を中学生の皆さんに感じてもらえたでしょうか?猛暑の中、午前の部に約200人、午後の部に約100人の中学生が来てくれました。心から感謝します。
8月20日(金)の午前にもう一回「体験入学」を開催します。
「GO WEST!」 中学生の皆さん、参加をお待ちしています。
吹奏楽部、「銀メダル」 ~ 熊本県吹奏楽コンクール
「今度コンクールに出演します! ぜひ演奏を聴きに来てください!」
7月の上旬に、吹奏楽部の部長の中川君(3年)と副部長の古賀さん(3年)が校長室を訪ねてきて、案内状を手渡してくれました。長引くコロナ禍で、高校生の吹奏楽大会はこの一年半、ほとんど中止となっていました。久しぶりにライブの演奏を聴くことができると、当日を楽しみに待ちました。
7月24日(土)、高等学校Aパート(大規模編成)の吹奏楽コンクールが県立劇場コンサートホールで開催されました。30校が参加し、朝9時45分から夜の7時半まで演奏が続きます。熊本西高校は19番目の出演で午後4時8分から20分までの12分間が演奏時間です。観覧は保護者と学校関係者に限られていましたが、会場のホールは大勢の観客で埋まっていました。コロナウイルス感染対策で、席は一つ空けで座ることになっていましたが、久しぶりのコンクールで期待感が場内に漂っていました。
いよいよ西高の出番です。部員は総勢25人。40人~50人台の大規模校が多い中、Aパートでは少人数の編成です。最初が共通課題曲「エール・マーチ」、そして次に自由曲として選んだ「斑鳩(いかるが)の空」です。演奏が始まると、人数の少なさの不安は払拭されました。大規模校に負けない力強いサウンドが響き、聴く者に届きました。学科や学年、クラスは異なり、一人ひとりの性格や個性も違いますが、それぞれの楽器でパートを担当し、全員で一つの楽曲を創り上げる吹奏楽の魅力を実感できた時間でした。コロナパンデミックによって忘れかけていた時間でした。
指揮棒を振られた顧問の寺本教諭は、「少ない人数ながらそれぞれが力を発揮し良い演奏をしてくれた」と生徒達を称えられました。審査の結果は銀賞でしたが、ここ10年ほど銅賞に甘んじていたので、大きな成果と言われました。私から見ると立派な「銀メダル」に値する演奏だったと思います。
このコンクールを区切りに3年生は吹奏楽部から引退し、進路実現に向かって全力で取り組むことになります。吹奏楽部部員はまた少なくなりました。しかし、1、2年生の部員達は今週も毎日、音楽室及びその周辺で練習しています。
明日の30日(金)は、中学生の体験入学を西高で行います。来年度の入学生に対して、西高吹奏楽部のサウンドを印象づけて欲しいと期待しています。