校長室からの風

「探究」から「研究」へ ~ 2年生の「総合的な探究の時間」西高プロジェクト発表会

 「いまの子ども食堂と現状」、「私たちの西高PR」、「ゴミの再利用」

 「高齢者と障がい者の方が不自由なく楽しく暮らすには」、「交通安全」

 「車椅子について」、「検証 カラス撃退やってみた」

 これら7本の探究テーマについて、10月18日(火)、2年生普通科の総合的な探究の時間「西高プロジェクト」発表会(体育館)で生徒によるプレゼンテーションが行われました。この様子は、これから地域探究活動を始める1年生の各教室にもオンライン配信されました。また、今年度の西高学校運営協議会委員の中学校校長先生(三和中、城西中、花陵中)、大学関係者(崇城大学、熊本保健科学大学)にも参観いただきました。

 私たちの生活及び身近な地域社会には様々な課題があります。それに気づき、どうすれば改善、解決できるかを考え、調べ、行動して、提案まで行うという探究学習は、今、最も高校で求められているものです。それは教科横断的な内容であり、課題は一人では解決できず、同じ課題意識を持つ仲間とチームで取り組み、さらには学校外の機関や地域社会の人々と連携する必要もあります。受け身ではなく主体的になる学習、仲間や関係する人々との協働学習、そして学びのフィールドが社会に広がる学習です。成人年齢が18歳に引き下げられたこともあり、高校時代に社会に積極的に参画する姿勢を養うことが必須となった現在、探究学習の重要性はより高まっています。

 発表会で最も印象的だったのは、会場からの質問が多かった点でした。「そのように考察された根拠は何ですか?データはあるのですか?」のような論理的な問いでした。それに対し、発表者側も、的確な回答を行ったり、未解決な点は正直に「今後の課題です」と答えたりして、好感がもてました。

 1年生の後半から2年生の前半にかけて取り組んできた探究活動であり、内容も未熟でプレゼンのスキルも不十分です。しかし、自ら考え、仲間とコミュニケーションをとりながら、社会との関りを意識して課題解決に取り組むプロセスは、高校生を大きく成長させると思います。高校でできることは時間的にも内容的にも限られていますが、「探究力」はつけさせることで、生徒一人ひとりの進路につながると期待しています。

 発表した2年生の多くは1年後の今頃は大学、専門学校等の推薦入試に臨んでいるはずです。皆さんは「探究」から「研究」へと進んでいくのです。

「校長室からの風」

創立記念祭を終えて(講評)

 熊本西高校は昭和49年10月に創立されました。最初は職員4人だけで、生徒はまだいません。「清 明 和」の校訓をはじめ校旗、校章、教育課程などを定め、募集定員は普通科4学級で発足することが決まり、翌年の昭和50年4月に第一期生の入学を迎えたのです。今年で創立48年となります。他校では文化祭と言われることが多い秋の文化的行事を、本校ではあえて創立記念祭と呼ぶのはなぜでしょうか? 毎年、創立の原点に立ち返り、新たな西高の元気を発信しようという願いが込められているからです。

 3年前までのように学校全体を会場に、地域に開放しての賑やかなお祭り的行事はできません。しかし、熊本市民会館という立派なホールを舞台に、文化部をはじめ生徒のみなさんのステージ発表が開催されました。本格的なホールは体育館と異なり、音響、照明ともに優れていて、音楽や演劇など舞台芸術には最高の環境が整っています。クラスメイトが、同級生が、ステージ上で演奏、発表する姿は、普段の姿とは違い、より大きく輝いて見えたのではないでしょうか? 友達の新たな一面を発見する機会となったことでしょう。観客が真剣に鑑賞することが、出演者の力を引き出すことになります。皆さんはマナーを守って良い観客でした。だから、ステージ上のパフォーマンスもより良いものになりました。ステージに登場した人は一部の人ですが、裏方を担当した人や観客も含め、西高生みんなで創り上げた創立記念祭になったと思います。

 この創立記念祭は生徒会執行部はじめ実に多くの皆さんの熱意と努力によって実現しました。関係者すべての皆さんに感謝します。コロナパンデミックの中でも、西高は途切れることなく創立記念祭を続けています。これからも、西高は、生徒の皆さんの居場所と出番のある学校でありたいと思います。皆さん一人ひとり、自分の可能性を信じ、未来に向かって進んでください。特に3年生の皆さんは、自分の将来を切り拓く受験という特別なステージで全力を発揮してください。

 最後に一言、「闇の中で眠り 起きて朝日を浴びる」生活を心がけてください。講評を終わります。

                                     「校長室からの風」

 熊本西高創立記念祭の様子(10月12日、熊本市民会館)

命を守るヘルメット ~ ヘルメットを着用し自転車に乗ろう

 「日本では、ほとんどの人がマスクをしていますね。けれども、自転車に乗る人でヘルメットを着用している人はあまりいません。一方、アメリカ合衆国では、マスクをしている人は少ないのですが、ほとんどの人がヘルメットをかぶって自転車に乗っています。交通事故において頭を守ることの大切さを米国人はわかっていますから。日米、対照的な光景です。」

 長くアメリカ合衆国で仕事をされ、この春に帰国し、西高の近くにお住まいの方から聞いた話です。

 明日、令和4年10月1日から、熊本市では自転車利用者のヘルメット着用が努力義務化となります。全年齢層を対象として、熊本市自転車安全利用条例が改正、施行されるのです。その背景として、自転車利用者の死亡事故において、約6割が頭部へのダメージが致命傷となっており、ヘルメット着用が死亡事故を確実に減らすことにつながるというデータがあるからです。

 もちろん、条例による努力義務化ですから、ヘルメットを着用しなくとも取り締まりや罰金・罰則とはなりません。しかし、この機をとらえ、私たちは高校生に対して、ヘルメットで命を守ることになるというメッセージを強く発しなければならないと思います。

 西高では4年前に自転車で通学途中の女子生徒が交通事故でなくなるという悲劇が起こりました。交通事故は無情にも一瞬で、かけがえのない命を奪い、家族をはじめつながりのある人々を悲しみの淵に沈めます。あの日、学校に向かっていた彼女が抱いていた希望、夢、そして未来のすべてが失われたのです。

 自転車通学生の皆さんにあらためて呼びかけます。ヘルメット着用を真剣に考えてください。西高では、育西会から2000円の補助があり、軽くて丈夫でスタイリッシュなヘルメットを2300円で購入できるようになっています。二度とこのような交通事故の悲劇を起こさないために、保護者の方たちがヘルメット購入補助制度を始められたのです。けれどもここ数年、ヘルメット着用の自転車通学生は増えていません。

 今回の熊本市での自転車利用者のヘルメット着用の努力義務化を契機に、全世代で意識が変わり、ヘルメット着用が多数派となることを願っています。ぜひ保護者の皆様もお考えいただき、子どもさんと話し合ってみてください。

 かけがえのない命を守るために。

 「校長室からの風」

     9月12日に実施された育西会の皆さんによる朝の交通指導風景

 

 

 

2年生の皆さんへ ~ 2学年集会

 コロナ第7波に覆われた夏でした。しかしながら、四国インターハイ、東京での全国高校総合文化祭など高校生のスポーツ、文化に係る大きな大会は予定通り実施されました。困難な環境の中にあっても、高校生に日ごろの活動の成果の発表の場を与えたいという大会関係者のご尽力の賜物と有難く思います。西高としても、創立記念祭はじめ2学期に予定している学校行事について、コロナ感染対策を講じながらすべて実施していきたいと考えています。そして、これらの学校行事、生徒会活動及び部活動において中心を担うのが皆さん2年生です。あなた達の出番がきました。あなたたちが前面にでなければならないのです。そういう意識を持って、高校生活に臨んでほしいと思います。

 西高は、教育活動におけるICT(情報通信技術)の活用で県のトップ校を目指し、様々な実践を重ねています。生徒一人一台のタブレットを活用し、わかりやすい授業づくり、生徒同士の共同学習、大学や専門機関のオンライン講座、海外との国際交流、そして今日の学年集会もそうですが、学校行事や校務の改革にICTを利活用しています。皆さんも、必要不可欠な文房具としてタブレットを日常、使いこなしてください。但し、ICTを活用することは一人の世界に閉じこもることではありません。逆のベクトルです。情報をみんなと共有し、チームで課題に取り組む探究的な学習が盛んになります。協調性、チームワークが学習活動の場でも求められます。趣味、性格、個性、価値観が異なる人と一緒に活動していくことは、かけがえのない体験です。高校は人間関係を学ぶ場であることも忘れないでください。

 最後に修学旅行について触れます。体育コースは1年生の12月、無事に長野へのスキー修学旅行を実施できました。しかし、普通科の台湾旅行は2年次に延期し、サイエンス情報科と合同でこの12月に関東への修学旅行を実施することになりました。サイエンス情報科のシンガポール、普通科の台湾という海外修学旅行に引かれ入学してきた人もいると思いますが、コロナパンデミックの終息が見通せない現在、行き先の国内への変更を理解してください。

 今の3年生は、体育コース以外は修学旅行が実施できませんでした。私の判断で最終的に中止を決め、体育館に生徒たちを集め、「この厳しい現実について、時間をかけてもよいから受け止めてほしい、理解してほしい」と語りました。生徒にとって理不尽な体験だったと思います。当たり前のことが当たり前にできない状況は続いています。楽観はできません。皆さん、より一層、自己管理に努め、修学旅行という大きなプロジェクトを実現しましょう。

「3年間で生徒を大きく伸ばす西高」をモットーに全職員で全力を尽くしていきます。本日の学年会が充実したものになることを願い挨拶を終えます。

「校長室からの風」

1年生の皆さんへ ~ 1学年集会

 台風一過、爽やかな秋空が広がった9月20日(月)午後、保護者の方々にもご来校いただき、1年の学年集会を開催しました。保護者の皆様はそれぞれの教室に入り、子どもさんの席にすわってもらい、生徒たちは一同、体育館に集合しました。体育館と各教室はオンラインで結ばれ、時間を共有できます。ICT(情報通信機器)の活用です。

 全体会の冒頭で、1年生の皆さんに対して、3年間で変化していくことの期待を述べました。高校生活はこれからです。自分探しの旅は始まったばかりです。高校3年間は心身ともに大きく成長する時期です。近年のライフサイエンス(生命科学)でもそれは実証されています。私たち人間の身体は何十兆という細胞でできており、日々、分裂を繰り返し、機能更新が行われています。しかし、人間の細胞分裂は、年を取るに伴い不活発になっていくそうです。今年60歳を迎える私はもうあまり細胞分裂が行われない一方、皆さんは人生の中で最も細胞分裂が活性化していて、皆さんは、自分でも気づかないうちに驚くほどこの3年間で変化するのです。

 皆さんは昨日の皆さんではありません。明日の皆さんは、今日の皆さんではありません。急速な社会のICT化、経済のグローバル化という変化に対応できるのは、自分自身が変化していく若者だと私は信じています。

 全体会では、進路指導の講義、2年次でのコース・科目選択の説明が行われました。そして、普通科全員で先般体験したNAIS(西高アカデミックインターンシップ)の生徒発表(中間発表)が体育館で行われました。大学7校、専門学校2校の全面的なご協力によって実現した体験入学について、担当生徒たちがパワーポイントのスライドを使い、体育館でプレゼンテーションを行いました。ICT機器を駆使してのプレゼンテーションのスキル(技能)は急速に向上しており、1年生の豊かな可能性を感じ、頼もしく思いました。

 この1年生が3年に進級する時、私たちの熊本西高は創立50周年を迎えます。その時、私はもう西高に在職してはいませんが、希望をもって2年後を想像しています。

                                     「校長室からの風」

校長室のアートギャラリー ~ 「文化の西高」

 西高校長室に生徒の絵画・書道の作品展示を今年度から始めたことは1学期の「校長室からの風」でお知らせしました。絵画・書道それぞれ1点でしたが、今月、新たに2点の絵画作品が加わりました。いずれも公募展で賞を得た美術部3年生の大作です。

 久保さん(3年)の作品は、友達がくつろいでスマホを眺めている姿を描いたものです。人物像はとても具象的な一方、周囲には小さな点で幻想的な円や半円が浮かんでいて、ぬいぐるみや桃も配置され、不思議な世界が創り出されています。友人への久保さんの思いが創作のモチーフとなっているようです。また、兜島さんの作品は、画面いっぱいに眼が描かれ、この眼差しそのものがテーマです。大きく見開かれた瞳には、樹木の生えた丘陵が映っており、眼差しの強さが見る者に迫ります。兜島さんの眼差しがこれから様々な対象をとらえ、作品が次々に生まれていくことが期待されます。

 久保さん、兜島さんともに、大学の美術学部に進学し、さらに創作活動に精進していく決意を語ってくれました。言葉以上に雄弁な美術作品で、自らの感受性に基づくメッセージを発信し続けていってくれることでしょう。

 また、書道部の活動においても、顧問の山下先生からうれしい報告がありました。9月10日(土)に宇土市で開催された熊本県高等学校揮毫大会において、2年臨書半切部門で内山さんが1位、山下君が3位、2年創作全紙部門で五島さんが3位、2年臨書全紙部門で斉藤さんが3位を獲得しました。西高書道部がこれだけ上位を占めることは近年なかったことであり、快挙です。早速、放課後に書道室を訪ね、部活動中の書道部員にお祝いを伝えました。部員全員、明るい雰囲気で、迎えてくれました。

 西高は、平成3年という県内で最も早く体育コースを設けたことが象徴するように、体育系部活動が盛んな高校として県内外で知られています。玄関や廊下等に、なぎなた部、柔道部、ラグビー部、野球部などの栄光の軌跡の記念品や写真が並んでいます。しかし、近年、美術や書道の分野の伸びは著しいものがあり、「文化の西高」をもっと誇ってよいと私は考えています。

 「ダイヤモンドの原石のような生徒たちがたくさんいます!」と美術部、書道部の顧問の先生方が口をそろえて言われます。原石の生徒を磨いて、育てることができる指導者がいるのが西高の強みだと私は思います。

 西高へご来校の際は、校長室のアートギャラリーで、生徒の美術、書道の作品をご覧ください。

「校長室からの風」

「NAIS」(西高アカデミックインターシップ)開催

 「NAIS(ナイス)」という学校行事が西高にはあります。西高アカデミックインターンシップの頭文字から生まれた言葉です。1年生普通科(体育コース含む)の生徒たちが、大学や専門学校を訪問し、半日単位の体験入学を行うのです。コロナ禍で過去2年間はオンライン形式の実施となり、大学・専門学校側からの説明、講義等が中心でした。しかし、今年度は3年ぶりにそれぞれの大学キャンパス、専門学校の施設を訪問しての体験学習の場となりました。

 「NAIS」にご協力頂いている大学、専門学校は次のところです。コロナ感染がいまだ収束しない中、本校生を受け入れて頂いたことに深く感謝申し上げます。

崇城大学、熊本学園大学、熊本保健科学大学、尚絅大学、九州ルーテル学院大学、東海大学、九州看護福祉大学の7大学

九州中央リハビリテーション専門学校、大原学園の2専門学校

                                         (順不同)

 大原学園での体験入学のみ夏季休業中に実施し、その他の大学・専門学校は8月29日(月)から9月2日(金)にかけて行われました。5日間、生徒達の希望をもとに作られたローテーションに従い、それぞれの大学・専門学校に「登校」します。そして、各大学、専門学校の特色を知り、入門講義を受け、基礎実習・実技を体験するのです。専門的なことを研究するための施設の充実ぶりに驚きます。入門であっても講義の難しさに戸惑います。一方、実習や実技には積極的に取り組んだようです。

 たとえ半日であっても、大学や専門学校の内側の世界を体験する意味は大きいものがあります。しかも、1年生の2学期の始まりに行います。この時期はまだ多くの大学・専門学校が夏季休業中という事情もありますが、西高としては、高校の先にもっと大きく深い知の世界が広がっていることを強く意識し、学びの動機付けとしてほしいのです。今は理解できない大学の入門講義ですが、それを理解できる学力を養うのが高校時代です。高校卒業後の進路、ひいては自分の人生を考えることにもつながると考えます。

 大学の中には、西高の先輩が待っていて、大学の紹介や「高校で学んでおくこと」等の助言をしてくれたところがありました。1年生にとっては、きっとその先輩が大きく見えたことでしょう。大学生の先輩の姿に、近い将来の自分を投影した人もいるかもしれません。

 無限の知の世界が広がっています。1年生の皆さんの学びの旅は始まったばかりです。

「校長室からの風」

「西高、前へ」 ~ 2学期スタート

 新型コロナウイルス感染症第7波に社会が覆われた夏でした。いつ、だれが感染してもおかしくない状況が今も続いています。しかし、この困難な状況の中、ラグビーの7人制全国大会、四国インターハイ、東京での全国高校総合文化祭など高校生のスポーツ、文化の大きなイベントが実施されました。西高から多くの生徒の皆さんが出場、参加できたことは大きな意義があったと思います。

 「高校生に日頃の活動の成果を発揮する場を設けたい」という多くの人々の熱意と献身的努力によって、このような大規模な大会は、開催、運営されたものです。あらためて大会関係者の皆様に、感謝したいと思います。

 ラグビーの全国大会、インターハイと高いレベルの大会ですから、西高生も最後は勝つことができませんでした。優勝の喜びを得られるのは、団体戦なら一チーム、個人戦なら一人だけです。夏の甲子園の野球大会は初めて東北の学校、仙台育英高校が優勝しましたが、全国で4千校を超える参加校があり、深紅の優勝旗を手にできる高校は一校だけです。他はすべて敗者と言えます。

 しかし、負けたことから何を学んだか? 悔しい体験から何を考えたか? 人は深く考えることで、変わることにつながります。負けた体験から成長していくのです。生徒の皆さんの中には、自分は体育系部活動に所属していないから関係ないと思う人もいるかもしれませんが、それは違います。負けるということを失敗という言葉に置き換えてみてください。失敗した、間違った、できなかった、悔しいという感情が出発点です。なぜ失敗したのか、間違ったのかを考えてみる。そうすることによって初めて人は変わっていくことができます。負けて悔しい、失敗して自分の未熟さを知った、という切実な体験を重ねてこそ、皆さんは成長していくのです。

 熊本西高の2学期は8月25日(木)に始まりました。新たに二人の職員が西高に加わります。英語科の坂口先生(1年1組副担任)、新ALTのアリ・アルサネア(ALI  ALSANEA)先生です。アリ先生はアメリカ合衆国アリゾナ州の出身で、スポーツマンです。日本語を勉強中で、廊下で会うと「お疲れ様です」と言ってくれます。生徒の皆さん、新しい出会いを楽しみにしてください。

 2学期、1年生はNAIS(西高アカデミックインターンシップ)から始まります。実際に専門学校、大学に体験入学をして、高校の先の世界を意識してください。2年生は、様々な学校行事、そして部活動の中心になってください。3年生は、自らの進路を切り開いていく時期です。学校あげて支えます。

 「西高、前へ」。皆さん、一緒に前へ進みましょう。

「校長室からの風」 

2学期から赴任の坂口希先生(英語科)とALTのアリ・アルサネア先生

中学生の皆さん、ようこそ西高へ ~ 中学生体験入学(オープンスクール)

    強い日差しと入道雲、蝉時雨。絵に描いたような真夏の一日が始まりました。7月26日(火)、熊本西高校の「中学生体験入学(オープンスクール)」の日です。新型コロナウイルス感染の第7波という困難な環境の中、感染対策を講じ中学生を迎える体制を整え、今日という日を待ちました。

 午前と午後の部に分け、参加者全体を一カ所に集めることはしません。それぞれ1時間の受付時間帯で随時受付を行い、4,5人~7,8人の小グループをつくります。そして、ボランティアで集まった西高生が1人または2人でリーダを務め、模擬授業や理科の物理・化学・生物・地学の実験、そして英会話やeスポーツはじめ様々な文化部活動を体験して回るのです。

 午前9時~午前10時までの午前の受付。自転車で、保護者の送迎で次々と中学生が来校しました。中学生の皆さん、ようこそ西高へ。遠隔地の中学生のためにJR熊本駅と西高を結ぶ臨時貸し切りバス1台を走らせましたが、30人以上の利用がありました。受付の1学年棟の入口では、太鼓部の歓迎演奏が行われました。そして、リーダーの西高生が各グループを引率し、校内を回ります。参加した中学生の好みも聞きながら、各種体験活動の場に案内します。そこでは、係の西高生が中学生を支援して、実験や様々な学習活動を体験します。この体験入学の目的は、西高生と中学生の触れ合いなのです。中学生の皆さんに西高生のことを直接知ってほしいのです。

 午前の部は約200人の参加者がありました。午後の部は午後1時~午後2時が受付。約130人の中学生が来校してくれました。また、中学生の保護者の方達も午前と午後合わせて40人を超えました。昨年よりも中学生、保護者の来校者は増えました。西高生を前面に立て、教職員はそのサポートに徹し、中学生の皆さんに西高の雰囲気を体験してもらうという狙いは当たったと思います。 

 西高に初めて来たという中学生がほとんどだと思います。中学校よりも広大な敷地に戸惑い、正門から入っても迷う中学生もいました。西高育西会の役員有志の方達や、当初の計画にはなかった事務部の職員の方にも手伝ってもらい、おかげで大きなトラブルもなく和やかな中学生体験入学となりました。

 日差しは強い一日でしたが、有明海からの風が吹き抜け、西高特有の爽やかさも覚えました。高校生と比べると明らかに幼い中学生のあどけない表情、好奇心等を様々な場面で感じた一日でした。

 今日の体験入学が「西高を選ぶ」きっかけとなってくれることを期待します。

「校長室からの風」

「未来への可能性」 ~ 大西市長からのメッセージ

 「未来への可能性」というタイトルで、大西一史 熊本市長のご講演を西高の2年生が聴く機会に恵まれました。7月14日(木)、会場は熊本市民会館シアーズホーム夢ホールで、NPO法人熊本教育振興会の主催によるものでした。同会の主要活動である「新しい風を呼ぶ教育講演会」は、今年度は西区の高校生を対象にしていただき、市立千原台高校2年生と県立熊本西高2年生の合同参加の講演会となりました。両校の代表生徒たちが司会進行を務め、謝辞も行いました。

 大西一史熊本市長(2期目)は54歳、政令指定都市熊本のリーダーです。日頃はテレビなどマスメディアを通してしか知らない熊本市長が、直接高校生にメッセージを伝えられる特別な学びの場となりました。

 「やったことに無駄はない」

 プロになるつもりで高校、大学時代に没頭したバンド活動の話から始まり、140社余り受けた就職活動、そして商社でのビジネスマン生活、国会議員秘書時代の体験とダイナミックな経歴を語られます。

 「何歳からでも学び直しができる」

 熊本へ帰ってきて30代で県議会議員に当選し、議員活動を始められます。そして、40歳で九州大学大学院に入り、法政理論を学び、修士号、博士号を取得されます。この大学院での学び直しは大きい意味があったと述べられました。

 「高校生としての目線でよい、自分の頭で考える」

 6年前に18歳選挙権が導入されましたが、相変わらず若い世代の政治への関心が低いことを指摘されます。みんなの声が反映されるのが政治であり、そうして社会は変化していくもの。インターネット上で政治家は自分の考えを表明しており、ネットを通して質疑応答もできる環境となった。若い世代に対して、もっと政治を身近に意識してほしい、関心をもってほしいと呼びかけられました。

 「より良い意思決定には経験が必要」

 不確実性が高く、正解のない問題があふれている現代社会。急速な情報化、グローバル化に対応しながら、正しい意思決定を行い、生きていくことは大変なこと。しかし、何がファクト(動かぬ事実)か見極めて意思決定していかなければならない。それには人生経験が必要だと強調された。市長自身は若い頃から何度も失敗し、修正し、経験を深めてきたことが今の拠り所となっているとのこと。

 約90分間、張りのある力強い声は変わることなく、情熱をもって高校生に「未来への可能性」を語り続けられた大西市長は次の言葉で締めくくられた。

 「青年は決して安全な株を買ってはならない」(ジャン・コクトー)

「校長室からの風」

西高生、全国の舞台へ! ~ ラグビー7人制全国大会、インターハイ、全国高校総合文化祭

 7月16日(土)~18日(月)、ラグビーの聖地、菅平高原(長野県上田市)で第9回全国高等学校7人制ラグビーフットボール大会が開催され、熊本西高ラグビー部は3回目の出場を果たしました。14日(木)夜に熊本を貸し切りバスで出発し約20時間かけ現地に到着。予選リーグで1勝1敗となり決勝リーグに勝ち上がることはできませんでしたが、敗者復活戦リーグで試合を重ね、力を大いに発揮しました。19日(月)のお昼頃、帰校。悪天候の中の長時間のバス移動にもかかわらず、15人の選手達は疲れも見せず、実力を出し切った達成感と冬の花園大会に向けての意欲を示し、頼もしく思いました。

 また、今年の全国高校総体(インターハイ)は四国4県が会場です。「躍動の青い力 四国総体2022」です。全国高校総合文化祭は「とうきょう総文2022」、東京で開催されます。いずれも西高生の出番は8月上旬の予定です。

 総体、総文祭に本校から、柔道部、なぎなた部、陸上競技部、ウェイトリフティング部、書道部、美術部と六つの部活動、合わせて21人の皆さんが出場します。eスポーツ部の1チーム2名も、予選を勝ち抜き、フォーナイト部門のオンライン全国大会(8月)へ出場します。

 伝統を誇る柔道部は団体と個人(4部門)が全国上位を目指します。なぎなた部は6月に行われた全九州総合体育大会で団体3位となり、自信を深めています。陸上競技部の杉山君(走り高跳び)、飯田さん(やり投げ)、水野君(砲丸投げ)の3人は2年次から県のトップ選手で、南九州大会でも上位入賞の実力者ぞろいです。全国大会での躍進が期待されます。ウェイトリフティング部は個人3部門に出場。3人とも西高入学後に競技を始め、伸び盛りの選手たちで、初めてのインターハイを楽しみたいと語っていました。

 この2年半、未曾有のコロナパンデミックによって私たちの生活は大きな影響を受けました。部活動も様々な制約を受け、思うような活動ができなかったと思います。目標を見失いかけたこともあったでしょう。それでも、自己管理に努め、たゆまぬ努力を続けてきたことが全国大会出場につながったと思います。逆境の中でも、生活の軸がぶれず、自らの本分を貫いた姿勢を心から称えたいと思います。

 全国大会に出場する西高生が、全国各地から参加する志ある高校生と競い合い、交流し、ひとまわりもふたまわりも大きく成長し、笑顔で帰ってきてくれることを期待しています。

 西高生、全国の舞台へ進む夏です。

「校長室からの風」

     女子柔道部          なぎなた部           陸上競技部

 ウエィトリフティング部     eスポーツ部

「真心はかはらざりけり」 ~ 160年前の国際交流から学ぶ

 ただいまALTのケリー先生の退任式を行いました。ケリー先生の故郷、カリフォルニア州はアメリカ50州の中で最も人口が多く約4000万人。面積は42万㎢あり、日本列島がすっぽり入る広大さです。サンフランシスコやロサンゼルスといった大都市があり、ヨセミテ国立公園などがあることでも知られています。

 そして、私たち日本人にとって、カリフォルニアはハワイと並んで歴史的に深い関係がある州です。鎖国が続いた江戸時代の末期、アメリカのペリー来航によって日本は開国することとなりました。1860年(万延元年)、アメリカ合衆国と通商条約を結ぶために江戸幕府の使節団が、咸臨丸やアメリカの軍艦に乗船し、太平洋を航海しました。一ヶ月以上かけて西海岸のカリフォルニア州サンフランシスコに到着したのです。幕府使節団はこの後、首都ワシントンやニューヨークなどを訪問し、鉄道や近代的な工場、ビルディングなど進んだ西欧文明に圧倒されます。長い鎖国政策で世界を知らなかった幕府の使節団にとって、言葉も通じず、人種も違い、服装や食事など生活慣習も大きく異なるアメリカの人たちはどう映ったのでしょうか? 自分たちとは全く違う化け物のように感じたのでしょうか?

 使節団の一人の村垣淡路守という人がアメリカで歌を詠んでいます。

 「姿見ればことなる人とおもへども その真心はかはらざりけり 」

 姿は違っても、心は同じだと言っているのです。

 それでは、ちょんまげを結い、刀を差した和服姿の侍たちは、アメリカの人々に野蛮人扱いされたのでしょうか?全く逆でした。東洋のサムライの一行が初めて米国へ来たと大歓迎を受けます。かれらの立ち居振る舞いは礼儀正しく気品があると当時のアメリカの新聞、雑誌が報道しています。

 160年前の私たちのご先祖、サムライたちは、国が異なり、習俗が違っても同じ人と人なのだと本質を見抜きました。開国したばかりのアジアの島国から来た、変な格好をした日本人をアメリカの人々は温かく迎え入れました。

 翻って21世紀前半の今日、分断と対立が世界各地で起こり、ウクライナでの戦火がやみません。人種、宗教、言語、政治などが異なっても、私たち人間同士には本質的に理解し合えるものがあるのだということを、私たちは歴史から学ぶことができると思います。

 明治時代になると日本から多くの移民が船でカリフォルニアへ渡りました。「その日本人移民の子孫の一人が私かもしれません」とヨギ・ケリー・アン先生が笑いながら語ってくれたことがありました。

 ケリー先生と出会えた幸運に感謝し、1学期終業式の話を終わります。

「校長室からの風」

    表彰式、全国大会出場部への同窓会からの激励金交付、1学期終業式のスタジオの様子

ケリー先生有り難う! ~ ALT退任式

 Assistant Language Teacher(ALT)のケリー先生は、コロナパンデミック前の2018年夏に西高へ赴任され、4年の勤務を経て来月、アメリカ合衆国へ帰国されます。ケリー先生はICT(情報通信技術)が得意で、アメリカの友人やご家族とオンラインでつなぎ、本校と交流授業を何度も実現されました。パンデミックの中でも、インターネット環境とタブレット端末があれば国際交流ができることを証明してくれました。また、ケリー先生はいつもポジティブで、フレンドリーでした。ケリー先生の出身はカリフォルニア州。アメリカ西海岸の太陽の明るさや太平洋のビーチの爽やかな風を連想するお人柄でした。

 

 Greeting of thanks  for  Ms Kelly.

Thanks  for all your work at Kumamoto west High School.

You taught students English hard and politely for four years, and you encouraged students. Students loved your English lessons.

 We will miss  you  because  you will leave  Kumamoto soon.

but we will never forget  working  with you .

It is very tough to say good bye.

We hope you will remember  Kumamoto forever.

You are youthful,  and  you have  great potential.

We wish  the best luck on your bright future.

thank you so much.

 有り難う、ケリー先生!

                           2022年7月15日

(校長室からの風)

            ケリー先生によるカリフォルニアとの国際交流授業の様子(4月)

                  ケリー先生退任式の様子(7月15日)

夏が来た ~ 梅雨明け、向日葵、期末考査 

 校庭のひまわり(向日葵)が伸び、勢い盛んです。その眩しいほどの黄色の花が夏の太陽を象徴しているかのようで、見ているだけで元気が湧いてきます。

 6月28日(火)に熊本県が梅雨明けしました。観測史上最も短い梅雨でした。そして梅雨明けと同時に太平洋高気圧の勢力が増し、一気に猛暑の夏が始まりました。連日、35℃に迫る危険な暑さが報道されています。

 熊本西高では6月28日(火)~7月1日(金)まで1学期期末考査が行われています。午前中、エアコンの効いた教室で試験問題に取り組みます。そして、昼には早々に帰宅する生徒が多いのですが、試験期間中、午後も学校に残り試験勉強する生徒の姿が見られます。風が吹き抜ける生徒ホールで机を寄せ合って勉強する生徒たち。また、エアコンが効いた図書室で勉強する生徒たち。気温が上昇するにつれ図書館組が増えてきたようです。

 二人から三、四人で勉強を教え合う姿はほほえましく爽やかです。苦手な科目は学校で、得意な科目は自宅で行うのが試験勉強の鉄則です。また、友達に教えることで自分の知識が整理され、自らの学力定着につながることはよく知られています。先生から教えられたことより、友人同士で教えあった方の定着率が高くなることもよく言われます。勉強は孤独な営みの面もありますが、チームワークの側面もあるのです。そして、様々な学びの場を提供するのが学校の役割です。

 「僕はやっぱり英語は紙の本で勉強した方がやりやすいです」とある生徒が図書館で言いました。タブレット端末を活用してのリスニングやスピーキングの技能向上の一方、リーディングやライティングは紙の本(参考書、問題集)を愛用していると彼は言いました。デジタルとアナログ双方の特色を活かして、自分なりのスタイルで勉強することが大切です。自分に合った勉強方法を見つけてほしいと思います。令和の学校は、ICT(情報通信技術)の普及により、勉強方法も多様に広がりました。しかし、自分の頭で考えるという身体性は変わらないと思います。

 学校に残って試験勉強に悪戦苦闘する生徒達の姿を、ひまわり(向日葵)が見守っています。期末考査も明日まで。明日の午後は部活動が再開されます。2022年は記録的な長く暑い夏になりそうです。皆さん、大いに水を飲み、手を洗い、高校生として夏を満喫しましょう。

「校長室からの風」

バトンは引き継がれました! ~ 6月17日、新生徒会の発足(認証式)

 ここに坂田菜月(なつき)さんを会長に新しい生徒会が発足したことを全校生徒の皆さんと共に喜びたいと思います。会長、副会長はじめ14人の皆さんは、自らの意志で一歩前に出て、西高の生徒会役員という責任を担ってくれることになりました。その進取の精神を頼もしく思います。

 また、この1年間、西高を引っ張ってきてくれた、濱﨑まりのさんを会長とする旧生徒会役員の皆さんに深く感謝します。コロナパンデミックの様々な制約がある中、力を合わせ工夫し、創立記念祭や体育大会などの大きな学校行事を充実したものに創り上げてくれました。キッチンカーを学校に呼ぶなどユニークな企画も印象に残っています。そして、新しい女子の制服として、ポロシャツやスラックスの導入の提案があり、来年度から実現する運びです。常に前向きに取り組む姿勢は、きっと新生徒会にも引き継がれることと思います。

 さて、今年4月から成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。18歳成人の時代到来です。すでに18歳選挙権は6年前に導入されています。高校生の皆さんは、大人の入り口に立っているのです。社会には多くの課題、問題があります。誰かヒーローが現れて解決してくれると思っていても社会は変わりません。皆さん一人ひとりが、積極的に社会に関わっていく姿勢が大切です。学校も同じです。生徒会役員だけでなく、全校生徒一人ひとりが「私たちの学校、西高」という意識を持って欲しいと思います。

 これから、私も、新生徒会役員の皆さんと学校行事や学校のルールなど様々なことについて対話していきたいと思っています。

 新生徒会の皆さん、「for  others, with  others みんなのために みんなとともに」というモットーで活動していってください。そうすればきっとあなた達のもとに皆が集まってくると思います。一緒に、「私たちの学校、西高」を創っていきましょう。

「校長室からの風」

試練を超えて ~ 県高校総体で女子柔道部4連覇!

 「団体優勝が決まりました!」という顧問の大久保教諭からのメールを受け取った時、ちょうど会場の駐車場に到着しました。急いで車を降り、山鹿市総合体育館の柔道場に入ってみると、表彰式が始まるところでした。優勝の瞬間には間に合いませんでしたが、晴れ晴れとした笑顔の選手達の様子を間近に見ることができ、格別な喜びを共有できました。

 令和4年度熊本県高校総体女子柔道団体戦は、6月3日(金)午後に行われました。私は午後1時半から2時半まで県立劇場の県高校総合文化祭開会式に出席し、式が終了次第、山鹿市の柔道会場へ車を走らせたのです。女子柔道部に対しては強い思い入れがありました。今年1月の県選抜大会に新型コロナウイルス感染症の影響で出場できず、悔し涙を流しました。柔道の試合はマスクを着けず、密着した競技となるため、コロナの感染リスクが高く、その後も思うような部活動ができず、部員達は苦しみました。誰も悪くありません。ウイルスという見えない敵に翻弄され、目標を見失いがちな時もあったと思います。しかし、荒木信知教諭の指導を信じ、部員一同が結束して練習に懸命に取り組み、たゆまぬ努力を重ねてきました。自分たちを厳しく追い込む鍛錬の日々を見てきた私は、この度の県高校総体で先ず柔道部の応援に駆けつけたのです。

 西高女子柔道部は、見事復活し、県高校総体4連覇を果たしました。度重なる試練を乗り越えての堂々たる勝利でした。表彰式に臨む団体メンバー(山田さん、平原さん、東さん、藤原さん)、及び全員一丸となって応援した部員(15人)のみんなと共に喜びを分かち合うことができました。

 女子柔道部は神が与えたような試練を乗り越え、凱歌をあげました。しかし、一緒に高校総体総合開会式に出場したラグビー部は決勝進出を逃しました。伝統の強さを誇る女子なぎなた部は、団体戦は制したものの個人戦優勝を他校に奪われるという無念の結果でした。その他、それぞれの競技種目において、目標を達成できず、不本意な結果に甘んじた生徒達がいます。今は失意に沈み、気持ちの整理がつかない状態かもしれません。しかし、柔道部の例でわかるように、勝負の世界は「悲喜交々(こもごも)至る」(悲しみと喜びが代わる代わる起こる)ものなのです。

 負けたことから多くのことを学んだとやがて気づくことでしょう。悔しい体験も豊かな体験なのだと時間が教えてくれると思います。

「校長室からの風」

高校生のエネルギー発信の舞台 ~ 県高校総体・総合文化祭の開幕

   令和4年度第50回熊本県高等学校総合体育大会の総合開会式が6月3日(金)午前、「パークドーム熊本」(県民総合運動公園)が行われました。参加校が一堂に会しての総合開会式の実施は3年ぶりのことです。

 国旗及び高体連旗を持って先頭で行進したのは西高陸上競技部の生徒達です。全77校が総合開会式に参加し、西高は5番目の行進。各学校、生徒・教職員合わせ15人以内と定められ、本校はラグビー部の生徒と顧問教諭、そして団長として校長の私が出場しました。新型コロナウイルスの出現前は、「えがお健康スタジアム」に観客の高校生も含め約1万人の大規模な祭典でした。今回の規模はその10分の1で、屋根付き会場のため熱中症の心配もなく、シンプルではあっても選手のコンディションに配慮されたスマートなものでした。「アマチュアスポーツに引退はありません。生涯にわたってスポーツを続けてください。」との高体連の大嶋会長の挨拶が胸に響きました。オープニングアトラクションとして、熊本工業高校の吹奏楽部による華麗で勇壮なマーチングドリルも行われました。

 コンパクトな総合開会式でしたが、県下の高等学校の一体感があり、ラグビー部の生徒達と共に歩き、参加できたことで熱い思いに包まれました。さあ、アスリートの戦いが繰り広げられます。「みんなは、自分で思っている以上のエネルギーを持っている。この高校総体で存分に爆発させよう!」とラグビー部員を励ましました。

 第34回熊本県高等学校総合文化祭の総合開会式が同日の午後、熊本県立劇場で行われました。こちらも3年ぶりです。オープニングアトラクションで、西高生を含む有志の演劇部員合同パフォーマンスに引きつけられました。それは、コロナパンデミックによって声を発することが制約された苦しみの表現から始まり、表現の手段は言葉だけではないことに気づき、身体全体を使って表現するパフォーマンスでした。そして、最後に「きざめみんなの青春ONEカット!」と大会テーマを声高らかに発信したのです。

 2年を超えるコロナ禍という逆境の中にあっても、熊本の高校生は自らが選んだ部活動(体育・文化)にひたむきに取り組んできました。そのエネルギーを発信できる最高の舞台を設けることができました。このことが望外の喜びです。

 「校長室からの風」

 県高校総合文化祭開会式のオープニングアトラクション(演劇部合同パフォーマンス)

先輩が支える西高の強さ ~ 高校総体目前

 体育部活動の集大成の場となる県高等学校総合体育大会(高校総体)の先行競技が始まりました。5月28日(土)、サッカーの1回戦を応援しました。水前寺競技場において午前10時キックオフ。対戦相手の有明高校に押されながら、西高も時に反撃に出る好試合となりました。惜しくも2点を奪われ、0-2で敗れました。プロサッカーの試合も行われる水前寺競技場という最高の環境で、最後まで戦い抜いた西高サッカー部の健闘を心から称えたいと思います。試合後、うつむいて悔し涙を流している生徒達の様子を見ると、勝負の厳しさを思い知らされます。励ます言葉も容易には出てきません。けれども、全力を尽くした結果について時間をかけて受け入れていくことで、高校生は大人へと成長していくものだと思います。

 28日(土)~29日(日)、サッカー以外にバドミントンやソフトテニスなどの競技が先行実施されました。そして、6月3日(金)から本番を迎えます。各部活動において、かけがえのない仲間と共に残された時間、完全燃焼の日々です。放課後、部活動の様子を見て回ると、高校総体に向けて気迫と緊張感が高まっていることが感じられます。

 そのような中、独自の存在感を示しているのが教育実習生の支援です。今年も体育コースの卒業生4人の大学生がこの時期に教育実習に来ています。それぞれラグビー、陸上、水泳、なぎなたが専攻で、現役の大学生選手として活躍しています。この先輩達が、高校総体直前の各部活動の練習に参加し、後輩を励まし、支えてくれているのです。27日(金)の放課後、なぎなた道場で教育実習生の坂本さん(福岡大学)が部員に指導する光景を見て、これが西高体育コースの伝統の力と感じました。なぎなた部では、高校時代に日本一に輝いた先輩(春山さん)が昨年もこの時期に教育実習に来ており、部員達を奮い立たせました。練習が終わった後、なぎなた部員に私は言いました。「君たちの中からも数年後に教育実習に来て、こうして後輩を指導する人が出てほしい、このつながりが西高なぎなた部の伝統です」と。

 西高生の皆さん、新型コロナウイルス感染予防をはじめ健康管理に努め、良いコンディションで高校総体に臨み、ベストを尽くしてほしいと念じています。

 「校長室からの風」

体育大会での高校総体・総合文化祭選手推戴式

「先生」と呼ばれる喜びと責任の重さ ~ 教育実習始まる

 西高では、5月23日(月)から教育実習が始まりました。教員免許状を取得するためには必須の実習であり、今年度は9人の大学生の皆さんが実習に臨みます。期間は2週間、3週間、4週間と異なりますが、かけがえのない体験になると思います。高校生から「先生」と呼ばれます。最初は戸惑いや気恥ずかしさがあるでしょうが、「先生」と呼ばれる喜びと、その責任の重さをかみしめる日々になることでしょう。

 9人の教育実習生の内8人が平成30年度の西高卒業生です。それぞれ大学に進学し、専門の課程に加え教職課程も履修し、母校での実習の日を迎えたことになります。当時の担任や教科担当、部活動の顧問にとっても感慨深いものがあります。かつての生徒がスーツに身を包み職員室で挨拶する様子を、多くの職員が笑顔で見つめていました。私たち教員の使命は人材育成です。私たちの後を継ぐため、未来の教員への道を歩んでいる姿を見ることは喜びです。私たちも通った道です。学校として教育実習生を心から歓迎し、充実した実習になるよう支援していきたいと思います。

 また、教育実習は在校生にとっても大きな出来事です。数年前に卒業した先輩達が、「先生」として指導に当たります。年齢的に近く、その若さは魅力であり、大学生活をはじめ様々な情報に接することができ、自らの進路への意欲がかき立てられる貴重な機会となります。

 今日の1限目、校長室で実習生の皆さんに研修講話を30分ほど行いました。「最も力を入れてほしいことはやはり授業です」と強調しました。教えることは自ら学ぶこととは全く異なり、とても難しいものです。実習生の皆さんにとってはそれぞれ得意の教科・科目ですが、その教科・科目が苦手な生徒達の興味・関心をどう引き出すかが課題です。「教えよう」という教員の視点ではなく、「できるようになる」という生徒主体の視点で考え、創意、工夫を重ねてください。若い現役の大学生である実習生の皆さんは、その存在自体が高校生を引きつけます。

 まさに5月の風と等しい、清新な風が西高に吹き込んできました。教育実習期間の西高は、いつも以上に活気あふれる学校となるでしょう。 

「校長室からの風」

誰も見ていなくても ~ 「善行」の報せ

 体育大会を5月8日(日)に実施し、いまだその余韻のようなものが校内にはあります。西高生の連帯感がより強まったと感じます。そして、「新入生」(1年生)が「西高生」に変身したという気がします。五月は、緑や花が瑞々しく生命感がみなぎり、県高校総体及び総合文化祭の開催を控え、学校が最も活気付く季節です。この時期にふさわしい爽やかな「善行」の報せに今週は二件接しました。

 一件は、大型連休中、西区の県道で道路脇の溝に足を滑らせ転倒された高齢の女性を、通りかかった男子高校生3人が協力し助けたという事案です。「有り難う。どこの高校ね?」と尋ねられると、「西高です」とだけ言い、3人は立ち去ったそうです。お礼の電話が学校にかかってきて、生徒達に照会したところ、1年生の野球部員3人が名乗り出てきました。

 もう一件は、西高からJR熊本駅行きの路線バスの車中の出来事です。雨天の夕方で、車内は西高生はじめ帰宅途中の乗客で混み合い、立っている人がいる状態でした。田崎付近で高齢の女性がバスに乗って来られたところ、座っていた女子生徒が即座に席を立ち、女性に譲ったそうです。その自然な振る舞いを見て、乗り合わせていた乗客の方から「気持ちがほっこりする、温かいものを感じました。制服が西高だったのでお知らせします」とご連絡がありました。

 まだまだ成長途上の高校生です。自転車の並進はじめ交通マナーに関して、地域社会からお叱りを受けることもあります。公衆道徳に関しても十分ではなく、ご批判を受けることもあります。しかし、私たち教職員は、生徒の可能性を信じ、時に厳しく指導する一方、生徒達を認め、ほめ、励まして伸ばしていかなければなりません。

 生徒の皆さん、私たち教職員がいなくても、保護者がいなくても、仮に誰も見ていなくても、あなたの行動はあなた自身が見ています。昔の人は、「お天道(てんと)様に顔向けができない」という表現をしました。誰も見ていなくても、太陽は見ているのだから、道を外れたことはしてはいけないという戒めです。他者の評価ではなく、自らの内なる規範に従い、より善く生きようという気持ちを大切にしてほしいと心から願います。

「校長室からの風」

              5月8日の体育大会の様子