校長ブログ

よかボス宣言

 働きやすく働きがいのある職場環境の実現を目指すため、教育長を筆頭に各学校長が「よかボス宣言」を行うことになりました。以下にその宣言を掲載します。



平成29年10月

 10月の下旬になって大きな台風が立て続けに日本にやってきました。以前はこのようなことはあまりなかったように思います。台風が日本にやってくる時期は、二百十日前後とも言われていますが、今は期間を広げて注意しておく必要があるようです。
 9月の校長室便りの続きの話題になります。先日、新聞にも取り上げられましたが、1年の美術科を対象として、絵の具をつくる実験を化学と美術の教員が協力して行いました。実験では、プルシアンブルー、クロムイエロー、ジンクホワイトの3色を作りました。プルシアンブルーは、9月で紹介したとおり「若冲」も使った青色の顔料です。ジンクホワイトの主成分は酸化亜鉛で、別名亜鉛華とも呼ばれています。ちなみにこの亜鉛華は医薬品として皮膚に塗る軟膏にも用いられています。
 さて、実験で合成した顔料で絵が描けたのでしょうか。このHPの「びとろぐ」のコーナーに写真が掲載してありますのでご覧ください。若冲の青い魚の絵に似せて色を塗った班もあったようです。この実験は美術と化学のコラボのような題材で、これを研究に発展させることも可能ではないかと思います。たとえば実験で合成したプルシアンブルーをどのようにしたらもっと「若冲の青」に近づけることができるのか・・・等、様々な観点からアプローチしてみるとおもしろいものに行き着くかもしれません。
 ところで、10月になるとどこからともなく、モクセイの花のいい香りがしてきます。本校の敷地内にもモクセイの木が何本も植えられています。主に植えられているのは、キンモクセイです。所々にギンモクセイも見られます。管理棟の解体に伴って管理棟と教室棟の間に植えられていた大きなキンモクセイが伐採されてしまいました。半円状のきれいな樹冠をしていて気に入っていたのですが、新たな管理棟を建てるために伐採ということになってしまいました。街路樹や庭木として植えられているのは、主にキンモクセイです。このキンモクセイは、ギンモクセイからできた変種とされ、江戸時代に中国から入ってきたようです。区別は、花の色でわかります。キンモクセイは黄色い花で、ギンモクセイは白い花が咲きます。においもギンモクセイの匂いはキンモクセイより穏やかになります。個人的にはギンモクセイの香りが好きです。雌雄異株であり、日本で植えられているキンモクセイのほとんどが雄株で実がなりません。
 私の実家の庭の片隅にギンモクセイの大木がありました。残念ながら数年前に枯れてしまいました。モクセイの花が咲くのが10月過ぎの秋ですから、この花の匂いが漂う頃が稲の実りの時期と重なり、稲刈り、脱穀、籾すりを思い出します。また、ギンモクセイには春に濃い青色の実がつきますので、このモクセイの実を見ると春から麦刈りの頃を連想します。日本は四季の変化が顕著ですから、季節によって生物の状況などが大きく変化します。生物の季節現象を調べる学問のことを季節学といっています。学校の敷地内にも様々な木が植えられていますので、時期によっていろんな変化を見せてくれます。本校は、敷地が広くまた騒音も少なく静かな環境でもありますから、学習するには本当によいところだと思います。施設の復旧工事が進んでいますので、大きなトラックが入ってきて不要なものを運び出したり、工事の音もして以前の学習環境とはいえませんが、もう少し辛抱すると新たな第二高校が完成します。それを心待ちにしています。

平成29年9月

 9月17日に台風18号が鹿児島県に上陸し、その後、四国、本州、北海道を通過し、サハリンに上陸して温帯低気圧となりました。観測史上初めて、日本の本土4島(九州、四国、本州、北海道)に上陸した台風となりました。毎年いくつもの台風が日本にやってきますが、今回のようなコースははじめてということで少し驚きました。台風18号がまだ東シナ海上にある時にその予想されるコースが、熊本県に上陸するような予報でしたので、心配しました。藤崎宮秋季例大祭などの行事も延期になったり中止となってしまいましたが、皆さんのご家庭では台風の影響はいかがだったでしょうか。
 さて、このHPで学校の復旧状況をその都度お知らせしています。数日前に管理棟と図書館の解体状況の写真を掲載しましたが、建物は二つともなくなり今はコンクリートや石垣のがれきを選り分けて処理しています。もう少しすると盛り土の一部が取り除かれる予定です。近くから盛り土の土の様子を観察しました。石ころなどが少なく一見表土のように見えます。以前東町に移る頃に本校に勤務された先生が、「現在地は北の方が高く南の方が低かったので、北側の土を削りその土で南側の一部を一部高くした」と話しておられました。盛り土の部分を見ると石ころがあまり含まれていませんので、表土を盛ったと考えられます。それが原因なのかわかりませんが地面が弱かったのでしょう。その上の建物がやられてしまいました。削った土はどこかに行くわけですが、専門家ではありませんが表土として使えそうな感じがします。田んぼとかの客土に使えるかもしれないと思っていたところ、削った土は震災復旧事業として秋津の農地の復旧に使われるようです。有効活用ができるということでありがたく思っています。
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 新聞記事を読んでいたら、「豚のレバーから若冲の青を再現」という記事がありました。伊藤若冲は動植物を緻密な表現で描いた江戸時代の絵師です。その時代に西洋から「プルシアンブルー」という新しい顔料が日本に入ってきました。若冲はこの顔料をいち早く取り入れたことでも知られています。専門家のなかには、若冲は「色に執着した画家」と呼ぶ人もいるようです。このプルシアンブルーは1704年にベルリンで偶然に発見された顔料だそうで、その後この顔料が草木の灰(アルカリ)と牛の血液から製造できると発表されています。今回の新聞記事には、スーパーで買った豚のレバーを原料としてこの顔料をつくったと書いてありました。その顔料の化学成分について触れておきます。牛の血液や豚のレバーには鉄分が含まれます。その鉄分の化学変化によってこの顔料となり色素が合成されます。プルシアンブルーは和名では紺青とも呼ばれ濃青色をしています。ベルリンブルー、ターンブルブルーなどの名前で呼ばれることもあります。成分はヘキサシアニド鉄(Ⅱ)酸鉄(Ⅲ)(別名:フェロシアン化鉄(Ⅲ)、ファエロシアン化第二鉄)であり、鉄(Ⅱ)イオン、鉄(Ⅲ)イオン、シアン物イオンが組み合わさった錯体です。化学の授業では、鉄の化合物の性質を調べる実験で出てきます。久しぶりに化学の教科書を開いてみました。教科書には次のように書いてあります。「鉄(Ⅲ)イオンを含む溶液に、ヘキサシアニド鉄(Ⅱ)酸カリウム水溶液を加えると濃青色の沈殿が生じる。この沈殿がベルリン青である。」この新聞記事のことを美術科の職員に伝えると、さっそく美術作品とプルシアンブルーの関係について資料を持ってきてくれました。美術科では、SSH事業の一環で科学的に色を研究しようとしていますので、何か教材に使おうと考えているようです。生徒たちの反応が楽しみです。
 既にご存じの方も多いかと思いますが、現在熊本県立美術館で、伊藤若冲の作品が展示されています。新聞記事の若冲の話題は、展示会があることを知る前に目に止まり偶然でした。先日用事があって美術館に行き、若冲の作品を見てきました。やはり実物を見ると違います。写真では感じられないような迫力を感じました。生徒たちにも展示会があっていることを紹介したいと思っています。

平成29年8月

 残暑お見舞い申し上げます。今年も熊本県では猛烈な暑さが続いています。二十四節気の「処暑」は8月23日でした。処暑は、暑さが峠を越えて後退し始める頃とされているようですが、なかなか涼しくなりません。9月の藤崎宮の祭の頃になると涼しさを実感できるようになるのではないかと思っています。
 1学期の終業式の日に、同窓会からバス(りんどう号)を寄贈していただきました。夏休み中に部活動は合宿や遠征の日程を組みますので、その移動手段として多くの部活動がりんどう号を使用し、有効に活用させていただいています。同窓会の皆さんありがとうございます。美術科生徒のデザインで外側をラッピングしていますので、ある顧問は、「りんどう号は目立っています」と言ってくれています。りんどう号がいろんな場所で見かけることによって話題になり、第二高校の知名度がこれまで以上に上がることを期待しているところです。
 さて、熊本地震で被害を受けた施設の復旧状況について少し触れておきます。正門側の管理棟は建て替えになっていますので、取り壊す作業が続いています。壊す途中の写真はこのHPにも掲載していますが、現在、管理棟のほとんどが取り壊された状態になっています。機械でコンクリートを崩していきますが、鉄筋コンクリートが相当硬いのかはわかりませんが、プレハブの管理棟がその影響で揺れました(地震が来たのかと一瞬思いましたが)。どの部分を壊しているのだろうかと興味があったので見に行ったところ、管理棟の玄関から東部分の床のあたりを機械が壊していました。そのときには管理棟は一番東側の壁1枚が残っているだけとなっていましたので、壊していくのはあまり時間がかからないものだということを実感しました。コンクリートや鉄筋を仕分けして置いてありますが、そのうち片付いて平地になるものと思います。本校の敷地は独特な作りになっていて、管理棟、教室棟、理科棟の地面の高さは同じではありません。管理棟は、東側が盛り土をしてあって一部2階及び3階建ての構造となっていました。この盛り土が今回の地震で影響し、盛り土の上に建っていた管理棟と図書館が建て替えとなってしまいました。新しい管理棟と図書館は、盛り土の一部を削って地面を正門の水準に合わせて、そこに建てる方向で検討されているようですが、まだはっきりとした案は示されていません。新しい管理棟や図書館は、きっと外側も内側もきれいで機能的な作りになるものと思っています。
 現在、構内の至る所で工事が行われています。渡り廊下が8本全部撤去されました。また、体育館の屋根の改修工事も進んでいます。音が出る工事については、できるだけ授業に支障を来さないように日程を組んでもらっていますが、工事期間の終わり頃になるとどうしても工期に間に合わせるために、授業をしている最中にも音が生ずる場合があります。学校としてもそれは極力避けてもらうようにお願いはしていますが、できるだけ早く復旧するという計画で進んでいますので、生徒の皆さんや保護者の皆様にはどうかご理解いただきたいと思います。
  9月1日から2学期が始まります。2学期は授業日数が最も長く、生活するにも過ごしやすい季節になります。生徒諸君が気力、体力ともに充実した学校生活を送ってくれることでしょう。

平成29年7月

 暑中お見舞い申し上げます。梅雨が明けると同時に連日猛暑が続いています。日中、外に出て仕事をすると汗が噴き出してきます。全国各地で熱中症による病院搬送者が増えているようですので、熱中症には十分留意されてください。本校の部活動生にも、こまめな水分補給や休憩といった対策をお願いしています。
 本校は7月20日に1学期の終業式を行いました。体育館が工事中であることと、外で式を行うにはあまりにも暑すぎるということで、映像配信による式としました。終業式が終わってLHR後に、本校同窓会のりんどう会から本校PTAにバスを寄贈していただくことになりましたので、引き渡し式が行われました。バスには「りんどう号」という名前がつけられました。バスの写真はこのHPにも掲載しています。生徒がデザインした絵が車体に描かれています。フィルムにドットで描いて窓にも張り付けてありますが、バスの内側からは外の景色が見えます。バスを寄贈していただいた同窓会の皆様に、改めてお礼を申し上げます。早速、利用申請が部活動から出てきました。有効に活用したいと思います。
 さて、終業式前日の19日に、SSH特別講義として熊本大学教育学部から講師の先生を招いて、1年の美術科と理数科の合同講義を行いました。「肥後藩第6代藩主細川重賢はARTandSCIENCEを体現する名君だった~江戸時代の藩政改革・肥後大地震復興と文化~」という演題でお話を伺いました。この特別講義の目的は、以下のとおりとしました。「美術と科学が江戸時代からリンクし、地震後の復興や藩政改革に少なからず影響を与えていることを、画像の分析を中心に行う。熊本大学をはじめ、地震後の文化財保護が今後の熊本県の文化行政の重要な課題となる。美術科・理数科が同じ講義を聞くことで、それぞれの立場から地震からの復興や熊本の文化財保護の意識を持たせ、さらに美術と科学の関連を実感させる。」
 本校のSSHは理数科のみならず普通科・美術科の全校で取り組んでいますが、この特別講義はその中の一つの事業です。ものの見方や考え方を、「文系的な」や「理系的な」といった限定的な視点からではなく両方の視点で考察を加えることは、大変重要なことであると考えます。大学の学部や学科の中には、文理融合の専門教育を研究テーマとしている大学もあります。
 本校でも全学科で探究活動に取り組んでいます。理数科のSS(スーパーサイエンス)、美術科のAS(アートサイエンス)、普通科のGR(グローバルリサーチ)の中のそれぞれで取り組む課題研究で探究を行う場合、文系理系といった学問領域を超えた学際的な視点での考え方も必要となります。
 今後美術科では、美術を大きなテーマとしながら、顔料の研究や美術品の保存科学といった分野にも学習を広げてまいります。
 HPをご覧の皆さん、猛暑はまだ続きますがどうぞご自愛ください。