校長ブログ

平成29年6月

 梅雨の時期です。熊本県は6月の上旬に梅雨に入ったと気象台が発表していましたが、熊本では6月の上旬から中旬は、雨があまり降りませんでした。日本では梅雨は南から北に向かって徐々に移動していきます。6月の中旬に、高文連の仕事で沖縄に出張しましたが、ちょうど沖縄本島付近に梅雨前線が停滞していたのか滞在した3日間すべて雨でした。沖縄県では豪雨で川の氾濫などがあったようです。6月下旬になって熊本地方も梅雨らしい天候になってきました。以前に比べ傾向として梅雨末期に集中豪雨が発生し、川の氾濫や土砂崩れが発生する頻度が高いように感じます。雨は農業等では必要ですからまったく降らないのも困りますが、逆に豪雨で災害が発生するのも困ります。
 梅雨の時期は、気温が高く湿度も高いのでカビが発生しやすい時期でもあります。カビは食品に限らず衣類など様々なものに発生します。私はカメラを持っていますがカメラのレンズの表面にもカビが発生します。ガラスなのにカビが成長するのに必要な栄養分がどこにあるのだろうかと不思議に思います。レンズにカビが生えるといけませんからカメラを使用しないときには、乾燥材を入れた密閉容器に保管をしています。本校職員の中にもカメラや写真を趣味としている人がいますが、各自が工夫してカメラのカビ対策をしているようです。
 さて、カビはこのように人間にとって悪い影響を与えることもありますが、逆にカビを生活に利用している例が多くあります。たとえば、鰹節を作る場合には、保存性を増すためにカツオの身から水分を取り除く必要がありますので、燻煙とカビをつける作業を繰り返すそうです。そうすることで水分が抜けると同時に鰹節独特のうまみ成分が多くなります。また、酒をつくる場合、アルコールを発生させるには酵母菌という微生物を使ってアルコール発酵を行います(発酵のしくみは高校では生物で学びます)が、酵母菌は、米に含まれるデンプンを直接アルコールにはできません。デンプンは、ブドウ糖という糖が多数結合したものです(糖類の分子構造は高校では化学や生物で学びます)から、デンプンの中のブドウ糖同士の結合を切って単独のブドウ糖に変える必要があります。その役割をするのがコウジカビです。コウジカビの作用によって糖化されたものが、酵母菌のエサとなり発酵に使われることができるようになるのです。日本酒をつくるには、まず米を蒸してそこに麹を混ぜ合わせ、コウジカビが繁殖し糖化が進んだ頃に酵母菌を投入しアルコール発酵をさせて日本酒を製造します。
 ところで、米を麹で糖化させ、酵母による発酵を行わせる前の状態のものが甘酒となります。本校理数科のSSH課題研究のテーマの一つとして生物班が、「抗酸化機能を持つ甘酒の研究」にも取り組んでいます。甘酒は「飲む点滴」とも呼ばれ、疲労回復にも役立つとも言われている飲み物ですが、甘酒の抗酸化機能に注目し、麹の種類を変えたり、糖化させる温度を変えたりする実験をして抗酸化機能の増減について研究を進めています。
 また、科学的な研究として家庭科の授業では鰹節や昆布からとった天然だしを材料として味覚官能評価の実験を大学と共同で行ったりもしています。
 課題研究の材料は様々な分野から探して持ってきますが、科学に関する探究を進めるためには、日頃から身の回りで起こる事象に対して、いかに疑問を持つのかという課題発見能力が重要となります。課題研究で研究しているテーマについては、このHPのSSHコーナーをご覧ください。

平成29年5月

 日中はかなり気温が上昇して、半袖が気持ちよい季節になってきました。6月になると梅雨の時期となり、湿度が上がりじめじめしてきます。校長室は、現在プレハブ校舎の1階にありますが、心配があります。横なぐりの雨が降ったりすると雨漏りがして、外に面している壁に近い側の床が水浸しになります。校長室はプレハブ校舎の端に位置していますので、どうも壁の外側を伝わった雨が壁の隙間を通って内側にしみ出してきているようです。机などの道具が水に濡れないように対策を一応していますから、今のところ大丈夫ですが、雨水の拭き取り作業が大変です。新しい管理棟ができてそこに戻るまで、雨の日は心配事が続きそうです。
 雨に悩ませられるといえば、運動会の実施も今年は悩みました。練習期間中は雨の日が例年より少なく、練習などはある程度予定どおりにできました。5月13日の土曜日に運動会を実施する予定でしたが、その前日、金曜日の午後から激しい雨になるとの予報でそれが現実となり、金曜日の午後から雨となり、翌日午前中まで怪しいということになり順延を決定しました。強行していれば、グラウンドコンディションが良くない状況であり、開始時間を遅らせ、プログラムも縮小ということになったかもしれません。しかし、天候が良い状況で全てのプログラムを予定どおり行いたいと考え、順延としました。2年ぶりの運動会です。開会式の時から生徒たちのこの運動会に取り組む意気込みを感じました。特に、午前の最後のマスゲームでは、生徒諸君は笑顔で演技していましたので、好天のもと開催できたことを良かったと思います。
 さて、本年度から5年間、第4期目のSSH事業が始まりました。4期目の事業の概要はこのHPに掲載しています。全学科で取り組んでいくことが、今回の大きなポイントとなります。美術科でも学校設定科目「アートサイエンス(AS)」、「美術探究」で科学的探究能力の育成に取り組みます。今年から新たにというわけではありません。3期目の途中から理数科だけでなく全学科に授業を設定し取り組んできました。たとえば、SSHコーナーで、今年3月6日に掲載したものをご覧ください。
「なぜSSHのページで「松島図屏風」の鑑賞かといいますと、美術作品を鑑賞する過程で、観察力、画像を分析する能力、知識と観察を結び付ける能力、などなど科学的探究能力と言われる力を必要とするからです。
 さらに、理数科、普通科、美術科生徒達それぞれの作品の認識に特徴を見ることができ、今後の指導の参考になりそうです。
 今回の事業は熊本大学からの御紹介で、京都文化協会とキヤノンの「綴 文化財未来継承プロジェクト」の成果である俵屋宗達「松島図屏風」の高精度複製を利用した授業となりました。実社会での「サイエンス」と「アート」のコラボの成果です。」(その部分の記事を引用) 
 熊本大学との連携で「松島図屏風」と「風神雷神図」の高精度の複製を、セミナーハウスの持ち込んで授業を行いました。どちらの作品も俵屋宗達によるものです。実物を見たことはありません。複製品ですが迫力を感じました。風神雷神図は私は好きな絵の一つですが、実物と変わらない大きさで見るとやはりいつもと違います。カーテンを閉め、ろうそくに似せた明かりも置いてありました。授業では、夜、ろうそく(行灯など)の明かりで見た時にそれらの絵がどのような雰囲気を持つのかについても触れていました。風神雷神図の風神及び雷神ともに神様ですが鬼の姿で表現されています。夜、ろうそくの光でこの絵を見た時にどのように感じるでしょうか。鬼の姿ですから、本当におどろおどろしい姿が浮かび上がったのかもしれません。
 絵画を科学的な視点で分析してみることも大切なことだと思います。美術科の授業での今後の進展に興味を持っています。
 6月になると高校総体、高校総文祭が開催されます。生徒諸君のこれまでの練習の成果を発揮して、それぞれが設定している目標達成に向けて精一杯努力してくれることを期待します。

平成29年4月

 今日(14日)、本校は遠足です。生徒と職員はグリーンランドに行っています。私は、高等学校文化連盟の仕事があって、留守番を兼ねて学校で仕事をしています。天気が良くなり遠足日和となりました。本校の遠足は少し遠いところにバスで出かけます。本校OBの職員に聞いたら以前から遠出しているとのことです。
 4月10日に入学式、新任式、始業式を行いました。入学式は、県立劇場の演劇ホールをお借りし午前中に行いました。式後は普通であればHRに入ってLHRを行いますが、場所がありませんので、クラスごとに出入り口近くのホールとか、観客席の一部などに分散して、そこで担任、生徒、保護者の方々との顔合わせ程度の集会となりました。
 午後は、自転車置き場のスペースで、新任式と始業式を行いました。雨が降り風も吹くという悪天候の中で始業式などを済ませました。
 スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の事業は本年度から第4期目が始まります。昨年は、経過措置と地震の影響もあって規模を縮小して実施しましたが、今年からは防災という新たな視点を考えながら事業を進めます。5年間の中で様々な計画を考えていますので、気持ちはわくわくしながら思いを巡らせています。
 本校SSH事業の中核となる取り組みが、課題研究及びテーマ研究です。自然科学、社会科学、人文科学など様々な分野から研究テーマを設定し取り組んでいます。たとえば、理数科の宇宙工学班が「宇宙空間における植物の栽培方法の提案」というテーマで研究し、成果を東京で行われた衛星設計コンテストで発表しました。研究テーマは宇宙空間に関する分野にまで及びます。生徒の中には宇宙工学を研究したいということで、その研究分野に進学した生徒もいました。現在、火星への有人飛行計画も進んでいますから、将来その分野で活躍する二高生OBも出てくることでしょう。楽しみです。
 宇宙に関することに触れましたのでもう少し続けます。私は、高校生の頃は地学部に所属していましたので、星を見るのが好きです。少し前の新聞記事に、太陽系から最も近い恒星に探査機を送る計画があるという記事がありました。太陽系に最も近い恒星は、ケンタウルス座アルファ星で、太陽系から約4.3光年の距離にあります。近いといっても光の速さでも4.3年かかるのですから途方もない距離です。現在、木星や土星など太陽系の惑星に探査機を送っていますが、そのスピードでは何百年かかっても隣の恒星にはたどり着けませんので工夫が必要となります。シリコンバレーの大富豪の資金援助で「 ブレークスルー・スターショット」という計画が提案されました。計画者の中には理論物理学者であるスティーブン・ホーキング氏もいます。探査機の本体は、様々な機能を乗せた指先くらいの大きさのコンピュータチップに、一辺が1m位の帆を取り付けたものとなります。動力は、地上からこの帆に向かってレーザーを当てその反動を利用するものです。帆を利用して推力を得る方法は、 JAXAが建造した宇宙ヨット「イカロス」がモデルとなっていますので、日本の宇宙技術には世界最先端のものもあります。この探査機は理論的には光速の約20パーセントの速さを出すことができるようです。光速の2割の速さですからケンタウルス座α星に到達できるのが地球出発してから約20年後となり、そこで写真の撮影その他観測し、電波で地球に送り返します。電波は光速ですから約4年後に地球に届きます。まだ夢のような話ですが、2040年代半ばに実現させる計画です。今は夢のような話でも、科学技術が進展すことで実現できるようなことが、これからいくつも出てくることでしょう。本校のSSHは全学科で取り組むことになりますが、研究者となる人材を育成することも一つの目的とするプログラムです。本校のOBがそのうち新聞の1面を飾るような業績を上げてくれることを期待しています。

平成29年度転入・新任者一覧


 
職名
氏名
教科
前任校
1
教諭
 中山 諒一
数学
新採
2
教諭
 免田 隆大
生物
新採
3
教諭
 小山 學
保健体育
熊本高校
4
事務職員
 江藤 里佳
 
高道小学校
5
講師
 江原 澪
英語
熊本北高校
6
非常勤講師
 園田 彩香
数学
 
7
非常勤講師
 木村 佳奈
生物
北稜・南関高校
8
非常勤講師
 田中 基義
地学
東稜高校
9
非常勤講師
 吉井 將人
音楽
東稜高校
10
進連協事務局
伊野上 由美子
 
 

平成29年3月

○3月29日に、平成28年度末の定期異動で本校からの転退任される先生方の転退任式を行いました。昨年度は20人を超える先生方が転出されましたが、今年は8人で、かなり小規模の異動となりました。体育館がまだ使えません。二高生へ最後の話をする機会ですから、放送ではなく直接生徒に話をしてもらいたいと考え、南門近くにある自転車置き場に椅子を持ち込んでそこで式を行いました。自転車置き場は、2階建ての構造でしたが、2階部分が地震で損傷しましたので早い段階で2階部分を取り除き平地にして自転車を置いて使用していました。椅子を並べると最大で1000人位は入るスペースです。そのままでは式典会場としての雰囲気が出ませんので、2月末に同窓会から寄贈していただいた校章入りのりんどう色の幔幕を4方に張り巡らせました。2月28日の同窓会入会式や3月1日の卒業式でも使用しましたが、1年生、2年生全員が見ることができるお披露目のいい機会にもなりました。すばらしいものをいただき改めて同窓会の皆様にお礼を申し上げます。
  今年度は地震の発生、その後の対応などで様々な教育活動に支障が出ましたが、生徒、教職員が一丸となって取り組みました。また、保護者の皆様、同窓会の皆様からも御支援をいただきました。今回転出される先生方にとっては、大変なご苦労をいただいた最後の1年であったと思います。新たな任地でもますますお元気で活躍されることを願っています。ありがとうございました。
  例年であれば、3学期の終業式や転退任式の頃には、桜が開花していますが今年はどうしたことか今日(30日)になっても熊本市の開花宣言はなされていません。今年は九州ではなく東京に最初に桜前線が上陸しています。夕方帰宅途中に校庭の桜を眺めたら花を開いている樹がありましたので、第二高校では開花宣言をしてもよいのではないかと思います。

○本校は平成15年度から、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定を受け、本年度で14年目となりました。平成27年度で第3期目の指定が終了し、平成28年度に第4期目(5年間)の継続指定を受けるため文部科学省に申請を行いましたが、5年間の指定は不合格となり平成28年度1年間の指定となりました。昨年度の申請書の内容を今年度1年間かけて見直し、新たな計画を盛り込んで第4期目の申請をしていましたが、先日、文部科学省から合格の通知をいただきました。平成29年度から5年間第4期目の取り組みを進めて参ります。昨年度はご心配をおかけしましたが、第4期目は、探究活動の深化、授業改善、評価方法の研究などに工夫を加え取り組みます。第4期目の取り組みの概要については、このHPの「SSH」のコーナーに掲載しますのでどうぞご覧ください。

○本校の施設設備の復旧状況は、HPの「復旧への道」のコーナーで随時お知らせしていきますが、施設の復旧はあまり進んではいない状況です。先日ようやく、教室棟、理科棟の改修の施工業者が決まりましたので、4月になり次第工事が始まる予定です。正門が通行止めになっています。これは、管理棟を取り壊すため、そこに入っている電気設備、水道設備、放送設備、火災警報設備といったものをプレハブの管理棟へ移設し、水道管、電気配線の付け替え工事を行っていることによるものです。正門としての機能は、現在南門がその役割を果たしています。来校される時は、南門、西門、東門から入ってください。

○平成29年度が、始まります。新1年生を迎え、在校生は学年がそれぞれ上がります。生徒諸君それぞれが新たな目標を掲げて学校生活を始めます。私たち職員一同生徒の目標達成に向けて精一杯がんばりますので、二高生への応援をよろしくお願いします。

笑う 平成29年3月

     3月1日に卒業式を行いました。体育館が被災して使用できない状況ですので、3月1日に実施できるのか心配しましたが、熊本県立劇場コンサートホールをお借りして無事3年生を送り出すことができました。卒業式の会場の手配や準備などに関係していただいた方々のおかげです。皆さんにお礼を申し上げます。
  当日、卒業生諸君の表情は皆さん晴れやかでした。この1年間を乗り切ったという安堵感もあったのではないでしょうか。卒業式は終わりましたが、上級学校進学への挑戦が今も続いています。希望する進路が達成できるよう最後まで努力してほしいと思います。
  以下に、卒業式の式辞の一部を掲載します。 

 式辞
  ・・・
 ただ今、卒業証書を授与した卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。皆さんは、「自主積極・廉恥自尊・礼節協調」の三綱領をよりどころとして、「学力の向上」はもとより、人としての「人格の陶冶」に向けて、日常の勉学や部活動、並びに生徒会活動を中心に、自己研鑽の日々を積み重ね、三年間の教育課程を無事修了されました。
  ・・・
 平成二十八年度は私たちのほとんどが、想定もしていなかったような天災に見舞われました。自然の力がとても大きなものであることを身をもって経験しました。地震の震源に近いところでは被害が非常に大きく建物などの復旧にも時間がかかっています。本校も施設に大きな被害を受け、体育館での卒業式はかないませんでしたが、このように熊本県立劇場をお借りして、本日、卒業式をできますことは関係された方々のご尽力によるものであります。心から感謝申し上げます。
  地震後、混乱している中で皆さんは自宅または避難所などから、避難所やがれきを撤去している所へ駆けつけ、自ら進んで積極的に手伝いをしてくれました。また、家庭での後片付けにも積極的に関わってくれたと聞いています。どのようにしたら自分の力を最大限発揮できるのか、その場の状況を自ら判断して行動するのは難しい場合がありますが、皆さんはそれぞれが判断し行動に移してくれました。本校綱領の「自主積極」の姿勢が現れた行動でありました。
  さて、本校は文部科学省からスーパー・サイエンス・ハイスクールの指定を受け、皆さんが主体的に考え行動する力を身につけることができるような教育に取り組んできました。その一つが、理数科では課題研究スーパーサイエンスであり、美術科、普通科ではテーマ研究です。研究の成果は、合同の報告会という形にし、皆さん全員が聞くことができるようにしました。研究の内容が理科系、文化系限らず様々な視点から物事を考えてみることはとても重要なことだと考えます。
  明治から大正にかけて活躍した物理学者に寺田寅彦がいます。寺田寅彦は、一八九六年(明治二九年)に第五高等学校に入学します。そこで英語教師の夏目漱石、物理学教師の田丸卓郎と出会い、両者から大きな影響を受けその後、科学と文学の両方を志すこととなります。寺田寅彦は文筆活動においても有名であり、「知と疑い」という随筆の中で、次のように書いています。
 「疑うがゆえに知り、知るがゆえに疑う。疑いは知の基である。・・よく疑う者はよく知る人である。・・寺院の懸灯の動揺するを見て驚き怪しんだ子供が、イタリアピサに一人あったので、振り子の法則が世に出た。りんごの落ちるのを怪しむ人があったので、万有引力の法則は宇宙の万物を一つの糸につないだというのは、人のよく言う話である。・・学校の教科書を鵜呑みにし、先人の研究をその孫引きによって知り、さらに疑うことなくしてこれを知り博学多才となるものは、かくのごとき仕事はしとげられないのである。」寅彦は、疑うからこそ、そこに新たな学びがあり、疑うというのは学びの上で重要なものなのだと言っています。本校で経験した課題研究やテーマ研究での課題の発見や仮説の設定をするという考え方は、これから皆さんが社会に出て、答えのないような問題に直面したとき、解決していくうえで役に立つものになると思います。また、寺田は自然科学者でありながら、文学などの自然科学以外のことにも造詣が深く、随筆などを通して科学と文学といった学問領域の融合にも試みています。文系と理系の知識を統合させ、新たな知見を得る学際的な視点での考え方も、これからの社会で生活していくうえでは必要なことであると考えます。約百年前に生きた寺田寅彦は、今の社会を予見していたのかもしれません。
  卒業生の皆さん、これから皆さんが加わっていく社会は、変化が激しく、常に新しい未知の課題に、試行錯誤しながら対応していくことが求められます。そのような社会ですから、当然人生の道のりには、幾度となく壁にぶつかることになると思われます。しかし、その壁を乗り越えるため、全力で取り組んでください。そのためには、一歩を踏み出すことから始まります。
  日本経済団体連合会の副会長を務めた鈴木敏文さんは、「未来に向かって敷かれたレールはない。道は自分でつくるものである。」と述べています。さらに鈴木さんは「レールとは、ふと振り返った時に、自分が歩んできた結果として敷かれているものである。未来に向かって踏み出そうとすれば、どんな方向にも新しく踏み出すことこともできれば自分を変えることもできる。」と述べています(「わがセブン秘録」より)。皆さんが、これまで得た経験を基礎として、一歩先の未来像を描き、それを実現させるために豊かな発想力を活かして、未来に向かって一歩を踏み出してください。皆さんのこれからの活躍を期待しています。
  ・・・
 それでは卒業生の皆さん、皆さんの前途が洋々たるものであることを信じ、将来のご多幸をお祈りして、式辞とします。

    


にっこり 平成29年1月

 本校HPをご覧の皆様、平成29年もどうぞよろしくお願いします。今年の正月は冷え込みも厳しくなく過ごしやすい三が日でした。本校も1月10日に平成28年度の締めくくりである3学期を開始しました。今年は暦の関係上、始業式の4日後にセンター試験となりました。センター試験の当日は毎年寒さが厳しくなりますので、今年は寒さが厳しくならないことを願っていましたが、例年と変わらないような寒さだったように思います。本校3年生も3会場に分かれて受験し、自己採点の結果をもとにこれから国公立大学の個別試験や私立大学の試験に臨みます。生徒諸君それぞれの希望が達成できることを期待しています。
 本校でもインフルエンザに罹患する生徒が目立ち始めてきました。インフルエンザは予防接種をしていてもかかりますので注意が必要です。手洗い、うがい、マスクなどの予防対策を生徒諸君に呼びかけ感染防止に努めています。また、インフルエンザの罹患者がある程度以上の人数が出てきた場合、感染の拡大を防ぐため学級閉鎖や学年閉鎖の措置を行います。1月20日現在、2つの学級を閉鎖しています。感染拡大の防止のための措置ですのでどうぞご理解ください。
 インフルエンザの感染防止対策としては、予防接種を受けるのが効果的です。3年生はこれから受験を控えていますので、予防接種を受けている人が多いと思います。インフルエンザウイルスにはA、B、Cの3型があり、さらにそれぞれの型には何種類かの亜型が存在します。ワクチンを製造す場合は、シーズンを迎える前にその年に流行する型を予測し製造しています。インフルエンザワクチンはワクチンとウイルスの型が異なると効果が落ちてしまいますので、毎年、流行する型を予測し、さらにA型から2種類、B型から2種類を混合してワクチンとしています。
 暦の上では、今が一番寒い時期(小寒・大寒)となります。これからも寒さが続きます。職員にも体調管理に努めるよう注意喚起を行いたいと思います。皆様もどうぞご自愛ください。

笑う 平成28年12月

 久しぶりに校長室だよりを更新しました。日頃からご覧になっておられる皆さんに申し訳ないと思いながら、更新が延び延びになってしまいました。
 12月22日金曜日に第2学期の終業式を行いました。現在体育館が使用できませんので、テレビ会議システムを利用して行いました。本校では2学期に各ホームルームに電子黒板が配備され、電子黒板機能を活用した授業に取り組んでいます。テレビ会議システムも可能な仕様になっていましたのでそれを活用しました。まず、画像や音声が問題なく流れるか事前に試験放送をしましたが、教室によっては画像が途中で途切れたり、音声が出なかったりと不具合があり配信用のサーバーを増やすなどの工夫することで不具合を解決することができました。終業式に先立ち、生徒の部活動等の表彰式もテレビ会議システムを使用して行いました。各種大会での優勝や入賞の成績は生徒ががんばった証となるものですから、表彰を行い全生徒に知らせることで、生徒にとってこれからの練習等の励みになるものと思っています。テレビ会議システム等のICT機器の利用は有効な手段ですので、これからも様々な場面で活用する予定です。
 8月25日に2学期を始めたことにより、2学期の授業日数は81日となりました。1学期の終了を遅らせ、2学期を早めることで、4月下旬からの休校でできなかった授業時間、学校再開後1学期間続けた5分短縮授業で短くなった分の授業時間を補うことができました。
 公共の施設は復旧工事を行うために工事を請け負う業者を入札によって決定していますが、入札に参加する企業が少なく、工事を行う業者がなかなか決まらないようです。本校の施設も復旧計画が示されており、管理棟、教室棟、体育館といった区分ごとに工事計画が立ててありますが、県内の状況がこのような状況ですから計画に遅れが出てくるかもしれません。できるだけ計画に沿った復旧が行われるように取り組んで参ります。
 さて、12月上旬に、OECD(経済協力開発機構)が「生徒の学習到達度調査」(PISA2015)の結果を公表しました。この調査は、義務教育終了段階の15歳の子どもを対象とし、日常生活などで直面する課題に即して知識や技能の活用能力を図ることを目的とした調査です。調査は3年ごとに実施され、今回は72の国と地域から計約54万人が調査対象となりました。調査は、「科学的リテラシー」、「数学的リテラシー」、「読解力」の3分野で実施されました。結果は新聞にも掲載されましたので皆さんもご存知かとは思いますが、日本は「科学的リテラシー」、「数学的リテラシー」の2分野で前回の2012年調査よりも順位を上げ、全参加国・地域中それぞれ2位と5位となりました。一方、「読解力」は8位となり前回の4位から順位を落とした結果となりました。順位は落としても国際的には上位を維持していますから、日本の力は常に高い位置にあるといってよいと思います。PISAの結果は、学力水準をつかむ一つの資料ですから私たちも参考にします。現在の高校生やこれから高校生になる年代の子どもたちが抱えている課題と思われますので、分析を行い今後の学習指導に活かしていきたいと思います。
 大学入試も改革が進んでいます。現在のセンター試験に代わる新たな入試も今後導入される予定ですので、今の3年生の進学指導に重点を置きながらも先々の入試制度改革にも対応していかないといけません。教育の「不易と流行」のどちらの面にも大切にして教育活動を進めていきます。
 平成28年は、4月に起こった地震の影響が大きかった1年でした。影響は数年間は残ることになるのでしょうが、来年はきっと良い年になると思っています。どうぞ良い年をお迎えください。 

にっこり 平成28年11月

 今年の夏は暑い日が長く続きました。10月になっても暑い日がありましたので、半袖などの夏の服装から秋冬への服装への衣替えの期間がいつもより長く続いたように感じます。
  気象庁が10月25日に11月から1月にかけての3か月間の天候の見通しを発表しました。それによると西日本では、大陸からの寒気の影響を受けやすく、向こう3か月の気温は平年並みか低いと予測しています。これまでと違ってこれから冬に向かうにつれ寒くなってきそうです。
  10月初旬にノーベル賞が発表されました。日本からは東京工業大学の大隅良典栄誉教授が生理学・医学賞を受賞されました。受賞は、細胞内部の自食作用であるオートファジーのメカニズムの解明によるものです。私は生物学が専門ではありませんので詳しいメカニズムは専門の資料を見て勉強したいと思っていますが、日本の基礎科学分野における力は大変大きなものであると感じました。
  オートファジーという現象は、生物にとって大変重要な作用です。ヒトの体の中では毎日数百gのタンパク質が合成されています。しかし、食事から摂取するたんぱく質は数十g位であり、食事からのたんぱく質だけでは賄えません。不足する分は、自分の体を構成する細胞の中にあるタンパク質を一度アミノ酸に分解し、それを再利用して必要なタンパク質を合成し補っています。大隅教授は、この機能を酵母の研究から発見しました。その後さらに研究が続き様々な面への応用が進められています。たとえば、オートファジーの機能を止めることによってがん細胞を死滅させる治療に応用できないかという研究が進められています。
  大隅教授のノーベル賞受賞は時間の問題だとも言われていました。それは大隅教授がノーベル賞予測で有名なトムソン・ロイター引用栄誉賞を2013年に受賞されていたからです。この栄誉賞は学術論文の引用データ分析から、ノーベル賞クラスと目される研究者を選出し、その卓越した研究業績をたたえる目的で設定され学術賞です。過去には、山中伸弥さんや中村修二さんも受賞されています。
  本年のトムソン・ロイター引用栄誉賞に日本から3人が受賞し、そのうち化学分野で熊本大学名誉教授で崇城大学DDS研究所の前田 浩特任教授と国立がん研究センター先端医療開発センター新薬開発分野の松村保広分野長の2人が受賞されました。どちらも熊本県にゆかりのある人ですので今年ノーベル賞受賞になるのではと期待しました。数年後には受賞されることを期待しています。
  熊本地震で本校の施設に大きな影響が出ていますが、職員室、進路指導室、事務室、校長室などが入っている第1棟(管理棟)については、11月の初旬に仮設の校舎に引っ越すことになりました。今、校長室も引っ越しに向けて書類等の整理を行っています。新たな校長室が現在の校長室より狭くなるので、すべて新しい校長室に移動することができません。校長室へ移動する物、一時保管しておく倉庫に移動する物、廃棄処分にする物に分別作業を行っています。本校に来てから一度も開けたことがないような戸棚もありそこからはかなり古い資料も出てきます。それらを仕分けして段ボール箱に詰め込んでいますが、古い資料から新たな発見もあります。
  仮設の管理棟は、ハンドボールコートにすでに建っている仮設教室棟の横に建設されました。引っ越しすると当分の間そこで過ごすこととなります。新しい校舎ができることを心待ちにしながら学校教育に取り組みたいと思います。