一期一会
令和6年度のスタートにあたって
本校は、肢体不自由教育と病弱訪問教育を担っており、3つの関係医療機関(熊本県こども総合療育センター、希望ヶ丘病院、県立こころの医療センター)に入院・入所している幼児児童生徒が対象の学校です。今年度は小学部に5人、中学部に2人の新入生を迎え、本校に17人、病弱訪問教育の希望教室に13人が学んでいます。
敷地内は常にきれいに整備されており、校庭には子どもたちが学習の一環で花や野菜を育てています。教職員はその子どもたちを優しいまなざしで見守っており、子どもたちや職員の姿を見ながら、毎日私の心が癒されています。
本校は、保護者の思いに寄り添い、子どもたちの気持ちを大切にしながら、子どもたちのできることが少しずつ少しずつ増えていくよう教育活動を実践しています。そして、これからも保護者や関係機関、前籍校と連携しながら、子どもたちが毎日笑顔で学校生活を送ることができるよう、全職員で取り組んでまいります。
今後とも本校の教育活動に御理解と御支援をいただきますようお願いいたします。
熊本県立松橋東支援学校長 上村 秀久
新年度のスタートにあたって
昨年度は、入学者がおりませんでしたが、令和5年度は、本校に6人の新入生(幼稚部2人、小学部2人、中学部2人)、希望教室に2人の新入生(中学部2人)を迎え、本校(肢体不自由教育)23人、希望教室(病弱訪問教育)22人、計45人の幼児児童生徒でスタートしました。
松橋東支援学校の教育は、3つの関係医療機関(熊本県こども総合療育センター、希望ヶ丘病院、県立こころの医療センター)に入院、入所している幼児児童生徒が対象です。そのため、入退院に伴う幼児児童生徒の転出入が頻繁にあり(年間100件以上)、松橋東支援学校での在籍が短期間のこともあります。
しかし、たとえ短期間の在籍であっても、子どもたちとの出会いを大切にして、一人一人に寄り添い、保護者や関係機関・前籍校と連携を図りながら、全ての子どもたちが充実した学校生活が送れるよう、全職員で尽力する所存です。
また、昨年度は創立50周年記念行事の取り組みを通して、保護者の皆様や関係者の皆様には大変お世話になりました。今年度も、保護者の皆様をはじめ、すべての関係機関の皆様と連携を深めながら、地域とともにある学校づくりを目指したいと思います。今後とも、松橋東支援学校に対する御理解と御支援をどうぞよろしくお願いいたします。
松橋東支援学校 校長 建岡 欣也
令和4年度のスタートにあたって
令和4年度のスタートにあたって 校長 建岡 欣也
この4月に松橋東支援学校に赴任しました、校長の建岡欣也と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
本校の教育は、3つの関係医療機関(熊本県こども総合療育センター、希望ヶ丘病院、県立こころの医療センター)に入院・入所している幼児児童生徒が対象です。そのため、入退院に伴う幼児児童生徒の転出入が頻繁にあり、本校での在籍が短期間のこともあります。
令和4年度は、4月8日(金)から新年度がスタートしました。今年度は、初めて入学者がおらず、入学式がありませんでしたが、現在、本校(肢体不自由教育)、幼稚部6名、小学部9名、中学部2名、計17名、希望ヶ丘病院(病弱訪問教育)、小学生3名、中学生6名、計9名の子どもたちが在籍しています。
たとえ短期間であっても、一人一人に寄り添いながら、子どもたちの可能性を引き出し、主体的、自立的に生きていこうとする幼児児童生徒の育成に、全職員で取り組んでまいりたいと思っています。
また、今年度は、10月21日(金)に創立50周年記念式典の開催が予定されています。50年目という節目を迎え、これまでの本校の歩みを振り返るとともに、本校が、更なる一歩を踏み出す大切な年だと考えています。すでに、50周年記念式典に向けて、子どもたちから募集した図案や言葉をもとに、50周年のロゴマークやキャッチフレーズ、50周年記念ソングもできあがっています。
保護者の皆様をはじめ、関係機関と協働した50周年記念行事の取り組みを通して、家庭や関係機関との連携を強化し、地域に開かれた学校づくりを目指したいと思います。
本年度も、本校に対する御理解と御支援をどうぞよろしくお願いいたします。
新年度のスタートにあたって
新年度のスタートにあたって
校長 松﨑 聡一郎
令和3年度は、6人の新入生(幼稚部4人、小学部1人、中学部1人)を迎え、本校(肢体不自由教育)が19人、病弱訪問教育が11人、計30人(4月9日現在)の幼児児童生徒でスタートしました。本校の教育は、3つの関係医療機関(熊本県こども総合療育センター、希望ヶ丘病院、県立こころの医療センター)に入院・入所している幼児児童生徒が対象です。従って、入退院に伴う幼児児童生徒の転出入が頻繁にあります。昨年度は、年間100件以上の転出入がありました。今年も、同様に多くの幼児児童生徒が、本校に在籍し、治療やリハビリが終了すると前籍校に戻って行くことになると思います。たとえ短期間の在籍であっても、一人一人の子どもたちとの出会いと、共に過ごす時間を大切にしながら、全ての幼児児童生徒にとって充実した学校生活が送れるよう努めてまいりたいと思っています。
さて、今年は、本校が昭和47年4月1日に松橋東養護学校として開校してから、ちょうど50年目にあたります。そこで、この節目となる年を本校が未来に向かって変化(チェンジ)を起こす絶好の機会(チャンス)と考えました。新たな試みに挑戦したりこれまでの取組を発展させたりすることで、本校が未来に向かって一歩でも二歩でも前進できる年にしたいと考えています。
そのために、職員には、大事にしたいこととして4つのTをお願いしました。① Target(目標を持ち)
② Team (仲間と共に)
③ Try (失敗を恐れずやってみよう)
④ Tea (ティータイムも忘れずに~無理せず楽しく~)
同様に、子どもたちにも4つのお願いをしました。
① 目標をもちましょう
② 仲良くしましょう
③ いろいろなことに挑戦しましょう
④ 笑顔を大切にしましょう
新型コロナウイルスと向き合いながらの学校生活も2年目を迎えました。まだまだ予断を許さない状況ですが、このような状況をチャンスと捉え、私たちの創意と工夫で新たな変化を起こし、教育活動のより一層の充実を図っていきたいと思っています。
本年度も、本校に対します御理解と御支援をよろしくお願いいたします。
新年度のスタートにあたって
新年度のスタートにあたって 校長 松﨑 聡一郎
この4月に松橋東支援学校に赴任しました、校長の松﨑聡一郎と申します。私にとって松橋東支援学校は、教員生活をスタートさせた思い出深い学校です。32年ぶりの本校での勤務を大変懐かしく、また、嬉しく思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
さて、令和2年度は、4月8日に新学期をスタートしました。学校は、3月から長い休みが続いていましたので、久しぶりの学校での再会に、子どもたちも迎える先生たちも、笑顔にあふれたスタートとなりました。翌日の9日には、規模を縮小してではありましたが、入学式を挙行し、幼稚部1人、小学部3人、中学部1人、計5人の新入生を迎えることができました。
しかし、順調なスタートが切れたと思った矢先、本県における新型コロナウイルスの感染拡大が危惧されたため、4月14日から再び休校となってしまいました。休校は再延長され、5月末まで継続中です。
このような中、本校では、熊本県こども総合療育センター、希望ヶ丘病院、こころの医療センターに御了解をいただき、しっかりとした健康管理を行ったうえで、職員が交替で子どもたちのところに訪問をさせていただいています。限られた時間ですが、学習支援を行ったり話し相手になったりして、子どもたちの様子の確認とともに、不安やストレスの軽減にも役立っているようです。また、職員は、授業再開にむけて行事や日程の見直し、教材の作成など、子どもたちの登校を心待ちにしながら、日々その準備にも取り組んでいるところです。
今、世の中は不測の事態にあり、学校も例年通りとはいかず確かな見通しが持てない状況です。しかし、いかなる状況にあっても、学校の中心は子どもたちであることに変わりはありません。こういう時だからこそ、子どもたちの成長のために、子どもたちの思いや保護者の皆様、関係医療機関の皆様の期待に沿えるよう、より一層しっかりとした教育活動を行っていかなければと思っています。
本年度も、本校に対します御理解と御支援をよろしくお願いいたします。
『ありがとう』
『ありがとう』 松橋東支援学校長 髙木 佐由理
『小鳩の森』のいちょうもすっかり落葉し、木の下は一面の黄色いじゅうたん。栴檀の実も色づき小鳥たちの訪問を待っています。森全体が冬を迎えるための支度をしているようです。
さて12月初め、熊本県障害児・者親の会連合会主催「障がい児者・家族の作文発表会」がくまもと県民交流館パレアで開かれました。テーマは『ありがとう』。熊本県内の特別支援学校で学ぶ児童生徒が日頃から『ありがとう』と感じていることを綴っていました。ある人は家族に向けて、ある人は学校の先生に対して、ある人は生活している施設の方々に対してのメッセージ。自分の障がいと向き合い、さまざまな壁を乗り越えて発した『ありがとう』のメッセージは聞く者に大きな感動を与えました。発表を聞きながら、改めて『ありがとう』は人の心を温かく、前向きにしてくれる魔法の言葉、宝石のような言葉なのだと実感しました。本校でも、素直に『ありがとう』『ごめんなさい』という言葉を交わせる環境でありたいと思います。
今年は、旭化成名誉フェローである吉野彰さんがノーベル化学賞を受賞されました。吉野さんが化学に興味を持つきっかけを作ったのは小学4年生の担任の内藤先生から薦められた一冊の本『ろうそくの化学』。吉野さんは「わたしの好奇心をくすぐっていただきました。」と感謝を述べています。北海道で御存命の内藤先生は覚えていないとか。先生の何気ない一言が、子どもたちを勇気づけたり、気持ちを明るくしたり、あるいは人生を大きく左右したりすることもあるということを肝に銘じながら子どもたちに関わる職員集団「チーム松東」でありたいと思います。
2学期も本校の教育活動に御理解と御協力をいただきました全ての方に、深く感謝申し上げます。
子どもたちは、本校では地域に出かけての買い物学習や社会科見学、現場実習などで体験をとおして多くの学びを得ました。また、学校間交流や居住地校交流では校種間で同年代の仲間とともに活動することでお互いを理解し合い、繋がりを作ることができました。病院の訪問教育では、毎日の自立活動の時間を中心に生活全般をとおして各自の目標に向かって歩みを進めています。その歩みは一人ずつ違っていますが、焦らずに一歩一歩着実に進めてほしいと願っています。
あと少しで令和元年が暮れます。全ての人にとりまして、新年が希望に満ちた素晴らしい年でありますよう心からお祈り申し上げます。
すべては子どもたちのために
『すべては子どもたちのために』
校長 髙木 佐由理
4月の定期異動で小国支援学校より赴任しました髙木と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
玄関から見える『小鳩の森』は、新緑から深緑へと変わり、耳を澄ますと雀、鶯、小綬鶏などさまざまな野鳥の囀りが聞かれ、子どもたちは季節を存分に味わいながら毎日を過ごしております。
本年度は小学部1名、中学部3名の新入生を迎え、スタートしました。幼児児童生徒数は6月1日現在、肢体不自由教育が幼稚部4名、小学部9名、中学部4名、病弱訪問教育が小学部9名、中学部10名、合計36名です。それを支える本校職員は33名。『明るく 素直で ねばり強い 子ども』の姿を目指して、日々の教育活動に取り組んでいます。
さて、今年度も地域の学校と多くの『交流及び共同学習』を計画しています。幼稚部は松橋幼稚園、小学部は当尾小学校、豊福小学校、中学部は松橋支援学校や松橋西支援学校の中学部などです。同年代の幼児児童生徒との交流は、多くの学びを得、子どもたちを大きく成長させてくれます。子どもたちの変化が今から楽しみです。
本校は、今年度から総合型コミュニティ・スクールがスタートしました。この2年間で構築した災害時防災体制は継承しつつ、さらに、この宇城地域の人的、物的教育資源を最大限に生かした教育課程を編成し、教育目標である『生命の尊重・深い愛情を基盤に、幼児児童生徒一人一人の個性や特性を大切にして可能性を最大限に伸ばし、豊かな感性を育み、主体的・自立的に生きていこうとする幼児児童生徒を育成する』の実現に向かって「チーム松東」で取り組んで参ります。
どうか本校の教育活動に御理解、御支援をいただきますようよろしくお願い申し上げます。
不完全だからこそ
「不完全だからこそ」
中庭のチューリップがきれいに花を咲かせています。柔らかな陽ざしの中、3月15日に平成30年度の卒業証書授与式を本校と希望ヶ丘病院教室で行いました。本校では幼稚部2名、小学部4名、中学部1名の計7名が、希望ヶ丘病院教室では中学部の3名が、多くの御来賓や保護者の皆様の御臨席の下、先生方や在校生の励ましと祝福を受けながら、それぞれ卒業証書を手にし、涙あり笑顔あり、爽やかな風のように旅立っていきました。在籍期間こそ長短ありましたが、大好きな保護者の皆様と医療・療育のスタッフや先生方に支えられ、日々の遊びや学習活動等を通して、また交流や職場体験等を通じて生活経験を増やし、それぞれ内に秘めた力を蘇らせながら、たくましく成長しましたね。松東でのこれまでの学びを土台に、新たなステージでも明るく素直でねばり強く、自分の成長を楽しみながら、豊かな人生を歩まれることを心から願っています。
在校生は一様に、卒業生とのお別れで、心にぽっかり穴が開いたように感じているのではないでしょうか。卒業生はいつでもあなた方を応援してくれていますよ。心の支えにして、松東での新たな学びと療育センター等での生活に頑張りましょう。
ところで、皆さんは定めた目標を達成するために日々努力していますか?私は、ずいぶん努力して頑張ったつもりでも、周囲から不十分なところを指摘されたりすると、がっかりして意気消沈してしまいます。なかなか理想の自分には近づけませんね。そこで、負け惜しみではありませんが、もともと「人は不完全だからこそ成長できるのだ」と思うことにしています。どんなに完全に近づけても決して完璧ではない。ですから、これでよいと満足せず、理想の自分をめざして努力を重ねましょう。成果が感じられなくても、今は飛躍のためのエネルギーを蓄積しているのだと考えるのです。心の持ちようで、ずいぶん楽になりますよ。
努力してもうまくいかないことがあります。辛いときや淋しいときには、校歌にもあるように、「不知火の海を望」んだり「雁回の空を仰」いだりして、人間って何てちっぽけなんだろうと思ってほしい。そして、くよくよせずに「試練に耐えて」、「秘めし力」を「よみがえ」らせる“笑顔輝くあなた”であってください。
結びに、保護者の皆様、こども総合療育センター、希望ヶ丘病院、こころの医療センターのスタッフの皆様、そして地域の皆様方には、この一年、本校の教育活動に御理解と御協力を賜り、誠にありがとうございました。お子様の健やかな成長を切に願い、お礼の言葉といたします。
平成31年3月29日 熊本県立松橋東支援学校長 松田 満
自分なりの視点
「自分なりの視点」
2学期も、先生方のいろんなアイデアで、教室での授業や校外での体験学習等、様々な学習に主体的に取り組み、そして何より楽しく学ぶことができたように思います。
幼稚部では音楽会をはじめ、松橋幼稚園や老人会との交流もありました。同世代のお友だちやお年寄りの方々にも喜んでいただきましたね。
小学部では、豊福小学校や当尾小学校との交流及び共同学習や、イオンモール熊本での買い物学習等がありました。いつも来ていただく豊福小学校や当尾小学校に訪問することができました。どんな学校から来てくれていたのか、どんな学校生活を過ごしているのか分かってよかったですね。お互いを知るのはとても大切なことです。訪問教育を受けている二人も今日はスクーリングという形で参加してくれました。付き添いの看護師長さんもおいでくださり感謝いたします。2学期は紙を丸めたり、「もう一回お願いします」を伝えたり、それぞれの学習に頑張りましたね。また、学習発表会では立派に発表することができました。
中学部では、広島方面への修学旅行や、職場見学等がありました。教室での学習内容に関連付けて深めることができたと思います。修学旅行では、遠く学校を離れて、平安時代に造られた厳島神社を見学したり、平和公園や原爆資料館を訪れて戦争や原爆について学んだりすることができました。かけがえのない平和への祈りとともに、松東のお友だちや先生と折った千羽鶴を捧げてくれました。
また、皆で取り組んだジャムジャムタイムでの制作活動、季節を感じる学習も楽しかったですね。幼稚部と小学部では、野菜や木の実を使った工作や飾り付け、小学部と中学部では豊福神社周辺での写生大会や、調理学習等もありました。
希望ヶ丘教室とこころの医療センター教室の皆さんは、2学期も治療を受けながら授業等によく取り組みましたね。制作活動や教科等に関連付けた授業に、主体的に取り組んで課題を考えたり、自力で解こうとしたりするときの皆さんの表情は実に輝いていましたよ。
希望ヶ丘病院の行事として日本一長い石段登りや、こころの医療センター教室では皆さんの発案による英語劇にもチャレンジしました。中には、前籍校への試験登校に出かけた人もいますね。
先日、ガンの治療に対する免疫療法に道を開いた功績が評価され、京都大学の本庶(ほんじょ)教授がノーベル医学・生理学賞を受賞されました。教授は、科学を志す小中学生に次のことを話しています。「何か知りたいと思う、不思議だなと思う心を大切にすること」「教科書に書いてあることを信じない→鵜呑みにしない。本当はどうなっているのか」「自分の目でものを見る」「納得する、そこまで諦めない」と。
いろんな事象に対して私たちが不思議に思う心や感性を大切にし、自分で確認して納得するまで諦めない姿勢を持つことが、多くの人々の幸せにつながる発見や仕事につながるものです。私たちは生涯学び続けることになります。拠り所になるもの(基礎)を大切にしながら、自分の感性を大事にして主体的に学び、自分なりの視点で物事を考えるようにしたいですね。
さて、今年も残り十日となりました。年末年始も元気に過ごしましょう。一年を振り返り、新しい年を迎える準備と、一年の計を立てるようにしてください。3学期は、新しい学校や学部、学年に上がる準備をする学期にもなりますよ。
結びに、病院のスタッフの皆様、並びに保護者の皆様には本校教育に対していつもご理解とご協力をいただき感謝申し上げます。どうぞよいお年をお迎えください。
平成30年12月21日 熊本県立松橋東支援学校長 松田 満
彼岸花の不思議
彼岸花の不思議
日中はまだ蒸し暑さもありますが、朝夕は涼しくなってきました。先週あたりから、畦道のあちらこちらで咲く彼岸花が目に鮮やかです。
この花は、気温が25度くらいになると咲き出すようで、毎年彼岸の頃に見られるため「彼岸花」と呼ばれますが、曼珠沙華(まんじゅしゃげ)、ショウキラン、ショウキズイセン、キツネノカミソリ等とも呼ばれています。また、花の色は赤、白や黄が見られます。花びらが外側に反った形が印象的です。
ものの本で調べますと、白色は、赤色と黄色の交配でできたものだそうです。多くが赤色で、たまに白色を見かける程度。さらに黄色は非常に希(まれ)なように思われますが…。黄色よりも白色の方が珍しいということでしょうか。不思議な気がします。
また、茎とともに花が枯れた後に葉が生え、葉が枯れた後に、花芽が出てくるなど他の植物には見られない特徴があります。一つの花にも個性がありますね。そのようなことを想いながら、花を眺めてみてくださいね。
さて、今年は6月には大阪北部地震、7月には西日本豪雨、8月の台風21号、9月初めには北海道胆振(いぶり)東部で大規模地震が発生。多くの命や住宅等が失われました。平成28年熊本地震から2年半。未だ2万人を超える多くの方々が仮設住宅で生活されている。そのような中で相次いで災害が起こりました。本当に災害は待ってくれないと感じます。さらに、今週末から台風24号が接近するようです。しっかりと備えるようにしたいものです。
今月14日に松橋東防災拠点センターの概要の説明会がありました。サンアビの体育館横に防災施設が建設されることになりました。また、それに併せて道路の整備が行われるということでした。ここ希望の里に新たな福祉避難所が完成しますと、学校周辺の防災体制が充実し、安心ですね。平成32年6月に完成するまでの間は、現存の施設で、共助として連携をとって参りたいと思います。
気温差も大きくなってきました。風邪等を引かぬように、毎日手洗いやうがいを励行して元気に過ごしましょう。学校では、毎日の学習のほかに、近隣の幼稚園、小学校との交流及び共同学習がありますし、幼稚部では音楽会、小学部では学習発表会、中学部では広島への修学旅行が計画されています。子どもたちには大いに楽しんでほしいと思います。
平成30年9月25日 熊本県立松橋東支援学校長 松田 満
未来を生きる力
未来を生きる力
この度の西日本豪雨により被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。併せて、連日の猛暑の中、避難されている皆様や復旧作業に従事されている皆様の安全と、一日も早い復旧を重ねてお祈り申し上げます。
さて、4~6月の全校集会では、「私たちの体は、食事をとることによって、ありとあらゆる部位に食べた物の要素が取り込まれている。つまり私たちは、知らぬ間に毎日生まれ変わり、常に新しい自分になっている。」と話しました。私たちが毎日「分かった・できた」を増やせたり、反対に物事を忘れたりするのは、新しい自分になっているせいかもしれません。だから、バランスのとれた体をつくるために好き嫌いをなくすことや、忘れないように思い返したり記録したりすることが大事です。幼児児童生徒の皆さんには、いつも「学ぶことは楽しい」と感じていてほしいと思いますし、「不思議だな、どうしてだろう」と感じることのできる感性を大切にして、日々学習に取り組んでほしいと願っています。
また、皆さんの中には、これまで治療を受けるため長く学校を休んでいた人もいます。未習の内容があって、どこから始めるとよいのか分からないかもしれません。でも、心配しないでください。そんな時は気楽に、「落下傘方式でよい」と考えましょう。落下傘のように、風任せにエイッと、空から降りた地点から始めるのです。(どこから始めても構わないということです。)そして、その付近を少しずつ学んで開拓するのです。一通り学習できたら、それからまた落下傘で降りて、新たに降りた地点付近を学んでエリアを広げてみましょう。これを繰り返すうちに、学んだ内容は必ずつながります。つながる、そしてひらめく…それは大きな楽しみでもありますし、皆さんの未来を築く基礎になりますよ。「未来を生きる力」を、今を大切に生きることで養うのです。
7月には、夏野菜の収穫に調理等の学習、プール学習、不知火美術館での三校合同作品展の見学や宇土シティ等での校外学習、アスパプールの招待行事等があり、それぞれ経験の幅を広げることができました。当たり前のことが当たり前にできたことを感謝せずにはおれません。保護者をはじめ関係の皆様のご理解とご協力の賜と、この場をお借りしてお礼申し上げます。それでは皆さん、夏休みを元気で計画的に過ごし、2学期に笑顔で会いましょう。
平成30年7月19日 県立松橋東支援学校長 松田 満
笑顔輝く子どもたち
笑顔輝く子どもたち
季節は進み、時候の挨拶も「惜春」から「入梅」に変わりました。今年度も熊本県こども療育センターのスタッフの皆様の濃やかで適切な日々の支えにより、子どもたちは、転入職員ともすっかり心通わせながら毎日授業の中で持てる力を伸ばし、できることを少しずつ増やしています。全校集会(ゴーゴータイム)では、子どもたちに、常に新しい自分に変わっていること、可能性が膨らんでいることや、繰り返し学習を積む大切さなどを伝えているところですが、保護者や周りの人に認められたい、人の役に立ちたいなど子どもたちの欲求が、学びへのモチベーションを高めており、教室での授業とともに、行事等を経験する意義の大きさを実感しています。
5月26日(土)に希望の里サン・アビリティーズ体育館で松東レクリエーションを開催しました。本校の体育館より一回り大きな会場で、来賓や保護者の皆様、センターの皆様、地域やボランティアの皆様方約100人超をお迎えした晴れの舞台で、子どもたちは練習の成果を遺憾なく発揮し、立派に発表することができました。
特に、子どもたちは、大好きな保護者の前で活動できる喜びに、笑顔を輝かせました。また、宇土高校和太鼓部をはじめ多くの方々と和やかに交流することができて、互いの気持ちを伝え合うことができたように思います。障がいのある人とない人が共に支えあう社会づくりに向け、意識を共有するよい機会となりました。
当日は生活棟や医療棟から会場への移動等をはじめ、保護者及びセンターの皆様にはいろいろな面で御負担をおかけしましたことにお詫び申し上げますとともに、今後とも本校の教育活動への御理解と御協力を賜りますよう、併せてお願いします。
平成30年5月30日
熊本県立松橋東支援学校長 松田 満
特別な記念日
特別な記念日
初夏を思わせるような陽気に誘われて中庭のツツジも咲きはじめ、まるで花壇の花々とともに新しい年度の始まりを祝福してくれているようです。
平成30年度は、5名の先生方が転出されましたが、その後に新転任の先生方10名をお迎えして、松東はさらにパワーアップしました。幼児児童生徒は、4月10日に小学部1名と中学部1名、計2名の新入生を迎えるとともに、御船町にある希望ヶ丘病院教室の児童生徒を加え、在籍数20名でスタートしています。
入学式の式辞でもお話ししましたが、入学生だけでなく、幼児児童生徒の皆さんには、「美しいものを美しいと素直に感じる心」を大切にして豊かな学校生活を過ごしたり、「不思議だな、どうしてだろう」と思う感性を大事にして真理を追求する喜びを味わったりしてほしいと思います。
皆さんは日々成長しています。それは、単に身体が大きくなっているのではなく、食べたものの成分が、骨や筋肉、器官など身体をつくっているものの一部と常に置き換わっていると、ゴーゴータイムで話しましたね。だから、好き嫌いなどせずに、毎日バランスよく食べるようにしましょうと。ある意味、皆さんは毎日生まれ変わっているのです。だからきっと、昨日分からなかったことが今日分かるようになったり、さっきまでできなかったことが、今はできるようになったりするのですね。
今年度も、「分かった」「できた」を一つずつ増やしていきましょう。それは、皆さんが確かに成長していることを示す証(あかし)なのです。皆さんにとって「分かった」「できた」を増やせる毎日が「特別な記念日」となりますよう、皆さんのすぐそばにいて、心から願っています。
平成30年4月27日 熊本県立松橋東支援学校長 松田 満
見えないことを大切にする考えの先
今年は冬が長く厳しかったせいか、3月に一気に暖かくなり、桜も例年より早く開花しました。希望の里の桜も散り急ぎ、葉桜になっています。これはこれでピンクと緑色のコントラストが綺麗ですね。
さて、3月16日に卒業証書授与式を行いました。今年度は、幼稚部1名、小学部1名の計2名が卒業しました。二人とも標準服に身を包み、凛と引き締まった表情が少し大人びた感じでしたね。4月にはそれぞれ、小学部、中学部で新たな先生や学習と出会い、5月には学校外のお友だちとの交流もあります。大いに楽しんで、頑張ってほしいと思います。
式辞では餞に二つの言葉を贈りました。
一つ目は、「何事にもひたむきに頑張り続ける」ということ。夢中になって取り組めば、きっと、頑張ったという思いは感動とともにいつまでも長く心に止まるはずです。仮に成果がなかなか現れなくても、必ずや成長の糧になります。
二つ目は、「見えないことをもっと大事にする」ということ。それは、形のない思いやりの気持ちや、愛情、信頼、勇気、希望などのことです。フランスの作家サン=テグジュペリは、著書「星の王子さま」の中で、「砂漠が美しいのは、どこかに井戸を隠しているからだよ…」と王子に語らせています。この言葉によって主人公は、人であれものであれ、見えないところに大事なものが隠れていることに気付きます。見えないところに大事なものを見い出そうとするその考えの先に、人の豊かさとか、人生の豊かさがあるとは思いませんか。また、私たちがこれからの人生を生き抜く上では、「まことに辛いこと」が多くあると思います。しかし、私たちはまた、それを乗り越える力も持っていることを自覚したいと思います。時には、愛する人との別れもあるでしょう。それはきっと、人生の中でも最も辛く悲しいことでしょう。愛情が深ければ深いほど別れは辛く、悲しいものです。でも、その辛さ、悲しみは、「あなたの愛がそれほど深く、強かった」ことを教えているのではないでしょうか。その愛情が、悲しみを乗り越える力となり、新たな人生を歩き始める原動力になると信じています。
学校では、今後も子どもたちの夢の扉を開く教育活動を展開して参ります。保護者の皆様、センターのスタッフの皆様、地域の皆様方、引き続き、御支援・御協力をお願いいたします。
平成30年3月20日 熊本県立松橋東支援学校長 松田 満
やる気スイッチを探そう
やる気スイッチを探そう 松田 満
○新年明けましておめでとうございます。幼児児童生徒の皆さんとご家族の皆様のご多幸を心からお祈りします。笑顔に満ちあふれる素敵な年にしましょう。本日は3学期の始業式でした。式でお話しましたように、3学期は今の学年の総仕上げの学期です。一日一日をていねいに過ごしてほしいものです。
○さて、年末から報道されていましたが、将棋の羽生善治さん(47歳)が永世七冠(竜王、名人、王位、王座、棋王、王将、棋聖)、囲碁の井山裕太さん(28歳)が二度目の全七冠(棋聖、名人、本因坊、天元、碁聖、十段、王座)の偉業をそれぞれ達成されたことを讃えて、この度、お二人に国民栄誉賞が贈られることとなりました。
○本当に素晴らしいですね。プロ同士の対戦は微差ぎりぎりの所での攻防でしょうから、羽生さんは「変わらないと停滞する。だから常にちょっとずつ何かに挑戦する」と言われ、井山さんは「まだ完成しているとは思っていない。善悪だけではない自分らしさを追求したい」と言われます。
○将棋や囲碁で、その道を究めることは大変なことです。スキルだけではなく、それに裏打ちされた大局観を有することも不可欠でしょう。お二人のように飽くなき探求心によって偉業が達成できたのは言うまでもありませんが、根底にあるのは、将棋や囲碁が好きだという気持ちなのでしょうね。
○先に、一日一日をていねいに過ごすようにと述べました。皆さんも、学校での遊びや自立活動、教科学習等において、日々、意欲を持って取り組んでください。時間いっぱい集中して遊びましょう。自立活動の取組を継続しましょう。教科の学習は、進学や就職、或いは資格を取るためにも大切ですね。でも、それだけではもったいない。基本的に、学習は楽しく面白いものであることを実感してほしいですね。「好きこそものの上手なれ」です。
○学習が上達する方法・・・。まずは、好きになることです。国語や算数・数学、理科でも社会でも、考え方のよさや、実生活にどれだけ活用されているか調べると、まさに目からウロコです。きっと、自分の中の「やる気スイッチ」を探すカギがそこにあるはずです。
幸福について
幸福について 松田 満
■皆さんは、県民総幸福量(AKH:Aggregate Kumamoto Happinessの略称)についてご存じでしょうか?これは、蒲島県政の基本理念である「県民総幸福量の最大化」の考え方を県民と共有し、効果的な施策につなげることを目的として作成された指標です。内容は、幸福の要因を「夢を持っている」「誇りがある」「経済的な安定」「将来に不安がない」の4つに分類し、重要度や満足度を県民アンケートで測定して算出されます。直感的な幸福度を測るものですが、誰と比べるものでない、絶対的な指標であると思います。平成24年度から調査が行われており、今年度が5回目でした(昨年度は熊本地震のため未実施)。平成24年度から平成27年度までの結果は、68.7、68.4、68.1、68.2。平成29年度は68.9で、過去最高の数値となっています。地域別では、地震の被害が大きかった地域は県平均を下回っています。
■ところで、スケートの羽生選手やロアッソ熊本の選手等が、災害等で周囲が大変なときに、練習を再開していいのか(自分の幸福を優先していいのか)葛藤したと聞きました。このように、自らの幸福を追求することにうしろめたさを感じたり、自分の幸福よりも何か別のものや他の人のことを優先したりすることについて、哲学者の三木清は、「人生論ノート」の中で、次のように述べています。「幸福は徳に反するものではなく、むしろ幸福そのものが徳である。」「我々は我々の愛する者に対して、自分が幸福であることよりなお以上の善いことを為し得るであろうか。」「日常の小さな仕事から、喜んで自分を犠牲にするというに至るまで、あらゆる事柄において、幸福は力である。」三木は、幸福と徳は相反するものでも、どちらかを優先すべきものでもない。愛する人のために自己を犠牲にする行動をとったから幸福なのではなく、幸福だったから、そのような行動がとれたのだと言っているのです。練習を再開すること(で周囲に勇気を与えるの)も、練習を中断すること(で被災地の支援を行うの)も、どちらも行動の源は幸福なのです。要は、考え方によるということなのですね。
■さて、子どもたちは2学期も、様々な学校行事や近隣の幼稚園・小学校との交流及び共同学習、居住地校との交流、校外学習等に取り組んで、経験の幅を広げ、学習を深め、大いに楽しむことができました。これも、保護者の皆様は勿論、県こども総合療育センターの皆様や地域の皆様方の御理解と御支援があればこそと、心よりお礼申し上げます。子どもたちにつないでもらっている皆様との御縁に感謝しながら、皆様と共に幸福に満ちた素敵な年を迎えたいと思います。今年一年、ありがとうございました。
曼珠沙華 抱くほどとれど 母恋し
曼珠沙華 抱くほどとれど 母恋し
ちょうど9月の彼岸の頃、まるで時を知っているかのように、一斉に咲き出す曼珠沙華(彼岸花)。畦道に咲くこの花の色は燃えるように真っ赤で、背景の緑とのコントラストが実に鮮やかです。花弁が反り、放射状に伸びるおしべ等の形状も印象的。墓参りの時期でもあり、別離を連想させることで嫌う人もいますが、花の見頃はすぐに過ぎてしまいます。
「曼珠沙華 抱くほどとれど 母恋し」は、熊本を代表する俳人中村汀女の句です。秋の彼岸頃に真っ赤な曼珠沙華がいっぱい咲いていた。幼な子と一緒にそれを抱くほどたくさん採りながら、ふと、望郷の思いと母親を慕う思いが募ってきた。そんな句意です。
結婚後10年間、句作から離れていた彼女がようやく再開したのが昭和7年、当時32歳で3人の母親だった横浜時代の作品とのこと。きっと、実家そばの江津湖畔の風景とともに母親を強く思い出したのではないでしょうか。誰にとっても、いくつになっても、母親は特別な存在です。
本日、県こども総合療育センターの研修室をお借りして第2回松東セミナーを開催しました。職員の一人が講師席に飾ってくれました。
23日(土)は彼岸の中日。一雨ごとに秋も深まっていきます。
平成29年9月21日 熊本県立松橋東支援学校長 松田 満
学びを深め広げる3つのワザ
学びを深め広げる3つのワザ
校長室から見えるサルスベリの花もだんだん少なくなってきました。暑かった夏もいつしか過ぎ去ろうとしています。
2学期は小学部に新しい友だちを迎え、賑やかにスタートしました。始業式では、「学びを深め広げる3つのワザ」を紹介したところです。今の時間学んだことはどんなことだったかを、①自分で振り返ってみること。②それを、先生や友だちに伝え、確認すること。③しばらくして思い出して、生活や学習の中で使ってみること。「振り返る」「伝える」「使う」の3つのワザです。幼児児童生徒の皆さん、どうですか。自ら貪欲に、継続することも大事です。
先週は、秋篠宮眞子様ご婚約会見の喜ばしい報道がありました。「太陽のように明るい方」「月のように静かに見守ってくださる」などと、お二人がお互いを太陽と月に例えられたことも、実に日本的で、微笑ましかったですね。
これから空気も澄んで遠くの景色がよく見えるようになります。それこそ、夜にはきれいな月や星々もみることができるでしょう。とても楽しみです。
ところで、月に満ち欠けがあるのは知っていますか。月は、太陽の光が当たったところが明るく見えますが、毎日太陽と地球と月の位置が変わるために、日々見え方が変わります。不思議ですね。太陽と地球と月が一直線に並んだときに、新月や満月になります。新月から次の新月になるまで、約29日かかります。新月から満月までは約15日かかるので、満月の夜が十五夜といわれるそうです。
また、私たち地球から見える月はいつも同じ側であることも知っていますか。
月は、いつも私たちに黒い模様のある側を見せています。昔の人は、ウサギが餅つきをしているように見えたとか。その黒い模様は、他の部分よりも重いそうです。実は、月の裏側は白くて軽く、地球と月が引力で引きあう際に、重い側が地球の方を向けているのだそうです。丁度、起き上がりこぼし(だるまさん)が床に下を向けるように。
そのような天体や星々を眺めながら、まだ誰も見たこともない宇宙に思いを馳せるのも面白いですね。新しい気付きがあったら、教えてくださいね。楽しみに待っていますよ。
平成29年9月5日 熊本県立松橋東支援学校長 松田 満
体験活動のススメ
体験活動のススメ
先日、NHKアーカイブを見ました。タイトルは「トンボになりたかった少年」。昭和59年放送というのだから、かれこれ30年以上昔の番組です。当時、東京大学の航空工学の教授で、航空機の開発において世界的権威だった東昭(ひがしあきら)教授が、小学生の頃に追いかけたトンボ(ギンヤンマ)の卓越した飛行能力を何とか開発に生かせないか、研究を行うという内容でした。興味深かったのは、教授が捕まえたギンヤンマに糸をかけ、それをおとりにして竿を振り回して、まるで鮎の友釣りのように、絡んでくるトンボを捕まえるシーンでした。きっと教授は子どもの頃、同じ方法でトンボを捕らえたとき、すごい勢いで飛びかかってきたり、じっと空中の一所にとどまって(ホバリングして)いるトンボの動きが忘れられなかったのでしょう。
教授は、捕まえたギンヤンマを風洞の中で飛ばし、翅のまわりにできる気流の様子を分析します。最初のうちはうまくいかず、トンボは弱ってしまいますが、教授は知人に頼んで送ってもらった生きたギンヤンマでトライし続けます。そのときの教授は、トンボ採りに夢中になった少年の表情そのものでした。
番組を見終わっていろいろ調べると、トンボの翅は多少凸凹があって、翅の周りに空気の渦ができることで、かえって全体の気流がスムーズに流れるそうです。これを応用していろいろと商品が開発されているようです。このような、虫や植物など自然の知恵を生かしたバイオミメティクス(生物模倣)は盛んに行われています。皆さんがよく知っているマジックテープは、飼い犬の毛にトゲトゲがくっつくオナモミの実が参考にされています。ほかにもいろいろ医療やデザイン等で、私たち人間の生活に役立っているものがありますよ。探してみてください。虫や植物は何しろ、人間が誕生するずっと前から、環境の変化に対応して少しずつ進化してきたからこそ、現在まで存在し続けている訳です。自然の知恵は本当にすごいですね。
幼児児童生徒の皆さんには、不思議だな、なぜだろう「?」と思うことをたくさん貯めておいてほしいと思います。学習を進めていくうちに、いつか突然「!」ひらめくことでしょう。また、記憶に永く留めるコツは、できるだけ直接的に体験することです。実際に見たり聞いたり、触ったり、臭ったり味わったりしたことは印象に強く残ります。そのことはきっと、皆さんの生活を豊かにするだけでなく、周りの人たちの役に立つことにも繋がるかもしれません。
さて、幼児児童生徒の皆さんは1学期、様々な学習活動に意欲的に取り組みました。また、いろんな作品等成果物がたくさんできました。一つ一つが皆さんの「頑張りのしるし」です。夏休みには、1学期の学習を振り返ってみてください。作品や活動の写真等を見ながら、授業中の先生方とどんなやりとりができたか。そのとき、どんな思いだったかを確認しましょう。そして、2学期に繋げていってください。
昨日知らなかったことが今日は理解できている。今朝はできなかったことが午後にはできるようになっている。これは、とてもすごいことです。2学期も、「できた・分かった」を一つずつ増やしていきましょう。小さなステップを重ねて大きな変容へ、可能性はうんと広がりますよ。
平成29年7月20日 熊本県立松橋東支援学校長 松田 満
星の王子の影とかたちと
いづこかにかすむ宵なりほのぼのと 星の王子の影とかたちと
初めまして。4月から校長を務めています松田です。教育行政から久しぶりに学校に戻ったこともあって、子どもたちとの出会いは特に新鮮でした。毎日、県こども総合療育センターから学校に登校する子どもたちは、笑顔をいっぱい輝かせ、希望を抱いて生き生きと教室で学んでいます。転任者9人を含め、職員一同、本校の教育目標を具現化する取組を、「チーム松東」として進めて参りますので、どうぞよろしくお願いします。
さて、6月6日現在、在籍する21人の子どもたちは全員センターに入所入院しています。私たちが学校にて、存分に子どもたちの教育指導に打ち込めますのも、ひとえにセンターの皆様の御支援のお陰様と思っています。昨年度は、熊本地震で被災した際、施設を提供いただきました。このことは、私どもにとってこの上ない喜びであり、大きなエールをおくっていただいたと感謝しております。
5月27日(土)に開催した松東レクリエーションにおきましても、スタッフの皆様に御協力いただき、子どもたちを中心として、保護者の皆様方、地域の方々、センターと学校が一体となった楽しく素敵な催しにすることができました。重ねてお礼申し上げます。
本校は、今年度から2年間、防災型コミュニティ・スクールの指定を受けました。これを機に、災害時の防災体制の構築と子どもたちの防災意識の高揚に取り組んで参ります。計画では、松橋高校、松橋西支援学校と合同の協議会を通した広域での防災体制の構築と、本校単独の協議会による「希望の里」における防災体制の構築を進めることとしています。一層、センターをはじめ、地域の皆様との絆を強めて参りたいと思います。
ところで、冒頭の歌は、郷土のフランス文学者、翻訳家で、熊本県近代文化功労者である内藤濯(ないとうあろう)氏の歌です。サン=テグジュペリ著「星の王子さま」については、皆さんも一度は読まれたことがあるのではないでしょうか。主人公のパイロットが飛行機の故障でサハラ砂漠に不時着し、そこで不思議な少年に出会います。家ほどの大きさしかない小さな星からやってきた少年(王子)は、自分が世話をしているバラの花と心を通わせることができず、傷ついた心で星巡りの旅に出ていたのです。物語は、王子の傷心とその後の心の成長、パイロットの孤独と王子との交流による救済が軸となっています。濯の名訳は、原文のリズムを日本語に移すことを大切にされた、とても美しい文章です。本書との出会いは中学生の頃でした。しかし当時は、主人公が描いた一見帽子に見える絵が、実は象を飲み込んだウワバミの絵だったなど、単にユニークな発想の童話であるという理解にとどまっていたようです。時を経て、再び丁寧に読み返しますと、その内容はすごく深く、まるで哲学書。「心の手入れ」「絆のつくり方」「大事なことは目には見えない」「関係性から生まれる価値」など、随所に物事の本質を示唆する深遠なメッセージが綴られています。
機会があれば、子どもたちにも是非、読んでもらいたいと思います。まずは、「かつて子どもだった」おとなの我々が、とらわれのない心を持って物事を見、自らの感性が萎びないよう努力していかねばと思います。そのような願いを込めて今回のタイトルとしました。
平成29年6月19日 熊本県立松橋東支援学校長 松田 満