校長室からの風
パラアスリートに励まされる日々 ~ 東京パラリンピック
東京パラリンピックの競泳男子400m自由形及び200m個人メドレー(いずれも視覚障害クラス)で、熊本市出身の富田宇宙選手(32歳)がそれぞれ銀メダル、銅メダルを取るという快挙を成し遂げました。新型コロナウイルス第5波に覆われている熊本県にとって明るいニュースです。しかも、富田選手は、熊本西高と関係が深い方で、二重の喜びに浸っています。
富田選手は済々黌高校出身で、同校在学中、水泳部で活躍されました。その時、富田選手を指導したのが米田教諭で、現在、熊本西高の保健体育教諭で水泳部顧問です。米田教諭の話によると、富田選手が眼の病気にかかったのは高校2年生の秋でした。卒業後も親交は続き、視力が低下する中、パラアスリートの道を進む富田選手を米田教諭は応援しました。東京パラリンピックがコロナパンデミックの影響で1年延期となった昨年、米田教諭は富田選手を西高に招き、西高のプールで練習する機会を設けました。そして富田選手は、西高水泳部員達に対し練習法はじめ多くのアドバイスをされたそうです。富田選手のメダル獲得が決まると、西高Instagramでも快挙を喜ぶ水泳部員の声があがっていました。
米田教諭から富田選手の話を聞く中で、私が最も印象に残ったのは、「私が出会った生徒の中でも特に目の力、眼力が強かった」という言葉です。この言葉は西日本新聞にも紹介されていました。困難に巻き込まれても屈しない、富田選手の意志の強さを象徴していると思います。
富田選手は水泳競技ですが、視覚障害の陸上競技ではガイドランナー(伴走者)の存在に引き付けられました。重度の視覚障害の選手と短く細いロープで手をつなぎ、「選手の目」となって伴走し、競技の安全を支える役割を担っています。これまでの長く苦しい練習期間を一緒に乗り越えてパラリンピックの大舞台に出場した、まさに一心同体の二人です。陸上競技短距離のある種目では、二人をつなぐロープが切れ、レースを途中で断念するシーンが見られ、テレビ観戦していた私は息を呑む思いに包まれました。
東京パラリンピックの競技の様子が連日、テレビ中継されています。これほど多様なパラスポーツがあるのか驚く日々です。そして、様々な障がいのある選手達が自分の有する運動機能を精一杯発揮する姿に、気持ちが揺さぶられます。
西高生の皆さん、現在は部活動もできず、閉塞感に包まれていると思います。今こそ東京パラリンピックのテレビ観戦を勧めます。9月5日閉会ですから、期間はあと5日間です。パラアスリートのパフォーマンスを観ていると、「人間とはいかに素晴らしいものなのか」という深い感慨に包まれます。
「校長室からの風」