2021年9月の記事一覧
スポーツの力 ~ 陸上部、野球部、そして富田宇宙選手
8月25日に西高の2学期が始まりましたが、熊本県が新型コロナウイルスの「まん延防止重点措置」対象県のため、生徒は分散登校、そして部活動は原則中止となりました。公式戦2週間前からの部活動は認められましたが、学年によって午前と午後に分かれて登校のため、1,2年生の部員がまとまっって練習する機会は土日を除いてありません。
校長室の窓から、広いグラウンドが見えます。最も手前で陸上部の生徒が練習しています。3年生が引退したうえに、学年別の練習のため、人数がより少なく寂しい光景に映ります。しかし、黙々と走り、投げ、新人戦に備えている様子が伝わってきました。9月17日(金)~19日(日)と新人陸上競技大会が県民総合運動公園陸上競技場(熊本市)で開催されました。西高陸上部は砲丸投、円盤投、やり投、三段跳などのフィールド競技で上位を独占、フィールド部門の学校対抗で優勝。トラック競技も併せた総合の学校対抗でも3位に入りました。10月7日~10日に宮崎市で開催される全九州高校新人陸上競技大会に2年生4人、1年生4人の計8人が県代表として出場することとなりました。
9月23日(木・祝日)から九州地区高校野球熊本大会が始まりました。西高野球部は藤崎台球場(熊本市)で必由館高校と初戦でぶつかりました。共に甲子園出場の経験を持つ公立のライバルです。私も応援に行きましたが、手に汗を握る好試合となり、1対0で西高が競り勝ちました。団体競技の野球の場合、学年が分散されての練習は苦労が多かったろうと思います。
陸上部の九州大会出場、野球部の難敵を下しての2回戦進出というニュースは学校の雰囲気を明るくしました。長引くコロナ禍で不規則な生活を強いられ、体調、体力を維持することも困難な中、はつらつとスポーツで自己表現する西高生を見て、頼もしく思います。
そして、今日、9月24日(金)、東京パラリンピックの水泳競技のメダリスト、富田宇宙選手が西高に来校されました。本校の体育科の米田教諭(専門は水泳)が、富田選手が済々黌高校時代の水泳の指導者で、その後も長く交流が続いています。昨年、幾度も来校され、本校の体育コースの生徒達に講演をしてくださり、水泳部の生徒と一緒にプールで練習されました。今回、帰省されたため、体育コースの生徒達にメダルを披露する機会が実現しました。富田選手こそまさに逆境をスポーツの力で克服された人です。視力障がいのハンディを乗り越え、パラアスリートとして自信に満ちあふれた富田選手の姿を目にして、体育コースの生徒達もきっと大いに励まされるものがあったと思います。
コロナパンデミックであっても、スポーツの力は少しも衰えないのです。
「校長室からの風」
富田宇宙選手と体育コースの生徒たちの交流会
オンライン保護者会の実践 ~ 「学校情報化優良校」の認証
1学年保護者会を9月16日(木)午後に開催しました。「えっ? まん延防止重点措置期間にできるの?」という声が聞こえてきそうですが、できるのです。もちろん、保護者の皆さんに西高に来て頂くことはありません。すべてオンラインで開催なのです。従って、保護者の皆さんは、ご自分のスマホやタブレット等で参加できるのです。しかし、「平日で仕事があり、オンラインでも参加しづらい」との声が聞こえてきそうですが、その対応もしています。
1学年保護者会の内容は、学年主任の米田教諭の挨拶から始まり、九州産業大学の大西純一教授の進路講演会、西高教務部からの「2年次のコース選択説明会」、旅行会社による「修学旅行説明会」など盛りだくさんです。これらのほとんどが前日までに動画収録が完了し、学級(クラス)と生徒及び保護者の端末を結ぶコミュニケーションツール「Google Classroom」に保存されているのです。
生徒達は登校して1年の各教室で視聴しますが、リアルタイムのライブ映像ではありません。適宜、休憩時間をとりながら視聴し、担任や副担任の支援を受けて理解を深めます。そして、これらの動画は9月20日(火)まで保存されていてアクセスできますので、保護者の皆さんは都合の良い時間に視聴できるのです。このオンライン保護者会の方式なら、距離も時間も超越できます。
長期化するコロナ禍という逆境の中、いかにして学校行事を実施するか?鍵はICT(情報通信技術)です。西高は、一人一台タブレット端末の先進実践校として今年度4月にスタートし、わかりやすい授業の創造、生徒同士の協働学習、リモート生徒集会開催、オンライン生徒会選挙の実施など実践を重ねてきました。そして、今回のオンライン保護者会に代表される保護者とのデジタルコミュニケーションの充実に至っています。これらの実践が日本教育工学協会に高く評価され、この度、「学校情報化優良校」の認証を受けました。この認証を受けるのは熊本県の高校では西高が初めてです。
ICTを日常的に取り入れた農業をスマート農業と呼びます。ICTを市民の生活につなげて利便性を高めている都市をスマートシティと呼びます。西高は、ICTを日常の教育の場に溶け込ませ、空間的、時間的に学校機能をより豊かにした「スマートスクール」を目指します。
学校教育のICT化はフロンティア(未開拓領域)です。トライ&エラーの連続ですが、学校挙げて取り組んでいきます。いつの時代にもフロンティアはあるのです。定年近い私ですが、挑戦できるフロンティアがあることは喜びです。
「校長室からの風」
パラアスリートに励まされる日々 ~ 東京パラリンピック
東京パラリンピックの競泳男子400m自由形及び200m個人メドレー(いずれも視覚障害クラス)で、熊本市出身の富田宇宙選手(32歳)がそれぞれ銀メダル、銅メダルを取るという快挙を成し遂げました。新型コロナウイルス第5波に覆われている熊本県にとって明るいニュースです。しかも、富田選手は、熊本西高と関係が深い方で、二重の喜びに浸っています。
富田選手は済々黌高校出身で、同校在学中、水泳部で活躍されました。その時、富田選手を指導したのが米田教諭で、現在、熊本西高の保健体育教諭で水泳部顧問です。米田教諭の話によると、富田選手が眼の病気にかかったのは高校2年生の秋でした。卒業後も親交は続き、視力が低下する中、パラアスリートの道を進む富田選手を米田教諭は応援しました。東京パラリンピックがコロナパンデミックの影響で1年延期となった昨年、米田教諭は富田選手を西高に招き、西高のプールで練習する機会を設けました。そして富田選手は、西高水泳部員達に対し練習法はじめ多くのアドバイスをされたそうです。富田選手のメダル獲得が決まると、西高Instagramでも快挙を喜ぶ水泳部員の声があがっていました。
米田教諭から富田選手の話を聞く中で、私が最も印象に残ったのは、「私が出会った生徒の中でも特に目の力、眼力が強かった」という言葉です。この言葉は西日本新聞にも紹介されていました。困難に巻き込まれても屈しない、富田選手の意志の強さを象徴していると思います。
富田選手は水泳競技ですが、視覚障害の陸上競技ではガイドランナー(伴走者)の存在に引き付けられました。重度の視覚障害の選手と短く細いロープで手をつなぎ、「選手の目」となって伴走し、競技の安全を支える役割を担っています。これまでの長く苦しい練習期間を一緒に乗り越えてパラリンピックの大舞台に出場した、まさに一心同体の二人です。陸上競技短距離のある種目では、二人をつなぐロープが切れ、レースを途中で断念するシーンが見られ、テレビ観戦していた私は息を呑む思いに包まれました。
東京パラリンピックの競技の様子が連日、テレビ中継されています。これほど多様なパラスポーツがあるのか驚く日々です。そして、様々な障がいのある選手達が自分の有する運動機能を精一杯発揮する姿に、気持ちが揺さぶられます。
西高生の皆さん、現在は部活動もできず、閉塞感に包まれていると思います。今こそ東京パラリンピックのテレビ観戦を勧めます。9月5日閉会ですから、期間はあと5日間です。パラアスリートのパフォーマンスを観ていると、「人間とはいかに素晴らしいものなのか」という深い感慨に包まれます。
「校長室からの風」