校長室からの風

門松が立ちました

 

 今年は今日12月27日(金)が学校の仕事納めとなります。学校では、進学課外授業を受ける生徒たちや部活動に励む生徒たちの姿が見られます。朝から、有志職員とハンドボール部の男子生徒4人で、門松づくりが行われました。例年関わってこられた渡部先生(数学)の段取りがよく、およそ1時間でできあがり、正門前に立ちました。門松は、新しい年の神様が天から降りてこられる目標(「依代(よりしろ)」と言います)となるものです。これで、私達の学校も新年を迎える準備が整ったわけです。

 門松を飾る松、竹、葉牡丹、南天などそれぞれ意味があるのです。正月の伝統的慣習であり、門松が立つと気持ちが落ち着きます。ALTのマシュー先生(アメリカ合衆国)も興味深く作業を見守り、質問をしていました。午後、課外授業や部活動が終わり帰る生徒たちを門松が見送ることになります。

 さて、年の瀬になって、学校に大きなサプライズニュースが届きました。車いすマラソンに取り組み、今年一年、各大会に出場してきた2年の見﨑さんが、「東京2020オリンピック聖火ランナー」(熊本県)に選ばれたのです。2020年(令和2年)の5月6日に県内を走行する聖火ランナーの一人となる予定です。走行する具体的な場所や時間は未定ですが、学校挙げて応援したいと思います。来年の東京パラリンピックには間に合いませんでしたが、見﨑さんはその次のパリパラリンピック大会出場を視野に入れ、挑戦することを決めています。見﨑さんの活躍は他の生徒たちに大きな励ましを与えることでしょう。

 見﨑さんをはじめ御船高校生一人ひとりは限りない豊かな可能性を持っています。その可能性をもっともっと引き出していきたいと思います。来る新年、御船高校の更なる飛躍の年となることを願わずにはいられません。

 今回をもって今年の「校長室からの風」を納めたいと思います。

   皆さん、良いお年をお迎えください。

 

「 一年の 心の煤(すす)を 払はばや 」(正岡子規)

 

 

 

2学期の終業式を迎えて

 2学期の終業式を迎えるにあたり、振り返ってみるとこの9月から10月にかけてラグビーワールドカップがわが国で開催され、ラグビーブームが巻き起こったことが思い出されます。にわかラグビーファンとなり、テレビ中継放送に見入った人も多かったのではないでしょうか?私は試合の面白さはもちろんですが、日本代表チーム構成メンバーに興味を惹かれました。日本代表チーム31人のメンバーには外国出身選手が15人。およそ半数です。ニュージーランド、南アフリカ、トンガ、韓国、オーストラリア、サモアなどの出身です。

 ニュージーランド出身で日本国籍を取得した主将、リーチ・マイケル選手は「このチームの良さは多様性だ」と表現しました。様々な言語と文化を背景に持つメンバーは、チーム内でお互いを理解し合い、結束力を高めていきます。生まれや育ち、文化的背景の違いを乗り越えて結束力を高めていったところに、ラグビー日本代表チームの強さがあったということでしょう。

 さて、多様性という言葉が出ましたが、私はつねづね御船高校の魅力は「伝統と多様性」だと思っています。伝統は、大正、昭和、平成、令和と変わらずこの地にあって地域の方から親しまれていることです。多様性は、電子機械科、芸術コース(音楽・美術・書道)、そして普通科の特進、総合のクラスがあり、それぞれ特色ある学び合いが行われていることです。皆さんの出身中学校は30校を超えており、この学び舎で多くの出会いがあります。

 「生物多様性」という言葉があるように、森も多くの種類の樹木があるほど健やかで強いそうです。御船高校は、個性豊かな生徒がたくさん集う人材の森のような学校でありたいと思います。

 午前9時から体育館で、表彰式、そして2学期の終業式を執り行いました。寒気の漂う体育館でしたが、節目の行事にふさわしく心身とも引き締まる思いがしました。そして、9時45分から大掃除に全校挙げて取り組みました。校庭で帚を持つ生徒たちの表情もどことなく解放感があるようで、晴れやかです。冬休みの楽しみを尋ねると、異口同音に「お年玉」と返ってきました。御船町在住の女子生徒は、地元の若宮神社(御船川沿い)に家族で初詣に行くのが慣習と答えてくれました。

 明日から冬休みです。生徒の皆さん、新年1月8日の始業式でまた会いましょう。令和元年も残り一週間。よいお年を。

 

 

 

提言する力を養う ~ 1学年「総合的な探求の時間」学習発表

   体育館で一斉に各グループのポスターセッションが始まると、活気が会場に溢れました。12月20日(金)の午後、1学年「総合的な探究の時間」(以下、略して「総探の時間」と云う)の学習発表会を開催しました。各クラスから2グループを生徒たちの相互評価で選出し、学年代表の12グループが体育館の各所に分かれ、「自分たちが住んでみたい町」のテーマで発表したのです。

 今年度の1学年の「総探の時間」は、1学期に上益城郡の産業や伝統文化を知る活動を行いました。それを踏まえ、2学期は自らが住む地域について知り、住みやすい、あるいは住んでみたい「まち」を考える学習に取り組みました。9月下旬には、実際に御船町でまちづくりに取り組んでおられる役場、観光協会、商工会の方をゲストティーチャーとして迎え、クラスごとにお話を聴きました。そして、御船町の課題に気づき、高校生なりの課題解決に向けた提言づくりを始めたのです。

 「総探の時間」は週に1時間しかありません。しかも、2学期は学校行事が多く、各グループで十分に調べ、課題解決に向けた学習の余裕はありませんでした。しかし、それでも高校1年生なりに提言することが大切だと考え、敢えて2学期の最後に発表会を設けたのです。9月のゲストティーチャーの方達をはじめ御船町議員さんや町おこしの団体の方など十五人ほどお見えになり、関心の高さがうかがえました。

 生徒たちの提言内容は、次のようなものでした。

・ 安全なまちづくりの観点から町中にグラデーションの街灯設置
・ 御船町キャラクターマスコットの「ふねまる」型のロボットをつくり、清掃及び防犯監視の機能を    持たせる

・  高校生が小グループをつくり一人暮らしのお年寄りを訪問し交流する
・ 町に小児科がないので小児科を誘致
・ 町を舞台とした映画製作 など 

 提言を聴かれた町の関係者からはやはり大人のご指摘、ご意見がありました。「費用対効果を考えていない」、「実際に町を歩いておらず、机上のプラン」、「自信がないのか、発表の声が全体的に小さい」などです。一方、「これらの提言の中から一つでも学校と町が協力して実現させよう」という声もありました。そして、全員の方から「このような取り組みを御船高校が始めてくれることを待っていた。」との歓迎の言葉を頂きました。

 県立高校とは言え御船町にある学校です。次代の地域社会を担う人材を養う使命が学校にはあります。コミュニティスクールとしての御船高校にご期待ください。 

 

「水」は先人からの贈り物

 先日、図書室を訪ねたところ、「冬休みに生徒たちに読書に親しんでほしい」という司書の先生の思いで、ライトノベルだけでなく、様々なジャンルの書籍がお勧め本コーナーに並べられていました。その中に、徳仁(なるひと)親王の著作『水運史から世界の水へ』がありました。平成31年4月にこの本が刊行され、翌月、徳仁親王は令和の新天皇として即位されました。学生時代から水運史を研究されてきた天皇陛下は、21世紀の世界の平和と繁栄は水問題の解決にかかっていると述べられ、水問題に強い関心を持たれています。そして、限りある水を「分かち合う」知恵の実践事例として江戸時代の明治(めいじ)用水(愛知県)や三分一湧水(さんぶいちゆうすい)と呼ばれる分水施設(山梨県)を紹介されています。

 『水運史から世界の水へ』を読みながら、12月4日にアフガニスタンで銃撃され非業の死を遂げた中村哲医師(享年73)のことを考えました。長年、パキスタンそしてアフガニスタンで人道支援に尽力されてきたペシャワール会代表の中村哲医師は福岡県出身ということもあり、熊本県でも講演を幾度もされています。20年ほど前、当時勤務していた高校の生徒達と共に熊本市でご講演を聴く機会に恵まれ、過酷な環境のもと信念を貫く姿勢に感銘を受けました。

 中村哲医師は、清潔な水がない悪質な衛生状態での医療活動に限界を感じます。また貧困問題の原点は水不足であることに気づきます。そして「100人の医師を連れてくるより、一本の用水路を作る方が多くの人を助けることができる」と考え、アフガニスタンの荒涼とした砂漠地帯での用水路建設事業に着手したのです。この用水路工事に当たって参考にしたのが、福岡県朝倉市の山田堰(やまだぜき)でした。江戸時代後期、大小の石を水流に対して斜めに敷き詰めることで筑後川から水田に水を引くことに成功した山田堰の手法を見習い、取水口の難工事を克服しました。そうして20㎞を超す長大な用水路を完成させ、周辺の砂漠を緑の農地に一変させました。

 ここ御船町にも江戸時代の用水路の遺産が継承されています。この「校長室からの風」で以前紹介しましたが、吉無田水源から水を引いた嘉永(かえい)井手です。幕末の木倉手永の惣庄屋の光永平蔵(みつながへいぞう)は、総延長28㎞に及ぶ大水路(用水路)の難工事を指揮しました。6年を要し竣工したこの難事業には地域の村々から農民が動員されました。重機もない当時、人力に頼った水利土木工事がいかに過酷なものであったか想像するしかありません。長い水路の途中、田代台地では873mものトンネルが穿(うが)たれました。「九十九(つづら)のトンネル」として今も顕彰されています。

 わが国の温暖湿潤気候とアフガニスタンのような砂漠地帯では条件は大きく異なりますが、江戸時代の先人の水利事業に対して改めて敬意を表します。

 水道の蛇口をひねればおいしい水が潤沢に出てくる生活に慣れた私たちですが、世界には安全な飲料水に恵まれない人々、干ばつで農業用水が不足し飢饉に苦しむ人々がいます。わが国の「水」は先人からの贈り物であることを忘れてはならないと思います。 

 

舞台で輝く瞬間 ~ 御船高校芸術コース音楽専攻発表会

    プログラムのフィナーレ、3年生の青山さんのピアノ独奏「渚のアデリーヌ」、そして平野さんの独唱「ああ愛する人の」は聴衆の胸を揺さぶるものでした。舞台で演奏する青山さん、歌う平野さんの姿は輝いて見えました。

 12月17日(火)、午後6時半から御船町カルチャーセンターにて「御船高校芸術コース音楽専攻 演奏会」が開かれました。音楽専攻は、3年が2人、2年が4人、1年が5人の計11人在籍しており、前半は11人全員がそれぞれ独奏、独唱を披露しました。そして、後半は卒業学年の3年生の二人の演奏、独唱が中心の構成で、途中、1・2年生の9人でアンサンブル演奏「美女と野獣」で会場の雰囲気を盛り上げました。

 3年生の青山さんはピアノ、平野さんはソプラノ独唱が専門ですが、プログラムの中では二人でピアノ連弾に挑戦し、息の合ったところを見せました。そして、プログラム終了後に二人で舞台に立ち、3年間の高校生活を振り返っての感謝の言葉を述べました。「音楽は時間の芸術」と言われます。他の美術・デザインや書道のように作品が残りません。その瞬間、瞬間に音や声は生まれては消え、二度と後戻りができません。瞬間の創造に賭ける集中力と日頃のレッスンの繰り返しが求められる芸術です。

 3年生の二人の舞台での輝きは、これまでの長い努力の時間が生み出したものです。そのことが尊いと思い、私自身も熱いものがこみあげてきました。

 卒業演奏会を兼ねた芸術コース音楽専攻発表会は心温まる余韻を残し閉幕しました。本校の芸術コースは平成16年(2004年)に設立され、今年で15年を迎えます。九州唯一の音楽大学である平成音楽大学が同じ御船町にあることが何よりの強みで、大学の先生方からご指導を受けたり、同大オーケストラの定期演奏会に出演させていただいたりと特別な学びができます。御船町は、恐竜の化石発掘で有名ですが、美術の町であり、音楽の町でもあるのです。現在の音楽専攻1年生の5人は自分たちで御船町の応援ソングを作詞、作曲したところ、町役場の商工観光課から応援していただき、ミュージックビデオ作製にまで至りました。

 本校の音楽科の岡田教諭は「芸術(音楽)は心の栄養」と語ります。また、前村講師は「音楽は最高のコミュニケーションツール」だと言います。芸術コース音楽専攻発表会では中学生の姿が観客席で目立ちました。御船高校芸術コースで好きな音楽を存分に学びませんか?皆さんの入学を待っています。