2022年9月の記事一覧
命を守るヘルメット ~ ヘルメットを着用し自転車に乗ろう
「日本では、ほとんどの人がマスクをしていますね。けれども、自転車に乗る人でヘルメットを着用している人はあまりいません。一方、アメリカ合衆国では、マスクをしている人は少ないのですが、ほとんどの人がヘルメットをかぶって自転車に乗っています。交通事故において頭を守ることの大切さを米国人はわかっていますから。日米、対照的な光景です。」
長くアメリカ合衆国で仕事をされ、この春に帰国し、西高の近くにお住まいの方から聞いた話です。
明日、令和4年10月1日から、熊本市では自転車利用者のヘルメット着用が努力義務化となります。全年齢層を対象として、熊本市自転車安全利用条例が改正、施行されるのです。その背景として、自転車利用者の死亡事故において、約6割が頭部へのダメージが致命傷となっており、ヘルメット着用が死亡事故を確実に減らすことにつながるというデータがあるからです。
もちろん、条例による努力義務化ですから、ヘルメットを着用しなくとも取り締まりや罰金・罰則とはなりません。しかし、この機をとらえ、私たちは高校生に対して、ヘルメットで命を守ることになるというメッセージを強く発しなければならないと思います。
西高では4年前に自転車で通学途中の女子生徒が交通事故でなくなるという悲劇が起こりました。交通事故は無情にも一瞬で、かけがえのない命を奪い、家族をはじめつながりのある人々を悲しみの淵に沈めます。あの日、学校に向かっていた彼女が抱いていた希望、夢、そして未来のすべてが失われたのです。
自転車通学生の皆さんにあらためて呼びかけます。ヘルメット着用を真剣に考えてください。西高では、育西会から2000円の補助があり、軽くて丈夫でスタイリッシュなヘルメットを2300円で購入できるようになっています。二度とこのような交通事故の悲劇を起こさないために、保護者の方たちがヘルメット購入補助制度を始められたのです。けれどもここ数年、ヘルメット着用の自転車通学生は増えていません。
今回の熊本市での自転車利用者のヘルメット着用の努力義務化を契機に、全世代で意識が変わり、ヘルメット着用が多数派となることを願っています。ぜひ保護者の皆様もお考えいただき、子どもさんと話し合ってみてください。
かけがえのない命を守るために。
「校長室からの風」
9月12日に実施された育西会の皆さんによる朝の交通指導風景
2年生の皆さんへ ~ 2学年集会
コロナ第7波に覆われた夏でした。しかしながら、四国インターハイ、東京での全国高校総合文化祭など高校生のスポーツ、文化に係る大きな大会は予定通り実施されました。困難な環境の中にあっても、高校生に日ごろの活動の成果の発表の場を与えたいという大会関係者のご尽力の賜物と有難く思います。西高としても、創立記念祭はじめ2学期に予定している学校行事について、コロナ感染対策を講じながらすべて実施していきたいと考えています。そして、これらの学校行事、生徒会活動及び部活動において中心を担うのが皆さん2年生です。あなた達の出番がきました。あなたたちが前面にでなければならないのです。そういう意識を持って、高校生活に臨んでほしいと思います。
西高は、教育活動におけるICT(情報通信技術)の活用で県のトップ校を目指し、様々な実践を重ねています。生徒一人一台のタブレットを活用し、わかりやすい授業づくり、生徒同士の共同学習、大学や専門機関のオンライン講座、海外との国際交流、そして今日の学年集会もそうですが、学校行事や校務の改革にICTを利活用しています。皆さんも、必要不可欠な文房具としてタブレットを日常、使いこなしてください。但し、ICTを活用することは一人の世界に閉じこもることではありません。逆のベクトルです。情報をみんなと共有し、チームで課題に取り組む探究的な学習が盛んになります。協調性、チームワークが学習活動の場でも求められます。趣味、性格、個性、価値観が異なる人と一緒に活動していくことは、かけがえのない体験です。高校は人間関係を学ぶ場であることも忘れないでください。
最後に修学旅行について触れます。体育コースは1年生の12月、無事に長野へのスキー修学旅行を実施できました。しかし、普通科の台湾旅行は2年次に延期し、サイエンス情報科と合同でこの12月に関東への修学旅行を実施することになりました。サイエンス情報科のシンガポール、普通科の台湾という海外修学旅行に引かれ入学してきた人もいると思いますが、コロナパンデミックの終息が見通せない現在、行き先の国内への変更を理解してください。
今の3年生は、体育コース以外は修学旅行が実施できませんでした。私の判断で最終的に中止を決め、体育館に生徒たちを集め、「この厳しい現実について、時間をかけてもよいから受け止めてほしい、理解してほしい」と語りました。生徒にとって理不尽な体験だったと思います。当たり前のことが当たり前にできない状況は続いています。楽観はできません。皆さん、より一層、自己管理に努め、修学旅行という大きなプロジェクトを実現しましょう。
「3年間で生徒を大きく伸ばす西高」をモットーに全職員で全力を尽くしていきます。本日の学年会が充実したものになることを願い挨拶を終えます。
「校長室からの風」
1年生の皆さんへ ~ 1学年集会
台風一過、爽やかな秋空が広がった9月20日(月)午後、保護者の方々にもご来校いただき、1年の学年集会を開催しました。保護者の皆様はそれぞれの教室に入り、子どもさんの席にすわってもらい、生徒たちは一同、体育館に集合しました。体育館と各教室はオンラインで結ばれ、時間を共有できます。ICT(情報通信機器)の活用です。
全体会の冒頭で、1年生の皆さんに対して、3年間で変化していくことの期待を述べました。高校生活はこれからです。自分探しの旅は始まったばかりです。高校3年間は心身ともに大きく成長する時期です。近年のライフサイエンス(生命科学)でもそれは実証されています。私たち人間の身体は何十兆という細胞でできており、日々、分裂を繰り返し、機能更新が行われています。しかし、人間の細胞分裂は、年を取るに伴い不活発になっていくそうです。今年60歳を迎える私はもうあまり細胞分裂が行われない一方、皆さんは人生の中で最も細胞分裂が活性化していて、皆さんは、自分でも気づかないうちに驚くほどこの3年間で変化するのです。
皆さんは昨日の皆さんではありません。明日の皆さんは、今日の皆さんではありません。急速な社会のICT化、経済のグローバル化という変化に対応できるのは、自分自身が変化していく若者だと私は信じています。
全体会では、進路指導の講義、2年次でのコース・科目選択の説明が行われました。そして、普通科全員で先般体験したNAIS(西高アカデミックインターンシップ)の生徒発表(中間発表)が体育館で行われました。大学7校、専門学校2校の全面的なご協力によって実現した体験入学について、担当生徒たちがパワーポイントのスライドを使い、体育館でプレゼンテーションを行いました。ICT機器を駆使してのプレゼンテーションのスキル(技能)は急速に向上しており、1年生の豊かな可能性を感じ、頼もしく思いました。
この1年生が3年に進級する時、私たちの熊本西高は創立50周年を迎えます。その時、私はもう西高に在職してはいませんが、希望をもって2年後を想像しています。
「校長室からの風」
校長室のアートギャラリー ~ 「文化の西高」
西高校長室に生徒の絵画・書道の作品展示を今年度から始めたことは1学期の「校長室からの風」でお知らせしました。絵画・書道それぞれ1点でしたが、今月、新たに2点の絵画作品が加わりました。いずれも公募展で賞を得た美術部3年生の大作です。
久保さん(3年)の作品は、友達がくつろいでスマホを眺めている姿を描いたものです。人物像はとても具象的な一方、周囲には小さな点で幻想的な円や半円が浮かんでいて、ぬいぐるみや桃も配置され、不思議な世界が創り出されています。友人への久保さんの思いが創作のモチーフとなっているようです。また、兜島さんの作品は、画面いっぱいに眼が描かれ、この眼差しそのものがテーマです。大きく見開かれた瞳には、樹木の生えた丘陵が映っており、眼差しの強さが見る者に迫ります。兜島さんの眼差しがこれから様々な対象をとらえ、作品が次々に生まれていくことが期待されます。
久保さん、兜島さんともに、大学の美術学部に進学し、さらに創作活動に精進していく決意を語ってくれました。言葉以上に雄弁な美術作品で、自らの感受性に基づくメッセージを発信し続けていってくれることでしょう。
また、書道部の活動においても、顧問の山下先生からうれしい報告がありました。9月10日(土)に宇土市で開催された熊本県高等学校揮毫大会において、2年臨書半切部門で内山さんが1位、山下君が3位、2年創作全紙部門で五島さんが3位、2年臨書全紙部門で斉藤さんが3位を獲得しました。西高書道部がこれだけ上位を占めることは近年なかったことであり、快挙です。早速、放課後に書道室を訪ね、部活動中の書道部員にお祝いを伝えました。部員全員、明るい雰囲気で、迎えてくれました。
西高は、平成3年という県内で最も早く体育コースを設けたことが象徴するように、体育系部活動が盛んな高校として県内外で知られています。玄関や廊下等に、なぎなた部、柔道部、ラグビー部、野球部などの栄光の軌跡の記念品や写真が並んでいます。しかし、近年、美術や書道の分野の伸びは著しいものがあり、「文化の西高」をもっと誇ってよいと私は考えています。
「ダイヤモンドの原石のような生徒たちがたくさんいます!」と美術部、書道部の顧問の先生方が口をそろえて言われます。原石の生徒を磨いて、育てることができる指導者がいるのが西高の強みだと私は思います。
西高へご来校の際は、校長室のアートギャラリーで、生徒の美術、書道の作品をご覧ください。
「校長室からの風」
「NAIS」(西高アカデミックインターシップ)開催
「NAIS(ナイス)」という学校行事が西高にはあります。西高アカデミックインターンシップの頭文字から生まれた言葉です。1年生普通科(体育コース含む)の生徒たちが、大学や専門学校を訪問し、半日単位の体験入学を行うのです。コロナ禍で過去2年間はオンライン形式の実施となり、大学・専門学校側からの説明、講義等が中心でした。しかし、今年度は3年ぶりにそれぞれの大学キャンパス、専門学校の施設を訪問しての体験学習の場となりました。
「NAIS」にご協力頂いている大学、専門学校は次のところです。コロナ感染がいまだ収束しない中、本校生を受け入れて頂いたことに深く感謝申し上げます。
崇城大学、熊本学園大学、熊本保健科学大学、尚絅大学、九州ルーテル学院大学、東海大学、九州看護福祉大学の7大学
九州中央リハビリテーション専門学校、大原学園の2専門学校
(順不同)
大原学園での体験入学のみ夏季休業中に実施し、その他の大学・専門学校は8月29日(月)から9月2日(金)にかけて行われました。5日間、生徒達の希望をもとに作られたローテーションに従い、それぞれの大学・専門学校に「登校」します。そして、各大学、専門学校の特色を知り、入門講義を受け、基礎実習・実技を体験するのです。専門的なことを研究するための施設の充実ぶりに驚きます。入門であっても講義の難しさに戸惑います。一方、実習や実技には積極的に取り組んだようです。
たとえ半日であっても、大学や専門学校の内側の世界を体験する意味は大きいものがあります。しかも、1年生の2学期の始まりに行います。この時期はまだ多くの大学・専門学校が夏季休業中という事情もありますが、西高としては、高校の先にもっと大きく深い知の世界が広がっていることを強く意識し、学びの動機付けとしてほしいのです。今は理解できない大学の入門講義ですが、それを理解できる学力を養うのが高校時代です。高校卒業後の進路、ひいては自分の人生を考えることにもつながると考えます。
大学の中には、西高の先輩が待っていて、大学の紹介や「高校で学んでおくこと」等の助言をしてくれたところがありました。1年生にとっては、きっとその先輩が大きく見えたことでしょう。大学生の先輩の姿に、近い将来の自分を投影した人もいるかもしれません。
無限の知の世界が広がっています。1年生の皆さんの学びの旅は始まったばかりです。
「校長室からの風」