2021年8月の記事一覧
ICTの日常化 ~ コロナ禍を乗り越えるために
月曜日朝の西高の1,2年生の授業では新しいことを始める緊張感に職員が包まれていました。ホームルームで授業する担当者が隣のクラスで授業を受けている生徒達に、「声は聞こえているか?」と問います。その声は、廊下を経て肉声と混じり、共鳴します。また、カメラは定点から授業を撮影しているため、授業担当者の姿はしばしば画面から消えます。隣のクラスの生徒にとっては声だけの授業となります。英語の発音は、スピーカーからハウリングして聞こえ、明瞭には聞こえません。ICT(Information Communication Technology 情報通信技術)に不慣れな職員には戸惑いもあります。しかし、学校として一歩踏み出したのです。コロナ禍を乗り越えるためにはICTの力が必要なのです。
西高は8月25日(水)に2学期を開始し、2週目に入ります。本県の新型コロナウイルス感染状況は厳しさを増しており、9月12日(日)までの「まん延防止措置期間」は時差登校(30分遅らせての9時始業)、短縮授業(45分)、1,2年生の分散登校(午前と午後の交互)、部活動休止等の対応に努めていますが、今週からさらに対応のギアを上げました。
分散登校の1、2年生は、教室で授業を受ける人数を半分程度に減らします。登校したクラスの人数を近隣の教室に二分します。そして、一方の教室で教科担当者が授業をし、もう一方の教室へ授業動画配信するのです。配信を受ける側の教室では前方のスクリーンに授業動画が映し出されます。また、もう一工夫する担当者は、生徒一人ひとりが持っているタブレット端末に授業動画が届き、手元でも確認できます。さらに、濃厚接触者や基礎疾患があって自宅待機している生徒達も、この授業動画を自分のタブレットで受け取ることができます。すなわち、リアルタイムで遠隔授業に参加できるのです。
他校では、たとえば出席番号の奇数、偶数に分け午前と午後に登校させ、同じ授業を教科担当者が二回実施する方式をとるところが多いようです。しかし、西高は、学年及び学級の一体性を重視しました。離れている者をつなぐICTの特性を活かしたのです。一つの教室での対面授業が最も良いことは自明です。しかし、コロナ禍でそれができないからこそ、分散した者をつなぐICT教育を推進するのです。登校できない在宅の生徒達にとっても、学校の授業と繋がっているという心理的な一体感は安心感につながると思います。
ICT教育はもう特別なものではありません。タブレットは生徒の日常の文房具です。「ICTの日常化」の時が来ました。離れた教室を、自宅と学校を、学校と社会をオンラインで結び、毎日、毎時間、活用していきます。
「校長室からの風」
「みなさん、がんばりましょう」 ~ 多難なスタート
「2学期は始まりますが、不自由な学校生活となります。けれども、皆さん、がんばりましょう!」
8月25日(水)の始業式の後、生徒会長の濱﨑さん(2年)が全校生徒にオンラインでメッセージを発信しました。校内に爽やかに響きました。
新型コロナウイルス感染症の第5波の影響で熊本県は9月12日(日)まで「まん延防止等重点措置」が適用されており、2学期再開の熊本市域の高校もこれまで以上の感染防止策をとることが求められています。県教育委員会の方針をふまえ、本校の対応は次のとおりに定めました。
一 学校全体
始業を30分遅らせ9時開始とし、授業は短縮45分で実施し、課外授業や部活動は休止とする。但し公式大会の2週間前から部活動は全体練習を行ってよい。
二 3年生
受験、就職試験がこれから始まる時期であり、進路実現の重要性から一日6時間授業を実施する。
三 1、2年生
午前と午後に学年が分かれて登校(分散登校)、それぞれ3時間授業実施。昼食を学校でとらない。教室の人数を通常の半分にするため、授業を2グループに分け、一方のグループは授業をオンライン配信する。登校しない学年の担当者が補充指導にあたる。
四 欠席している生徒
濃厚接触者や体調に不安があり登校できない生徒に対して、時間割通りの授業のオンライン配信を行い、自宅においてタブレットで受信し授業に参加できる。
このように2学期のスタートは多難なものとなりました。分散登校する1、2年生は午前と午後を交代し、毎日、半日は登校しますが、全校生徒がそろうことはありません。不規則で不安定な学校生活が当面続くことになります。しかし、この困難な状況に対し、学校はICT教育の特性を発揮し対応したいと思います。一人一台タブレット端末が整備されている西高の力が問われています。
今朝、2年生の昇降口にボードが掲げられ、今日は午後に登校予定の生徒達を励ます言葉が書かれてありました。この言葉通り、「できる範囲で、できる環境で、できるだけの努力をしていこう」という思いを生徒の皆さんと私たち教職員が共有し、難局を乗り切っていきましょう。
「校長室からの風」
「多様性と調和」 ~ 2学期始業式
8月25日(水)、熊本西高は2学期始業式を迎えました。
新型コロナウイルス感染症拡大に歯止めがかからず、お盆の故郷への帰省も自粛するよう呼びかけられた、非常事態の夏でした。今月中旬には停滞前線によって一週間にわたって大雨となった異常気象の夏でした。これまで当たり前だったことが、当たり前にできない不自由な夏でした。それは今も続いています。
しかし、この困難な状況の中、7月下旬から8月上旬にかけインターハイこと全国高校総体及び全国高校総合文化祭が実施され、西高から22人の生徒の皆さんが参加、出場できたことは大きな意義があったと思います。始業式に先立ち、全国大会を体験した6つの部活動の代表者が、その報告をスタジオで行い、各教室へオンライン配信されました。コロナ禍の中、大会が開催されたことへの感謝の思い、そして全国大会のレベルの高さ、そこで勝つことの難しさをそれぞれ述べ、最後に異口同音に「今回の結果は悔しい」と語りました。全国6位入賞を果たしたウエイトリフティングの西田君(3年)でさえ、「表彰台を狙っていたので悔しい」と言いました。
「悔しさ」こそ、若人が成長する原動力だと私は思います。「皆さんは特別な体験ができた。このことを誇りに思って欲しい。そして、次の目標を自ら立て、進んで欲しい」と励ましました。
始業式の校長講話(オンライン配信)では、東京オリンピック、そして昨夜開幕した東京パラリンピックの共通テーマ「多様性と調和」(Diversity and Harmony)について語りました。人種、性別または自らの性認識、言語、宗教、政治そして障がいの有無など様々な面で違いを受け入れ、そのうえで共通のルールのもとフェアに競い合うオリンピック、パラリンピックは、まさに多様性と調和にふさわしい世界イベントだと思います。オリンピック競技種目も33競技、339種目と多種多様となり、東京大会ではスケートボード、スポーツクライミング、サーフィンなどの新しい競技が加わる一方、わが国の伝統的な武道である空手が脚光を浴びました。
生徒の皆さん、世界はますます多様性を認め合い、共に生きていく共生社会へと向かっています。同じ西高生であっても、性格や趣味、価値観が違う人がいるのは当たり前です。自分と違う他人がいるからこそ、自分の個性が輝くのです。西高生一人ひとりがお互いの良さと違いを認め合い、高め合っていくことを期待しています。
2学期が始まりました。しかし、9月12日までの蔓延防止期間は、短縮授業や1,2年生の分散登校などで乗り切ろうと考えています。変則な日程が続きますが、かけがえのない学校生活を一日一日、大切にしていきましょう。
「校長室からの風」