2017年3月の記事一覧

平成29年3月

○3月29日に、平成28年度末の定期異動で本校からの転退任される先生方の転退任式を行いました。昨年度は20人を超える先生方が転出されましたが、今年は8人で、かなり小規模の異動となりました。体育館がまだ使えません。二高生へ最後の話をする機会ですから、放送ではなく直接生徒に話をしてもらいたいと考え、南門近くにある自転車置き場に椅子を持ち込んでそこで式を行いました。自転車置き場は、2階建ての構造でしたが、2階部分が地震で損傷しましたので早い段階で2階部分を取り除き平地にして自転車を置いて使用していました。椅子を並べると最大で1000人位は入るスペースです。そのままでは式典会場としての雰囲気が出ませんので、2月末に同窓会から寄贈していただいた校章入りのりんどう色の幔幕を4方に張り巡らせました。2月28日の同窓会入会式や3月1日の卒業式でも使用しましたが、1年生、2年生全員が見ることができるお披露目のいい機会にもなりました。すばらしいものをいただき改めて同窓会の皆様にお礼を申し上げます。
  今年度は地震の発生、その後の対応などで様々な教育活動に支障が出ましたが、生徒、教職員が一丸となって取り組みました。また、保護者の皆様、同窓会の皆様からも御支援をいただきました。今回転出される先生方にとっては、大変なご苦労をいただいた最後の1年であったと思います。新たな任地でもますますお元気で活躍されることを願っています。ありがとうございました。
  例年であれば、3学期の終業式や転退任式の頃には、桜が開花していますが今年はどうしたことか今日(30日)になっても熊本市の開花宣言はなされていません。今年は九州ではなく東京に最初に桜前線が上陸しています。夕方帰宅途中に校庭の桜を眺めたら花を開いている樹がありましたので、第二高校では開花宣言をしてもよいのではないかと思います。

○本校は平成15年度から、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定を受け、本年度で14年目となりました。平成27年度で第3期目の指定が終了し、平成28年度に第4期目(5年間)の継続指定を受けるため文部科学省に申請を行いましたが、5年間の指定は不合格となり平成28年度1年間の指定となりました。昨年度の申請書の内容を今年度1年間かけて見直し、新たな計画を盛り込んで第4期目の申請をしていましたが、先日、文部科学省から合格の通知をいただきました。平成29年度から5年間第4期目の取り組みを進めて参ります。昨年度はご心配をおかけしましたが、第4期目は、探究活動の深化、授業改善、評価方法の研究などに工夫を加え取り組みます。第4期目の取り組みの概要については、このHPの「SSH」のコーナーに掲載しますのでどうぞご覧ください。

○本校の施設設備の復旧状況は、HPの「復旧への道」のコーナーで随時お知らせしていきますが、施設の復旧はあまり進んではいない状況です。先日ようやく、教室棟、理科棟の改修の施工業者が決まりましたので、4月になり次第工事が始まる予定です。正門が通行止めになっています。これは、管理棟を取り壊すため、そこに入っている電気設備、水道設備、放送設備、火災警報設備といったものをプレハブの管理棟へ移設し、水道管、電気配線の付け替え工事を行っていることによるものです。正門としての機能は、現在南門がその役割を果たしています。来校される時は、南門、西門、東門から入ってください。

○平成29年度が、始まります。新1年生を迎え、在校生は学年がそれぞれ上がります。生徒諸君それぞれが新たな目標を掲げて学校生活を始めます。私たち職員一同生徒の目標達成に向けて精一杯がんばりますので、二高生への応援をよろしくお願いします。

笑う 平成29年3月

     3月1日に卒業式を行いました。体育館が被災して使用できない状況ですので、3月1日に実施できるのか心配しましたが、熊本県立劇場コンサートホールをお借りして無事3年生を送り出すことができました。卒業式の会場の手配や準備などに関係していただいた方々のおかげです。皆さんにお礼を申し上げます。
  当日、卒業生諸君の表情は皆さん晴れやかでした。この1年間を乗り切ったという安堵感もあったのではないでしょうか。卒業式は終わりましたが、上級学校進学への挑戦が今も続いています。希望する進路が達成できるよう最後まで努力してほしいと思います。
  以下に、卒業式の式辞の一部を掲載します。 

 式辞
  ・・・
 ただ今、卒業証書を授与した卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。皆さんは、「自主積極・廉恥自尊・礼節協調」の三綱領をよりどころとして、「学力の向上」はもとより、人としての「人格の陶冶」に向けて、日常の勉学や部活動、並びに生徒会活動を中心に、自己研鑽の日々を積み重ね、三年間の教育課程を無事修了されました。
  ・・・
 平成二十八年度は私たちのほとんどが、想定もしていなかったような天災に見舞われました。自然の力がとても大きなものであることを身をもって経験しました。地震の震源に近いところでは被害が非常に大きく建物などの復旧にも時間がかかっています。本校も施設に大きな被害を受け、体育館での卒業式はかないませんでしたが、このように熊本県立劇場をお借りして、本日、卒業式をできますことは関係された方々のご尽力によるものであります。心から感謝申し上げます。
  地震後、混乱している中で皆さんは自宅または避難所などから、避難所やがれきを撤去している所へ駆けつけ、自ら進んで積極的に手伝いをしてくれました。また、家庭での後片付けにも積極的に関わってくれたと聞いています。どのようにしたら自分の力を最大限発揮できるのか、その場の状況を自ら判断して行動するのは難しい場合がありますが、皆さんはそれぞれが判断し行動に移してくれました。本校綱領の「自主積極」の姿勢が現れた行動でありました。
  さて、本校は文部科学省からスーパー・サイエンス・ハイスクールの指定を受け、皆さんが主体的に考え行動する力を身につけることができるような教育に取り組んできました。その一つが、理数科では課題研究スーパーサイエンスであり、美術科、普通科ではテーマ研究です。研究の成果は、合同の報告会という形にし、皆さん全員が聞くことができるようにしました。研究の内容が理科系、文化系限らず様々な視点から物事を考えてみることはとても重要なことだと考えます。
  明治から大正にかけて活躍した物理学者に寺田寅彦がいます。寺田寅彦は、一八九六年(明治二九年)に第五高等学校に入学します。そこで英語教師の夏目漱石、物理学教師の田丸卓郎と出会い、両者から大きな影響を受けその後、科学と文学の両方を志すこととなります。寺田寅彦は文筆活動においても有名であり、「知と疑い」という随筆の中で、次のように書いています。
 「疑うがゆえに知り、知るがゆえに疑う。疑いは知の基である。・・よく疑う者はよく知る人である。・・寺院の懸灯の動揺するを見て驚き怪しんだ子供が、イタリアピサに一人あったので、振り子の法則が世に出た。りんごの落ちるのを怪しむ人があったので、万有引力の法則は宇宙の万物を一つの糸につないだというのは、人のよく言う話である。・・学校の教科書を鵜呑みにし、先人の研究をその孫引きによって知り、さらに疑うことなくしてこれを知り博学多才となるものは、かくのごとき仕事はしとげられないのである。」寅彦は、疑うからこそ、そこに新たな学びがあり、疑うというのは学びの上で重要なものなのだと言っています。本校で経験した課題研究やテーマ研究での課題の発見や仮説の設定をするという考え方は、これから皆さんが社会に出て、答えのないような問題に直面したとき、解決していくうえで役に立つものになると思います。また、寺田は自然科学者でありながら、文学などの自然科学以外のことにも造詣が深く、随筆などを通して科学と文学といった学問領域の融合にも試みています。文系と理系の知識を統合させ、新たな知見を得る学際的な視点での考え方も、これからの社会で生活していくうえでは必要なことであると考えます。約百年前に生きた寺田寅彦は、今の社会を予見していたのかもしれません。
  卒業生の皆さん、これから皆さんが加わっていく社会は、変化が激しく、常に新しい未知の課題に、試行錯誤しながら対応していくことが求められます。そのような社会ですから、当然人生の道のりには、幾度となく壁にぶつかることになると思われます。しかし、その壁を乗り越えるため、全力で取り組んでください。そのためには、一歩を踏み出すことから始まります。
  日本経済団体連合会の副会長を務めた鈴木敏文さんは、「未来に向かって敷かれたレールはない。道は自分でつくるものである。」と述べています。さらに鈴木さんは「レールとは、ふと振り返った時に、自分が歩んできた結果として敷かれているものである。未来に向かって踏み出そうとすれば、どんな方向にも新しく踏み出すことこともできれば自分を変えることもできる。」と述べています(「わがセブン秘録」より)。皆さんが、これまで得た経験を基礎として、一歩先の未来像を描き、それを実現させるために豊かな発想力を活かして、未来に向かって一歩を踏み出してください。皆さんのこれからの活躍を期待しています。
  ・・・
 それでは卒業生の皆さん、皆さんの前途が洋々たるものであることを信じ、将来のご多幸をお祈りして、式辞とします。